説明

ポリウレタンの製造

本発明は、
a)ポリイソシアネートを、
b)少なくとも2個のイソシアネート基反応性水素原子をもつ化合物と反応させることからなるポリウレタンの製造方法であって、
上記の少なくとも2個のイソシアネート基反応性水素原子をもつ化合物b)が、触媒としてアミンb1c)を使用してアルキレンオキシドb1b)を、少なくとも2個のアルキレンオキシド反応性水素原子をもつ化合物(以下、出発物質という)上に添加して得られる、官能価2〜8でヒドロキシル価が200〜800mg−KOH/gであるポリエーテルアルコールb1)を少なくとも一種含んでいる製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネートと、少なくとも2個のイソシアネート基反応性水素原子をもつ化合物との反応によるポリウレタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは古くから知られており、広く文献に記載されている。これらは、通常、ポリイソシアネートと少なくとも2個のイソシアネート基反応性水素原子をもつ化合物との反応で製造される。
【0003】
ポリウレタンは、多くの技術分野で使用可能である。異なる性質のポリウレタンを製造するために出発化合物を変更することができる。このようにして得られるポリウレタンは、緻密であることもあり、発泡剤を使用して発泡させたものもある。
【0004】
市販されているポリイソシアネートの数が限られているため、異なる性能のポリウレタンは、少なくとも2個のイソシアネート基反応性水素原子をもつ化合物を変更して製造することが好ましい。
【0005】
これらの少なくとも2個のイソシアネート基反応性水素原子をもつ化合物は、多くの場合多官能性アルコールである。ポリエーテルアルコールとポリエステルアルコールが工業的に最も重要である。
【0006】
ポリエーテルアルコールは、主にアルキレンオキシドを、好ましくはエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを、多官能性アルコール及び/又はアミンに付加させて製造される。この付加反応は通常、触媒の存在下で行われる。
【0007】
これらの方法のすべては、当業界の熟練者には既知である。
【0008】
常に、ポリウレタンの加工性と製品性能の向上を図る必要がある。上に述べたように、これは、実質的にポリエーテルアルコールの変更により可能となる。この変更は、用いるポリオールの種類により行うことができ、また添加物質の使用で行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、これら成分の流動性が改善されていることを特徴とするポリウレタンの製造方法を提供することである。これらの成分は、非常に低粘度であり、低温で効率的にポンプ輸送できる必要がある。これらの成分は、充填材を添加後でも加工可能な粘度を持っている必要がある。また、これらの成分は、発泡剤を、具体的には炭化水素をよく溶解し、イソシアネートに対する相溶性が改善されている必要がある。得られるポリウレタンは、揮発物があまり含まず、均一な構造を持つこと、具体的には表面に気孔やひびがないことが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
我々は、驚くべきことに、触媒としてアミンを使用して得られた少なくとも一種のポリエーテルアルコールを含むポリオール成分を使用すると本目的が達成されることを見出した。
【0011】
US20070203319とUS20070199976には、ジメチルエタノールアミンにより室温で固体の化合物を含む出発物質にアルキレンオキシドを付加させて得られるポリエーテルアルコールが記載されている。しかしながら、これらのポリオールを用いて得られたポリウレタンは記載されていない。
【0012】
従って、本発明は、
a)ポリイソシアネートを、
b)少なくとも2個のイソシアネート基反応性水素原子をもつ化合物と反応させることからなるポリウレタンの製造方法であって、
上記の少なくとも2個のイソシアネート基反応性水素原子をもつ化合物b)が、触媒としてアミンb1c)を使用してアルキレンオキシドb1b)を少なくとも2個のアルキレンオキシド反応性水素原子をもつ化合物(以下、出発物質という)上に付加して得られる官能価が2〜8でヒドロキシル価が200〜800mg−KOH/g(好ましくは200〜600mg−KOH/g)であるポリエーテルアルコールb1)を少なくとも一種含んでいる製造方法を提供する。
【0013】
ポリエーテルアルコールb1)は、成分b)として単独で用いることができる。
【0014】
好ましくは、ポリエーテルアルコールb1)は、成分b)の質量に対して10〜90質量%の量で用いられる。
【0015】
ポリエーテルアルコールb1)の製造に用いられる少なくとも2個のアルキレンオキシド反応性水素原子をもつ化合物が、少なくとも一種の室温で固体の化合物b1ai)を含む混合物を含むことが好ましい。
【0016】
この種の化合物は既知であり、ポリエーテルアルコールの製造に、特に硬質ポリウレタン発泡体中で使用されるものの製造にしばしば用いられている。これらは、好ましくは、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グルコース、ソルビトール、マンニトール、ショ糖、多価フェノール、レゾール、例えば、フェノールとホルムアルデヒドのオリゴマー状縮合生成物、アニリンとホルムアルデヒド(MDA)とオリゴマー状縮合生成物、トルエンジアミン(TDA)、フェノールとホルムアルデヒドとジアルカノールアミンのマンニッヒ縮合物、メラミン、また少なくとも2種の上記のアルコールの混合物からなる群から選ばれる。
【0017】
本発明のある好ましい実施様態においては、化合物b1ai)が、ショ糖とソルビトールとペンタエリスリトールからなる群から選ばれ、より好ましくはショ糖またはソルビトールから選ばれる。本発明の特に好ましい実施様態においては、b1ai)がショ糖である。
【0018】
化合物b1ai)として用いられる芳香族アミンは、より具体的には、トルエンジアミン(TDA)またはジフェニルメタンジイソシアネート(MDA)または高分子状のMDA(p−MDA)からなる群から選ばれる。TDAの場合、使用するのは、特に2,3−異性体及び3,4−異性体(ビシナルTDAとも呼ばれる)である。
【0019】
有用な出発物質は、さらに少なくとも一種の室温で液体である化合物b1aii)を含む、アルキレンオキシド反応性水素原子を少なくとも2個もつ化合物b1a)を含んでいる。
【0020】
本発明のある好ましい実施様態においては、成分b1)の出発物質が、アルキレンオキシドに反応性の水素原子を含み室温で液体の化合物b1aii)と化合物b1ai)とを含む。
【0021】
化合物b1aii)は、アルコールまたはアミンを含んでいてもよい。これらは、特に1〜4個の、好ましくは2〜4個のアルキレンオキシドに反応する水素原子をもつ。
【0022】
化合物(b1aii)は、好ましくはグリセロール、1〜20個の炭素原子をもつ単官能性アルコール、エタノール、プロピレングリコールとその高級同族体、エチレングリコールとその高級同族体、またモノ−、ジ−またはトリアルカノールアミンからなる群から選ばれ、特にグリセロールである。
【0023】
本発明の他の実施様態においては、成分b1a)が、少なくとも一種の室温で固体のアミンb1ai)と室温で液体のアルコールb1aii)と混合物を含む。室温で固体のアルコール類b1ai)は、MDAと高分子状MDAを含んでいることが好ましい。室温で液体のアルコールb1aii)は、エチレングリコールとその高級同族体およびプロピレングリコールとその高級同族体を含んでいることが好ましい。p−MDA中のこれらのアミン同族体の濃度はプロセス条件に依存する。一般にその分布(質量パーセント)は次の通りである:
二環MDA:50〜80質量%
三環MDA:10〜25質量%
四環MDA:5〜12質量%
五環以上のMDA:5〜12質量%
好ましいp−MDA混合物は次の組成をもつ:
二環MDA:50質量%
三環MDA:25質量%
四環MDA:12質量%
五環以上のMDA:13質量%
さらに好ましいp−MDA混合物は次の組成をもつ:
二環MDA:80質量%
三環MDA:10質量%
四環MDA:5質量%
五環以上のMDA:5質量%
【0024】
本発明のさらに好ましい実施様態においては、成分b1a)が、少なくとも一種の室温で固体のアルコール(b1ai)と、一種の室温で液体のアルコール(b1aii)の混合物を含む。室温で固体のアルコール(b1ai)は、上述の糖アルコールを含むことが好ましく、特にショ糖を含むことがより好ましい。室温で液体の化合物(b1aii)は、グリセロール、1〜20個の炭素原子をもつ単官能性アルコール、エタノール、プロピレングリコールとその高級同族体、エチレングリコールとその高級同族体、およびモノ−、ジ−またはトリアルカノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物b1aii)を含むことが好ましく、特にグリセロールを含むことが好ましい。成分b1a)は水を含んでいてもよい。水を使用する場合、その量は、特に成分b1a)の質量に対して25質量%以下である。
【0025】
上述のように、室温で液体の化合物類(b1aii)は、アルキレンオキシド反応性の水素原子をもち1〜20個の炭素原子をもつ化合物を含んでいてもよい。この場合、単官能性アルコール、例えばメタノールやエタノール、プロパノール、オクタノール、ドデカノールが好ましい。
【0026】
アルキレンオキシドb1b)は、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、スチレンオキシド、およびこれらの2つ以上の混合物を含むことが好ましい。プロピレンオキシド、エチレンオキシド、またはプロピレンオキシドとエチレンオキシドの混合物をアルキレンオキシドb1b)として使用することが好ましい。アルキレンオキシドb1b)としてプロピレンオキシドを使用することが特に好ましい。
【0027】
上述のように、触媒b1c)は、成分b1ai)とb1aii)とは異なるアミンを含んでいる。このアミンは、一級アミン、二級アミンまたは三級アミンを含んでいてもよく、また脂肪族アミンまたは芳香族アミンを、特に三級アミンを含んでいてもよい。他の実施様態においては、環内に少なくとも一個の窒素原子を持つ、好ましくは一個の窒素原子をもつ芳香族複素環化合物が関与していてもよい。
【0028】
これらのアミンb1c)は、好ましくは、トリアルキルアミン(具体的には、トリメチルアミンとトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン)、ジメチルアルキルアミン(具体的には、ジメチルエタノールアミンとジメチルエトキシエタノールアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルブチルアミン)、芳香族アミン(具体的には、ジメチルアニリン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルベンジルアミン、ピリジン)、イミダゾール(具体的には、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、5−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−ヒドロキシプロピルイミダゾール、2,4,5−トリメチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール)、グアニジン、アルキル化グアニジン(具体的には、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン、アミジン(具体的には、1,5−ジアゾ−ビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,5−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン)からなる群から選ばれる。
【0029】
触媒としてあげたアミンの少なくとも2種の混合物を使用することもできる。
【0030】
本発明のある好ましい実施様態においては、触媒b1c)がジメチルエタノールアミンである。
【0031】
本発明のある好ましい実施様態においては、触媒b1c)がイミダゾールである。
【0032】
このアミンは、全体のバッチに対して0.01〜5.0質量%の量で、好ましくは0.05〜3.0%、より好ましくは0.1〜1.0%の量で使用することが好ましい。
【0033】
ポリエーテルアルコールb1)を製造するためには、通常、反応器に出発物質混合物b1a)とb1c)の成分を投入し、相互に混合する。次いで、反応器中でこの混合物を不活性化させる。その後、アルキレンオキシドを投入する。
【0034】
アルキレンオキシドの付加反応は、90〜150℃の温度で、0.1〜8barの圧力で実施することが好ましい。アルキレンオキシドの反応を完了させるために、通常、アルキレンオキシドの投入後に後反応期が続く。
【0035】
通常、アルキレンオキシドの投入終了後に、後反応期を行ってアルキレンオキシドの反応を終了させる。必要ならこの後に、さらに後反応期を続ける。通常この後に、揮発性物質の除去のための蒸留を行うが、これは減圧下で行うことが好ましい。
【0036】
アミン触媒b1c)がこのポリエーテルアルコール中に残留してもよい。アルカリ金属の酸化物と水酸化物を使用する場合には必要となる触媒の除去が不必要となるため、これにより製造方法が単純となる。これにより空時収量が改善される。濾過で塩を除去すると濾塊が生成する。濾塊中に失われるポリオールの量は、通常数%となる。空時収量の改善と濾過損失の防止は、製造コストの低下につながる。
【0037】
アルカリ金属水酸化物触媒とアミン系触媒の併用もまた有用である。この触媒は、特に低ヒドロキシル価のポリオールの製造に使用可能である。得られる生成物を、アルカリ金属水酸化物触媒によるポリオールと同様に後処理することができる。あるいは、これらを、酸を使用する中和工程のみで処理することができる。この場合、乳酸、酢酸または2−エチルヘキサン酸などのカルボン酸を使用することが好ましい。
【0038】
反応中にアミン触媒b1c)がアルコキシル化されてもよい。したがって、これらのアルコキシル化アミンは、より大きな分子量をもち、それ以降の生成物中でより小さな揮発性を示す。アルコキシル化アミン系触媒の保持する自己反応性のため、下流でのイソシアネートとの反応の際に、ポリマー構造中へ取り込まれる。形成される三級アミンが自己反応性であるため、ポリオールに、特定用途での利用に有用な自己反応性を付与することができる。
【0039】
特定の理論に拘泥するのではないが、触媒としてアミンを用いて得られるポリエーテルアルコールは、他の触媒を用いて得られるポリエーテルアルコールの構造とは異なる構造をとると考えられている。この異なる分子構造は、ポリウレタンの製造において利点となる。
【0040】
したがって、本発明のポリオールは、ポリウレタン用途において、特にポリウレタン発泡体の製造方法において、明確な利点を有している。
【0041】
上述のように、ポリエーテルアルコールb1)は、ポリウレタンの製造で使用される。
【0042】
このために使用される出発原料は、より具体的には次のように記載される:
可能な有機ポリイソシアネートa)は、好ましくは多官能性の芳香族イソシアネートである。
【0043】
具体例としては、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)およびその異性体混合物、4,4’−、2,4’−及び2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびその異性体混合物、4,4’−及び2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物があげられ、硬質ポリウレタン発泡体の製造の場合、特に4,4’−と2,4’−と2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートの混合物(粗製MDI)があげられる。
【0044】
本発明のポリエーテルアルコールは、通常、イソシアネート基反応性水素原子を少なくとも2個もつ他の化合物と混合して用いられる。
【0045】
本発明で用いられるポリエーテルアルコールb1)と併用するのに有用である、少なくとも2個のイソシアネート反応性水素原子をもつ化合物には、特に、OH価が100〜1200mg−KOH/gの範囲にあるポリエーテルアルコール及び/又はポリエステルアルコールが含まれる。
【0046】
本発明で用いられるポリエーテルアルコールb1)と併用されるポリエステルアルコールは、通常、2〜12個の炭素原子を持つ、好ましくは2〜6個の炭素原子をもつ多官能性アルコール、好ましくはジオールと、2〜12個の炭素原子をもつ多官能性カルボン酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、マレイン酸、フマル酸、好ましくはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸異性体混合物)との縮合で製造される。
【0047】
本発明で用いられるポリエーテルアルコールb1)と併用されるポリエーテルアルコールの官能価は、通常2〜8であり、特に3〜8である。
【0048】
既知の方法で製造されたポリエーテルアルコールを使用することが、例えば触媒(好ましくはアルカリ金属水酸化物)の存在下でアルキレンオキシドのアニオン重合で製造されたポリエーテルアルコールを使用することが特に好ましい。
【0049】
用いるアルキレンオキシドは、ほとんどエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドであり、好ましくは純粋な1,2−プロピレンオキシドである。
【0050】
用いる出発分子は、特に、分子内に少なくとも3個の、好ましくは4〜8個のヒドロキシル基をもつ化合物、または少なくとも2個の1級アミノ基をもつ化合物である。
【0051】
分子内に少なくとも3個の、好ましくは4〜8個のヒドロキシル基をもつ出発分子としては、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、糖化合物(例えば、グルコース、ソルビトール、マンニトール、ショ糖)、多価フェノール、レゾール、例えばフェノールとホルムアルデヒドのオリゴマー状縮合生成物、アニリンとホルムアルデヒド(MDA)の縮合生成物、トルエンジアミン(TDA)、フェノールとホルムアルデヒド、ジアルカノールアミンのマンニッヒ縮合物、メラミンを使用することが好ましい。
【0052】
これらのポリエーテルアルコールの官能価は、3〜8であることが好ましく、ヒドロキシル価は、好ましく100mg−KOH/g〜1200mg−KOH/gであり、特に120mg−KOH/g〜570mg−KOH/gである。
【0053】
ポリオール成分として二官能性ポリオールを用いて、例えば分子量が500〜1500のポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールを用いて、ポリオール成分の粘度を調整することができる。
【0054】
これらの少なくとも2個のイソシアネート反応性水素原子をもつ化合物は、必要に応じて使用される鎖延長剤と架橋剤も含んでいる。鎖延長剤及び/又は架橋剤を使用して、あるいはこれらを使用せずに、硬質ポリウレタン発泡体を製造することができる。二官能性鎖延長剤、三官能性以上の架橋剤、または必要ならこれらの混合物を添加することは、機械的性質の調整に有効であると考えられる。用いる鎖延長剤及び/又は架橋剤は、アルカノールアミンであることが好ましく、特に、分子量が400未満、好ましくは60〜300の範囲のジオール及び/又はトリオールが好ましい。
【0055】
鎖延長剤、架橋剤またはそれらの混合物は、ポリオール成分に対して1〜20質量%の量で、好ましくは2〜5質量%の量で使用することが好ましい。通常、これらのポリウレタン発泡体は発泡剤の存在下で製造される。用いる発泡剤が水であることが好ましく、これはイソシアネート基と反応して二酸化炭素を放出する。他のしばしば用いられる化学発泡剤はギ酸であり、これはイソシアネートと反応して、一酸化炭素と二酸化炭素を放出する。化学発泡剤とともにあるいは化学発泡剤に代えて、いわゆる物理発泡剤を使用することもできる。物理発泡剤には、通常、供給成分に対して不活性であり、ウレタン反応条件下で気化する室温で液体の化合物が含まれる。これらの化合物の沸点は50℃未満であることが好ましい。物理発泡剤には、また室温でガス状で、加圧下で供給成分中に投入及び/又は溶解される化合物が含まれる。その例は、二酸化炭素、アルカン(具体的には、低沸点アルカン)、フルオロアルカンであり、好ましくはアルカン(具体的には、低沸点アルカン)とフルオロアルカンである。
【0056】
物理発泡剤は、通常、少なくとも4個の炭素原子をもつアルカン及び/又はシクロアルカンと、ジアルキルエーテル、エステル、ケトン、アセタール、1〜8個の炭素原子を持つフルオロアルカン、アルキル鎖中に1〜3個の炭素原子をもつテトラアルキルシラン(具体的には、テトラメチルシラン)からなる群から選ばれる。
【0057】
例としては、プロパンやn−ブタン、イソブタン、シクロブタン、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルホルメート、アセトンがあげられ、また対流圏内で分解され、このためオゾン層に無害であるフルオロアルカン(例えば、トリフルオロメタン、ジフルオロメタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)や、パーフルオロアルカン(例えば、C3F8、C4F10、C5F12、C6F14、C7F16)があげられる。ペンタン、具体的にはシクロペンタンが特に好ましい。上記の物理発泡剤は、単独で使用しても、いずれか所望の相互の組合せで使用してもよい。
【0058】
本発明のある好ましい実施様態においては、物理発泡剤と化学発泡剤の混合物が使用できる。物理発泡剤と水の混合物、具体的には炭化水素と水の混合物が特に好ましい。炭化水素の中で特に好ましいのは、ペンタンであり、これらの中では、特にシクロペンタンが好ましい。
【0059】
ポリウレタンの製造を、必要なら触媒、難燃剤、また通常使用される助剤及び/又は添加物質の存在下で実施してもよい。
【0060】
用いる出発化合物の詳細は、例えば、Kunststoffhandbuch, volume 7 “Polyurethane”, edited by Gunter Oertel, Carl−Hanser−Verlag Munich, 3rd edition, 1993に記載されている。
【0061】
本発明の方法で得られるポリウレタンは、特に発泡ポリウレタンを含み、特に硬質発泡体を含む。本発明のある特定の実施様態においては、これらの硬質発泡体が緻密なスキン層と多孔質の芯部をもち、しばしば、スキン層付き硬質発泡体または高密度構造発泡体として知られている。このような発泡体は、通常、閉鎖金型中で発泡剤の存在下で製造される。圧力と金型温度の組合せにより発泡体表面の密度を上げてスキン層を形成する。このような発泡体はいろいろな用途をもち、例えば自動車内装品やスポイラー部や、窓枠などの枠、継手、コンピューターのハウジング、濾過用の圧力プレートに用いられる。これらの用途では発泡体表面の品質が極めて重要である。
【0062】
これらの硬質発泡体には、例えば断熱用途のものも含まれる。ポリエーテルアルコールb1)と発泡剤の間の相溶性が良く、流動挙動が良いことが好ましい。一般的にはポリオール混合物とイソシアネートとの間の相溶性がよいことが好ましい。ポリオール/イソシアネートの相溶性が悪いと、特定状況下では、特に反応時間が長い系において、反応成分の分離が起こり、このため発泡体の気孔が粗大となり、発泡体の基材との接着能が低下する。
【0063】
本発明の他の実施様態においては、自動車構造中で、例えばエンジンルーム中あるいは内装中で硬質発泡体が利用される。事故の際にエネルギーを吸収するように設計されたエンジンルームの用途も存在する。硬質発泡体は、インテリア内で、背面発泡成形の高分子シート、例えばビニルシート用に用いられる。これは、例えばサイドドアのドア枠またはダッシュボードの場合である。この場合、本発明の方法で得られるポリウレタンの主な利点は曇りが少ないことである。
【0064】
曇りの減少に有利なのは、ポリエーテルアルコールb1)の自己反応性のため、触媒(これも曇りの原因である)の使用量を減らすことができることである。
【0065】
スキン層付き硬質発泡体(熱硬化発泡体とも呼ばれる)の製造で特に求められる要件は、ポリエーテルアルコールb1)と発泡剤、特に炭化水素(例えば、シクロペンタン)との間の相溶性が良いことである。
【0066】
熱硬化発泡体の製造では、しばしば充填材が使用される。充填材の一種類は、難燃性充填材であり、例えばポリリン酸アンモニウム、カプセル化赤リン、またはアルミニウム三水和物である。
【0067】
充填材のもう一つの種類は、無機塩であり、例えば炭酸カルシウム、硫酸カルシウムまたは硫酸バリウムである。
【0068】
他の工業的に重要な充填材は、粉末ガラス繊維、炭素繊維、炭素ナノチューブ、ガラスマイクロスフェアー、ケイ素、カーボンブラック、珪灰石、タルク、クレー、二酸化チタンなどの顔料である。
【0069】
以下の実施例により本発明を説明する。
【0070】
ポリオールの調整:
実施例1:(発明例)
攪拌器とジャケット加熱冷却型のアルキレンオキシドを含む固体及び液体物質の投入装置、窒素不活性化装置、真空システムを備えた960lの圧力反応器を、80℃に加熱して乾燥し、窒素で繰り返し不活性化させた。102.75kgのグリセロールを添加し、攪拌器を始動させ、154.3kgの砂糖を投入した。この反応器を95℃まで加熱した。6.03kgのDMEOAを添加後、541.57kgのPOの投入を開始したところ、反応熱により反応器温度が112℃にまで上昇した。90℃で3時間の反応終了後に、窒素気流中で100℃で生成物をストリップさせ、776kgの次の性質をもつポリオールを得た。
ヒドロキシル価:483mg−KOH/g
粘度:6600mPas(25℃)
水分率:0.023%
【0071】
実施例2:(比較例)
攪拌器とジャケット加熱冷却型のアルキレンオキシドを含む固体及び液体物質の投入装置、窒素不活性化装置、真空システムを備えた960lの圧力反応器を88℃に加熱して乾燥し、窒素で繰り返し不活性化させた。91.18kgのグリセロールを添加し、攪拌器を始動させた。次いで、3.32kgの48%−KOHと139.26kgのショ糖を添加した。105℃で96.91kgのPOを投入した。次いで温度を112℃に上げ、さらに373.54kgのPOを投入した。2時間の後反応期間後、生成物を窒素で100℃でストリップさせ、次いで水と混合し、80%リン酸で中和し、濾過した。682kgのポリオールが得られ、分析の結果、このポリオールは次の性質を持っていた:
ヒドロキシル価:497mg−KOH/g
粘度:8400mPas(25℃)
水分率:0.016%
カリウム:35.7ppm
【0072】
特に断りのない限り、ポリオールとポリオール混合物の粘度は、25℃で、スピンドルCC25DIN(スピンドル直径:12.5mm;メスシリンダ内径:13.56mm)を持つレオテックRC20回転粘度計を用いて、せん断速度が50s-1で測定した。
【0073】
ヒドロキシル価は、DIN53240により測定した。
【0074】
ペンタン溶解度の測定:
50gのポリオールまたはポリオール混合物を、100mLのガラス容器に入れる。一定量のシクロペンタンを加える。その後、このガラス容器を密閉し、5分間激しく振盪し、1時間放置する。その後、試料の外観を検査する。試料が透明な場合、より多くのシクロペンタンを用いてこの試験を繰り返す。混合物が濁っている場合、より少ないシクロペンタンでこの試験を繰り返す。このようにして、ポリオールまたはポリオール混合物中に可溶のシクロペンタンの最大量を決める。この量は、ポリオールまたはポリオール混合物のペンタン溶解度である。本方法の精度は1%である。
【0075】
【表1】

【0076】
イソシアネート相溶性:
高分子状のMDI、例えばBASF社のルプラネート(登録商標)M20(イソシアネート(I))と本発明の方法に用いるポリオールは、通常混合不可能である。イソシアネート(II)、即ちNCO含量が23質量%である4,4’−MDI系のプレポリマー(ルプラネート(登録商標)MP102として市販)は、これらのポリオールと完全に混合可能である。イソシアネートIとIIの混合物は、混合比率によって、これらのポリオールに混合可能であったり不可能であったりする。これがポリオールとイソシアネートの混和性を決める方法の基礎となっている。採用した手法は次の通りである:1.00gの上記ポリオールを、直径が4cmの時計皿上にのせる。その後、1.00gのイソシアネートIとイソシアネートIIの混合物を添加し、次いで気泡ができないようにしながら1分間スパチュラで攪拌する。攪拌1分後に試料を肉眼で観察する。この混合物は、濁っているか透明である。混合物が濁っている時、混合物中のイソシアネートII比率を上げて試験を繰り返す。混合物が透明である時、混合物中のイソシアネートIの比率を上げて試験を繰り返す。このようにして、まだ透明である混合物中のイソシアネートIの最大量を決める。混合物中のイソシアネートIの量の測定精度は2%である。
【0077】
本発明のポリオール1の場合、イソシアネートの混合比率I:IIが15/85であった。比較用ポリオールでは、イソシアネートの混合比率I:IIが5/95であった。
【0078】
実施例3:硬質発泡体としての利用
機械試験用の発泡体の調整
100質量部のポリオールまたはポリオール混合物と2.4質量部のゴールドシュミット社のテゴスタブ(登録商標)B8467界面活性剤と0.85質量部の水を含む基本発泡システムを出発点とする。ジメチルシクロヘキシルアミンとシクロペンタンをそれぞれ触媒と発泡剤として使用し、ポリマー状MDI(BASF社のルプラネート(登録商標)M20)をイソシアネートとして使用した。イソシアネートインデックスが100で、発泡体を製造した。出発原料は手で混合した。発泡体のゲル化時間が55秒となるようにジメチルシクロヘキシルアミンの量を決定した。発泡体の自由発泡密度が35kg/m3となるようにシクロペンタンの量を決めた。この組成で、11.4Lの立方体形のスチール金型中で500gの発泡体試料を製造した。20分後に試料を金型から取り出した。その後試料を3日間保存し、試験した。密度はISO規格845により、圧縮強度はISO規格604により測定した。
【0079】
【表2】

【0080】
表2の注:発泡成形の際に、本発明のポリオールは自己触媒性を示し、同一密度に到達するのにより少量の触媒とより少量の発泡剤を必要とした。
【0081】
実施例4:熱硬化用途
【0082】
【表3】

【0083】
表3の注:発泡成形の際に、本発明のポリオールは自己触媒性を示し、本発明ではないポリオールより少量の触媒を必要とした。より低い触媒濃度でこの効果が増大した。
【0084】
【表4】

【0085】
ポリオール粘度は、20℃でISO3219により測定した。表4の注:いろいろな充填材を添加した。本発明のポリオールの固有粘度は、充填系でも測定可能である。
【0086】
板の製造:
A成分を製造し少なくとも1時間放置する。イソシアネートの添加後に、混合物を、最高攪拌速度で13秒間、機械的に攪拌する。この混合物を次いで、50℃で熱金型に投入する(20×15×1cm)。5分後、この板を金型から取り出す。
【0087】
【表5】

【0088】
表面品質の評価:
これらの板の上にA4の紙を置き、丸い炭素棒で平坦な辺を用いてトレースした。このシートをスキャナに入れ、特定の閾値でもって二値化した。小さなピクセルは除いた。その後、(黒色の)突起部の面積比を決めた。系1(本発明)では突起部の比率が1%であり、系2(既存技術)では22%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリイソシアネートを、
b)少なくとも2個のイソシアネート基反応性水素原子をもつ化合物と反応させる工程を含むポリウレタンの製造方法であって、
上記の少なくとも2個のイソシアネート基反応性水素原子をもつ化合物b)が、触媒としてアミンb1c)を使用してアルキレンオキシドb1b)を、少なくとも2個のアルキレンオキシド反応性水素原子をもつ化合物に付加して得られる、官能価2〜8でヒドロキシル価が200〜800mg−KOH/gであるポリエーテルアルコールb1)を少なくとも一種含んでいる製造方法。
【請求項2】
上記ポリエーテルアルコールb1)が、上記成分b)の質量に対して10〜90質量%の量で使用される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリエーテルアルコールb1)の製造に用いられる上記の少なくとも2個のアルキレンオキシド反応性水素原子をもつ化合物が、少なくとも一種の室温で固体の化合物b1ai)を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記化合物b1ai)が、ペンタエリスリトール、グルコース、ソルビトール、マンニトール、ショ糖、多価フェノール、レゾール、アニリンとホルムアルデヒドの縮合物、トルエンジアミン、フェノールとホルムアルデヒドとジアルカノールアミンとのマンニッヒ縮合物、メラミン、また少なくとも2種の上記化合物の混合物からなる群から選ばれる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記化合物b1a)が、ショ糖、ソルビトール及びペンタエリスリトールからなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリエーテルアルコールb1)の製造に用いられる上記少なくとも2個のアルキレンオキシド反応性水素原子をもつ化合物b1a)が、少なくとも一種の室温で液体の化合物b1aii)を含む混合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記化合物b1aii)が、グリセロールと、1〜20個の炭素原子をもつ単官能性アルコール、プロピレングリコールとその高級同族体、エチレングリコールとその高級同族体、及びモノ−、ジ−またはトリアルカノールアミンからなる群から選ばれる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記化合物b1a)が、少なくとも一種の室温で固体の化合物b1ai)と少なくとも一種の室温で液体の化合物b1aii)との混合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記アミンb1c)が、トリアルキルアミン、芳香族アミン、ピリジン、イミダゾール、グアニジン、アルキル化グアニジン及びアミジンからなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
発泡剤c)の存在下で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項11】
発泡剤として水を用いる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
物理発泡剤を用いる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
上記物理発泡剤が、アルカン及びフルオロアルカンからなる群から選ばれる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
充填材の存在下で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項15】
上記充填材が無機塩である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記充填材が、ポリリン酸アンモニウム、カプセル化赤リン及びアルミニウム三水和物からなる群から選ばれる請求項14に記載の方法。
【請求項17】
上記充填材が、粉末ガラス繊維、炭素繊維、炭素ナノチューブ、ガラスマイクロスフェアー、ケイ素、カーボンブラック、珪灰石、タルク、クレー及び顔料からなる群から選ばれる請求項14に記載の方法。
【請求項18】
上記ポリウレタン発泡体が閉鎖金型中で製造される請求項1に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から16のいずれか一項に記載の方法により得られるポリウレタン。

【公表番号】特表2013−521354(P2013−521354A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555362(P2012−555362)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052555
【国際公開番号】WO2011/107366
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】