説明

ポリウレタンポリマー系

本発明は、イソシアネート系ポリマー、特にポリウレタン及びポリ尿素エラストマーポリマーの調製及び用途に関する。ポリウレタン系のポリエーテルポリオールにポリブタジエンを混入することによって、製造されたエラストマーは、従来のポリウレタンエラストマーよりも改善された耐薬品性を有する。ポリ尿素エラストマーの場合、高官能性ポリオール又は架橋剤をポリブタジエンと併用することで、従来のポリ尿素エラストマーよりも改善された耐薬品性を有するエラストマーが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、イソシアネート系ポリマー、特に、ポリウレタン及びポリ尿素エラストマーポリマーの調製及び用途に関する。特にこのようなポリマーは、ポリマーの組成の一部がポリブタジエンである場合に調製される。
【背景技術】
【0002】
エラストマーは、一般に張力下で延伸され、高い引張強度を有し、加えた応力を開放すると急速に元の寸法まで収縮する。このようなエラストマーは、開放系の注型技術、射出成形、及び表面のスプレーコーティングなどの種々の用途で使用することができる。
【0003】
スプレーエラストマーは、コーティングに約20年前に導入された比較的新しい種類のポリウレタンエラストマー材料である。過去10年にわたって、これらのスプレー塗布されるポリウレタン及びポリ尿素ポリマーは、保護コーティング産業において、それらの高い反応性、適用速度、並びに機械的強度、及び靱性のために、急速に受け入れられていた。このようなエラストマーは、種々の基材、例えば金属、プラスチック、木材、及びコンクリートの上へのコーティングとして広く使用されている。例えば、大型容器、パイプハウジングなどは、高摩耗性条件にさらされる品目であり、弾性で耐摩耗性の被覆で保護することができる。
【0004】
最近、請負業者及び塗布業者は、より過酷な適用環境、例えば化学処理インフラストラクチャー、発電、製紙工場、又は採掘への進出の成功によって元気づけられている。
【0005】
しかし、化学物質及び/又は熱への曝露が過酷であるため、スプレーエラストマーは、これらの用途では一部でしか使用されておらず、現在の保護の解決法、例えばエポキシ、ポリエステル、又はビニルエステルのコーティングに対する実施可能な代替品としては実証されていない。
【0006】
米国特許第6,797,789号には、改善された耐薬品性を有すると報告されているフェノール樹脂/ポリ尿素エラストマーコーティング系が記載されている。このような系は、イソシアネートのイソシアネート準プレポリマー(quasi-prepolymer)を主成分とし、他方の反応性成分はアミン末端ポリエーテルポリオール、アミン末端鎖延長剤、及びフェノール樹脂を含有する。米国特許第5,077,349号には、化学物質に対して抵抗性である高可撓性ポリウレタンプラスチック及びコーティング、並びにそれらの製造方法が記載されている。この反応系は、ヒドロキシ末端ポリブタジエンポリオールと反応するポリイソシアネート成分、水、アルカリ土類金属水酸化物又は酸化物、並びに有機助剤、例えばビチューメン及び添加剤を有する。このポリマーは、例えばローラー又はへらで加工され、コンクリート表面、例えばガレージデッキ又は橋などの広い領域の封止に特に適している。
【0007】
新規な市場区分を切り開き、保護コーティングの塗布業者の要求を満たすために、ポリウレタンコーティングの耐薬品性の改善が必要とされ続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,797,789号
【特許文献2】米国特許第5,077,349号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、良好な耐薬品性、特に耐酸性を示しながら、最適な硬化速度及び流動性を維持する非セル状(non-cellular)イソシアネート系ポリマーを提供することである。これらのポリマーは、良好な接着特性も有し、ポリマーを基材に接着して保護コーティングを提供することができる。
【0010】
本発明の配合物から製造されたポリマーは、良好な耐薬品性を有するため、多数のコーティング、ライニング、及び成形用途に好適となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
a)5〜25重量%のイソシアネート(NCO)含有率を有するイソシアネート末端プレポリマーを含むイソシアネート成分であって、プレポリマーが、化学量論的に過剰(stoichiometric excess)の1つ又はそれ以上のジ−又はポリイソシアネートと第1のポリオール組成物との反応生成物であるイソシアネート成分と、
b)第2のポリオール組成物と、
c)場合によっては、鎖延長剤(chain extender)及び/又は架橋剤の存在下、
d)場合によっては、触媒及び他の添加剤との反応生成物であるエラストマーであって、
a)、b)、並びに任意の鎖延長剤又は架橋剤が、90〜115のイソシアネートインデックス(isocyanate index)で提供され、エラストマーの4〜60重量%が、1.8〜2.1の官能基数(functionality)及び500〜10,000の平均分子量を有する少なくとも1つのポリブタジエンポリオールから誘導され、ポリブタジエンではない第1又は第2のポリオールの部分が、1.8〜2.5の公称官能基数(nominal functionality)及び500〜10,000の平均分子量を有するポリオール又はポリオールブレンドであり、
但し、b)及びc)がアミン末端分子を含有することで、イソシアネートとa)、b)、又はそれらの組み合わせとの反応によって形成された50%を超える尿素結合が得られる場合、成分b)及びc)の5〜40重量%が4以上の平均官能基数を有する、エラストマーに関する。
【0012】
第2の実施形態では、本発明は、
a)5〜25重量%のイソシアネート(NCO)含有率を有するイソシアネート末端プレポリマーを含むイソシアネート成分であって、プレポリマーが、化学量論的過剰の1つ又はそれ以上のジ−又はポリイソシアネートと第1のポリオール組成物との反応生成物であるイソシアネート成分と、
b)第2のポリオール組成物と、
c)場合によっては、鎖延長剤及び/又は架橋剤の存在下、
d)場合によっては、エラストマーの製造においてそれ自体公知の触媒及び他の添加剤との反応を含むイソシアネート系非セル状ポリマー(isocyanate based non-cellular polymers)の製造方法であって、
a)、b)、並びに任意の鎖延長剤又は架橋剤が、90〜115のイソシアネートインデックスで提供され、エラストマーの4〜60重量%が、1.8〜2.1の官能基数及び500〜10,000の平均分子量を有する少なくとも1つのポリブタジエンポリオールから誘導され、ポリブタジエンではない第1又は第2のポリオールの部分が、1.8〜2.5の公称官能基数及び500〜10,000の平均分子量を有するポリオール又はポリオールブレンドであり、
但し、b)及びc)がアミン末端分子を含有することで、イソシアネートとa)、b)、又はそれらの組み合わせとの反応によって形成された50%を超える尿素結合が得られる場合、成分b)及びc)の5〜40重量%が4以上の平均官能基数を有する、方法に関する。
【0013】
別の一実施形態では、本発明は、前述のエラストマーを含む物品、コーティング、接着剤、結合剤、又は熱可塑性樹脂に関する。
【0014】
さらなる一実施形態では、本発明は、前述の方法を使用して形成された物品、コーティング、接着剤、結合剤、又は熱可塑性物質に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、従来のポリウレタン又はポリ尿素のコーティング系よりも改善された耐薬品性を示す複数成分のコーティング系の調製及び用途に関する。このような改善された性質によって、このようなコーティング系が腐食環境での使用に好適となる。
【0016】
本明細書において使用される場合、ポリオールという用語は、イソシアネートとの反応が可能な活性水素原子を含有する少なくとも1つの基を有する物質のことである。このような化合物の中で好ましいものは、第1級又は第2級の少なくとも2つのヒドロキシル、あるいは第1級又は第2級の少なくとも2つのアミン、カルボン酸、又はチオール基を1分子当たりに有する物質である。少なくとも2つのヒドロキシル基を1分子当たりに有する化合物が、ポリイソシアネートとの望ましい反応性を有するため特に好ましい。
【0017】
本明細書において使用される場合、用語「従来のポリオール」又は「追加のポリオール」は、ポリブタジエンポリオール以外のポリオールを示すために使用される。
【0018】
非セル状ポリマー、すなわち本発明のエラストマーを製造するためのポリオール成分の一部としてポリブタジエンが存在することによって、ポリマーに改善された性質が付与される。ヒドロキシ末端ポリブタジエン樹脂の疎水性によって、種々の媒体、例えば酸及び塩基の水溶液、一部の溶媒、並びに種々の塩の水溶液に対する改善された耐薬品性がこのようなエラストマーに付与されると考えられる。前述の種々の化学物質中へのスプレーしたポリマーの全体浸漬試験では、従来のポリウレタン又はポリ尿素系のエラストマーと比較して、膨潤及び寸法変化の減少、並びに部品としての構造的完全性の維持が示される。
【0019】
ポリオール成分b)、鎖延長剤、及び/又は架橋剤が活性アミン水素基を含有する場合、このような活性アミン水素基とa)のイソシアネート成分との反応によって、形成又は尿素結合が生じる。例えば、本明細書において言及されるポリ尿素エラストマーは、アミン基の形態の少なくとも約50%の活性水素基を有する反応混合物から形成されるエラストマーである。好ましくは、この反応混合物は、アミン基の形態の少なくとも約60%、より好ましくは約70%の活性アミン水素基を有する。より好ましい一実施形態では、反応混合物は、アミン基の形態の少なくとも約90%の活性水素基を有する。
【0020】
ポリオール成分b)、鎖延長剤、及び/又は架橋剤が活性ヒドロキシル水素基を含有する場合、このような活性ヒドロキシル水素基とa)のイソシアネート成分との反応によって、形成又はポリウレタン結合が生じる。従って、本明細書において言及されるポリウレタンエラストマーは、ヒドロキシル基の形態の少なくとも約70%の活性水素基を有する反応混合物から形成されるエラストマーである。好ましくは、この反応混合物は、ヒドロキシル基の形態の少なくとも約75%、より好ましくは約80%の活性水素基を有する。より好ましい一実施形態では、反応混合物は、ヒドロキシル基の形態の少なくとも約89%の活性水素基を有する。
【0021】
ポリブタジエンは、それらの耐薬品性及び良好な接着特性で知られているが、予期せぬことに、ポリウレタンポリマー中、又は高官能性架橋剤の存在下で形成されたポリ尿素ポリマー中にポリブタジエンを混入することによって、ポリブタジエン又は標準的なポリエーテルポリオールを主成分とする系よりも耐薬品性の向上(非線形応答)が得られることが発見された。
【0022】
最終エラストマーの性質の向上は、5〜60重量%のポリブタジエンをエラストマー中に混入することによって得られる。ポリウレタンエラストマーの場合、好ましくは最終エラストマーは、少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%のポリブタジエンを含有する。このようなエラストマーの一実施形態では、最終エラストマーは少なくとも20重量%のポリブタジエンを含有する。さらなる一実施形態では、最終エラストマーは、40重量%未満、好ましくは34重量%未満のポリブタジエンを含有する。一実施形態では、エラストマーは30重量%未満のポリブタジエンを含有する。
【0023】
本発明のポリ尿素エラストマーの場合、好ましくは、ポリブタジエンが少なくとも20重量%のエラストマーを含有する。さらなる一実施形態では、エラストマーは、少なくとも30、より好ましくは少なくとも35重量%のポリブタジエンを含有する。別の一実施形態では、ポリ尿素エラストマーは、55重量%未満のポリブタジエン、より好ましくは50重量%未満のポリブタジエンを含有する。
【0024】
ポリブタジエンはプレポリマーa)又はポリオール成分b)の中に存在することができるが、ポリウレタンエラストマーの場合、一般にポリブタジエンの少なくとも60重量%がプレポリマー中に存在する。最終ポリマー中に存在するポリブタジエンの好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%がプレポリマー中に存在する。別の実施形態では、ポリブタジエンの少なくとも90重量%がプレポリマー中に存在する。所望であれば、全てのポリブタジエン成分をプレポリマーから提供することができる。類似の方法では、プレポリマーの場合で上述したポリブタジエン量が、第2のポリオール成分b)中に存在することができる。
【0025】
本発明のポリ尿素エラストマーの場合、エラストマー中に所望の量のポリブタジエンを実現するために、ポリブタジエンが第1のポリオール及び第2のポリオールの一部を形成する。第2のポリオール中に存在するポリブタジエン量は、所望のポリ尿素含有率を得るために必要な量に限定される。例えば一実施形態では、ポリ尿素エラストマーの場合、第1のポリオールは、ポリウレタンエラストマーの場合と少なくとも同じ量のポリブタジエンを含有し、第2のポリオール組成物は、最終エラストマー中の所望のポリブタジエン含有率を得るためのポリブタジエンを含有する。
【0026】
本発明において使用されるポリブタジエンは、平均1.8〜2.0個の末端ヒドロキシル基を含有し、500〜10,000、好ましくは700〜8,000、より好ましくは約1,000〜5,000の重量平均分子量を有する非分岐ヒドロキシル末端ポリブタジエンである。より好ましくはポリブタジエンは1,500〜4,000の重量平均分子量を有する。このような非分岐ポリブタジエンは、アニオン重合から誘導され、例えば、SartomerよりKrasol(商標)LBH 2000、3000、及び5000として市販されている。
【0027】
プレポリマーの炭化水素主鎖中に含めることによって実現される必要な耐薬品性を得るためには、ポリブタジエンが、一般に、プレポリマー中のポリオール又はポリオールb)の少なくとも10重量%として存在する。好ましくは全ポリオールの少なくとも20、より好ましくは25重量%の量で存在する。さらに好ましい一実施形態では、ブタジエンが全ポリオールの少なくとも35重量%を構成する。好ましい一実施形態では、ポリブタジエンが、プレポリマー中の全ポリオールの一部となる。ポリブタジエンがプレポリマーの一部として提供される場合、ポリブタジエンが、プレポリマー中のポリオールの最大90重量%、及び第1のポリオールの最大100重量%を構成することができる。好ましくはポリブタジエンは、プレポリマー中の全ポリオールの最大75、より好ましくは最大66重量%を構成する。本発明のポリウレタンエラストマーの好ましい一実施形態では、ポリブタジエンは、プレポリマー中の全ポリオールの最大50重量%を構成する。
【0028】
ポリブタジエンが存在することに加えて、追加のポリオールがプレポリマー中及び/又はポリオール成分b)中に存在することができる。代表的なポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリヒドロキシ末端アセタール樹脂、及びヒドロキシル末端アミンが挙げられる。これら及びその他の好適なイソシアネート反応性材料の例は、米国特許第4,394,491号により十分に記載されている。使用可能な別のポリオールとしては、ポリアルキレンカーボネート系ポリオール及びポリホスフェート系ポリオールが挙げられる。好ましいものはポリエーテル又はポリエステルポリオールである。より好ましいものは、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、又はそれらの組み合わせを、2〜8個、好ましくは2〜6個、より好ましくは2〜4個の活性水素原子を有する開始剤に加えることによって調製されるポリエーテルポリオールである。この重合の触媒反応は、アニオン性又はカチオン性のいずれかであってもよく、触媒、例えばKOH、CsOH、三フッ化ホウ素、又は複合シアン化物錯体(DMC)触媒、例えばヘキサシアノコバルト酸亜鉛、又は第4級ホスファゼニウム化合物を使用して行うことができる。
【0029】
ポリオールのブレンドを使用することができ、このようなブレンドは一般に1.8〜4、より好ましくは1.8〜3、より好ましくは1.8〜2.5の平均官能基数を有する。ポリウレタンエラストマーの製造の場合、ポリオールブレンドの官能基数は1.8〜2.2である。ポリオールブレンドの平均官能基数は、本明細書においてより十分に記載しているあらゆる鎖延長剤及び架橋剤は含んでいない。ポリオール又はポリオールブレンドの平均当量は、一般に500〜3,000、好ましくは750〜2,500、より好ましくは1,000〜2,200である。
【0030】
ポリエーテルポリオール用の例示的な開始剤としては、例えば、エタンジオール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール;1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、ネオペンチルグリコール;1,2−プロピレングリコール;トリメチロールプロパングリセロール;1,6−ヘキサンジオール;2,5−ヘキサンジオール;1,4−ブタンジオール;1,4−シクロヘキサンジオール;エチレングリコール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;9(1)−ヒドロキシメチルオクタデカノール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン;8,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5,2,1,02,6]デセン;ジメロール(Dimerol)アルコール(ヘンケル・コーポレーション(Henkel Corporation)より入手可能な36炭素ジオール);水素化ビスフェノール;9,9(10,10)−ビスヒドロキシメチルオクタデカノール;1,2,6−ヘキサントリオール;及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
ポリエーテルポリオール用の他の開始剤としては、アミンを含有する線状及び環状の化合物が挙げられる。例示的なポリアミン開始剤としては、エチレンジアミン、ネオペンチルジアミン、1,6−ジアミノヘキサン;ビスアミノメチルトリシクロデカン;ビスアミノシクロヘキサン;ジエチレントリアミン;ビス−3−アミノプロピルメチルアミン;トリエチレンテトラミン トルエンジアミンの種々の異性体;ジフェニルメタンジアミン;N−メチル−1,2−エタンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジメチルエタノールアミン、3,3’−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、N,N−ジメチルジプロピレントリアミン、アミノプロピル−イミダゾールが挙げられる。
【0032】
代表的なポリエステルポリオールは、2〜12個の炭素原子を有する有機ジカルボン酸、好ましくは8〜12個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸と、2〜12個、好ましくは2〜8個、より好ましくは2〜6個の炭素原子を有する多価アルコール、好ましくはジオールとから調製することができる。ジカルボン酸の例は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マロン酸、ピメリン酸、2−メチル−1,6−ヘキサン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、及びフマル酸である。好ましい芳香族ジカルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びナフタレン−ジカルボン酸異性体である。このような酸は、個別に又は混合物として使用することができる。二価及び多価アルコールの例としては、エタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール及び他のブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び他のペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、グリセロール、並びにトリメチロールプロパンが挙げられる。ポリエステルポリオールの例は、ポリ(ヘキサンジオールアジペート)、ポリ(ブチレングリコールアジペート)、ポリ(エチレングリコールアジペート)、ポリ(ジエチレングリコールアジペート)、ポリ(ヘキサンジオールオキサレート)、ポリ(エチレングリコールセベケート)などである。
【0033】
ポリエステルポリオールは、実質的に純粋な反応材料から調製することができるが、フタル酸(phtalic acid)、テレフタル酸(terephtalic acid)、ジメチルテレフタレート(terephtalate)、ポリエチレンテレフタレート(terephtalate)などの製造で生じる副流、廃棄物、廃棄残留物などのより複雑な成分を使用することができる。他の供給源は、再利用PET(ポリエテレンテレフタレート(polyethelene terephtalate))である。エステル交換又はエステル化の後、反応生成物を場合によってはアルキレンオキシドと反応させることができる。
【0034】
使用可能な別の種類のポリエステルはポリラクトンポリオールである。このようなポリオールは、ラクトンモノマー、例えば、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン、ξ−エナントラクトンなどと、活性水素含有基を有する開始剤、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなどとの反応によって調製される。このようなポリオールの製造は当分野で公知であり、例えば、米国特許第3,169,945号、同第3,248,417号、同第3,021,309号、及び同第3,021,317号を参照されたい。好ましいラクトンポリオールは、ジ−、トリ−、及びテトラ−ヒドロキシル官能性ε−カプロラクトンポリオールであり、ポリカプロラクトンポリオールとして知られている。
【0035】
再生可能資源、例えば植物油又は動物性脂肪から誘導されるポリオールを追加のポリオールとして使用することもできる。このようなポリオールの例としては、ヒマシ油、国際公開第04/096882号及び国際公開第04/096883号に記載されるようなヒドロキシメチル化ポリエステル、米国特許第4,423,162号、同第4,496,487号、及び同第4,543,369号に記載されるようなヒドロキシメチル化ポリオール、並びに米国特許出願公開第2002/0121328号、同第2002/0119321号、及び同第2002/0090488号に記載されるような「吹き込み」植物油(blown vegetable oil)が挙げられる。
【0036】
ポリ尿素を製造する場合、成分b)又はc)はアミン末端分子を含有する。第2のポリオールb)の一部である場合、このような活性アミン水素含有材料は好ましくはアミン末端ポリエーテルである。このようなアミン末端ポリオールは、1,000を超え、一般には1,500を超える分子量を有する。好ましいアミン末端ポリエーテルは、アミノ化ジオール又はトリオールから選択すべきであり、アミノ化ジオール及び/又はトリオールのブレンドを使用することができる。特に、1000を超え、さらにより望ましくは1500を超える分子量、約2〜約6の官能基数、及び約750〜約4000のアミン当量を有する第1級及び第2級のアミン末端ポリエーテルが好ましい。一実施形態では、約2〜約3の官能基数を有するこのようなアミン末端ポリエーテルが使用される。これらの材料は、当分野で公知の種々の方法によって製造することができる。
【0037】
アミン末端ポリエーテルは、例えば、適切な開始剤に、低級アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、又はそれらの混合物を加え、得られたヒドロキシル末端ポリオールを次にアミノ化することによって製造されるポリエーテル樹脂であってもよい。2つ以上のオキシドが使用される場合、それらは不規則な混合物として、又はいずれかのポリエーテルのブロックとして存在することができる。アミノ化ステップにおいて、ポリオール中の末端ヒドロキシル基が本質的に全て第2級ヒドロキシル基であれば、アミノ化が容易になるため非常に望ましい。このように調製されたポリオールは次に、公知の技術、例えば米国特許第3,654,370号(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような技術によって還元的にアミノ化される。通常、アミノ化ステップでは、全てのヒドロキシル基が完全に変換されるわけではない。しかし、ヒドロキシル基の大部分がアミン基で置き換えられる。従って、アミン末端ポリエーテル樹脂は一般に、約90%を超えるそれらの活性水素がアミン水素の形態である。
【0038】
このようなアミン末端ポリエーテルの例は、Huntsman Corporationより入手可能なポリエーテルアミンであるJEFFAMINE(登録商標)ブランドシリーズである。このようなものとしては、JEFFAMINE(登録商標)D−2000、JEFFAMINE(登録商標)D−4000、JEFFAMINE(登録商標)T−3000及びJEFFAMINE(登録商標)T−5000が挙げられる。他の類似のポリエーテルアミンがBASF及びArch Chemicalsより市販されている。
【0039】
本発明において使用されるイソシアネート末端プレポリマーは、当業者に周知の標準的手順、例えば米国特許第4,294,951号、同第4,555,562号、同第4,182,825号、又はPCT出願国際公開第2004074343号に開示されている手順によって調製される。典型的には成分を互いに混合し、加熱することによってポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進する。反応温度は通常約30℃〜約150℃の範囲内であり、より好ましい範囲は約60℃〜約100℃である。反応は、有利には水分を含まない雰囲気中で行われる。不活性ガス、例えば窒素、アルゴンなどを使用して反応混合物を覆うことができる。所望であれば、不活性溶媒をプレポリマーの調製中に使用することができるが、必要なものではない。ウレタン結合の形成を促進する触媒を使用することもできる。
【0040】
イソシアネートを化学量論的過剰で使用し、従来のプレポリマー反応技術を使用してポリオール成分と反応させて、5〜25重量%の遊離NCO基を有するプレポリマーを調製する。プレポリマーは一般に8〜20重量%の遊離NCO基を有し、好ましくは10〜18重量%、より好ましくは14〜17重量%で有する。
【0041】
プレポリマーがポリブタジエン及び追加のポリオールを含有する場合、イソシアネート及びポリブタジエンを主成分とする第1のものと、イソシアネート及び追加のポリオールを主成分とする第2のものとの別々のプレポリマーを製造することができる。得られたプレポリマーを次に互いに混合することで、プレポリマー中に所望の%値のポリブタジエンを得ることができる。あるいは、プレポリマーは、ポリブタジエン及び追加のポリオールをイソシアネートと同時にワンポット手順で反応させることによって調製することもできる。
【0042】
プレポリマーを製造するための好適なポリイソシアネートとしては、芳香族、脂環式、及び脂肪族のイソシアネートが挙げられる。このようなイソシアネートは当分野において周知である。
【0043】
好適な芳香族イソシアネートの例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の4,4’−、2,4’及び2,2’−異性体、それらのブレンド、並びに重合体及び単量体のMDIブレンド、トルエン−2,4−及び2,6−ジイソシアネート(TDI)m−及びp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ジフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネート−3,3’−ジメチルジフェニル、3−メチルジフェニル−メタン−4,4’−ジイソシアネート、及びジフェニルエーテルジイソシアネート、及び2,4,6−トリイソシアナトトルエン、及び2,4,4’−トリイソシアナトジフェニルエーテルが挙げられる。
【0044】
粗ポリイソシアネート、例えばトルエンジアミンの混合物のホスゲン化によって得られる粗トルエンジイソシアネート、又は粗メチレンジフェニルアミンのホスゲン化によって得られる粗ジフェニルメタンジイソシアネートを本発明の実施に使用することもできる。一実施形態では、TDI/MDIブレンドが使用される。
【0045】
脂肪族ポリイソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−及び/又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(いずれかのcis−又はtrans−異性体を含む)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキサンイソシアネート)(H12MDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、上記芳香族イソシアネートの飽和類似体、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
ビウレット、尿素、カルボジイミド、アロホネート、及び/又はイソシアヌレート基を含有する上記ポリイソシアネート基のいずれかの誘導体を使用することもできる。これらの誘導体は、多くの場合イソシアネート官能基数が増加し、より高度に架橋した生成物が望ましい場合に使用することが望ましい。
【0047】
好ましくはポリイソシアネートは、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、それらのポリマー又は誘導体、あるいはそれらの混合物である。好ましい一実施形態では、イソシアネート末端プレポリマーは、4,4’−MDI、あるいは実質的な部分又は4.4’−異性体を含有する他のMDIブレンド、又は前述のように改質されたMDIを使用して調製される。好ましくはMDIは、4,4’−異性体を45〜95重量パーセント含有する。
【0048】
1つ又はそれ以上の鎖延長剤を本発明のポリウレタンポリマー及びエラストマーの製造に使用することもできる。鎖延長剤の存在によって、結果として得られるポリマーに所望の物理的性質が付与される。鎖延長剤は、ポリオール成分ii)とブレンドすることができるし、ポリウレタンポリマーの形成中に独立した流れとして存在することもできる。本発明の目的では、鎖延長剤は、1分子当たり2つのイソシアネート反応性基を有し、イソシアネート反応性基1つ当たりの当量が400未満、好ましくは300未満、特に31〜125ダルトンである材料である。好適な鎖延長剤の代表例としては、多価アルコール、脂肪族ジアミン、例えばポリオキシアルキレンジアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの混合物が挙げられる。イソシアネート反応性基は、好ましくはヒドロキシル、第1級の脂肪族又は芳香族アミン、あるいは第2級の脂肪族又は芳香族アミン基である。代表的な鎖延長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−又は1,4−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、1,2−及び2,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリプロピレングリコール、エチレンジアミン、1,4−ブチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビス(3−クロロ−4−アミノフェニル)メタン、3,3’−ジクロロ−4,4−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビスフェノール−A;ビスフェノール−F、1,3−プロパンジ−p−アミノベンゼン、メチレンビスオルトクロロアニリン(MOCA)、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール;2,4−ジアミノ−3,5−ジエチルトルエン1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びそれらの混合物が挙げられる。使用される場合、鎖延長剤は、典型的にはポリオール成分100重量部当たり約0.5〜約20、特に約2〜約16重量部の量で存在する。このような鎖延長剤は、一般にエラストマーの製造中に加えられる。
【0049】
ポリウレタンエラストマーが好ましい本発明の場合に、アミン鎖延長剤によってポリ尿素を最終エラストマー中に導入して、硬化/反応時間を速くするときに、アミン鎖延長剤の量は、ポリウレタン対ポリ尿素結合の比が前述のようになるように制限される。鎖延長剤は一般に第2のポリオール成分に加えられるが、所望であれば、遊離のイソシアネート基と部分的に反応させるために鎖延長剤がイソシアネート末端プレポリマーに加えられる。
【0050】
架橋剤を、本発明のポリウレタンポリマーを製造するための配合物中に含めることもできる。本発明の目的では、「架橋剤」は、1分子当たり3つ以上のイソシアネート反応性基を有し、イソシアネート反応性基1つ当たりの当量が400未満である材料である。架橋剤は好ましくは1分子当たり3〜8個、特に3〜4個のヒドロキシル基、第1級アミン基、又は第2級アミン基を含有し、30〜約200、特に50〜125の当量を有する。好適な架橋剤の例としては、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ−ジ−又はトリ(イソプロパノール)アミン、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジエチルトルエンジアミン(DETA)、m−ジアニリン、及び当業者に公知の他のジアミン架橋剤が挙げられる。
【0051】
ポリウレタン系エラストマーの製造の場合、一般に使用される架橋剤量は、ポリオール100重量部当たり約0.1〜約1重量部、特に約0.25〜約0.5重量部である。
【0052】
ポリ尿素エラストマーを製造する場合、尿素含有率は、イソシアネートと第2のポリオールb)中に存在するアミン末端ポリオールとの反応によって生じる場合もあるし、アミン末端鎖延長剤又はアミン末端プレポリマーの存在によって得られる場合もある。一実施形態では、全ての活性アミン水素原子がアミン末端鎖延長剤及び/又は架橋剤から得られる。好ましい一実施形態では、全ての活性アミン水素原子がアミン末端架橋剤から得られる。
【0053】
さらに、ポリ尿素エラストマーを製造する場合、成分b)及びc)は、このパラグラフでは高官能性分子と呼ばれる4以上の公称官能基数を有する分子を5〜50重量%含有する。一般にこのような分子の官能基数は8以下、好ましくは6以下である。好ましくは、これらの高官能性分子の量は、成分b)及びc)の8〜42、より好ましくは15〜38重量%で存在する。一実施形態では、4以上の官能基数を有する反応性成分は、第2のポリオールb)中のポリオール及びc)の架橋剤から得られる。さらなる一実施形態では、4以上の官能基数を有するb)のポリオールは、ヒドロキシル末端ポリエーテルポリオールであり、c)の架橋剤は、アミン末端架橋剤である。さらに別の一実施形態では、b)中の高官能性ポリオールの量は、b)及びc)の全重量の1〜8、より好ましくは2.5〜5.5重量%である。別の一実施形態では、高官能性架橋剤の量は、成分b)及びc)の10〜35、より好ましくは15〜32重量%である。
【0054】
ポリイソシアネートa)中のイソシアネート基と、ポリオール成分b)中の活性水素+加えられたあらゆる鎖延長剤又は架橋剤に存在する活性水素との当量比が、一般に85〜115となる。好ましくはイソシアネートインデックスは、90〜110、より好ましくは95〜110の比率で存在する。イソシアネートインデックスは当業者に公知であり、イソシアネート(NCO)のモル当量を、配合物中に存在するイソシアネート反応性水素原子の全モル当量で割り、100を乗じた値である。
【0055】
適切な硬化速度を得るために、触媒をポリオール成分中に含めることができる。好適な触媒としては、米国特許第4,495,081号に記載されるような第3級アミン及び有機金属化合物が挙げられる。アミン触媒が使用される場合、有利には、ポリオールと場合による鎖延長剤との全重量の0.1〜3、好ましくは0.1〜1、より好ましくは0.4〜0.8重量%で存在する。触媒が有機金属触媒である場合、有利には、ポリオールと場合による鎖延長剤との全重量の0.001〜0.2、好ましくは0.002〜0.1、より好ましくは0.01〜0.05重量%で存在する。特に有用な触媒としては、アミン触媒の場合にはトリエチレンジアミン、ビス(N,N−ジメチルアミノエチル)エーテル、及びジ(N,N−ジメチルアミノエチル)アミンが挙げられ、有機金属触媒の場合にはオクタン酸第一スズ、ジブチルスズジラウレート、及びジブチルスズジアセテートが挙げられる。有利にはアミンと有機金属触媒との組み合わせを使用することができる。
【0056】
プレポリマーの粘度は、当業者に公知の希釈剤と混合することによって低下させることができる。好ましい希釈剤の1つはプロピレンカーボネートである。
【0057】
当業者に一般に公知の種々の他の添加剤をエラストマーに加えることができる。例えば、顔料、例えば二酸化チタン及び/又はカーボンブラックをエラストマー系中に混入して色特性を付与することができる。顔料は、固体の形態であってもよく、又は、固体を樹脂担体中にあらかじめ分散させてもよい。補強材、例えば、フレーク又は粉砕ガラス、及びヒュームドシリカをエラストマー系中に混入することで、ある種の性質を付与することもできる。最終製品の所望の特性に依存して、他の添加剤、例えばUV安定剤、酸化防止剤、脱泡剤、接着促進剤、又は構造強化剤を混合物に加えることができる。これらは一般に当業者に公知である。このようなあらゆる添加物の量は、最終ポリマー中のポリブタジエンの重量%値を求める場合には考慮されない。
【0058】
本発明のエラストマーは、強力な防食性を必要とする用途、例えば化学処理又は食品加工のプラントの床、ピックアップトラックの荷台のライニング、貯蔵所のライニング、貯蔵タンク、床などの用途に使用することができる。あるいは本発明のポリマーは、より高い耐熱性を必要とする用途、又は高い加水分解抵抗性を必要とする用途、例えば船舶用コーティングに使用することができる。
【0059】
本発明の方法により調製したポリウレタンポリマーは、中実又は微小セル状ポリウレタンポリマーである。このようなポリマーは典型的には、反応成分を室温又はわずかに高温で短時間密接に混合し、続いて得られた混合物を開放金型中に注ぎ込むか、又は得られた混合物を密閉金型中に注入し、いずれの場合も加熱することによって調製される。混合物が反応することで金型の形状となることで、所定の構造のポリウレタンポリマーが製造され、十分に硬化すると、その意図する用途に許容されるよりも大きな変形が生じる危険性が最小限で金型から取り出すことができる。ポリマーの硬化を促進するのに適した条件としては、典型的には20℃〜150℃、好ましくは35℃〜75℃、より好ましくは45℃〜55℃の金型温度が挙げられる。一般にこのような温度で、反応物を密接に混合してから典型的には1〜10分後、より典型的には1〜5分後に、十分に硬化したポリマーを金型から取り出すことができる。最適な硬化条件は、特定の成分、例えば触媒、及びポリマーの調製中に使用される量、並びに製造される物品の大きさ及び形状に依存する。
【0060】
エラストマーのスプレーコーティングの場合、成分は一般に、複数の高圧スプレー機から処理して適用される。この複数成分装置によって、2つの成分a)及びb)が組み合わされ、b)成分は一般に前述の他の添加剤を含む。イソシアネートa)及びポリオールb)は、好ましくは高圧下で組み合わされる、又は混合される。好ましい一実施形態では、高圧スプレー装置中で直接的に衝突混合される。このような装置としては、例えば、GUSMER H−2000、GUSMER H−3500、GUSMER H−20/35、並びにGUSMER GX−7、GUSMER GX−7 400シリーズ、又はGUSMER GX−8衝突混合スプレーガンのいずれかが取り付けられたGlas−Craft MH型定量ユニットが挙げられる。2つの成分は、高圧下のスプレーガンの内側で混合されて、コーティング/ライニング系が形成され、次に所望の基材にスプレーガンから適用される。しかし、複数成分スプレー装置の使用は、本発明にとって重要ではなく、本発明のイソシアネート及びポリオール成分の混合に好適な方法の一例としてのみ含まれる。
【0061】
本明細書の説明は単に例示を目的としているものと理解すべきであり、決して本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。従って、本発明の意図する精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される実施形態の種々の修正及び変更が可能であることを、当業者は理解されよう。本発明のさらなる利点及び詳細は、以下の実施例及び添付の特許請求の範囲を検討すれば明らかとなるであろう。
【0062】
実施例で使用した原材料の説明を以下に示す。
Antifoam 1500は、シリコーン界面活性剤である。
BYK−088は、BYK−Chemieより入手でき、シリコーン及びポリマーの消泡剤であると説明されている。
Dabco 33LVは、Air Products & Chemicals Inc.より商品名Dabco 33LVで市販されている第3級アミン触媒である。
DBTDLは、ジブチルスズジラウレートである。
DETAは、ジエチルトルエンジアミンである。
PBDは、Sartomerより商品名Kraysol LBH−2000で入手した1.9の平均官能基数(ジオール)、及び2000の平均MWを有するポリブタジエンポリオールである。
VORASTARHB 6042は、メチレンジイソシアネートを主成分とするプレポリマーであって、約15重量%の遊離イソシアネート含有率を有する1000及び2000MWのプロピレンオキシドジオールのブレンドであり、The Dow Chemical Companyより入手可能である。
ISONATE50−OPは、The Dow Chemical Companyより入手可能な約50/50の50/50 2,4’/4,4’比の単量体MDIである。
VORANOL220−110Nは、1000の平均MWを有し全てがプロピレンオキシドジオールであり、The Dow Chemical Companyより入手した。
ISONATE 143Lは、約144.5の当量を有するThe Dow Chemical Companyより入手可能なポリカルボジイミド改質ジフェニルメタンジイソシアネートである。
L−Pasteは、モレキュラーシーブとカスターとの50/50混合物であり、脱水剤として使用した。
VORANOL 4701は、13〜14重量%のエチレンオキシドキャップ、及び約1650の平均当量を有するグリセリン開始ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールであり、The Dow Chemical Companyより入手した。
VORANOL V220−056Nは、2000の平均分子量を有するプロピレングリコール開始プロピレンオキシドポリオールであり、The Dow Chemical Companyより入手可能である。
TONEポリオール32B8は、約400の平均分子量を有する1,6−ヘキサンジオール開始ポリカプロラクトンポリエステルである。
VORANOL RA 800は、780〜820の報告ヒドロキシル価、平均MW280、17000mPasの25℃における粘度を有し、The Dow Chemical Companyより入手可能な4官能性アミン開始ポリオールである。
VORANOL RH 360は、345〜375のヒドロキシル価及び700の平均MWを有するThe Dow Chemical Companyより入手可能な約4.7官能性のポリエーテルポリオールである。
VORANATE HB 6042は、ISONATE 50 OP;Voranol 220−056N、及びVoranol 220−110Nを主成分とし、15.6重量%のNCO含有率を有するNCO末端プレポリマーである。
VORASTARHA 6153は、50〜70重量%のポリプロピレングリコールビス(アミノプロピル)エーテル;25〜40重量%のジエチルメチルベンゼンジアミン(DETA);及び5〜15重量%のポリオキシプロピレントリアミンを有するブレンドと説明されており;The Dow Chemical Companyより入手可能である。
VORASTAR、VORANATE、VORANOL、TONE、及びISONATEの全てはThe Dow Chemical Companyの商標である。
【0063】
実施例1:
【0064】
プレポリマー1:窒素をパージしながら、ガラス瓶に、53重量部(pbw)のISONATE 50−OPを加え、次に39pbwのPBD及び1滴の塩化ベンゾイルを加える。この混合物を、窒素パージ下500rpmで5分間撹拌した後、70℃にあらかじめ設定したオーブンに3時間入れる。得られたプレポリマー1は、約16.0重量%NCOのNCO値を有する。ポリオール成分b)と組み合わせる前に、10重量部のプロピレンカーボネートを加えて粘度を低下させる。
【0065】
プレポリマー2(比較例):プレポリマー1の製造手順に従って、34.6pbwのVoranol 220−110Nを65.4pbwのIsonate 143Lと反応させることによってプレポリマーを合成する。得られたプレポリマーは約15.9重量%NCOの平均NCO値を有する。
【0066】
プレポリマー3.プレポリマー1の製造手順に従って、重量部に基づく以下の量で材料を混合することによってプレポリマーを合成する:56.21 Isonate OP 50;46.83 PBD;0.02 ベンゾイルクロライド。最終プレポリマーは約16重量%の遊離イソシアネート含有率を有する。
【0067】
ポリウレタンプラークのポリオール成分
ポリウレタンプラークを製造するためのプレポリマーと混合される標準ポリオールブレンドは、50pbw Voranol 4701;20pbwVoranol V220−056N;10pbw TONE Polyol 32B8;10pbwVoranol 800;5pbw 1,4−ブタンジオール、及び0.8pbw BYK−088からなる。
【0068】
プラークの形成
100pbwの上記標準ポリオール混合物と、103pbwのプレポリマーブレンドの混合物を使用してプラークを作製する(NCOインデックス=1.07)。この混合物を約5分撹拌し、金型中に注ぎ込み、70℃に加熱したプレス機中に1時間入れた。次に、プラークを70℃のオーブンに23時間入れて、完全に硬化させた。
【0069】
プラークについて、ASTM D1708を使用して引張強度及び%破断時伸びを試験し、ASTM D624 C−Tearを使用して引裂強度を試験する。ショアA硬度(Shore A Hardness)はASTM D2240を使用して測定する。
【0070】
製造したプラークの物理的性質を表1に示す。
【表1】

【0071】
表1から分かるように、C1のプラークはC2のプラークよりも低い引張強度及び引裂強度を有する。2つのプレポリマーのブレンドから得たプラークは、2つの純粋なプレポリマーから得られるプラークの間の性質が得られると予想される。驚くべきことに、2つのブレンド(実施例1〜3)の物理的性質は、両方の純粋な材料の引張強度及び引裂強度を上回っている。また%破断時伸びは、引張強度及び引裂強度の改善によって損なわれてはいない。
【0072】
実施例4及び5.
プレポリマー3を表2に示す樹脂組生物と100:100の体積混合比でブレンドして約110のイソシアネートインデックスを得ることによって、ポリ尿素エラストマーを調製する。比較例3(C3)は、100:100体積比でVorastar HA 6153及びVorastar 6042をブレンドすることによって調製する。
【0073】
【表2】

【0074】
対照プラーク(比較例3)及び実施例4で作製したプラークの機械的性質を表3に示す。
【表3】

【0075】
実施例C3、4、及び5で形成したプラークの種々の溶媒に対する安定性を表4に示す。
【表4】

【0076】
これらの結果から、ポリブタジエンを主成分とする系が、全体的に種々の溶媒に対して対照よりも改善された安定性を有する傾向にあることを示している。
【0077】
本発明の他の実施形態は、本明細書又は本明細書に開示される本発明の実施を考慮すれば当業者には明らかとなるであろう。本明細書及び実施例は、単なる例であると見なされることを意図しており、本発明の真の範囲及び精神は以下の特許請求の範囲によって示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)5〜25重量%のイソシアネート(NCO)含有率を有するイソシアネート末端プレポリマーを含むイソシアネート成分であって、前記プレポリマーが化学量論的に過剰の1つ又はそれ以上のジ−又はポリイソシアネートと第1のポリオール組成物との反応生成物である、イソシアネート成分と、
b)第2のポリオール組成物と、
c)場合によっては、鎖延長剤及び/又は架橋剤の存在下、
d)場合によっては、エラストマーの製造においてそれ自体公知である触媒及び他の添加剤との、
反応生成物であるエラストマーであって、
a)、b)、並びに任意の鎖延長剤又は架橋剤が90〜115のイソシアネートインデックスで提供され、前記エラストマーの4〜60重量%が1.8〜2.1の官能基数及び500〜10,000の平均分子量を有する少なくとも1つのポリブタジエンポリオールから誘導され、ポリブタジエンではない前記第1又は第2のポリオールの部分が1.8〜2.5の公称官能基数及び500〜10,000の平均分子量を有するポリオール又はポリオールブレンドであり、
但し、b)及びc)がアミン末端分子を含有することで、前記イソシアネートとa)、b)、又はそれらの組み合わせとの反応によって形成された50%を超える尿素結合が得られる場合、成分b)及びc)の5〜40重量%が4以上の平均官能基数を有する、エラストマー。
【請求項2】
前記プレポリマーが8〜20重量%のイソシアネート含有率を有する、請求項1に記載のエラストマー。
【請求項3】
前記プレポリマーが10〜18重量%のイソシアネート含有率を有する、請求項2に記載のエラストマー。
【請求項4】
前記ポリブタジエンが700〜8,000の平均分子量を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のエラストマー。
【請求項5】
前記エラストマーがポリウレタン系エラストマーであり、ポリブタジエンが最終エラストマーの10〜40重量%を構成する、請求項4に記載のエラストマー。
【請求項6】
ポリブタジエンが前記エラストマーの15〜34重量%を構成する、請求項5に記載のエラストマー。
【請求項7】
前記エラストマーがポリ尿素系エラストマーであり、ポリブタジエンが前記エラストマーの20〜55重量%を構成する、請求項4に記載のエラストマー。
【請求項8】
ポリブタジエンが前記エラストマーの30〜50重量%を構成する、請求項7に記載のエラストマー。
【請求項9】
ポリブタジエンが前記第1のポリオールの少なくとも66重量%を構成する、請求項1から8のいずれか一項に記載のエラストマー。
【請求項10】
ポリブタジエンが前記第1のポリオールの少なくとも90重量%を構成する、請求項9に記載のエラストマー。
【請求項11】
イソシアネート系非セル状ポリマーの調製方法であって、
a)5〜25重量%のイソシアネート(NCO)含有率を有するイソシアネート末端プレポリマーを含むイソシアネート成分であって、前記プレポリマーが化学量論的に過剰の1つ又はそれ以上のジ−又はポリイソシアネートと第1のポリオール組成物との反応生成物である、イソシアネート成分と、
b)第2のポリオール組成物と、
c)場合によっては、鎖延長剤及び/又は架橋剤の存在下、
d)場合によっては、触媒及び他の添加剤との、
反応を含み、
a)、b)、並びに任意の鎖延長剤又は架橋剤が90〜115のイソシアネートインデックスで提供され、前記エラストマーの4〜60重量%が1.8〜2.1の官能基数及び500〜10,000の平均分子量を有する少なくとも1つのポリブタジエンポリオールから誘導され、ポリブタジエンではない前記第1又は第2のポリオールの部分が1.8〜2.5の公称官能基数及び500〜10,000の平均分子量を有するポリオール又はポリオールブレンドであり、
但し、b)及びc)がアミン末端分子を含有することで、前記イソシアネートとa)、b)、又はそれらの組み合わせとの反応によって形成された50%を超える尿素結合が得られる場合、成分b)及びc)の5〜40重量%が4以上の平均官能基数を有する、調製方法。

【公表番号】特表2010−540699(P2010−540699A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525912(P2010−525912)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/076614
【国際公開番号】WO2009/039145
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】