説明

ポリアルキレングリコールおよびその製造方法およびその用途

【課題】従来の顔料分散剤と比較して十分なカーボンブラックの分散性能を有するポリアルキレングリコールおよび有害物質の含有量の少ないポリアルキレングリコール組成物を提供する。
【解決手段】本発明のポリアルキレングリコールは、置換または無置換のフェノール、ナフトール、ベンジルアルコール、アニリン、ナフチルアミン、ベンジルアミンにアルキレンオキサイドを1.5〜5モル付加してアルキレンオキサイド付加物を製造する工程(工程A)と、上記工程Aの後に、水分や、反応液中の副生成物であるアルキレングリコールや未反応の芳香族化合物(i)やその他の不純物を除去するための精製工程(工程P)と、得られたアルキレンオキサイド付加物に更にアルキレンオキサイドを付加する工程を必須とする製造方法により製造されるポリアルキレングリコールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレングリコールに関する。より具体的には、顔料の分散性能に優れたポリアルキレングリコールに関する。
【0002】
本発明はまた、有害物質の含有量の少ない、顔料の分散性能に優れたポリアルキレングリコール組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
数千年もの昔から黒色着色剤として使われ続けているカーボンブラックは、顔料の中でも表面積が極めて大きく粒子が小さいため、分散の難易度が高く、微分散は非常に困難であることが知られている。
このようなカーボンブラックの分散剤として、スチレン−アクリル酸共重合体等が知られている(例えば特許文献1)。しかし、上記重合体はアニオン性である為、例えばカチオン性の添加剤とは併用し難く、配合に制約があるとの問題があった。
また、近年の安全に対する嗜好の高まりにより、例えばカーボンブラックを使い捨て食器の顔料等の人体に直接触れる用途へ使用する場合には、分散剤には有害物質が実質的に含まれていないことが要求される。よって、より有害物質の含有量が少ないカーボンブラックの分散剤が要求されてきている。また、種々の分散剤が開発されているにもかかわらず、依然として更なるカーボンブラックの分散性能を向上する要求が大きくなってきている。
【0004】
一方、ポリアルキレングリコールとしては、フェノール類にアルキレンオキサイドを付加して得られる化合物が知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−285632号公報
【特許文献2】特開平5−111546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の顔料分散剤と比較して良好なカーボンブラックの分散性能を有するポリアルキレングリコールを提供することにある。本発明の別の目的は、従来と比較して良好なカーボンブラックの分散性能を有し、危険物質の含有量の少ないポリアルキレングリコール組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポリアルキレングリコールは、下記一般式(1)、(2)のいずれかで表されるポリアルキレングリコールであって、該ポリアルキレングリコールは芳香族化合物にアルキレンオキサイドを1.5〜5モル付加してアルキレンオキサイド付加物を製造する工程(工程Aとも言う)と、上記工程Aの後に、水分や、反応液中の副生成物であるアルキレングリコールや未反応の芳香族化合物(i)やその他の不純物を除去するための精製工程(工程Pとも言う)と、得られたアルキレンオキサイド付加物に更にアルキレンオキサイドを付加する工程(工程Bとも言う)を必須とする製造方法により製造されるものであり、上記芳香族化合物は、置換または無置換のフェノール、ナフトール、ベンジルアルコール、アニリン、ナフチルアミン、ベンジルアミンである、ポリアルキレングリコールである。
【0008】
【化1】

【0009】

上記一般式(1)において、Arは置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、ベンジル基を表し、Rはエチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基を表し、nは10を超えて100未満の数を表す、
【0010】
【化2】

【0011】

上記一般式(2)において、Arは置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、ベンジル基を表し、Rはエチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基を表し、nは0を超えて100未満の数を表し、nは0以上50未満の数を表し、nとnの合計は10を超えて100未満の数を表し、Rはnが0のとき炭素数1〜4のアルキル基を表し、nが0を超えるときは水素原子を表す。
【0012】
本発明の別の局面によれば、ポリアルキレングリコール組成物が提供される。本発明のポリアルキレングリコール組成物は、下記一般式(1)、(2)のいずれかで表されるポリアルキレングリコールを含む組成物であって、フェノール、ナフトール、ベンジルアルコール、アニリン、ナフチルアミン、ベンジルアミン、およびこれらの芳香族環に結合する水素原子の一部または全部が置換された化合物の合計が30ppm未満である、ポリアルキレングリコール組成物である。
【0013】
【化3】

【0014】

上記一般式(1)において、Arは置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、ベンジル基を表し、Rはエチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基を表し、nは10を超えて100未満の数を表す、
【0015】
【化4】

【0016】

上記一般式(2)において、Arは置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、ベンジル基を表し、Rはエチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基を表し、nは0を超えて100未満の数を表し、nは0以上50未満の数を表し、nとnの合計は10を超えて100未満の数を表し、Rはnが0のとき炭素数1〜4のアルキル基を表し、nが0を超えるときは水素原子を表す。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カーボンブラックの分散性能に優れたポリアルキレングリコールを提供することができる。また、本発明によれば、従来と比較して良好なカーボンブラックの分散性能を有し、危険物質の含有量の少ないポリアルキレングリコール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔ポリアルキレングリコール〕
本発明のポリアルキレングリコールは、下記一般式(1)または下記一般式(2)のいずれかで表される構造を有することを特徴としている。
【0019】
【化5】

【0020】

上記一般式(1)において、Arは置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、ベンジル基を表し、Rはエチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基を表し、nは10を超えて100未満の数を表す、
【0021】
【化6】

【0022】

上記一般式(2)において、Arは置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、ベンジル基を表し、Rはエチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基を表し、nは0を超えて100未満の数を表し、nは0以上50未満の数を表し、nとnの合計は10を超えて100未満の数を表し、Rはnが0のとき炭素数1〜4のアルキル基を表し、nが0を超えるとき水素原子を表す。
【0023】
本発明において、置換のフェニル基とは、ポリアルキレングリコール鎖と結合する酸素原子または窒素原子を含む有機基以外の置換基が芳香族環の炭素原子と結合しているフェニル基を表す。置換のナフチル基も同様に、ポリアルキレングリコール鎖と結合する酸素原子または窒素原子を含む有機基以外の置換基が芳香族環の炭素原子と結合しているナフチル基を表す。
【0024】
上記置換のフェニル基は、好ましくは下記一般式(3−1)で表される構造の化合物である。
【0025】
【化7】

【0026】

上記一般式(3−1)において、R〜Rは、それぞれ独立に有機基を表す。また、一般式(3−1)の構造は、一般式(3−1)の構造式に併記した破線矢印の指し示す、芳香環の炭素原子を介して、ポリアルキレングリコール鎖と結合する酸素原子または窒素原子と結合する。
【0027】
上記置換のベンジル基は、好ましくは下記一般式(3−2)で表される構造の化合物である。
【0028】
【化8】

【0029】

上記一般式(3−2)において、R〜Rは、それぞれ独立に有機基を表す。また、一般式(3−2)の構造は、一般式(3−2)の構造式に併記した破線矢印の指し示す、メチレン基の炭素原子を介して、ポリアルキレングリコール鎖と結合する酸素原子または窒素原子と結合する。
【0030】
上記置換のナフチル基は、好ましくは下記一般式(3−3)〜(3−4)で表される構造の化合物である。
【0031】
【化9】

【0032】

上記一般式(3−3)〜(3−4)において、R〜Rは、それぞれ独立に有機基を表す。また、一般式(3−3)〜(3−4)の構造は、それぞれ一般式に併記した破線矢印の指し示す、芳香環の炭素原子を介して、ポリアルキレングリコール鎖と結合する酸素原子または窒素原子と結合する。
【0033】
上記ポリアルキレングリコール鎖と結合する酸素原子または窒素原子を含有する有機基以外の有機基、および一般式(3−1)、(3−2)におけるR〜Rを表す有機基、および一般式(3−3)、(3−4)におけるR〜Rを表す有機基としては、炭素数1〜4の有機基が好ましく、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アシル基、エーテル基、アミド基、エステル基、ケトン基等である。上記ポリアルキレングリコール鎖と結合する酸素原子または窒素原子を含有する有機基以外の有機基、一般式(3−1)、(3−2)におけるR〜Rを表す有機基、一般式(3−3)、(3−4)におけるR〜Rを表す有機基の炭素数が4を超えると、得られるポリアルキレングリコールの水溶性の低下や水溶液中の増粘等により取り扱い性が悪化する虞がある。
【0034】
上記一般式(1)または(2)において、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基は無置換であることが(すなわち、例えばフェニル基、ナフチル基において、フェニル環、ナフチル環を構成する炭素原子がポリアルキレングリコール鎖と結合する酸素原子または窒素原子を含有する有機基以外に置換基を有さないことであり、例えばベンジル基において、フェニル環を構成する炭素原子がポリアルキレングリコール鎖と結合する酸素原子を含有する有機基と結合するメチレン基以外に置換基を有さず、ベンジル基を構成するメチレン基がベンジル基を構成するフェニル基とポリアルキレングリコール鎖と結合する酸素原子を含有する有機基以外に置換基を有さないことである)、比較的低添加量でカーボンブラックの分散性能が向上する傾向にあることから更に好ましい。従って、例えば上記一般式(3−1)において、R〜Rは水素原子であることが更に好ましい。
【0035】
本発明のポリアルキレングリコールは、フェノール、ナフトール、ベンジルアルコール、アニリン、ナフチルアミン、ベンジルアミン、およびこれらの芳香族環に結合する水素原子の一部または全部が置換された化合物(芳香族化合物(i)とも言う)にアルキレンオキサイドを1.5〜5モル付加してアルキレンオキサイド付加物を製造する工程(以下、工程Aとも言う)と、上記工程Aの後に、水分や、反応液中の副生成物であるアルキレングリコールや未反応の芳香族化合物(i)やその他の不純物を除去するための精製工程(工程Pとも言う)と、得られたアルキレンオキサイド付加物に更にアルキレンオキサイドを付加する工程(以下、工程Bとも言う)を必須とする製造方法により製造されるものであることが好ましい。そのように製造することで、カーボンブラックの分散性能が向上する傾向にある、また、原料の芳香族化合物(i)の残存量を効果的に低減することが可能になる。
【0036】
(工程A)
工程Aは、上記の通り、芳香族化合物(i)にアルキレンオキサイドを1.5〜5モル付加したアルキレンオキサイド付加物を製造する工程である。
上記工程Aは、芳香族化合物(i)とアルキレンオキサイドを無触媒で、または触媒存在下で反応させる。反応速度の観点から、工程Aは触媒存在下で行うことが好ましい。好ましい触媒としては酸触媒または塩基性触媒である。
【0037】
上記酸触媒としては、硫酸、リン酸などの鉱酸、四塩化スズ、三フッ化ホウ素等のルイス酸が挙げられるが、中でも四塩化スズ、五塩化アンチモン、三フッ化ホウ素またはその錯体が、ポリアルキレングリコールのカーボンブラックの分散性能が向上することから好ましい。上記塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0038】
上記工程Aは、反応圧力としては、常圧から20Kg/cmG、好ましくは1〜10Kg/cmGである。また、反応温度としては好ましくは20〜180℃、更に好ましくは30〜160℃で行なわれる。
【0039】
上記工程Aは、通常、芳香族化合物(i)を反応器に仕込む工程(A−1)、芳香族化合物(i)1モルに対して、1.5〜5モルのアルキレンオキサイドを反応器に添加する工程(A−2)と、芳香族化合物(i)とアルキレンオキサイドを反応させる工程(A−3)を含む。
好ましくは更に、反応触媒を添加する工程(A−4)を含む。(A−4)の工程を含むことにより、反応効率が向上し、不純物を低減させることができる為、得られるポリアルキレングリコールのカーボンブラックの分散性能が向上する。
更に(A−2)または(A−3)の工程の前に、好ましくは(A−4)の工程の後に、水分等の不純物を除去する工程(A−5)を設けても良い。
上記(A−2)の工程と(A−3)の工程は同時に開始しても、(A−2)の工程よりも(A−3)の工程を後に開始しても良いが、(A−2)の工程終了後、(A−3)の工程を継続する(すなわち、(A−2)の工程よりも(A−3)の工程を後に終了させる)ことが好ましい。(A−2)の工程の後に、(A−3)の工程の全部または一部を行なうことにより、工程Bの前に芳香族化合物(i)1モルに対して、1.5〜5モルのアルキレンオキサイドを付加した化合物(アルキレンオキサイド付加物)を効率よく製造することが可能となる。そのようにして得られたアルキレンオキサイド付加物(芳香族化合物(i)1モルに対して、1.5〜5モルのアルキレンオキサイドを付加した化合物)を工程Bの原料として使用することにより、得られるポリアルキレングリコールのカーボンブラックの分散性能が顕著に向上する傾向にある。
また、工程(A−4)は、(A−2)の工程、(A−3)の工程の前に行なうことが好ましい。
【0040】
上記工程A、工程Bは、通常窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行なうことが好ましい。また、反応後に窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気下で保存しても良い。
上記工程A、工程Bは、好ましくは無溶媒で行なわれるが、溶媒を使用しても良い。溶媒を使用する場合、芳香族化合物(i)、アルキレンオキサイドを溶解できるものが好ましい。
【0041】
上記工程Aにおいて、芳香族化合物(i)は予め全量反応器に仕込む(初期仕込み)ことが好ましい。初期仕込みすることにより、付加モル数の分布が狭くなり、カーボンブラックの分散性が向上する。一方、アルキレンオキサイドは初期に全量添加しても、反応開始以後に徐々に反応器に添加しても良い。徐々に添加する場合は、回分式であっても連続式であっても良い。
【0042】
工程Aにより製造される上記アルキレンオキサイド付加物とは、上記芳香族化合物(i)の水酸基またはアミノ基に、アルキレンオキサイドを1.5〜5モル(上記芳香族化合物(i)1モルに対して)付加した化合物を表す。好ましくは2モル以上4.5モル以下である。5モルを超えると、工程Bを経て得られるポリアルキレングリコールのカーボンブラックの分散性能が低下する傾向にある。1.5モル未満であれば、カーボンブラックの分散性能が低下する傾向にあるうえ、芳香族化合物(i)の残存量が多くなる。
芳香族化合物(i)が水酸基またはアミノ基に起因する活性水素原子を2つ有する場合には、2モル以上が5モル以下が好ましく、該活性水素原子を3つ有する場合には、3モル以上5モル以下が好ましい。
【0043】
なお、上記工程Aは、更に複数の工程に分割することも本願の範囲である。すなわち、芳香族化合物(i)を予め水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等で中和する工程を含み、上記工程Aの原料として芳香族化合物(i)の塩を使用する形態や、芳香族化合物(i)を極少量のアルキレンオキサイドと反応させて、芳香族化合物(i)のアルキレンオキサイド付加物を上記工程Aの原料として使用する形態等が例示される。
【0044】
上記工程Aの後に、反応液中に触媒を除去する工程があっても良い。例えば、得られたアルキレンオキサイド付加物が水に不溶の場合、水等で洗浄後に静置し、有機層と水層とを分離し触媒を除去することができる。上記洗浄は、例えば攪拌槽やラインミキサーで、20〜150℃で行なうことができる。
【0045】
(工程P)
本発明のポリアルキレングリコールは、上記工程Aの後に、水分や、反応液中の副生成物であるアルキレングリコールや未反応の芳香族化合物(i)やその他の不純物を除去するための精製工程(工程Pとも言う)を行なうことを必須とする。「上記工程Aの後に行なう」とは、工程Aで得られたアルキレンオキサイド付加物(芳香族化合物(i)1モルに対して、1.5〜5モルのアルキレンオキサイドを付加した化合物)から不純物を除去することを意味するが、工程Bの為に、触媒を添加する場合には、添加した後で行なうことも可能である。例えば工程Bの為に、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等を添加(追加)する場合は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の添加後に行なうことが好ましい。また、上記精製工程(工程P)は、工程Bにおいて、工程Aで得られたアルキレンオキサイド付加物とアルキレンオキサイドを反応させる前に行なうことが好ましい。
【0046】
上記精製工程(工程P)は、工程Aで得られたアルキレンオキサイド付加物を蒸留することにより精製しても良いが、通常減圧または常圧で、室温以上で不純物を除去することにより行なう。好ましくは、減圧条件下で不純物を留出(留去)させることにより行なう。
減圧とは、例えば0.1〜1000hPaである。
上記精製工程(工程P)は、好ましくは20〜160℃で行なわれる。更に好ましくは60〜120℃である。
上記工程Bにおける反応液中に水分や副生成物であるアルキレングリコールや未反応の芳香族化合物(i)が存在すると、上記工程Bを経て得られるポリアルキレングリコールのカーボンブラックの分散性能が低下する傾向があるので、極力存在させないようにすることが好ましい。また、上記工程Bの終了後は、ポリアルキレングリコールの粘性が増加するため、未反応の芳香族化合物(i)が更に除外し難くなる。その場合、用途によってはポリアルキレングリコールが使用できなくなる為、工程Bの開始前に極力存在させないようにすることが好ましい。
【0047】
また、芳香族化合物(i)の中には変質しやすい化合物も多く、例えばキノン類やN−オキシド類として残存する場合もあるが、その場合は色調が悪化したり、当該キノン類等が経時的に芳香族化合物(i)に戻ってしまい品質や安全性が低下する等の問題が発生する。一方、本製造工程によれば、工程Pにより除去可能である為、上記問題を回避することが可能となるので好ましい。
【0048】
(芳香族化合物(i))
上記芳香族化合物(i)は、置換または無置換のフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、ベンジルアルコール、アニリン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、ベンジルアルコール、ベンジルアミンから選ばれる化合物である。
本発明において、置換のフェノール、置換の1−ナフトール、置換の2−ナフトール、置換のベンジルアルコールとは、フェノールやナフトール、ベンジルアルコールにおいて、芳香族環に結合する水素原子の一部または全部が置換された化合物であり、少なくとも一つのフェノール性の水酸基を有する。置換のフェノール、置換の1−ナフトール、置換の2−ナフトール、置換のベンジルアルコールとしては、下記一般式(4−1)〜(4−4)で表される構造の化合物であることが好ましい。
【0049】
【化10】

【0050】

上記一般式(4−1)、(4−2)においてR〜Rは、それぞれ独立に水素原子または有機基を表す。上記一般式(4−3)、(4−4)において、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子または有機基を表す。但し、(4−1)〜(4−2)においてR〜Rのいずれかは水素原子でなく、(4−3)〜(4−4)においてR〜Rのいずれかは水素原子でなく、
本発明において、置換のアニリン、置換の1−ナフチルアミン、置換の2−ナフチルアミン、置換のベンジルアミンは、アニリン、ナフチルアミン、ベンジルアミンにおいて、芳香族環に結合する水素原子の一部または全部が置換された化合物、またはアミノ基の活性水素の内一部が置換された化合物であり、少なくとも一つの1級または2級のアミノ基を有する。下記一般式(4−5)〜(4−8)で表される構造の化合物であることが好ましい。
【0051】
【化11】

【0052】

上記一般式(4−5)〜(4−8)においてRは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、但し、(4−5)〜(4−6)においてR〜Rのいずれかは水素原子でなく、(4−7)〜(4−8)においてR〜Rのいずれかは水素原子でなく、上記一般式(4−5)、(4−6)においてR〜Rは、それぞれ独立に水素原子または有機基を表し、上記一般式(4−7)、(4−8)において、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子または有機基を表す。
上記一般式(4−1)〜(4−8)において、R〜Rを表す有機基としては、炭素数1〜4の有機基が好ましく、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アシル基、エーテル基、アミド基、エステル基、ケトン基等である。上記ポリアルキレングリコール鎖と結合する酸素原子または窒素原子を含む有機基以外の有機基、および一般式(4−1)〜(4−8)におけるR〜Rを表す有機基の炭素数が4を超えると、カーボンブラックの分散性能が低下する傾向にある。
【0053】
芳香族化合物(i)1分子が有する水酸基、一級または二級アミノ基の合計は、3つ以下が好ましく、2つ以下が更に好ましく、1つが特に好ましい。
【0054】
上記アルキレンオキサイド(工程A、工程Bで使用するアルキレンオキサイド)はエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドまたはブチレンオキサイドである。好ましくはエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドである。工程A、工程Bにおいては、エチレンオキサイドを必須として付加することがカーボンブラックの分散性能が向上するから好ましい。
【0055】
(工程B)
上記工程Aで得られたアルキレンオキサイド付加物に更にアルキレンオキサイドを付加する工程(工程B)において、アルキレンオキサイドは公知の方法により付加することができるが、好ましくは酸触媒または塩基性触媒触媒存在下で付加することが好ましい。特に好ましくは水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを使用する。
【0056】
工程Bは、反応圧力としては、好ましくは1〜30Kg/cmG、更に好ましくは2〜15Kg/cmGである。また、反応温度としては好ましくは100〜180℃、更に好ましくは120〜160℃で行なわれる。
【0057】
上記工程Bの後に、反応液中に触媒を除去する工程があっても良い。例えば、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム存在下で反応した場合、触媒を中和処理することができる。その際の中和剤としては硫酸、酢酸、あるいは活性白土等の固体酸を使用することができる。
【0058】
なお、上記工程Bは、更に複数の工程に分割することも本願の範囲である。すなわち、工程Aで得られたアルキレンオキサイド付加物を、工程Aの後にアルキレンオキサイドと反応させる工程を設けて、アルキレンオキサイドの付加モル数が5モルを超えるアルキレンオキサイド付加物を製造し(工程B前段)、該アルキレンオキサイド付加物を工程B(工程B後段)の原料として使用する形態等が例示される。
【0059】
上記工程Bにおいて、工程Aで得られたアルキレンオキサイド付加物は予め全量反応器に仕込む(初期仕込み)ことが好ましい。初期仕込みすることにより、付加モル数の分布が狭くなり、カーボンブラックの分散性が向上する。一方、アルキレンオキサイドは初期に全量添加しても、反応開始以後に徐々に反応器に添加しても良い
<ポリアルキレングリコール組成物>
本発明のポリアルキレングリコール組成物は、上記一般式(1)、(2)のいずれかで表されるポリアルキレングリコールを必須として含むことを特徴としている。上記一般式(1)、(2)のいずれかで表されるポリアルキレングリコールの含有量は、組成物100質量部に対し、1〜100質量部である。
本発明のポリアルキレングリコール組成物は、安定性性や取り扱い性を考慮して、水を含んでいても良い、水の含有量は、組成物100質量部に対し、0〜50質量部が好ましい。安定性向上の面からは5〜30質量部が好ましい。
【0060】
本発明のポリアルキレングリコール組成物は、フェノール、ナフトール、ベンジルアルコール、アニリン、ナフチルアミン、ベンジルアミン、およびこれらの芳香族環に結合する水素原子の一部または全部が置換された化合物(芳香族化合物(i))の含有量が少ないことが好ましい。芳香族化合物(i)の含有量が多いと、用途によっては使用できないこととなる。また、芳香族化合物(i)を多く含んで製造されるポリアルキレングリコールは、上記の通りカーボンブラックの分散性が低下する傾向にある。芳香族化合物(i)の含有量は30ppm未満であることが好ましく、20ppm未満であることがより好ましく、10ppm未満であることが更に好ましく、1ppm未満であることが特に好ましく、実質的に全く含まないことが最も好ましい。
【0061】
ポリアルキレングリコール組成物の保存安定性が向上することから、不純物のポリアルキレングリコールの含有量は組成物の固形分に対して8質量%未満が好ましく、5%未満が好ましく、3%未満が好ましい。また、製造の困難性の観点から、0.01%以上が好ましく、0.1%以上が好ましい。0.01%未満にする場合、工程が複雑になり、色調が悪化する傾向にある。
【0062】
本発明のポリアルキレングリコール組成物は、好ましくは上記の方法、すなわち芳香族化合物(i)にアルキレングリコールを1.5〜5モル付加してアルキレンオキサイド付加物を製造する工程と、得られたアルキレンオキサイド付加物に更にアルキレンオキサイドを付加する工程を必須とする製造方法により製造することが好ましい。
【0063】
〔製造方法〕
本発明のポリアルキレングリコールの製造方法は、上記〔ポリアルキレングリコール〕の箇所に記載した製造方法である。
【0064】
〔用途〕
本発明のポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール組成物は、顔料分散剤として使用可能であるが、水処理剤、繊維処理剤等の添加剤として用いられうる。
【0065】
<無機顔料分散剤>
本発明のポリアルキレングリコールやポリアルキレングリコール組成物は、無機顔料分散剤に添加することができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0066】
上記無機顔料分散剤中における、本発明のポリアルキレングリコールの含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。上記無機顔料分散剤は粉末状等の固体状、液体状のいずれでも構わない。
【0067】
上記無機顔料分散剤は、カーボンブラックの分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度カーボンブラックスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0068】
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【0069】
<水処理剤>
本発明のポリアルキレングリコールやポリアルキレングリコール組成物は、水処理剤に添加することができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いても良い。
【0070】
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0071】
上記水処理剤は、粉末状等の固体状、液体状のいずれでも構わない。
【0072】
<繊維処理剤>
本発明のポリアルキレングリコールやポリアルキレングリコール組成物は、繊維処理剤に添加することができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明のポリアルキレングリコールやポリアルキレングリコール組成物を含む。
【0073】
上記繊維処理剤における本発明のポリアルキレングリコールやポリアルキレングリコール組成物の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0074】
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0075】
本発明のポリアルキレングリコールやポリアルキレングリコール組成物と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明の重合体組成物1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
【0076】
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
【0077】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明のアミノ酸(塩)組成物と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明のポリアルキレングリコールやポリアルキレングリコール組成物と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
上記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
上記繊維処理剤は、粉末状等の固体状、液体状のいずれでも構わない。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
【0079】
(固形分の測定)
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンでポリアルキレングリコール組成物(ポリアルキレングリコール組成物1.0g+水3.0g)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
【0080】
(芳香族化合物の測定方法)
ガスクロマトグラフィーを用いて定量した。測定条件は以下の通り行なった。
装置:Shimadzu製GC−15A、J&W社キャピラリーカラムDB−1(0.53mmφ×30m)
条件:40℃で5min保持、10℃/min昇温、200℃で5min保持
(ポリエチレングリコールの測定条件)
不純物のポリエチレングリコールは高速液体クロマトグラフィーを用いて定量を行なった。測定条件は以下の通り行なった。
使用カラム:Shodex GF−1G 7B 昭和電工社製
GF−310 HQ
溶離液:水/アセトニトリル=98/2(質量%)
サンプル:上記溶離液にて反応生成物濃度が0.1質量%となるように調整したものを使用した。
サンプル打ち込み量:250μL
流速:1mL/分
カラム温度:40℃
検出器:Waters 2414 RI検出器
System:Waters alliance 2695
解析ソフト:Waters Empoer2(標準パッケージ/GPCオプション)
検量線作成用標準物質:ポリエチレングリコール
(ポリアルキレングリコール化合物の測定条件)
本発明のポリアルキレングリコールは、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
測定装置:東ソー株式会社製 8020シリーズ
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C1 UG120
温度:40.0℃
溶離液:10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液
(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=45/55(体積比)
流速:1.0ml/min
検出器:RI、UV(検出波長215nm)
(カーボンブラック分散能の評価法)
(1)グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.60g、48%水酸化ナトリウム5.00gに純水を加えて600.0gとした後、48%水酸化ナトリウムでpH10とし、グリシンバッファーを調製した。
(2)次に、このグリシンバッファー6.00gとエタノール11.10gに純水を加えて1000.0gとし、分散液を調製した。また、ポリアルキレングリコール化合物の1.0%水溶液を10gほど調製した。
(3)100mlのビーカーにカーボンブラック0.09gを取り、ここに上記分散液81.0g、およびポリアルキレングリコール化合物水溶液9.0gを加え、試験液とした。
(4)ここに、長さ30mmのスターラーチップを入れて500rpmで5分間攪拌した。攪拌を止めて5分間静置した後、試験液の上澄み液を5mlのホールピペットで採取した。
(5)この濁りをUV検出器(波長380nm)で測定し、得られた吸光度の数値をカーボンブラック分散能とした。
【0081】
(実施例1)
(工程A)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、フェノール94.0g(1モル)、付加反応触媒として水酸化ナトリウム0.16g(500ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキシド220.0g(5モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、フェノールに平均5モルのエキレンオキシドが付加したポリアルキレングリコール(1)(アルキレンオキサイド付加物(1))を得た。
(工程P)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、ポリアルキレングリコール(1)を314.0g(1モル)、付加反応触媒として48%水酸化ナトリウム水溶液0.32g(500ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換した後100℃まで昇温した。次いで、撹拌しながら反応容器の上部からガラス製トラップを装着した配管を接続し、真空ポンプを用いて反応容器内を6.65×103Pa(50Torr)に減圧した。その後エタノールドライアイス浴でガラス製トラップを冷却しながら、同温度で1時間不純物の除去を行った。
(工程B)
不純物の除去終了後、窒素雰囲気下で130℃まで昇温した。そして安全圧下で130℃を保持したままエチレンオキシド308.0g(7モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、フェノールに平均12モルのエキレンオキシドが付加した本発明のポリアルキレングリコール(2)を得た。
【0082】
(実施例2)
(工程A)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、フェノール94.0g(1モル)、付加反応触媒として水酸化ナトリウム0.16g(500ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキシド220.0g(5モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、フェノールに平均5モルのエキレンオキシドが付加したポリアルキレングリコール(1)(アルキレンオキサイド付加物(1))を得た。
(工程P)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、ポリアルキレングリコール(1)を314.0g(1モル)、付加反応触媒として48%水酸化ナトリウム水溶液0.28g(300ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換した後100℃まで昇温した。次いで、撹拌しながら反応容器の上部からガラス製トラップを装着した配管を接続し、真空ポンプを用いて反応容器内を6.65×103Pa(50Torr)に減圧した。その後エタノールドライアイス浴でガラス製トラップを冷却しながら、同温度で1時間不純物の除去を行った。
(工程B)
不純物の除去終了後、窒素雰囲気下で130℃まで昇温した。そして安全圧下で130℃を保持したままエチレンオキシド660.0g(15モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、フェノールに平均20モルのエキレンオキシドが付加した本発明のポリアルキレングリコール(3)を得た。
【0083】
(実施例3)
(工程A)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、フェノール94.0g(1モル)、付加反応触媒として水酸化ナトリウム0.16g(500ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキシド220.0g(5モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、フェノールに平均5モルのエキレンオキシドが付加したポリアルキレングリコール(1)(アルキレンオキサイド付加物(1))を得た。
(工程P)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、ポリアルキレングリコール(1)を314.0g(1モル)、付加反応触媒として48%水酸化ナトリウム水溶液0.63g(200ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換した後100℃まで昇温した。次いで、撹拌しながら反応容器の上部からガラス製トラップを装着した配管を接続し、真空ポンプを用いて反応容器内を6.65×103Pa(50Torr)に減圧した。その後エタノールドライアイス浴でガラス製トラップを冷却しながら、同温度で1時間不純物の除去を行った。
(工程B)
不純物の除去終了後、窒素雰囲気下で130℃まで昇温した。そして安全圧下で130℃を保持したままエチレンオキシド1980.0g(45モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、フェノールに平均50モルのエキレンオキシドが付加した本発明のポリアルキレングリコール(4)を得た。
【0084】
(実施例4)
(工程A)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、ベンジルアルコール108.0g(1モル)、付加反応触媒として水酸化ナトリウム0.16g(500ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキシド220.0g(5モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、ベンジルアルコールに平均5モルのエキレンオキシドが付加したポリアルキレングリコール(5)(アルキレンオキサイド付加物(5))を得た。
(工程P)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、ポリアルキレングリコール(5)を328.0g(1モル)、付加反応触媒として48%水酸化ナトリウム水溶液0.62g(200ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換した後100℃まで昇温した。次いで、撹拌しながら反応容器の上部からガラス製トラップを装着した配管を接続し、真空ポンプを用いて反応容器内を6.65×103Pa(50Torr)に減圧した。その後エタノールドライアイス浴でガラス製トラップを冷却しながら、同温度で1時間不純物の除去を行った。
(工程B)
不純物の除去終了後、窒素雰囲気下で130℃まで昇温した。そして安全圧下で130℃を保持したままエチレンオキシド1980.0g(45モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、ベンジルアルコールに平均50モルのエキレンオキシドが付加した本発明のポリアルキレングリコール(6)を得た。
【0085】
(実施例5)
(工程A)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、アニリン93.0g(1モル)、付加反応触媒として水酸化ナトリウム0.16g(500ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキシド220.0g(5モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、アニリンに平均5モルのエキレンオキシドが付加したポリアルキレングリコール(7)(アルキレンオキサイド付加物(7))を得た。
(工程P)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、ポリアルキレングリコール(7)を313.0g(1モル)、付加反応触媒として48%水酸化ナトリウム水溶液0.63g(200ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換した後100℃まで昇温した。次いで、撹拌しながら反応容器の上部からガラス製トラップを装着した配管を接続し、真空ポンプを用いて反応容器内を6.65×103Pa(50Torr)に減圧した。その後エタノールドライアイス浴でガラス製トラップを冷却しながら、同温度で1時間不純物の除去を行った。
(工程B)
不純物の除去終了後、窒素雰囲気下で130℃まで昇温した。そして安全圧下で130℃を保持したままエチレンオキシド1980.0g(45モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、アニリンに平均50モルのエキレンオキシドが付加した本発明のポリアルキレングリコール(8)を得た。
【0086】
(実施例6)
(工程A)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、m−クレゾール108.0g(1モル)、付加反応触媒として水酸化ナトリウム0.16g(500ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキシド220.0g(5モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、m−クレゾールに平均5モルのエキレンオキシドが付加したポリアルキレングリコール(9)(アルキレンオキサイド付加物(9))を得た。
(工程P)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、ポリアルキレングリコール(9)を328.0g(1モル)、付加反応触媒として48%水酸化ナトリウム水溶液0.62g(200ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換した後100℃まで昇温した。次いで、撹拌しながら反応容器の上部からガラス製トラップを装着した配管を接続し、真空ポンプを用いて反応容器内を6.65×103Pa(50Torr)に減圧した。その後エタノールドライアイス浴でガラス製トラップを冷却しながら、同温度で1時間不純物の除去を行った。
(工程B)
不純物の除去終了後、窒素雰囲気下で130℃まで昇温した。そして安全圧下で130℃を保持したままエチレンオキシド1980.0g(45モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、m−クレゾールに平均50モルのエキレンオキシドが付加した本発明のポリアルキレングリコール(10)を得た。
【0087】
(実施例7)
(工程A)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、カテコール110.0g(1モル)、付加反応触媒として水酸化ナトリウム0.17g(500ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキシド220.0g(5モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、カテコールに平均5モルのエキレンオキシドが付加したポリアルキレングリコール(11)(アルキレンオキサイド付加物(11))を得た。
(工程P)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、ポリアルキレングリコール(11)を330.0g(1モル)、付加反応触媒として48%水酸化ナトリウム水溶液0.62g(200ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換した後100℃まで昇温した。次いで、撹拌しながら反応容器の上部からガラス製トラップを装着した配管を接続し、真空ポンプを用いて反応容器内を6.65×103Pa(50Torr)に減圧した。その後エタノールドライアイス浴でガラス製トラップを冷却しながら、同温度で1時間不純物の除去を行った。
(工程B)
不純物の除去終了後、窒素雰囲気下で130℃まで昇温した。そして安全圧下で130℃を保持したままエチレンオキシド1980.0g(45モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、カテコールに平均50モルのエキレンオキシドが付加した本発明のポリアルキレングリコール(12)を得た。
【0088】
(実施例8)
(工程A)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、α−ナフトール144.0g(1モル)、付加反応触媒として水酸化ナトリウム0.18g(500ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキシド220.0g(5モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、α−ナフトールに平均5モルのエキレンオキシドが付加したポリアルキレングリコール(11)(アルキレンオキサイド付加物(11))を得た。
(工程P)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、ポリアルキレングリコール(13)を364.0g(1モル)、付加反応触媒として48%水酸化ナトリウム水溶液0.60g(200ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換した後100℃まで昇温した。次いで、撹拌しながら反応容器の上部からガラス製トラップを装着した配管を接続し、真空ポンプを用いて反応容器内を6.65×103Pa(50Torr)に減圧した。その後エタノールドライアイス浴でガラス製トラップを冷却しながら、同温度で1時間不純物の除去を行った。
(工程B)
不純物の除去終了後、窒素雰囲気下で130℃まで昇温した。そして安全圧下で130℃を保持したままエチレンオキシド1980.0g(45モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、α−ナフトールに平均50モルのエキレンオキシドが付加した本発明のポリアルキレングリコール(14)を得た。
【0089】
(比較例1)
(工程A)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、フェノール94.0g(1モル)、付加反応触媒として水酸化ナトリウム0.46g(200ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキシド2200.0g(50モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、フェノールに平均50モルのエキレンオキシドが付加した比較ポリアルキレングリコール(R1)を得た。
【0090】
(比較例2)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、カテコール110.0g(1モル)、付加反応触媒として水酸化ナトリウム0.46g(200ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキシド2200.0g(50モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、カテコールに平均50モルのエキレンオキシドが付加した比較ポリアルキレングリコール(R2)を得た。
【0091】
(比較例3)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、アニリン93.0g(1モル)、付加反応触媒として水酸化ナトリウム0.46g(200ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキシド2200.0g(50モル)を反応器内に導入し、付加反応が完結するまでその温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、アニリンに平均5モルのエキレンオキシドが付加した比較ポリアルキレングリコール(R3)を得た。
【0092】
(実施例9)
上記実施例及び比較例で得られたポリアルキレングリコール(2)、(3)、(4)、(6)、(8)、(10)、(12)、(14)、(R1)、(R2)、(R3)のカーボンブラック分散能を上記評価方法に従って測定した。測定結果を表1に示す。表中の「検出されない」とは、測定した結果、0ppmであったことを表す。
【0093】
【表1】

【0094】

本発明のポリアルキレングリコールは、従来のポリアルキレングリコールと比較して良好なカーボンブラックの分散能を示すことが明らかとなった。具体的には、本発明のポリアルキレングリコールは、工程A、P、Bを必須とする製造方法により製造されることにより、当該製造方法によらない従来のポリアルキレングリコールと比較してカーボンブラックの分散能が顕著に向上することが明らかとなった。
また、従来と比較して芳香族化合物の残存量も少ないことから、安全性に対する要求が高い用途にも適用可能であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール組成物は、高いカーボンブラックの分散性を有する。したがって、顔料分散剤等に用いた場合に特に優れた性能を発揮できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、(2)のいずれかで表されるポリアルキレングリコールであって、
該ポリアルキレングリコールは芳香族化合物にアルキレンオキサイドを1.5〜5モル付加してアルキレンオキサイド付加物を製造する工程(工程A)と、
上記工程Aの後に、水分や、反応液中の副生成物であるアルキレングリコールや未反応の芳香族化合物(i)やその他の不純物を除去するための精製工程(工程P)と、
得られたアルキレンオキサイド付加物に更にアルキレンオキサイドを付加する工程(工程B)を必須とする製造方法により製造されるものであり、
上記芳香族化合物は、置換または無置換のフェノール、ナフトール、ベンジルアルコール、アニリン、ナフチルアミン、ベンジルアミンである、
ポリアルキレングリコール。
【化1】


一般式(1)において、Arは置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、ベンジル基を表し、Rはエチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基を表し、nは10を超えて100未満の数を表す、
【化2】


一般式(2)において、Arは置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、ベンジル基を表し、Rはエチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基を表し、nは0を超えて100未満の数を表し、nは0以上50未満の数を表し、nとnの合計は10を超えて100未満の数を表し、Rはnが0のとき炭素数1〜4のアルキル基を表し、nが0を超えるとき水素原子を表す。
【請求項2】
下記一般式(1)、(2)のいずれかで表されるポリアルキレングリコールを含む組成物であって、
フェノール、ナフトール、ベンジルアルコール、アニリン、ナフチルアミン、およびこれらの芳香族環に結合する水素原子の一部または全部が置換された化合物の合計が30ppm未満である、
ポリアルキレングリコール組成物。
【化3】


一般式(1)において、Arは置換または無置換のフェニル基、ナフチル基を表し、Rはエチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基を表し、nは10を超えて100未満の数を表す、
【化4】


一般式(2)において、Arは置換または無置換のフェニル基、ナフチル基を表し、Rはエチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基を表し、nは0を超えて100未満の数を表し、nは0以上50未満の数を表し、nとnは合計は10を超えて100未満の数を表し、Rはnが0のとき炭素数1〜4のアルキル基を表し、nが0を超えるとき水素原子を表す。
【請求項3】
請求項1に記載のポリアルキレングリコールを含む、無機顔料分散剤。

【公開番号】特開2010−163556(P2010−163556A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7777(P2009−7777)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】