説明

ポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法

【課題】アミノ酸から、極めて少ない工程で、かつ、ラセミ化を引き起こさない温和な条件下でポリアミノ酸が得られる、あらゆるアミノ酸に適用できる一般性の高いポリアミノ酸を製造する方法を提供すること。
【解決手段】アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物を重縮合させることを特徴とするポリアミノ酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミノ酸は、医薬品、化粧品、それらの中間体、バインダー等に用いられる極めて有用な化合物である。従って、現在、その製造方法について盛んに研究がなされており、以下のような方法が知られている。
【0003】
(1)アミノ酸エステルの重縮合について、単純なアミノ酸エステルでは、大量のジケトピペラジンを生成するが、セチルエステルでは、ジケトピペラジンを生成せず、オリゴマーを生成することが知られている(非特許文献1)。しかし、この方法は、化学合成されたラセミ化グリシンにのみ適用されているという問題がある。
【0004】
(2)アミノ酸N−カルボキシ無水物(NCA)の開環重合は、一般的なポリアミノ酸の合成方法として知られており、高分子量体が合成可能である。しかし、アミノ酸原料としてNCA誘導体を合成する工程と、NCA誘導体を重合させる工程とが必要であり、NCAを合成する段階で、有毒なホスゲンを必要とするという問題がある。
【0005】
(3)ポリスクシンイミドの加水分解方法は、高分子量のポリアスパラギン酸を合成する方法として知られている(非特許文献2〜4)。しかし、アスパラギン酸およびポリ−β−アラニンに特異的な方法であり、他のアミノ酸には応用できないという問題がある。
【0006】
(4)ポリアミノ酸の重縮合反応を溶融塩化合物中で行うことにより、分子量が数十万のポリアミノ酸を得る方法が知られている(特許文献1)。しかし、130℃〜170℃の温度範囲で加熱する必要があり、加熱によるラセミ化を引き起こしやすいという大きな問題がある。
また、これについては類似の出願についても既に公開がなされているが、同様の大きな問題がある(特許文献2)。
【0007】
(5)トリフェニルホスファイト/塩化リチウム/ポリビニルピロリドン中での直接重縮合法により、80℃という低温で高分子量のポリアミノ酸(ポリロイシンほか)を得る方法が知られている(非特許文献5)。しかし、トリフェニルホスファイトを多量に用いる、ポリビニルピロリドンと生成物との分離が難しい、という大きな問題がある。
【0008】
(6)銅錯体により制御された活性エステル法によるポリアミノ酸の合成は高分子量ポリアミノ酸および分子量を制御したポリアミノ酸を合成するうえで有効な方法である(非特許文献6)。しかし、原料合成のためのカルボン酸保護にまでの工程が極めて迂遠であるという問題がある。
【0009】
(7)イットリウム触媒を用いた活性エステルアミノ酸の重縮合が知られている(非特許文献7)。しかし、ルイス酸としてのイットリウムトリフラートが不可欠であり、工業的な応用は難しい。
【0010】
【非特許文献1】Baniel, A., Frankel, M.,Friedrich, I., Katchalsky, A., J. Org. Chem., 13, 791-795 (1948)
【非特許文献2】Vegotsky, A., Harada, K., Fox, K., J.Am. Chem. Soc,, 80, 3361-3366 (1958)
【非特許文献3】Harada,K.,J.Org.Chem.,24,1662-1666(1959)
【非特許文献4】Kovacs, J., Kovacs, H. N.,Koenyves, I., Csaszar, J.,Vajda. T., Mix, H., J. Org. Chem., 26,1084-1091 (1961)
【特許文献1】特開2004−307558号公報
【特許文献2】特開平7−196790号公報
【非特許文献5】Higashi, F., Sano, K., Kakinoki, H., J. Polym.Sci.; Chem. Ed., 18, 1841-1846 (1980)
【非特許文献6】Naka, K., Nemoto, T., Chujo, Y., J. Polym. Sci.;Part A: Polym. Chem., 41, 1504-1510 (2003)
【非特許文献7】Ando, D., Nemoto, T., Naka, K., Chujo, Y., Polym. Prepr. Jpn, 53,251 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の課題は、アミノ酸から、極めて少ない工程で、かつ、ラセミ化を引き起こさない温和な条件下でポリアミノ酸が得られる、あらゆるアミノ酸に適用できる一般性の高いポリアミノ酸の製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ポリアミノ酸の製造方法について創意工夫を重ねた結果、アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物を重縮合させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
(1)すなわち、本発明は、アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物を重縮合させることを特徴とするポリアミノ酸の製造方法を提供するものである。
(2)また、本発明は、アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物が下記式(C)で表される上記(1)の製造方法を提供するものである。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rは水素原子または炭素数1以上の有機基、Yは水素原子または電子吸引性基、mは1から5の整数を示す。)
【0015】
(3)また、本発明は、アミノ酸1モルに対するフェノール誘導体の使用量が0.1〜10モルである(1)または(2)の製造方法を提供するものである。
(4)また、本発明は、上記カーバメート化合物の重縮合を塩基性化合物の存在下で行う(1)〜(3)いずれか1つに記載の製造方法を提供するものである。
(5)また、本発明は、上記カーバメート化合物の重縮合を10〜110℃で行う(1)〜(4)いずれか1つに記載のポリアミノ酸の製造方法を提供するものである。
(6)また、本発明は、塩基性化合物が、1級又は2級アミン化合物であり、得られるポリアミノ酸が、下記式(F)
【0016】
【化2】

【0017】
(Rは前記と同じ。R2は2級又は3級アミノ基を示す。nは整数を示す。)
で表される(4)記載の製造方法を提供するものである。
(7)また、本発明は、アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物を、塩基性基含有高分子化合物の存在下で重縮合させることを特徴とするポリアミノ酸系共重合体の製造方法を提供するものである。
(8)また、本発明は、アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物を、酸性基含有高分子化合物の存在下で重縮合させることを特徴とするポリアミノ酸系共重合体の製造方法を提供するものである。
(9)また、本発明は、カーバメート化合物の合成及びカーバメート化合物の重縮合をハロゲン系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤、ケトン系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、およびニトリル系溶剤の群から選ばれた少なくとも1種の溶媒の存在下で行う(1)〜(8)いずれか1つに記載のポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、
(1)アミノ酸から、極めて少ない工程で、ポリアミノ酸(系共重合体)を製造することができる、
(2)ラセミ化を引き起こさない温和な条件で重合反応を達成することができる、
(3)あらゆるアミノ酸に適用できる一般性の高い製造反応が可能である、
という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のポリアミノ酸の製造方法を実施するための最良の形態について以下説明する。
本発明のポリアミノ酸の製造方法は、アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物を重縮合させることを特徴とする。このようなポリアミノ酸の製造方法の好適な例としては、下記反応式(1)に示すような方法が挙げられる。
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、Rは水素原子または炭素数1以上の有機基、X1およびX2はそれぞれハロゲン原子、Yは水素原子、または電子吸引性基、mは1から5の整数を示す。ただし、Yがニトロ基の場合、mは1または2である。)
【0022】
本発明方法に用いられるアミノ酸は、上記反応式(1)中の化合物(A)で表される。なお、この場合における化合物(A)は、例えば塩酸酸性等の、ハロゲン化水素酸酸性の状態を示している。
化合物(A)において、Rは水素原子または炭素数1以上の有機基であり、該有機基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロ環基、置換基を有していてもよいヘテロ環アルキル基等が挙げられる。これらの有機基に置換し得る基としては、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシ基、エステル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0023】
ここで、アルキル基としては、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル等の炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、炭素数3〜6のシクロアルキル基が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜10のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。アリールアルキル基としては、C6-10アリール‐C4-6アルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。ヘテロ環基としては、インドール、ピロリジン、イミダゾール、ピロール、ピペリジン、ジヒドロキノリン等が挙げられる。ヘテロ環アルキル基としては、前記へテロ環にC1-6アルキル基が結合した基が挙げられる。
【0024】
Rの具体例としては、例えば,メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチルなどのアルキル基;ベンジル、4−ヒドロキシベンジルなどのアリールアルキル基;ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、メルカプトメチル、カルボキシメチル、カルボキシエチル、アミノブチル、インドール、イミダゾイルなどの水酸基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基などの活性水素をアルキル基、ベンジル基などの有機基で置換した置換基を有するアルキル基;ベンジルオキシカルボニルメチル、2−ベンジルオキシカルボニルエチルなどのエステル基置換アルキル基などが挙げられ、イソブチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニルメチル、ベンジルオキシカルボニルエチルが好ましい。
ここで示したように、アミノ酸が水酸基やチオール基、あるいは複数個のカルボキシル基あるいはアミノ基を有するときは、反応に関与するもの以外を保護することが好ましい。保護方法としては、特に限定されないが、水酸基やチオール基の場合は、メチル基などで置換する方法が挙げられる。カルボキシル基の場合はメチル基、エチル基、ベンジル基、t‐ブチル基などで置換する方法が例示される。アミノ基の場合は、カルボベンジルオキシ基、t‐ブトキシカルボニル基、ベンゾイル基、アセチル基などで置換する方法が例示される。好適に用いられるカルボキシル基保護アミノ酸としては、γ-ベンジル-L-グルタミン酸などがある。複数のアミノ基を有するアミノ酸のアミノ基保護無しに、本発明の方法でポリアミノ酸を製造した場合、デンドロン構造あるいはハイパーブランチ構造のポリアミノ酸を製造することも可能である。
【0025】
本発明方法に用いられるアミノ酸は、天然および非天然のアミノ酸類いずれでもよい。例えば、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、メチオニン、γ−ベンジルグルタミン酸、β−ベンジルアスパラギン酸などの天然アミノ酸およびその活性水素置換アミノ酸;前述の天然アミノ酸のD−異性体である非天然アミノ酸などが挙げられる。これらのアミノ酸の中でも特に好適に用いられるのは、溶剤に良好な溶解性を示すポリマーを与えるアミノ酸である。
【0026】
一方、カーバメート化合物の合成に用いられる「フェノール誘導体」は、上記反応式(1)において、化合物(B)で表される。
化合物(B)において、X2は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子などのハロゲン原子である。また、Yは、水素原子または電子吸引性置換基であり、水素原子;ニトロ基;塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;パーフルオロアルキル基(ここで、アルキル基としては、炭素数1〜8の直鎖状、分枝状、環状の飽和および不飽和アルキル基など。以下同じ);パークロロアルキル基;エステル基;アセチル基;シアノ;ベンゾイル基等が挙げられ、水素原子、ニトロ基、ハロゲン原子、ハロゲン置換アルキル基、スルホン酸エステル基が好ましく、水素原子、ニトロ基が特に好ましい。
【0027】
フェノール誘導体としては、例えば、フェノキシカルボニルクロライド、4−ニトロフェノキシカルボニルクロライド、2,4−ジニトロフェノキシカルボニルクロライド、4−ニトロフェノキシカルボニルブロマイド、ペンタフルオロフェノキシカルボニルクロライドなどが挙げられる。
【0028】
なお、反応式(1)では、フェノール誘導体を例示したが、本発明では、これに限定されるものではなく、置換ナフトール誘導体や、ヒドロキシアントラセン誘導体であってもよい。
なお、置換ナフトール誘導体の具体例としては、2−ニトロ−1−ナフトールなどが挙げられる。また、ヒドロキシアントラセン誘導体の具体例としては、置換1,8,9−トリヒドロキシアントラセンなどが挙げられる。
【0029】
本発明のカーバメート化合物の合成では、アミノ酸1モルに対するフェノール誘導体の使用量は、0.1〜10モルが好ましく、0.5〜1.5モルがさらに好ましい。また、0.1モル未満では、反応が十分に進行せず、一方、10モルを超えると、精製時に反応系からフェノール誘導体の分離が困難になる。
【0030】
また、カーバメート化合物の合成では、反応温度は、10〜110℃が好ましく、20〜70℃がより好ましく、30〜60℃がさらに好ましい。また、反応時間は、1〜100時間が好ましく、10〜60時間がより好ましく、20〜50時間がさらに好ましい。
温度が10℃未満では、反応が極めて遅く、一方、110℃を超えると、カーバメート化合物の融解とともに急速な分解が生じやすい。また、反応時間が1時間未満では、十分な反応率が得られず、一方、100時間を超えると好ましくない2次的な反応が進行する場合がある。
【0031】
なお、アミノ酸とフェノール誘導体との反応によるカーバメート化合物の合成は、触媒存在下または非存在下で行うことができ、また、通常、溶媒の存在下で行われる。
溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤;メチルエチルケトン、アセトンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトニトリルなどのニトリル系溶剤;クロロホルム、ジクロルメタンなどのハロゲン系溶剤;テトラヒドロフラン、シクロペンタンモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。
溶媒の使用量は、アミノ酸とフェノール誘導体の合計量100重量部に対し、通常、10〜1,500重量部、好ましくは20〜100重量部である。10重量部未満では、カーバメートの溶解度が十分でなく、副反応が起こりやすく、一方、1,500重量部を超えると、反応が遅くなる場合がある。
【0032】
このようにして得られるカーバメート化合物は、上記反応式(1)において、化合物(C)で表すことができる。
カーバメート化合物としては、例えば、N−(フェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート、N−(フェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン、N−(フェノキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテート、N−(フェノキシカルボニル)−L−ロイシン、N−(フェノキシカルボニル)−L−プロリン、N−(フェノキシカルボニル)−O−ベンジル−L−チロシン、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテート、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−ロイシン、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−プロリン、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−O−ベンジル−L−チロシンなどが挙げられ、N−(フェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテート、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン、N−(フェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメートが好ましい。
【0033】
なお、上記したように、化合物(B)で表されるフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物に代えて、アミノ酸と置換ナフトール誘導体もしくはヒドロキシアントラセン誘導体から合成されるカーバメート化合物であってもよい。
【0034】
カーバメート化合物の重縮合(ポリアミノ酸の合成)
本発明において、カーバメート化合物の重縮合(ポリアミノ酸の合成)は、上記反応式(1)で表される。
すなわち、カーバメート化合物である化合物(C)を加熱すると、化合物(E)で表されるフェノール類と二酸化炭素を脱離して、アミド結合を形成して、(D)で表されるポリアミノ酸を生成する。
反応式(1)において、nは得られた重合体の重合度を表しており、通常、得られた重合体は分子量分布を有しているため、n=2〜10,000の整数を有する成分の集合体である。
【0035】
本発明の重縮合反応は、溶媒存在下または非存在下で行うことができるが、通常、カーバメート化合物の合成に用いられると同様の溶媒を用いることが好ましく、重縮合を促進し、高い収率と分子量を与える点で、高い誘電率と水素結合を持つ溶媒が特に好ましい。具体的には、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤などが好適な例として挙げられる。
溶媒の使用量は、生成するカーバメート化合物(C)100重量部に対し、20〜500重量部が好ましく、25〜200重量部程度がより好ましい。20重量部未満では、カーバメート化合物が十分に溶媒に溶解しない場合があり、一方、500重量部を超えると、反応速度が著しく低下する可能性がある。
【0036】
本発明の重縮合反応は、触媒存在下または非存在下で行うことができるが、著しい反応速度の上昇および反応温度の低下が可能となる点で、触媒存在下に行うことが好ましい。触媒としては、塩基性化合物であればなんら制限なく用いられるが、より好ましくは、モレキュラーシーブなどのゼオライト類;炭酸水素ナトリウムなどの塩基性アルカリ金属塩類;1級又は2級アミン化合物;トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどの3級アミン化合物;ピリジンなどの芳香族アミン化合物;メチルピロリドン、ポリビニルピロリドンなどピロリドン化合物などが用いられる。
【0037】
また、本発明のポリアミノ酸の製造においては、塩基性化合物として、例えば1級又は2級アミン化合物の存在下で、アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物を重縮合させることで、ポリアミノ酸の末端に1級又は2級アミンが反応して生成した重合体を得ることが可能となる。また、1級又は2級アミン化合物を用いた場合には、開始剤としても機能し、反応速度の上昇および反応温度の低下が可能となる。1級又は2級アミン化合物としては、炭素数1〜24の炭化水素基を有する1級又は2級アミン、環状アミン、芳香族アミン等が挙げられ、例えば、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン、キトサン、末端アミノ基置換ポリエチレングリコール、末端アミノ基置換ポリプロピレングリコール、末端アミノ基置換液状ゴム類などが挙げられる。
【0038】
本発明において、塩基性化合物として1級又は2級アミン化合物を用いて、アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物を重縮合させた場合は、以下の反応式によりC末端にアミド結合を有するポリアミノ酸(F)を製造できる。
【0039】
【化4】

【0040】
(式中、R2は2級又は3級アミノ基、R、Y、m及びnは前記と同じ。)
【0041】
上記式中、R2で示される2級又は3級アミノ基としては、前記1級又は2級アミン化合物由来の基が挙げられ、例えば、炭素数1〜24の炭化水素基を有する2級又は3級アミノ基、環状アミノ基等が挙げられる。
【0042】
カーバメート化合物(C)重縮合反応は、前記と同様に行なわれる。
【0043】
また、アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物を、下記式(2)に示すような塩基性基含有高分子化合物の存在下で重縮合させることで、ポリアミノ酸系共重合体を合成することができる。例えば、塩基性基含有高分子化合物として末端に塩基性基を有する高分子化合物を用いた場合には、有機連鎖セグメントを有するポリアミノ酸系ブロック共重合体を製造することができる。末端に塩基性基を有する高分子化合物としては、例えば、末端アミノ基置換ポリエチレングリコール、末端アミノ基置換ポリプロピレングリコール、末端アミノ基置換液状ゴム類等の末端がアミノ基に置換された高分子化合物等が挙げられる。また、塩基性基含有高分子化合物として側鎖に塩基性基を有する高分子化合物を用いた場合には、有機連鎖セグメントを有するポリアミノ酸系グラフト共重合体を製造することができる。側鎖に塩基性基を有する高分子化合物としては、例えばキトサンのようなアミノ基を側鎖に有する高分子化合物等が挙げられる。
【0044】
【化5】

【0045】
(式中、R’はアミン化合物のアミノ基が結合した骨格部分の有機連鎖セグメントであり、R’’はアミノ基の窒素に結合した水素または有機基であり、pは有機連鎖セグメントに結合したアミノ基の数を示す。)
【0046】
また、本発明のポリアミノ酸の製造においては、有機酸化合物の存在下で、アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物を重縮合させることもまた有効である。有機酸、例えばカルボン酸類は、下記反応式(3)で例示されるように、カーバメート化合物と反応し、脱炭酸反応の後、新たなアミド結合とカルボキシル基、さらにフェノール化合物を生成する。ここで新たに生成したカルボキシル基は、他のカーバメート化合物を攻撃し、重合を継続する。新たに生成した重合体中の酸無水物結合は脱炭酸反応によってアミド結合(ペプチド)結合に変換される。
【0047】
【化6】

【0048】
(式中、R’は有機酸化合物のカルボキシル基が結合した骨格部分の有機連鎖セグメントである。)
【0049】
ここで用いられる有機酸化合物としては、その分子内にカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などの有機酸基を有する有機酸化合物であればいずれも利用可能である。好ましくは、少なくとも1つのカルボキシル基を有する脂肪族カルボン酸と芳香族カルボン酸;N−置換アミノ酸類:ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などの側鎖にカルボキシル基を有するポリカルボン酸;末端カルボキシル基ポリエチレングリコール、末端カルボキシル基ポリエステルなどの末端に少なくとも一つのカルボキシル基を有する末端修飾された高分子カルボン酸などであり、これらの有機酸化合物が二つ以上混合して用いることもできる。
【0050】
また、アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物を、酸性基含有高分子化合物の存在下で重縮合させることで、ポリアミノ酸系共重合体を合成することができる。酸性基含有高分子化合物としては、カルボキシル基含有高分子化合物、リン酸基含有高分子化合物、スルホン酸基含有高分子化合物などが挙げられ、下記式(4)に例示するようなカルボキシル基含有高分子化合物が好適に用いられる。例えば、酸性基含有高分子化合物として末端に酸性基を有する高分子化合物を用いた場合には、有機連鎖セグメントを有するポリアミノ酸系ブロック共重合体を製造することができる。末端に酸性基を有する高分子化合物としては、末端カルボキシル基ポリエチレングリコールなどが挙げられる。また、酸性基含有高分子化合物として側鎖に酸性基を有する高分子化合物を用いた場合には、有機連鎖セグメントを側鎖に有するポリアミノ酸系グラフト共重合体を合成することができる。側鎖に酸性基を有する高分子化合物としては、例えばポリアクリル酸などを挙げることができる。
【0051】
【化7】

【0052】
(式中、R’は有機酸化合物のカルボキシル基が結合した骨格部分の有機連鎖セグメントであり、pは有機連鎖セグメントに結合したカルボキシル基の数である。)
【0053】
上記触媒としての添加量は、100ppmから10重量%が好ましく、500ppmから3重量%がより好ましく、また開始剤及び/又はブロック共重合体成分として添加する場合は、0.1〜1,000重量%が好ましく、1〜200重量%がより好ましい。触媒を用いない場合、反応温度は、50〜110℃が好ましく、55〜80℃がより好ましい、反応時間は、3〜200時間が好ましく、12〜96時間がより好ましく、24〜72時間がさらに好ましい。触媒を用いた場合、反応温度は、10〜110℃が好ましく、30〜80℃がより好ましく、50〜70℃がさらに好ましい、反応時間は、3〜200時間が好ましく、5〜72時間がより好ましく、10〜48時間がさらに好ましい。
触媒存在下、反応温度が10℃未満では、反応が十分に進行せず、一方、110℃を超えると、原料であるカーバメート化合物が分解する可能性がある。また、反応時間が3時間未満では、重合反応が十分に進行せず、一方、200時間を超えると、好ましくない2次的な反応が進行する場合がある。
【0054】
本発明により得られるポリアミノ酸(系共重合体)は、その重量平均分子量は、500〜500,000が好ましく、1,000〜100,000がより好ましい、分子量分布(Mw/Mn)は、1.1〜8.0が好ましく、1.3〜3.5がより好ましい。
重量平均分子量は、重合温度、触媒/開始剤の添加量により、また、分子量分布は原料と溶媒の量比、重合温度の段階的変化などにより、容易に調整することができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例における収率、重量平均分子量、数平均分子量は、次のようにして測定した。
【0056】
収率
所定の時間反応させた後、反応容器をオイルバスから取り出し、クロロホルムを加えて溶液を希釈した。この溶液を過剰量のジエチルエーテルに滴下し、白色の沈殿物を得た。メンブレンフィルターを用いてこれを濾過し、サンプル瓶に移した後、減圧下、溶媒を揮発させた後、重量を測定し収率を算出した。
【0057】
重量平均分子量・数平均分子量
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて測定した。SEC測定には、3種類のポリスチレンゲルカラム[TSK−gels(bead size, exclusion limited molecular weight);super−AW4000(6μm,>4×105),super−AW3000(4μm,>6×104),and
super−AW2500(4μm,>2×103)]と屈折率計および紫外/可視分
光計を装着したTOSOHHLC−8220を用いて40℃で行った。溶離溶媒は、臭化リチウム50mMを含有したN,N−ジメチルアセトアミド(DMF)を用い、流速0.5mL/minで測定した。検量線作成にはポリスチレンスタンダードを基準物質として用いた。
【0058】
1H−NMR、13C−NMRスペクトル
1H−NMRまた13C−NMRスペクトルはテトラメチルシラン(TMS)を基準物質
とし、Varian NMRspectrometer model Unity INOVAを用いて測定した。
【0059】
IRスペクトル
IRスペクトルは、JASCO FTIR 460 plus spectrometerを用いてsingle-reflection ATR法により測定した。
【0060】
実施例1
カーバメート化合物の合成[N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメートの合成]
窒素雰囲気下、ジムロートを装着した300mLのナスフラスコにγ−ベンジル−L−グルタメート23.73g(100mmol)とクロロギ酸4−ニトロフェニル20.16g(100mmol)、酢酸エチル200mLを加え、45℃で24時間加熱撹拌した。24時間後、反応溶液をろ紙でろ過し、未反応のγ−ベンジル−L−グルタメートを取り除いた。反応溶液を1Lの分液ロートに移し、蒸留水と飽和食塩水でそれぞれ3回ずつ洗浄し、有機層を取り出して無水硫酸マグネシウムを加え1時間脱水した。1時間後、ろ紙を用いて硫酸マグネシウムをろ過し、得られた溶液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。濃縮して得られた残渣を酢酸エチル/n−ヘキサン(2/5v/v)で再結晶した。収率35% 融点 115.2〜115.7℃.
【0061】
N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L −グルタメートのスペクトルデータ
1H NMR (CDCl3, δ in ppm): 2.13-2.45 (m, 2H, -CH2-CH-),2.62 (m, 2H, -OC(=O)-CH2-), 4.48-4.56 (m, 1H, -CH-), 5.16 (s, 2H,-CH2-C6H4-), 6.02 (d, 3J = 7.6 Hz,1H, -NH-), 7.30-7.34 (m, 2H, aromatic H ortho to -O-CO- in -C6H4-),7.37 (5H, -C6H5),
8.25 (m, 2H, aromatic H ortho to -NO2 in -C6H4-).
13C NMR (CDCl3, δ in ppm): 26.70 (-CH2-CH-),30.18 (-OC(=O)-CH2-CH2-), 53.38 (-CH-COOH), 66.87 (-O-CH2-C6H5),121.86 and 125.02 (aromatic Cβ+γ to -OC(=O)-NH-), 128.21, 128.39,128.53 (aromatic Cβ+γ+δ to -CH2-O-), 135.18 (aromatic Cαto
-CH2-O-), 144.84 (aromatic Cα to -NO2),152.91 (-OC(=O)-NH-), 155.31 (aromatic Cα to -OCONH-),172.85 (-O-CO-), and 175.58 (-COOH).
FT-IR (KBr, cm-1):3322、1725、1716、1525、1489、1350、1232、1215、and 1186.
【0062】
ポリアミノ酸の合成[ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)の合成]
下記式(5)に従って、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)を合成した。
【0063】
【化8】

【0064】
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、上記のようにして得えられたN−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート403mg(1mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド0.5mLを入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、150mg(収率74%)のポリ(γ−ベンジルグルタメート)を得た。
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は15,400、および分子量分布(Mw/Mn)は2.89であった。
【0065】
ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)のスペクトルデータ:
1H-NMR(CDCl3、δ in ppm):2.0-2.7(m,4H,-OCO-CH2-CH2-)、3.8-4.1(bs、1H、-CH-)、5.16(s,2H,-CH2-CH2-C6H5)、6.34(s、1H、-NH-)、7.29(m、5H、-C6H5).
13C NMR(CDCl3、δ in ppm):27.9(>CH-CH2-)、30.0(-CH2-COO-)、54.2(>CH-)、66.7(-O-CH2-C6H5)、128.0、128.3、128.5、135.9(-C6H5)、172.0(-O-CO-),179.5(>CH-CO-NH-).
FT-IR(KBr,cm-1):3648、3288、3034、2954、1733、1652、1541、1455、1388、1236 and 1170)
【0066】
実施例2
カーバメート化合物の合成[N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテートの合成]
窒素雰囲気下、ジムロートを装着した300mLのナスフラスコにβ−ベンジル−L−アスパルテート11.66g(50mmol)とクロロギ酸4−ニトロフェニル10.08g(50mmol)、酢酸エチル240mLを加え、45℃で24時間加熱撹拌した。24時間後、反応溶液をろ紙でろ過し、未反応のβ−ベンジル−L−アスパルテートを取り除いた。反応溶液を1Lの分液ロートに移し、蒸留水と飽和食塩水でそれぞれ3回ずつ洗浄し、有機層を取り出して無水硫酸マグネシウムを加え1時間脱水した。1時間後、ろ紙を用いて硫酸マグネシウムをろ過し、得られた溶液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/アセトン9/1v/v)を用いて精製した。収率28% 融点128.7〜129.4℃.
【0067】
N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテートのスペクトルデータ
1H NMR (CDCl3、δ in ppm): 2.93-3.29 (m、2H、-CH2-CH-)、 4.70-4.81 (m、1H、-CH-)、5.14-5.28 (m、2H、-CH2-C6H4-)、6.26 (m、1H、-NH-)、7.26-7.30 (m、2H、aromatic H ortho to -O-CO- in C6H4-)、7.30-7.50(5H、-C6H5)、8.26 (m、2H、aromaticH ortho to -NO2 in -C6H4-). 13C NMR (CDCl3, δ in ppm):35.84 (-OC(=O)-CH2-), 50.17 (-CH-COOH), 67.22 (-O-CH2-C6H5),121.88, 125.05, 128.75 (aromatic Cβ+γ+δ to -CH2-O-), 134.92 (aromatic Cα to -CH2-O-), 144.90 (aromatic Cα to -NO2), 152.90 (-OC(=O)-NH-),155.31 (aromatic Cα to -OCONH-),170.77 (-O-CO-), and 175.07 (-COOH). FT-IR (KBr, cm-1): 1224、1344、1523、1681(νC=O, -NH-C(=O)-O-)、1721 (νC=O, -C(=O)-OH)、1735 (νC=O, -C(=O)-O-).
【0068】
ポリアミノ酸の合成[ポリ(β−ベンジル−L−アスパルテート)の合成]
下記反応式(6)に従って、ポリ(γ−ベンジル−L−アスパルテート)を合成した。
【0069】
【化9】

【0070】
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、上記のようにして得られたN−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−β−ベンジルアスパルテート390mg(1mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド0.5mLを入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、122mg(収率59%)のポリ(β−ベンジルアスパルテート)を得た。
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は6,000、および分子量分布(Mw/Mn)は1.58であった。
【0071】
ポリ(β−ベンジルアスパルテート)のスペクトルデータ:
1H-NMR(δCDCl3):δ=1.52-1.83(br,1H,-NH-),2.49-3.30(br,2H,-CH2-),4.12-4.48(br,1H,-CH-),4.78-5.32(br,2H,Ph-CH2-),7.14-7.45(br,7H,C6H5)ppm.13C-NMR(δCDCl3):δ=37.7(O=C-CH2-CH-),51.1(-CH2-CH-COOH),66.2(H5C6-CH2-O-),128.5,135.0,135.9(-C6H5),165.8(O-C=O),170.7(-HN-CO)ppm.
IRスペクトル(KBr,cm-1)=407、418、460、500、697、738、1003、1173、1262、1362、1389、1456、1542、1656、1739、2368、2921、3285、3735
【0072】
実施例3〜4
実施例1の重縮合溶媒であるN,N−ジメチアセトアミド(DMAc)をジメチルホルムアミド(DMF)(実施例3)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(実施例4)に代えた以外は、実施例1と同様にしてポリ(γ−ベンジルグルタメート)を合成した。結果を表1に、実施例1の結果とともに示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から、高い誘電率と水素結合を持つ溶媒が重合を促進し、高い収率と分子量を与えることが分かる。
【0075】
実施例5〜8
重縮合温度あるいはモノマー濃度を変える以外は、実施例1と同様にして、ポリ(γ−ベンジルグルタメート)を合成した。結果を表2に、実施例1の結果とともに示す。
【0076】
【表2】

【0077】
表2から、触媒が存在しない場合、重縮合温度として、60℃付近が特に好ましい温度領域であることが分かる。
【0078】
実施例9〜12
触媒を添加した反応系におけるポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)の合成
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管にN−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート403mg(1mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド0.5mL、表3に示した触媒8mg(2wt%)を入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下、再沈精製した。さらに再沈溶液をメンブレンフィルターでろ過することによりポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)を得た。それぞれの条件下における収率、数平均分子量、分子量分布は表3に併記したとおりである。
【0079】
【表3】

【0080】
表3から、塩基性触媒の添加が重縮合を促進し、収率を向上させていることが分かる。
【0081】
実施例13〜15
触媒を添加した反応系におけるポリ(β−ベンジル−L−アスパルテート)の合成
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管にN−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテート390mg(1mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド0.5mL、触媒8mg(2wt%)を入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下、再沈精製した。さらに再沈溶液をメンブレンフィルターでろ過することによりポリ(γ−ベンジルアスパルテート)を得た。収率は74%、Mnは6,500、Mw/Mnは1.
86であった(実施例13)。触媒を代える以外は、実施例13と同様にしてポリ(β−ベンジルアスパルテート)を得た(実施例14〜15)。結果を表4に併せて示す。
【0082】
【表4】

【0083】
表4から、塩基性触媒の添加が重縮合を促進し、収率を向上させていることが分かる。
【0084】
実施例16
触媒としてn−ブチルアミンを添加した反応系におけるポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)の合成(1)
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管にN−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート403mg(1mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド0.5mL、n−ブチルアミン4μL(0.04mmol)を入れ、30℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下、再沈精製した。さらに再沈溶液をメンブレンフィルターでろ過することによりポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)を得た。収率96%、Mn17,200、Mw/Mn2.89
また、当該ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)の末端をNMRにより同定したところ、下記式(12)で表されるポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)が得られた。
【0085】
【化10】

【0086】

実施例17
片末端アミノ基置換ポリエチレングリコールメチルエステルを用いたポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート−b−エチレングリコール)の合成
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管にN−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート403mg(1mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド0.5mL、片末端アミノ基置換ポリエチレングリコールメチルエステル(Mn=2400,Mw/Mn=1.04)40mg(0.02mmol)を入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下、再沈精製した。さらに再沈溶液をメンブレンフィルターでろ過することによりポリ(γ‐ベンジルグルタメート−co−エチレングリコール)を得た。収率99%、Mn12,700、Mw/Mn1.80
【0087】
ポリ(γ−ベンジルグルタメート−b−エチレングリコール)のスペクトルデータ
1H NMR (CDCl3): δ = 1.58-2.85(br, 2H, >CH-CH2-CH2- and br, 2H, >CH-CH2-CH2-),2.89-3.16 (br, 3H, -O-CH3), 3.65 (br, 2H, -O-CH2-CH2-O-,and br, 2H, -O-CH2-CH2-O-), 3.94 (br, 1H, >CH-CH2-),(br, 1H, -CH2-C6H5), 6.44 (s, 1H, -C(=O)-NH-CH2-and s, 1H, >CH-NH-C(=O)-), 7.27 (br, 5H, -CH2-C6H5).13C NMR (CDCl3): δ = 21.31 (>CH-CH2-CH2-,copolymer), 25.44 (>CH-CH2-CH2-, PBLG homopolymer),27.99 (>CH-CH2-CH2-,
copolymer), 29.76 (>CH-CH2-CH2-,PBLG homopolymer), 30.74 (-NH-CH2-CH2-NH-), 35.06 (-NH-CH2-CH2-NH-),37.91 (-O-CH3), 54.00 (>CH-CH2-, copolymer), 56.65(>CH-CH2-, PBLG homopolymer), 65.98 (-O-CH2-CH2-O-),66.57 (-O-CH2-CH2-O-), 70.39 (-CH2-C6H5),125.922, 127.97, 128.19, 128.31, 128.44, 135.84 (-C6H5),167,59 (-NH-C(=O)-O-CH2-CH2-), 171.90(>CH-NH-C(=O)-O-), 172.72 (>CH-C(=O)-, copolymer), 175.26 (>CH-C(=O)-,PBLG homopolymer). FT-IR (KBr): 3293, 3034, 2880 (νCH CH2 group),1734 (
νC=O -C(=O)-O-), 1653 (νC=O -NH-C(=O)-O-), 1542,1456, 1393, 1166 cm-1.
【0088】
実施例18
両末端アミノ基置換ポリエチレングリコールを用いたポリ(γ−ベンジルグルタメート−b−エチレングリコール−b−γ−ベンジル−L−グルタメート)の合成
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管にN−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート403mg(1mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド0.5mL、ポリ(エチレングリコール)ビス(3−アミノプロピル)(Mn=2000,Mw/Mn=1.30)20mg(0.01mmol)を入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下、再沈精製した。さらに再沈溶液をメンブレンフィルターでろ過することによりポリ(γ‐ベンジルグルタメート−b−エチレングリコール−b−γ−ベンジルグルタメート)を得た。収率93%、Mn 15,400、Mw/Mn1.52
【0089】
ポリ(γ−ベンジルグルタメート−b−エチレングリコール−b−γ−ベンジルグルタメート)のスペクトルデータ
1H NMR (CDCl3): δ = 1.95-2.79 (br, >CH-CH2-CH2-and >CH-CH2-CH2-), 3.66 (s, 2H, -O-CH2-CH2-O-and s, 2H, -O-CH2-CH2-O-), 3.76-3.94 (br, 1H,-NH-CH-C(=O)-), 4.09
(t, 1H, J = 5.6 Hz, oligomer -NH-CH-C(=O)-), 5.05 (br, 2H,-O-CH2-C6H5), 7.27 (br, 5H, -CH2-C6H5).13C NMR (CDCl3): δ = 25.44 (>CH-CH2-CH2-,copolymer), 27.94 (>CH-CH2-CH2-, PBLG homopolymer),29.78 (>CH-CH2-CH2-, copolymer), 30.68 (>CH-CH2-CH2-,PBLG homopolymer), 54.06 (>CH-, copolymer), 56.75 (>CH-, PBLGhomopolymer), 66.00 (-O-CH2-CH2-O-), 66.63 (-O-CH2-CH2-O-),70.39 (-CH2-C6H5), 125.96, 127.97, 128.22,128.37, 128.46, 135.33 (-C6H5), 171.91(>CH-NH-C(=O)-O-), 172.76, (>CH-C(=O)-NH-, copolymer), 175.24(>CH-C(=O)-NH-, PBLG homopolymer). FT-IR (KBr): 3293, 2878 (νs CH3group and νCH CH2 group), 2359, 1733 (νC=O -C(=O)-O-),1653 (νC=O -NH-C(=O)-O-), 1541, 1507, 1456, 1165 cm-1.
【0090】
実施例19
カーバメート化合物の合成[N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニンの合成]
窒素雰囲気下、ジムロートを装着した300mLのナスフラスコにL−フェニルアラニン16.52g(100mmol)とクロロギ酸4−ニトロフェニル20.16g(100mmol)、酢酸エチル240mLを加え、45℃で24時間加熱撹拌した。24時間後、反応溶液をろ紙でろ過し、未反応のL−フェニルアラニンを取り除いた。反応溶液を1Lの分液ロートに移し、蒸留水と飽和食塩水でそれぞれ3回ずつ洗浄し、有機層を取り出して無水硫酸マグネシウムを加え1時間脱水した。1時間後、ろ紙を用いて硫酸マグネシウムをろ過し、得られた溶液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。濃縮して得られた残渣を酢酸エチル/n−ヘキサン(2/5v/v)で再結晶した。収率36%。
【0091】
N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニンのスペクトルデータ
1H NMR (CDCl3, δ in ppm):3.20-3.33 (m, 2H, >CH-CH2-C6H5),4.78 (s, 1H, >CH-NH-), 7.07 (m, 3H, aromatic H in -C6H5),7.26-7.35 (m, 2H, aromatic H in -C6H5 /m, 2H, aromatic H ortho to -O-CO- in -C6H4-NO2),8.25 (d, 2H, aromatic H ortho to -NO2 in -C6H4-)
【0092】
実施例20
カーバメート化合物の合成[N−フェノキシカルボニル−L−フェニルアラニンの合成]
窒素雰囲気下、ジムロートを装着した300mLのナスフラスコにL−フェニルアラニン13.22g(80mmol)とクロロ炭酸フェニル10mL(80mmol)、酢酸エチル200mLを加え、45℃で48時間加熱撹拌した。48時間後、反応溶液をろ紙でろ過し、未反応のL−フェニルアラニンを取り除いた。反応溶液を1Lの分液ロートに移し、蒸留水と飽和食塩水でそれぞれ3回ずつ洗浄し、有機層を取り出して無水硫酸マグネシウムを加え1時間脱水した。1時間後、ろ紙を用いて硫酸マグネシウムをろ過し、得られた溶液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。濃縮して得られた残渣を酢酸エチル/n−ヘキサン(2/5v/v)で再結晶した。収率43%.
【0093】
N−フェノキシカルボニル−L−フェニルアラニンのスペクトルデータ
1H NMR(CDCl3, δ in ppm): 2.95-3.36 (m, 2H, >CH-CH2-C6H5),4.75 (q, J = 6.4 Hz,1H, >CH-), 6.39 (d, J = 8.0 Hz, 1H, -NH-), 7.18-7.47 (m,5H, -C(=O)-O-C6H5 and m,
5H, >CH-CH2-C6H5).
【0094】
実施例21
ポリアミノ酸の合成[ポリ(L−フェニルアラニン)の合成]
下記反応式(7)に従って、ポリ(L−フェニルアラニン)を合成した。
【0095】
【化11】

【0096】
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管にN−(フェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン114mg(0.4mmol)、N−(ニトロフェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン66mg(0.2mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド0.3mLを入れ、60℃で1時間撹拌した。1時間後、N−(ニトロフェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン66mg(0.2mmol)を溶解させたN,N−ジメチルアセトアミド0.1mLを加えた。更に1時間ごとに同条件のN,N−ジメチルアセトアミド溶液0.1mLを8回加えた。計9回の添加後60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下、再沈精製した。さらに再沈溶液をメンブレンフィルターでろ過することによりポリ(L−フェニルアラニン)を得た。NMR測定に基づく反応率は約100%であった。
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は500、および分子量分布(Mw/Mn)は1.25であった。
【0097】
ポリ(L−フェニルアラニン)のスペクトルデータ
1H NMR (CDCl3, δ in ppm):4.51-4.75(m, 1H, >CH-NH-), 7.20-7.43 (m, 5H, -CH2-C6H5)
【0098】
実施例22
ポリアミノ酸の合成[ポリ(L−フェニルアラニン)の合成]
下記反応式(8)に従って、ポリ(L−フェニルアラニン)を合成した。
【0099】
【化12】

【0100】
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた50mL容量のナスフラスコにN−(フェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン571mg(2mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド20mLを入れ、60℃で120時間撹拌した。撹拌終了後、ろ紙を用いて懸濁物質をろ過し、ジエチルエーテルに滴下、再沈精製した。さらに再沈溶液をメンブレンフィルターでろ過することによりポリ(L−フェニルアラニン)を得た。収率は16mg(5%)であった。
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は1,900、および分子量分布(Mw/Mn)は1.44であった。
【0101】
ポリ(L−フェニルアラニン)のスペクトルデータ
1H NMR (CDCl3, δ in ppm):4.51-4.75(m, 1H, >CH-NH-), 7.20-7.43 (m, 5H, -CH2-C6H5)7.98(s, 1H, >CH-NH-C(=O)-).
【0102】
実施例23
カーバメート化合物の合成[N−フェノキシカルボニル−γ−ベンジルL−グルタメートの合成]
窒素雰囲気下、ジムロートを装着した300mLのナスフラスコにγ−ベンジル−L−グルタメート18.98g(80mmol)とクロロ炭酸フェニル10mL(80mmol)、酢酸エチル200mLを加え、45℃で48時間加熱撹拌した。48時間後、反応溶液をろ紙でろ過し、未反応のγ−ベンジル−L−グルタメートを取り除いた。反応溶液を1Lの分液ロートに移し、蒸留水と飽和食塩水でそれぞれ3回ずつ洗浄し、有機層を取り出して無水硫酸マグネシウムを加え1時間脱水した。1時間後、ろ紙を用いて硫酸マグネシウムをろ過し、得られた溶液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。濃縮して得られた残渣を酢酸エチル/n−ヘキサン(2/5v/v)で再結晶した。収率32%。
【0103】
N−フェノキシカルボニル−γ−ベンジル−L−グルタメートのスペクトルデータ
1H NMR (CDCl3, δ in ppm):2.05-2.45 (m, 2H, >CH-CH2-CH2-), 2.47-2.70(m, 2H,
>CH-CH2-CH2-), 4.42-4.64 (m, 1H,>CH-CH2-CH2-),5.15 (s, 2H, -O-CH2-C6H5),5.84 (d,
J = 7.6Hz,1H, >CH-NH-C(=O)-O-), 7.05-7.41(m, 5H, -O-CH2-C6H5 and m, 5H, -C(=O)-O-C6H5).
【0104】
実施例24
ポリアミノ酸[ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)の合成]
下記反応式(9)に従って、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)を合成した。
【0105】
【化13】

【0106】
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた50mL容量のナスフラスコにN−(フェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート716mg(2mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド20mLを入れ、60℃で120時間撹拌した。120時間後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下、再沈精製した。さらに再沈溶液をメンブレンフィルターでろ過することにより、189mg(収率43%)のポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)を得た。
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は11,000、および分子量分布(Mw/Mn)は3.27であった。
【0107】
ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)のスペクトルデータ
1H-NMR(CDCl3、δ in ppm):2.0-2.7(m,2H,>CH-CH2-CH2-and m,2H,>CH-CH2-CH2-)、3.8-4.1(bs、1H、>CH-)、5.16(s,2H,-O-CH2-C6H5)、6.34(s、1H、-NH-)、7.29(m、5H、-C6H5).
【0108】
実施例25
ポリアミノ酸の合成[ポリ(L−ロイシン)の合成]
下記式(10)に従って、ポリ(L−ロイシン)を合成した。
【0109】
【化14】

【0110】
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−ロイシン296mg(1mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド0.5mLを入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、41mg(収率36%)のポリ(L−ロイシン)を得た。
得られた物質は様々な溶媒に不溶であったので、IRスペクトルを用いて分析を行った。FT-IR (KBr, cm-1): 3312, 2962, 2915, 2874, 1660, 1549.
【0111】
実施例26
ポリアミノ酸の合成[ポリ(L−ロイシン−co−γ−ベンジル−L−グルタメート)の合成]
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−ロイシン148mg(0.5mmol)、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート1.01g(2.5mmol)N,N−ジメチルアセトアミド1.5mLを入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、478mg(収率79%)のポリ(L−ロイシン−co−γ−ベンジル−L−グルタメート)を得た。組成解析は1H NMRを用いて行った。
【0112】
ポリ(L−ロイシン−co−γ−ベンジル−L−グルタメート)のスペクトルデータ
1H NMR (DMF-d7): δ= 0.95 (s, 6H, -CH2-CH(CH3)2), 1.62-2.70 (br, 2H, >CH-CH2-CH2- in BLG unit and 2H, >CH-CH2-CH2- in BLG unit and 2H, >CH-CH2-CH(CH3)2 in Leu unit and 1H, >CH-CH2-CH(CH3)2 in Leu unit), 4.18 (br, 1H, >CH-CH2- in BLG unit and 1H, >CH-CH2- in Leu unit), 5.13 (s, 2H, -C(=O)-O-CH2-), 7.35 (s, 5H, -CH2-C6H5). FT-IR (KBr): 3293, 3034, 2957, 2870, 1736(νC=O, -C(=O)-O-), 1655 (νC=O, -NH-C(=O)-), 1542(δN-H, -NH-C(=O)-), 1458, 1389, 1167, 1001, 751, 698, 616 cm-1.
【0113】
実施例27
ポリアミノ酸の合成[ポリ(L−フェニルアラニン)の合成]
下記反応式(11)に従って、ポリ(L−フェニルアラニン)を合成した。
【0114】
【化15】

【0115】
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン330mg(1mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド0.5mLを入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、109mg(収率74%)のポリ(L−フェニルアラニン)を得た。
得られた物質は様々な溶媒に不溶であったので、IRスペクトルを用いて分析を行った。
FT-IR (KBr, cm-1): 3230, 3214, 3091, 3067, 3037, 2931, 1677, 1662, 1638, 1527,
1498, 1462, 1340.
【0116】
実施例28
ポリアミノ酸の合成[ポリ(L−フェニルアラニン−co−γ−ベンジル−L−グルタメート)の合成]
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15m1容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン165mg(0.5mmol)、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート1.01g(2.5mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド1.5m1を入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、273 mg(収率44%)のポリ(L−フェニルアラニン−co−γ−ベンジル−L−グルタメート)を得た。組成解析は1H NMRを用いて行った。
【0117】
ポリ(L−フェニルアラニン−co−γ−ベンジル−L−グルタメート)のスペクトルデータ
1H NMR (CDCl3, δ in ppm): 1.40-2.89 (br, 2H, >CH2-CH2- and 2H, >CH-CH2-CH2- in BLG unit), 2.91-3.14 (br, 2H, >CH-CH2-C6H5 in phenylalanine unit), 3.58-4.46 (br, 1H, >CH-CH2-CH2- in BLG unit and 1H, >CH-CH2-C6H5 in phenylalanine unit), 5.06 (br, 2H, -C(=O)-O-CH2-C6H5 in BLG unit), 7.27 (br, 5H, -C(=O)-O-CH2-C6H5 in BLG unit and 5H, >CH-CH2-C6H5 in phenylalanine unit).
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明によれば、高分子量のポリアミノ酸およびポリアミノ酸系共重合体を、ラセミ化を起こさない温和な条件の重縮合反応で得ることができ、得られるポリアミノ酸およびポリアミノ酸系共重合体は低分子量体から高分子量体まで制御可能であるので、医薬品、化粧品、それらの中間体、およびバインダーなどの多くの工業製品用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物を重縮合させることを特徴とするポリアミノ酸の製造方法。
【請求項2】
アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物が下記式(C)で表される請求項1記載のポリアミノ酸の製造方法。
【化1】

(式中、Rは水素原子または炭素数1以上の有機基、Yは水素原子または電子吸引性基、mは1から5の整数を示す。)
【請求項3】
アミノ酸1モルに対するフェノール誘導体の使用量が0.1〜10モルである請求項1または2記載のポリアミノ酸の製造方法。
【請求項4】
上記カーバメート化合物の重縮合を塩基性化合物の存在下で行う請求項1〜3いずれか1項に記載のポリアミノ酸の製造方法
【請求項5】
上記カーバメート化合物の重縮合を10〜110℃で行う請求項1〜4いずれか1項に記載のポリアミノ酸の製造方法。
【請求項6】
塩基性化合物が、1級又は2級アミン化合物であり、得られるポリアミノ酸が、下記式(F)
【化2】

(Rは前記と同じ。R2は2級又は3級アミノ基を示す。nは整数を示す。)
で表される請求項4記載の製造方法。
【請求項7】
アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物を、塩基性基含有高分子化合物の存在下で重縮合させることを特徴とするポリアミノ酸系共重合体の製造方法。
【請求項8】
アミノ酸とフェノール誘導体から合成されるカーバメート化合物を、酸性基含有高分子化合物の存在下で重縮合させることを特徴とするポリアミノ酸系共重合体の製造方法。
【請求項9】
カーバメート化合物の合成及びカーバメート化合物の重縮合をハロゲン系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤、ケトン系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、およびニトリル系溶剤の群から選ばれた少なくとも1種の溶媒の存在下で行う請求項1〜8いずれか1項に記載のポリアミノ酸またはポリアミノ酸系共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2009−74035(P2009−74035A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41452(P2008−41452)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】