説明

ポリアリーレンの製造方法

【課題】カップリング重合が進行しても、重合反応物に含まれるポリアリーレンの分子量を急激に増加することを抑制する方法が求められていた。
【解決手段】遷移金属錯体存在下、下記式(1)


(式中、Arは、2価の芳香族基を表わす。ここで、2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい。Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表わす。)
で示される芳香族ジハライドをカップリング重合するポリアリーレンの製造方法であって、下記第1工程及び第2工程を有することを特徴とするポリアリーレンの製造方法。
第1工程:遷移金属錯体存在下、該芳香族ジハライドをカップリング重合する工程。
第2工程:該遷移金属錯体に含まれる配位子とは異なる化合物であって、π型化合物、含窒素化合物及び含燐化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、第1工程で得られた重合反応物に混合する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレン製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
フェニレン、フルオレン、チオフェン等の芳香環に、脱離基としてのハロゲン原子を2個有する芳香族ジハライドを単量体として用い、該単量体をカップリング重合させ、高分子量の芳香族ジハライドであるポリアリーレンを製造する方法は、例えば、特許文献1、2、及び非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−206826号公報
【特許文献2】特開2005−248143号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Macromolecules 1992, 25, 1214-1223
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリアリーレンの製造方法では、カップリング重合が進行するにつれて、得られるポリアリーレンの分子量が急激に増加する場合があり、それに伴って、ポリアリーレンを含む重合反応物の粘度も急激に増加して、該重合反応物を攪拌したり除熱したりすることが必ずしも容易ではない場合がある。
このような状況下、カップリング重合が進行しても、重合反応物に含まれるポリアリーレンの分子量を急激に増加することを抑制する方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような状況下、本発明者らは、カップリング重合が進行しても、重合反応物に含まれるポリアリーレンの分子量が急激に増加することを抑制し得るポリアリーレンの製造方法について鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。
すなわち、本発明は、
<1> 遷移金属錯体存在下、下記式(1)

(式中、Arは、2価の芳香族基を表わす。ここで、2価の芳香族基は、
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基;
イオン交換基;及び
保護されたイオン交換基;
からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基を有していてもよい。
Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表わす。)
で示される芳香族ジハライドをカップリング重合するポリアリーレンの製造方法であって、下記第1工程及び第2工程を有することを特徴とするポリアリーレンの製造方法;
第1工程:遷移金属錯体存在下、該芳香族ジハライドをカップリング重合する工程。
第2工程:該遷移金属錯体に含まれる配位子とは異なる化合物であって、π型化合物、含窒素化合物及び含燐化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、第1工程で得られた重合反応物に混合する工程。
【0007】
<2> 芳香族ジハライドに含まれるArが、イオン交換基及び保護されたイオン交換基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する2価の芳香族基であることを特徴とする<1>記載の製造方法;
<3> 芳香族ジハライドが、下記式(2)

(式中、Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表わす。Aは、1つもしくは2つの炭素数1〜20の炭化水素基と結合したアミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表わす。ここで、該炭化水素基及びアルコキシ基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。
Rは、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基又はシアノ基を表わす。ここで、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。Rが複数の場合、Rは同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。また、隣接する2つのRが結合して環を形成していてもよい。kは0〜3の整数を表わす。)
で示されるジハロビフェニル化合物であることを特徴とする<2>記載の製造方法;
【0008】
<4> 第2工程に用いられる重合反応物に含まれるポリアリーレンの重量平均分子量が、10000以上100000未満であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか記載の製造方法;
【0009】
<5> 第2工程に用いられる重合反応物に含まれるポリアリーレンが、第2工程で得られる混合物に含まれる所望のポリアリーレンに対して10〜70%の重量平均分子量であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか記載の製造方法。
【0010】
<6> 芳香族ジハライドとして、下記式(3)

(式中、Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表わす。a、b及びcは、それぞれ独立に、0又は1を表わし、nは5以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、2価の芳香族基を表わす。ここで、2価の芳香族基は、
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜10のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;及び
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基
からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基を有していてもよい。
及びYは、それぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。
及びZは、それぞれ独立に、酸素又は硫黄原子を表わす。)
で示される重合体をさらに含むことを特徴とする<1>〜<5>のいずれか記載のポリアリーレンの製造方法;
【0011】
<7> 遷移金属錯体が、ハロゲン化ニッケル及び含窒素二座配位子から得られるものを亜鉛で還元して調製された遷移金属錯体であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか記載のポリアリーレンの製造方法;
<8> 第1工程が、
ハロゲン化ニッケル及び含窒素二座配位子を溶媒中で溶解する(1−1)工程、
芳香族ジハライド、ハロゲン化ニッケル及び亜鉛を混合する(1−2)工程、並びに、
(1−1)工程で得られた溶解液と、(1−2)工程で得られた混合液とを混合し、該芳香族ジハライドをカップリング重合する(1−3)工程、
を含む工程であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか記載のポリアリーレンの製造方法;
<9> 第2工程で得られた混合物に、π型化合物、含窒素化合物又は含燐化合物とは異なる化合物であって、水、酸素、アルコール、酸及び塩基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応阻害成分を、さらに混合する第3工程を有することを特徴とする<1>〜<8>のいずれか記載のポリアリーレンの製造方法。
等である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、カップリング重合が進行しても、カップリング重合の重合反応物に含まれるポリアリーレンの分子量が急激に増加することを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1及び参考例1のそれぞれについて、所定の反応時間おきにサンプリングリングされたポリアリーレンの重量平均分子量を示した図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るポリアリーレンの製造方法について具体的に説明する。
前記式(1)で示される芳香族ジハライドにおいて、Ar1を構成する2価の芳香族基とは、フェニレン、ビフェニリレン、ナフチレン、フルオレンジイルなどの炭素数6〜20の炭化水素系芳香族基、又は、例えば、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイルなどの前記炭化水素系芳香族基の炭素原子がヘテロ原子で置き換わったヘテロ芳香族基を意味し、好ましくは、炭化水素系芳香族基である。
Ar1は、芳香族性を有する限り、2価の芳香族基が互いに連結基で結合していてもよい。
ここで、連結基としては、例えば、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基、フルオレン−9,9−ジイル基、−O−、−S−等の2価の基を挙げることができる。
【0015】
2価の芳香族基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基、イオン交換基、保護されたイオン交換基等が挙げられる。該アルキル基は、さらに、前記に例示された置換基(フッ素原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基)等を有していてもよい。
【0016】
炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−メチルペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等の直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。
【0017】
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基等の直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の炭素数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。
【0018】
炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、3−フェナントリル基、2−アントリル基等が挙げられる。炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、3−フェナントリルオキシ基、2−アントリルオキシ基等の前記炭素数6〜20のアリール基と酸素原子とから構成されるものが挙げられる。
【0019】
炭素数2〜20のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基等の炭素数2〜20の脂肪族もしくは芳香族アシル基が挙げられる。
【0020】
本発明におけるイオン交換基とは、水中でプロトンを解離し得る官能基を意味し、例えば、スルホ基(-SO3H)、カルボキシ基(-CO2H)、ホスホ基(-PO3H2)等を挙げることができる。
【0021】
「保護されたイオン交換基」とは、該イオン交換基が保護基で保護されたものを意味する。保護基としては、例えば、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、1つもしくは2つの炭素数1〜20の炭化水素基と結合したアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。該炭化水素基はアミノ基に含まれる窒素原子とともに環状構造を有していてもよい。
炭素数2〜20の炭化水素基と結合したアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、2,2−ジメチルプロピルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基、n−ウンデシルアミノ基、n−ドデシルアミノ基、n−トリデシルアミノ基、n−テトラデシルアミノ基、n−ペンタデシルアミノ基、n−ヘキサデシルアミノ基、n−ヘプタデシルアミノ基、n−オクタデシルアミノ基、n−ノナデシルアミノ基、n−イコシルアミノ基、ピロリル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、カルバゾリル基、ジヒドロインドリル基、ジヒドロイソインドリル基等を挙げることができ、好ましくは、ジエチルアミノ基、n−ドデシルアミノ基等が挙げられる。
【0022】
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基等の直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の炭素数3〜20のアルコキシ基等を挙げることができる。好ましくは、例えば、イソブトキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
保護されたイオン交換基を具体的に例示すると、イオン交換基のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、例えば、-SO3CH3、-SO3C2H5、-SO3CH(CH3)2、-SO3CH2C(CH3)3等の炭素数1〜6のアルコキシ基でエステル化されたアルコキシスルホニル基、例えば、-CO2CH3、-CO2C2H5、-CO2CH(CH3)2、-CO2CH2C(CH3)3等の炭素数1〜6のアルコキシ基でエステル化されたアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基でエステル化されたアルコキシホスホニル基、-SO2NR'R"、-CONR'R"等(ここでR'及びR"は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基を表わす。該炭化水素基はアミノ基に含まれる窒素原子とともに環状構造を有していてもよい。)を挙げることができる。
【0024】
式(1)で表わされる芳香族ジハライドは、該芳香族ジハライドに含まれる2価の芳香族基は、イオン交換基及び保護されたイオン交換基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有しているものが好ましい。
該芳香族ジハライドに含まれるイオン交換基及び保護されたイオン交換基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基としては、例えば、スルホ基、スルホ基の塩、アルコキシスルホニル基、-SO2NR'R"等が挙げられ、より好ましくは、例えば、アルコキシスルホニル基等が挙げられる。
【0025】
式(1)で示される芳香族ジハライドであって、該芳香族ジハライドに含まれる2価の芳香族基が、イオン交換基及び保護されたイオン交換基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する芳香族ジハライドとしては、例えば、式(2)

(式中、Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表わす。Aは、1つもしくは2つの炭素数1〜20の炭化水素基と結合したアミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表わす。ここで、該炭化水素基及びアルコキシ基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。
Rは、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基又はシアノ基を表わす。ここで、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。Rが複数の場合、Rは同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。また、隣接する2つのRが結合して環を形成していてもよい。kは0〜3の整数を表わす。)
で示されるジハロビフェニル化合物(以下、化合物(2)と記すことがある)等を挙げることができる。
【0026】
化合物(2)としては、例えば、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸イソプロピル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸イソブチル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−オクチル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−ペンタデシル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−イコシル、N,N−ジエチル−2,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N,N−ジイソプロピル−2,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N−(2,2−ジメチルプロピル)−2,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N−n−ドデシル−2,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N−n−イコシル−2,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸イソプロピル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸イソブチル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−オクチル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−ペンタデシル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−イコシル、N,N−ジエチル−3,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N,N−ジイソプロピル−3,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N−(2,2−ジメチルプロピル)−3,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N−n−ドデシル−3,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N−n−イコシル−3,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、
が挙げられ、上記の例示において、「ジクロロ」は「ジブロモ」又は「ジヨード」であってもよい。
また、前記式(1)で示される芳香族ジハライドであって、化合物(2)とは異なる芳香族ジハライドの例示としては、上記の化合物(2)の例示における「ベンゼンスルホン酸」が「安息香酸」に置き換わった化合物等を挙げることができる。
【0027】
好ましい化合物(2)としては、例えば、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジメチル、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジエチル、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−プロピル)、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジイソプロピル、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−ブチル)、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジイソブチル、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジシクロヘキシル、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−オクチル)、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−ペンタデシル)、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−イコシル)、N,N−ジメチル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジエチル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジ(n−プロピル)−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジイソプロピル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジ(n−ブチル)−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジイソブチル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N−ジ(2,2−ジメチルプロピル)−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N−ジ(n−オクチル)−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N−ジ(n−ドデシル)−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N−ジ(n−イコシル)−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジフェニル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミドが挙げられ、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)等を挙げることができる。かかるジハロビフェニル化合物は、例えば、特開2007−270118号公報に記載の方法に準じて製造することができる。
【0028】
イオン交換基及び保護されたイオン交換基を有さない式(1)で示される芳香族ジハライドとしては、例えば、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジブロモベンゼン、1,3−ジヨードベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、2,4−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロトルエン、3,5−ジクロロトルエン、2,4−ジブロモトルエン、2,5−ジブロモトルエン、3,5−ジブロモトルエン、2,4−ジヨードトルエン、2,5−ジヨードトルエン、3,5−ジヨードトルエン、1,3−ジクロロ−4−メトキシベンゼン、1,4−ジクロロ−3−メトキシベンゼン、1,3−ジブロモ−4−メトキシベンゼン、1,4−ジブロモ−3−メトキシベンゼン、1,3−ジヨード−4−メトキシベンゼン、1,4−ジヨード−3−メトキシベンゼン、1,3−ジクロロ−4−アセトキシベンゼン、1,4−ジクロロ−3−アセトキシベンゼン、1,3−ジブロモ−4−アセトキシベンゼン、1,4−ジブロモ−3−アセトキシベンゼン、1,3−ジヨード−4−アセトキシベンゼン、1,4−ジヨード−3−アセトキシベンゼン、2,5−ジクロロ−4’−フェノキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0029】
上記以外の式(1)で示される芳香族ジハライドとしては、式(3)

(式中、Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表わす。a、b及びcは、それぞれ独立に、0又は1を表わし、nは5以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、2価の芳香族基を表わす。ここで、2価の芳香族基は、
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜10のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;及び
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基
からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基を有していてもよい。
及びYは、それぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。
及びZは、それぞれ独立に、酸素又は硫黄原子を表わす。)
で示される重合体等を挙げることができる。以下、かかる重合体を重合体(3)と記すことがある。
【0030】
重合体(3)に含まれるAr2、Ar3、Ar4及びAr5とは、イオン交換基及び保護されたイオン交換基を有さない2価の芳香族基であり、かかる2価の芳香族基としては、例えば、前記Ar1として2価の芳香族基等を挙げることができる。
式(3)における2価の芳香族基に有していてもよい置換基としては、イオン交換基及び保護されたイオン交換基以外の置換基として前記に例示されたものが同様に例示される。好ましい2価の芳香族基は、置換基を有しない2価の芳香族基である。
【0031】
重合体(3)における重量平均分子量としては、例えば、2,000〜200,000のものが挙げられ、好ましくは、3,000〜100,000のものが挙げられる。重量平均分子量が2000以上であると機械的強度に優れる傾向があることから好ましく、重量平均分子量が200,000以下であるとイオン交換容量が増大する傾向があることから好ましい。
ここでイオン交換容量とは、ポリアリーレン1gあたりのイオン交換基の当量数を意味し、すなわち、イオン交換容量が大きいと、ポリアリーレンに含まれるイオン交換基が多いことを意味する。
【0032】
重合体(3)としては、例えば、下記に示す重合体及び下記に示す重合体の両末端の塩素原子が臭素原子に置き換わった重合体等が挙げられる。ここで、nとしては、例えば、5〜200を挙げることができ、好ましくは、5〜100である。

【0033】

【0034】

【0035】

【0036】

【0037】

【0038】
重合体(3)の製造方法としては、例えば、日本国特許第2745727号公報等の公知の方法に準じて製造したものを用いてもよいし、市販されているものを用いてもよい。市販されているものとしては、例えば、住友化学株式会社製スミカエクセルPES(登録商標)等が挙げられる。
【0039】
本発明の製造方法に用いられる好ましい芳香族ジハライドとしては、例えば、化合物(2)、重合体(3)などを挙げることができ、より好ましくは、化合物(2)及び重合体(3)をいずれも用いる。
【0040】
本発明に用いられる遷移金属錯体とは、ニッケル化合物などの遷移金属化合物と、配位子及び/又は溶媒とを含むものである。
ニッケル化合物としては、例えば、ハロゲン化ニッケル(例えば、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル等)、ニッケルカルボン酸塩(例えば、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル等)、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、(ジメトキシエタン)塩化ニッケル等の2価のニッケル化合物、例えば、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)、ニッケル(0)(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)、ニッケル(0)テトラキス(トリフェニルホスフィン)等のゼロ価ニッケル化合物等の0価のニッケル化合物などが挙げられる。ニッケル化合物としては、2価のニッケル化合物が好ましく、中でも、ハロゲン化ニッケルが好ましい。
【0041】
配位子としては、例えば、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の含窒素二座配位子等が挙げられ、より好ましくは、2,2’−ビピリジンである。
配位子の使用量は、含窒素二座配位子を例として説明すると、ニッケル化合物に含まれるニッケル原子1モルに対して、例えば、0.2〜2モルの範囲等を挙げることが、好ましくは1〜1.5モルの範囲等が挙げられる。
【0042】
遷移金属錯体を調製する際には、溶媒存在下で調製してもよい。溶媒としては、得られるニッケル化合物を溶解し得る溶媒であり、好ましくは、後述する第1工程で用いられる溶媒と同一のものが好ましい。具体的には、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル溶媒;ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒等を挙げることができる。
かかる溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
好ましい溶媒としては、例えば、エーテル溶媒、非プロトン性極性溶媒等を挙げることができ、より好ましくは、例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
溶媒の使用量は、ニッケル化合物に対して、例えば、5〜200重量倍の範囲等を挙げることができる。
【0043】
遷移金属錯体は、例えば、市販の遷移金属錯体をそのまま利用して第1工程に存在させてもよいし、例えば、ニッケル化合物など遷移金属化合物を溶媒とともに加熱溶解させて、第1工程に存在させ、第1工程において配位子も存在させ、第1工程で遷移金属錯体を生成させてもよいし、例えば、遷移金属化合物及び配位子から遷移金属錯体を調製する工程を経由して得られた錯体を第1工程に存在させてもよい。好ましくは、遷移金属化合物及び配位子から遷移金属錯体を調製する工程によって調製された遷移金属錯体である。
【0044】
以下、遷移金属化合物及び配位子から遷移金属錯体を調製する工程について、遷移金属化合物がハロゲン化ニッケルであり、配位子が含窒素二座配位子である場合について、具体的に説明する。
ハロゲン化ニッケル及び含窒素二座配位子を、例えば、50〜120℃、好ましくは、60〜80℃の温度範囲にて、溶媒中で溶解する工程を行う(以下、(1−1)工程と記すことがある)。(1−1)工程における反応時間としては、反応温度によっても異なるが、例えば、1〜24時間の範囲等を挙げることができる。
(1−1)工程で得られた遷移金属錯体を含む溶液は、例えば、15〜40℃の温度範囲程度に、さらに、冷却することが好ましい。
【0045】
別途、芳香族ジハライド、ハロゲン化ニッケル及び還元剤を混合する工程を行う(以下、(1−2)工程と記すことがある)。
ここで、還元剤としては、例えば、亜鉛、マグネシウム、水素化ナトリウム、リチウムアルミニウムヒドリドなどが挙げられ、好ましくは亜鉛である。亜鉛は、例えば、粉末状のものが用いられる。亜鉛を用いる場合の使用量は、芳香族ジハライド1モルに対して、例えば、1〜10モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは、1〜5モルの範囲等が挙げられる。
遷移金属錯体は、前記(1−1)工程で得られた溶解液と、前記(1−2)工程で得られた混合液とを混合して調製される。この際、芳香族ジハライドを共存させてカップリング重合が進行してもよい。以下、(1−1)工程で得られた溶解液と、(1−2)工程で得られた混合液とを混合し、該芳香族ジハライドをカップリング重合する工程を(1−3)工程と記すことがある。
【0046】
本発明の第1工程は、遷移金属錯体存在下、該芳香族ジハライドをカップリング重合する工程である。前記(1−3)工程は、第1工程の1態様である。
第1工程で用いられる溶媒は、遷移金属錯体を調製する際に用いられた溶媒と同様のものが例示され、好ましくは、例えば、エーテル溶媒、非プロトン性極性溶媒等を挙げることができ、より好ましくは、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン及びN,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
溶媒の使用量は、芳香族ジハライドに対して、例えば、1〜200重量倍の範囲等を挙げることができ、好ましくは5〜100重量倍の範囲等が挙げられる
【0047】
第1工程におけるカップリング重合は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
第1工程における重合温度は、15〜40℃の範囲である。好ましくは、15〜35℃の範囲、より好ましくは15〜30℃の範囲、とりわけより好ましくは15〜25℃の範囲である。
重合時間は、例えば、1〜48時間の範囲等を挙げることができる。
【0048】
本発明の第2工程は、第1工程で得られた溶液に、該遷移金属錯体に含まれる配位子とは異なる化合物であって、π型化合物、含窒素化合物及び含燐化合物からなる群から少なくとも1種の化合物(以下、本化合物と記すことがある)を混合する工程である。
本化合物は、得られるポリアリーレンが、所望の分子量に達する前に混合され、具体的には、第2工程で得られるポリアリーレンの所望の重量平均分子量の10〜70%、好ましくは、20〜50%の重量平均分子量に達した際に、第2工程を行う場合等が例示される。
【0049】
具体的には、所望の分子量によって異なるが、ポリアリーレンの重量平均分子量が5000以上200000未満、好ましくは、10000以上100000未満の範囲に達した際に、第2工程を行う場合等を例示することができる。
第2工程における重量平均分子量の増加速度(以下、分子量成長速度と記すことがある)としては、例えば、1時間当たり50000未満であれば分子量制御しやすい傾向があることから好ましく、1時間当たり20000未満であればさらに好ましい。
第2工程において、分子量増加は、例えば、3時間以上継続することが可能である。
【0050】
本化合物の1種であるπ型化合物とは、オレフィン性不飽和結合を有する炭素数2〜20の炭化水素であり、該炭化水素に含まれる水素原子は、例えば、水酸基などで置換されていてもよく、該炭化水素の炭素原子は、例えば、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基等に置き換わっていてもよい。
π型化合物としては、例えば、1,5−シクロオクタジエン、ジベンジリデンアセトン等のオレフィン化合物が挙げられる。
【0051】
本化合物の1種である含窒素化合物とは、炭素数2〜20の炭化水素の中の少なくとも1つの炭素原子が窒素原子に置き換わった化合物であり、該炭化水素に含まれる水素原子は、例えば、水酸基などで置換されていてもよく、該炭化水素の炭素原子は、例えば、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基等に置き換わっていてもよい。
含窒素化合物としては、例えば、ピリジン、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、1,3−ジピリジルプロパン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン等のアミン化合物、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、N−メチルイミダゾール、N−フェニルピラゾール等のイミン化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル化合物が挙げられる。
【0052】
本化合物の1種である含燐化合物とは、炭素数3〜120の炭化水素の中の少なくとも1つの炭素原子3価の燐原子に置き換わった化合物であり、該炭化水素に含まれる水素原子は、例えば、水酸基などで置換されていてもよく、該炭化水素の炭素原子は、例えば、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基等に置き換わっていてもよい。
含燐化合物としては、例えば、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1.1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリフェニルホスフィン等の燐化合物が挙げられる。
好ましい該化合物としては、例えば、アミン化合物、イミン化合物、オレフィン化合物等を挙げることができ、より好ましくは、例えば1,3−ジピリジルプロパン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−シクロオクタジエン等が挙げられる。
【0053】
第2工程に用いられる該化合物の使用量は、遷移金属錯体に含まれる遷移金属原子1モルに対して、例えば、0.05〜20モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは、0.1〜10モルの範囲等が挙げられる。
【0054】
後述する実施例1及び参考例1のカップリング重合において、所定の重合反応時間おきにサンプリングした重合反応物に含まれるポリアリーレンの重量平均分子量の結果からも明らかなように、カップリング重合が進行しても、第2工程を行うことにより分子量成長速度が低減する。本発明の製造方法によれば、第2工程で分子量成長速度が低減することにより、所望の分子量に到達するまで時間を要することから、分子量の調節が容易である。
【0055】
第2工程を行わない場合と比較して、第2工程を行って得られたポリアリーレンの分子量は低くなる傾向がある。
また、第2工程を行っても所望の分子量よりも高分子量のポリアリーレンが得られる場合には、所望の分子量に到達した時点でカップリング重合を停止させて、生成するポリアリーレンの分子量を所望の分子量に制御してもよい。
カップリング重合を停止させる方法としては、例えば、反応阻害成分を混合する方法等が挙げられ、かかる反応阻害成分としては、π型化合物、含窒素化合物又は含燐化合物とは異なる化合物であって、水;酸素;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール;硫酸、硝酸、酢酸、燐酸、ベンゼンスルホン酸等の酸;水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の塩基等が挙げられる。
反応阻害成分を加えると、通常、1時間以内に反応は停止する。
【0056】
第2工程で得られた重合溶液に含まれるポリアリーレンが、保護されたイオン交換基を有する式(1)で示される芳香族ジハライドに由来する構造単位を含むポリアリーレンである場合、保護されたイオン交換基を有する化合物(1)に由来する構造単位に含まれる「保護されたイオン交換基」をイオン交換基に変換するために、例えば、加水分解などで脱保護を特許文献1に準じて行う(以下、第3工程と記すことがある)。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液と、第2工程で得られた重合反応物とを0〜250℃、好ましくは40〜120℃で、約1〜150時間、混合し、次いで、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸で中和する方法;例えば、臭化リチウム、ヨウ化ナトリウム等のアルカリ金属ハロゲン化物、又は、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム等のハロゲン化第4級アンモニウムと、水と、第2工程で得られた重合反応物とを0〜250℃、好ましくは40〜120℃で、約1〜150時間、混合し、次いで、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸で中和する方法等が挙げられる。
上記方法により、ポリアリーレンは固体として取り出すことができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。得られたポリアリーレンを、ゲル浸透クロマトグラフィにより分析(分析条件は下記のとおり)し、分析結果からポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を算出した。
<分析条件>
測定装置:HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
カラム:TSK−GEL(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相:臭化リチウム含有N,N−ジメチルホルムアミド(臭化リチウム濃度:10mmol/dm3
流量:0.5mL/分
検出波長:300nm
【0058】
[実施例1]
下記式

で示されるスミカエクセルPES 3600P(住友化学株式会社製;Mw=37,000、Mn=22,000:上記分析条件で測定)10.68gと亜鉛粉末2.60gとN−メチル−2−ピロリドン124.3gとを混合し、80℃に調整した。メタンスルホン酸72mgとN−メチル−2−ピロリドン4.7gから成る溶液を加え、80℃で2時間撹拌した。20℃に冷却後、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)を17.35g加えた(これを溶液Aとする。)。無水臭化ニッケル1.81gと2,2’−ビピリジン1.94gとN−メチル−2−ピロリドン129.2gとを混合し、65℃で2時間撹拌した(これを溶液Bとする。)。20℃に冷却後、溶液Bを溶液Aに注ぎ込み、20℃で6時間撹拌させながらカップリング重合の反応を行った後、1,5−シクロオクタジエン0.36gを加え、さらに24時間撹拌した。得られたポリアリーレンのMwは230,000g/mol、Mnは80,000g/molであった。溶液Aと溶液Bを混合した後、表1記載の反応時間おきにサンプリングリングされた重合反応物に含まれるポリアリーレンの重量平均分子量(以下、分子量経時変化と記すことがある)を示した。
【0059】
【表1】

【0060】
[参考例1]
実施例1に記載のスミカエクセルPES 3600P(住友化学株式会社製;Mw=37,000、Mn=22,000:上記分析条件で測定)10.68gと亜鉛粉末2.60gとN−メチル−2−ピロリドン124.3gとを混合し、80℃に調整した。メタンスルホン酸72mgとN−メチル−2−ピロリドン4.7gから成る溶液を加え、80℃で2時間撹拌した。20℃に冷却後、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)を17.35g加えた(これを溶液Aとする。)。
無水臭化ニッケル1.45gと2,2’−ビピリジン1.55gとN−メチル−2−ピロリドン129.2gとを混合し、65℃で2時間撹拌した(これを溶液Bとする。)。20℃に冷却後、溶液Bを溶液Aに注ぎ込み、20℃で9時間撹拌した。得られたポリアリーレンのMwは408,000g/mol、Mnは134,000g/molであった。
分子量経時変化は表2の通り。
【0061】
【表2】

【0062】
実施例1と参考例1の分子量経時変化を図1に示した。参考例1は、溶液Aと溶液Bとを混合して、6時間後には重量平均分子量が77,000(5時間後を基準にして約2倍の増加)であったが、わずか1時間後には370,000(5時間後を基準にして約10倍の増加)と急激に分子量が増加しているのに対し、実施例1では5時間後を基準にして、1時間おきに、1.74倍(6時間後)、2.40倍(7時間後)、2.83倍(8時間後)の増加にとどまり、穏やかに分子量増加していることがわかる。
【0063】
[実施例2]
実施例1に記載のスミカエクセルPES 3600P(住友化学株式会社製;Mw=37,000、Mn=22,000:上記分析条件で測定)10.68gと亜鉛粉末2.60gとN−メチル−2−ピロリドン124.3gとを混合し、80℃に調整した。メタンスルホン酸72mgとN−メチル−2−ピロリドン4.7gから成る溶液を加え、80℃で2時間撹拌した。20℃に冷却後、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)を17.35g加えた(これを溶液Aとする。)。
無水臭化ニッケル1.81gと2,2’−ビピリジン1.94gとN−メチル−2−ピロリドン129.2gとを混合し、65℃で2時間撹拌した(これを溶液Bとする。)。20℃に冷却後、溶液Bを溶液Aに注ぎ込み、20℃で6時間撹拌した後、1.1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン0.92gを加え、さらに24時間撹拌した。得られたポリアリーレンのMwは188,000g/mol、Mnは69,000g/molであった。分子量経時変化は表3の通り。
【0064】
【表3】

【0065】
[実施例3]
実施例1に記載のスミカエクセルPES 3600P(住友化学株式会社製;Mw=37,000、Mn=22,000:上記分析条件で測定)10.68gと亜鉛粉末2.60gとN−メチル−2−ピロリドン124.3gとを混合し、80℃に調整した。メタンスルホン酸72mgとN−メチル−2−ピロリドン4.7gから成る溶液を加え、80℃で2時間撹拌した。20℃に冷却後、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)を17.35g加えた(これを溶液Aとする。)。
無水臭化ニッケル1.81gと2,2’−ビピリジン1.94gとN−メチル−2−ピロリドン129.2gとを混合し、65℃で2時間撹拌した(これを溶液Bとする。)。20℃に冷却後、溶液Bを溶液Aに注ぎ込み、20℃で6時間撹拌した後、ピリジン1.97gを加え、さらに24時間撹拌した。得られたポリアリーレンのMwは201,000g/mol、Mnは72,000g/molであった。分子量経時変化は表4の通り。
【0066】
【表4】

【0067】
[実施例4]
実施例1に記載のスミカエクセルPES 3600P(住友化学株式会社製;Mw=37,000、Mn=22,000:上記分析条件で測定)10.68gと亜鉛粉末2.60gとN−メチル−2−ピロリドン124.3gとを混合し、80℃に調整した。メタンスルホン酸72mgとN−メチル−2−ピロリドン4.7gから成る溶液を加え、80℃で2時間撹拌した。20℃に冷却後、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)を17.35g加えた(これを溶液Aとする。)。
無水臭化ニッケル1.81gと2,2’−ビピリジン1.94gとN−メチル−2−ピロリドン129.2gとを混合し、65℃で2時間撹拌した(これを溶液Bとする。)。20℃に冷却後、溶液Bを溶液Aに注ぎ込み、20℃で6時間撹拌した後、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン1.26gを加え、さらに24時間撹拌した。
得られたポリアリーレンのMwは348,000g/mol、Mnは117,000g/molであった。分子量経時変化は表5の通り。
【0068】
【表5】

【0069】
[実施例5]
実施例1に記載のスミカエクセルPES 3600P(住友化学株式会社製;Mw=37,000、Mn=22,000:上記分析条件で測定)10.68gと亜鉛粉末2.60gとN−メチル−2−ピロリドン124.3gとを混合し、80℃に調整した。メタンスルホン酸72mgとN−メチル−2−ピロリドン4.7gから成る溶液を加え、80℃で2時間撹拌した。20℃に冷却後、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)を17.35g加えた(これを溶液Aとする。)。
無水臭化ニッケル1.81gと2,2’−ビピリジン1.94gとN−メチル−2−ピロリドン129.2gとを混合し、65℃で2時間撹拌した(これを溶液Bとする。)。20℃に冷却後、溶液Bを溶液Aに注ぎ込み、20℃で6時間撹拌した後、1,3−ジピリジルプロパン2.46gを加え、さらに24時間撹拌した。得られたポリアリーレンのMwは320,000g/mol、Mnは109,000g/molであった。分子量経時変化は表6の通り。
【0070】
【表6】

【0071】
[実施例6]
実施例5の重合条件において、以下の手順で分子量をMw200,000g/mol程度に制御した。実施例1に記載のスミカエクセルPES 3600P(住友化学株式会社製;Mw=37,000、Mn=22,000:上記分析条件で測定)10.68gと亜鉛粉末2.60gとN−メチル−2−ピロリドン124.3gとを混合し、80℃に調整した。メタンスルホン酸72mgとN−メチル−2−ピロリドン4.7gから成る溶液を加え、80℃で2時間撹拌した。20℃に冷却後、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)を17.35g加えた(これを溶液Aとする。)。無水臭化ニッケル1.81gと2,2’−ビピリジン1.94gとN−メチル−2−ピロリドン129.2gとを混合し、65℃で2時間撹拌した(これを溶液Bとする。)。20℃に冷却後、溶液Bを溶液Aに注ぎ込み、20℃で6時間撹拌した後、1,3−ジピリジルプロパン2.46gを加え、分子量経時変化をGPCで追跡しながら撹拌継続した。反応時間12時間でMw200,000g/mol付近であることが判明したため、水10gを滴下し、重合反応を停止させた。得られたポリアリーレンのMwは194,000g/mol、Mnは72,000g/molであった。分子量経時変化は表7の通り。
【0072】
【表7】

【0073】
[実施例7]
実施例6と同様にして溶液A及び溶液Bを混合し、20℃で6時間撹拌した後、1,3−ジピリジルプロパン2.46gを加え、反応時間(溶液A及び溶液Bを混合した後の時間)が10時間経過した時点でメタノール360mlを加えたのち、6mol/L塩酸360mLを加えて1時間撹拌すると、重合反応物が10時間経過時点付近の分子量を有するポリアリーレンを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の製造方法によれば、カップリング重合が進行しても、カップリング重合の重合反応物に含まれるポリアリーレンの分子量が急激に増加することを抑制することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属錯体存在下、下記式(1)

(式中、Arは、2価の芳香族基を表わす。ここで、2価の芳香族基は、
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基;
イオン交換基;及び
保護されたイオン交換基;
からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基を有していてもよい。
Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表わす。)
で示される芳香族ジハライドをカップリング重合するポリアリーレンの製造方法であって、下記第1工程及び第2工程を有することを特徴とするポリアリーレンの製造方法。
第1工程:遷移金属錯体存在下、該芳香族ジハライドをカップリング重合する工程。
第2工程:該遷移金属錯体に含まれる配位子とは異なる化合物であって、π型化合物、含窒素化合物及び含燐化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、第1工程で得られた重合反応物に混合する工程。
【請求項2】
芳香族ジハライドに含まれるArが、イオン交換基及び保護されたイオン交換基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する2価の芳香族基であることを特徴とする請求項1記載のポリアリーレンの製造方法。
【請求項3】
芳香族ジハライドが、下記式(2)

(式中、Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表わす。Aは、1つもしくは2つの炭素数1〜20の炭化水素基と結合したアミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表わす。ここで、該炭化水素基及びアルコキシ基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。
Rは、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基又はシアノ基を表わす。ここで、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。Rが複数の場合、Rは同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。また、隣接する2つのRが結合して環を形成していてもよい。kは0〜3の整数を表わす。)
で示されるジハロビフェニル化合物であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
第2工程に用いられる重合反応物に含まれるポリアリーレンの重量平均分子量が、10000以上100000未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。
【請求項5】
第2工程に用いられる重合反応物に含まれるポリアリーレンが、第2工程で得られる混合物に含まれる所望のポリアリーレンに対して10〜70%の重量平均分子量であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。
【請求項6】
芳香族ジハライドとして、下記式(3)

(式中、Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表わす。a、b及びcは、それぞれ独立に、0又は1を表わし、nは5以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、2価の芳香族基を表わす。ここで、2価の芳香族基は、
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜10のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;及び
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基
からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基を有していてもよい。
及びYは、それぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。
及びZは、それぞれ独立に、酸素又は硫黄原子を表わす。)
で示される重合体をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のポリアリーレンの製造方法。
【請求項7】
遷移金属錯体が、ハロゲン化ニッケル及び含窒素二座配位子から得られるものを亜鉛で還元して調製された遷移金属錯体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のポリアリーレンの製造方法。
【請求項8】
第1工程が、
ハロゲン化ニッケル及び含窒素二座配位子を溶媒中で溶解する(1−1)工程、
芳香族ジハライド、ハロゲン化ニッケル及び亜鉛を混合する(1−2)工程、並びに、
(1−1)工程で得られた溶解液と、(1−2)工程で得られた混合液とを混合し、該芳香族ジハライドをカップリング重合する(1−3)工程、
を含む工程であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載のポリアリーレンの製造方法。
【請求項9】
第2工程で得られた混合物に、π型化合物、含窒素化合物又は含燐化合物とは異なる化合物であって、水、酸素、アルコール、酸及び塩基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応阻害成分を、さらに混合する第3工程を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載のポリアリーレンの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−159407(P2010−159407A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278280(P2009−278280)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】