説明

ポリウレタンフォーム

【課題】成形後の寸法安定性(経時収縮が小さい)に優れ、且つ難燃性に優れるポリウレタンフォーム特に、独立気泡率が低く、成形後の収縮の問題のない難燃性ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリオール成分として、ポリエステルポリオールと、鎖末端エチレンオキサイド単位の含有量が100%であるポリエーテルポリオールとを含むポリウレタンフォーム。反応性の低いポリエステルポリオールと反応性の高い末端EOポリエーテルポリオールとを使用し、両者の反応速度差を利用して発泡により形成される気泡の連通化を図る。これにより、独立気泡率が低く、成形後の収縮の問題のないポリウレタンフォームを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、触媒及び発泡剤を含むポリウレタンフォーム原料を発泡させて得られるポリウレタンフォームに係り、特に発泡剤として水を用いたポリウレタンフォームにおける、成形後の収縮を防止すると共に、難燃性を高めたポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、冷蔵庫等の吹付け断熱材として、断熱性及び自己接着性に優れるポリウレタンフォームが広く利用されている。
【0003】
このような断熱材用途のポリウレタンフォームは、一般にポリイソシアネート成分と、ポリオール成分、発泡剤、触媒、難燃剤、整泡剤及びその他の助剤を混合した配合液とをミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー発泡で施工される。この方法であれば、施工対象物に直接吹き付け施工するという簡単な作業で、良好なポリウレタンフォームを形成することができる。
【0004】
このようなポリウレタンフォームの発泡剤としては、ジクロロモノフルオロエタン(HCFC−141b)やハイドロフルオロカーボン(HFC)等が挙げられるが、ジクロロモノフルオロエタン(HCFC−141b)にはオゾン層破壊の問題があり、ハイドロフルオロカーボン(HFC)には強い地球温暖化作用がある。
【0005】
このようなことから、これらのフロン系発泡剤を用いることなく、発泡を行う技術の開発が一つの課題とされ、水とポリイソシアネートとの反応で生成する炭酸ガスを発泡剤と
して用いる完全水発泡のポリウレタンフォームが提案された(例えば、特開2000−256434号公報)。
【0006】
しかしながら、水は一般的にフロン系化合物に比して反応活性等に劣り、単純に代替した場合には実用に耐えうるポリウレタンフォームとならない場合が多い。特にフロン系発泡剤のかわりに水を用いた場合、成形後のポリウレタンフォームが経時収縮するという問題がある。成形後の経時収縮を少なくするには独立気泡の連通化をすればよく、即ち、独立気泡率の小さいポリウレタンフォームとすればよく、特開2003−201330号公報には高分子と低分子のポリオールを組み合わせて独立気泡を連通化することが提案されている。
【特許文献1】特開2000−256434号公報
【特許文献2】特開2003−201330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
住宅用、特に集合住宅用の断熱材に使用されるポリウレタンフォームには難燃性が要求され、その観点からするとポリウレタンフォーム原料のポリオール成分はポリエステルポリオールであることが望ましい。
しかしながら、ポリエステルポリオールを使用した際の独立気泡率のコントロール方法は、未だ確立されていない。
【0008】
また、ポリウレタンフォームの難燃性を高めるために、一般にポリウレタンフォーム原料には難燃剤が配合されるが、難燃剤の配合により、得られるポリウレタンフォームの独立気泡率は増える傾向にある。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、成形後の寸法安定性(経時収縮が小さい)に優れ、且つ難燃性に優れるポリウレタンフォーム、特に、独立気泡率が低く、成形後の収縮の問題のない難燃性ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、ポリウレタンフォーム原料のうち、ポリオール成分として、ポリエステルポリオールと、鎖末端エチレンオキサイド単位の含有量が100%であるポリエーテルポリオールとを併用することにより、ポリウレタンフォームの独立気泡率を下げることができ、成形後の収縮の問題のない難燃性ポリウレタンフォームを得ることができることを見出し本発明を完成させた。
【0011】
本発明(請求項1)のポリウレタンフォームは、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、触媒及び発泡剤を含むポリウレタンフォーム原料を発泡させて得られるポリウレタンフォームにおいて、該ポリオール成分が、ポリエステルポリオールと、鎖末端エチレンオキサイド単位の含有量が100%であるポリエーテルポリオール(以下、「末端EOポリエーテルポリオール」と称す。)とを含むことを特徴とするものである。
【0012】
請求項2のポリウレタンフォームは、請求項1において、該ポリオール成分が、更に、ポリマーポリオールを含むことを特徴とするものである。
【0013】
請求項3のポリウレタンフォームは、請求項1又は2において、該ポリオール成分が該末端EOポリエーテルポリオールを1〜20重量%含むことを特徴とするものである。
【0014】
請求項4のポリウレタンフォームは、請求項2又は3において、該ポリオール成分が該ポリマーポリオールを10〜50重量%含むことを特徴とするものである。
【0015】
請求項5のポリウレタンフォームは、請求項1ないし4のいずれか1項において、該発泡剤が水であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6のポリウレタンフォームは、請求項1ないし5のいずれか1項において、該ポリウレタンフォーム原料が、更に、難燃剤を含むことを特徴とするものである。
【0017】
請求項7のポリウレタンフォームは、請求項1ないし6のいずれか1項において、液温40〜45℃で発泡させて得られることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリウレタンフォームによれば、ポリウレタンフォーム原料のポリオール成分として、ポリエステルポリオールと、鎖末端エチレンオキサイド単位の含有量が100%であるポリエーテルポリオール(末端EOポリエーテルポリオール)とを用いることにより、成形後の寸法安定性に優れ、且つ難燃性に優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0019】
即ち、ポリエステルポリオールは、難燃性の向上に有効であり、ポリエステルポリオールの使用により、難燃性に優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0020】
しかし、ポリエステルポリオールは、反応性が低く、独立気泡率を高める傾向がある。本発明では、このような反応性の低いポリエステルポリオールと反応性の高い末端EOポリエーテルポリオールとを併用し、両者の反応速度差を利用して、発泡により形成される気泡の連通化を図る。これにより、独立気泡率が低く、成形後の収縮の問題のないポリウレタンフォームが得られる。
【0021】
本発明では更に、ポリオール成分として、ポリマーポリオールを用いることにより、ポリマーポリオールの微粒子の気泡連通化作用で、より一層独立気泡率を低減すると共に、ポリウレタンフォームの強度を高めることができ好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明のポリウレタンフォームの実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明のポリウレタンフォームは、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、触媒及び発泡剤を含むポリウレタンフォーム原料を発泡させて得られるポリウレタンフォームにおいて、該ポリオール成分が、ポリエステルポリオールと、鎖末端エチレンオキサイド単位の含有量が100%であるポリエーテルポリオール(末端EOポリエーテルポリオール)とを含むことを特徴とする。
【0024】
[ポリオール成分]
本発明においては、ポリウレタンフォーム原料のポリオール成分として、ポリエステルポリオールと、末端EOポリエーテルポリオールとを併用し、さらに好ましくは、ポリマーポリオールを併用する。
なお、各ポリオールは、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
<末端EOポリエーテルポリオール>
本発明に用いる末端EOポリエーテルポリオールは、活性水素を2個以上含有する化合物を開始剤として、炭素数が3以上のアルキレンオキサイドを付加させて、更に末端にエチレンオキサイドを付加させたポリエーテルポリオール、或いは、活性水素を2個以上有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイドのみを付加させたポリエーテルポリオールである。この「炭素数3以上のアルキレンオキサイド」としては、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。本発明においては、プロピレンオキサイドが好ましい。
【0026】
即ち、アルキレンオキサイドを付加させたポリエーテルポリオールには、
(1):活性水素を2個以上有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイドと炭素数が3以上のアルキレンオキサイドの混合物をランダムに付加させた、ポリエーテルポリオール
(2):活性水素を2個以上有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイドのみを付加させたポリエーテルポリオール
(3):活性水素を2個以上有する化合物を開始剤として、炭素数が3以上のアルキレンオキサイドを付加させて、更に末端にエチレンオキサイドを付加させたポリエーテルポリオール
とが存在するが、本発明においては、上記(2)或いは(3)の末端にエチレンオキサイドのみを有するポリエーテルポリオールを用いる。本発明では、この末端にエチレンオキサイドのみを有するポリエーテルポリオールを、鎖末端エチレンオキサイド単位の含有量が100%であるポリエーテルポリオール(以下、「末端EOポリエーテルポリオール」と称す。)と称す。
なお、本発明において「鎖末端エチレンオキサイド単位の含有量が100%」であるとは、全てのポリエーテルポリオール分子の末端に対する鎖末端エチレンオキサイドの占める割合が100%であることを意味する。
【0027】
なお、ここで、開始剤としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールA、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネート、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類、アニリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子アミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類等が挙げられる。本発明では、低分子ポリオール類が好ましい。これらの開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
これらの開始剤の官能基数は、2〜8であることが好ましく、2〜6が更に好ましい。開始剤の官能基数がこの下限未満の場合、得られるポリウレタンフォームは架橋密度低下のために強度や硬度が低下しやすい。この上限を超える場合は、フォームの柔軟さが失われやすい。また、高粘度のため、ポリオール成分全体の粘度が上がり、スプレーで吹き付けしにくくなる。
【0029】
このような末端EOポリエーテルポリオールの好ましい粘度は500〜3000mPa・s(25℃)である。粘度が上記上限を超える場合、反応性が低下したり、反応液が分離し易くなったり、ポリオール成分の粘度が高すぎて成形が困難になったりする。粘度が上記下限未満でも、特に不具合はない。
【0030】
また、このような末端EOポリエーテルポリオールの好ましい水酸基価は50〜600mg−KOH/gである。水酸基価が上記上限を超えると官能基数が高い場合、粘度が高くなって成形が困難となり、上記下限未満であると反応性が低下したり、反応液の分離が発生しやすくなり、スプレー吹き付け成形が困難となる。
【0031】
末端EOポリエーテルポリオールは、後述するポリエステルポリオールに比べ、イソシアネート成分との反応性が高い。本発明では、このように反応性が異なる2つのポリオールを用いることにより、ポリウレタンフォームの気泡を連通化して、ポリウレタンフォームの経時収縮を防ぐ。
【0032】
末端EOポリエーテルポリオールは、全ポリオール成分中に、1〜20重量%、特に2〜10重量%用いることが好ましい。末端EOポリエーテルポリオールの割合が上記下限未満では、連通化の効果が十分に得られず、上記上限を超えると連通化の効果が頭打ちとなり、また、主成分ポリオールの含有量が著しく減ることにより、目的とする特性が得られなくなる。
【0033】
<ポリエステルポリオール>
本発明に用いるポリエステルポリオールとしては、フタル酸系ポリエステルポリオール、特に、無水フタル酸(o−フタル酸)以外のフタル酸、即ち、m−フタル酸(イソフタル酸)及び/又はp−フタル酸(テレフタル酸)並びにこれらの誘導体を主成分とするフタル酸系ポリエステルポリオールが好ましい。
【0034】
即ち、凝集エネルギーの低い無水フタル酸を用いると、それ以外のフタル酸(m,p−フタル酸)を用いたポリオールから得られたフォームよりも燃焼し易いという欠点がある。これに対して、m,p−フタル酸よりなるポリエステルポリオールを用いることによって良好な難燃性能を得ることができる。
【0035】
このようなフタル酸系ポリエステルポリオール、好ましくはm,p−フタル酸系ポリエステルポリオールの好ましい水酸基価は100〜400mg−KOH/gで、粘度は500〜1500mPa・s(25℃)である。このフタル酸系ポリエステルポリオールは、p−フタル酸含量が40〜80重量%であることが好ましい、このフタル酸系ポリエステルポリオールのp−フタル酸含量が40重量%未満では難燃性が落ちる傾向にあり、80重量%を超えるとポットライフが落ちる傾向にある。
【0036】
ポリエステルポリオールは、全ポリオール成分中に、30〜70重量%、特に40〜60重量%用いることが好ましい。上記上限を超えると相対的に末端EOポリエーテルポリオールの量が少なくなって独立気泡率が高くなる。上記下限未満であると難燃性が低下する。
【0037】
<ポリマーポリオール>
ポリマーポリオールとしては、例えばポリエーテルポリオールにポリスチレン、ポリアクリロニトリル、又はアクリロニトリル−スチレン共重合体等のポリマー成分をグラフト共重合させたポリマーポリオール等が挙げられる。ポリエーテルポリオール(ポリアルキレンオキシド)の原料となるアルキレンオキシドとしてはプロピレンオキシドを含むことが好ましく、プロピレンオキシド単独のもの、又はプロピレンオキシド及びエチレンオキシドを共に含むものであることが特に好ましい。また、上記ポリマーポリオール中に占める上記のようなグラフトポリマー成分の割合としては通常5〜50重量%である。
【0038】
このようなポリマーポリオールとしては市販品を用いることができ、例えば商品名XR7202(旭硝子(株)製)、WB722(旭硝子(株)製)、WB502(旭硝子(株)製)等を使用することができる。
【0039】
上記ポリマーポリオールを配合することにより、発泡時にポリマーポリオール中の微粒子が気泡の連通化を促進する。これにより、独立気泡が減少し、ポリウレタンフォームの寸法安定性が良好なものになる。また、このポリマーポリオール中の微粒子がポリウレタンフォーム中に分散することにより、ポリウレタンフォームの強度を高める。
【0040】
このようなポリマーポリオールを用いる場合、全ポリオール成分中に、10〜40重量%、特に20〜30重量%となるように用いることが好ましい。ポリマーポリオールの使用量が上記上限を超えると、相対的にポリエステルポリオール及び末端EOポリエーテルポリオールの割合が低減し、特にポリエステルポリオール量が低減することにより難燃性が低下する。また、上記下限未満であるとポリマーポリオールを配合したことによる上記効果を十分に得ることができない。
【0041】
このようなポリマーポリオールの好ましい粘度は500〜3000mPa・s(25℃)程度である。粘度が上記上限を超えると、ポリオール成分の粘度が高くなり吹き付けが困難であり、上記下限未満であっても特に問題はない。
【0042】
特に、ポリマーポリオールは、粉体成分の割合として、ベースポリエーテルポリオールに対して0.5〜10重量%、特に1〜5重量%となるようにすることが好ましい。この割合が上記下限未満では、ポリマーポリオールの添加効果を十分に得ることができず、上記上限を超えると粘度が上昇し、吹き付けが困難となる。
【0043】
[ポリイソシアネート成分]
本発明に用いるポリイソシアネート成分としては、公知の各種多官能性の脂肪族、脂環族および芳香族のイソシアネートを用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、オルトトルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げることができ、これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
中でも、本発明においては反応性、物性、安全性の観点から、上記イソシアネートとしてはジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含むことが好適である。このようなポリイソシアネート成分としては市販品を使用することができ、例えば商品名コロネートC−1155(日本ポリウレタン(株)製)、G467(住化バイエルウレタン社製)、44V20(住友バイエルウレタン社製)、M−12S(BASF社製)等を使用することができる。
【0045】
上記ポリイソシアネート成分の配合量は特に制限されるものではないが、全ポリオール成分と、発泡剤、触媒、難燃剤及びその他の助剤とを含む、ポリイソシアネート成分以外の成分(後述のポリオール配合液)100重量部に対して通常90〜130重量部、好ましくは100〜120重量部である。ポリイソシアネート成分の配合量が少なすぎると強度不足となったり発泡しなかったりする場合があり、一方多すぎると、密度が低くならなかったり低温下で脆性が悪化したりする場合がある。
【0046】
[発泡剤、触媒、難燃剤及びその他の助剤]
<発泡剤>
本発明において、発泡剤として好ましくは水を用いる。水の配合量は常用量で良く、通常、全ポリオール成分100重量部に対し1〜10重量部、特に1〜7重量部である。
【0047】
<触媒>
触媒としては、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス−(ジメチルアミノエチル)エーテル、テトラメチルプロピレンジアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等のポリウレタンフォームの製造に用いる通常のアミン触媒を使用することができる。
【0048】
さらに、触媒としてオクチル酸カリウム、2−エチルヘキシル酸ビスマス、2−エチルヘキシル酸第一錫、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等の錫触媒や、フェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)も使用することができる。
【0049】
これらの触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
本発明においては、発泡を安定に起こさせるための有機金属触媒と、助触媒としてのアミン触媒とを併用することが好ましく、有機金属触媒を全ポリオール成分100重量部に対して0.5〜10重量部、アミン触媒を全ポリオール成分100重量部に対して0.1〜10重量部用いることが好ましい。
【0051】
<難燃剤>
難燃剤としては、汎用の難燃剤を使用することができ、例えば非ハロゲン系リン酸エステル、含ハロゲンリン酸エステル、非ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等を挙げることができるが、中でも非ハロゲン系リン酸エステルを主成分とする難燃剤を使用することが、ポリウレタン発泡原液の粘度を低く抑え、攪拌効率の向上や得られる成形体の均質性向上、スプレー工法への適用をより容易に行なう等の観点から好適である。
【0052】
上記非ハロゲン系リン酸エステルとしては、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリイソブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート等が挙げられる。また、上記含ハロゲンリン酸エステルとしては、例えばトリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
なお、難燃剤を用いる場合、その配合量としては、全ポリオール成分100重量部に対して通常5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部である。
【0054】
<整泡剤>
整泡剤としては、通常、ポリウレタンフォームに使用されるシリコーン系等の整泡剤が使用され、その配合量は、全ポリオール成分100重量部に対し0.1〜7重量部、特に0.5〜5重量部とすることができる。
【0055】
<その他の成分>
本発明に係るポリウレタンフォーム原料は、上記ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、整泡剤、難燃剤、発泡剤以外に、通常、ポリウレタンフォームの製造に用いられる各種の添加剤を含んでいても良い。このような添加剤としては、顔料等の着色剤、炭酸カルシウム等の充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、カーボンブラック等の導電性物質、抗菌剤などが挙げられる。
【0056】
[ポリウレタンフォームの製造方法]
本発明のポリウレタンフォームは、上述のようなポリウレタンフォーム原料を用いて、常法に従って製造することができる。
【0057】
ポリウレタンフォーム原料の混合方法は、通常行なわれているワンショット法、プレポリマー法のいずれでも良い。
【0058】
また、発泡によるポリウレタンフォームの製造方法は、スラブストック法、スプレー塗布やロールによる塗布などのキャスティング法、型内で成形するモールド法、細いノズルからキャストするデイスペンサー法等を採用することができる。
【0059】
本発明において、ポリウレタンフォームを発泡、製造する条件は、通常の条件でよいが、発泡温度については駆体温度5〜30℃で、液温40〜45℃とすることが好ましい。液温が40℃未満の場合、独立気泡率が高くなり、液温が45℃より高くても、独立気泡率は変わらない。(ただし実際はマシンの制約条件で45℃より大きく上げることはできない。)
[物性]
本発明のポリウレタンフォームは、好ましくは、以下の物性を有する。
【0060】
なお、これらの物性の測定方法は、後述の実施例の項に示す通りである。
【0061】
<コア密度>
本発明のポリウレタンフォームのコア密度は、35〜45kg/m程度であることが好ましい。密度が大き過ぎるものは材料の使用量が多くなり、コストや施工時間がかかりすぎることになり好ましくなく、小さ過ぎるものは樹脂骨格の強度が不足し、経時収縮が大きくなる。
【0062】
<独立気泡率>
本発明のポリウレタンフォーム独立気泡率は、20〜40%程度であることが好ましい。独立気泡率が高いと経時収縮が大きくなる。独立気泡率が極端に低いと、フォームの強度が低下してJIS A9526に示される規格値が満たせない場合がある。
【0063】
なお、本発明のポリウレタンフォームは、硬質ポリウレタンフォームとして住宅、冷蔵庫などの断熱材に用いるのが好ましい。
【0064】
特に、本発明は、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分、発泡剤としての水、触媒、難燃剤、整泡剤及びその他の助剤を混合した配合液とを、スプレーガンの中で液圧で混合し、エアで躯体に吹き付けるエアスプレー発泡で施工される断熱材用途の難燃性硬質ポリウレタンフォームに有効である。
【実施例】
【0065】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0066】
ポリオールA:旭硝子(株)製マンニッヒ変性ポリマーポリオール「XR7202」
(アクリロニトリルと酢酸ビニルとを共重合させて得られる粉体成分を
1.4重量%含む。アクリロニトリルと酢酸ビニルの構成比率1:3)
水酸基価:380mg−KOH/g
粘度:1400mPa・s(25℃)
ポリオールB:日立化成(株)製p−フタル酸ベースポリエステルポリオール「SV
165」
水酸基価:200mg−KOH/g
粘度:820mPa・s(25℃)
p−フタル酸含量:62.5重量%
ポリオールC:三井化学(株)製ポリエーテルポリオール「GR−11」
EO/PO=100/0
水酸基価450mg−KOH/g
粘度:1200mPa・s(25℃)
難燃剤A:大八化学(株)製「TMCPP」(トリスモノクロロプロピルホスフェー
ト)
難燃剤B:大八化学(株)製「TEP」(トリエチルホスフェート)
整泡剤:東レダウコーニング(株)製「SH193」(ジメチルシロキサンとポリエー
テルのブロックコポリマー)
触媒A:(株)花王製「カオライザーNo.1」(N,N,N',N'−テトラメチルヘキ
サンジアミン)
触媒B:(株)花王製「カオライザーNo.3」(N,N,N',N'',N''−ペンタメチ
ルジエチレントリアミン)
触媒C:東ソー(株)製「TOYOCAT−DM70」(3級アミン類エチレングリコ
ール溶液)
触媒D:日本化学産業(株)製「プキャット25」(成分1:2−エチルヘキシル酸ビ
スマス(ビスマスとして25重量%)、成分2:オクチル酸(20重量%))
触媒E:日本化学産業(株)製「プキャット15G」(オクチル酸カリウムのジエチレ
ングリコール溶液(カリウム濃度15重量%))
MDI:住友バイエルウレタン(株)製「44V20」
【0067】
[実施例1〜5、比較例1]
表1に示す配合にてポリウレタン原料を調製した。調製に際しては、まず(B)成分以外の各成分からなるポリオール配合液を調製した。ポリオール配合液の調製は、まず(A)成分と(C)成分を混合し、次いで(F)成分を混合し、ついで(E)成分を混合し、最後に(D)成分を混合して調製した。
【0068】
得られたポリオール配合液と、(B)成分とをそれぞれ別々の容器に準備し、各容器内の液を各々ポンプで吸い上げて、スプレーガンに導き、スプレーガン内で混合し、エアで躯体に吹き付けて、硬質ポリウレタンフォームを得た。このときの発泡温度は駆体温度20℃で、液温40〜45℃とした。得られた硬質ポリウレタンフォームの諸物性を以下に記載する方法で評価し、結果を表1に示した。
【0069】
<クリームタイム>
上記ポリオール配合液とポリイソシアネートとの攪拌混合開始後、攪拌した原料(茶色)が白色化し発泡が始まった時間を泡化開始時間(クリームタイム)として記録した。
【0070】
<コア密度>
JIS A9526に準じて測定した。
【0071】
<独立気泡率>
JIS A9526に準じて測定した。
【0072】
【表1】

【0073】
表1より明らかなように、鎖末端エチレンオキサイド単位の含有量が100%であるポリエーテルポリオールをポリオール成分に用いることにより、独立気泡率を低下させることが可能であり、寸法安定性に優れたポリウレタンフォームを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、触媒及び発泡剤を含むポリウレタンフォーム原料を発泡させて得られるポリウレタンフォームにおいて、
該ポリオール成分が、ポリエステルポリオールと、鎖末端エチレンオキサイド単位の含有量が100%であるポリエーテルポリオール(以下、「末端EOポリエーテルポリオール」と称す。)とを含むことを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項2】
請求項1において、該ポリオール成分が、更に、ポリマーポリオールを含むことを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項3】
請求項1又は2において、該ポリオール成分が該末端EOポリエーテルポリオールを1〜20重量%含むことを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項4】
請求項2又は3において、該ポリオール成分が該ポリマーポリオールを10〜50重量%含むことを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、該発泡剤が水であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、該ポリウレタンフォーム原料が、更に、難燃剤を含むことを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、液温40〜45℃で発泡させて得られることを特徴とするポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2009−138134(P2009−138134A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317219(P2007−317219)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】