説明

ポリウレタンフォーム用発泡性組成物及びポリウレタンフォーム

【課題】水によって生成せしめられる二酸化炭素を利用して製造されるポリウレタンフォームの断熱性能とその寸法安定性を有利に改善し得ると共に、より優れた低温下での接着性を発揮し得るポリウレタンフォーム用発泡性組成物を提供し、そしてそのポリウレタンフォーム用発泡性組成物を用いて、優れた断熱性能及び寸法安定性を実現するポリウレタンフォームを提供すること。
【解決手段】水を用いて発泡せしめて得られるポリウレタンフォームの製造に際して、ポリオール成分を構成するポリオール化合物として、アルキレンオキサイドを付加させて得られるフェノール樹脂系ポリオールを用いると共に、触媒として、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル及びジエチレントリアミンを併用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム用発泡性組成物及びポリウレタンフォームに係り、特に、水を用いて発泡せしめて得られるポリウレタンフォームの特性を改善せしめるための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリウレタンフォームは、その優れた断熱性や接着性を利用して、主に、断熱部材として、建築用内外壁材やパネル等の断熱、金属サイディングや電気冷蔵庫等の断熱、ビル・マンション・冷凍倉庫等の躯体、壁面、天井、屋根等の断熱及び結露防止、輸液パイプ等の断熱に実用されている。かかるポリウレタンフォームは、一般に、ポリオール成分に発泡剤、必要に応じて、触媒や整泡剤、難燃剤等の各種助剤を配合したポリオール配合液(プレミックス液)からなるポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを、混合装置により連続的又は断続的に混合してポリウレタンフォーム用発泡性組成物とし、これを、スラブ発泡法、注入発泡法、スプレー発泡法、ラミネート連続発泡法等により発泡、硬化させることにより、製造されている。
【0003】
そして、かかるポリウレタンフォーム用発泡性組成物には、成層圏オゾン層の破壊という環境問題から、発泡剤として、オゾン層破壊の少ない又は生じない代替フロンであるハイドロフルオロカーボン系発泡剤(例えば、HFC−245fa,HFC−365mfc等)が、使用されている。しかし、近い将来、代替フロンの使用も制限されるとの推測から、近年においては、二酸化炭素(炭酸ガス)を、代替フロン系発泡剤等の既存の発泡剤の一部又は全部の代替として用いて製造されるポリウレタンフォームが検討されている。例えば、特許文献1,2には、ポリイソシアネート成分と水との化学反応で生成する二酸化炭素を発泡剤として利用する、所謂「水発泡法」で製造されるポリウレタンフォームが明らかにされている。また、特許文献3には、発泡剤として、水とポリイソシアネート成分との反応により発生する二酸化炭素と、超臨界状態、亜臨界状態又は液体状態の二酸化炭素とを併用して製造されるポリウレタンフォームが明らかにされている。
【0004】
ところが、そのような水によって生成せしめられる二酸化炭素を発泡剤として用いて製造されるポリウレタンフォームは、基本的に、他の発泡法で製造されるポリウレタンフォームよりも、断熱性能において劣っており、また、寸法安定性等の特性においても充分でない等という問題を内在するものであった。
【0005】
加えて、かかる二酸化炭素を生成させる発泡剤源としての水は、他の溶剤系発泡剤に比べて、ポリオール配合液の低粘度化への寄与が極めて小さいために、発泡剤として二酸化炭素を採用するに際しては、ポリオール化合物自体の低粘度化や、ポリエーテルポリオール等の低粘度のポリオールを組み合わせて用いることにより、低粘度化を図って、ポリオール配合液の粘度を、実用に供することが出来る程度にまで低くする必要がある。特に、ポリオール化合物として、フォームに耐熱性や難燃性を付与する観点から注目されるフェノール樹脂系ポリオールを用いる場合には、ポリオール化合物自体の粘度が高いために、その低粘度化が、従来からも検討されてきており、例えば、特許文献4〜6には、フェノール樹脂にアルキレンオキサイドを付加させたフェノール樹脂系ポリオールが提案されている。しかしながら、それらの文献には、発泡剤として二酸化炭素を利用して製造されるポリウレタンフォームにおける上記した特性上の問題については、何等の検討も為されてはいない。
【0006】
一方、特許文献7には、水発泡硬質ウレタンスプレーフォームの製造における初期発泡性の改良、施工性の改善、フォームの低密度化を達成するために、初期発泡性改良剤として、特定のアミン化合物を用いることが明らかにされ、そして、そこでは、かかる初期発泡性改良剤と共に、エチレンジアミン、更には泡化触媒として、ペンタメチルジエチレントリアミン及び/又はビス(ジメチルアミノエチル)エーテルを組み合わせて、用いることが、明らかにされている。また、特許文献8には、水やハイドロカーボンを用いて発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームにおいて、エチレンジアミンやジエチレントリアミン等のポリアルキレンポリアミンを所定の範囲内で添加することにより、初期反応性のみを著しく向上させ、その結果、熱伝導率や接着性等のフォーム性能を向上させることが出来ることが、明らかにされている。しかしながら、それら特許文献7,8にて提案されている如き対策を講じても、低温下での接着性や断熱性能の向上には限度があり、しかも、寸法安定性等の点においても、大きな問題を内在するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−227645号公報
【特許文献2】特開2004−59641号公報
【特許文献3】特開2004−107376号公報
【特許文献4】特開平5−170851号公報
【特許文献5】特開平11−217431号公報
【特許文献6】特開昭60−48942号公報
【特許文献7】特開平11−130830号公報
【特許文献8】特開平11−279254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、水によって生成せしめられる二酸化炭素を利用して製造されるポリウレタンフォームの断熱性能とその寸法安定性を有利に改善し得ると共に、より優れた低温下での接着性を発揮し得るポリウレタンフォーム用発泡性組成物を提供すること、及び、かかるポリウレタンフォーム用発泡性組成物を発泡及び硬化せしめてなる、優れた断熱性能及び寸法安定性を実現するポリウレタンフォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明者等が、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリオール成分を構成するポリオール化合物として、ノボラック型フェノール樹脂にアルキレンオキサイドを付加させて得られるフェノール樹脂系ポリオールを用いると共に、触媒として、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル及びジエチレントリアミンを併用することによって、得られるポリウレタンフォームの断熱性能や寸法安定性が著しく改善され、しかも、低温下における接着性がより一層有利に高められ得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリオール化合物及び触媒を含むポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを反応させると共に、水を用いて発泡せしめて得られるポリウレタンフォームの製造に使用される発泡性組成物であって、前記ポリオール化合物として、ノボラック型フェノール樹脂にアルキレンオキサイドを付加させて得られるフェノール樹脂系ポリオールを含み、更に、前記触媒として、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル及びジエチレントリアミンを含んでいることを特徴とするポリウレタンフォーム用発泡性組成物を、その要旨とするものである。
【0011】
なお、かかる本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物の好ましい態様の一つによれば、前記ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルと前記ジエチレントリアミンとの含有比率は、質量基準で、85/15〜15/85とされることとなる。
【0012】
また、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物の別の好ましい態様の一つによれば、前記ノボラック型フェノール樹脂に付加されるアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド或いはそれらの両者である。
【0013】
さらに、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物の更に別の好ましい態様の一つによれば、前記ポリオール化合物は、更に、芳香族ジアミンにアルキレンオキサイドを付加して得られる芳香族ジアミン系ポリオールを含む。
【0014】
更にまた、かかる本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物においては、望ましくは、前記ポリオール成分が、更に、有機珪素化合物を含んでいる。
【0015】
そして、本発明は、そのようなポリウレタンフォーム用発泡性組成物を発泡、硬化させて得られるポリウレタンフォームをも、その要旨とするものであり、また、そのようにして得られたポリウレタンフォームは、その熱伝導率(初期値)が、有利には、0.023W/(m・K)未満となるものである。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物においては、水を用いて発泡させるものではあるものの、ポリオール成分のポリオール化合物として、ノボラック型フェノール樹脂にアルキレンオキサイドを付加させて得られるフェノール樹脂系ポリオールが、用いられると共に、触媒として、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル及びジエチレントリアミンが併用されていることによって、得られるポリウレタンフォームの熱伝導率(初期値)が、水によって発泡せしめられた従来のポリウレタンフォームの熱伝導率(初期値)よりも低くなり、その断熱性能が効果的に改善され得ることに加えて、得られるポリウレタンフォームの寸法安定性が、著しく向上せしめられ得ることとなるのである。
【0017】
しかも、そのような本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物にあっては、それから得られるポリウレタンフォームの低温下での接着性が、より一層有利に改善せしめられ得たものとなるのであって、これにより、寒冷地や冬期での発泡作業が、より一層有利に行なわれ得ることとなる。
【0018】
また、本発明に従うポリウレタンフォームにあっては、上述せる如きポリウレタンフォーム用発泡性組成物を用いて形成されるところから、上記と同様な効果を享受することが出来、断熱性能やその寸法安定性が有利に改善され得たものとなっている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物、及びこれを用いて得られるポリウレタンフォームについて、詳細に説明することとする。
【0020】
先ず、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物は、少なくとも、水を用いて発泡せしめられるものであると共に、ポリオール成分の構成成分たるポリオール化合物として、所定のフェノール樹脂系ポリオールを含有すると共に、触媒として、後述する特定の化合物の二つが併用されて、含有するものである。
【0021】
そして、その中で、本発明においてポリオール成分の構成成分であるポリオール化合物として用いられる、上記のフェノール樹脂系ポリオールは、ノボラック型のフェノール樹脂にアルキレンオキサイドを付加させることによって、得られるものである。なお、このようなフェノール樹脂系ポリオールの調製に使用されるノボラック型フェノール樹脂としては、有利には、低粘度化の観点から、遊離フェノール類を1〜50質量%、好ましくは3〜35質量%、より好ましくは5〜30質量%の割合で含有するものが、採用されることとなる。これは、遊離フェノール類の含有割合が1質量%未満では、有効な低粘度化を図ることが困難であって、得られるポリウレタンフォーム用発泡性組成物を使用に供することが出来なくなる恐れがあるからであり、逆に50質量%を超えるようになると、ポリウレタンフォームが柔らかくなり過ぎて、成形性の悪化を招く傾向があるからである。
【0022】
そして、このようなノボラック型フェノール樹脂は、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを、フェノール類の1モルに対して、アルデヒド類を0.3〜1.0モルの割合で配合し、次いで酸触媒を加えて、所定の反応条件(温度や時間)で反応させた後、必要に応じて、減圧脱水処理を施すことにより、ノボラック型フェノール樹脂の初期縮合物として、有利に製造されることとなる。ここで、初期縮合物とは、分子量が比較的に低いフェノール樹脂であって、1分子中に、2〜10程度のフェノール骨格を有する縮合物や未反応フェノール類の混合物である。なお、かかるノボラック型フェノール樹脂(初期縮合物)の製造方法は、上記方法に何等限定されるものではなく、生成するノボラック型フェノール樹脂中に上記の遊離フェノール類の所定割合が存在するようにして、適宜に反応条件や反応環境(例えば、常圧、減圧、加圧、不活性ガスの共存の有無、段階的又は逐次的反応等)を設定して、製造することが出来る。更には、上記反応終了後の縮合物に対して、必要に応じて、別途フェノール類を加える等して、遊離フェノール類の含有割合を上記のように調整することも可能である。
【0023】
なお、上記ノボラック型フェノール樹脂の製造に際して用いられるフェノール類としては、特に限定されるものではなく、一般に、フェノールが採用されるが、必要に応じて、例えば、クレゾール、エチルフェノール、キシレノール、p−t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、p−フェニルフェノール等のアルキルフェノールのうちの1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いることも、又は、そのようなアルキルフェノールのうちの1種以上とフェノールとを併用することも出来る。更には、m−クロロフェノール、o−ブロモフェノール等のハロゲン化フェノール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、フロログリシノール等の多価フェノール、ビスフェノールA[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン]、ビスフェノールF(4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン)等のビスフェノール、レゾルシノール、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール系化合物の精製残渣、α−ナフトール、β−ナフトール、β−ヒドロキシアントラセンのうちの1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いることも、又はそれらのうちの1種以上と、フェノールやアルキルフェノールとを併用することも出来る。
【0024】
一方、上記フェノール類と反応せしめられるアルデヒド類としては、特に限定されるものではなく、一般に、ホルマリン、パラホルムアルデヒドのうちの何れか一方若しくは両方が用いられるが、必要に応じて、その他のホルムアルデヒド類(例えば、トリオキサン、テトラオキサン、ポリオキシメチレン等)、グリオキサール等を単独で、或いは併用することが出来る。
【0025】
また、ノボラック型フェノール樹脂の製造に使用される酸触媒としては、蓚酸が好適であるが、その他にも、有機スルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸等)、有機カルボン酸(例えば、酢酸等)の二価金属(例えば、マグネシウム、亜鉛、鉛等)塩、二価金属の塩化物、二価金属の酸化物、無機酸(例えば、塩酸、硫酸等)等を単独で用いても良く、勿論、これらのうちの2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
そして、本発明において、ポリオール成分の一つとして用いられるフェノール樹脂系ポリオールは、上述のようにして製造されたノボラック型フェノール樹脂に、塩基性触媒の存在下で、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加反応させることによって得られるものであり、これによって、有利には、遊離フェノール類を含むノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基の部位に、所定のアルキレンオキサイドが付加されて、フェノール性水酸基がアルコール性水酸基へ変換されたフェノール樹脂系ポリオールとなる。このように、所定のアルキレンオキサイドの付加によって、フェノール樹脂が改質され、ポリオール成分の親水性が更に向上されることとなり、その結果として、上記フェノール樹脂系ポリオールは、水を発泡剤源とする発泡法において用いられるポリオールとして好適であるのみならず、後述するポリイソシアネート成分との混合性にも優れたものとなる。
【0027】
なお、上記フェノール樹脂系ポリオールは、所定のアルキレンオキサイドの配合量等を適宜に選定することにより、その水酸基価が、有利には100〜600mgKOH/gとなるように、好ましくは130〜450mgKOH/gとなるように、より好ましくは160〜450mgKOH/gとなるように、構成される。この水酸基価が低くなり過ぎると、それを用いて得られるフォームが柔らかくなり過ぎて、成形性が悪くなり、目的とするポリウレタンフォームが得られない傾向があるからであり、逆に水酸基価が高くなり過ぎると、粘度が充分に低くならず、ポリイソシアネート成分との混合性が悪くなる傾向があるからである。また、この水酸基価に対応して、フェノール樹脂系ポリオールの粘度も変動することとなるが、本発明において用いられるフェノール樹脂系ポリオールの粘度は、500〜30000mPa・s/25℃の範囲とされる。
【0028】
ここで、上記フェノール樹脂系ポリオールの製造に用いられるアルキレンオキサイドとしては、一般に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が例示され、得られるフォームの特性に応じて、適宜に選定されるものであるが、フェノール樹脂系ポリオールの親水性の観点から、特にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びこれらの組み合わせが好適に採用される。また、そのようなアルキレンオキサイドの配合量としては、一般に、ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基に対して、1〜20倍当量となる範囲において、適宜に選択されることとなる。
【0029】
そして、上記フェノール樹脂系ポリオールの製造に用いられる、換言すれば、上記ノボラック型フェノール樹脂と所定のアルキレンオキサイドとの付加反応に用いられる、塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ性触媒を好適に採用することが出来、これらのうちの少なくとも1種が適宜に選択されて、用いられることとなるが、勿論、これらに限定されるものではないことは、言うまでもないところである。
【0030】
また、かかるフェノール樹脂系ポリオールと共に、ポリオール化合物の他の一つとして好適に用いられる芳香族ジアミン系ポリオールは、芳香族ジアミンに、公知の手法に従って、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させることによって、得られるものである。換言すれば、この芳香族ジアミン系ポリオールは、芳香族ジアミンを開始剤として、これに、所定のアルキレンオキサイドを開環付加せしめてなる、末端水酸基の多官能ポリエーテルポリオール化合物である。
【0031】
なお、そのような芳香族ジアミン系ポリオールを与える、開始剤としての芳香族ジアミンには、公知の各種の芳香族ジアミン化合物を用いることが出来、具体的には、トリレンジアミンと総称される、フェニレンジアミンの各種のメチル置換体の他、そのアミノ基に対して、メチル、エチル、アセチル、ベンゾイル等の置換基が導入されてなる誘導体や、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等を、例示することが出来る。また、それらの中でも、得られるポリウレタンフォームの特性を高める上において、トリレンジアミンが好ましく用いられることとなる。
【0032】
ところで、かくの如き、芳香族ジアミンにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等の所定のアルキレンオキサイドを付加させて得られる芳香族ジアミン系ポリオールとしては、各種のものが市販されており、例えば、トリレンジアミン系ポリオールとして、サンニックスHA−501、同HM−550、同HM−551(以上、何れも、三洋化成工業株式会社製品)等の商品を例示することが出来、本発明にあっては、それら市販品の中から、適宜に選定して用いられることとなる。なお、この芳香族ジアミン系ポリオールの水酸基価は、有利には200〜600mgKOH/g、また粘度は、有利には500〜30000mPa・s/25℃の範囲内とされる。
【0033】
そして、本発明にあっては、かくの如き芳香族ジアミン系ポリオールが、前記したフェノール樹脂系ポリオールと共に、ポリオール化合物として、好適に用いられることとなるのであるが、それら芳香族ジアミン系ポリオールとフェノール樹脂系ポリオールとは、それぞれ、ポリオール化合物全体の20質量%以上、好ましくは30質量%以上の割合において用いられ、従って、それらの合計量が、ポリオール化合物全体の40質量%以上、好ましくは60質量%以上を占めるような割合において、用いられることが、本発明の目的をより良く達成する上において望ましいのである。また、その中で、フェノール樹脂系ポリオールと芳香族ジアミン系ポリオールとは、質量比にて、3/7〜7/3の割合において用いられることが望ましい。なお、それらフェノール樹脂系ポリオールと芳香族ジアミン系ポリオールの配合比率において、フェノール樹脂系ポリオールが多くなり過ぎると、寸法安定性の向上効果が低下するようになり、また芳香族ジアミン系ポリオールが多くなり過ぎると、熱伝導率や難燃性の向上効果が低下するようになるので、望ましくない。
【0034】
なお、本発明にあっては、ポリオール成分の構成成分であるポリオール化合物として、上述したフェノール樹脂系ポリオール、或いは、それと芳香族ジアミン系ポリオールとが組み合わされて、用いられるのであるが、それらポリオール化合物の使用による優れた作用・効果に悪影響をもたらさない限りにおいて、他の公知のポリオール化合物を同時に用いることも可能である。例えば、そのような他の公知のポリオール化合物としては、脂肪族ポリエーテルポリオール、脂肪族アミン系ポリエーテルポリオール、芳香族ポリエーテルポリオール等の、公知のポリエーテルポリオール、又は、多価アルコールと、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ダイマー酸等のポリカルボン酸とを反応させて得られるポリカルボン酸系ポリエステルポリオール、ラクトン等を開環重合させて得られるラクトン系ポリエステルポリオール等の、公知のポリエステルポリオールを挙げることが出来る。
【0035】
また、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物においては、有利には、上述の如きフェノール樹脂系ポリオール、或いは、それと上述の如き芳香族ジアミン系ポリオールとが、少なくともポリオール化合物として用いられると共に、更に、従来から公知の各種の有機珪素化合物が添加、含有せしめられ、それによって、得られるフォームの断熱性能等の特性の向上に寄与せしめられることとなる。そして、そのような有機珪素化合物の中でも、特に、下記一般式(I)及び(II)で表される特定の有機珪素化合物が、好適に用いられ、これによって、断熱性能の向上、更にはその長期安定性の向上が、より一層有利に実現され、特に熱伝導率の経時変化、例えば、その初期値と2ヵ月後のものとの差が、0.0030W/(m・K)以下、好ましくは0.0025W/(m・K)以下となるような特性を、有利に実現せしめ得るのである。
【化1】

【化2】

[但し、式中、R1 〜R12は炭素数1〜3のアルキル基を表し、同一であっても、異なっていても良い。また、nは0〜50である。]
【0036】
なお、そのような好ましい特性を実現する一般式(I)で表される有機珪素化合物は、モノアルコキシトリアルキルシランであって、その置換アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が存在するが、特に好適には、東レ・ダウコーニング(株)より製造販売されている商品:SS2010(トリメチルメトキシシラン)が用いられる。また、前記一般式(II)で表される有機珪素化合物は、基本構造単位のn数が0〜50、好ましくは0〜10であるポリアルキルポリシロキサンであって、それぞれのアルキル置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基があるが、特に好適なものとしては、アルキル基が全てメチル基であるものであり、例えば、東レ・ダウコーニング(株)より製造販売されている商品:SH200 0.6cst(n=0)、SH200 1cst(n=1)、SH200 1.5cst(n=2.4)、SH200 2cst(n=3.4)、SH200 3cst(n=5.2)、SH200 5cst(n=8.2)等を例示することが出来るが、より好ましくはSH200 0.6cst(n=0)〜SH200 2cst(n=3.4)である。なお、前記一般式(I)及び(II)で表される有機珪素化合物中の置換基R1 〜R12は、同一のものであっても、異なるものであっても、何等差し支えない。
【0037】
また、上記の特定の有機珪素化合物は、それぞれを単独で用いても良く、また両者を組み合わせて用いても良い。勿論、同属の化合物を2種以上併用しても、何等差し支えないのである。また、かかる特定の有機珪素化合物の配合量は、種類、硬化様式、フォーム物性、発泡形態等により、一義的に決めることは困難であるが、一般的には、ポリオール化合物の100質量部当たり、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部の範囲で選ばれることとなる。この有機珪素化合物の配合量が少なくなり過ぎると、その使用による効果を充分に奏し得なくなるからであり、また、その配合量が多くなり過ぎると、断熱性能の長期安定性の向上効果が頭打ちとなり、コスト高となるため、経済的ではない。
【0038】
さらに、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物には、水発泡法に従って、フォーム形成のための発泡剤である二酸化炭素の形成源たる水が、添加、含有せしめられることとなる。そして、必要に応じて、このような二酸化炭素形成源である水と共に、公知の如く、亜臨界状態若しくは超臨界状態の二酸化炭素を添加して、ポリウレタンフォーム用発泡性組成物中に導入せしめることも可能である。
【0039】
そして、かくの如き水発泡が採用される場合には、発泡剤源(二酸化炭素形成源)である水が、後述するポリイソシアネート成分との反応により、フォームの形成に利用される炭酸ガスを生成する役割を果たすと共に、フェノール樹脂系ポリオールの粘度低下にも、僅かながら寄与する。かかる水発泡のための水の配合量は、所望のフォーム密度となるように適宜に設定され得るが、通常、フェノール樹脂系ポリオールや、必要に応じて用いられる芳香族ジアミン系ポリオールを含む全ポリオール化合物の100質量部に対して、0.5〜12質量部、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜8質量部の範囲で、適宜に設定され得る。なお、水の配合量が、フェノール樹脂系ポリオール等を含む全ポリオール化合物の100質量部に対して、0.5質量部未満では、炭酸ガスの発生量が充分ではなく、逆に12質量部を超えるようになると、密度の極端な低下によるフォームの脆弱化が惹起される恐れがある。
【0040】
また、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物には、フェノール樹脂系ポリオール等のポリオール化合物と反応してポリウレタンを生成する、ポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート成分が、用いられる。このポリイソシアネート化合物は、分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有する有機系イソシアネート化合物であり、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリトリレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートの他、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等を挙げることが出来る。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。一般的には、反応性や経済性、取扱性等の観点から、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI)が好適に用いられる。
【0041】
かかるポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート成分と、上記のフェノール樹脂系ポリオール等を含むポリオール成分との配合割合は、フォームの種類(例えば、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート)によって変更されることとなるが、一般に、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基(NCO)とポリオール化合物(各ポリオールの合計)の水酸基(OH)との比率を示すNCO/OHインデックス(当量比)が、0.9〜2.5程度の範囲となるように、適宜に設定される。
【0042】
そして、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物には、上記したフェノール樹脂系ポリオール等を含むポリオール成分やポリイソシアネート成分、及び二酸化炭素形成源である水に加えて、更に触媒として、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル及びジエチレントリアミンが併用され、それら2成分からなる触媒が配合されることとなる。
【0043】
具体的には、水を二酸化炭素形成源(発泡剤源)として用いる際に、ポリイソシアネート化合物と水との反応によって生成する炭酸ガスを早期に発生せしめることが要求される場合には、それらポリイソシアネート化合物と水との反応を促進する作用を有する触媒、所謂泡化触媒が、有利に用いられることとなるのであるが、特に、本発明にあっては、そのような触媒として、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル及びジエチレントリアミンを組み合わせて、用いることとしたのであり、それによって、得られるフォームの断熱特性や寸法安定性の向上を図り、更に、より低温下での接着性の向上を有利に実現せしめ得たのである。
【0044】
また、かかる触媒としてのビス(ジメチルアミノエチル)エーテルとジエチレントリアミンとは、質量比にて、85/15〜15/85の割合において用いられることが望ましい。それらビス(ジメチルアミノエチル)エーテルとジエチレントリアミンとの使用比率(含有比率)が上記の範囲外となると、それら二つの成分の併用による相乗効果を充分に発揮し得なくなる恐れがあるからである。また、それらビス(ジメチルアミノエチル)エーテル及びジエチレントリアミンの使用量の合計としては、通常、フェノール樹脂系ポリオールや、必要に応じて芳香族ジアミン系ポリオール等を含む全ポリオール化合物の100質量部に対して、0.5〜15質量部程度が、好適である。その合計使用量が、0.5質量部未満では、低温下での発泡性や接着性の向上に対する寄与が小さく、また、15質量部を超えるようになると、反応速度が速くなり過ぎて、有用な発泡体を得ることが困難となる。
【0045】
また、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応を促進させるためには、樹脂化触媒が有利に用いられる。この樹脂化触媒は、フォームの種類に応じて適宜に選択されて用いられるのであり、例えば、ウレタン化触媒、イソシアヌレート化触媒が単独で用いられたり、或いは、これらが併用される。ウレタン化触媒としては、例えば、第三級アミン、ジブチル錫ジラウレート、エチルモルホリン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、オクチル酸ビスマス(2−エチルヘキシル酸ビスマス)、ネオデカン酸ビスマス、ネオドデカン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等の脂肪酸ビスマス塩、ナフテン酸鉛等を挙げることが出来る一方、イソシアヌレート化触媒としては、例えば、ヒドロキシアルキル第四級アンモニウム塩、オクチル酸カリウム、酢酸ナトリウム等の脂肪酸アルカリ金属塩、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン等を挙げることが出来る。これらの樹脂化触媒は、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、樹脂化触媒の配合量は、一般に、全ポリオール化合物の100質量部に対して、0.1〜15質量部程度が、望ましい。
【0046】
加えて、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物には、更に必要に応じて、整泡剤や起泡剤、難燃剤の他、例えば、尿素、メラミン等のホルムアルデヒド捕捉剤や、気泡微細化剤、可塑剤、補強基材等の、従来から知られている各種助剤を、適宜に選択して配合することも出来る。
【0047】
その中で、整泡剤は、ポリウレタンフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものであって、ここでは、シリコーンや非イオン系界面活性剤が好適に採用される。具体例として、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等を挙げることが出来、これらのうちの1種が単独で或いは2種以上が組み合わされて用いられる。なお、整泡剤の配合量は、所期のフォーム特性や、使用する整泡剤の種類等に応じて適宜決定され得るが、好ましくは、全ポリオール化合物の100質量部に対して、0.1〜10質量部程度の割合とされる。
【0048】
また、上記の起泡剤は、水を発泡剤源として用いる際に、炭酸ガスが発生するまでの発泡と硬化の時間的なずれを、起泡剤の有する石鹸機能による泡立ち(高起泡性と泡安定性)で補うために用いられるものであって、特に、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物を吹き付け方式の発泡法(吹き付け発泡法)で発泡・硬化させる場合に有用である。かかる起泡剤としては、石鹸の成分として知られる脂肪酸アルカリ金属塩、特に、炭素数が12〜18であるラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩を例示することが出来る。これらの中でも、水発泡法においては、脂肪酸カリウム塩が、特に好適に用いられる。
【0049】
さらに、上記難燃剤としては、環境への負荷が少なく、発泡性組成物の減粘剤としても機能するトリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリエチルフォスフェート等の燐酸エステルが有利に用いられる。この燐酸エステルを配合する場合、その配合量は、所期のフォーム特性や難燃剤の種類等に応じて適宜決定され得るが、好ましくは、フェノール樹脂系ポリオールの100質量部に対して、10〜60質量部の範囲で選択され、その範囲の中でも、特に、10〜40質量部程度が好適である。また、上記リン酸エステル以外にも、難燃剤として、水酸化アルミニウム等が好適に使用され得る。
【0050】
ところで、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物においては、上述せる如く、オゾン層の保全の観点から、水を用いて発生せしめられる二酸化炭素が、発泡剤として採用されるのであるが、かかる二酸化炭素を主たる発泡剤として採用する限りにおいて、必要に応じて、過酸化水素水や、ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa )、ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、テトラフルオロエタン(HFC-134a)等に代表されるハイドロフルオロカーボンや、ペンタン、シクロペンタン等に代表される低沸点脂肪族炭化水素、ジクロロメタン、イソプロピルクロライド等に代表されるハロゲン系炭化水素を、二酸化炭素による発泡作用を補助するための発泡助剤として、添加することも可能である。
【0051】
そして、上述せる如きフェノール樹脂系ポリオールを含むポリオール成分や、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル及びジエチレントリアミンを併用した触媒等を用いて、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物を製造するに際しては、従来のポリウレタンフォーム用発泡性組成物と同様な製造手法が、採用され得る。
【0052】
例えば、水発泡法により、即ち発泡剤として、水とポリイソシアネートとの反応により発生する二酸化炭素を用いて、目的とするポリウレタンフォームを形成せしめるべく、先ず、ポリオール化合物としての前記フェノール樹脂系ポリオール又はそれと芳香族ジアミン系ポリオール等と共に、発泡剤源としての水、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル及びジエチレントリアミンからなる触媒、更に必要に応じて、樹脂化触媒、整泡剤、難燃剤、起泡剤、その他各種の助剤が配合されて、ポリオール配合液(プレミックス液)が、ポリオール成分として調製される。次いで、この調製されたポリオール配合液と所定のポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート成分とが、低圧高速撹拌混合機を用いて高速撹拌混合されることにより、或いは、高圧衝突混合機(例えば、現場スプレー発泡機)を用いて高圧衝突混合されることにより、液状のポリウレタンフォーム用発泡性組成物が製造され得る。なお、本発明においては、水発泡法に適した低粘性を有する上記フェノール樹脂系ポリオール等が用いられているところから、ポリイソシアネート成分との混合が有利に実現され、均質な発泡性組成物が製造され得るのである。
【0053】
そして、このようにして製造されたポリウレタンフォーム用発泡性組成物は、例えば、面材上に塗布して板状に発泡、硬化を行なうラミネート連続発泡法、電気冷蔵庫等の断熱性能が要求される空間部内や軽量・高強度ボードのハニカム構造内に注入充填して発泡、硬化を行なう注入発泡法、現場発泡機のスプレーガンヘッドから被着体へ吹き付けて発泡、硬化させるスプレー発泡法によって、発泡、硬化せしめられ、目的とするポリウレタンフォームが形成されることとなる。
【0054】
このように、上記ポリウレタンフォーム用発泡性組成物を用いて得られる本発明に従うポリウレタンにあっては、ポリオール成分の構成成分たるポリオール化合物として、上述の如きフェノール樹脂系ポリオール等が用いられ、更に、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル及びジエチレントリアミンを組み合わせた触媒が用いられているところから、発泡剤として、水によって生成せしめられる二酸化炭素を用いているにも拘わらず、極めて良好なる断熱性能が実現されるのであり、これによって、そのようなポリウレタンフォームの価値を有利に高め得たのである。けだし、かかるポリウレタンフォームの熱伝導率が大きくなると、同一の断熱性能を確保するために、フォーム厚みを厚くしなければならないところから、熱伝導率を小さくすることは、省スペース化やポリウレタンフォーム製品の低廉化に大きく貢献することとなるのである。また、本発明に従って製造されるポリウレタンフォームは、一般に、その密度が20〜100kg/m3 程度となるものである。
【0055】
さらに、本発明に従うポリウレタンフォームは、ポリオール化合物として、ポリエーテル系のポリオールではなく、フェノール樹脂系のポリオール等を主体とするものであるところから、難燃性や耐熱性も付与されたものとなっているのであり、この点においても、その特徴を発揮するものである。
【実施例】
【0056】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下に示す「%」及び「部」は、何れも質量基準である。
【0057】
先ず、ノボラック型フェノール樹脂を調製し、そしてその得られたノボラック型フェノール樹脂に所定のアルキレンオキサイドを付加させて、目的とするフェノール樹脂系ポリオールを準備した。なお、得られたフェノール樹脂系ポリオールの粘度及び水酸基価は、以下の測定手法で測定した。
【0058】
(1)粘度(mPa・s)は、B型粘度計を用いて、JIS K 7117−1に準じて測定した。
(2)水酸基価(mgKOH/g)は、JIS K 1557−1に準じて測定した。
【0059】
<ノボラック型フェノール樹脂の調製>
撹拌装置を備えた反応容器内に、フェノール9400部、92%パラホルムアルデヒド1630部、酸触媒としてシュウ酸19部を仕込んだ後、撹拌混合しながら、100℃の温度で、5時間、反応させた。その後、減圧下で水分を溜去することにより、目的とするノボラック型フェノール樹脂を得た。なお、この得られたノボラック型フェノール樹脂の遊離フェノール含有量は、30質量%であった。
【0060】
<フェノール樹脂系ポリオールの調製>
撹拌装置を備えた耐圧反応容器内に、上記ノボラック型フェノール樹脂の4000部を、アルカリ触媒としての水酸化カリウムの200部と共に、仕込んだ後、撹拌混合しながら、加圧条件下、150℃の温度で、エチレンオキサイドを3400部加えて、ノボラック型フェノール樹脂に付加させた。その後、水酸化カリウム(触媒)を酢酸で中和して、目的とするフェノール樹脂系ポリオールを得た。この得られたフェノール樹脂系ポリオールについて、その水酸基価及び25℃における粘度を測定したところ、それぞれ、300mgKOH/g及び2500Pa・s/25℃であった。
【0061】
(実施例1〜5及び比較例1〜3)
先ず、ポリオール化合物として、上記で準備したフェノール樹脂系ポリオールを用い、更に、市販のトリレンジアミン系ポリオール(商品名:サンニックスHM−551、三洋化成工業株式会社製、水酸基価:400mgKOH/g)を用い、そして、触媒として、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル(触媒A)、ジエチレントリアミン(触媒B)、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール(触媒C)を用い、また、樹脂化触媒(商品名:カオライザーNo.31、花王株式会社製)を用いると共に、整泡剤として、シリコーン系整泡剤(商品名:SH−193、東レ・ダウコーニング社製)を用い、更に、難燃剤(トリスクロロプロピルフォスフェート)、有機珪素化合物(商品名:SH−200 0.6cst、東レ・ダウコーニング社製)、起泡剤(リシノール酸カリウム)及び水を用いて、下記表1に示される配合割合において、それぞれの成分を混合せしめて、各種のポリオール配合液を調製した。
【0062】
【表1】

【0063】
次いで、かかる得られたポリオール配合液の各々と、ポリイソシアネート成分としてのクルードMDI(商品名:ルプラネートM−11S、BASF INOAC ポリウレタン社製)とを用い、ハンド発泡法に従い、それぞれ、10℃に温度調整した後、体積比が、ポリオール化合物/ポリイソシアネート化合物=100/100となるように、紙コップ(容量:500mL)内に秤取した後、ホモディスパー(商品名:プライミクス株式会社製)で高速撹拌混合して、発泡、硬化せしめることにより、ポリウレタンフォームを作製した。そして、その際の発泡性組成物の反応性であるクリームタイム(C.T)、ゲルタイム(G.T)を測定した。また、かかる得られたポリウレタンフォームについて、その密度を測定した。
【0064】
ここで、C.Tとは、ポリイソシアネートとポリオール組成物の混合開始から発泡が始まるまでの時間、G.Tとは、前記成分の混合開始からフォームの表面が糸引き可能な粘着性を示すまでの時間を示すものである。
【0065】
そして、かかる反応発泡の結果と密度測定結果とを、下記表2に示すが、そこで、比較例3の実験においては、泡立つ前に固まるために発泡不良となり、目的とする発泡体を得ることが出来なかった。
【0066】
また、上記で得られたポリオール配合液の各々と、上記したクルードMDIとを用い、それぞれ、マシン発泡法にて発泡、硬化せしめた。即ち、現場スプレー発泡機(商品名:FF−1600、ガスマー社製)を用いて、それらポリオール配合液とクルードMDIとを体積比1:1で混合攪拌せしめて、発泡原液とし、これを、雰囲気温度:−5℃、−10℃又は−15℃の条件下において、被着体であるコンクリート板の表面に吹き付けて、発泡、硬化させることにより、実施例1〜5及び比較例1〜2に係る各種の硬質ポリウレタンフォームを作製した。なお、比較例3のポリオール配合液を用いたポリウレタンフォームの作製例においては、泡立つ前に固まったために、発泡が不良となり、目的とするポリウレタンフォームを得ることが出来なかった。
【0067】
そして、かくして得られた各種のポリウレタンフォームを用いて、その熱伝導率及び寸法安定性の測定を行ない、その得られた結果を、それぞれのポリウレタンフォームの製造時における発泡性や接着性の評価結果と共に、下記表2に示した。
【0068】
なお、かかる特性評価に際して、「密度」の測定は、見掛け全体密度として、JIS K 7222に準拠して行なった。また、「−15℃雰囲気下での発泡性」については、−15℃の雰囲気下にて、被着体であるコンクリート板の表面に吹き付けて発泡させた際、その吹付け施工を行なうのに問題がない発泡性を○、発泡が遅く施工に難があるものを△、液ダレが発生して施工不可能となるものを×として、評価した。
【0069】
また、フォームの接着性(剥離性)の評価に係る「−5℃雰囲気下での接着性」、「−10℃雰囲気下での接着性」、「−15℃雰囲気下での接着性」については、それぞれの温度下において、発泡原液の吹付けから3分経過後に、コンクリート板からはみ出したフォーム端部を、コンクリート板に沿ってカッターナイフで切断し、コンクリート板とフォームとの接着面付近を目視で観察して、フォームの剥離の有無を確認した。なお、評価結果における○は、コンクリート板からのフォームの剥離が認められず、接着性に問題がないことを示し、また、×は、コンクリート板からのフォームの剥離が認められ、接着性に難点があることを、意味している。
【0070】
さらに、「熱伝導率(W/m・K)」の測定は、得られたポリウレタンフォームについて、熱伝導率測定装置(MADDERLAKE SCIENTIFIC GROUP COMPANY製、アナコンTCA POINT2)を用いて、JIS A 1412−2付属書A(規定)における平板比較法のA6.測定方法に準拠して行なった。また、「寸法安定性」は、得られたポリウレタンフォームを150mm×150mm×30mmの形状に切り出し、50℃の雰囲気下で、24時間静置し、その厚みの変化を測定して、寸法変化率[=(切り出し後の寸法−静置後の寸法)×100/切り出し後の寸法]を求め、評価した。その評価結果は、寸法変化率が1%未満の場合を○、1〜3%の場合を△、3%を超えるものを×とした。
【0071】
【表2】

【0072】
かかる表1及び表2の結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜5における発泡操作では、C.T及びG.Tが共に改善されて、発泡性や接着性が向上せしめられ得ることが認められ、またそれら実施例1〜5において得られたポリウレタンフォームにあっては、何れも、発泡剤源として水を用いているにも拘わらず、換言すれば発泡剤として二酸化炭素を用いているにも拘わらず、優れた熱伝導率及び寸法安定性を有するものであると共に、低温下での発泡性や接着性においても、著しく優れたものであった。特に、ポリオール化合物として、フェノール樹脂系ポリオールと芳香族ジアミン系ポリオールを併用した場合(実施例4)や、更に、有機珪素化合物を含有せしめた場合(実施例5)においては、その改善効果が極めて顕著となっていることを、認めることが出来る。
【0073】
これに対して、比較例1,2の発泡操作では、C.T又はG.Tが充分ではないことが認められ、また、触媒として、従来のN,N−ジメチルアミノエトキシエタノールを用いてなる比較例1の場合にあっては、−5℃の雰囲気下での接着性は一応満足するものであったが、より一層低温下での接着性や発泡性が悪く、且つ熱伝導率も充分ではなく、寸法安定性にも劣っているのである。また、触媒として、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルのみを用いた場合にあっても、−10℃や−15℃の雰囲気下での接着性が悪く、また、寸法安定性も悪いことに加えて、熱伝導率も充分でないことが認められる。更に、触媒として、ジエチレントリアミンのみを用いた比較例3の場合においては、発泡不良となって、目的とするポリウレタンフォームを得ることが出来ないのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物及び触媒を含むポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを反応させると共に、水を用いて発泡せしめて得られるポリウレタンフォームの製造に使用される発泡性組成物であって、
前記ポリオール化合物として、ノボラック型フェノール樹脂にアルキレンオキサイドを付加させて得られるフェノール樹脂系ポリオールを含み、更に、前記触媒として、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル及びジエチレントリアミンを含んでいることを特徴とするポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項2】
前記ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルと前記ジエチレントリアミンとの含有比率が、質量基準で、85/15〜15/85である請求項1に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項3】
前記ノボラック型フェノール樹脂に付加されるアルキレンオキサイドが、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド或いはそれらの両者である請求項1又は請求項2に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項4】
前記ポリオール化合物として、更に、芳香族ジアミンにアルキレンオキサイドを付加して得られる芳香族ジアミン系ポリオールを含む請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項5】
前記ポリオール成分が、更に、有機珪素化合物を含んでいる請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物を発泡、硬化させて得られるポリウレタンフォーム。


【公開番号】特開2011−21053(P2011−21053A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164655(P2009−164655)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】