説明

ポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法、及びポリアミノ酸系共重合体

【課題】ジクロロメタンを使用せず、安全にポリアミノ酸またはポリアミノ酸−ポリジエンブロック共重合体を製造する方法及びポリアミノ酸系共重合体を提供する。
【解決手段】本発明のポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法においては、ジクロロメタンよりも安全性の高いアミド系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒とを含む混合溶媒を用いる。本発明では、アミド系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒とを含む混合溶媒中で、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物を反応させるので、ジクロロメタンを使用する方法よりも安全性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法、及びポリアミノ酸系共重合体に関する。更に詳しくは、アミド系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒とを含む混合溶媒系でのポリアミノ酸の製造方法、またはポリアミノ酸ブロック[d1]−ポリジエンブロック共重合体の製造方法、及びポリアミノ酸系共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミノ酸(A)とポリジエン(B)とから構成される、A−B−A型ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体は、ポリアミノ酸ブロックが生体適合性に優れ、かつポリジエンブロックが破断・伸び等の物理的性質を向上させることから、医療材料等に使用可能な樹脂として、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0003】
A−B−A型ポリアミノ酸−ポリジエンブロック共重合体の製造方法の一例としては、例えば、特許文献3に記載の製造方法が知られている。特許文献3においては、ポリイソプレンの両末端に、アミノ基を導入したポリイソプレン誘導体と、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物とを反応させ、ポリイソプレン誘導体の両アミノ末端をポリアミノ酸として伸張する製造方法が開示されている。
この製造方法では、ポリアミノ酸−ポリジエンブロック共重合体を合成する際に、溶剤として、ジオキサンやジクロロメタン等を必要とする。
【特許文献1】特開平5−317403号公報
【特許文献2】特開平7−80057号公報
【特許文献3】国際公開第93/23453号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3に記載の製造方法において使用されるジクロロメタン等は、変異原対象物質に指定されており、極めて毒性が高く、地球環境問題の観点からその取り扱いには厳重な注意が必要である。
そのため、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物を反応させて、ポリアミノ酸またはポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体を製造する際に使用する溶媒としては、ジクロロメタン等よりも毒性の低い溶媒が求められている。
【0005】
そこで、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物と反応させる溶媒として、アミド系溶媒や炭化水素系溶媒などのジクロロメタンよりも毒性の低い溶媒について検討を行ったところ、アミド系溶媒を単独で使用すると、非極性であるポリジエンブロックが溶解し難く、炭化水素系溶剤を単独で使用すると、極性の高いポリアミノ酸ブロックが溶解し難いため、反応が進みにくいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ジクロロメタンを使用しない安全な方法で、ポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体を製造する方法及びポリアミノ酸系共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物と反応させる溶媒として、アミド系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒とを使用することにより、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、アミド系溶媒と、下記一般式(1)で表される芳香族炭化水素系溶媒とを含む混合溶媒中で、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物を反応させることを特徴とするポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法である。
【0009】
【化2】

【0010】
[式(1)中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、nは0〜6を示す。]
本発明において用いられる溶媒は、アミド系溶媒と一般式(1)で表される芳香族炭化水素系溶媒とを含む混合溶媒であるから、ジクロロメタンなどと比較すると毒性が低い。
また、本発明の方法を用いて、ポリアミノ酸系共重合体の一種であるポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体を作製すると、アミド系溶媒に溶け難いポリジエンブロックは芳香族炭化水素系溶媒に溶解し、炭化水素系溶媒に溶解し難いポリアミノ酸ブロックはアミド系溶媒に溶解するから、反応が速やかに進み効率が良い。
【0011】
本発明は以下の構成とすることもできる。
(1)前記アミド系溶媒は炭素数3〜10のアミド系化合物であってもよい。
このような構成とすると、アミド系溶媒として極性の高いものを使用するから、ポリアミノ酸や、ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体に含まれるポリアミノ酸ブロックの溶解性が高まり好ましい。
【0012】
(2)前記アミド系溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンのうちの一種以上であってもよい。
これらのアミド系溶媒は入手が容易である上に、ポリアミノ酸またはポリアミノ酸ブロックの溶解性が高いので、好ましい。
【0013】
(3)前記芳香族炭化水素系溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレンのうちの一種以上であってもよい。
ベンゼン、トルエン、キシレンは、ポリジエンブロックの溶解性が高く、安価かつ入手が容易であるので好ましい。
【0014】
(4)前記ポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法において、前記混合溶媒中での前記N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物の反応をアミン化合物の存在下に行うこととしてもよい。
ポリアミノ酸およびポリアミノ酸系共重体は、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物の重縮合により得られるが、アミン化合物がN−カルボキシ−α−アミノ酸無水物の重縮合の際に、重合開始剤として作用し、リビング的に重合が進むので分子量の制御の観点からN−カルボキシ−α−アミノ酸無水物と開始剤との仕込みモル比により容易に制御可能である点で好ましい。
【0015】
(5)ポリアミノ酸系共重合体の製造方法において、アミン化合物がアミノ基を末端に有するポリジエン化合物であってもよい。
ポリアミノ酸系共重合体は、例えば、塩基性基を末端に有するポリジエンを重合開始剤として用い、その存在下にN−カルボキシ−α−アミノ酸無水物を重縮合することにより得られる。
【0016】
塩基性基の導入の方法としてはポリジエンの末端に塩基性基以外の官能基を導入し、化学反応により導入した官能基を塩基性基に置換する方法もあるが、この方法によると副反応によるゲル化が懸念される。
そこで、上記構成とすると、アミノ基を末端に有するポリジエンが重合開始剤として作用し、重合反応時に塩基性基であるアミノ基がポリジエンの末端に導入されるので、副反応に起因するゲル化の心配がない。また、副生成物がN−カルボキシ−α−アミノ酸無水物由来の二酸化炭素のみであり、重合反応後のポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体の単離精製が容易である。
【0017】
また、本発明は、上記製造方法により得られるポリアミノ酸ブロックとポリジエンブロックとを有するポリアミノ酸系共重合体である。
本発明によれば、ジクロロメタンを使用せず安全な方法によりポリアミノ酸系共重合体が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ジクロロメタンを使用しない安全な、ポリアミノ酸またはポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体の製造方法と、当該方法により得られるポリアミノ酸系共重合体とを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、アミド系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒とを含む混合溶媒中で、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物を反応させることを特徴とするポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法である。
【0020】
すなわち、本発明の方法は、アミド系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒とを含む混合溶媒中において、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物の重縮合反応を行うことにより、ポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体を製造する方法である。
【0021】
本発明においては、アミド系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒とを別々にN−カルボキシ−α−アミノ酸無水物に添加しても良いし、混合してから添加してもよい。
まず、アミド系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒とを含む混合溶媒について説明する。
【0022】
<混合溶媒>
N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物の重縮合反応に用いるアミド系溶媒としては、ポリアミノ酸の溶解性や、ポリアミノ酸系共重合体に含まれるポリアミノ酸ブロックの溶解性が高いという観点から、極性の高いもの、具体的には、炭素数3〜10のアミド化合物が好ましい。これらのうち、特にSP値(溶解度パラメータ)が22〜25MPa1/2のものが好ましい。
【0023】
アミド系溶媒としては、具体的には、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが好適に用いられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物の重縮合反応に用いる芳香族炭化水素系溶媒としては、下記一般式(1)に記載のものなどが挙げられる。
【0024】
【化3】

【0025】
[式(1)中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、nは0〜6を示す。]
式(1)中のRとしては、メチル基、エチル基などの直鎖アルキル基のみならず、イソプロピル基やtertブチル基などの分岐を有するアルキル基なども含まれる。nが2以上の場合、Rは同一でもよいし、相違していてもよい。
【0026】
芳香族炭化水素系溶媒としては、具体的には、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどが挙げられる。これらの溶媒は、ポリジエンブロックの溶解性が高く、安価かつ入手が容易であるので好ましい。これらは単独で用いても良いし二種以上を用いてもよい。
【0027】
なお、ポリアミノ酸を作製する場合には、アミド系溶媒だけでも重縮合反応を行うことができるが、他の成分を添加した場合の溶解性に優れるという観点から、芳香族炭化水素系溶媒を共に用いるのが好ましい。
【0028】
混合溶媒の使用量は、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物10質量部に対し、通常30質量部〜500質量部であり、40質量部〜500質量部であることが好ましい。この混合溶媒の使用量は、作製するポリマーの種類によって適宜選択される。
【0029】
ポリアミノ酸を作製する場合に使用する混合溶媒の量は、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物10質量部に対し、30質量部〜500質量部であることが好ましく、40質量部〜400質量部であることが更に好ましい。混合溶媒の使用量が30質量部未満であると、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物が十分に溶解しない場合がある。一方、混合溶媒の使用量が500質量部を超えると、反応速度が著しく低下する場合がある。
【0030】
ポリアミノ酸系共重合体の一種であるポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体を作製する場合に使用する混合溶媒の使用量は、塩基性基を末端に有するポリジエンの分子量にもよるが、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物10質量部に対し、100質量部〜500質量部であることが好ましく、350質量部〜450質量部であることが更に好ましい。溶媒の使用量が100質量部未満であると、塩基性基を末端に有するポリジエン及びN−カルボキシ−α−アミノ酸無水物が十分に溶解しない場合がある。一方、溶媒の使用量が500質量部を超えると、反応速度が著しく低下し、反応が十分に進行しない場合がある。
【0031】
混合溶媒中のアミド系溶媒の配合割合は、混合溶媒全体に対して通常10質量%以上であり、好ましくは10〜40質量%であり、使用するアミド系溶媒の種類や作製するポリマーの種類によって適宜選択される。
【0032】
ポリアミノ酸を作製する場合のアミド系溶媒の配合割合は、ジメチルホルムアミドをアミド系溶媒及びジメチルアセトアミドをアミド系溶媒として用いた場合には、10〜95質量%が望ましく、N−メチル−2−ピロリドンをアミド系溶媒として用いた場合は、20〜95質量%が望ましい。それぞれ下限未満ではポリアミノ酸の溶解性が低下し、反応が進行しない可能性がある。
【0033】
ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体を作製する場合のアミド系溶媒の配合割合は、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドをアミド系溶媒として用いた場合は、10質量%〜30質量%が望ましく、N−メチルピロリドンをアミド系溶媒として用いた場合は、20質量%〜40質量%が望ましい。それぞれ下限未満ではポリアミノ酸部位の溶解性が低下し、上限を超えると、ポリイソプレン部の溶解性が低下するため、十分に反応が進行しない。
【0034】
<ポリアミノ酸の製造方法>
ポリアミノ酸は、例えば、アミン化合物の存在下に、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物を重縮合させるとアミン化合物が重合開始剤として作用し、ポリアミノ酸を作製することができる。
ポリアミノ酸の製造に用いるアミン化合物としては、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミンなどが用いられる。
【0035】
ポリアミノ酸を構成するアミノ酸及びアミノ酸誘導体としては、天然及び非天然由来のアミノ酸類が挙げられる。具体的には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、グルタミン酸−γ−ベンジル、グルタミン酸−γ−メチル、ε−カルボベンゾキシ−リジン、β−ベンジルアスパラギン酸等の天然アミノ酸及びその活性水素置換アミノ酸;前述の天然アミノ酸のD−異性体である非天然アミノ酸等が挙げられる。
【0036】
生体適合性に優れるという観点から、ポリアミノ酸を構成するアミノ酸又はアミノ酸誘導体としては、L−グルタミン酸−γ−ベンジル、L−グルタミン酸−γ−メチル、ε−カルボベンゾキシ−L−リジン、L−アラニン、L−ロイシン、L−イソロイシン等を用いることが好ましい。これらL体のアミノ酸又はアミノ酸誘導体を用いたポリアミノ酸では、生体適合性に優れたα−へリックス構造をとりやすいからである。
【0037】
アミノ酸及びアミノ酸誘導体が複数個のカルボキシル基又はアミノ基を有する場合には、反応に関与するカルボキシル基又はアミノ基以外を保護することが好ましい。保護方法は周知の方法で良く、カルボキシル基を保護する際には、メチル基、エチル基、ベンジル基、tert−ブチル基等でエステル化する方法等がある。アミノ基を保護する際には、カルボベンジルオキシ基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンゾイル基、アセチル基等で保護する方法がある。
【0038】
本発明の製造方法によって得られる、ポリアミノ酸のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ分析によるポリスチレン換算の数平均分子量は、通常5000〜30000である。ポリアミノ酸の数平均分子量は、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物と開始剤の仕込みモル比により、容易に調整することができる。
【0039】
<ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体>
ポリアミノ酸系共重合体の一種であるポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体は、塩基性基を末端に有するポリジエンの存在下に、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物を重縮合させることにより作製することができる。
【0040】
すなわち塩基性基を末端に有するポリジエンと、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物とを混合し加熱すると、塩基性基を末端に有するポリジエンが重合開始剤として作用して、二酸化炭素を脱離して、アミド結合(ペプチド結合)を生成しながら、ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体が作製される。
【0041】
塩基性基を両末端に有するポリジエンを用いた場合には、効率的にポリジエンブロックの両側にポリアミノ酸ブロックを形成することができる。
【0042】
ポリジエンを構成するモノマーである共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエン等があげられる。これらの中でも、ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体の強度や柔軟性等の物理的性質が優れるという点でイソプレンを用いることが好ましい。共役ジエン化合物は1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、塩基性基としては、例えば、アミノ基、水酸基、チオール基等があげられる。これらのうち、アミノ基が好ましい。
【0043】
ポリジエンのゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算数平均分子量は1,000〜100,000であることが好ましく、1,000〜60,000であることが更に好ましい。ポリジエンの数平均分子量が1,000未満であると、得られるポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体の破断伸び等の物理的性質が劣るという場合がある。
【0044】
一方、ポリジエンの数平均分子量が100,000を超えると、得られるポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体のアミド系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒の混合溶媒系に対する溶解性が低下し、設計どおりのブロック共重合体が得られない場合がある。また、共役ジエン化合物としてイソプレンを用いた場合には、柔軟性の点から、イソプレン単位の結合の内、シス1,4結合とトランス1,4結合の合計の割合は20%以上であることが好ましく、30%以上であることが更に好ましい。
【0045】
ポリジエンは、例えば、ラジカル重合反応、アニオン重合反応、カチオン重合反応等を行うことで合成することができる。これらの中でも、ポリジエンの末端に塩基性基を導入する必要があるため、アニオン重合反応を行うことが好ましい。アニオン重合反応の開始剤としては、例えば、1官能性アニオン重合反応開始剤や2官能性アニオン重合反応開始剤等があげられる。1官能性アニオン重合反応開始剤としては、具体的には、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属;n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等のアルキル化アルカリ金属等を挙げることができる。2官能性アニオン重合反応開始剤は、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン又はトルエン等の非極性溶媒中、ジビニルベンゼンやメチルビニルベンゼン等の官能基を2つ有する芳香族炭化水素化合物を、n−ブチルリチウムやsec−ブチルリチウム等のアルキルモノリチウムと反応させることで合成することができる。なお、2官能性アニオン重合反応開始剤の析出を防止する目的として、トリエチルアミン等のアミン類やエーテル類等の極性溶媒を添加することも好ましい。
【0046】
ポリジエンの末端に塩基性基を導入する方法としては、例えば、ポリジエンの末端に塩基性基以外の官能基を導入し、化学反応により導入した官能基を塩基性基に変換する方法や、重合反応時に塩基性基をポリジエンの末端に導入する方法等がある。化学反応の際に起きる副反応の問題から、重合反応時に塩基性基をポリジエンの末端に導入する方法、すなわち塩基性基を有するポリジエンの存在下に重縮合を行うのが好ましい。
【0047】
重合反応時に塩基性基をポリジエンの末端に導入する方法としては、例えば、2官能性アニオン重合反応開始剤を用いて共役ジエン化合物を重合させた後、得られたポリジエンの末端に塩基性基を導入する方法や、塩基性基を有する1官能性アニオン重合反応開始剤を用いて共役ジエン化合物を重合させて、一方の末端にのみ塩基性基を有するポリジエンを得た後、当該ポリジエン同士をカップリングさせる方法等がある。製造方法の簡便さから、2官能性アニオン重合反応開始剤を用いて共役ジエン化合物を重合させた後、得られたポリジエンの末端に塩基性基を導入する方法が好ましい。
【0048】
塩基性基として、アミノ基を導入する方法としては、例えば、ポリジエンの重合末端と、アミノ基又は保護化アミノ基を有するアニオン反応性化合物とを反応させる方法がある。アミノ基を有するアニオン反応性化合物としては、具体的には、3−ブロモプロピルアミン、3−クロロプロピルアミン、2−ブロモエチルアミン等が挙げられる。保護化アミノ基を有するアニオン反応性化合物としては、具体的には、2,2,5,5−テトラメチル−1−(3−ブロモプロピル)−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、2,2,5,5−テトラメチル−1−(3−クロロプロピル)−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン等が挙げられる。副反応を防止し、収率を向上する等の観点から、保護化アミノ基を有するアニオン反応性化合物を用いることが好ましい。なお、保護化アミノ基を有するアニオン反応性化合物を用いた場合には、ポリジエンの重合末端に保護化アミノ基を導入した後、脱保護を行う必要がある。
【0049】
ポリジエンの末端に導入した保護化アミノ基を脱保護するには、周知の方法を用いることができる。例えば、上記の保護化アミノ基を有するアニオン反応性化合物を用いた際には、水又はアルコール類を添加することで脱保護を行うことができる。
【0050】
ポリアミノ酸ブロックを構成するアミノ酸及びアミノ酸誘導体としては、ポリアミノ酸を構成するアミノ酸及びアミノ酸誘導体と同様に、天然及び非天然由来のアミノ酸類が挙げられる。具体的には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、グルタミン酸−γ−ベンジル、グルタミン酸−γ−メチル、ε−カルボベンゾキシ−リジン、β−ベンジルアスパラギン酸等の天然アミノ酸及びその活性水素置換アミノ酸;前述の天然アミノ酸のD−異性体である非天然アミノ酸等が挙げられる。
【0051】
生体適合性に優れるという観点から、ポリアミノ酸を構成するアミノ酸又はアミノ酸誘導体としては、L−グルタミン酸−γ−ベンジル、L−グルタミン酸−γ−メチル、ε−カルボベンゾキシ−L−リジン、L−アラニン、L−ロイシン、L−イソロイシン等を用いることが好ましい。これらL体のアミノ酸又はアミノ酸誘導体を用いたポリアミノ酸では、生体適合性に優れたα−へリックス構造をとりやすいからである。
【0052】
アミノ酸及びアミノ酸誘導体が複数個のカルボキシル基又はアミノ基を有する場合には、反応に関与するカルボキシル基又はアミノ基以外を保護することが好ましい。保護方法は周知の方法で良く、カルボキシル基を保護する際には、メチル基、エチル基、ベンジル基、tert−ブチル基等でエステル化する方法等がある。アミノ基を保護する際には、カルボベンジルオキシ基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンゾイル基、アセチル基等で保護する方法がある。
【0053】
本発明の製造方法によって得られる、ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体のポリアミノ酸ブロック(A)とポリジエンブロック(B)との質量比は、通常、95:5〜10:90であり、70:30〜40:60の範囲内であることが好ましい。この範囲外では生体適合性が低下する。また(A)の比率が高すぎる場合にはブロック共重合体が樹脂状となり十分な伸びが得られず、(A)の比率が高すぎる場合には物理的強度が低下する。ポリアミノ酸−ポリジエンブロック共重合体のポリアミノ酸ブロック(A)とポリジエンブロック(B)との質量比は、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物と開始剤の仕込みモル比により、容易に調整することができる。
【0054】
<ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体の成膜>
本発明により得られるポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体を用いた成膜の作製方法としては、例えば、溶液流延法などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
溶液流延法による成膜において、ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体を調製するのに用いられる溶媒は、ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体を溶解するものであれば特に限定されるものではないが、ポリジエン類の良溶媒であり、ポリアミノ酸ブロックにα−へリックス構造をとらせやすい溶媒を用いることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ベンゼン、トリフルオロエタノール等が挙げられる。
【0055】
溶液流延法においては、一般に、ガラスや金属等の板上に、ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体溶液を流延して、高圧環境下等で溶媒を留去する。流延の際の、溶液濃度は、通常0.1質量%〜5質量%である。溶液濃度が5質量%を超えると、均一な厚さで成膜することが困難だったり、操作性が悪くなったりする場合がある。一方、溶液濃度が0.1質量%未満であると、十分な厚さの膜を得るのが困難になる場合がある。また、溶媒の除去方法は特に限定されないが、通常、室温で溶媒を揮散させた後、減圧下で十分に乾燥させる。
【0056】
上記方法などにより得られるポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体の成膜は、生体親和性と柔軟性に優れるという特性を有することから、生体に接触する医療用の材料、例えば、絆創膏などの創傷被覆材、結腸栄養チューブ、高カロリー輸液カテーテルなどのカテーテル類、人工肺などの体外循環回路、人工補填物、および人工血管などに使用することが可能である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0058】
<試験法および評価方法>
各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
[アミノ基を末端に有するポリイソプレン中の1,4結合含有率、1,2結合含有率、3,4結合含有率、数平均分子量(Mn)、及び1級アミノ基導入率(変性率)]
500MHz核磁気共鳴スペクトル分析装置(商品名「ECX−500」、日本電子社製)を使用し、アミノ基を末端に有するポリイソプレン(乾燥後のもの)100mgを重クロロホルム0.75mLに溶解して得た測定用資料を分析することにより、1,4結合含有率(%)、1,2結合含有率(%)、3,4結合含有率(%)、数平均分子量(Mn(g/mol))、及び1級アミノ基導入率(変性率(%))を測定した。
【0059】
[アミノ基を末端に有するポリイソプレンの分子量分布(Mw/Mn)]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)(カラム:商品名「HLC−8120」、東ソー・ファインケム社製)を使用し、40℃の温度条件下、テトラヒドロフランを溶媒として使用し、流速1.0mL/分におけるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定した。測定したMwとMnの値から、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0060】
[ポリアミノ酸の数平均分子量(Mn)]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)(カラム:商品名「TSK−gel α−2500」、東ソー・ファインケム社製)を使用し、35℃の温度条件下、臭化リチウム30mM、リン酸10mMを添加したジメチルホルムアミドを溶媒として使用し、流速0.5mL/分におけるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を測定した。
【0061】
[引張強度試験]
クロロホルム100部に、ポリアミノ酸系共重合体3部を溶解して得た溶液をガラス板上に流延した後、室温でクロロホルムを揮散させ、減圧下で十分に乾燥させることで、厚さ約30μmのフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、JIS K−7113−1981に準じて引張試験を行い、引張強度(MPa)及び伸び(%)を測定した。引張強度が10MPa以上で、かつ、伸びが150%以上であれば物理的強度に優れると判断した。
【0062】
[赤外スペクトル測定]
堀場製作所社製の「FT−720」を用いて測定した。
【0063】
[元素分析]
J−サイエンスラボ社製の「JM10」を用いて測定した。
【0064】
<合成例1:アミノ基を末端に有するポリイソプレンの合成>
300mlのガラス製反応容器に1,3−ビス(ジフェニルエテニル)ベンゼン3.0gと脱水したシクロヘキサン−ヘプタン混合溶液100mLを加え、sec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液(1.3mol/L)18.5mLを添加した。これを3時間攪拌して、アニオン重合反応開始剤溶液を調製した。
【0065】
500mLの耐圧ガラス製反応容器に脱水したシクロヘキサン−ヘプタン混合溶液323mLとテトラヒドロフラン9.12mLを加えた後、調製したアニオン重合反応開始剤溶液を少量用いて溶媒中の微量の水分を除去し、さらに13.7mL加えた。反応溶液が赤褐色になった後、脱水したイソプレン36.0gを加え、50℃で30分振蕩し重合させた。この反応溶液に、N−(トリメチルシリル)ベンズアルジミン0.53gを加え、さらに75℃以上で3時間振蕩させてポリマー末端に保護化アミノ基を導入した。
【0066】
脱気したメタノール2mLを添加したところ、反応液は暗赤色から緑色へと変化したため、系中の不活性化を確認することができた。反応後の上澄み液を濃縮し、シクロヘキサンとメタノールを用いて再沈殿操作を数回行った後、濃塩酸を用いてpH1とし、室温下で3時間攪拌することによりポリマー末端上の保護化アミノ基の脱シリル化反応を行った後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和した。
【0067】
シクロヘキサンとメタノールとを用いて、中和後のポリマーの再沈殿操作を数回繰り返して精製した後、減圧下で溶媒を留去し、さらに60℃で十分に乾燥することで、アミノ基を末端に有するポリイソプレン29.8gを得た。
【0068】
アミノ基を末端に有するポリイソプレンの、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(分子量分布:Mw/Mn)は、1.34であった。
【0069】
また、核磁気共鳴スペクトル分析による、数平均分子量は34,200であり、127個のイソプレン単位から成るものであることが判明した。なお、平均するとポリイソプレン両末端に対し1級アミノ基導入率(変性率)が96%であった。また、ポリイソプレンブロックでのイソプレン同士の結合含有率は1,4結合含有率が27%、1,2結合含有率が9%、3,4結合含有率が64%であった。
【0070】
<実施例1>
n−ブチルアミン0.5mLを添加したトルエン溶液12mLを調製し、開始剤溶液とした。110mLのガラス製反応容器にベンジル-L−グルタメート−N−カルボキシ無水物(以下BLG−NCA)1.60gを仕込み、ジメチルアセトアミド(以下DMAc:SP値22.1MPa1/2)8.3gに溶解させた後、トルエン30.3gを添加し、開始剤溶液0.20gを加え、窒素下25℃で24時間重合させた。
【0071】
重合後の試料溶液を、ジエチルエーテル1L中に加えて沈殿物を生じさせ、室温、3000rpm、10分の条件で遠心分離することにより生成物を得た。得られた生成物を室温、減圧下で十分に乾燥させることで、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)1.31g(収率98%)(本発明のポリアミノ酸)を得た。
得られたポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)の、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ分析による、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は26,200であった。
【0072】
<実施例2>
DMAcの代わりにN−メチル−2−ピロリドン(以下NMP:SP値23.1MPa1/2)13.6gを用い、トルエンの添加量を26.5gとしたこと以外は実施例1と同様に実験操作を行い、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)1.25g(収率94%)(本発明のポリアミノ酸)を得た。
得られたポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)の、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ分析による、ポリスチレン換算の数平均分子量は25,200であった。
【0073】
<実施例3>
DMAcの代わりにジメチルホルムアミド(以下DMF:SP値24.8MPa1/2)8.3gを用いたこと以外は実施例1と同様に実験操作を行い、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)1.21g(収率92%)(本発明のポリアミノ酸)を得た。
得られたポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)の、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ分析による、ポリスチレン換算の数平均分子量は23,600であった。
【0074】
<実施例4>
110mLのガラス製反応容器にベンジル-L−グルタメート−N−カルボキシ無水物(以下BLG−NCA)1.60gを仕込み、ジメチルアセトアミド(以下DMAc)8.3gに溶解させた。その後、トルエン13.2gを添加し、さらに合成例1で作製した、アミノ基を末端に有するポリイソプレンを2.07g含有するトルエン溶液19.4gを加え、窒素下25℃で24時間重合させた。
【0075】
重合後の試料溶液を、メタノール1L中に加えて沈殿物を生じさせ、室温、3000rpm、10分の条件で遠心分離することにより粗生成物を得た。粗生成物を室温、減圧下で十分に乾燥させた後、再度ジクロロメタンに溶解し、ヘキサン1L中に加えて再沈殿を行った。室温、3500rpm、10分の条件で遠心分離することにより生成物を取り出し、室温、減圧下で十分に乾燥させることで、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)−ポリイソプレン共重合高分子化合物(本発明のポリアミノ酸系共重合体)2.4gを得た。
【0076】
得られたポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)−ポリイソプレン共重合高分子化合物を用いて元素分析、赤外スペクトル測定及び引張強度試験を行った。元素分析値によれば、このポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)−ポリイソプレン共重合高分子化合物中のL−グルタミン酸−γ−ベンジル(ポリアミノ酸ブロック)とイソプレン(ポリジエンブロック)との質量比は51.1/48.9であった。
【0077】
また、赤外スペクトル分析により、このポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)−ポリイソプレン共重合高分子化合物中のポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)ブロックがα−へリックス構造をとっていることが確認された。表1に引張強度試験の結果を示した。
【0078】
(実施例5)
DMAcの代わりにNMP18.1g、トルエンの添加量を5.5gとする以外は実施例4と同様に実験操作を行い、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)−ポリイソプレン共重合高分子化合物(本発明のポリアミノ酸系共重合体)2.2gを得た。
【0079】
得られたポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)−ポリイソプレン共重合高分子化合物を用いて元素分析、赤外スペクトル測定及び引張強度試験を行った。元素分析値によれば、このポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)−ポリイソプレン共重合高分子化合物中のL−グルタミン酸−γ−ベンジル(ポリアミノ酸ブロック)とイソプレン(ポリジエンブロック)との質量比は49.8/50.2であった。また、赤外スペクトル分析により、このポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)−ポリイソプレン共重合高分子化合物中のポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)ブロックがα−へリックス構造をとっていることが確認された。表1に引張強度試験の結果を示した。
【0080】
(比較例1)
n−ブチルアミン0.5mLを添加したシクロヘキサン溶液12mLを調製し、開始剤溶液とした。その後の操作についてはトルエンの代わりにシクロヘキサン27.2gを用いる以外は実施例1と同様に実験操作を行った。しかし反応開始直後に系が白濁し、極少量の生成物しか得られなかった。
【0081】
(比較例2)
DMAcの代わりにアセトン7.0gを用いる、トルエンの添加量を22.7gとする以外は実施例1と同様に実験操作を行った。しかし反応開始直後に系が白濁し、極少量の生成物しか得られなかった。
【0082】
表1には引張強度試験の結果以外に、製造に使用した材料、反応温度、反応時間なども合わせて記載した。なお、表2には比較例で使用した材料、反応温度、反応時間などについての詳細を示した。
表1および表2中「アミノ基を有するポリジエンの数平均分子量」とは「アミノ基を末端に有するポリイソプレンの数平均分子量」を示し、「ポリアミノ酸/ポリジエン(質量比)」とは「ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)−ポリイソプレン共重合高分子化合物中のL−グルタミン酸−γ−ベンジル(ポリアミノ酸ブロック)とイソプレン(ポリジエンブロック)との質量比」を示す。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
表1および表2から明らかなように、本発明の方法により製造したポリアミノ酸系共重合体(実施例4および5)を用いたフィルムは物理的強度に優れる。
【0086】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例ではポリアミノ酸を作製するための重合開始剤としてn−ブチルアミンを使用したが、他のアミン化合物例えばsec−ブチルなどを用いても良い。
【0087】
(2)上記実施例では、芳香族炭化水素系溶媒としてトルエンを用いたが、ベンゼンやキシレン等を用いてもよい。
【0088】
(3)上記実施例では塩基性基としてアミノ基を導入したポリイソプレンを用いた例を示したが、水酸基、チオール基等の塩基性基を導入したポリジエンを用いてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド系溶媒と、下記一般式(1)で表される芳香族炭化水素系溶媒とを含む混合溶媒中で、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物を反応させることを特徴とするポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法。
【化1】

[式(1)中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、nは0〜6を示す。]
【請求項2】
前記アミド系溶媒が炭素数3〜10のアミド系化合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記アミド系溶媒が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンのうちの一種以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記芳香族炭化水素系溶媒がベンゼン、トルエン、キシレンのうちの一種以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記ポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法において、前記混合溶媒中での前記N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物の反応をアミン化合物の存在下に行うことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記アミン化合物が、アミノ基を末端に有するポリジエン化合物であることを特徴とする請求項5に記載のポリアミノ酸系共重合体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のポリアミノ酸系共重合体の製造方法により得られるポリアミノ酸ブロックとポリジエンブロックとを有するポリアミノ酸系共重合体。

【公開番号】特開2009−173809(P2009−173809A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15329(P2008−15329)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】