説明

ポリウレタンの製造方法及びそれから得られたポリウレタンの用途

【課題】ポリウレタン弾性繊維、合成・人工皮革、TPU等の高機能ポリウレタンエラストマー用途に極めて有用であるポリウレタンおよびポリウレタンウレアを提供する。
【解決手段】(a)ポリオールの脱水縮合反応により得られ、1,3−プロパンジオール単位を含むポリエーテルポリオール、(b)ポリイソシアネート化合物、及び(c)鎖延長剤とからポリウレタンを製造するにおいて、非プロトン性極性溶媒の共存下において製造するポリウレタンの製造方法、並びに、上記ポリウレタンの製造方法によって製造されたポリウレタン、及び、上記ポリウレタンからなるフィルム及び繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンの製造方法、及びその製造方法から得られたポリウレタンの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン及びポリウレタンウレアは様々な分野で応用されているが、用途が多種多様なため、特に弾性機能等についての改良が望まれている。具体的には、室温時の弾性機能として、高い破断伸度、変形歪みに対する応力変動が小さいこと、伸縮時の応力のヒステリシス損失が小さいことが望まれており、さらに低温下での弾性回復性の改良が望まれている。
【0003】
これらの弾性機能の改良を目的として種々の結晶化しにくいジオールを用いてポリウレタン及びポリウレタンウレア中のソフトセグメントの結晶性を抑えるといった技術改良が行われているが、現状では上記弾性機能を十分に満足するまでには至っていない。
技術改良の一例としては、ポリ(1,2−プロピレンエーテル)グリコールが挙げられる。ポリ(1,2−プロピレンエーテル)グリコールは反復単位中にメチル基を有するために結晶化しにくい低コストのポリエーテルグリコールである。しかしながら、ポリ(1,2−プロピレンエーテル)グリコールから得られるポリウレタンエラストマーは、強度、伸度が低いという欠点を持ち、その用途が限られている。又、ポリウレタンの製造時に、ポリ(1,2−プロピレンエーテル)グリコールの水酸基が2級であるために反応性が低いといった問題を抱えている。又、ポリ(1,2−プロピレンエーテル)グリコールは分子量分布が非常に狭いために、狭すぎる分子量分布に由来してポリウレタン及びポリウレタンウレアエラストマーの性能によくない影響を及ぼすことが記載されている(非特許文献1)。
【0004】
そこで上述の問題を解決する手段として、ポリトリメチレンエーテルグリコールからポリウレタン又はポリウレタンウレアを製造することが試みられてきた。
例えば、ポリオキセタンポリマーから誘導されたポリウレタン及びポリウレタンウレアエラストマー組成物も報告されている。しかしながら、この方法から誘導されるポリオキセタン組成物は、モノマーの不安定性、コストの面、並びに、大量に商業的に入手できないため、アカデミックな考察対象であるにすぎず、工業的には問題が残されている(非特許文献2)。
【0005】
又、最近では、1,3−プロパンジオールの脱水縮合反応によって製造されたポリトリメチレンエーテルグリコールを用いて、溶媒を用いない方法で重合されるポリウレタン及びポリウレタンウレアエラストマー成形物についての報告がなされている(特許文献1)。
【非特許文献1】S.D.Seneker,「New Ultra−Low Monol Polyols with Unique High−Performance Characteristics」,Polyurethane Expo’96,305−313
【非特許文献2】Conjeevaram,et al.,J.Polymer Science,Polymer Chemistry Edition,28,429〜444(1985)
【特許文献1】特表2005−535744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、非特許文献2に記載のオキセタンから得られたポリエーテルポリオールを使用する際には、工業的に入手が不可能であり、溶媒として用いられているジメチルスルホキシドではポリウレタンウレアの溶解性が十分でないため、エラストマーとして十分な性能を発現できるほど分子量を上げられなかったり、沸点が高いために溶媒の除去が困難であるといった、1,3−プロパンジオールを脱水縮合反応により得られたポリエーテルポリオールには適用できない等の問題点が明らかとなった。
【0007】
又、特許文献1に開示してある溶媒を用いない製法を用いてポリウレタン及びポリウレタンウレア化反応を実施しようとしても、イソシアネートやアミンの種類によっては反応をコントロールできず、均質なポリウレタン及びポリウレタンウレアが得られない等の問題が生じて、繊維やフィルムに成形しにくいといった問題が明らかとなった。具体的には、この技術内容を精査すると、比較的反応性の低いポリイソシアネートや、比較的反応性の低いポリアミン又はポリオールの組み合わせからなるポリウレタンの製造には向いているものの、反応性の高い芳香族イソシアネートや脂肪族アミンとの組み合わせでは、ポリウレタンの重合過程で均一に反応を進行させることができず、十分な物性のポリウレタンが得られないことが明らかになった。したがって、繊維、フィルム、人工皮革、高機能エラストマー等の製造においては適用が難しい。
【0008】
そこで、本発明は、ポリウレタン弾性繊維、合成・人工皮革、TPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)等の高機能ポリウレタンエラストマー用途に極めて有用であるポリウレタン及びポリウレタンウレアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ポリオールの脱水縮合反応により得られ、1,3−プロパンジオール単位を含むポリエーテルポリオールをポリイソシアネート及び鎖延長剤と反応させる際に、非プロトン性極性溶媒の共存下に反応させることにより、高い破断伸張性、伸張時の変形に対する小さな応力変動、伸縮時の応力の小さなヒステリシスロス、低温及び高温条件下での伸縮後の小さな残留歪み、優れた透湿性、さらに優れた染色性を示す、弾性性質に優れたポリウレタンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の第1の要旨は、(a)ポリオールの脱水縮合反応により得られ、1,3−プロパンジオール単位を含むポリエーテルポリオール、(b)ポリイソシアネート化合物、及び(c)鎖延長剤とからポリウレタンを製造するにおいて、非プロトン性極性溶媒の共存下において製造することを特徴とするポリウレタンの製造方法に存する。
【0011】
第2の要旨は、(a)ポリオールの脱水縮合反応により得られ、1,3−プロパンジオール単位を含むポリエーテルポリオール、(b)ポリイソシアネート化合物、及び(c)鎖延長剤とから、ハードセグメントを全重量に対して1〜10重量%含有するポリウレタンを製造するにおいて、非プロトン性極性溶媒の共存下において製造することを特徴とするポリウレタンの製造方法に存する。
第3の要旨は、上記ポリウレタンの製造方法によって製造されたことを特徴とするポリウレタンに存する。
第4の要旨は、上記ポリウレタンからなることを特徴とするフィルム及び繊維に存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、製造されるポリウレタン及びポリウレタンウレアは優れた弾性機能、即ち、高い破断伸度、伸張時の歪みに対する小さな応力変動、伸縮時の応力の
小さなヒステリシス損失、低温条件下での伸縮後の小さな残留歪みを有し、さらに透湿性及び染色性、且つ機械物性にも優れている。そのため、ポリウレタン及びポリウレタンウレア弾性繊維、合成・人工皮革、TPU等の高機能ポリウレタンエラストマー用途に極めて有用であるポリウレタン及びポリウレタンウレアが提供される。又、中間体であるプレポリマーは極性溶媒への溶解速度が大きく、該当ポリウレタン及びポリウレタンウレアの生産性を高めるのに大きく寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明につき詳細に説明する。
<ポリウレタン>
本発明でいうポリウレタンとは、特に制限がない限りポリウレタン又はポリウレタンウレアを示し、この2種類の樹脂はほぼ同じ物性をとることが従来から知られている。一方、構造的特徴の違いとしては、ポリウレタンとは、鎖延長剤として短鎖ポリオールを使用し製造されるものであり、ポリウレタンウレアとは、鎖延長剤としてポリアミン化合物を使用し製造されるものである。
【0014】
本発明におけるポリウレタンとは、(a)ポリオールの脱水縮合反応により得られ、1,3−プロパンジオール単位を含むポリエーテルポリオール、(b)ポリイソシアネート、及び(c)鎖延長剤を含むものである。
各組成割合は、通常、ポリウレタンに対して、(a)ポリオールの脱水縮合反応により得られ、1,3−プロパンジオール単位を含むポリエーテルポリオールの水酸基のモル数をA、(b)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数をB、(c)鎖延長剤の活性水素置換基(水酸基及びアミノ基)のモル数をCとした場合、A:Bが、通常1:10〜1:1の範囲、好ましくは1:5〜1:1.05、より好ましくは1:3〜1:1.1、更に好ましくは1:2.5〜1:1.2、特に好ましくは1:2〜1:1.2であり、かつ(B−A):Cが、通常1:0.1〜1:5、好ましくは1:0.8〜1:2、より好ましくは1:0.9〜1:1.5、更に好ましくは1:0.95〜1:1.2、特に好ましくは1:0.98〜1:1の範囲である。
【0015】
<(a)ポリエーテルポリオール>
本発明で使用するポリエーテルポリオールとは、1,3- プロパンジオール由来のオキシトリメチレン単位(1,3−プロパンジオール単位)を含むポリエーテルポリオールを示す。具体的に、オキシトリメチレン単位とは、以下の化学式(1)で表される。
−(CH2 CH2 CH2 O)− (1)
【0016】
本発明において他のポリオール単位も特に制限がない限り同様の表現とする。
本発明で使用するポリエーテルポリオールを構成するポリオール単位としては、1,3−プロパンジオール単位が全ポリオール単位に対して50モル%以上であることが好ましい。より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは100モル%である。1,3−プロパンジオール単位が50モル%より少ないと、ポリオールの粘度が高くなりすぎて操作性が悪くなったり、得られるポリウレタンが十分な強度や伸度を発現しにくくなる傾向にある。
【0017】
それ以外のポリオール単位は特に限定されないが、例えば、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール単位、3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位、1, 2- エチレングリコール単位、1,6−ヘキサンジオール単位、1,7−ヘプタンジオール単位、1,8−オクタンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、1,10−デカンジオール単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位等が挙げられる。
【0018】
この中でも、ポリエーテルポリオールを構成するポリオール単位のうち、3〜20モル%の2−メチルー1,3―プロパンジオール、2, 2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、あるいは3−メチル−1,5−ペンタンジオールによって構成される共重合ポリトリメチレンエーテルグリコールが好ましい。更には、すべて1,3−プロパンジオール単位で構成されるポリトリメチレンエーテルグリコールが最も好ましい。
【0019】
ポリエーテルポリオールの原料となるポリオールは、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の2個の1級水酸基を有するジオールを用いるのが好ましい。
通常はこれらのポリオールを単独で用いるが、所望ならば2種以上のポリオールの混合物として用いることができる。特に1,3−プロパンジオールを単独で用いることが好ましい。
【0020】
本発明においては、1,3−プロパンジオールの仕込み量は、原料の全ポリオールに対して、下限は50モル%以上であることが好ましい。より好ましくは60モル%以上であり、特に好ましくは70モル%以上であり、上限は、通常100モル%以下である。この含有量が少なすぎると、得られるウレタンで所望の物性が出なかったり、ポリエーテルポリオールの製造に時間がかかったり、収率が悪化したりする場合がある。
【0021】
又、これらのジオールに主たるジオールの脱水縮合反応により得られた2〜9量体のオリゴマーを併用することができる。さらには、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のトリオール以上のポリオール、あるいはこれらのポリオールのオリゴマーを併用することもできる。しかしこれらの場合でも、1,3−プロパンジオールが50モル%以上を占めるようにすることが好ましい。通常は1,4−ブタンジオールや1,5−ペンタンジオール等の脱水縮合反応により5員環や6員環の環状エーテルを生成するものを除き、2個の1級水酸基を有する炭素数3〜10のジオール、又はこれと他のポリオールとの混合物であって他のポリオールの比率が50モル%未満のものを反応に供する。好ましくは、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチルー1,5−ペンタンジオールよりなる群から選ばれたジオール、又は1,3−プロパンジオールと他のポリオールとの混合物であって他のポリオールの比率が50モル%未満のものを反応に供する。さらに好ましくは、1,3- プロパンジオールに対して、3〜20モル%の2−メチルー1,3―プロパンジオール、2, 2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、あるいは3−メチル−1,5−ペンタンジオールを共重合したものがよい。
【0022】
ポリオールの脱水縮合反応により得られ、1,3−プロパンジオール単位を含むポリエーテルポリオールは、特に本発明の効果を損なわない限り公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールとブレンドして使用してもよい。ブレンドするポリエーテルポリオールとしては、特に限定はないが、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの共重合ポリエーテルポリオール(例えば、保土ヶ谷化学社製「PTG−L1000」、「PTG−L2000」、「PTG−L3500」等)、ネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランの共重合ポリエーテルグリコール等が挙げられる。上記のような公知の、1,3- プロパンジオール単位を含まないポリエーテルポリオールをブレンドする場合には、1,3- プロパンジオール単位を含まないポリエーテルポリオールは脱水縮合反応で製造されなくてもよく、公知の技術で製造されていればよい。
【0023】
ブレンドする量については特に限定はされないが、好ましくはポリオールの脱水縮合反応により得られる1,3−プロパンジオール単位を50モル%以上含むポリエーテルポリオールと公知のポリオールの重量比が、99:1〜1:99、好ましくは95:5〜5:95、より好ましくは90:10〜10:90、更に好ましくは80:20〜20:80、特に好ましくは50:50〜100:0である。
【0024】
又、ポリオールの脱水縮合反応により得られ、1,3−プロパンジオール単位を含むポリエーテルポリオールは、その末端水酸基をカプロラクトンでキャップしてABA型のポリオールにして使用してもよい。又、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のオキシランを反応させて末端をキャップして使用してもよい。
【0025】
<ポリエーテルポリオールの製造方法>
本発明で原料として使用されるポリエーテルポリオールは、ポリオールの脱水縮合反応により製造され、且つ1,3−プロパンジオール単位を含むものを用いることが必須条件となる。
【0026】
本発明で使用するポリオールの脱水縮合反応によるポリエーテルポリオールの製造は、回分方式でも連続方式でも行うことができる。例えば、回分方式の場合には、反応器に原料のポリオール及び触媒の酸を仕込み、攪拌下に反応させればよい。アルカリ金属や塩基、4属及び13属からなる群から選ばれる金属の化合物を酸触媒と共存させてもよい。連続反応の場合には、例えば多数の攪拌槽を直列にした反応装置や流通式反応装置の一端から原料のポリオールと触媒を連続的に供給し、装置内をピストンフローないしはこれに近い態様で移動させて、他端から反応液を連続的に抜き出す方法を用いることができる。
【0027】
脱水縮合反応の温度は、下限は通常120℃、上限は通常250℃であり、好ましくは、下限は140℃、上限は200℃であり、より好ましくは、下限は150℃、上限は190℃である。この温度が高すぎると着色が悪化する傾向があり、低すぎると反応速度が上がらない傾向がある。
反応は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。反応圧力は反応系が液相に保持される範囲であれば任意であり、通常は常圧下で行われる。所望ならば反応により生成した水の反応系からの脱離を促進するため、反応を減圧下で行ったり、反応系に不活性ガスを流通させてもよい。不活性ガスの代わりに水蒸気や有機溶媒を用いてもよい。
【0028】
反応時間は触媒の使用量、反応温度、及び生成する脱水縮合物の所望の収率や物性等により異なるが、下限は通常0.5時間、上限は通常50時間であり、好ましくは、下限は1時間、上限は20時間である。
尚、反応は通常は無溶媒で行うが、所望ならば溶媒を用いることもできる。溶媒は反応条件下での蒸気圧、安全性、原料及び生成物の溶解性等を考慮して、常用の有機合成反応に用いる有機溶媒から適宜選択して用いればよい。
【0029】
生成ポリエーテルポリオールの反応系からの分離・回収は常法により行うことができる。不均一系触媒として作用する酸を用いた場合には、まず濾過や遠心分離により反応液から懸濁している酸を除去する。次いで蒸留又は水等の抽出により低沸点のオリゴマーや有機塩基を除去して、目的とするポリエーテルポリオールを取得する。均一系触媒として作用する酸を用いた場合には、まず反応液に水を加えてポリエーテルポリオール相と酸、有機塩基及びオリゴマー等を含む水相を分相させる。尚、ポリエーテルポリオールの一部は触媒として用いた酸とエステルを形成しているので、反応液に水を加えた後、加熱してエステルを加水分解してから分相させる。この際、ポリエーテルポリオール及び水の双方に親和性のある有機溶媒を水と一緒に用いると、加水分解を促進することができる。又、ポ
リエーテルポリオールが高粘度で分相の操作性がよくない場合には、ポリエーテルポリオールに親和性があり、かつ蒸留によりポリエーテルポリオールから容易に分離しうる有機溶媒を用いるのも好ましい。分相により取得したポリエーテルポリオール相は蒸留して残存する水や有機溶媒を留去し、目的とするポリエーテルポリオールを取得する。尚、分相により取得したポリエーテルポリオール相に酸が残存している場合には、水やアルカリ水溶液で洗浄したり、水酸化カルシウム等の固体塩基で処理して残存している酸を除去してから蒸留に供する。
【0030】
得られたポリエーテルポリオールは、通常窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下にて保存しておく。
又、必要に応じて不飽和末端を低減してもよい。例えば、ポリトリメチレンエーテルグリコール及びそのコポリマーを、周期表4〜12族の群から選択される金属触媒の存在下に不飽和末端を水酸基に変換するという方法である。
【0031】
周期表4〜12族の群から選択される金属触媒としては、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀等が挙げられる。好ましい金属触媒は6〜11族の群から選択される金属触媒であり、その具体例としては、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金が挙げられる。さらに好ましい金属触媒は8〜10族の群から選択される金属触媒であり、その具体例としては、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金が挙げられる。特に好ましい金属触媒は、ロジウム、パラジウム、ルテニウム又は白金であり、入手の容易性や価格面からパラジウムが最適である。
【0032】
金属触媒は、1種類以上の他の金属との合金の形態、塩の形態、配位化合物の形態等を使用することができる。金属触媒は、担体に担持させることもできる。担体としては、例えば、活性炭、アルミナ、シリカ、ゼオライト、粘土、活性白土等が挙げられる。金属の電子状態としては反応時に0価の状態で反応系中に存在していればよく、反応系に加える時点では例えばII価の状態の金属を触媒として選択することも可能である。金属触媒を担体に担持する場合の担持量は特に制限はないが、通常0.1%以上50%未満、好ましくは0.5%〜20%、さらに好ましくは1%〜10%である。
【0033】
金属触媒としてパラジウムを例に挙げると、金属触媒の態様としては、微粉金属パラジウム、担持金属パラジウム触媒、例えば、炭素上のパラジウム、アルミナ担持パラジウム、シリカ担持パラジウム等が挙げられる。そのほかに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、パラジウム(II)アセテート、パラジウム(II)クロリド、パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)クロリド、ビス(ペンタンジオナト)パラジウム(II)、パラジウム(II)ビス(ベンゾニトリル)等が挙げられる。触媒は別々に添加してその結果錯体や塩を形成させてもよい。
【0034】
触媒は、不飽和末端基の低減速度を測定できるほど増加させるのに十分な量で用いられる。工業化で実用可能な時間、例えば24時間以下、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下で反応が所望の割合まで進行するような触媒濃度が好ましい。
金属触媒を担体に担持して使用する場合、及び微粉金属触媒として使用する場合の使用量は、その種類に応じて適宜選択されるが、例えば、5重量%のパラジウムを担体に担持した触媒の場合、ポリトリメチレンエーテルグリコール及びそのコポリマーの重量に対するドライベース基準の割合として、金属触媒(担体を除く)が通常0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜1重量%、更に好ましくは0.005〜0.25重量%で
ある。
【0035】
又、金属触媒を錯体触媒や金属塩、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、パラジウム(II)アセテート、パラジウム(II)クロリド、パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)クロリド、ビス(ペンタンジオナト)パラジウム(II)、パラジウム(II)ビス(ベンゾニトリル)等として使用する場合の使用量は、その種類に応じて適宜選択されるが、ポリトリメチレンエーテルグリコール及びそのコポリマーの重量に対して通常0.001〜10重量%、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.005〜1重量%である。
【0036】
この方法におけるポリアルキレンエーテルグリコールの金属触媒の存在下での処理による不飽和末端基の低減化(脱不飽和処理)は次の様に行われると推定される。即ち、アリル末端から内部に2重結合が移動して1−プロペニル基末端が形成され、これが水と反応してプロピオンアルデヒドを脱離すると共に水酸基末端が形成される。脱不飽和処理に必要な水は、金属触媒に含有されている水を使用することが可能である。例えば、パラジウム担持活性炭は一般に50%程度の含水品として市販されている。しかしながら、1−プロペニル基末端を加水分解するのに必要な量以上(例えばポリアルキレンエーテルグリコールに対して約0.5重量%、好ましくは1重量%、更に好ましくは10重量%過剰量)の水分が反応系中に存在していることが好ましい。実用的な処理における水の量は、ポリアルキレンエーテルグリコール100重量部に対し、通常1〜50重量部、好ましくは5〜30重量部、更に好ましくは10〜20重量部である。
【0037】
脱不飽和処理温度の上限は、ポリアルキレンエーテルグリコールの分解温度(T)より低い温度の範囲から選択され、通常T−20℃、好ましくはT−120℃、更に好ましくはT−200℃の温度が採用される。又、脱不飽和処理温度の下限は、通常25℃、好ましくは50℃である。反応温度が高い場合には加圧で脱不飽和処理を行うことも可能である。
【0038】
脱不飽和処理は溶媒の存在下で行うことも可能である。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、水、テトラヒドロフラン、トルエン、アセトン等が挙げられる。溶媒の量は特に制限されないが、その上限は、ポリアルキレンエーテルグリコール対し、通常10重量倍、好ましくは2重量倍である。脱不飽和処理は、回分式又は連続式の何れの形式であってもよい。連続式としては、例えば、金属触媒を充填したカラム型反応器に、ポリアルキレンエーテルグリコール/水/溶媒等の原料を連続的に供給する方法が挙げられる。
【0039】
脱不飽和処理の触媒は、反応後に反応液と分離した後に、リサイクルするこも可能である。分離の方法としては、バッチ式の場合、例えば、ろ過、遠心分離等により触媒を分離する方法が挙げられる。又、使用触媒を適当な溶媒で洗浄することも有効である場合がある。洗浄溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、水、酢酸エチル、1,3−プロパンジオール、トルエン、アセトン等が挙げられる。固定床反応器の場合には、これらの溶媒を使用して適当な温度で洗浄することにより触媒の活性をある程度回復させることが可能である。
【0040】
上記の脱不飽和処理によるポリアルキレンエーテルグリコールの末端不飽和基の低減化率は、通常20%以上、好ましくは50以上%、更に好ましくは75%以上である。
【0041】
<ポリエーテルポリオールの物性>
本発明で使用されるポリエーテルポリオールの数平均分子量は、用いる触媒の種類や触
媒量により調整することができ、下限が通常1000、好ましくは2500、より好ましくは2700、更に好ましくは2800、特に好ましくは3000であり、上限が通常5000、好ましくは4500、より好ましくは4000、更に好ましくは3800、特に好ましくは3500である。数平均分子量が高すぎると、ポリエーテルポリオールやプレポリマー、プレポリマー溶液の粘度が高くなりすぎて操作性や生産性が悪くなったり、得られるポリウレタン重合体の低温における物性が悪くなる傾向がある。低すぎると、得られるポリウレタン重合体が硬くなり十分な柔軟性が得られなかったり、強度や伸度などの弾性性能が十分でなかったり、伸長、回復を繰り返した際に過度の残留歪を残す傾向がある。
【0042】
又、本発明で使用されるポリエーテルポリオールは、分子量分布の指標としての、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が1.5以上であるのが好ましく、2.0以上であるのが更に好ましい。又、3.0以下であるのが好ましく、2.5以下であるのが更に好ましい。
【0043】
ポリエーテルポリオールのハーゼン色数は、0に近いほど好ましく、上限は、通常500であり、好ましくは400、より好ましくは200、最も好ましくは50である。
末端アリル基量の割合は、水酸基に対して、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下、特に好ましくは0%である。末端アリル基量が多すぎると、ポリウレタン及びポリウレタンウレアの分子量を十分に上げられず所望の性能を出すことが難しくなる傾向がある。少なすぎる場合は、反応速度が上がりすぎてポリウレタン及びポリウレタンウレア化反応でゲル等を発生させてしまう場合が考えられる。しかしながら、少なすぎる場合は、常法により、適量の一官能成分を反応系に共存させることで分子量が上がりすぎるという問題を回避することができる。
【0044】
<(b)ポリイソシアネート化合物>
本発明において用いられるポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−MDI、パラフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4′−ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。本発明においては、特に反応性の高い芳香族ポリイソシアネートが好ましく、特にトリレンジイソシアネート(TDI) 、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましい。又、ポリイソシアネートのNCO基の一部をウレタン、ウレア、ビュレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド、イミド等に変成した物であっても良く、さらに多核体には前記以外の異性体を含有している物も含まれる。
【0045】
これらのポリイソシアネート化合物の使用量は、ポリエーテルポリオールの水酸基、並びに鎖延長剤の水酸基及びアミノ基の1当量に対し、通常、0.1当量〜10当量、好ましくは0.8当量〜1.5当量、より好ましくは0.9当量〜1.05当量である。
ポリイソシアネートの使用量が多すぎると、未反応のイソシアネート基が好ましくない反応をおこし、所望の物性が得られにくくなる傾向があり、少なすぎると、ポリウレタン
及びポリウレタンウレアの分子量が十分に大きくならず、所望の性能が発現されない傾向がある。
【0046】
<(c)鎖延長剤>
本発明でいう鎖延長剤は、主として、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物、2個以上のアミノ基を有する化合物、水に分類される。この中でも、ポリウレタン用途には短鎖ポリオール、具体的には2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を、ポリウレタンウレア用途には、ポリアミン化合物、具体的には2個以上アミノ基を有する化合物が好ましい。この中で水については反応を安定に行うために、できるだけ低減することが好ましい。
又、本発明のポリウレタン樹脂は、鎖延長剤として、分子量(数平均分子量)が500以下の化合物を併用すると、ポリウレタンエラストマーのゴム弾性が向上する為に、物性上さらに好ましい。
【0047】
2個以上のヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香環を有するグリコール等が挙げられる。
【0048】
2個以上のアミノ基を有する化合物としては、例えば、2,4−もしくは2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4′−ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,3−ジアミノペンタン、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4′−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。これらの鎖延長剤は単独使用でも2種以上の併用でも良い。これらの中でも本発明において好ましいのは、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンである。
【0049】
これらの鎖延長剤の使用量は、特に限定されないが、ポリエーテルポリオール1当量に対し、通常0.1当量以上、10当量以下である。好ましくは0.5当量以上、2.0当量以下、更に好ましくは0.8当量以上、1.2当量以下である。使用量が多すぎると、得られたポリウレタン及びポリウレタンウレアが硬くなりすぎて所望の特性が得られなかったり、溶媒にとけにくく加工が困難になる傾向があり、少なすぎると、軟らかすぎて十分な強度や弾性回復性能や弾性保持性能が得られなかったり、高温特性が悪くなる傾向が
ある。
【0050】
本発明において対象とするポリウレタン及びポリウレタンウレアをポリウレタン弾性繊維や合成皮革等の高性能ポリウレタンエラストマー用途に用いる場合は、原料の組み合わせとして以下の例が挙げられる。活性水素化合物成分の1つとして、上記式(1)の分子量1000〜5000のポリトリメチレンエーテルグリコール、鎖延長剤として、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、キシリレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール等、ポリイソシアネート成分として、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートや2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネートである。
【0051】
又、ポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することができる。これらの鎖停止剤としては、水酸基を有するエタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族モノオール、アミノ基を有するジエチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の脂肪族モノアミンが例示される。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0052】
<その他の添加剤>
さらに本発明のポリウレタンには上記以外に必要に応じて他の添加剤を加えてもよい。これらの添加剤としては「CYANOX1790」(CYANAMID社製)、「IRGANOX245」、「IRGANOX1010」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「Sumilizer GA−80」(住友化学社製)、あるいは2,6−ジブチル−4−メチルフェノール(BHT)等の酸化防止剤、「TINUVIN622LD」、「TINUVIN765」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「SANOL LS−2626」、「SANOL LS−765」(以上、三共社製)等の光安定剤、「TINUVIN328」、「TINUVIN234」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)等の紫外線吸収剤、ジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体等のシリコン化合物、赤燐、有機燐化合物、燐及びハロゲン含有有機化合物、臭素あるいは塩素含有有機化合物、ポリ燐酸アンンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の添加及び反応型難燃剤、二酸化チタン等の顔料、染料、カーボンブラック等の着色剤、カルボジイミド化合物等の加水分解防止剤、ガラス短繊維、カーボンファイバー、アルミナ、タルク、グラファイト、メラミン、白土等のフィラー、滑剤、油剤、界面活性剤、その他の無機増量剤、有機溶媒等が挙げられる。
【0053】
<ポリウレタンの製造方法>
本発明のポリウレタン樹脂を製造するには、(a)ポリオールの脱水縮合反応により得られ、1,3−プロパンジオール単位を含むポリエーテルポリオール、(b)ポリイソシアネート化合物、及び(c)鎖延長剤が必須原料となる。
【0054】
上記ポリウレタンを製造するには一般的に実験/工業的に用いられる全ての製造方法が使用できるが、本発明では、非プロトン性極性溶媒の共存下にウレタンを製造することが特徴である。尚、各化合物の使用量は特に制限がない限り、上記記載の量を使用すればよい。以下に非プロトン性極性溶媒の共存下における製造方法の一例を示すが、非プロトン性極性溶媒の共存下であれば特に制限されない。
【0055】
製造方法の一例としては、(a)、(b)、及び(c)を一緒に反応させる方法(一段法)や、まず(a)と(b)を反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、プレポリマーと(c)を反応させる方法(二段法)が挙げられる。この中でも二段法は、ポリエーテルポリオールをあらかじめ1当量以上のポリイソシアネートと反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する両末端イソシアネート
で封止された中間体を調製する工程を経るものである。プレポリマーをいったん調製した後に鎖延長剤と反応させることにより、ソフトセグメント部分の分子量の調整が行いやすく、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離がしっかりとなされやすく、エラストマーとしての性能を出しやすい特徴がある。特に鎖延長剤がジアミンの場合には、ポリエーテルポリオールの水酸基と比較して、イソシアネート基との反応速度が大きく異なるため、プレポリマー法でポリウレタンウレア化を実施することがより好ましい。
【0056】
<一段法>
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、(a)、(b)、及び(c)を一緒に仕込むことで反応を行う方法である。各化合物の使用量は、上記記載の量を使用すればよい。
本発明では、一段法を無溶媒ではなく、有機溶媒の存在下に反応を行うことができる。使用される溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、クロルベンゼン、トリクレン、パークレン等のハロゲン化炭化水素類、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒、及びそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0057】
本発明では、これら有機溶媒の中でも、ポリウレタンを製造する場合は溶解性の観点から、非プロトン性極性溶媒が好ましく、本発明の特徴である。更に、非プロトン性極性溶媒の好ましい具体例を挙げると、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドがより好ましく、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0058】
ワンショット法(一段階で反応させる)の場合、NCO/活性水素基(ポリエーテルポリオールと鎖延長剤)の反応当量比は、下限が、通常0.50、好ましくは0.8であり、上限が、通常1.5、好ましくは1.2の範囲である。この比が大きすぎると、過剰のイソシアネート基が副反応を起こしてポリウレタンの物性に好ましくない影響を与える傾向があり、小さすぎると、得られるポリウレタンの分子量が十分に上がらず、強度や熱安定性に問題を生じる傾向がある。
【0059】
反応は通常、各成分を0〜250℃で反応させるが、この温度は溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なる。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低い為に生産性が悪く、又、高すぎると副反応やポリウレタン樹脂の分解が起こるので好ましくない。反応は、減圧下脱泡しながら行ってもよい。
又、反応は必要に応じて、触媒、安定剤等を添加することもできる。触媒としては例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等があり、安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ・ベ−タナフチルフェニレンジアミン、トリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
【0060】
<二段法>
二段法は、プレポリマー法ともよばれ、あらかじめポリイソシアネート成分とポリオール成分とを、通常、反応当量比=1.0〜10.00で反応したプレポリマーを製造し、次いでこれにポリイソシアネート成分又は多価アルコール、アミン化合物等の活性水素化合物成分を加える二段階反応させることもできる。特にポリオール成分に対して当量以上のポリイソシアネート化合物を反応させて両末端NCOプレポリマーをつくり、続いて鎖延長剤である短鎖ジオールやジアミンを作用させてポリウレタンを得る方法が有用である。
【0061】
本発明では、二段法を無溶媒ではなく、有機溶媒を用いて行うことが特徴である。使用される溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、クロルベンゼン、トリクレン、パークレン等のハロゲン化炭化水素類、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒、及びそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0062】
本発明では、これら有機溶媒の中でも、ポリウレタンを製造する場合は溶解性の観点から、非プロトン性極性溶媒が好ましく、本発明の特徴である。更に、非プロトン性極性溶媒の好ましい具体例を挙げると、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドがより好ましく、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0063】
プレポリマーを合成する場合、(1) まず溶媒を用いないで直接ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオールを反応させてプレポリマーを合成しそのまま使用してもよいし、(2)(1)の方法でプレポリマーを合成しその後に溶媒に溶かして使用してもよいし、(3) はじめから溶媒を用いてポリイソシアネートとポリエーテルグリコールを反応させてもよい。(1) の場合には、本発明では、鎖延長剤と作用させるにあたり、鎖延長剤を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び鎖延長剤を導入するなどの方法により、ポリウレタンを溶媒と共存する形で得ることが重要である。
【0064】
NCO/活性水素基(ポリエーテルポリオール)の反応当量比は、下限が、通常1、好ましくは1.1であり、上限が、通常10、好ましくは5、より好ましくは3の範囲である。この比が小さすぎると、過剰のイソシアネート基が副反応を起こしてポリウレタンの物性に好ましくない影響を与える傾向があり、小さすぎると、得られるポリウレタンの分子量が十分にあがらず、強度や熱安定性に問題を生じる傾向がある。
【0065】
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるNCO基の当量に対して、下限が、通常0.8、好ましくは1であり、上限が、通常2、好ましくは1.2の範囲である。
【0066】
又、反応時に一官能性の有機アミンやアルコールを共存させてもよい。
反応は通常、各成分を0〜250℃で反応させるが、この温度は溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なる。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低い為に生産性が悪く、また高すぎると副反応やポリウレタン樹脂の分解が起こるので好ましくない。反応は、減圧下脱泡しながら行ってもよい。
【0067】
又、反応は必要に応じて、触媒、安定剤等を添加することもできる。触媒としては例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等があり、安定剤としては例えば2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ・ベ−タナフチルフェニレンジアミン、トリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。しかしながら、鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施することが好ましい。
【0068】
<ポリウレタンの物性>
上記の製造方法で得られるポリウレタンは、溶媒存在下で反応を行っているため、溶液
に溶解した状態で得られるのが一般的であるが、物性値としては溶液状態でも固体状態でも特に制限がない限り、状態に制限されない。
ポリウレタンの重量平均分子量は、用途により異なるが、ポリウレタン重合溶液として、通常1万〜100万、好ましくは5万〜50万、より好ましくは10万〜40万、特に好ましくは10万〜30万である。分子量分布としてはMw/Mn=1.5〜3.5、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.9〜2.3である。
繊維、フィルム、透湿性樹脂成形体としては、ポリウレタンの重量平均分子量は、通常1万〜100万、好ましくは5万〜50万、より好ましくは10万〜40万、特に好ましくは15万〜35万である。分子量分布としてはMw/Mn=1.5〜3.5、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.9〜2.3である。
【0069】
又、上記の製造方法で得られるポリウレタンは、ハードセグメントの量を、ポリウレタン重合体の全重量に対して、1〜10重量%含有することが好ましく、より好ましくは3〜8.5重量%であり、更に好ましくは、4〜8重量%であり、特に好ましくは、5〜7重量%である。このハードセグメント量が多すぎると、得られるポリウレタン重合物が十分な柔軟性や弾性性能を示さなくなったり、溶媒を使用する場合は溶けにくくなり加工が難しくなったりする傾向がある。少なすぎると、ウレタン重合物が柔らかすぎて加工が難しくなったり、十分な強度や弾性性能が得られなくなる傾向がある。
【0070】
尚、本発明でいう、ハードセグメントとは、P.J.Flory、Journal of American Chemical Society,58,1877〜1885(1936)をもとに、全体重量に対する、イソシアネートとアミン結合部の重量を、下記式で算出したものである。
ハードセグメント(%)=[(R−1)(Mdi+Mda) /{Mp +R・Mdi+(R−1)・Mda+Mc ・Gc }]×100
ここで、
R=イソシアネートのモル数/(ポリエーテルポリオールの水酸基のモル数+末端アリル基のモル数)
Mdi=ジイソシアネートの数平均分子量
Mda=ジアミンの数平均分子量
Mp =ポリエーテルポリオールの数平均分子量
Mc =末端アリル基の分子量
Gc =末端アリル基の当量(ポリエーテルポリオール1モル当たりの末端アリル基のモル数)
【0071】
本発明で得られるポリウレタン溶液は、ゲル化が進行しにくく、粘度の経時変化が小さいなど保存安定性がよく、又、チクソトロピー性も小さいため、フィルム、糸等に加工するためにも都合がよい。ポリウレタン溶液のポリウレタン濃度は、非プロトン性溶媒に溶解した溶液の全重量に対して、通常1〜99重量%、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは15〜50重量%である。ポリウレタンの量が少なすぎると、大量の溶媒を除去することが必要になり生産性が低くなる傾向があり、多すぎると、溶液の粘度が高すぎて操作性や加工性が悪くなる傾向がある。
ポリウレタン溶液は、特に指定はされないが、長期にわたり保存する場合は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で保存することが好ましい。
【0072】
<ポリウレタン成形体・用途>
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、多様な特性を発現させることができて、フォーム、エラストマー、塗料、繊維、接着剤、床材、シーラント、医用材料、人工皮革等に広く用いることができる。
【0073】
本発明で製造されるポリウレタン、ポリウレタンウレア、及びそのウレタンプレポリマー溶液は、注型ポリウレタンエラストマーに使用できる。例として、圧延ロール、製紙ロール、事務機器、プレテンロール等のロール類、フォークリフト、自動車車両ニュートラム、台車、運搬車等のソリッドタイヤ、キャスター等、工業製品として、コンベアベルトアイドラー、ガイドロール、プーリー、鋼管ライニング、鉱石用ラバースクリーン、ギア類、コネクションリング、ライナー、ポンプのインペラー、サイクロンコーン、サイクロンライナー等がある。又、OA機器のベルト、紙送りロール、スクシジー、複写用クリーニングブレード、スノープラウ、歯付ベルト、サーフローラー等にも適用される。
【0074】
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、熱可塑性エラストマーとしての用途にも適用される。例えば、食品、医療分野で用いる空圧機器、塗装装置、分析機器、理化学機器、定量ポンプ、水処理機器、産業用ロボット等におけるチューブやホース類、スパイラルチューブ、消防ホース等として使用できる。又、丸ベルト、Vバルト、平ベルト等のベルトとして、各種伝動機構、紡績機械、荷造り機器、印刷機械等に用いられる。又、履物のヒールトップや靴底、カップリング、パッキング、ポールジョイント、ブッシュ、歯車、ロール等の機器部品、スポーツ用品、レジャー用品、時計のベルト等が例示できる。さらに自動車部品としては、オイルストッパー、ギアボックス、スペーサー、シャーシー部品、内装品、タイヤチェーン代替品等が挙げられる。又、キーボードフィルム、自動車用フィルム等のフィルム、カールコード、ケーブルシース、ベロー、搬送ベルト、フレキシブルコンテナー、バインダー、合成皮革、ディピンイング製品、接着剤等が例示できる。
【0075】
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、溶剤系二液型塗料としての用途にも適用可能であり、楽器、仏壇、家具、化粧合板、スポーツ用品等の木材製品に適用できる。又、タールエポキシウレタンとして自動車補修用にも使用できる。
【0076】
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、湿気硬化型の一液型塗料、ブロックイソシアネート系溶媒塗料、アルキド樹脂塗料、ウレタン変性合成樹脂塗料、紫外線硬化型塗料等の成分として使用可能であり、例えば、プラスチックバンパー用塗料、ストリッパブルペイント、磁気テープ用コーティング剤、床タイル、床材、紙、木目印刷フィルム等のオーバープリントワニス、木材用ワニス、高加工用コイルコート、光ファイバー保護コーティング、ソルダーレジスト、金属印刷用トップコート、蒸着用ベースコート、食品缶用ホワイトコート等として適用できる。
【0077】
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、接着剤として、食品包装、靴、履物、磁気テープバインダー、化粧紙、木材、構造部材等に適用され、又、低温用接着剤、ホットメルトの成分としても用いることができる。
【0078】
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、バインダーとして、磁気記録媒体、インキ、鋳物、焼成煉瓦、グラフト材、マイクロカプセル、粒状肥料、粒状農薬、ポリマーセメントモルタル、レジンモルタル、ゴムチップバインダー、再生フォーム、ガラス繊維サイジング等に使用可能である。
【0079】
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、繊維加工剤の成分として、防縮加工、防皺加工、撥水加工等に使用できる。
【0080】
本発明で製造されるポリウレタン、ポリウレタンウレア、及びそのウレタンプレポリマー溶液は、シーラント・コーキングとして、コンクリート打ち壁、誘発目地、サッシ周り
、壁式PC目地、ALC目地、ボード類目地、複合ガラス用シーラント、断熱サッシシーラント、自動車用シーラント等に使用できる。
【0081】
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、医療材料としての使用が可能であり、血液適合材料として、チューブ、カテーテル、人工心臓、人工血管、人工弁等、又、使い捨て素材としてカテーテル、チューブ、バッグ、手術用手袋、人工腎臓ポッティング材料等に使用できる。
【0082】
本発明で製造されるポリウレタン、ポリウレタンウレア、及びそのウレタンプレポリマー溶液は、末端を変性させた後にUV硬化型塗料、電子線硬化型塗料、フレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物、光硬化型の光ファイバー被覆材組成物等の原料として用いることができる。
【0083】
特に、フィルムや繊維に用いられるのが本発明で製造されるポリウレタンの弾性性能や透湿性の特徴を生かす上で好ましく、これらの具体的用途としては、医療、衛生材料、人工皮革、及び衣類用の弾性繊維に用いることが好ましい。
以上、本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液を用いた用途例を述べたが、本発明はこれらの用途に限定されるものではない。
以下にフィルムと繊維の製造方法を記載するが、特に製法が制限される訳ではない。
【0084】
<フィルムの製造方法>
フィルムの製造方法は特に限定はなく、公知の方法が使用できる。例えば、フィルムの製造方法として、支持体や離形材にポリウレタン樹脂溶液を塗布し、凝固浴中で溶媒その他の可溶性物質を抽出する湿式製膜法と、支持体や離形材にポリウレタン樹脂溶液を塗布し、加熱あるいは減圧等により溶媒を乾燥させる乾式製膜法が挙げられる。乾燥製膜する際に用いる支持体は特に限定されないが、ポリエチレンやポリプロピレンフィルム、ガラス、金属、剥離材を塗布した紙はあるいは布等が用いられる。塗布の方式は特に限定されないが、ナイフコーター、ロールコーター、スピンコーター、グラビアコーター等の公知のいずれでもよい。乾燥温度は乾燥機の能力によって任意に設定できるが、乾燥不十分、あるいは急激な脱溶媒が起こらない温度範囲を選ぶことが必要である。好ましくは室温〜300℃、より好ましくは60℃〜200℃の範囲である。
【0085】
<フィルムの物性>
本発明のフィルムの厚さは、通常、10〜1000μm、好ましくは10〜500μm、より好ましくは10〜100μmである。フィルムの厚さが厚すぎると、十分な透湿性が得られない傾向があり、又、薄過ぎると、ピンホールができやすかったり、フィルムがブロッキングしやすく取り扱いにくくなる傾向がある。又、このフィルムは、医療用粘着フィルムや衛生材料、包装材、装飾用フィルム、その他透湿性素材等に好ましく用いることができる。又、フィルムは布や不織布等の支持体に塗布したものでもよい。この場合は10μmよりもさらに薄くてもかまわない。
【0086】
破断伸度は、通常100%以上、好ましくは200%以上、より好ましくは300%以上、更に好ましくは500%以上、特に好ましくは800%以上である。
破断強度は、通常5MPa以上、好ましくは10MPa以上、より好ましくは20MPa以上、更に好ましくは30MPa以上、特に好ましくは60MPa以上である。
【0087】
23℃における300%伸長―収縮繰り返し試験において、1回目の伸長時の150%伸長における応力に対する1回目の収縮時の150%伸長における応力の比で捉える弾性保持率(Hr1/H1)は、通常10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上である。同じく5回目の伸長時の150%伸長にお
ける応力に対する5回目の収縮時の150%伸長における応力の比で捉える弾性保持率(Hr5/H5)は、通常30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは85%以上である。
又、23℃における300%伸長―収縮繰り返し試験において、1回目の伸長時の150%伸長における応力に対する2回目の伸長時の150%伸長における応力の比で捉える弾性保持率(H2/H1)は、通常20%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上である。
又、23℃における300%伸張―収縮繰り返し試験での2回目の残留歪は、通常40%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下、特に好ましくは15%以下である。又、5回目における残留歪は、通常50%以下、好ましくは35%以下、更に好ましくは25%以下、特に好ましくは20%以下である。
【0088】
−10℃における300%伸長―収縮繰り返し試験での残留歪は、通常300%以下、好ましくは120%以下、より好ましくは100%以下、更に好ましくは60%以下である。
又、−10℃における300%伸長―収縮繰り返し試験において、1回目の伸長時の150%伸長における応力に対する1回目の収縮時の150%伸長における応力の比で捉える弾性保持率(Hr1/H1)は、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上である。
100℃における300%伸長―収縮繰り返し試験での残留歪は200%以下、好ましくは100%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは35%以下である。
【0089】
透湿性は、フィルム50μm厚みに換算すると、通常500g/m2 ・24h以上、好ましくは1000g/m2 ・24h以上、より好ましくは2000g/m2 ・24h以上、更に好ましくは3000g/m2 ・24h以上である。
尚、ポリウレタンフィルムと糸の物性は非常に良い相関があり、フィルムの試験等で得られた物性値は、糸(繊維)においても同様の傾向を示す。
【0090】
<ポリウレタンウレア弾性繊維の製造方法>
本発明のポリウレタンの中でもポリウレタンウレアは各種用途に利用可能であるが、特に、弾性繊維用として利用した場合において優れた性能を発現するので、以下に、弾性繊維用のポリウレタンウレアを製造する場合の好ましい製造条件を例示する。
まず、MDIとポリオールの脱水縮合反応により得られる1,3−プロパンジオール単位を50モル%以上含むポリエーテルポリオールをNCO/OH=1.1〜3.0で反応させ、末端NCO基のプレポリマーを製造する。反応は、必要に応じて、BuOH、ヘキサノール等のモノオールをPTMGに対して500〜5000ppm程度添加して反応させてもよい。又、この際には溶剤を使用せず、バルク状態で反応させると副反応が起きにくいので好ましい。得られたプレポリマーをジメチルアセトアミド(DMAc)あるいはジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒に溶解し、好ましくは0〜30℃、さらに好ましくは0〜10℃に冷却する。この際にプレポリマー溶液温度が高すぎると、次工程の鎖延長反応時に反応が速すぎて、不均一な反応となり、ゲル化等の異常反応が発生する可能性がある。又、低すぎるとプレポリマーの溶解に時間がかかったり、プレポリマーが十分に溶解せず析出してうまく反応が行えない場合がある。プレポリマー溶液の濃度については、特に限定はされないが、10〜90重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは35〜50重量%である。次いで、冷却したプレポリマー溶液とプロパンジアミン、エチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン等のメチレン鎖長が6以下脂肪族ジアミン、あるいはキシリレンジアミン等の芳香族ジアミンをDMAc、あるいはDMFに溶解させたアミン溶液とを反応させ鎖延長する。メチレン鎖長が長すぎる脂肪族ジアミンを単独で使用するとポリウレタン弾性繊維にした際に、物性が低下することがある。ジアミン鎖延長剤としてエチレンジアミンを主
成分として50モル%以上用いることが好ましい。より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80%、特に好ましくは90%以上用いることである。反応性の高い脂肪族アミンを使用する場合には、触媒を加えないで反応を実施するのがよい。
【0091】
本発明をポリウレタンウレア弾性繊維に適用する場合に使用されるジアミン鎖延長剤の合計量は、ポリウレタンウレア重合体に対して、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3〜15%、更に好ましくは3〜10%、特に好ましくは3〜9%のハードセグメント量を生じる量である。ハードセグメント量が多すぎるとポリウレタンウレア弾性糸又はフィルムを紡糸あるいはフィルム化する際の溶剤に溶けにくくなったり、繊維やフィルムとしての伸びが不十分であったりする。ハードセグメント量が少なすぎると、繊維やフィルムとして柔らかすぎたり、強度が弱すぎたり、弾性回復性や応力維持率が低く、残留歪が大きくなる可能性がある。
【0092】
鎖延長反応終了後にジエチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の脂肪族モノアミンのDMAc、あるいはDMF溶液を添加して反応を停止させる。この際、モノアミンをジアミンとあらかじめ混合しておいて、鎖延長反応と鎖停止反応を同時に進行させてもよい。鎖延長反応はプレポリマー溶液をジアミン溶液に添加しても、又、ジアミン溶液をプレポリマー溶液に添加してもよく、又、2液の定量吐出混合装置を使用して連続的に反応させてもよい。得られたポリウレタンウレア溶液は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、黄変防止剤等の添加剤を混合した後、必要に応じてフィルターで異物を除去した後、乾式紡糸や湿式紡糸法等の紡糸法によってポリウレタンウレア弾性繊維を製造する。
【0093】
ポリウレタンウレアの重量平均分子量は、使用目的により異なるが、通常ポリウレタンウレア重合溶液として、通常1万〜100万、好ましくは5万〜50万、より好ましくは10万〜40万、更に好ましくは10万〜30万である。分子量分布としてはMw/Mn=1.5〜3.5、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.9〜2.3である。

【0094】
弾性繊維としては、ポリウレタンウレアの重量平均分子量は、通常1万〜100万、好ましくは5万〜50万、より好ましくは10万〜40万、更に好ましくは15万〜35万である。分子量分布としてはMw/Mn=1.5〜3.5、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.9〜2.3である。
【0095】
本発明で得られるポリウレタンウレア溶液は、ゲル化が進行しにくく、粘度の経時変化が小さいなど保存安定性がよく、又、チクソトロピー性も小さいため、弾性糸を製造するために都合がよい。
この様にして得られたポリウレタンウレア弾性繊維は高い破断伸張性をもち、伸張時の変形歪に対して応力変動が小さく、伸縮時の応力のヒステリシス損失が小さく、低温条件下での伸縮後の残留歪みが小さい為に、肌着、レッグニット、ストッキング、オムツカバー、紙おむつのキャザー、ファウンデーション、ホウタイ、かつら基布、靴下口ゴム、スポーツ用衣類、水着、各種ベルト、幅細テープ、スポーツ、アウター用途等、高弾性、低温特性等が要求される分野でも使用できる。
尚、鎖延長剤として短鎖ポリオールを使用するポリウレタンから繊維を製造する方法に関しては、公知の技術を利用できる。
【0096】
<ポリウレタン弾性繊維の物性>
ポリウレタン弾性繊維は、強度、破断伸度、伸張回復性、耐紫外線性、耐熱劣化性、耐加水分解性、低温特性等を総合面で他の弾性繊維よりも性能がよい。特に本発明の1,3−プロパンジオールを50モル%以上含有するポリオールの脱水縮合反応により得られた
ポリエーテルポリオールを用いた場合に、その特性が際立ってよい。
【0097】
破断強度は、通常0.1g/d以上、好ましくは0.9g/d以上である。破断伸度は、通常300%以上、好ましくは500%以上、より好ましくは600%以上、更に好ましくは650%以上である。
伸張回復率として、伸張率100%で24時間保持した後の回復率は、通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上である。
【0098】
紫外線耐性として、Fade−O−meterで45時間照射後の強度保持率は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。
耐熱劣化性として、120℃にて24時間保持試験後の強度保持率は、試験前に比べて、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。
【0099】
<ポリウレタン繊維の用途>
本発明のポリウレタンを用いた繊維は、更に用途を具体的に挙げると、レッグ、パンティー・ストッキング、おむつカバー、紙おむつ、スポーツ用衣類、下着、靴下、ファッション性に優れたストレッチ性の衣類、水着、レオタード等の用途に好ましく用いられる。これは、伸張回復性、弾性、耐加水分解性、耐光性、耐酸化性、耐油性、加工性等に優れているからである。
【0100】
本弾性繊維の優れた透湿性は、衣類に使用される際に蒸れにくく、付け心地がよいという特徴を持つ。又、応力の変動率が小さいあるいはモジュラスが小さいという特性は、例えば、衣類として体につける際に小さな力でそでを通したりすることができ、小さな子供やお年寄りにとっても非常に脱着しやすいという特徴を持つ。又、フィット感及び運動追従性がよいことより、スポーツ用衣類やよりファッション性の高い衣類の用途で使用することができる。又、繰り返しの伸張試験での弾性保持率が高いことより、繰り返しの使用に対してもその弾性性能が損なわれにくいという特徴もある。又、100℃においての残留歪が小さく、応力保持性に優れているという点は、夏の車のダッシュボード等に本材料を用いた製品を放置する等の、高温に晒されても、その弾性繊維としての特性を保持できるという利点がある。
【実施例】
【0101】
以下に本発明の実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例における分析、測定は、以下の方法に拠った。
【0102】
<ポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量>
ポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量は水酸基価(KOH(mg)/g)より求めた。
<ポリトリメチレンエーテルグリコールの末端アリル基量>
ポリトリメチレンエーテルグリコールの末端アリル基量は 1H−NMR(BRUKER製「AVANCE400」)により測定した。
<ポリエーテルポリオールの分子量分布>
ポリエーテルポリオールの分子量分布は、ポリエーテルポリオールのテトラヒドロフラン溶液を調製し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GOC)装置〔東ソー社製、製品名「HLC−8220」 (カラム:TSKgelSuperHZM−N(3本)〕を用い、テトラヒドロフラン・キャリブレーション・キット(Polymer Labo
ratories社)にて検量線を作成し、測定した。
【0103】
<ポリウレタン及びポリウレタンウレアの分子量>
得られたポリウレタン又はポリウレタンウレアの分子量は、ポリウレタン又はポリウレタンウレアのジメチルアセトアミド溶液を調製し、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC−8120」 (カラム:TskgelH3000/H4000/H6000)〕を用い、標準ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0104】
<ポリウレタン及びポリウレタンウレアのハードセグメント量>
得られたポリウレタン又はポリウレタンウレアのハードセグメント量は、P.J.Flory,Journal of American Chemical Society,58,1877〜1885(1936)をもとに、全体重量に対する、イソシアネートとアミン結合部の重量を、下記式で算出したものである。
ハードセグメント(%)=[(R−1)(Mdi+Mda) /{Mp +R・Mdi+(R−1)・Mda+Mc ・Gc }]×100
ここで、
R=イソシアネートのモル数/(ポリエーテルポリオールの水酸基のモル数+末端アリル基のモル数)
Mdi=ジイソシアネートの数平均分子量
Mda=ジアミンの数平均分子量
Mp =ポリエーテルポリオールの数平均分子量
Mc =末端アリル基の分子量
Gc =末端アリル基の当量(ポリエーテルポリオール1モル当たりの末端アリル基のモル数)
【0105】
<フィルム物性>
ポリウレタン又はポリウレタンウレア試験片は幅10mm、長さ100mm、厚み約50μmの短冊状とし、JIS K6301に準じ、引張試験機〔オリエンテック社製、製品名「テンシロンUTM−III −100」〕を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃(相対湿度55%)での引張破断強度、引張破断伸度、100〜600%への応力変動率を測定した。100〜600%の応力変動率とは、600%伸長時の応力の100%変形時の応力に対する倍率を示す。
【0106】
<23℃での弾性保持率及び残留歪み>
温度23℃(相対湿度55%)において、幅10mm、厚さ約50μmのフィルムを50mmの長さでセットし500mm/分の速度で300%まで伸長し、引き続いてもとの長さまで500mm/分の速度で収縮させ、Stress−Strainカーブを描いた。これを5回繰り返した。n回目の伸長時のS−Sカーブの150%伸長における応力をHn、n回目の収縮時のS−Sカーブの150%伸長における応力をHrnとすると、Hrn/Hnを弾性保持率(%)とした。又、n回目の伸長時の応力が立ち上がる点の伸長度を残留歪みとした。
【0107】
<−10℃での弾性保持率及び残留歪み>
温度−10℃(相対湿度未測定)において、幅10mm、厚さ約50μmのフィルムを50mmの長さでセットし500mm/分の速度で300%まで伸長し、引き続いてもとの長さまで500mm/分の速度で収縮させ、Stress−Strainカーブを描いた。これを2回繰り返した。n回目の伸長時のS−Sカーブの150%伸長における応力をHn、n回目の収縮時のS−Sカーブの150%伸長における応力をHrnとすると、Hrn/Hnを弾性保持率とした。又、n回目の伸張時の応力が立ち上がる点の伸長度を
残留歪みとした。
【0108】
<100℃での弾性保持率及び残留歪み>
温度100℃(相対湿度未測定)において、幅10mm、厚さ約50μmのフィルムを50mmの長さでセットし500mm/分の速度で300%まで伸長し、引き続いてもとの長さまで500mm/分の速度で収縮させ、Stress−Strainカーブを描いた。これを2回繰り返した。n回目の伸長時のS−Sカーブの150%伸長における応力をHn、n回目の収縮時のS−Sカーブの150%伸長における応力をHrnとすると、Hrn/Hnを弾性保持率とした。又、n回目の伸張時の応力が立ち上がる点の伸長度を残留歪みとした。
【0109】
<透湿度>
JIS Z−0208に準じて40℃、90%RHの条件下で透湿度カップを用いて重量測定によりフィルムの透湿度を測定した。
【0110】
参考例1
ポリトリメチレンエーテルグリコールの製造
<1,3−プロパンジオールの脱水縮合反応>
蒸留管、窒素導入管、水銀温度計及び攪拌機を備えた1000mLの四つ口フラスコに1NL/分で窒素を供給しながら1,3−プロパンジオール500gを仕込んだ。これに炭酸ナトリウム0.348gを仕込んだ後、攪拌しつつ徐々に95重量%濃硫酸6.78gを添加した。このフラスコをオイルバス中に浸して加熱し、約1.5時間でフラスコ内液温を163℃に到達させた。フラスコ内液温が163℃になった時点を反応開始点とし、以後、液温を163℃に保持して18時間反応させた。反応により生成した水は窒素に同伴させて留去した。
【0111】
室温まで放冷された反応液を脱塩水500gが入った2Lの四つ口フラスコに移し、8時間還流させて硫酸エステルの加水分解を行った。水酸化カルシウム5.84gを加えて、70℃にて2時間攪拌して中和した後、オイルバスで加熱しながら窒素バブリングして水の大部分を留去し、次いで、トルエンを加えて共沸脱水を行った。加圧濾過にて固形物を濾別した後、エバポレーターでトルエンを留去した。更に、120℃にて2時間、5mmHgの減圧下でポリエーテルの乾燥を行い、ポリトリメチレンエーテルグリコール(A)を得た。NMRより求めた数平均分子量は1995、末端アリル基の割合は1.40%であった。
【0112】
<不飽和末端基低減反応>
四つ口フラスコに「5%パラジウム担持活性炭」〔NEケムキャット社製、Eタイプ、含水品(含水率54.76重量%)、Lot No.217−0404140〕2.21g(ポリトリメチレンエーテルグリコールに対して乾燥品として0.5重量%)、水30.0g、イソプロピルアルコール30.0g、ポリトリメチレンエーテルグリコール200.0gを加え、還流加熱を行った。このときの内温は約90℃であった。4時間還流加熱した後、室温まで冷却し、メタノール200ccを加えて有機層を希釈した後、0.2μmのPTFEメンブレンフィルターを使用し、加圧濾過にて触媒を濾別した。エバポレーターにより、濾液から水及びアルコールの大部分を留去し、更に、120℃、5mmHgにて1時間乾燥を行った。得られたポリトリメチレンエーテルグリコールの末端アリル基の割合はNMRの検出限界以下であった。
【0113】
実施例1
3Lセパラブルフラスコにあらかじめ40℃に加温した燐酸5ppmを添加したポリトリメチレンエーテルグリコール(水酸基価より算出した数平均分子量2000、末端アリ
ル基比率1.4%)2200.84gを加え、引き続いて40℃に加温したジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)499.16gを加えた(NCO/OH比=1.80)。45℃のオイルバスにセットし、窒素気流下、碇型攪拌翼(150rpm)で攪拌しつつ、1 時間かけてオイルバスの温度を70℃まで昇温し、その後70℃にて3時間保持した。滴定によりNCOの反応率が98%を越えていることを確認した後に、プレポリマーを2Lのブリキ缶に移し、40℃の恒温槽にて一晩保持した。
【0114】
プレポリマータンクにプレポリマー1848g、脱水ジメチルアセトアミド(DMAC、関東化学社製)2772gを加え、室温にて攪拌し溶解させたのち、10℃に冷却し、保持した。アミンタンクにエチレンジアミン(EDA)/プロピレンジアミン(PDA)/ジエチルアミン(DEA)=76.5/19.1/4.4(モル比)の3%のDMAC溶液を調製し、10℃に冷却し保持した。注型機(2液定量吐出混合装置)を用いて、それぞれのタンクより計量ポンプ駆動モーター回転数をインバーター制御した計量ポンプで、アミン/NCO比が1.02を中心に0.98〜1.06まで0.02刻みで流量比を調整し全流量が120g/分となるように実験を行い、それぞれ反応温度が安定したところでサンプルの採取を行った。(アミン/NCO=1.00の場合、プレポリマー溶液96.10g /分、アミン溶液を23.90g/分の流量)。パワーミキシングユニットでは、ミキサーはジャケットを10℃で冷却し、高速攪拌にて混合して反応を行い、ポリウレタンウレアのDMAC溶液を得た。この溶液を40℃の恒温槽にて一晩熟成した後に、GPCで分子量及び分子量分布の測定を実施した。アミン/NCO=1.02付近のものから、重量平均分子量で18〜20万程度のポリウレタンウレアを選び、この溶液をガラス板上にキャストし、60℃にて乾燥させて厚さ約50μmのフィルムを得た。又、湿式紡糸法により弾性繊維を得た。
【0115】
実施例2〜4
実施例1と同様にしてポリウレタンウレアの合成、フィルム化を実施した。
表1からわかるように、末端アリル基を含有するポリトリメチレンエーテルグリコールについては、その分鎖停止剤となるモノアミンの量を低減させてやることで、分子量の調整が可能である。
【0116】
比較例1
3Lセパラブルフラスコにあらかじめ40℃に加温し、あらかじめ燐酸5ppmを添加したポリトリメチレンエーテルグリコール2200.84gを加え、引き続いて40℃に加温したジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)499.16gを加えた(NCO/OH=1.80)。45℃のオイルバスにセットし、窒素気流下、碇型攪拌翼(150rpm)で攪拌しつつ、1時間かけてオイルバスの温度を70℃まで昇温し、その後70℃にて3時間保持した。滴定によりNCOの反応率が98〜101%になっていることを確認した後に、プレポリマーを2Lのブリキ缶に移し、40℃の恒温槽にて一晩保持した。
【0117】
エチレンジアミン(EDA)/プロピレンジアミン(PDA)/ジエチルアミン(DEA)=76.5/19.1/4.4(モル比)アミン混合液を滴下ロートに仕込み、釜にてプレポリマー溶液を激しく攪拌しながら加えた。加えると同時にゲル化がおこり、均質なポリウレタンウレアは得られなかった。この塊をDMACに溶解しようと試みたが、均一に溶解することはできなかった。
更に、溶媒のDMACを用いることなく実施例1と同様に注型機を用いて、ウレタン化反応を試みたが、やはり均一なポリウレタンウレアは得られなかった。
【0118】
このように反応性の高い芳香族イソシアネートと短鎖脂肪族ジアミンを用いたポリウレタンウレア反応では、溶媒を用いて希釈することなく反応を行うことは事実上不可能であ
る。
又、ポリウレタン及びポリウレタンウレアの製造において、溶剤を用いない特開2005−535744号公報に開示されたような技術と、本発明のように溶剤を用いる技術は全く別である。特開2005−535744号公報の本文中に有用なジアミン鎖延長剤の例示として1, 2- エチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,2−プロパンジアミン等の短鎖脂肪族ジアミンが挙げられているが、実施不可能であることがわかる。
【0119】
比較例2
ポリトリメチレンエーテルグリコールの代わりに、ポリテトラメチレンエーテルグルコール(三菱化学製、水酸基価換算数平均分子量1970)を用いた以外は、実施例1と同様にしてプレポリマー及びポリウレタンウレア溶液、ポリウレタンウレアフィルムを得た後に、種々のフィルム物性試験を実施した。
【0120】
【表1】

【0121】
表1中、末端アリル基の割合は、(末端アリル基のモル数/末端水酸基のモル数)×100で表される。又、1官能成分モル%は、(ポリオールの末端アリル基+モノアミン)/(ポリオールの水酸基+ポリオールの末端アリル基+ジアミン+モノアミン)で表される。
【0122】
【表2】

【0123】
実施例5
実施例1にて製造したプレポリマー70gと脱水DMAC(関東化学社製)を300ccセパラブルフラスコに加え、碇型攪拌翼で100rpm、液温28〜30℃で攪拌し、溶解時間を計測した。25分間でプレポリマーは完全に溶解した。
比較例3
比較例1にて製造したプレポリマー70gと脱水DMAC(関東化学社製)を300ccセパラブルフラスコに加え、液温28〜30℃、碇型攪拌翼で100rpmの速度で50分間攪拌したが、完全に溶解しなかった。さらに25分間150rpmの速度で攪拌してやっと全て溶解した(合計75分)。
【0124】
実施例6
3Lセパラブルフラスコにあらかじめ40℃に加温した燐酸5ppmを添加したポリトリメチレンエーテルグリコール(水酸基価より算出した数平均分子量3420、末端アリル基比率3.17%)2435.3gを加え、引き続いて40℃に加温したジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)411.9gを加えた(NCO/OH=2.30)。45℃のオイルバスにセットし、窒素気流下、碇型攪拌翼(150rpm)で攪拌しつつ、1時間かけてオイルバスの温度を70℃まで昇温し、その後70℃にて3時間保持した。滴定によりNCOの反応率が98%を越えていることを確認した後に、プレポリマーを3Lのブリキ缶に移し、40℃の恒温槽にて一晩保持した。
【0125】
プレポリマータンクにプレポリマー2242g、脱水ジメチルアセトアミド(DMAC、関東化学社製)3363gを加え、室温にて攪拌し溶解させたのち、10℃に冷却し、保持した。アミンタンクにエチレンジアミン(EDA)/プロピレンジアミン(PDA)/ジエチルアミン(DEA)=76.7/19.2/4.1(モル比)の3%のDMAC溶液を調製し、10℃に冷却し保持した。注型機(2液定量吐出混合装置)を用いて、それぞれのタンクより計量ポンプ駆動モーター回転数をインバーターにて制御した計量ポンプで、アミン/NCO比が1.02を中心に0.98〜1.06まで0.02刻みで流量比を調整し全流量が120g/分となるように実験を行い、それぞれ反応温度が安定したところでサンプルの採取を行った。(アミン/NCO=1.00の場合、プレポリマー溶液96.10g /分、アミン溶液を23.90g/分の流量)。パワーミキシングユニットでは、ミキサーはジャケットを10℃で冷却し、高速攪拌で混合して反応を行い、ポリウレタンウレアのDMAC溶液を得た。この溶液を40℃の恒温槽にて一晩熟成した後に、GPCで分子量及び分子量分布の測定を実施した。アミン/NCO=1.02付近のものから、重量平均分子量で18〜20万程度のポリウレタンウレアを選び、この溶液をガラス板上にキャストし、60℃にて乾燥させて厚さ約50μmのフィルムを得た。又、湿式紡糸法により弾性繊維を得た。
【0126】
実施例7〜9
実施例6と同様にしてポリウレタンウレアの合成、フィルム化を実施した。
表3からわかるように、末端アリル基を含有するポリトリメチレンエーテルグリコールについては、その分鎖停止剤となるモノアミンの量を低減させてやることで、分子量の調整が可能である。
【0127】
【表3】

【0128】
表3中、末端アリル基の割合は、(末端アリル基のモル数/末端水酸基のモル数)×100で表される。又、1官能成分モル%は、(ポリオールの末端アリル基+モノアミン)/(ポリオールの水酸基+ポリオールの末端アリル基+ジアミン+モノアミン)で表される。
【0129】
【表4】

【0130】
実施例10
3Lセパラブルフラスコにあらかじめ40℃に加温した燐酸5ppmを添加したポリトリメチレンエーテルグリコール(水酸基価より算出した数平均分子量3420、末端アリル基比率3.17%)2472.4gを加え、引き続いて40℃に加温したジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)327.3gを加えた(NCO/OH=1.80)。45℃のオイルバスにセットし、窒素気流下、碇型攪拌翼(150rpm)で攪拌しつつ、1時間かけてオイルバスの温度を70℃まで昇温し、その後70℃にて3時間、さらに80℃に昇温して2時間保持した。滴定によりNCOの反応率が98%を越えていることを確認した後に、プレポリマーを3Lのブリキ缶に移し、40℃の恒温槽にて一晩保持した。
【0131】
プレポリマータンクにプレポリマー2091.5g、脱水ジメチルアセトアミド(DMAC、関東化学社製)3137gを加え、室温にて攪拌し溶解させたのち、10℃に冷却し、保持した。アミンタンクにエチレンジアミン(EDA)/プロピレンジアミン(PDA)/ジエチルアミン(DEA)=77.0/19.3/3.7(モル比)の3%のDMAC溶液を調製し、10℃に冷却し保持した。注型機(2液定量吐出混合装置)を用いて、それぞれのタンクより計量ポンプ駆動モーター回転数をインバーターにて制御した計量
ポンプで、アミン/NCO比が1.02を中心に0.98〜1.06まで0.02刻みで流量比を調整し全流量が120g/分となるように実験を行い、それぞれ反応温度が安定したところでサンプルの採取を行った。(アミン/NCO=1.00の場合、プレポリマー溶液96.10g /分、アミン溶液を23.90g/分の流量)。パワーミキシングユニットでは、ミキサーはジャケットを10℃で冷却し、高速攪拌で混合して反応を行い、ポリウレタンウレアのDMAC溶液を得た。この溶液を40℃の恒温槽にて一晩熟成した後に、GPCで分子量および分子量分布の測定を実施した。アミン/NCO=1.02付近のものから、重量平均分子量で18〜20万程度のポリウレタンウレアを選び、この溶液をガラス板上にキャストし、60℃にて乾燥させて厚さ約50μmのフィルムを得た。又、湿式紡糸法により弾性繊維を得た。
【0132】
実施例11〜15
実施例10と同様にしてポリウレタンウレアの合成、フィルム化を実施した。
表5からわかるように、末端アリル基を含有するポリトリメチレンエーテルグリコールについては、その分鎖停止剤となるモノアミンの量を低減させてやることで、分子量の調整が可能である。
【0133】
【表5】

【0134】
表5中、末端アリル基の割合は、(末端アリル基のモル数/末端水酸基のモル数)×100で表される。又、1官能成分モル%は、(ポリオールの末端アリル基+モノアミン)/(ポリオールの水酸基+ポリオールの末端アリル基+ジアミン+モノアミン)で表される。
【0135】
【表6】

【0136】
このようにポリエーテルポリオールの分子量を適切に選んでポリウレタン重合物を製造することにより、優れた弾性性能を発現させることが可能である。
このように、ポリトリメチレンエーテルグリコールより誘導されるプレポリマーは、既知のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)より誘導されるプレポリマーと比較して、同じNCO/OH仕込み比で調製したものであっても非プロトン性極性溶媒であるジメチルアセトアミドへの溶解速度が大きい。ポリウレタンウレア弾性糸の製造において、イソシアネートとジアミンの反応熱が大きいため、プレポリマー溶液は0℃から15℃に冷却し、反応に用いられることが多く、温度を上げて溶解速度を上げることはその後の冷却を考えると時間的に不利である。又、ジメチルアセトアミドの共存下40℃以上にて長時間おくと、イソシアネートの3量化や架橋反応をはじめとする副反応が起こり好ましくない。したがって、ポリトリメチレングリコールより誘導されるプレポリマーとDMACをはじめとする非プロトン性極性溶媒とともに用いることが生産性の向上につながるという発見は、工業スケールでの生産において大きな意味をもつものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリオールの脱水縮合反応により得られ、1,3−プロパンジオール単位を含むポリエーテルポリオール、
(b)ポリイソシアネート化合物、及び
(c)鎖延長剤、
とからポリウレタンを製造するにおいて、非プロトン性極性溶媒の共存下において製造することを特徴とするポリウレタンの製造方法。
【請求項2】
(a)ポリエーテルポリオールが、1,3−プロパンジオール単位を50モル%以上含む請求項1に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項3】
(a)ポリエーテルポリオールが、数平均分子量が2500〜4500のものである請求項1又は2に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項4】
(a)ポリエーテルポリオールが、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が1.5以上のものである請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項5】
(b)ポリイソシアネート化合物が、芳香族ポリイソシアネートである請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項6】
(c)鎖延長剤が、ポリアミン化合物である請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項7】
(c)鎖延長剤のポリアミン化合物が、脂肪族ジアミンである請求項6に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項8】
非プロトン性極性溶媒がアミド系溶媒である請求項1〜7いずれかに記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項9】
(a)ポリオールの脱水縮合反応により得られ、1,3−プロパンジオール単位を含むポリエーテルポリオール、
(b)ポリイソシアネート化合物、及び
(c)鎖延長剤、
とから、ハードセグメントを全重量に対して1〜10重量%含有するポリウレタンを製造するにおいて、非プロトン性極性溶媒の共存下において製造することを特徴とするポリウレタンの製造方法。
【請求項10】
(a)ポリエーテルポリオールが、1,3−プロパンジオール単位を50モル%以上含む請求項9に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法によって製造されたことを特徴とするポリウレタン。
【請求項12】
請求項11に記載のポリウレタンからなることを特徴とするフィルム。
【請求項13】
請求項11に記載のポリウレタンからなることを特徴とする繊維。
【請求項14】
(a)ポリオールの脱水縮合反応により得られ、1,3−プロパンジオール単位を含む
ポリエーテルポリオール、及び、
(b)ポリイソシアネート化合物、
から製造されるイソシアネート末端プレポリマーと非プロトン性極性溶媒を含むことを特徴とするウレタンプレポリマー溶液。
【請求項15】
(a)ポリエーテルポリオールが、1,3−プロパンジオール単位を50モル%以上含む請求項14に記載のウレタンプレポリマー溶液。

【公開番号】特開2008−274205(P2008−274205A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181848(P2007−181848)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】