説明

ポリアミド樹脂組成物、ポリアミド樹脂フィルム、およびポリアミド樹脂フィルムの製造法

【課題】
透明性と高湿条件時の酸素バリア性に優れたポリアミド樹脂フィルムとその製造に適したポリアミド樹脂組成物、その製造方法を提供するものである。
【解決手段】
下記成分(A)〜(D)を配合してなるポリアミド樹脂組成物。
(A)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるナイロン6樹脂 40〜95重量部
(B)硫酸相対粘度が1.8〜2.4、当該樹脂中の6I成分の共重合組成が50〜80重量%であるナイロン6I/6T共重合体樹脂 5〜60重量部
(C)ビスアミド化合物 (A)と(B)の合計を100重量部に対し0.01〜3重量部
(D)分子量が5000以下のポリエチレングリコール系化合物 (Aと(B)の合計を100重量部に対し0.005〜1.0重量部

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物、当該組成物を溶融押出してなるポリアミド樹脂フィルムおよびその製造方法に関するものである。更に詳しくは、透明性と高湿条件時の酸素バリア性に優れたポリアミド樹脂フィルムとその製造に適したポリアミド樹脂組成物、その製造方法に関すものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、その優れた特性を活かして衣料用繊維,産業用繊維に使われ、さらに、自動車分野,電気・電子分野などにおいて射出成形品として、また、押出フィルム,延伸フィルムとしても広く使われている。押出フィルム、延伸フィルムは、ガスバリア性や機械的特性に優れるため、食品・医薬品包装用途、工業用途など広範な用途に使用されている。
【0003】
特に食品・医薬品包装用とでは、内容物の酸化劣化防止の観点からガスバリア性の中でも酸素バリア性(低酸素透過性)が重視され、同時に、内容物の目視確認の観点から透明性(低ヘイズ)やフィッシュアイ(微小不透明部)の少なさが重視される。
【0004】
だが、ポリアミド樹脂単独では酸素バリア性は十分であるとは言えず、また当該樹脂は吸湿しやすい上、ポリアミド樹脂からなるフィルムは吸湿に伴いその酸素バリア性も低下するため、それらの改良が求められている。
【0005】
酸素バリア性を備えた包装材料としては、従来より、ガスバリア層として、アルミニウム箔あるいは基材フィルムにアルミニウムの蒸着膜を設けた包材基材が広く使用されている。これらの包材基材は、安定したガスバリア性が得られるものの、アルミニウム箔あるいはアルミニウムの蒸着膜を備えているため、不透明もしくは透明性が劣る包材基材しか得られない上、さらに当該バリア層を基材フィルムに設けるための加工費用により原価が上昇するという問題点があった。
【0006】
酸素バリヤー性に優れた樹脂を基材フィルムとなる樹脂に溶融混合し、基材フィルムの酸素バリア性を向上しつつ透明性も維持する試みも行われている。特許文献1では、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリアミド共重合体を配合する方法が記載されている。しかしこの手法では、異なる樹脂を混合するため透明性が満足なレベルでない上、溶融混合時の加熱によりフィッシュアイが発生しやすいという問題点があった。
【0007】
以上のように従来の方法では、透明性やフィッシュアイの少なさと酸素バリア性、およびその原価はまだ満足できるレベルでは無く、これらの特性のいずれをも具備するフィルムとその製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−76040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、必要な透明性やフィッシュアイの少なさと、酸素バリア性を具備し、さらに低廉な新規ポリアミド樹脂フィルムとその製造に適した樹脂組成物、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明に到達した。
【0011】
すなわち本発明は、
(1)下記成分(A)〜(D)を配合してなるポリアミド樹脂組成物。
(A)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるナイロン6樹脂 40〜95重量部(ただし(A)と(B)の合計を100重量部とする)
(B)硫酸相対粘度が1.8〜2.4、当該樹脂中の6I成分の共重合組成が50〜80重量%であるナイロン6I/6T共重合体樹脂 5〜60重量部(ただし(A)と(B)の合計を100重量部とする)
(C)下記一般式で表されるビスアミド化合物 (A)と(B)の合計100重量部に対し0.01〜3重量部
−CONH(CHNHCO−R
(ただし、R、Rは炭素数12〜32の炭化水素基を表し、RとRは同一であっても異なっていても良い。)
(D)ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの片末端エステル物、ポリエチレングリコールの両末端エステル物から選ばれる少なくとも1種以上のポリエチレングリコール系化合物であって、分子量が5000以下のもの (A)と(B)の合計100重量部に対し0.005〜1.0重量部
(2)上記(1)記載のポリアミド樹脂組成物を製膜して、厚みが10〜1000μmであるポリアミド樹脂フィルム
(3)下記原料(A)〜(D)をドライブレンドした後に製膜することを特徴とする厚みが10〜1000μmであるポリアミド樹脂フィルム
(A)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるナイロン6樹脂ペレット 40〜95重量部(ただし(A)と(B)の合計を100重量部とする)
(B)硫酸相対粘度が1.8〜2.4、当該樹脂中の6I成分の共重合組成が50〜80重量%であるナイロン6I/6T共重合体樹脂ペレット 5〜60重量部(ただし(A)と(B)の合計を100重量部とする)
(C)下記一般式で表されるビスアミド化合物 (A)と(B)の合計100重量部に対し0.01〜3重量部
−CONH(CHNHCO−R
(ただし、R、Rは炭素数12〜32の炭化水素基を表し、RとRは同一であっても異なっていても良い。)
(D)ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの片末端エステル物、ポリエチレングリコールの両末端エステル物から選ばれる少なくとも1種以上のポリエチレングリコール系化合物であって、分子量が5000以下のもの (A)と(B)の合計100重量部に対し0.01〜1.0重量部、を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリアミド樹脂組成物、フィルム、製造方法により、透明性やフィッシュアイの少なさに優れ、かつ酸素バリア性、特に高湿時の酸素バリア性に優れたフィルムを安価に提供することができる。本発明のポリアミド樹脂フィルムは食品・医薬品包装用途、その他酸素バリア性が必要な用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いられる(A)ナイロン6樹脂とは、ε−カプロラクタムを構成成分とするポリアミドであり、1gを98%硫酸100mLに室温で溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した相対粘度(ηr)が3.0〜5.0であり、3.2〜4.6であることが好ましい。3.0未満では得られるフィルムの機械特性が劣るほか、フィルムの透明性・フィッシュアイの少なさが劣る。5.0を超えるとフィルム製膜時の流動性が大幅に低下するため製膜に支障をきたす恐れがある。
【0014】
本発明で用いられる(B)ナイロン6I/6T共重合体樹脂とは、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸からなるポリアミド単位と、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸からなるポリアミド単位より構成されるポリアミドであり、1gを98%硫酸100mLに室温で溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した相対粘度(ηr)が1.8〜2.4であり、1.9〜2.3であることが好ましく、2.0〜2.3であることがさらに好ましい。1.8未満では得られるフィルムの機械特性を損なう恐れがある。2.4を超えるとナイロン6との混練性低下によりフィルムの透明性・フィッシュアイの少なさが劣る。
【0015】
また(B)ナイロン6I/6T共重合樹脂中の6Iの共重合組成が50〜80重量%であり、55〜75重量%であることが好ましい。50%未満ではナイロン6との混練性低下によりフィルムの透明性・フィッシュアイの少なさが劣る。80%を超えると得られるフィルムの機械特性を損なう恐れがある。
【0016】
本発明における(A)ナイロン6樹脂と(B)ナイロン6I/6Tの合計100重量部に対する(B)ナイロン6I/6T共重合樹脂の配合組成は5〜60重量部であり、好ましくは10〜55重量部、より好ましくは20〜53重量部、さらに好ましくは35〜52重量部である。5重量部未満では、十分な酸素バリア性が得られず、60重量部を超えると、フィルムの靭性が低下するとともに、製膜時の溶融樹脂の膜の安定性が低下する。
【0017】
本発明のポリアミド樹脂フィルムの厚みは特に制限はないが、10〜1000μmが好ましく、20〜800μmがより好ましい。
【0018】
フィルムの厚み測定方法については一般的に用いられている方法であれば特に制約は無いが、例えば単層フィルムについてはマイクロメーターにて、積層フィルムについては端面を切り出し、光学顕微鏡にて観察することで厚みを測定することができる。
【0019】
本発明で使用される(C)ビスアミド化合物は下記一般式で表される化合物である。
−CONH(CHNHCO−R
ただし、ここでR、Rは炭素数12〜32の炭化水素基を表し、RとRは同一であっても異なっていても良い。
【0020】
具体的には、エチレンジアミンとラウリル酸、n−トリデカン酸、ミリスチン酸、n−ペンタデカン酸、パルミチン酸、n−ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、n−ノナデカン酸、アラキドン酸、メリシン酸などとの縮合物があげられるが、分散性、コスト、得られるフィルムの機械物性、透明性などの観点からエチレンビスステアロアミド、エチレンビスオレイルアミドが好ましく、エチレンビスステアロアミドが特に好ましい。
【0021】
添加量はポリアミド樹脂(前記(A)と(B)の合計)100重量部に対して0.01〜3重量部であり、0.015〜1重量部の範囲が好ましく、0.02〜0.5重量部の範囲がより好ましい。0.01重量部より少ないと得られたフィルムの透明性が低下し、また3重量部より多いと製膜時に表面に析出する恐れがあるため好ましくない。
【0022】
本発明で使用される(D)ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの片末端エステル物、ポリエチレングリコールの両末端エステル物から選ばれる少なくとも1種以上のポリエチレングリコール系化合物は、数平均分子量5000以下のものが用いられる。熱安定性や得られるフィルムの機械物性、透明性、押出特性などの観点から分子量200〜4000が好ましく、200〜1000が特に好ましい。
【0023】
数平均分子量は水酸基価より求められ、水酸基価は、JIS−K0070−1992(電位差滴定方法)に規定された方法で測定できる。
【0024】
また、片末端エステル化物あるいは両末端エステル化物のエステル構造は特に制限は無いが、炭素数6〜32の脂肪酸エステルであることが好ましい。例えば、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、ラウリル酸、n−トリデカン酸、ミリスチン酸、n−ペンタデカン酸、パルミチン酸、n−ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、n−ノナデカン酸、アラキドン酸、メリシン酸などがあげられるが、特にラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が好ましい。
【0025】
これらポリエチレングリコール系化合物の添加量はポリアミド樹脂(前記(A)と(B)の合計100重量部に対して0.005〜1重量部であり、0.01〜0.6重量部が好ましく、0.015〜0.3重量部がさらに好ましい。0.005重量部より少ないと得られたフィルムの透明性が満足にいくレベルにはなく、また1重量部より多いと衝撃特性や透明性、外観が低下するので使用できない。
【0026】
また、本発明ではフィルムの滑り特性を改善するアンチブロッキング材として、無機粒子を添加することが出来る。その種類としては特に制限は無く、ガラス粉末、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素などがあげられ、これらの無機粒子は中空であってもよい。これら無機粒子を複数種類併用することも可能であるし、同じ種類の無機粒子であって平均粒径の異なる粒子を複数併用してもかまわない。これらの中でも分散性、コスト、得られるフィルムの特性などの観点からタルク、カオリン、シリカが好ましく、シリカが特に好ましい。
【0027】
さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、要求される特性に応じて他のポリマー類、添加剤、結晶核剤、耐熱剤や紫外線吸収剤などの安定剤、難燃剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、およびカップリング剤などを添加することも可能である。
【0028】
本発明の製造方法では、原料はドライブレンドにより混合された後、フィルムに製膜される。より具体的には、(A)ナイロン6樹脂と(B)ナイロン6I/6T共重合体樹脂はペレットの形状を維持する温度範囲で混合される。なお(A)ナイロン6樹脂と(B)ナイロン6I/6T共重合体樹脂がペレットの状態であれば、その他の原料が溶融状態となる温度まで加熱して混合しても良い。また粒状物や粉体の混合に一般的に用いられる機器はいずれも使用することができる。タンブラーブレンダーなどの回転式混合機、ヘンシェルブレンダー攪拌翼による混合機などが挙げられる。
【0029】
本発明の製造方法では、ペレットの形状に制限はない。ストランドカッティングにて得られる円柱形や、ホットカッティングにより得られる球形などが挙げられる。またペレットの大きさにも制限はないが、円柱形であれば長さ・直径とも1〜5mm、球形であれば直径1〜5mmの範囲が好ましい。
【0030】
本発明のポリアミド樹脂組成物をフィルムに製膜する方法としては従来公知の方法を採用することができる。例えばT−ダイ法、インフレーション法、射出成形法、プレス成形法などを使用することができる。好ましいフィルム成形方法はT−ダイ法、インフレーション法が挙げられる。
【0031】
また、溶融製膜時の溶融温度は240〜280℃が好ましい。
【0032】
本発明のポリアミド樹脂フィルムは、必要に応じて他の樹脂や接着剤を積層することが出来る。
【0033】
本発明において多層フィルムの製造する際の方法としては、公知の任意の方法を採用することができる。すなわち、各層を構成する各々の樹脂を別々の押出機を用いて溶融し、フィードブロック法により重ね合わせた後ダイスより押し出す方法、溶融した数種の樹脂をマルチマニホールドダイス中で重ね合わせた後押し出す方法、各樹脂層をラミネートにより貼り合わせる方法、及びこれらを組み合わせた方法などをとることができる。
【0034】
多層フィルムもしくはナイロンのみの単一層のフィルムを延伸する場合には、フラット式逐次二軸延伸法、フラット式同時二軸延伸法、チューブラ法などの方法を用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0036】
[フィルムの製造方法]
(1)フィルムの製造方法
以下の条件で未延伸チューブラーフィルムを溶融押出し、製膜した。
押出機:30mm単軸押出機、L/D=22、
スクリュー:フルフライトコンスタントピッチ(3ゾーン型)、圧縮比3.1
ダイス:70mmφリングダイス
シリンダー温度:260℃
ダイス温度:270℃
冷却水温度:20℃
【0037】
(2)フィルム特性の評価方法
(A)酸素透過性
差圧式ガス・蒸気透過率測定装置(GTR−30XAD2、G2700T・F、GTRテック(株)・ヤナコテクニカルサイエンス(株)製)を用い、差圧法(試験差圧1atm、JIS K7126−1に準拠)にて、温度23℃、相対湿度0%および90%の2条件にて、酸素を用いて気体透過係数を測定した。
【0038】
(B)ヘイズ
東洋精機製作所製の直読ヘイズメーターにて、50mm×50mmの試験片を用いてヘイズを測定した。
【0039】
(C)フィッシュアイ
前記のフィルム製造法で得られたフィルムを用い、1200cm2内のフィッシュアイの個数を大蔵省印刷局製造のきょう雑物測定図表と対比して目視で観察した。
【0040】
(D)表面外観
前記のフィルム製造法で得られたフィルムを用い、フィルム表面の透明性・平滑性に着目して目視で観察した。
【0041】
実施例および比較例で使用した原料は以下のとおりである。
【0042】
[ポリアミド樹脂]
ナイロン6樹脂−A:硫酸相対粘度=4.4
ナイロン6樹脂−B:硫酸相対粘度=3.4
ナイロン6樹脂−C:硫酸相対粘度=2.7
ナイロン6I/6T樹脂:6I/6T=2/1、硫酸相対粘度=2.1。
【0043】
[エチレングリコール]
エチレングリコール−A:ポリエチレングリコール、平均分子量=400
エチレングリコール−B: ポリエチレングリコールモノラウレート、平均分子量=728
[ビスアミド化合物]エチレンビスステアロアミド。
【0044】
実施例1〜3
表1記載の処方の原料をヘンシェルミキサー内に添加して混合したした後、上記の条件で製膜し、80μmの未延伸フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
各種フィルム特性・外観ともに優れていることがわかる。特に、気体透過係数は、6I/6T共重合樹脂の比率が50%に近づくにつれて低下、すなわち酸素バリア性が向上しており、実施例1〜3いずれも、湿度0%に比べ湿度90%での透過係数が低下した。
【0047】
実施例4
実施例1とほぼ同様の処方であるが、ポリアミド6樹脂の硫酸相対粘度をより低いものに変えて評価した。実施例1に比較して、ヘイズが微増、すなわち透明性が若干低下、またFEが微増しているが、全般に良好な結果を示した。
【0048】
実施例5
実施例1とほぼ同様の処方であるが、ポリエチレングリコールを、モノエステル化したものから、エステル化されていないものに変えて評価した。実施例1に比較して、ヘイズが微増、すなわち透明性が若干低下、またFEが微増しているが、全般に良好な結果を示した。
【0049】
比較例1
6I/6T共重合樹脂を用いない点以外は実施例1〜3と同様に評価した。気体透過係数、すなわち酸素バリア性が満足できるレベルでなく、特に湿度90%での透過係数が大きな値を示した。
【0050】
比較例2
実施例1、4とほぼ同様の処方であるが、ポリアミド6樹脂の硫酸相対粘度をさらに低いものに変えて評価した。実施例1、4に比較して、ヘイズ・FEとも大幅に増加し、フィルム外観も透明性・平滑性に劣るものであった。
【0051】
比較例3
実施例3とほぼ同様の処方であるが、ビスアミド化合物を添加せず評価した。実施例3に比較して、ヘイズ・FEとも大幅に増加し、フィルム外観も透明性に劣るものであった。
【0052】
比較例4
実施例3とほぼ同様の処方であるが、ポリエチレングリコールを添加せず評価した。実施例3に比較して、ヘイズ・FEとも増加し、フィルム外観も透明性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のポリアミド樹脂組成物、ポリアミド樹脂フィルムは必要な透明性やフィッシュアイの少なさと、酸素バリア性を具備しているため、食品・医薬品包装用途に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(D)を配合してなるポリアミド樹脂組成物。
(A)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるナイロン6樹脂 40〜95重量部(ただし(A)と(B)の合計を100重量部とする)
(B)硫酸相対粘度が1.8〜2.4、当該樹脂中の6I成分の共重合組成が50〜80重量%であるナイロン6I/6T共重合体樹脂 5〜60重量部(ただし(A)と(B)の合計を100重量部とする)
(C)下記一般式で表されるビスアミド化合物 (A)と(B)の合計100重量部に対し0.01〜3重量部
−CONH(CHNHCO−R
(ただし、R、Rは炭素数12〜32の炭化水素基を表し、RとRは同一であっても異なっていても良い。)
(D)ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの片末端エステル物、ポリエチレングリコールの両末端エステル物から選ばれる少なくとも1種以上のポリエチレングリコール系化合物であって、分子量が5000以下のもの (Aと(B)の合計100重量部に対し0.005〜1.0重量部
【請求項2】
請求項1記載のポリアミド樹脂組成物を製膜した、厚みが10〜1000μmであるポリアミド樹脂フィルム
【請求項3】
下記原料(A)〜(D)をドライブレンドした後に製膜することを特徴とする厚みが10〜1000μmであるポリアミド樹脂フィルム。
(A)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるナイロン6樹脂ペレット 40〜95重量部(ただし(A)と(B)の合計を100重量部とする)
(B)硫酸相対粘度が1.8〜2.4、当該樹脂中の6I成分の共重合組成が50〜80重量%であるナイロン6I/6T共重合体樹脂ペレット 5〜60重量部(ただし(A)と(B)の合計を100重量部とする)
(C)下記一般式で表されるビスアミド化合物 (A)と(B)の合計100重量部に対し0.01〜3重量部
−CONH(CHNHCO−R
(ただし、R、Rは炭素数12〜32の炭化水素基を表し、RとRは同一であっても異なっていても良い。)
(D)ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの片末端エステル物、ポリエチレングリコールの両末端エステル物から選ばれる少なくとも1種以上のポリエチレングリコール系化合物であって、分子量が5000以下のもの (A)と(B)の合計100重量部に対し0.01〜1.0重量部

【公開番号】特開2010−174158(P2010−174158A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19255(P2009−19255)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】