説明

ポリウレタン増粘剤

本発明は、新規のポリウレタン、そのようなポリウレタンの混合物、それらの調製方法、水を含有する調製物を製造するためのそれらの使用、及びポリウレタンを含む調製物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明に係るポリウレタン(PU)及びかかるポリウレタンPUの混合物、PUの調製方法、水を含有する調製物を製造するためのPUの使用並びにポリウレタンPUを含む調製物に関する。
【0002】
特に本発明は、交互の親水性及び疎水性セクションからなる、実質的に線状の骨格を有する水分散性ポリウレタン(PU)であり、ここで
(a)2つの末端セクション(T)が疎水性であり、
(b)各セクションTが親水性セクション(S)に直接結合し、
(c)各セクションSが少なくとも一つの側で少なくとも1つの疎水性セクション(D)に直接結合し、
(d)ここで、少なくとも1つの親水性セクション(P)が存在し、ここで、1より多いセクションPが存在する場合、少なくとも1つの疎水性セクションDが2つのセクションPを分け、
ポリウレタンが少なくとも3つの親水性セクションを含み、各親水性セクションSの分子量と各親水性セクションPの分子量との比が1:1.4〜1:140であり、少なくとも2つの疎水性セクションDが脂肪族ジイソシアネート基であり、少なくとも1つの親水性セクションPが少なくとも1500g/molの分子量を有するポリエーテル基である、前記ポリウレタン又は異なるポリウレタンPUの混合物に関する。
【0003】
本発明はさらに、以下で特定される実施形態の組み合わせを含む。
【背景技術】
【0004】
ポリウレタンは例えば、アルコール(例えばジオール)とジイソシアネートとを反応させることによって調製できるポリマーである。
【0005】
これらの化合物は印刷産業において何十年も使用されている。出発材料の選択及びその出発材料の化学量論比に応じて非常に異なる物理化学特性を有するポリウレタンが得られる。
【0006】
本発明のポリウレタンPUは、アルコールアルコキシレート及び/又はポリエーテルポリオールとイソシアネート又はポリイソシアネートとを反応させることによって生成するポリマーであり、これは以下ポリエーテルウレタンとも称される。
【0007】
増粘剤は水性調製物の粘性を増加させるために広く使用されており、例えば、化粧品、ヒト及び動物の栄養、薬剤の分野で、また、洗浄剤、塗料及びコーティングのために使用されている。特に、ポリウレタンは増粘剤として知られている。
【0008】
例えば、水で希釈可能な水相又は大部分が水性である相におけるポリウレタン溶液又は分散液は、当業者によってHEUR増粘剤と称され(頭字語HEURは、「hydrophobically modified ethylene oxide urethane copolymer」に由来する)、水系エマルジョン塗料を増粘するために非常に広範な分野の用途で比較的長い間使用されてきている。HEUR増粘剤の増粘効果の作用原理として、ポリエチレングリコールセグメントが水適合性を保証し、疎水性セグメントが、互いの会合により、また、エマルジョン塗料中で増粘される、エマルジョン塗料の分散した結合剤粒子との会合によっても、粘性供与性(viscosity-imparting)三次元分子会合を構成するということが想定されている。
【0009】
しかし、周知の増粘剤の使用は、増粘される調製物によっては不利な点を伴う。即ち、増粘剤の増粘効果及び塩安定性が十分ではない場合もあり、増粘される調製物への増粘剤の組み込みが妨げられる場合もある。例えば、多くの増粘剤、例えば、中和状態における(疎水的に変性された)架橋型ポリアクリル酸及びポリウレタン含有増粘剤は、塩もしくは界面活性剤又はそれらの混合物と非常に鋭敏に反応することが知られている。塩の添加によって粘性は急激に大きく減少し得る。従って、例えば、粘性供与剤として洗髪剤処方物中にこれらのポリマーを使用することは通常あり得ない。洗髪剤処方物中に存在する塩濃度(界面活性剤、界面活性剤混合物、界面活性剤中の不純物としてのNaCl)のために顕著な粘性増加が生じ得ない。カチオン性助剤が存在することによって、錯体の生成や沈殿が生じ得る。増粘剤は化粧品調製物の分野にも使用される。しかし、塩存在下での良好な増粘力に加えて、皮膚に良い肌触りや好ましい感触も有する調製物を提供する化粧品調製物用の塩安定性の増粘剤は現在知られていない。多数の他の助剤、特に塩及び界面活性剤との適合性や、増粘剤自体だけでなく別の助剤の取り込み性(incorporability)も提供されるべきである。さらに、増粘された調製物は、長期保存の場合や温度及びpHが変化する場合でも、一定のレオロジー及び物理的化学的な品質を有していなければならない。最後に、これらの増粘剤は、コスト効率がよく、環境に顕著な影響を与えることなく製造できるべきである。
【0010】
特許文献1及び2の明細書には、特に線状ポリウレタン増粘剤が開示されている。これらのポリウレタン増粘剤の調製は重合触媒の存在下で行う。
【0011】
特許文献3及び4には、化粧品調製物用のポリウレタン増粘剤が開示されている。これらは、ポリオール、ポリイソシアネート、及び所望の場合、エトキシル化されていてもよい脂肪アルコールから、希釈剤を用いない反応による単一段階プロセスで調製される。引用するその明細書によれば、これらの増粘剤を含む調製物の粘性は、調製物の塩濃度が変化する場合でも変化しない。
【0012】
特許文献5には、水性媒体における種々の用途で用いられるポリウレタン増粘剤が開示されている。これらの増粘剤は、少なくとも2つのヒドロキシ基を有する親水性ポリオール、長鎖アルコール等の1以上の疎水性化合物及び少なくとも二官能性のイソシアネートから調製される。この場合、過剰のNCO基が使用される。その調製物で使用される触媒は、スズ含有、亜鉛含有又はアミンであってもよい。
【0013】
特許文献6には、アルコール又はアルキルフェノールのアルコキシル化により製造されるポリエーテルを、NCO当量とOH当量との比が0.9:1〜1.2:1となるようにポリイソシアネートと反応させて調製されるポリウレタン増粘剤が開示されている。これらの増粘剤は、低せん断力のセクターにおける使用、例えば、水性エマルジョン塗料の流動性のために提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】US 4 079 028
【特許文献2】US 4 155 892
【特許文献3】EP 1 584 331-A
【特許文献4】EP 1 013 264 B
【特許文献5】WO 2006/1 002 813 A
【特許文献6】EP 0 725 097 B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、水に分散可能であるべき新規のポリウレタンを提供することであった。さらに、本発明の目的は、水を含有する調製物のための新規の増粘剤を提供することであった。さらに、本発明の目的は、水を含有する調製物、例えば、化粧品調製物のための、可能な限り高い粘性を生じさせる新規の増粘剤を提供することであった。さらに本目的は、塩の存在下で、水を含有する調製物中で安定しているか、又は増加した粘性を産み出す増粘剤を見出すことであった。さらに本発明の目的は、化粧品用途のために所望されるという理由から、スズを含まない、上記の特性を有するポリウレタン増粘剤を提供することであった。さらに、ポリウレタン化学で汎用されるスズ含有触媒を使用せずに行う方法であるが、可能な限り高い構造均一性を有する分子が生成され、望まない副生成物や望まない架橋反応が低減される、水分散性ポリウレタンの調製方法を提供することも目的であった。さらに、もっぱら脂肪族イソシアネート成分が使用される、水分散性ポリウレタンの調製方法を提供することも目的であった。さらに、可能な限り低量のイソシアネートが使用される、水分散性ポリウレタンの調製方法を提供することも目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の水分散性ポリウレタンPU、本発明によるそれらの調製方法、水を含有する調製物における該ポリウレタンの本発明に係る使用、及び本発明のポリウレタンを含み、水を含有する調製物は、上記課題の解決法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明では、ポリウレタンは水中に分散性である。本発明においてこのことは、ポリウレタンが水中で乳化することもでき、又は完全にもしくは部分的に水に溶解することもできることを含む。
【0018】
好ましくは、本発明のポリウレタンPUは、0.1g/L〜10g/Lの濃度の水の分散液において、そのポリウレタンPUが200nm以下、特に100nm以下の平均粒径(下記の動的光散乱によって決定できる)を有するミセルを形成するという特性を有する。従って、ナノ分散性ポリウレタンなる用語も使用され得る。限界ミセル濃度はそれに従い、好ましくは0.1g/L未満である。
【0019】
本発明のポリウレタンは、実質的に線状の骨格を有し、即ち、全長に対して分岐点が無いか、ほとんど無い。その分岐は疎水性及び/又は親水性セクション中に存在していてもよい。しかし、本発明のポリウレタンPUは、星状又は架橋型ポリウレタンではない。この種のポリウレタン及びそれらの調製は先行技術より周知であり、本発明の一部を形成しない。
【0020】
好ましくは、本発明のポリウレタンでは、1分子当たり4分岐以下、特に好ましくは1分子当たり3分岐以下である。特に好ましい実施形態では、本発明のポリウレタンは末端のセクションT以外に分岐を有さない。NMR分光法等の分岐の測定方法は当業者に周知である。
【0021】
本発明に係るポリウレタンの骨格は、交互の疎水性及び親水性セクションからなり、ここで、その疎水性及び親水性セクションはその配列中で交互に存在するが、それらの大きさ、長さ及び性質の点で異なってもよい。親水性セクションは、両側で疎水性セクションに直接結合する。これらの疎水性セクションは、互いに独立して異なっていてもあるいは同一であってもよい。各セクションは、短鎖又はオリゴマー基もしくはポリマー基であってもよい。
【0022】
親水性は本明細書において、水との顕著な相互作用を示す親水性のセクションを称するのに使用される用語である。一般的に親水性セクションは、それ自体親水性である物質の残基からなる。
【0023】
当業者に周知の典型的な親水性基は、非イオン性ポリエーテル基である。好ましいポリエーテル基は、実質的に分岐していないアルキレンオキシド基を含む。
【0024】
ポリエーテル基は、ホモアルキレンオキシド基であってもよく、又は異なるアルキレンオキシド基が混合したものを含んでいてもよい。これらの異なるアルキレンオキシド基は、ポリエーテル基中にランダムに分布して存在していてもよく、又はブロック形態で存在していてもよい。
【0025】
好ましいポリエーテル基は、ホモエチレンオキシド基又はホモプロピレンオキシド基である。他の実施形態においてポリエーテル基は、エチレンオキシド基とプロピレンオキシド基が混合したものを含む。これらは、ポリエーテル基中にランダムに分布して存在していてもよく、又はブロック形態で存在していてもよい。特に好ましい実施形態は、少なくとも50重量%のエチレンオキシド基を有するポリエーテル基、例えば、50重量%以上のエチレンオキシド基と、さらなるアルキレンオキシド基としてプロピレンオキシド基とを有するポリエーテル基を含む。ポリエーテル基は、非常に特に好ましくはエチレンオキシド基からなる。
【0026】
物質の親水性は、例えば、水溶液の不透過度測定により決定できる。
【0027】
本発明のポリウレタン中に存在する疎水性セクションは、親水性セクションと比較して水に対して相反して挙動する。一般的に疎水性セクションは水と混和しないか、ほとんど混和しなく、実質的に常に脂溶性である、即ち、無極性溶媒、脂質及び油に容易に溶解する物質の基からなる。
【0028】
典型的な疎水性基は、例えば、炭化水素基、特に、長鎖炭化水素基である。本発明では、分岐していないか、又は僅かに分岐している炭化水素基が好ましい。実施形態の一つでは、炭化水素基は分岐していない。長鎖脂肪族アルコール、芳香族アルコール及びまた脂肪族ジイソシアネートも疎水性物質の例であり、それらの基は本発明のポリウレタンの疎水性セクション中に存在し得る。
【0029】
疎水性及び親水性セクションの両方を有する分子は、一般的に両親媒性分子と称される。例えば、特に、リン脂質、乳化剤及び界面活性剤である。両親媒性化合物の親水性の測定法の一つはHLB値である。HLB値(hydrophilic-lipophilic-balance)は、主に非イオン性界面活性剤の親水性及び脂溶性の割合を示し、20世紀にW.C. Griffinによって提唱された(Griffin, W.C.: Classification of surface active agents by HLB, J. Soc. Cosmet. Chem. 1, 1949)。
【0030】
HLB値は以下のように計算できる(式Iを参照のこと):
【数1】

【0031】
(式中、Mは分子の疎水性部分のモル質量であり、Mは分子全体のモル質量である)。係数20は、Griffinによって自由に選択された倍率である。よって、通常は1〜20のスケールとなる。HLB値が1である場合は脂溶性化合物を意味し、HLB値が20である化学化合物は高い親水性部分を有する。
【0032】
本発明のポリウレタンは、好ましくは、1〜20のスケールで10以上、特に好ましくは14以上のGriffinに則ったHLB値を有する。
【0033】
本発明のポリウレタンは、少なくとも2つの末端疎水性セクション(T)を含む。本発明のポリウレタンPUは、(所望の場合、低率でトリ又はポリイソシアネートを使用することによって)分子内部で低度に分岐でき、その結果、2より多い末端の疎水性セクションTが存在し得る。好ましくは、本発明のポリウレタンPUは分子内部で分岐せず、2つの末端の疎水性セクションTを含む。それらの末端位置は、その疎水性セクションTが本発明のポリウレタンの1つの別のセクションにのみ直接結合することを意味する。
【0034】
末端のセクションTは同一であっても、互いに独立して異なっていてもよい。
【0035】
末端の疎水性セクションTは分岐していても、分岐していなくてもよい。好ましくは、本発明に係るポリウレタンPUの2つの末端の疎水性セクションTのうち少なくとも1つが分岐している。
【0036】
好ましくは、末端の疎水性セクションTは炭素原子の鎖を含む。好ましくは、セクションTの鎖長は4〜30個の炭素原子であり、特に好ましくは6〜26個、非常に特に好ましくは8〜20個の炭素原子である。
【0037】
このようなセクションTは、例えば芳香族基からなることができるが、アルキル基からなることもできる。従ってセクションTは、分岐した又は分岐していないアルキル基であってもよく、あるいはこれらを含んでいてもよい。好ましくは、少なくとも1つのセクションTは分岐したアルキル基である。分岐したという意味は、分岐がアルキル基の1以上の炭素原子に結合していることである。通常、アルキルの分岐は、主鎖のメンバーの他に、1以上の追加の炭素原子が炭素骨格の炭素原子上の1又は2つの位置に共有結合して、側鎖を形成することを意味する。側鎖は同一のサイズでも、異なるサイズであってもよい。好ましくは、側鎖はそれ自体アルキル基又はアルキレン基であり、特に好ましくはアルキル基であり、特に、分岐していないアルキル基である。
【0038】
一実施形態においてアルキル基の側鎖は、好ましくは6個以下の炭素原子の鎖長を有する。他の一実施形態において分岐は、好ましくは主鎖より顕著に短い鎖である。好ましくは、本発明に係るポリウレタンのセクションTの各分岐は、最大でもこのセクションTの主鎖の鎖長の半分に相当する鎖長を有する。分岐したアルキル基は、特に好ましくはイソ及び/又はネオアルキル基である。好ましくは、セクションT中に存在するアルキル基の主鎖の鎖長は、4〜30個の炭素原子であり、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、ヘンイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン及び/又はトリアコンタンのアルキル基である。これらのアルカンの分岐したアルキル基を使用してもよい。シクロアルカン又はアルケンの基も同様に存在していてもよい。セクションTは、特に好ましくは、6〜26個の炭素原子数を有するアルキル基を含み、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、ヘンイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン及び/又はヘキサコサンの基であり、非常に特に好ましくは、8〜20個の炭素原子数を有するアルキル基を含み、例えば、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン及び/又はイコサンの基である。これらのアルカンの分岐したアルキル基は、シクロアルカン又はアルケンの基と同程度使用できる。
【0039】
好ましい実施形態では、使用する分岐したアルキル基はイソアルカンの基である。特に好ましくは、C13アルキル基、特にイソC13アルキル基である。
【0040】
セクションTは種々の方法で、例えばエトキシル化脂肪アルコールの一部として、本発明のポリウレタンに導入され得る。
【0041】
末端の疎水性セクションTが分岐した及び/又は分岐していないアルキル基であるポリウレタンPUの混合物も本発明に従う。例えば、混合物において、分岐した末端の疎水性セクションTと分岐していないものの両方を有する本発明のポリウレタンPUも存在する。
【0042】
親水性セクション(S)が、本発明のポリウレタン中の各セクションTに直接結合している。セクションSは、いわゆるスペーサーSとして距離を置かせる効果を有する。セクションSの一定の空間的柔軟性が望まれる。好ましくは、親水性セクションは分岐していない。
【0043】
本発明のポリウレタンPUでは、スペーサーSは同一であっても又は互いに独立して異なっていてもよい。一実施形態では、親水性セクションSは様々な長さであり、線状である。
【0044】
別の好ましい実施形態では、セクションSは5〜100個の原子、好ましくは6〜90個の原子、特に8〜80個の原子、とりわけ15〜60個の原子の鎖長を有する。
【0045】
セクションSはアルキレンオキシド基を含み得る。好ましくは、その数は2〜30個のアルキレンオキシド基であり、特に好ましくは3〜25個のアルキレンオキシド基であり、非常に特に好ましくは3〜20個のアルキレンオキシド基である。
【0046】
本発明では、少なくとも2つの親水性セクションSが、好ましくはエチレンオキシド基からなる。好ましい実施形態では、親水性セクションSはエチレンオキシド基を含み、その数は2〜30個の基であり、特に好ましくは3〜25個のエチレンオキシド基であり、非常に特に好ましくは3〜20個の基である。
【0047】
セクションSにおけるエチレンオキシド基とプロピレンオキシド基との混合又はプロピレンオキシド基のみも可能である。
【0048】
セクションSは同様に長鎖アルキレンオキシド基を含み得るが、但し、セクションSが全体で親水性でなければならないことが確認される必要がある(例えば、相応に高いエチレンオキシドの割合により)。
【0049】
少なくとも1つの疎水性セクション(D)は、各親水性セクションSの少なくとも一つの側に直接結合する。ここで、セクションSは本発明のポリウレタンの分子内部に存在していてもよい。この場合、このセクションSは、末端位置のセクションSがセクションD及びセクションTに接続するようにではなく、少なくとも二つの側でセクションDに接続する。好ましくは、セクションSは、分子内部において各場合にその両側で1つずつのセクションDに接続する。全ての末端位置のセクションSについては、それらのセクションSが末端位のセクションTに直接接続する。セクションSが低度に分岐しているならば、そのセクションSは2以上の位置で疎水性セクションDに直接接続し得る。好ましくは、各場合に疎水性セクションDは一つ又は二つの側で各々線状の親水性スペーサーSに結合する。
【0050】
特に好ましい実施形態では、全てのセクションS、即ち、特に2つのセクションSは分岐せずに末端位置にあり、また、一つの側でセクションTに接続し、他の側でセクションDに接続する。
【0051】
本発明では、ポリウレタンは少なくとも2つの疎水性セクションDを含む。疎水性セクションDは、同一であっても又は互いに独立して異なることもできる。
【0052】
セクションDは、短鎖の疎水性分岐を伴って分岐することも分岐しないこともできる。好ましくは、セクションDは分岐しない。
【0053】
好ましくは、セクションDは炭素原子の疎水性鎖を含み、その長さは2〜20個の炭素原子であり、好ましくは3〜16個の炭素原子であり、特に4〜12個の炭素原子である。
【0054】
好ましくは、セクションDはジイソシアネート基を含む。セクションDは、特に好ましくは脂肪族ジイソシアネート基を含む。従って、例えば、疎水性セクションDは1以上の脂肪族ジイソシアネート基からなり得る。好ましくは、セクションDは1〜10個の脂肪族ジイソシアネート基からなり、特に好ましくは1〜5個の脂肪族ジイソシアネート基からなり、非常に特に好ましくは、セクションDは1、2又は3個の脂肪族ジイソシアネート基を含む。
【0055】
疎水性セクションDは、長い、中程度の又は短い脂肪族単位を有する脂肪族ジイソシアネート基を含み得る。
【0056】
好ましい実施形態の一つでは、本発明に係るポリウレタンのセクションDは脂環式又は脂肪族のジイソシアネート基である。セクションDは、特に好ましくは脂肪族ジイソシアネート基である。
【0057】
脂肪族ジイソシアネート基の例は:1,4-ブチレンジイソシアネート、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート、2-ブチル-2-エチルペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び特にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。
【0058】
脂環式ジイソシアネートの例は:イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2-イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、4-メチルシクロヘキサン-1,3ジイソシアネート(H−TDI)及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンである。いわゆるH12−MDI又は「飽和MDI」と呼ばれるジイソシアネート、例えば、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(あるいは、ジシクロヘキシルメタン4,4'-ジイソシアネートとも称される)又は2,4’-メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネートも、本発明に係るポリウレタンPUのセクションD中に基として存在し得る。
【0059】
本発明に係る異なるポリウレタンPUの混合物を調製するためには、上記のジイソシアネートの混合物を使用することも当然可能である。
【0060】
本発明に係るポリウレタンは、少なくとも1つの親水性セクション(P)を含む。この場合、少なくとも1つの疎水性セクションDが、少なくとも一つの側でPに直接結合する。本発明に係るポリウレタンのセクションPは、同一となり得る又は互いに独立して異なることもできる。
【0061】
本発明に係るポリウレタンにおいて、1より多いセクションPが存在する場合、少なくとも1つの疎水性セクションDが親水性セクションPの間に位置する。一実施形態において本発明のポリウレタンは、2つの親水性セクションPの間で、疎水性セクションD、続いて親水性セクションS、続いて再び疎水性セクションDの順序のセクションの配列を含み得る。従って、本発明のポリウレタンにおいて1より多いセクションPが存在するならば、このような場合、分子内部のセクションはP−D−P又はP−D−S−D−Pの配列を有し得る。2より多いセクションPが存在する場合、一分子中に両方の配列があり得る。好ましくは、1又は2つのみのセクションPが本発明に係るポリウレタンの分子中に存在する。
【0062】
好ましくは、親水性セクションPは実質的に線状のポリエーテル基、例えば、ポリアルキレンオキシドである。親水性セクションPは、特に好ましくは、ポリエーテルジオール基、特にポリエチレングリコール基である。本発明に係るポリウレタンの少なくとも1つの親水性セクションPは、好ましくはポリエチレンオキシドからなる。
【0063】
本発明では、セクションPを形成する実質的に線状のポリエーテル基は、少なくとも1500g/molの数平均分子量を有していなければならない。一般的にセクションPは、例えば最大で20000g/molの平均サイズの分子量を有する。
【0064】
特に好ましい実施形態では、実質的に線状のポリエーテル基は1500g/mol〜12000g/molの数平均分子量を有する。特に好ましくは、セクションPの分子量は10000g/mol以下であり、特に好ましくは4000g/mol〜9000g/molである。線状ポリエーテル基は、非常に特に好ましくは6000g/mol以上の分子量を有する。
【0065】
本発明に係るポリウレタンの全ての親水性セクション、即ち、セクションS及びセクションPの両方がポリエーテル基であってもよい。
【0066】
好ましい実施形態では、本発明に係るポリウレタンの親水性セクションは、ポリアルキレンオキシド単位(セクションP)及びポリエチレンオキシド単位(セクションS)からなる。
【0067】
本発明に係るPUの特に好ましい実施形態では、全てのセクションP及びSはポリエチレンオキシド単位からなる。
【0068】
本発明に係るポリウレタンの骨格は実質的に、ポリエーテル及びジイソシアネートの基を含む。
【0069】
本発明に係るポリウレタンは、少なくとも3つの親水性セクションを含む。好ましい実施形態の一つでは、これらは2つのセクションS及び少なくとも1つのセクションPである。
【0070】
特に好ましい実施形態では、本発明に係るポリウレタンのセクションの配列は、T−S−D−P−D−S−T又はT−S−D−P−D−P−D−S−Tである。
【0071】
各セクションPについて、そのサイズは同じ分子中に存在するどのスペーサーSのサイズに対しても大きい。
【0072】
本発明に係るポリウレタンの各親水性セクションSの分子量と各親水性セクションPの分子量との比は、1:1.4〜1:140、好ましくは1:1.7〜1:120である。好ましい実施形態では、その比は1:x(xは2以上であり、好ましくは2.3以上であり、特に好ましくは、xは2.8以上である)である。その比は、特に好ましくは1:2.8〜1:115であり、非常に特に好ましくは1:3〜1:95であり、特に好ましくは1:3.4〜1:80である。
【0073】
上記のポリウレタンPUは同様に本発明に従い、さらにポリウレタンPUは混合物である場合もある。このような混合物は例えば、セクションT、S、D及び/又はPの同配列を有するが、そのセクションの少なくとも1つにおいて構造的に互いに異なるポリウレタンを含み得る。言及し得る一例は、異なるセクションの組成又は異なるセクションの鎖長である。即ち、本発明に係るポリウレタンPUの混合物において、セクションTは異なっていてもよい。例えば、本発明に係る混合物は、セクションTが両方とも分岐したポリウレタン、及び/もしくはセクションTが両方とも線状であるポリウレタン、並びに/又は線状セクションT及び分岐したセクションTを含むポリウレタンを含み得る。このような混合物は当然、例えば、さらに好ましくは本発明によらない水分散性ポリウレタン等の他の物質も含み得る。
【0074】
このようなポリウレタンPUの混合物は、本発明に係るポリウレタンPUの調製において異なる供給物もしくはそれらの混合物に応じた使用により生じることができ、又は均一に調製した本発明のポリウレタンのみを後に混合することによって生成することができる。
【0075】
一実施形態では、全てのセクションTの分子量にセクションDの分子量を加えた合計は、全てのセクションPの分子量の合計以下に保たれるべきである。
【0076】
さらに本発明は、本発明に係るポリウレタンPUの調製方法を提供する。
【0077】
本発明のポリウレタンPUは、触媒が存在しない条件下又は好ましくは少なくとも1種の触媒の存在下で調製できる。
【0078】
適した触媒は、例えば、ポリウレタン化学において通常使用される全ての触媒である。
【0079】
有機溶媒、例えば、キシレン、トルエン、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン及び/又はN−エチルピロリドン等に溶解する触媒を使用することは特に好ましい。
【0080】
ポリウレタン化学において通常使用される触媒は、有機アミン、特に、脂肪族、脂環式又は芳香族の第三級アミン及びルイス酸有機金属化合物である。
【0081】
適したルイス酸有機金属化合物は、例えば、金属錯体、例えば、鉄、チタン、亜鉛、アルミニウム、コバルト、マグネシウム、ニッケル及びジルコニウムとのアセチルアセトネートであり、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン酸ジルコニウムである。別の適した金属化合物はBlank et al.によるProgress in Organic Coatings, 1999, 35, 19 ffに記載されている。
【0082】
ビスマス、コバルト又は亜鉛の触媒及びセシウム又はチタンの塩も触媒として使用できる。
【0083】
好ましくは、本発明に係るポリウレタンPUの調製は亜鉛及び/又はチタンを含有する化合物の存在下で行う。本発明に係るポリウレタンPUの調製において、少なくとも1つのカルボン酸亜鉛もしくは少なくとも1つのチタン(IV)アルコラート又はそれらの混合物の存在下で行うことは特に好ましい。
【0084】
本発明の一実施形態では、好ましくは2個以上の炭素原子の鎖長を有するチタンアルコラートが使用される。好ましい実施形態では、チタンアルコラートは20個以下の炭素原子の炭素鎖を有する。好ましくは、チタンアルコラートの鎖長は3〜18個の炭素原子である。脂肪族アルコール系のチタンアルコラートは特に好ましい。特に好ましい実施形態では、本発明に係るポリウレタンPUの調製はオルトチタン酸テトラブチル(酪酸チタン(IV)又はテトラブトキシチタンとしても知られる)の存在下で行う。
【0085】
本発明の一実施形態では、使用される触媒は、アセトン、トルエン、キシレン及び/又は脂肪族炭化水素に溶解するカルボン酸亜鉛である。
【0086】
さらに好ましい実施形態では、本発明に係るポリウレタンPUの調製は、アニオンが式(C2n−1又は(Cn+12n−22−(式中、nは1〜20である)に従う少なくとも1種のカルボン酸亜鉛の存在下で行う。特に好ましい亜鉛塩は、アニオンとして、一般式(C2n−1(式中、nは1〜20である)のモノカルボキシレートを有する。
【0087】
好ましくは、本発明に係るポリウレタンPUは脂肪族又は芳香族カルボキシレートであり、所望の場合、1又は2個の環構造を含み得るカルボン酸亜鉛の存在下で調製する。
【0088】
特に好ましい実施形態では、長鎖カルボン酸基の場合、本発明の方法における触媒の活性が減少することがわかっているので、本発明に係るポリウレタンPUの調製に用いられる触媒は、好ましくは、カルボン酸基が20個以下、好ましくは18個、特に好ましくは12以下の炭素原子の炭素鎖を有するカルボン酸亜鉛である。
【0089】
一実施形態では、環構造を有さないカルボン酸亜鉛を本発明のポリウレタンを調製するための触媒として使用し得る。触媒として脂肪族カルボン酸亜鉛を使用することは特に好ましい。
【0090】
本発明のポリウレタンPUを調製するための本発明の方法における使用のための触媒として、2-エチルヘキサン酸亜鉛(オクタン酸亜鉛とも称される)、n-オクタン酸亜鉛、n-デカン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛及びステアリン酸亜鉛を使用することは非常に特に好ましい。ネオデカン酸亜鉛を使用することは特に好ましい。
【0091】
本発明に係るポリウレタンPUの調製のための触媒として、2以上の上記化合物の混合物を使用することも当然可能である。触媒を使用することは好ましい。
【0092】
使用する触媒量はそれ自体役割を持たない。一般的に、費用効率が高い触媒量が使用される。結果的に、触媒又はその触媒の混合物は、好ましくは、使用するポリエーテルジオールの全重量に対して100ppm〜10000ppmの量で使用される。本発明に係るポリウレタンPUの調製のために、触媒は、好ましくは、使用するポリエーテルジオールの全重量に対して500〜5000ppmの量で、特に好ましくは4500ppm以下の量で使用される。特に好ましい一実施形態では、使用するポリエーテルジオールの全重量に対して1000ppm〜3000ppmの触媒量が、本発明に係るポリウレタンの調製のために使用される。
【0093】
1種の触媒又は複数の触媒は、それらの性質に応じて、固体もしくは液体の形態又は溶解した形態で本発明の方法に加え得る。適した溶媒は、水非混和性溶媒、例えば、芳香族又は脂肪族炭化水素、特に、トルエン、キシレン、酢酸エチル、ヘキサン及びシクロヘキサン、並びにカルボン酸エステル、例えば、酢酸エチル等である。さらに、適した溶媒は、アセトン、THF並びにN−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドンである。好ましくは、1種の触媒又は複数の触媒は固体もしくは液体の形態で添加される。好ましくは、触媒は溶媒中に溶解した形態で、非常に特に好ましくは、脂肪族炭化水素、アセトン、トルエン又はキシレン等の有機溶媒に溶解して使用される。
【0094】
本発明の特に好ましい実施形態では、1種の触媒又は複数の触媒は溶解した形態で使用される。
【0095】
本発明のさらに特に好ましい実施形態において、使用する触媒は、脂肪族炭化水素、アセトン、トルエン、キシレン、又は場合によりそれらの混合物中に溶解したカルボン酸亜鉛である。
【0096】
本発明のポリウレタンPUは、合成が二段階で起こる本発明の方法によって調製される。所望の場合、二番目の反応段階は生成物のワークアップの後に行う。
【0097】
原則として、その反応は触媒を用いずに行うこともできるが、(例えば、数平均分子量及び重量平均分子量の点から)生成物は一般的に再生するのが非常に難しく、反応時間は一般的に顕著に長くなり、水を含有する調製物において達成される粘性は低くなる場合もある。触媒が存在しない場合は、(高分子量の)副生成物の生成が増加することによって架橋が生じる場合もある。好ましくは、本発明の方法では少なくとも1種の、特に好ましくは正確に1種の触媒が使用される。
【0098】
この好ましい実施形態におけるポリウレタンPUの調製のための本発明に係る方法の利点の一つは、生成物が、均一に構造化した分子又は明確に規定されたポリウレタン分子の混合物を含むことである。
【0099】
一実施形態では、ポリウレタンPUの調製のための本発明に係る方法は以下の工程を含み得る:
1.少なくとも1500g/molの分子量を有する、少なくとも1種のポリエーテルジオールを、少なくとも1種のカルボン酸亜鉛及び/又は少なくとも1種のチタンアルコラートの存在下で、少なくとも1種の脂肪族ジイソシアネートと反応させる。
【0100】
2.続いて、生成した中間体を少なくとも1種のエトキシル化脂肪アルコールと反応させる。
【0101】
3.続いて、ワークアップを行う、即ち、一般的に全ての有機溶媒を除去して、ポリマーを水に移す。
【0102】
本発明の方法において出発物質の反応は溶液中で行うことができる。融液中での反応も可能であり、その場合、供給物は溶媒に溶解していない形態又は大部分が溶解していない形態で存在する。
【0103】
本発明に係る方法の好ましい一実施形態では、反応は溶液中において二工程で行われ、特に好ましくは、アセトン、トルエン又はキシレン等の有機溶媒に溶解した溶液中で行われる。
【0104】
好ましくは、出来る限り無水のポリエーテルジオールが本発明に係る方法の第一の工程で使用される。そのポリエーテルからの水の除去は、本発明の方法において、共沸蒸留、真空乾燥その他の当業者に周知の方法で行うことができる。例えば、共沸蒸留により、ジイソシアネートの添加前の水含有量が約300ppmになるまで水を除去できる。実際の反応の調製は例えば、
減圧下にポリエーテルジオールを置き、水を十分に除去して(好ましくは約300ppm以下の水含有量になるまで)、それから溶媒を混合すること、あるいは、
ポリエーテルジオールとキシレン、トルエン又はアセトン等の溶媒とを混合して、例えば、約300ppmの水含有量になるまで共沸蒸留によって水を除去すること(但し、この場合その溶媒は完全には除去されない。しかし、残存溶媒中のポリエーテルの溶液は、溶液中でその反応に使用される)
からなる。
【0105】
ジイソシアネートとの反応の前に、溶媒中のジオール溶液のpHは、pH7以下の値まで調整することができ、所望の場合、例えば、1種の酸又は異なる酸の混合物を脱塩するか加えることにより緩衝する。適した酸は、無機酸又は有機酸であり、例えば、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、炭酸、有機酸、例えば、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸である。
【0106】
本発明の方法で使用されるエトキシル化脂肪アルコールは、好ましくはエチレンオキシド基が少なくとも2〜30個、特に好ましくは3〜25個、非常に特に好ましくは3〜20個であるエトキシル化度を有する。使用する少なくとも1つの脂肪アルコールは、多くの場合、好ましくは構造式RO(CHCHO)H(式中、RがC13アルキル基であり、好ましくはイソC13アルキル基であり、xは3、5、6、6.5、7、8、10、12、15又は20であり、好ましくはx=10である(「Lutensol(登録商標)TO」の名称でBASF SEより市販されており、例えば、x=10の場合は「Lutensol(登録商標)TO10」)である))の飽和イソC13アルコールから調製される、分岐した非イオン性の化合物である。
【0107】
本発明の方法において、使用するポリエーテルジオールと使用するジイソシアネートとの比(mol対mol)は、1:1.1〜1:1.9であり得る。好ましくは、その比は1:1.1〜1:1.8である。特に好ましくは、その比は1:1.1〜1:1.75である。とりわけて特に、その比は1:1.2〜1:1.75である。その比は当然、1:x(xは1.3以上であり、好ましくはxは1.5以上である)ともなり得る。
【0108】
一実施形態において、これは、本発明に係るポリウレタンの一分子中に好ましくは存在する1又は2つのみのセクションPとなる。
【0109】
本発明に係る方法の特定の実施形態において(mol対mol)、ポリエーテルジオールとジイソシアネートとの比の当該範囲の他に、ポリエーテルジオールとエトキシル化脂肪アルコールとの比はさらに、使用するポリエーテルジオールと使用するエトキシル化脂肪アルコールとの比が5:1〜1:2となるように選択される。好ましくは、この比は2:1〜1:1.8、特に好ましくは1:1〜1:1.6、最も好ましくは1:1.5である。
【0110】
本発明に係る方法の3つの全ての供給物に関して、ポリエーテルジオールとジイソシアネートとエトキシル化脂肪アルコールとの比(mol対mol)は、1:1.75:1.5が非常に特に好ましく使用される。
【0111】
本発明はまた、水を含有する調製物を製造するための、本発明に係るポリウレタンPU及び本発明により調製されるポリウレタンの使用も提供する。この場合、少なくとも5重量%、特に少なくとも20重量%、非常に特に好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%の水を含有する調製物が好ましい。水を含有する調製物は、例えば、溶液、エマルジョン、懸濁液又は分散液であってもよい。
【0112】
本発明のポリウレタンPU及び本発明により調製されるポリウレタンの他に、調製物を製造するために本発明に従い他の物質も使用でき、例えば、慣用の助剤(例えば、分散剤及び/又は安定剤)、界面活性剤、保存剤、消泡剤、芳香剤、湿潤剤、増粘剤、染料、柔軟剤、保湿剤及び/又は他のポリマーである。
【0113】
好ましくは、本発明のポリウレタンPU及び本発明により製造されるポリウレタンの混合物は、少なくとも1種の塩もしくは少なくとも1種の界面活性剤又はそれらの混合物を含み、水を含有する調製物を製造するために使用できる。
【0114】
本発明の文脈中において、界面活性剤は乳化剤及び界面活性剤と乳化剤との混合物としても理解される。本発明の文脈中において、塩は、低pKを有する塩及び塩様の構造物並びにそれらの混合物として理解される。
【0115】
本発明のポリウレタンPU及び本発明により調製されるポリウレタンは、特に好ましくは少なくとも0.05重量%の塩及び/又は少なくとも0.5重量%の界面活性剤、非常に特に好ましくは少なくとも0.1%(w/w)の塩及び/又は少なくとも1重量%の界面活性剤を含む調製物を製造するために使用される。
【0116】
別の実施形態では、本発明のポリウレタンPU及び本発明により調製されるポリウレタンは、最大で20重量%の塩、好ましくは最大で10重量%、特に好ましくは5重量%又はそれよりも少ない塩を含む調製物を製造するために使用される。別の実施形態では、本発明のポリウレタンPU及び本発明により製造されるポリウレタンは、最大で25重量%の界面活性剤、好ましくは最大で20重量%、特に好ましくは15重量%又はそれよりも少ない界面活性剤を含む調製物を製造するために使用される。
【0117】
別の実施形態では、本発明のポリウレタンPU及び本発明により調製されるポリウレタンは、最大で10重量%の塩、好ましくは最大で5重量%の塩、及び最大で20重量%の界面活性剤、好ましくは最大で15重量%の界面活性剤を含む調製物を製造するために使用される。
【0118】
本発明のポリウレタンPU及び本発明により調製されるポリウレタンは、特に好ましくは、水中油型エマルジョンである調製物を製造するために使用される。典型的には、水中油型エマルジョンは0重量%より多く40重量%以下の油画分を含む。本発明において水中油型エマルジョンは、好ましくは、5〜40重量%、特に10〜35重量%、とりわけ15〜30重量%の油の油画分を含んで調製される。
【0119】
本発明のポリウレタンPU及び本発明により調製されるポリウレタンは、非常に特に好ましくは、水中油エマルジョンであって少なくとも1種の塩を含む調製物を製造するために使用される。
【0120】
本発明のポリウレタンを含む本発明の調製物は、例えば、溶液、エマルジョン、懸濁液又は分散液であってもよい。一実施形態において本発明の調製物は、ワークアップによる調製方法によって反応生成物から得ることができるような、本発明のポリウレタンPUの分散液、好ましくは水性分散液である。このために、例えば、溶媒を除去して水を加え、分散液を製造する。所望の場合、保存剤及び/又は安定剤を加えてもよい。
【0121】
実施形態の一つにおいて本発明の分散液は、最大で25重量%の本発明のポリウレタンを含む。他の実施形態において分散剤は、20重量%の固体画分を含む。
【0122】
さらに、本発明の分散液はフリーラジカルから保護する少なくとも1種の保存剤及び/又は少なくとも1種の安定剤を含み得る。最大で20%(w/v)の本発明のポリウレタン、化粧品用途に適した保存剤、及び、所望の場合、少なくとも1種の、フリーラジカルから保護する化粧品用途に適した安定剤を含む水性分散液が非常に特に好ましい。適した保存剤及びフリーラジカル安定剤、例えば、トコフェロール(これらに限定されない)は当業者に周知である。
【0123】
例えば、溶液、エマルジョン、懸濁液又は分散液であってもよい本発明の調製物を製造するためには、本発明のポリウレタンが好ましくは、ワークアップによる調製方法から得ることができるような(例えば、溶媒を除去して水を加え、所望の場合、保存剤及び/又は安定剤を加えることによって)水性分散液の形態で使用される。
【0124】
別の実施形態では、調製物中で慣用されるような別の物質が、調製物の使用の分野に応じて本発明の調製物中に存在してもよい。このような物質は、全てを挙げているわけではないが、慣用の助剤(例えば、分散剤及び/又は安定剤)、界面活性剤、保存剤、消泡剤、芳香剤、湿潤剤、増粘剤、染料及び/又は他のポリマーである。例えば、化粧品調製物、エマルジョン塗料又は穀物保護剤の調製物の分野における、このような別の添加剤は当業者に周知である。
【0125】
本発明において水を含有する調製物の製造のために、本発明のポリウレタンの他に別の増粘剤を使用しないのが好ましい。
【0126】
本発明のポリウレタンPUは様々な利点を有している。利点の一つは、PUを含む本発明の調製物のレオロジー特性を変化させる性質である。
【0127】
極めて一般的な用語においてレオロジー特性の改変は、材料の成形及び流動挙動の変化として理解される。最も重要なレオロジー特性の一つは粘性である。この用語は当業者に周知である。
【0128】
粘性は通常、液体の「粘着性(ropiness)」を意味するものと理解される。それは液体中の分子間力に起因しており、それ故、凝集性(分子内)及び接着性(分子間)に依存する。粘性は液体の流動挙動を特徴付ける。高粘性は濃い液体を意味し、低粘性は薄い液体を意味する。
【0129】
レオロジーの改変は特に、液体の粘性が増加することを意味するものと理解され、通常「増粘(thickening)」とも称される。この粘性の増加はゲル又は固体の形成にまで及び得る。
【0130】
水を含有する調製物の動粘性を増加させる本発明のポリウレタンPUが好ましい。本発明のポリウレタンPUは、その設定した目的(水を含有する調製物のレオロジー特性の改変)に対する、先行技術の増粘剤に代わる解決法とみなし得る。
【0131】
10重量%強度(percent strength by weight)の水性分散液が、100 1/s(s−1)のせん断速度で下記のように測定して、少なくとも100mPa*s、特に好ましくは少なくとも200mPa*s、非常に特に好ましくは少なくとも300mPa*sの動粘度を有しているポリウレタンPUが好ましい。この場合、本発明に係るポリウレタンPUの水性分散液は、ニュートン挙動あるいは非ニュートン挙動を示し得る。本発明のポリウレタンPUを含む非ニュートン性分散液は、好ましくは、少なくとも1000mPa*s、特に好ましくは少なくとも3000mPa*sの動粘度(100 1/sのせん断速度で下記のように測定される、10重量%強度の水性分散液)を有する。
【0132】
水を含有する調製物において、多くの増粘剤がその効果を失うこと、即ち、調製物が同様に塩及び/又は界面活性剤を含み次第、調製物の粘性が減少することは当業者に周知である。対照的に、好ましい実施形態において本発明のポリウレタンPUは、塩及び/又は界面活性剤を加えても水を含有する調製物の粘度を安定化させる。0.5重量%以上の塩濃度で加えた後に、水を含有する調製物の動粘性(下記のように測定される)を安定化させる本発明のポリウレタンPUが特に好ましい。0.5重量%以上の塩を加えて、1重量%以上の界面活性剤を加えても(所望の場合、その加える順序は重要ではない)、動粘性を安定化させるポリウレタンが特に好ましい。
【0133】
別の実施形態では、少なくとも1種の塩を含み、水を含有する調製物の粘性が、塩のみ又は本発明のポリウレタンPUのみを含む調製物と比較して、調製物中の本発明のポリウレタンPUの存在により増加する。この場合、本発明のポリウレタンPU及び塩を加える順序は重要ではない。
【0134】
少なくとも1種の塩もしくは少なくとも1種の界面活性剤又はそれらの混合物が調製物中に存在する場合、水を含有する調製物の動粘性(下記のように測定される)を増加させる本発明のポリウレタンPUが特に好ましい。特に、0.5重量%以上の塩濃度で、水を含有する調製物の動粘性(下記のように測定される)を増加させる本発明のポリウレタンPUが好ましい。0.5重量%より少ない、好ましくは0.1重量%より少ない塩、又は1重量%より少ない、好ましくは0.5重量%より少ない界面活性剤を含む調製物と比較して、動粘性を増加させるポリウレタンが特に好ましい。
【0135】
0.05重量%以上の塩濃度で、水を含有する調製物の動粘性(下記のように測定される)を増加させる本発明のポリウレタンPUが非常に特に好ましい。0.05重量%より少ない、好ましくは0.01重量%以下の塩、又は0.5重量%より少ない、好ましくは0.1重量%以下の界面活性剤を含む調製物と比較して、動粘性を増加させるポリウレタンが特に好ましい。
【0136】
本発明に係るポリウレタンの別の利点は、水中におけるミセル形成である。限界ミセル濃度(CMC)は、物質の大部分が内部に疎水性及び親水性セクションを有し、ミセルが自発的に形成される物質の濃度を表す。水中における本発明のポリウレタンのCMC(下記のように決定される)は、好ましくは1g/L以下、特に好ましくは0.5g/L以下、とりわけて好ましくは0.25g/L以下、非常に特に好ましくは0.1g/L以下である。
【0137】
本発明のポリウレタン、その調製のための本発明の方法及び本発明の調製物のさらなる利点は、ポリウレタンPUの調製における亜鉛含有及び/又はチタン含有触媒の好ましい使用である。特に化粧品調製物分野において、スズを使用する先行技術の周知の方法は、生成物及びそれから生じる調製物中にもスズが存在し得るため、もはや望まれない。化粧品調製物の亜鉛含有添加剤は許容され、この場合適切ならば、亜鉛はその抗菌性及び抗炎症性によるさらなる利点を有し得る。
【0138】
本発明のポリウレタンPUは、極端なpH値でさえも、高い塩含有量及び同時に高い界面活性剤含有量に対して許容性があるため、例えば液体洗浄剤等の在宅治療調製物における増粘剤としても使用できる利点を有する。
【0139】
特に、本発明のポリウレタンPUは過酸化水素含有調製物のためのレオロジー調整剤としても例外的に適している。
【0140】
本発明は、本発明を限定しない以下の実施例を参照することによってさらに詳細に実証されるだろう。
【実施例】
【0141】
特段記載しない限り、全てのパーセントは重量%である。
【0142】
動粘度の決定
水性分散液における本発明のポリウレタンPUの動粘度は、23℃において10重量%強度の分散液の形態で測定した。以下にリストする実施例では、この目的のため、動粘度を常にせん断速度100 1/s及び350 1/sで決定した。これらの2つの数値は、水性分散液において本発明のポリウレタンPUが非ニュートン又はニュートン増粘挙動を示すかどうかに関しての言及を可能とする。DIN53019により動粘度を決定するために以下を使用した。
【0143】
使用する機器:Anton Paar社のPhysica Rheolab MCI携帯回転型粘度計
シリンダー測定システム、Z4 DINシリンダー(直径14mm)
使用する機器:Anton Paar社のPhysica Rheolab MCI携帯回転型粘度計
シリンダー測定システム、Z4 DINシリンダー(直径14mm)
合成例1:ポリウレタンPU1の調製
6000g/molの数平均分子量を有する17.75kgの線状ポリエチレングリコール(例えば、BASF SE社のPluriol(登録商標)E6000)を、窒素下で23.50kgのキシレンに溶解させた。約140℃に溶液を加熱した後、反応混合液の水含有量がわずか約140ppmとなるようにキシレンを蒸留した。
【0144】
ポリエチレングリコール中の酢酸カリウムの量(前もって定量しておいた)を緩衝するために、ポリマー溶液を50℃に冷却し、500mlのキシレンに溶解させた13.1gの酢酸と混合した。脂肪族炭化水素とキシレンとの混合液に溶解させた37.28gのネオデカン酸亜鉛及びキシレンに溶解させた870.0gのヘキサメチレンジイソシアネートを加えることによって重合を開始し、イソシアネート含有量が0.27重量%になるまで混合液を50℃で反応させた。
【0145】
飽和イソC13アルコールから調製され、平均エトキシル化度が10である1.42kgの非イオン性エトキシル化脂肪アルコール(例えば、BASF SE社のLutensol(登録商標)TO10)と、飽和C16/C18アルコール混合物から調製され、平均エトキシル化度が11である1.64kgの非イオン性エトキシル化脂肪アルコール混合物(例えば、BASF SE社のLutensol(登録商標)AT11)との混合物を、キシレンに溶解させて加えた。イソシアネート含有量が0重量%になるまで反応混合液をさらに50℃で加熱した。続いて、残存量が500ppmより少なくなるまで、温度を上げた真空蒸留により溶媒であるキシレンを除去した。得られた生成物PU1は、末端が分岐した及び/又は分岐していないセクションTである線状ポリウレタンを含む混合物である。ポリウレタンPU1中の親水性セクションSの分子量と親水性セクションPの分子量との比は、典型的に1:12.4又は1:13.6である。後者の比は、10個のエチレンオキシド基からなるセクションSに起因し、前者の比は、11個のエチレンオキシド基からなるセクションSに起因する。
【0146】
セクションPとDとのモル比は、1:1.75である。
【0147】
生成物PU1を86.73kgの水に分散させ、室温(25℃)に冷却した。ポリマーPU1(Mn=17600g/mol;Mw=30500g/mol)の混合液は、20.5重量%の固形分を有する水性分散液の形態であった。23℃におけるポリエーテルポリウレタンPU1の10重量%強度の水性分散液の粘度は、7700mPa*s(せん断速度100 1/s)又は5900mPa*s(せん断速度350 1/s)であり、わずかに非ニュートン挙動を示した。
【0148】
合成例2:ポリウレタンPU2の調製
6000g/molの数平均分子量を有する17.75kgの線状ポリエチレングリコール(例えば、BASF SE 社のPluriol(登録商標)E6000)を、窒素下で23.50kgのキシレンに溶解させた。約140℃に溶液を加熱した後、反応混合液の水含有量がまだ、わずか約250ppmになるようにキシレンを蒸留した。
【0149】
続いて、ポリエチレングリコール中の酢酸カリウムの量(前もって定量しておいた)を緩衝するために、ポリマー溶液を50℃に冷却し、500mlのキシレンに溶解させた13.1gの酢酸と混合した。
【0150】
脂肪族炭化水素とキシレンとの混合液に溶解させた37.28gのネオデカン酸亜鉛及びキシレンに溶解させた870.0gのヘキサメチレンジイソシアネートを加えることによって重合を開始し、イソシアネート含有量が0.29重量%になるまで混合液を50℃で反応させた。
【0151】
飽和イソC13アルコールから調製され、平均エトキシル化度が10である0.95kgの非イオン性エトキシル化脂肪アルコール(例えば、BASF SE社のLutensol(登録商標)TO10)と、飽和C16/18アルコール混合物から調製され、平均エトキシル化度が11である2.19kgの非イオン性エトキシル化脂肪アルコール(例えば、BASF SE社のLutensol(登録商標)AT11)との混合物を、キシレンに溶解させて加え、イソシアネート含有量が0重量%になるまで反応混合液を50℃でさらに加熱した。
【0152】
続いて、残存量が500ppmより少なくなるまで、温度を上げた真空蒸留により溶媒のキシレンを除去した。
【0153】
得られた生成物PU2は、末端が分岐した及び/又は分岐していないセクションTである線状ポリウレタンを含む混合物である。ポリウレタンPU2中の親水性セクションSの分子量と親水性セクションPの分子量との比は、典型的に1:12.4又は1:13.6である。後者の比は、10個のエチレンオキシド基からなるセクションSに起因し、前者の比は、11個のエチレンオキシド基からなるセクションSに起因する。
【0154】
セクションPとDとのモル比は、1:1.75である。
【0155】
生成物PU2を87.02kgの水に分散させて、室温(25℃)に冷却した。ポリマー混合液PU2(Mn=16700g/mol;Mw=29500g/mol)は、20.0重量%の固形分を有する水性分散液の形態であった。23℃におけるポリエーテルポリウレタンPU2の10重量%強度の水性分散液の粘度は、26200mPa*s(せん断速度100 1/s)又は12800mPa*s(せん断速度350 1/s)であり、顕著な非ニュートン挙動を示した。
【0156】
合成例3:ポリウレタンPU3の調製
6000g/molの数平均分子量を有する120.00gの線状ポリエチレングリコール(例えば、BASF SE社のPluriol(登録商標)E6000)を窒素下で467.00gのキシレンに溶解させた。約140℃に溶液を加熱した後、反応混合液の水含有量が300ppmより少なくなるようにキシレンを蒸留した。
【0157】
次に、ポリマー溶液を50℃に冷却した。脂肪族炭化水素の混合液に溶解させた42mgのネオデカン酸亜鉛及びキシレンに溶解させた5.88gのヘキサメチレンジイソシアネートを加えることによって重合を開始し、イソシアネート含有量が0.25重量%になるまで混合液を50℃で反応させた。
【0158】
続いて、飽和イソC13アルコールから調製され、平均エトキシル化度が10である19.20gの非イオン性エトキシル化脂肪アルコール(例えば、BASF SE社のLutensol(登録商標)TO10)をキシレンに溶解させて加え、イソシアネート含有量が0重量%になるまで、反応混合液を50℃でさらに加熱した。その後、残存量が500ppmより少なくなるまで、温度を上昇させた真空蒸留により溶媒のキシレンを除去した。
【0159】
得られた生成物PU3は、末端が分岐したセクションTを有する線状ポリウレタンを含む混合物である。ポリウレタンPU3中の親水性セクションSの分子量と親水性セクションPの分子量との比は、典型的に1:13.6である。この比は、10個のエチレンオキシド基からなるセクションSに起因する。
【0160】
セクションPとDとのモル比は1:1.75である。
【0161】
生成物PU3を580.3gの水に分散させて、室温(25℃)まで冷却した。ポリマー混合液PU3(Mn=27200g/mol;Mw=51900g/mol)は、20.0%の固形分を有した水性分散液の形態であった。23℃におけるポリエーテルポリウレタンPU3の10重量%強度の水性分散液の粘度は、680mPa*s(せん断速度100 1/s)又は640mPa*s(せん断速度350 1/s)であり、ニュートン増粘挙動を示した。
【0162】
合成例4:ポリウレタンPU4の調製
6000g/molの数平均分子量を有する17.75kgの線状ポリエチレングリコール(例えば、BASF SE社のPluriol(登録商標)E6000)を窒素下で23.50kgのキシレンに溶解させた。約140℃にその溶液を加熱した後、反応混合液の水含有量が約120ppmになるようにキシレンを蒸留した。
【0163】
続いて、ポリエチレングリコール中の酢酸カリウムの量(前もって定量しておいた)を緩衝するために、ポリマー溶液を50℃に冷却し、500mlのキシレンに溶解させた13.1gの酢酸と混合した。
【0164】
脂肪族炭化水素とキシレンとの混合液に溶解させた37.28gのネオデカン酸亜鉛及びキシレンに溶解させた870.0gのヘキサメチレンジイソシアネートを加えることによって重合を開始し、イソシアネート含有量が0.26重量%になるまで混合液を50℃で反応させた。
【0165】
続いて、飽和イソC13アルコールから調製され、平均エトキシル化度が10である2.84kgの非イオン性エトキシル化アルコール(例えば、BASF SE社のLutensol(登録商標)TO10)をキシレンに溶解させて加え、イソシアネート含有量が0重量%になるまで反応混合液を50℃でさらに加熱した。その後、残存量が500ppmより少なくなるまで、温度を上昇させた真空蒸留により溶媒のキシレンを除去した。
【0166】
得られた生成物PU4は、末端が分岐したセクションTを有する線状ポリウレタンを含む混合物である。ポリウレタンPU4中の親水性セクションSの分子量と親水性セクションPの分子量との比は、典型的に1:13.6である。この比は、10個のエチレンオキシド基からなるセクションSに起因する。
【0167】
セクションPとDとのモル比は1:1.75である。
【0168】
生成物PU4を85.84kgの水に分散させて、室温(25℃)まで冷却した。ポリマー混合液PU4(Mn=19200g/mol;Mw=30800g/mol)は、18.1%の固形分を有した水性分散液の形態であった。23℃におけるポリエーテルポリウレタンPU4の10重量%強度の水性分散液の粘度は、600mPa*s(せん断速度100 1/s)又は570mPa*s(せん断速度350 1/s)であり、ニュートン増粘挙動を示した。
【0169】
合成例5:ポリウレタンPU5の調製
6000g/molの分子量を有する240.00gの線状ポリエチレングリコール(例えば、BASF SE社のPluriol(登録商標)E6000)を窒素下で934.00gのキシレンに溶解させた。その溶液を約140℃に加熱した後、反応混合液の水含有量が300ppmより少なくなるようにキシレンを蒸留した。
【0170】
続いて、ポリマー溶液を50℃に冷却した。脂肪族炭化水素に溶解させた84mgのネオデカン酸亜鉛及びキシレンに溶解させた11.76gのヘキサメチレンジイソシアネートを加えることによって重合を開始し、イソシアネート含有量が0.22重量%になるまで混合液を50℃で反応させた。
【0171】
飽和C13アルコールから調製され、平均エトキシル化度が3である20.70gの非イオン性エトキシル化脂肪アルコール(例えば、BASF SE社のLutensol(登録商標)AO3)をキシレンに溶解させて加え、イソシアネート含有量が0重量%になるまで反応混合液を50℃でさらに加熱した。残存量が500ppmより少なくなるまで、温度を上昇させた真空蒸留により溶媒のキシレンを除去し、その残留物を1089.8gの水に分散させた。
【0172】
ポリウレタンPU5中の親水性セクションSの分子量と親水性セクションPの分子量との比は、典型的に1:45.5である。この比は、3個のエチレンオキシド基からなるセクションSに起因する。
【0173】
セクションPとDとのモル比は、1:1.75である。
【0174】
室温(25℃)に冷却した後、ポリマーPU5(Mn=21300g/mol;Mw=36300g/mol)は、20.1重量%の固形分を有した水性分散液の形態であった。23℃におけるポリエーテルポリウレタンPU5の10重量%強度の水性分散液の粘度は、10900mPa*s(せん断速度100 1/s)又は9200(せん断速度350 1/s)であり、弱い非ニュートン挙動を示した。
【0175】
合成例6:ポリウレタンPU6の調製
6000g/molの分子量を有する180.00gの線状ポリエチレングリコール(例えば、BASF SE社のPluriol(登録商標)E6000)を窒素下で180.00gのアセトンに溶解させた。溶液を加熱還流した後(内部温度約56℃)、1362.4gのアセトンをさらに連続して加え、同時に合計1362.4gのアセトンを蒸留した。反応混合液の水含有量はまだ、わずか約240ppmであった。
【0176】
続いて、ポリマー溶液を50℃に冷却した。脂肪族炭化水素に溶解させた189mgのネオデカン酸亜鉛及びアセトンに溶解させた8.82gのヘキサメチレンジイソシアネートを加えることによって重合を開始し、イソシアネート含有量が0.33重量%になるまで混合液を50℃で反応させた。
【0177】
飽和C13アルコールから調製され、平均エトキシル化度が3である15.53gの非イオン性エトキシル化脂肪アルコール(例えば、BASF SE社のLutensol(登録商標)AO3)をアセトンに溶解させて加え、イソシアネート含有量が0重量%になるまで反応混合液を50℃でさらに加熱した。残存量が500ppmより少なくなるまで真空蒸留により溶媒であるアセトンを除去して、その残留物を817.4gの水に分散させた。
【0178】
ポリウレタンPU6中の親水性セクションSの分子量と親水性セクションPの分子量との比は、典型的に1:45.5である。この比は、3個のエチレンオキシド基からなるセクションSに起因する。
【0179】
セクションPとDとのモル比は、1:1.75である。
【0180】
室温(25℃)に冷却した後、ポリマーPU6(Mn=24900g/mol;Mw=40000g/mol)は、19.6重量%の固形分を有した水性分散液の形態であった。23℃おけるポリエーテルポリウレタンPU6の10重量%強度の水性分散液の粘度は、8800mPa*s(せん断速度100 1/s)又は7800mPa*s(せん断速度350 1/s)であり、わずかな非ニュートン挙動を示した。
【0181】
合成例7:ポリウレタンPU7の調製
6000g/molの数平均分子量を有する120.00gの線状ポリエチレングリコール(例えば、BASF SE社のPluriol(登録商標)E6000)を窒素下で467.00gのキシレンに溶解させた。その溶液を約140℃に加熱した後、反応混合液の水含有量がまだ、わずか約120ppmになるようにキシレンを蒸留した。
【0182】
続いて、ポリマー溶液を50℃に冷却して、ポリエチレングリコール中の酢酸カリウムの量(前もって定量しておいた)を緩衝するために、5mlのキシレンに溶解させた107mgの酢酸と混合した。脂肪族炭化水素とキシレンとの混合液に溶解させた252mgのネオデカン酸亜鉛及びキシレンに溶解させた5.88gのヘキサメチレンジイソシアネートを加えることによって重合を開始し、イソシアネート含有量が0.25重量%になるまで混合液を50℃で反応させた。
【0183】
飽和C16/C18アルコール混合物から調製され、平均エトキシル化度が11である22.20gの非イオン性エトキシル化脂肪アルコール混合物(例えば、BASF SE社のLutensol(登録商標)AT11)をキシレンに溶解させて加えた。イソシアネート含有量が0重量%になるまで、反応混合液を50℃でさらに加熱した。残存量が500ppmより少なくなるまで、温度を上げた真空蒸留により溶媒のキシレンを除去した。
【0184】
得られた生成物PU7は、末端で分岐していないセクションTを有した線状ポリウレタンを含む混合物である。ポリウレタンPU7中の親水性セクションSの分子量と親水性セクションPの分子量との比は、典型的に1:12.4である。この比は、11個のエチレンオキシド基からなるセクションSに起因する。
【0185】
セクションPとDとのモル比は、1:1.75である。
【0186】
生成物PU7を592.3gの水に分散させて、室温(25℃)に冷却した。ポリマーPU7(Mn=18700g/mol;Mw=30900g/mol)の混合液は、20.4重量%の固形分を有した水性分散液の形態であった。23℃におけるポリエーテルポリウレタンPU7の10重量%強度の水性分散液の粘度は、35500mPa*s(せん断速度100 1/s)又は14500mPa*s(せん断速度350 1/s)であり、強い非ニュートン挙動を示した。
【0187】
合成例8:ポリウレタンPU8の調製
9000g/molの数平均分子量を有する180.00gの線状ポリエチレングリコール(例えば、BASF SE社のPluriol(登録商標)E9000)を窒素下で467.00gのキシレンに溶解させた。その溶液を約140℃に加熱した後、反応混合液の水含有量がまだ、わずか約70ppmになるようにキシレンを蒸留した。
【0188】
続いて、ポリマー溶液を50℃に冷却して、ポリエチレングリコール中の酢酸カリウムの量(前もって定量しておいた)を緩衝するために、5mlのキシレンに溶解させた208mgの酢酸と混合した。脂肪族炭化水素とキシレンとの混合液に溶解させた378mgのネオデカン酸亜鉛及びキシレンに溶解させた5.88gのヘキサメチレンジイソシアネートを加えることによって重合を開始し、イソシアネート含有量が0.27重量%になるまで混合液を50℃で反応させた。
【0189】
飽和イソC13アルコールから調製され、平均エトキシル化度が3である10.20gの非イオン性エトキシル化脂肪アルコール(例えば、BASF SE社のLutensol(登録商標)TO3)をキシレンに溶解させて加えた。続いて、イソシアネート含有量が0重量%になるまで、反応混合液を50℃でさらに加熱した。残存量が500ppmより少なくなるまで、温度を上げた真空蒸留により溶媒であるキシレンを除去した。
【0190】
得られた生成物PU8は、末端で分岐したセクションTを有した線状ポリウレタンを含む混合物である。ポリウレタンPU8中の親水性セクションSの分子量と親水性セクションPの分子量との比は、典型的に1:68.2である。この比は、3個のエチレンオキシド基からなるセクションSに起因する。
【0191】
セクションPとDとのモル比は、1:1.75である。
【0192】
生成物PU8を784.3gの水に分散させて、室温(25℃)に冷却した。ポリマーPU8(Mn=27300g/mol;Mw=46500g/mol)の混合液は、20.2重量%の固形分を有した水性分散液の形態であった。23℃におけるポリエーテルポリウレタンPU8の10重量%強度の水性分散液の粘度は、1060mPa*s(せん断速度100 1/s及び350 1/s)であり、顕著なニュートン挙動を示した。
【0193】
合成例9:ポリウレタンPU9の調製
9000g/molの数平均分子量を有する180.00gの線状ポリエチレングリコール(例えば、BASF SE社のPluriol(登録商標)E9000)を窒素下で467.00gのキシレンに溶解させた。その溶液を約140℃に加熱した後、反応混合液の水含有量がまだ、わずか約70ppmになるようにキシレンを蒸留した。
【0194】
続いて、ポリマー溶液を50℃に冷却して、ポリエチレングリコール中の酢酸カリウムの量(前もって定量しておいた)を緩衝するために、5mlのキシレンに溶解させた208mgの酢酸と混合した。脂肪族炭化水素とキシレンとの混合液に溶解させた378mgのネオデカン酸亜鉛及びキシレンに溶解させた5.88gのヘキサメチレンジイソシアネートを加えることによって重合を開始し、イソシアネート含有量が0.28重量%になるまで混合液を50℃で反応させた。
【0195】
飽和イソC13アルコールから調製され、平均エトキシル化度が3である5.10gの非イオン性エトキシル化脂肪アルコール(例えば、BASF SE社のLutensol(登録商標)TO3)と、飽和C16/C18アルコール混合物から調製され、平均エトキシル化度が11である11.10gの非イオン性エトキシル化脂肪アルコール混合物(例えば、BASF SE社のLutensol(登録商標)AT11)との混合物をキシレンに溶解させて加えた。イソシアネート含有量が0重量%になるまで、反応混合液を50℃でさらに加熱した。残存量が500ppmより少なくなるまで、温度を上げた真空蒸留により溶媒のキシレンを除去した。
【0196】
得られた生成物PU9は、末端で分岐した及び/又は分岐していないセクションTを有した線状ポリウレタンを含む混合物である。ポリウレタンPU9中の親水性セクションSの分子量と親水性セクションPの分子量との比は、典型的に1:12.4又は1:68.2である。後者の比は、3個のエチレンオキシド基からなるセクションSに起因し、前者の比は、11個のエチレンオキシド基からなるセクションSに起因する。
【0197】
セクションPとDとのモル比は、1:1.75である。
【0198】
生成物PU9を764.0gの水に分散させて、室温(25℃)に冷却した。ポリマーPU9(Mn=25000g/mol;Mw=45500g/mol)の混合液は、20.8重量%の固形分を有した水性分散液の形態であった。23℃におけるポリエーテルポリウレタンPU9の10重量%強度の水性分散液の粘度は、7500mPa*s(せん断速度100 1/s)又は4500mPa*s(せん断速度350 1/s)であり、強い非ニュートン挙動を示した。
【0199】
合成例10:ポリウレタンPU10の調製
1500g/molの数平均分子量を有する120.00gの線状ポリエチレングリコール(例えば、BASF SE社のPluriol(登録商標)E1500)を窒素下で467.00gのキシレンに溶解させた。その溶液を約140℃に加熱した後、反応混合液の水含有量がまだ、わずか約110ppmになるようにキシレンを蒸留した。
【0200】
続いて、ポリマー溶液を50℃に冷却して、ポリエチレングリコール中の酢酸カリウムの量(前もって定量しておいた)を緩衝するために、5mlのキシレンに溶解させた90mgの酢酸と混合した。脂肪族炭化水素とキシレンとの混合液に溶解させた252mgのネオデカン酸亜鉛及びキシレンに溶解させた15.72gのヘキサメチレンジイソシアネートを加えることによって重合を開始し、イソシアネート含有量が0.29重量%になるまで混合液を50℃で反応させた。
【0201】
飽和イソC13アルコールから調製され、平均エトキシル化度が10である17.41gの非イオン性エトキシル化脂肪アルコール(例えば、BASF SE社のLutensol(登録商標)TO10)をキシレンに溶解させて加えた。イソシアネート含有量が0重量%になるまで、反応混合液を50℃でさらに加熱した。続いて、残存量が500ppmより少なくなるまで、温度を上げた真空蒸留により溶媒のキシレンを除去した。
【0202】
得られた生成物PU10は、末端で分岐したセクションTを有した線状ポリウレタンを含む混合物である。ポリウレタンPU10中の親水性セクションSの分子量と親水性セクションPの分子量との比は、典型的に1:13.6である。この比は、10個のエチレンオキシド基からなるセクションSに起因する。
【0203】
セクションPとDとのモル比は、1:1.17である。
【0204】
生成物PU10を612.5gの水に分散させて、室温(25℃)に冷却した。ポリマーPU10(Mn=18600g/mol;Mw=34900g/mol)の混合液は、20.1重量%の固形分を有した水性分散液の形態であった。23℃におけるポリエーテルポリウレタンPU10の10重量%強度の水性分散液の粘度は、165mPa*s(せん断速度100 1/s及び350 1/s)であり、顕著なニュートン挙動を示した。
【0205】
合成例11:ポリウレタンPU11の調製
1500g/molの数平均分子量を有する90.00gの線状ポリエチレングリコール(例えば、BASF SE社のPluriol(登録商標)E1500)を窒素下で467.00gのキシレンに溶解させた。その溶液を約140℃に加熱した後、反応混合液の水含有量がまだ、わずか約80ppmになるようにキシレンを蒸留した。
【0206】
続いて、ポリマー溶液を50℃に冷却して、ポリエチレングリコール中の酢酸カリウムの量(前もって定量しておいた)を緩衝するために、5mlのキシレンに溶解させた68mgの酢酸と混合した。脂肪族炭化水素とキシレンとの混合液に溶解させた189mgのネオデカン酸亜鉛及びキシレンに溶解させた17.64gのヘキサメチレンジイソシアネートを加えることによって重合を開始し、イソシアネート含有量が0.97重量%になるまで混合液を50℃で反応させた。
【0207】
飽和イソC13アルコールから調製され、平均エトキシル化度が20である99.00gの非イオン性エトキシル化脂肪アルコール(例えば、BASF SE社のLutensol(登録商標)TO20)をキシレンに溶解させて加えた。イソシアネート含有量が0重量%になるまで、反応混合液を50℃でさらに加熱した。残存量が500ppmより少なくなるまで、温度を上げた真空蒸留により溶媒であるキシレンを除去した。
【0208】
得られた生成物PU11は、末端で分岐したセクションTを有した線状ポリウレタンを含む混合物である。ポリウレタンPU11中の親水性セクションSの分子量と親水性セクションPの分子量との比は、典型的に1:1.7である。この比は、20個のエチレンオキシド基からなるセクションSに起因する。
【0209】
セクションPとDとのモル比は、1:1.75である。
【0210】
生成物PU11を826.6gの水に分散させて、室温(25℃)に冷却した。ポリマーPU11(Mn=4000g/mol;Mw=9000g/mol)の混合液は、20.0重量%の固形分を有した水性分散液の形態であった。23℃におけるポリエーテルポリウレタンPU11の10重量%強度の水性分散液の粘度は、150mPa*s(せん断速度100 1/s及び350 1/s)であり、顕著な非ニュートン挙動を示した。
【0211】
限界ミセル濃度の決定
水における本発明に係るポリウレタンのCMCを動的光散乱法により決定した。このためにゴニオメーターSP−86(ALV-Laser Vertriebsgesellschaft mbH, Langen, Germany)をDLS/SLSユニットと組み合わせるようにして使用した。そのユニットは、ALV5000相関器及び波長633nmのHe−Neレーザー(両方とも同様にALV, Langen)も含んだ。0.0001g/L〜10g/Lの濃度を含む一連の測定のために使用した条件は、23℃で測定角90°であった。その評価は、先行技術で周知のプログラム(CONTIN(Constrained Inversion)と称される)を用いて強度分布により行った(CONTINも同様に、ALV, Langen)。
【0212】
比較例
CMCを決定するための比較において、ステアリルアルコール、ジイソシアネート及びポリエチレングリコールから調製した、先行技術である非イオン性の疎水性変性エトキシル化ウレタン(Aculyn(登録商標)46としてRohm & Haasから販売されている)を使用した。Aculyn(登録商標)46は測定可能なCMCを有していなかった。0.001〜10g/Lの濃度において、比較的大きく、不確定の100〜500nmの凝集体が主成分として常に存在していた。
【0213】
本発明に係るポリウレタンのCMC
合成例1及び2で調製したポリウレタンPU1及びPU2の混合液に関しては、0.1g/Lにおいて、平均粒径30nmを有する明確なミセルが存在することが見出された。よって、その両方のCMCは0.1g/Lより小さかった。合成例4で調製した本発明のポリウレタンPU4に関しては、1g/LのPU4の濃度において、17nmの直径を有するミセルが存在すること、また、0.1g/Lの濃度においては、15nmの粒径のミセルと、それより少ない割合の、約200nmの大きさで不確定な凝集体の両方が互いに存在することが見出された。従って、この場合も0.1g/Lより小さいCMCが存在していた。
【0214】
調製例1:ポリウレタンPU1〜PU5を用いた非イオン系化粧品調製物の調製(P.1.1〜P.1.5)
化粧品調製物は、水相Bを油相Aに加えて、得られたO/Wエマルジョンを保存剤(相C)と混合することによって調製した。これにより、非イオン系調製物P.1.1〜P.1.5が得られた(表1)。
【表1】

【0215】
調製例2:ポリウレタンPU.1〜PU.5を用いた非イオン系化粧品調製物の調製(P.2.1〜P.2.5)
化粧品調製物は、水相Bを油相Aに加えて、得られたO/Wエマルジョンを保存剤(相C)と混合することによって調製した。これにより、非イオン系調製物P.2.1〜P.2.5が得られた(表2)。
【表2】

【0216】
助剤を含む調製物の動粘度の決定
水を含有し、さらに助剤を含む調製物(例えば、調製例で限定されずに開示される化粧品調製物)の動粘度は、Brookfield粘度計(Brookfield)、モデルDV-II+Pro粘度計(モデル:RVDVII+Pro)により決定した。使用した測定系は、20℃において20rpmのせん断速度に設定したRVスピンドルであった。
【0217】
塩濃度の関数としての化粧品調製物P.1.1〜P.1.5(非イオン系)の粘度
【表3】

【0218】
塩を加えた場合、調製物P.1.3〜P.1.4は、増加する及び/又は概して安定した粘性を示す。P.1.1、P.1.2及びP.1.5は、塩を適度に加えた場合でも良好な増粘効果をなお示す。
【0219】
塩濃度の関数としての化粧品調製物P.2.1〜P.2.5(非イオン系)の粘度
【表4】

【0220】
塩を加えた場合、調製物P.2.5は安定性を示し、粘性が増加する場合もある。このことは、P.2.3及びP.2.4でより顕著であり、これらは、最大で10重量%の塩を加えることによって大きく増加した動粘性を示す。P.2.1及びP.2.2は、塩を適度に加えた場合でも良好な増粘効果をなお有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互の親水性及び疎水性セクションからなる実質的に線状の骨格を有する水分散性ポリウレタン(PU)であり、ここで
(a)2つの末端のセクション(T)が疎水性であり、
(b)各セクションTが親水性セクション(S)に直接結合し、
(c)各セクションSが、少なくとも一つの側で少なくとも1つの疎水性セクション(D)に直接結合し、
(d)ここで、少なくとも1つの親水性セクション(P)が存在し、ここで、1より多いセクションPが存在する場合、少なくとも1つの疎水性セクションDが2つのセクションPを分け、
該ポリウレタンが少なくとも3つの親水性セクションを含み、各親水性セクションSの分子量と各親水性セクションPの分子量との比が1:1.4〜1:140であり、少なくとも2つの疎水性セクションDが脂肪族ジイソシアネート基であり、少なくとも1つの親水性セクションPが少なくとも1500g/molの数平均分子量を有するポリエーテル基である、前記ポリウレタン又は異なるポリウレタンPUの混合物。
【請求項2】
2つの疎水性末端セクションTのうち少なくとも1つが、分岐したアルキル基である、請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項3】
末端の疎水性セクションTが分岐した又は分岐していないアルキル基であるポリウレタンPUの混合物である、請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項4】
親水性セクションの全てがポリエーテル基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリウレタン。
【請求項5】
少なくとも2つの親水性セクションSがエチレンオキシド基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタン。
【請求項6】
少なくとも1つの親水性セクションPが1500〜10000g/molの数平均分子量を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリウレタン。
【請求項7】
少なくとも1種のカルボン酸亜鉛もしくは少なくとも1種のチタンアルコラート又はそれらの混合物の存在下で調製を行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリウレタンの調製方法。
【請求項8】
少なくとも1種のカルボン酸亜鉛の存在下で調製を行う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
2段階で調製を行う、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1種のカルボン酸亜鉛もしくは少なくとも1種のチタンアルコラート又はそれらの混合物の存在下で、少なくとも1種のポリエーテルジオールを少なくとも1種の脂肪族ジイソシアネートと反応させ、第2工程で、少なくとも1種のアルコキシル化脂肪アルコールを反応させてからワークアップを行う、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
使用するポリエーテルジオールと使用するジイソシアネートとの比が1:1.1〜1:1.75である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水を含有する調製物を製造するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリウレタン又は請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法により調製するポリウレタンの使用。
【請求項13】
調製物が水の他、少なくとも1種の塩もしくは少なくとも1種の界面活性剤又はそれらの混合物を含む、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の少なくとも1種のポリウレタン又は請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法により調製する少なくとも1種のポリウレタンを含む調製物。
【請求項15】
調製物が水性分散液である、請求項14に記載の調製物。

【公表番号】特表2011−520003(P2011−520003A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507900(P2011−507900)
【出願日】平成21年5月6日(2009.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055439
【国際公開番号】WO2009/135856
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】