説明

ポリウレタンフォームでの使用のためのHCFO−1233zdとポリオールブレンドとの組成物

HCFO−1233zdポリウレタンフォーム発泡剤は、少なくとも1つのポリエーテルポリオールおよび少なくとも1つのポリエステルポリオールからなるポリオールブレンドと混合される。この組み合わせは、ポリウレタン、熱硬化性フォームを製造するのに有用である。ポリウレタンフォームは、電化製品、ならびに住宅および商業ビルにおける断熱などの用途において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性発泡体用のポリオールおよび発泡剤ブレンドに関する。より具体的には、本発明は、単独でのまたはその組み合わせが熱硬化性発泡体の製造に使用される1つ以上のポリオールとの発泡剤組み合わせでのHCFO−1233zd(トリフルオロ−モノクロロプロペン)のブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン層の保護のためのモントリオール議定書(Montreal Protocol)は、クロロフルオロカーボン(CFC)の使用の段階的廃止を義務づけた。ハイドロフルオロカーボン(HFC)などの、オゾン層により「やさしい」材料がクロロフルオロカーボンに置き換わった。後者の化合物は、地球温暖化を引き起こす、温室効果ガスであることが判明し、気候変動に関する京都議定書(Kyoto Protocol on Climate Change)によって規制された。新生代替材料、ハイドロフルオロプロペンは環境上許容されることが示された、すなわちゼロのオゾン層破壊係数(ODP)および許容される低い地球温暖化係数(GWP)を有する。
【0003】
現在、熱硬化性発泡体用の発泡剤としては、比較的高い地球温暖化係数を有するHFC−134a、HFC−245fa、HFC−365mfc、HFC−141a、および可燃性であり、かつ低いエネルギー効率を有するペンタン異性体などの炭化水素が挙げられる。それ故、新しい代替発泡剤が求められている。ハイドロフルオロプロペンおよび/またはハイドロクロロフルオロプロペンなどのハロゲン化ハイドロオレフィン材料がHFCの代替品として関心を集めている。下層大気中でのこれらの材料の固有の化学的不安定性は、望ましい低い地球温暖化係数およびゼロのまたはゼロに近いオゾン層破壊特性を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、熱硬化性発泡体およびそれから製造される熱硬化性発泡体を製造するために使用されるHCFO−1233とポリオールとの新規組成物であって、低いまたはゼロのオゾン層破壊係数、より低い地球温暖化係数の要求を満たし、かつ、低い毒性を示すために独特の特性を提供する新規組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも1つのポリエーテルポリオールおよび少なくとも1つのポリエステルポリオールからなるポリオールブレンドに混ぜ込まれたHCFO−1233zd(ポリウレタンフォーム発泡剤としての)を指向する。HCFO−1233zd発泡剤との、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールのブレンドは1:99〜99:1の比で変わることができる。HCFO−1233zdは好ましくは、主にHCFO−1233zdのトランス異性体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の組み合わせは、ポリウレタンおよびポリイソシアヌレートフォームを製造するのに有用である、ポリオール混合物への発泡剤の良好な溶解性を提供することが見いだされた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】蒸気圧対ポリオール100重量部当たりの発泡剤の重量部のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のHCFO−1233zd発泡剤成分の主要部分はトランス異性体であることが好ましい。トランス異性体はシス異性体よりAMES試験で著しく低い遺伝毒性を示すことが見いだされた。1233zdのトランスおよびシス異性体の好ましい比は、この組み合わせの約30重量%未満のシス異性体であり、好ましくは約10重量%未満のシス異性体である。最も好ましい比は約3%未満のシス異性体である。
【0009】
ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールのブレンドとHCFO−1233zd発泡剤との好ましい組み合わせは、望ましいレベルの断熱値を有する発泡体を生成する。HCFO−1233zdは、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの異なる比で評価され、HCFC141bおよびHFC245faに対して基準に従って評価された。HFC245faはポリオールに比較的溶けにくいが、HCFC141bがはるかにより多く溶けることは当業者に公知であり;HCFO−1233zd溶解度はHFC245faとHCFC141bとの間に入る。HCFO−1233zdは、ポリオールブレンドの安全な取り扱い、輸送および貯蔵、ならびに生じた発泡体の使用にとって必須である、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの選択の著しくより幅広いウインドウを可能にすることが意外にも見いだされた。
【0010】
本発明のポリエーテルポリオールとしては、Carpol GP−700、GP−725、GP−4000、GP−4520などのグリセリンベースのポリエーテルポリオール;Carpol TEAP−265およびEDAP−770、Jeffol AD−310などのアミンベースのポリエーテルポリオール;Jeffol SD−360、SG−361、およびSD−522、Voranol 490、Carpol SPA−357などの、蔗糖ベースのポリエーテルポリオール;Jeffol R−425XおよびR−470Xなどのマンニッヒ塩基ポリエーテルポリオール;Jeffol S−490などのソルビトールベースのポリエーテルポリオール;RENUVAシリーズなどのバイオ−ベースのポリエーテルポリオール;BiOHポリオール、ならびにJEFFADDを挙げることができる。
【0011】
本発明のポリエステルポリオールとしては、Terate 2541および3510、Stepanol PS−2352、Terol TR−925などの芳香族ポリエステルポリオールならびに脂肪族ポリエステルポリオールを挙げることができる。本発明に従った典型的な組み合わせは、HCFO−1233zd発泡剤と、1:99〜99:1のポリエステルポリオール対ポリエーテルポリオールの比でのポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールのポリオール組み合わせとを含む。
【0012】
本発明のある種の実施形態においては、HCFO−1233zd発泡剤は、いかなる実質的な量の追加成分の存在なしに発泡剤として存在すると考えられる。しかし、本発明の上記の組み合わせの範囲内にない1つ以上の任意選択の化合物または成分が、本発明の組み合わせ中に含まれ得る。このような任意選択の追加化合物としては、発泡剤としてもまた働くその他の化合物(本明細書では以下、便宜上しかし限定するつもりはなく共発泡剤と言われる)、界面活性剤、ポリマー改質剤、強化剤、着色剤、染料、溶解性増進剤、レオロジー調整剤、可塑剤、可燃性抑制剤、抗菌剤、粘度低下調整剤、充填剤、蒸気圧調整剤、核剤、触媒などが挙げられるが、それらに限定されない。ある種の好ましい実施形態においては、分散剤、細胞安定剤、界面活性剤およびその他の添加剤がまた、本発明の組み合わせ中へ組み入れられてもよい。
【0013】
本発明の組成物は、スプレー、電化製品、温水器、入口ドア、ガレージのドア、パネル、ボードストックなどを含むがそれらに限定されない当業者に公知であるポリウレタン(PUR)およびポリイソシアネート(PIR)フォーム用途において有用である。特に、本発明の組み合わせは、スプレーフォーム用途などのポリオール混合物中へ発泡剤が前もってブレンドされているPURおよびPIRフォーム用途において有用である。
【実施例】
【0014】
溶解度実験
ポリウレタン材料におけるフォーム発泡剤の蒸気圧は、磁気撹拌付き圧力容器、圧力変換器および温度変換器からなる実験装置において評価した。容器内部の温度を0.1℃内に制御し、圧力を0.1%内に制御した。
【0015】
圧力容器(容量約100ml)中へ、50gのポリオールを装填した。容器を次に、空気を除去するために真空下に置いた。金属シリンダー中の圧力の変化を監視して漏洩がまったくないことを確実にした。発泡剤を、特別に設計されたガス注射器を用いて容器中へ導入した。装填される発泡剤の量は、導入前後の注射器の重量を測定することによって検証した。容器の温度を50℃(試験中の発泡剤の沸点より上)に維持し、振盪機の速度を300rpmに維持した。発泡剤の蒸気圧を時間の関数として記録した。システムが平衡に達するのに十分な時間を可能にした。平衡に達した後に、ポリオール中に溶解した発泡剤の量を、ポリオール中に存在する添加した発泡剤と容器の気相中に存在する発泡剤との差として計算した。
【0016】
次に別の少量の発泡剤を容器に添加した。この手順を、容器中の圧力がこの温度での発泡剤の液−気平衡蒸気圧(発泡剤の臨界温度より下の温度での最大達成可能圧力)に等しくなるまで数回繰り返した。
【0017】
図1は、2つの異なるポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールとのE−HCFO−1233zd、245faおよび141bの蒸気圧を示す。各発泡剤について蒸気圧の増加はポリオールの性質に依存する。蒸気圧は、親和性が高いときには(たとえばポリエーテルポリオール)、発泡剤濃度とともに徐々に増加するであろうし;反対に、親和性が低いときには(たとえばポリエステルポリオール)、蒸気圧は、より低い発泡剤濃度でより急速に増加する。
【0018】
ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの組み合わせを使用するポリオール組成物について、蒸気圧はそれ故、2つの曲線間のエリア中のどこかにあろう。図は、E−HCFO−1233zdとのポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールについての溶解度曲線が、HFC245faおよびHCFC141bについての溶解度曲線間にあることを示し、E−HCFO−1233zdが現行の発泡剤に匹敵する溶解度を示すことを示唆する。図2はまた、曲線間のエリア(影付き)がHCFC141bおよびHFC245faについてよりE−HCFO−1233zdについて著しく大きいことを示す。これは、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの組み合わせを含有するフォームシステムを設計するときに高められた柔軟性を可能にする、E−HCFO−1233zdについての著しくより幅広い範囲の溶解度を示唆する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HCFO−1233zdと、少なくとも1つのポリエステルポリオールおよび少なくとも1つのポリエーテルポリオールを含むポリオールブレンドとを含む組成物であって、ポリエステルポリオール対ポリエーテルポリオールの比が1:99〜99:1である組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオールが、グリセリンベースのポリエーテルポリオール、アミンベースのポリエーテルポリオール、蔗糖ベースのポリエーテルポリオール、マンニッヒ塩基ポリエーテルポリオール、ソルビトールベースのポリエーテルポリオール、バイオ−ベースのポリエーテルポリオールおよびBiOHポリオールからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオールが、芳香族ポリエステルポリオールおよび脂肪族ポリエステルポリオールからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記HCFO−1233zdが約90重量%以上のトランス立体異性体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記HCFO−1233zdが約97重量%以上のトランス立体異性体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンおよびそれらの混合物からなる群から選択される追加の発泡剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびトリフルオロ−モノクロロペンタンを含む、熱硬化性の発泡性組成物。
【請求項8】
前記トリフルオロモノクロロペンタンがHCFO−1233zdである、請求項7に記載の熱硬化性の発泡性組成物。
【請求項9】
前記HCFO−1233zdが約90重量%以上のトランス立体異性体である、請求項8に記載の熱硬化性の発泡性組成物。
【請求項10】
前記HCFO−1233zdが約97重量%以上のトランス立体異性体である、請求項8に記載の熱硬化性の発泡性組成物。
【請求項11】
ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンおよびそれらの混合物からなる群から選択される追加の発泡剤をさらに含む、請求項8に記載の熱硬化性の発泡体組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2013−500386(P2013−500386A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522927(P2012−522927)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/043191
【国際公開番号】WO2011/014441
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
【Fターム(参考)】