説明

ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物

【課題】高い機械物性(引っ張り強度、引き裂き強度、圧縮硬さ)を有するポリウレタンフォームを製造可能となるポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表される特定の構造有する強度向上剤(A)及び無機物固体(B)を必須成分として含有してなるポリオール組成物であって、ポリオール組成物中に(B)が分散されてなるポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(C)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタンフォーム製造用のポリオール組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年は環境への配慮及びコスト低減要求が強く、ポリウレタンフォームの低密度化が求められている。例えば、車両用途では燃費規制に対応するため軟質ポリウレタンフォームの低密度化が求められている。また、断熱材用途においてもコスト低減、環境への配慮のため低密度化が望まれている。
現状、低密度化の要望に応えるため、発泡剤としての水の使用量が増加の傾向にある。水の使用量を増加させる(非特許文献1等)ことは、フォーム製造時の発生炭酸ガス量を増加させることができ、軟質ポリウレタンフォームの密度を低下させるには有効であるが、フォームの密度が低下するとフォーム硬度が低下する。ポリウレタンフォームの硬度を向上させる具体的技術としては、使用する架橋剤の使用量を上げる方法(非特許文献1)やポリマーを樹脂中に分散させる方法(特許文献1)等があるが、このような方法では、軟質ポリウレタンフォームの伸びや引張強さのような機械物性が不十分である等の課題が残されており、硬度が向上し機械物性が維持される軟質ポリウレタンフォームが望まれている。
また、低密度化の為に、水と共に、塩化メチレンを発泡剤として用いることも提案されている。しかし、塩化メチレンは環境問題の観点から使用量の低減が求められている。そこで、モノオールやジオールをポリオールの一成分として用いる方法も提案されている。しかし、この方法では、得られるフオームの圧縮永久歪が大きくなる等、他の物性が損なわれる問題が生じる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−309937号公報
【特許文献2】特開平6−65346号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】岩田敬治、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」、日刊工業、1987年5月20日発行、第1版、32頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高い機械物性(引っ張り強度、引き裂き強度、圧縮硬さ)を有するポリウレタンフォームを製造可能となるポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物及びこのポリオール組成物を用いたポリウレタンフォームの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、これらの問題点を解決するべく鋭意検討した結果、特定の構造を有する強度向上剤及び無機物固体を使用することで、高い機械物性(引っ張り強度、圧縮硬さ)を有するポリウレタンフォームが得られることを見出し本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明のポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(C)は、下記一般式(I)で表される強度向上剤(A)及び無機物固体(B)を必須成分として含有してなるポリオール組成物であって、ポリオール組成物中に(B)が分散されてなることを要旨とする。
【0008】
【化1】

【0009】
[一般式(I)中、R1は活性水素含有化合物から1個の活性水素を除いた残基を表す。複数のR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。;Yは3価以上の芳香族ポリカルボン酸(f)からカルボキシル基を除いた残基を表す。Yの芳香環は炭素原子から構成される。芳香環の置換基は水素原子でも他の置換基でもよいが、少なくとも一つの置換基が水素原子である。;aは2≦a≦(芳香環置換基数−2)を満たす整数である。;Zはm価以上の活性水素含有化合物からm個の活性水素を除いた残基を表す。;mは1〜10の整数を表す。]
また、本発明のポリウレタンフォームの製造方法は、上記のポリオール組成物(C)と、有機ポリイソシアネート成分(D)とを、発泡剤、触媒及び整泡剤の存在下に反応させてなることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物を使用した場合、高い機械物性(引っ張り強度、引き裂き強度、圧縮硬さ)のポリウレタンフォームを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリオール組成物は、強度向上剤(A)及び無機物固体(B)を含有してなる。強度向上剤(A)は、下記一般式(I)で表される。
【0012】
【化2】

【0013】
一般式(I)中、R1は活性水素含有化合物から1個の活性水素を除いた残基を表す。活性水素含有化合物としては、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、チオール基含有化合物及びリン酸化合物;分子内に2種以上の活性水素含有官能基を有する化合物が含まれる。これら活性水素含有化合物は、1種類でも複数種類でも使用することができる。すなわち、複数のR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0014】
水酸基含有化合物としては、1価のアルコール、2〜8価の多価アルコール、フェノール及び多価フェノール等が含まれる。具体的にはメタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、ナフチルエタノール等の1価のアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3及び1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等の2価アルコール;グリセリン及びトリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体等の4〜8価のアルコ―ル;フェノール、フロログルシン、クレゾール、ピロガロ―ル、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノ―ルA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1−ヒドロキシナフタレン、1,3,6,8−テトラヒドロキシナフタレン、アントロール、1,4,5,8−テトラヒドロキシアントラセン及び1−ヒドロキシピレン等のフェノ―ル;ポリブタジエンポリオール;ひまし油系ポリオール;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2〜100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)並びに米国特許3265641号明細書に記載のポリフェノール等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリレートとは、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味し、以下において同様である。
【0015】
アミノ基含有化合物としては、アミン、ポリアミン及びアミノアルコール等が含まれる。具体的には、アンモニア;炭素数1〜20のアルキルアミン(ブチルアミン等)及びアニリン等のモノアミン;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びジエチレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;ピペラジン及びN−アミノエチルピペラジン等の複素環式ポリアミン;ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン;フェニレンジアミン、トリレンジアミン及びジフェニルメタンジアミン等の芳香族ポリアミン;モノエタノ―ルアミン、ジエタノ―ルアミン及びトリエタノ―ルアミン等のアルカノ―ルアミン;ジカルボン酸と過剰のポリアミンとの縮合により得られるポリアミドポリアミン;ポリエーテルポリアミン;ヒドラジン(ヒドラジン及びモノアルキルヒドラジン等)、ジヒドラジッド(コハク酸ジヒドラジッド及びテレフタル酸ジヒドラジッド等)、グアニジン(ブチルグアニジン及び1−シアノグアニジン等);ジシアンジアミド等;が挙げられる。
【0016】
カルボキシル基含有化合物としては、酢酸及びプロピオン酸等の脂肪族モノカルボン酸;安息香酸等の芳香族モノカルボン酸;コハク酸、フマル酸、セバシン酸及びアジピン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ナフタレン−1,4ジカルボン酸、ナフタレン−2,3,6トリカルボン酸、ピロメリット酸、ジフェン酸、2,3−アントラセンジカルボン酸、2,3,6−アントラセントリカルボン酸、及びピレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;アクリル酸の(共)重合物等のポリカルボン酸重合体(官能基数2〜100)等が挙げられる。
【0017】
チオール基含有化合物としては、1官能のフェニルチオール、アルキルチオール及びポリチオール化合物が含まれる。ポリチオールとしては、2〜8価の多価チオールが挙げられる。具体的にはエチレンジチオール及び1、6−ヘキサンジチオール等が挙げられる。
【0018】
リン酸化合物としては燐酸、亜燐酸及びホスホン酸等が挙げられる。
【0019】
活性水素含有化合物としては、分子内に2種以上の活性水素含有官能基(水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基及びリン酸基等)を有する化合物も使用できる。
【0020】
また、活性水素含有化合物としては、上記活性水素含有化合物のアルキレンオキサイド付加物を使用することもできる。
【0021】
活性水素含有化合物に付加させるアルキレンオキサイド(以下、AOと略す)としては、炭素数2〜6のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、EOと略す)、1,2−プロピレンオキサイド(以下、POと略す)、1,3−プロピレオキサイド、1,2ブチレンオキサイド及び1,4−ブチレンオキサイド等が挙げられる。これらのうち、性状や反応性の観点から、PO、EO及び1,2-ブチレンオキサイドが好ましい。AOを2種以上使用する場合(例えば、PO及びEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0022】
さらに、活性水素含有化合物としては、上記活性水素含有化合物とポリカルボン酸(脂肪族ポリカルボン酸や芳香族ポリカルボン酸)との縮合反応で得られる活性水素含有化合物(ポリエステル化合物)を使用することができる。縮合反応においては活性水素含有化合物、ポリカルボン酸共に1種類を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
脂肪族ポリカルボン酸とは、以下(1)、(2)を満たす化合物を意味する。
(1)1分子が有するカルボキシル基が2個以上である。
(2)カルボキシル基が芳香環に直接結合していない。
【0024】
脂肪族ポリカルボン酸には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸及びフマル酸等が挙げられる。
【0025】
芳香族ポリカルボン酸とは以下(1)〜(3)を満たす化合物を意味する。
(1)1分子が有する芳香環の数が1個以上である。
(2)1分子が有するカルボキシル基の数が2個以上である。
(3)カルボキシル基が芳香環に直接結合している。
【0026】
芳香族ポリカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2’-ビベンジルジカルボン酸、トリメリット酸、ヘミリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸及びナフタレン−1,4ジカルボン酸、ナフタレン−2,3,6トリカルボン酸、ジフェン酸、2,3−アントラセンジカルボン酸、2,3,6−アントラセントリカルボン酸及びピレンジカルボン酸等の炭素数8〜18の芳香族ポリカルボン酸が挙げられる。
【0027】
また、ポリカルボン酸と活性水素含有化合物との縮合反応を実施する際に、ポリカルボン酸の無水物や低級アルキルエステルを使用することもできる。
【0028】
強度向上剤のハンドリング及びポリウレタンフォームの機械物性(伸び、引っ張り強度、圧縮硬さ)向上の観点から、R1とする活性水素含有化合物としては、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、これらのAO付加物及び活性水素含有化合物とポリカルボン酸との縮合反応で得られるポリエステル化合物が好ましく、さらに好ましくはメタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖、ベンジルアルコール、フェノール、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、これらのEO及び/又はPO付加物並びにこれら活性水素化合物とフタル酸及び/又はイソフタル酸との縮合物が好ましい。
【0029】
一般式(I)中、Yは3価以上の芳香族ポリカルボン酸(f)からカルボキシル基を除いた残基を表す。Yの芳香環は炭素原子から構成される。芳香環の置換基は水素原子でも他の置換基でもよいが、少なくとも1つの置換基が水素原子である。すなわち、Yの芳香環は、その芳香環を構成する炭素原子に結合した少なくとも一つの水素原子を有する。
【0030】
他の置換基とは、アルキル基、ビニル基、アリル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアミノ基、ニトロ基、ホスフィノ基、チオ基、チオール基、アルデヒド基、エーテル基、アリール基、アミド基、シアノ基、ウレア基、ウレタン基、スルホン基、エステル基及びアゾ基等が挙げられる。機械物性向上(伸び、引っ張り強度、圧縮硬さ)及びコストの観点から、他の置換基としては、アルキル基、ビニル基、アリル基、アミノ基、アミド基、ウレタン基及びウレア基が好ましい。
【0031】
Y上の置換基の配置としては、機械物性向上の観点から、2個のカルボニル基が隣接し、3個目のカルボニル基と1又は2個目のカルボニル基の間に置換基として水素が配置された構造が好ましい。
【0032】
Yを構成する3価以上の芳香族ポリカルボン酸(f)としては、トリメリット酸、ヘミリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレン−2,3,6トリカルボン酸及び2,3,6−アントラセントリカルボン酸等の炭素数8〜18の芳香族ポリカルボン酸が挙げられる。
【0033】
強度向上剤のハンドリング及びポリウレタンフォームの機械物性(引っ張り強度、引き裂き強度、圧縮硬さ)向上の観点から、Yに使用する(f)は単環式化合物が好ましく、さらに好ましくはトリメリット酸及びピロメリット酸である。
【0034】
一般式(I)中のaは2≦a≦芳香環置換基数−2を満たす整数である。芳香環置換基数とは、芳香環を構成する炭素原子に結合する置換基の数である。例えば、炭素6個から構成される単環の芳香環では、芳香環置換基数が6であり、aとして2〜4を取りうる。芳香環が単環の芳香環の場合、機械物性(引っ張り強度、引き裂き強度、圧縮硬さ)向上の観点から、aは2又は3が好ましい。
【0035】
一般式(I)中のZはm価以上の活性水素含有化合物からm個の活性水素を除いた残基を表す。ここで言う活性水素含有化合物としては、上述のR1で示した活性水素含有化合物が含まれる。Zで表される活性水素含有化合物はR1の一部と同一であっても構わないが、ハンドリングの観点からの観点から、少なくとも1つのR1とZは異なる基であることが好ましい。
一般式(I)において、mは1〜10の整数を表す。
強度向上剤のハンドリング及びポリウレタンフォームの機械物性(引っ張り強度、引き裂き強度、圧縮硬さ)向上の観点から、Zには、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、これらのAO付加物及びこれらとポリカルボン酸との縮合物を用いることが好ましく、mは1〜8が好ましい。
【0036】
強度向上剤(A)の水酸基価(mgKOH/g)は、成形時のハンドリング(粘度)及び引っ張り強度の観点から、0〜700が好ましく、さらに好ましくは0〜650、次にさらに好ましくは0〜600である。
なお本発明において、水酸基価はJISK−1557に準拠して測定される。
また、(A)の水酸基価が0であることは、一般式(I)中、いずれのR1もYもZも水酸基を有しないことを意味する。
【0037】
本発明の強度向上剤(A)の芳香環濃度(mmol/g)は、機械物性(伸び、引っ張り強度)向上の観点から、0.1〜10.0が好ましく、さらに好ましくは0.2〜9.5、次にさらに好ましくは0.3〜9.0である。
なお、(A)の芳香環濃度は、強度向上剤(A)1g中の芳香環のモル数を意味する。
【0038】
3価以上の(f)由来のYの含量は、強度向上剤(A)の数平均分子量を基準として、機械物性(引っ張り強度、引き裂き強度、圧縮硬さ)向上の観点から、0.5〜50%であることが好ましく、さらに好ましくは4〜47%、次にさらに好ましくは6〜45%である。
【0039】
無機物固体(B)は、強度向上剤(A)又は後述するポリオール(P)に溶解しない無機物のことである。溶解しないとは、25℃で(A)又は(P)100gに対し、0.1g以上は溶解しないことを意味する。
【0040】
無機物固体(B)には、金属化合物及び炭素材料からなる群より選ばれる少なくとも1種が含まれる。
【0041】
金属化合物としては、金属酸化物、層状粘土鉱物、ケイ素酸化物及び金属の塩が含まれる。
【0042】
金属酸化物としては、アルカリ金属酸化物(酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム等)、アルカリ土類金属酸化物(酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ランタン、等)、遷移金属酸化物(酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化スズ、酸化クロム、酸化アンチモン、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化タンタル、酸化テルビウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジウム等)、アルカリ金属担持酸化物(Na−Al23等)、複合酸化物(マグネシウムとアルミニウム等の複合酸化物複合酸化物)、アルカリ金属交換ゼオライト(Na−Y、Na−モルデナイト、Na−ZSM3 などのアルカリ金属交換ゼオライト)、ハイドロタルサイト類があげられる。
【0043】
層状粘土鉱物としては、モンモリロナイト、ウォラストナイト、セビオライト、ゾノトライト、ドーソナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ及び石膏繊維等があげられる。
【0044】
ケイ素酸化物としては、常温で固体のものとして、シリカ、ガラス等のケイ素酸化物、官能基を有するケイ素化合物モノマー(ビニル基含有ケイ素化合物[例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等]、(メタ)アクリル基含有ケイ素化合物(例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシ基含有ケイ素化合物[例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等]、イソシアネート基含有ケイ素化合物(例えば、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)、アミノ基含有ケイ素化合物[3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等]、ウレイド基含有ケイ素化合物(例えば、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等)、メルカプト基含有ケイ素化合物(例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等)、スルフィド基含有ケイ素化合物[例えば、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等])の重縮合体があげられる。また、これらに、水酸基を導入、又はイソシアナート基が導入(ウレタン変性)された改質物も含まれる。
【0045】
金属の塩としては、金属の有機酸塩、および無機酸塩があげられる。金属としてはアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(バリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩など)、IIB族金属塩(例えば、亜鉛など)、遷移金属(ニッケル、鉄、銅、マンガン、コバルト、銀、金、白金、パラジウム、チタン、ジルコニウム、カドミウムなど)の塩、IIIB族金属塩(例えば、アルミニウム塩など)、IVB族金属(錫、鉛など)の塩、およびランタノイド金属(ランタン、セリウムなど)の塩等が挙げられる。無機酸としては、フッ化水素酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロケイ酸、ケイ酸、ホウ酸、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸等が挙げられる。有機酸としては、前述のカルボン酸の他、フェノール化合物(例えばフェノール、β−ナフトール、o−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、p−アミノフェノール、カテコール、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン等);スルフォン酸化合物(例えばアルキルベンゼンスルフォン酸、アントラキノンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、ナフトールスルホン酸、キシレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等);リン酸化合物等が挙げられる。
【0046】
金属化合物の中では、フォーム強度の観点から、層状粘土鉱物、ケイ素酸化物が好ましく、モンモリロナイト、シリカをウレタン変性したものが特に好ましい。
【0047】
炭素材料としては、カーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ)、カーボンナノファイバー、フラーレン、カーボンブラック類(カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラック等)、グラファイト(天然黒鉛及び人工黒鉛等)等が挙げられる。また、これらに、水酸基、イソシアナート基が導入された改質物も含まれる。フォーム生成時の発泡の安定性の観点からカーボンナノチューブが好ましく、さらに多層カーボンナノチューブに水酸基を導入したものが好ましい。
【0048】
無機物固体(B)は、ポリオール組成物(C)中に分散している。
無機物固体(B)を分散させる方法は公知のいかなる方法でも良い。例えばDMFに分散させた無機物固体(B)全量を強度向上剤及び/若しくはポリオール(P)に一括で投入、又は(B)を分割投入し、ホモミキサー等で分散後、130℃、0.01MPaでDMFを除去する方法が挙げられる。(B)の分散性の観点から好ましいのは、(B)を分割投入し、混合する方法である。
【0049】
分散された無機物固体(B)の形状は特に限定なく、球状、回転楕円体状及び平板状等いずれの形状でもよいが、ポリウレタン樹脂の機械物性の観点から、球状が好ましい。
【0050】
分散された無機物固体(B)の体積平均粒子径は、ポリオール組成物の取り扱い性及びポリウレタンの機械物性の観点から0.01〜500μmが好ましく、さらに好ましくは0.02〜250μm、次にさらに好ましくは0.05〜100μm、特に好ましくは0.1〜50μmである。(B)の体積平均粒子径が0.01μm以上では、補強効果を発現しやすい傾向がある。(B)の体積平均粒子径が500μm以下では、分散された樹脂組成物が引張挙動を受けたとき、巨視的なボイドを発生しがたくなり、補強効果が望めやすい傾向がある。なお、平均粒径は動的光散乱測定法により測定される。
【0051】
本発明のポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(C)には、上記の強度向上剤(A)及び無機物固体(B)以外に、ポリオール(P)を含有していてもよい。
【0052】
ポリオール(P)としては、具体的には下記の多価アルコール、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール等の公知のポリオールであって(A)以外の物が含まれる。
【0053】
多価アルコールとしては、炭素数2〜20の2価アルコール、炭素数3〜20の3価アルコール及び炭素数5〜20の4〜8価アルコール等が挙げられる。
炭素数2〜20の2価アルコールとしては、脂肪族ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−及び1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール並びにネオペンチルグリコール等)及び脂環式ジオール(シクロヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノール等)が挙げられる。
炭素数3〜20の3価アルコールとしては、脂肪族トリオール(グリセリン及びトリメチロールプロパン等)が挙げられる。
炭素数5〜20の4〜8価の多価アルコールとしては、脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等並びに糖類(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体)が挙げられる。
【0054】
ポリエーテルポリオールとしては、多価アルコールのAO付加物が挙げられる。AOとしては前述のAOが挙げられ、性状や反応性の観点から、PO、EO及び1,2-ブチレンオキサイドが好ましい。AOを2種以上使用する場合(例えば、PO及びEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0055】
ポリエーテルポリオールとしては、多価アルコールのAO付加物が挙げられる。AOとしては前述のAOが挙げられ、性状や反応性の観点から、PO、EO及び1,2-ブチレンオキサイドが好ましい。AOを2種以上使用する場合(例えば、PO及びEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0056】
ポリエステルポリオールとしては、多価水酸基含有化合物(前記の多価アルコール及び前記ポリエーテルポリオール)と芳香族ポリカルボン酸(前述したもの等)及び脂肪族ポリカルボン酸(前述したもの等)、これらの無水物並びにこれらの低級アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4)エステル等のエステル形成性誘導体(無水フタル酸及びテレフタル酸ジメチル等)との縮合反応生成物;前記多価アルコールの前記カルボン酸無水物及びAOの付加反応物;これらのAO(EO、PO等)付加反応物;ポリラクトンポリオール{例えば前記多価アルコールを開始剤としてラクトン(ε−カプロラクトン等)を開環重合させることにより得られるもの};並びにポリカーボネートポリオール(例えば前記多価アルコールとアルキレンカーボネートとの反応物)等が挙げられる。
【0057】
これら以外の各種ポリオールとしては、重合体ポリオール、ポリブタジエンポリオール等のポリジエンポリオール及びそれらの水添物;アクリル系ポリオール、特開昭58−57413号公報及び特開昭58−57414号公報等に記載された水酸基含有ビニル重合体;ヒマシ油等の天然油系ポリオール;天然油系ポリオールの変性物;等が挙げられる。
【0058】
ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(C)の重量を基準とする強度向上剤(A)の含有量は、機械物性(伸び、引っ張り強度)向上の観点から、0.1〜99.9重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜80重量%、特に好ましくは1.0〜60重量%である。なお、本発明においては、使用する重合体ポリオールに強度向上剤(A)が含まれている場合も、ポリオール組成物(C)に(A)が含有されているものとして取り扱う。
【0059】
無機物固体(B)の含有量は、ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(C)の重量を基準として、0.1〜99.9重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜55重量%、次にさらに好ましくは5〜45重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。この範囲であると、ポリウレタンの機械特性及び(B)の分散性の観点から好ましい。
【0060】
ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(C)を製造するに当たって、強度向上剤(A)と無機物固体(B)とを、さらに必要によりポリオール(P)とを混合する方法は公知のいかなる方法でも良い。
【0061】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法において、ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(C)と有機ポリイソシアネート成分(D)とを、発泡剤、触媒及び整泡剤の存在下に反応させてポリウレタンフォームを形成させる。
(A)を単独で使用する場合、すなわち(A)をポリオール(P)と併用しない場合には、(A)が水酸基を有すること、すなわち、一般式(I)中、R1、Y及びZのうち、いずれか1つ以上が水酸基を有することが好ましい。
【0062】
有機ポリイソシアネート成分(D)としては、通常ポリウレタンフォームに使用される有機ポリイオシアネートはすべて使用でき、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基及びオキサゾリドン基含有変性物等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0063】
芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く;以下のポリイソシアネートも同様)が6〜16の芳香族ジイソシアネート、炭素数6〜20の芳香族トリイソシアネート及びこれらのイソシアネートの粗製物等が挙げられる。具体例としては、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗製MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート並びにトリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート等が挙げられる。
【0064】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜10の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0065】
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜16の脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0066】
芳香脂肪族イソシアネートとしては、炭素数8〜12の芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
変性ポリイソシアネートの具体例としては、カルボジイミド変性MDI等が挙げられる。
【0067】
これらの中で、反応性及びポリウレタンフォームの機械物性(引っ張り強度、引裂強度、圧縮硬さ)の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、さらに好ましくは、TDI、粗製TDI、MDI、粗製MDI及びこれらのイソシアネートの変性物、特に好ましくは、TDI、MDI及び粗製MDIである。
【0068】
発泡剤としては、水、液化炭酸ガス及び沸点が−5〜70℃の低沸点化合物が含まれる。
【0069】
低沸点化合物には、水素原子含有ハロゲン化炭化水素及び低沸点炭化水素等が含まれる。 水素原子含有ハロゲン化炭化水素及び低沸点炭化水素の具体例としては、塩化メチレン、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)(HCFC−123、HCFC−141b及びHCFC−142b等);HFC(ハイドロフルオロカーボン)(HFC−152a、HFC−356mff、HFC−236ea、HFC−245ca、HFC−245fa及びHFC−365mfc等)、ブタン、ペンタン及びシクロペンタン等が挙げられる。
【0070】
これらのうち、成形性の観点から、水、液化炭酸ガス、塩化メチレン、シクロペンタン、HCFC−141b、HFC−134a、HFC−356mff、HFC−236ea、HFC−245ca、HFC−245fa、HFC−365mfc及びこれらの2種以上の混合物を発泡剤として使用するのが好ましい。
【0071】
発泡剤のうち、水の使用量は、フォーム形成時のフォーム密度、スコーチ発生の抑制の観点から、ウレタンフォーム製造時に使用するポリオール成分{ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(C)}100重量部に対して、1.0〜8.0重量部が好ましく、さらに好ましくは1.5〜7.0重量部である。低沸点化合物の使用量は、成形不良の観点から、ポリオール成分100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、さらに好ましくは5〜25重量部である。液化炭酸ガスは、30重量部以下が好ましく、さらに好ましくは1〜25重量部である。
【0072】
触媒としては、ウレタン化反応を促進するすべての触媒を使用でき、3級アミン{トリエチレンジアミン、N−エチルモルフォリン、ジエチルエタノールアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジアザビシクロオクタン、1,2−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン−7、ビス(N,N−ジメチルアミノ−2−エチル)エーテル及びN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン等}、及び/又はカルボン酸金属塩(酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ及びオクチル酸鉛等)が挙げられる。触媒の使用量は、機械物性(引っ張り強度、引き裂き強度、圧縮硬さ)向上の観点から、ウレタンフォーム製造時に使用するポリオール成分100重量部に対して、0.01〜5.0重量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜2.0重量部である。
【0073】
整泡剤としては、通常のポリウレタンフォームの製造に用いられるものはすべて使用でき、ジメチルシロキサン系整泡剤[東レ・ダウコーニング(株)製の「SRX−253」、「PRX−607」等]及びポリエーテル変性ジメチルシロキサン系整泡剤[東レ・ダウコーニング(株)製の「L−540」、「SZ−1142」、「L−3601」、「SRX−294A」、「SH−193」、「SZ−1720」、「SZ−1675t」、「SF−2936F」及びデグサジャパン(株)製「B−4900」等]が挙げられる。整泡剤の使用量は、機械物性(伸び、引っ張り強度)、機械物性の経時変化及びフォームの変色の観点から、ポリオール成分100重量部に対して、0.5〜5.0重量部が好ましく、さらに好ましくは1.0〜3.0重量部である。
【0074】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法においては、必要により、さらに以下に述べるその他の助剤を用い、その存在下で反応させてもよい。
その他の助剤としては、着色剤(染料及び顔料)、可塑剤(フタル酸エステル及びアジピン酸エステル等)、有機充填剤(合成短繊維、熱可塑性又は熱硬化性樹脂からなる中空微小球等)、難燃剤(リン酸エステル及びハロゲン化リン酸エステル等)、老化防止剤(トリアゾール及びベンゾフェノン等)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール及びヒンダードアミン等)等の公知の補助成分が挙げられる。
【0075】
これら助剤の添加量としては、ポリオール成分100重量部に対して、着色剤は、1重量部以下が好ましい。可塑剤は、10重量部以下が好ましく、さらに好ましくは5重量部以下である。有機充填剤は、50重量部以下が好ましく、さらに好ましくは30重量部以下である。難燃剤は、30重量部以下が好ましく、さらに好ましくは2〜20重量部である。老化防止剤は、1重量部以下が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。抗酸化剤は、1重量部以下が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。助剤の合計使用量は、50重量部以下が好ましく、さらに好ましくは0.2〜30重量部である。
【0076】
本発明の製造方法において、ポリウレタンフォームの製造に際してのイソシアネート指数(インデックス)[(NCO基/活性水素原子含有基)の当量比×100]は、成形性の観点、機械物性(引っ張り強度、引き裂き強度、圧縮硬さ)の観点から、70〜150が好ましく、さらに好ましくは80〜130、特に好ましくは90〜120である。
【0077】
本発明の方法によるポリウレタンフォームの製造方法の具体例の一例を示せば、下記の通りである。まず、ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物、発泡剤、触媒、整泡剤並びに必要によりその他の添加剤を所定量混合する。次いでポリウレタンフォーム発泡機又は攪拌機を使用して、この混合物と有機ポリイソシアネート成分とを急速混合する。得られた混合液(発泡原液)を連続発泡してポリウレタンフォームを得ることができる。また、密閉型又は開放型のモールド(金属製又は樹脂製)に注入し、ウレタン化反応を行わせ、所定時間硬化後、脱型してポリウレタンフォームを得ることもできる。
【0078】
本発明の方法で得られたポリウレタンフォームは、車両用クッション用、家具・建材用、衣料用、電気機器用、電子機器用又は包装用として好適に使用される。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0080】
製造例1
攪拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、グリセリンPOEO付加物(三洋化成工業株式会社製 PL−910;数平均分子量900のグリセリンPOEO付加物、水酸基価124、EO含量10重量%)1モル、無水トリメリット酸2モル及びアルカリ触媒(N−エチルモルフォリン)0.010モルを仕込み、窒素雰囲気下、0.20MPa、120±10℃で1時間反応させハーフエステル化を行った。その後EO4モルを80±10℃、圧力0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、80±10℃で1時間熟成した。熟成終了後、アルカリ触媒を10kPaにて1時間減圧除去して、強度向上剤A−1を得た。水酸基価(mgKOH/g)=154、数平均分子量=1460
【0081】
製造例2
攪拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、エチレングリコールEO付加物(三洋化成工業株式会社製 PEG−200;数平均分子量200のエチレングリコールEO付加物、水酸基価560)1モル、無水トリメリット酸2モル及びアルカリ触媒(N−エチルモルフォリン)0.010モルを仕込み、窒素雰囲気下、0.20MPa、120±10℃で1時間反応させハーフエステル化を行った。その後EO4モルを80±10℃、圧力0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、80±10℃で1時間熟成した。熟成終了後、アルカリ触媒を10kPaにて1時間減圧除去して、強度向上剤A−2を得た。水酸基価(mgKOH/g)=295、数平均分子量=760
【0082】
製造例3( 有機化粘土鉱物粒子(B−1)の調製)
層状粘土鉱物としてモンモリロナイト(クニピアF 、クニミネ工業社製、陽イオン交換容量:119ミリ当量/100g)10gを80℃の水490mLに混合分散させた溶液を調製した。一方、4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール塩酸塩(和光純薬社製、分子量:149)3.5gを80℃の水650mLに均一溶解させた溶液を調製した。これらの溶液を撹拌しながら混合して、有機化粘土鉱物の沈澱物を得た。
この沈澱物を60℃の水で洗浄した後、更に、ろ液が硝酸銀水溶液で白濁しなくなるまで繰り返し洗浄し、有機化粘土鉱物粒子(B−1)を得た。
【0083】
製造例4(改質カーボンナノチューブ粒子(B−2)の製法)
マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)(Shenzhen Nanotech Port社製)600mgを濃硫酸/濃硝酸(20ml/20ml)中に懸濁させ140℃で1時間還流させた。次に脱イオン水500mlを加えて希釈した後、ろ過して酸化MWCNTを得た。シュレンク管に、得られた酸化MWCNT50mg、アクリル酸クロライド2mlを1,4−ジオキサン6ml中で60℃で48時間撹拌し、その後、エチレングリコール5ml、トリエチルアミン0.5mlを加え、窒素雰囲気下60℃で8時間撹拌した後、エタノールとTHFで洗浄し真空下60℃で8時間乾燥させ、改質カーボンナノチューブ粒子(B−1)を得た。
【0084】
製造例5(改質シリカ粒子(B−3)の製法)
ガラス製反応に真空乾燥させたヒュームドシリカ(Sigma Chemicals社製)100g、2,4−トルエンジイソシアネート90.4gとジブチル錫ラウレート0.01g及びアセトニトリル200mlを加え、70℃で6時間撹拌した後、ビスフェノールA59.6gを加えて70℃で6時間撹拌した後、ソックスレー装置に投入して、温度90℃のオイルバスで24時間抽出した後、真空下60℃で9時間乾燥させ、改質シリカ粒子を得た。
【0085】
実施例1〜27
表1〜3に記載の配合処方にしたがって各種強度向上剤(A)と各種無機物固体(B)と各種ポリオール(P)を1リットルフラスコに加え、分散機(TKホモミキサー、特殊機化(株))で16,000rpm、25℃、15分間分散し、ウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(C)を作成した。
【0086】
比較例1〜8
表1〜3に記載の配合処方にしたがって、実施例と同様に行い、ウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(C)を作成した。
【0087】
<実施例1〜9及び比較例1〜2軟質スラブフォームの製造>
表1に示した配合処方に従って、下記の発泡条件により発泡して軟質ポリウレタンフォームを作製し、一昼夜(温度25℃、湿度50%にて24時間)放置後のフォームのコア密度(kg/m3)、硬さ(25%ILD、kgf/314cm2)、引裂強度(kgf/cm)、引張強度(kgf/cm2)、伸び(%)を測定した。
【0088】
(発泡条件)
BOX SIZE:250mm×250mm×250mm
材質 :木材
ミキシング方法 :ハンドミキシング(必要試薬を所定の容器に必要量仕込んだ後、攪拌羽を容器中に挿入し回転数5000回転/分で6〜20秒間攪拌させる発泡方法)
ミキシング時間 :6〜20秒
撹拌羽回転数 :5000回転/分
【0089】
実施例1〜9及び比較例1〜2における上記製造例で示した以外の原料は次の通りである。
1.触媒
触媒−1:エアプロダクツジャパン(株)製「DABCO−33LV」(トリエチレンジアミンの33重量%ジプロピレングリコール溶液)
触媒−2:オクチル酸スズ(商品名:日東化成(株)製「ネオスタンU−28」(オクチル酸第1スズ)
2.整泡剤
整泡剤−1:東レ・ダウコーニング製「L−540」
【0090】
3.有機ポリイソシアネート成分(D−1)
TDI:NCO%=48.3(商品名:コロネートT−80、日本ポリウレタン工業(株)製)
4.ポリオール
重合体ポリオール(P−1):グリセリンにPOとEOをブロック付加させて得られた平均官能基数3.0、水酸基価34、EO単位の合計=14%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール中で、スチレンとアクリロニトリル(重量比:30/70)を共重合させた重合体ポリオール(重合体含量30%)。水酸基価24。
5.発泡剤
発泡剤−1:水
【0091】
<試験方法>
各項目の測定方法は下記の通りである。得られた結果を表1に示す。
・フォーム物性の測定方法及び単位を以下に示す。
コア密度:JIS K6400に準拠、単位はkg/m3
硬さ(25%−ILD):JIS K6400に準拠、単位はkgf/314cm2
引張強度:JIS K6400に準拠、単位はkgf/cm2
引裂強度:JIS K6400に準拠、単位はkgf/cm
伸び率:JIS K6400に準拠、単位は%
【0092】
【表1】

【0093】
表1において、本発明実施例1〜9のウレタンフォームは、従来技術により得られる比較例1〜2のウレタンフォームよりも、フォーム物性、特にフォーム硬さや引張強度、引裂強度が向上している。
【0094】
<実施例10〜18、比較例3〜5 軟質HRフォームの製造>
表2に示した発泡処方に従って、下記の発泡条件により軟質ポリウレタンフォームを金型内で発泡してフォームを形成後、金型から取り出し一昼夜放置後の軟質ポリウレタンフォーム諸物性を測定した。物性の測定値も表2にそれぞれ記載した。
【0095】
(発泡条件)
金型SIZE:40cm×40cm×10cm(高さ)
金型温度:65℃
金型材質:アルミ
ミキシング方法:高圧ウレタン発泡機(ポリマーエンジニアリング社製)ポリオールプレミックスとイソシアネートとを15MPaで混合
【0096】
実施例10〜18及び比較例3〜5における軟質HRポリウレタンフォームの原料は、前述の製造例、実施例及び比較例で示した物と同様の物を使用し、それ以外の物は次の通りである。
1.触媒
触媒−3:東ソー(株)社製「TOYOCAT ET」(ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルの70重量%ジプロピレングリコール溶液)
2.整泡剤
整泡剤−2:EVONIK社製「TEGOSTAB B8737LF」
【0097】
3.有機ポリイソシアネート成分(D−2)
日本ポリウレタン工業(株)社製「CE−729」(TDI−80(2,4−及び2,6−TDI、2,4−体の比率が80%/粗製MDI(平均官能基数:2.9)=80/20(重量比))
4.ポリオール
ポリオール(P−2):グリセリンにPOとEOをランダム付加させて得られた平均官能基数3.0、水酸基価24、EO単位の合計=72%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール
ポリオール(P−3):ソルビトールにPOを付加させて得られた平均官能基数6.0、水酸基価490のポリオキシプロピレンポリオール
ポリオール(P−4):グリセリン。官能基数3.0、水酸基価1829。
ポリオール(P−5):ペンタエリスリトールにPOとEOをブロック付加させて得られた平均官能基数4.0、水酸基価28、EO単位の合計=14%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール
ポリオール(P−6):グリセリンにPOとEOをブロック付加させて得られた平均官能基数3.0、水酸基価33、EO単位の合計=14%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール
【0098】
各項目の測定方法は下記の通りである。得られた結果を表2に示す。
・フォーム物性の測定方法及び単位を以下に示す。
コア密度 :JIS K6400に準拠、単位はkg/m3
硬さ(25%−ILD):JIS K6400に準拠、単位はkgf/314cm2
引張強度:JIS K6400に準拠、単位はkgf/cm2
引裂強度:JIS K6400に準拠、単位はkgf/cm
伸び率:JIS K6400に準拠、単位は%
【0099】
【表2】

【0100】
表2において、本発明実施例10〜18のウレタンフォームは、従来技術により得られる比較例3〜5のウレタンフォームよりも、フォーム物性、特にフォーム硬さや引張強度、引裂強度が向上している。
【0101】
<実施例19〜27、比較例6〜8>
表3に示した発泡処方に従って、下記の発泡条件により硬質ポリウレタンフォームを金型内で発泡してフォームを形成し、脱型後一昼夜放置し、硬質ポリウレタンフォーム諸物性を測定した。物性の測定値も表3に記載した。
【0102】
(発泡条件)
金型SIZE:40cm×40cm×5cm(高さ)
金型温度:35℃
金型材質:アルミ
ミキシング方法:高圧ウレタン発泡機(ポリマーエンジニアリング社製)ポリオールプレミックスとイソシアネートとを12MPaで混合
【0103】
実施例19〜27及び比較例6〜8における硬質ポリウレタンフォームの原料は、前述の実施例で示した物と同様の物を使用し、それ以外の物は次の通りである。
1.触媒
触媒−4:サンアプロ(株)製「U−CAT 1000」(アミン系触媒)
2.整泡剤
整泡剤−3:東レ・ダウコーニング(株)製「SF−2936F」
【0104】
3.有機ポリイソシアネート成分(D−3)
日本ポリウレタン工業(株)社製「ミリオネート MR−200」(ポリメリックMDI)
4.ポリオール
(1)ポリオール(P−5):蔗糖にPOを付加させて得られた平均官能基数8.0、水酸基価490のポリオキシプロピレンポリオール
(2)ポリオール(P−6):ペンタエリスリトールにPOを付加させて得られた平均官能基数4.0、水酸基価410のポリオキシプロピレンポリオール
5.難燃剤
難燃剤−1:大八化学工業(株)社製「TMCPP」(トリス(β−クロロプロピルホスフェート
6.発泡剤
発泡剤−2:セントラル硝子(株)社製「HFC−245fa」(1,1,1,3,3,−ペンタフルオロプロパン)
【0105】
各項目の測定方法は下記の通りである。得られた結果を表3に示す。
密度 :JIS A9511に準拠、単位はkg/m3
圧縮強度:JIS A9511に準拠、単位はkPa
【0106】
【表3】

【0107】
表3において、本発明実施例19〜27のウレタンフォームは、従来技術により得られる比較例5〜8のウレタンフォームよりも、圧縮強度が向上している。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明のポリウレタンフォームは、車両座席用、家具用、建材用、寝具用、アパレル用、電気機器用、電子機器用、包装用、その他用途(サニタリー用品、化粧用品)等のポリウレタンフォームのあらゆる用途で好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される強度向上剤(A)及び無機物固体(B)を必須成分として含有してなるポリオール組成物であって、ポリオール組成物中に(B)が分散されてなるポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(C)。
【化1】

[一般式(I)中、R1は活性水素含有化合物から1個の活性水素を除いた残基を表す。複数のR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。;Yは3価以上の芳香族ポリカルボン酸(f)からカルボキシル基を除いた残基を表す。Yの芳香環は炭素原子から構成される。芳香環の置換基は水素原子でも他の置換基でもよいが、少なくとも一つの置換基が水素原子である。;aは2≦a≦(芳香環置換基数−2)を満たす整数である。;Zはm価以上の活性水素含有化合物からm個の活性水素を除いた残基を表す。;mは1〜10の整数を表す。]
【請求項2】
無機物固体(B)が、金属化合物及び炭素材料からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物。
【請求項3】
強度向上剤(A)の水酸基価が0〜700mgKOH/gである請求項1又は2に記載のポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物。
【請求項4】
強度向上剤(A)の芳香環濃度(mmol/g)が0.1〜10.0である請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物。
【請求項5】
強度向上剤(A)中のYの含量が、(A)の数平均分子量を基準として0.5〜50%である請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物。
【請求項6】
ポリオール組成物(C)の重量を基準とする(A)の含有量が、0.1〜99.9重量%である請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリオール組成物(C)と、有機ポリイソシアネート成分(D)とを、発泡剤、触媒及び整泡剤の存在下に反応させてなるポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2013−28734(P2013−28734A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166262(P2011−166262)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】