説明

ポリウレタン断熱フォームの製造方法

【課題】ポリイソシアヌレート断熱フォームの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ポリイソシアネート、反応性水素原子を有する化合物、発泡剤、安定剤、核剤、および適切な場合には更なる添加剤を含有する発泡性反応混合物をベースとする、ポリウレタンまたはポリイソシアヌレート断熱フォームの製造方法であって、ゼオライト構造を有する多孔質固体(特にケイ酸塩)が核剤として使用されることを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質粒子を核剤として使用して、向上した断熱効率を有するポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネート、反応性水素原子を有する化合物、発泡剤、安定剤、および適切な場合には更なる添加剤をベースとする発泡性反応混合物を発泡することによる、ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの製造は、現在では、工業的大規模で行われている。この目的のために、ポリイソシアネートを除くすべての成分が一般に予め配合されて加工可能な混合物(A成分)が形成され、これがポリイソシアネート(B成分)と発泡プラントで混合される。最初の液体反応混合物において、材料が硬化するまでフォームの形成および重付加反応が並行して起こり、短時間で硬い熱硬化フォームが得られる。
【0003】
もっぱら熱硬化性ポリウレタンおよびポリイソシアヌレートが断熱材に使用されていることから、熱可塑性材料の場合における先行技術のような押出し成形法による加工は不可能である。
【0004】
様々な産業分野が、それぞれのポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの物理的および技術的特性に関して特定の、全く違った、時に相反する必要条件(硬質フォーム、可撓性フォーム;低フォーム密度、高フォーム密度;小さな気泡、大きな気泡等)を有する。熱硬化断熱フォームを製造するためには、50kg未満/mという相対的に低いフォーム密度と、必須の条件として多くの小さな独立気泡(高い気泡数)とを有する硬質フォームを製造することが必要である。気泡は、成形品全体に本質的に均一に分布すべきであり、すなわち勾配はない。
【0005】
フォームが形成されるためには、発泡ガスが必要である。これは、イソシアネートと水との反応から形成されるかもしくはさらに添加されるCO、および/または添加される低沸点有機液体であることができる。
【0006】
形成されるガスは、液相を残し、気泡を形成しなければならず、これはフォームの上昇相(rise phase)の間、成長して後の発泡セルを形成する。液相における初期の微視的に小さな気泡の形成は、核生成とよばれ、他の物理化学的な核生成プロセス(例えば、沈殿反応)と同様に活性化エネルギーが必要である。発泡反応中に達成される、形成/添加される発泡ガスでの液体反応混合物の過飽和は、適切な自己核生成、すなわちガス気泡の自動的形成を生じさせるのに十分ではないことは確かである。むしろ、完成したフォーム中に存在する気泡の大部分は既に、核生成相中小さな(空気)ガス気泡として存在しなければならない。発泡反応中、反応混合物中に分散された個々のガス気泡は、次に、これらの空気気泡内に発生した発泡ガスの内部拡散によって成長し、核としての役割を果たす。断熱フォームを製造するためには、フォーム形成段階の開始前に、液体反応混合物中に非常に多くの核を製造しなければならないということになる。このプロセスは、形成されるフォームの形態学的特性、すなわち気泡数および気泡サイズ分布の基礎となる。
【0007】
同時に使用されるシリコーン気泡安定剤は、表面張力、したがって気泡核の形成に必要なエネルギーを減らすことによって、かつ反応混合物中の空気の分散を安定化することによっても、核生成中の気泡形成を助ける役割を果たすことができる。
【0008】
ポリウレタンフォームの安定剤は主に、水溶性ポリエーテルシロキサンである。これらは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーと、ポリジメチルシロキサンとの反応生成物である。ポリウレタンフォームの製造には、それらはかなり重要である。現象学的には、気泡安定剤の作業は、現代の理解に従って、核生成中の気泡形成を助けるだけでなく、フォーム原料を乳化し、とりわけ、ギブス−マランゴニ(Gibbs-Marangoni)効果を用いてフォームの発泡性膜における表面弾性を確保することによって、発泡性フォームを安定化し;要するに、それが表面力によって硬化されるまで、上昇プロセスの間、フォームの熱力学的に不安定な状態を維持することである。数多くの研究にもかかわらず、フォーム形成におけるその作用機序は、まだ決定的に解明されていない。
【0009】
これらの化合物は、気泡構造の細かさおよび規則性にある程度影響を及ぼすが、上記の多様な相互作用、特に付随する負の現象(例えば、亀裂の形成および収縮をその後引き起こすか、極端な場合にはそれらを導き得る、すなわちフォームを完全に使用不能にする、過度の安定化)のために、使用される量を自由に選択することができない。さらに、核生成に対する、したがってフォームの気泡の細かさに対する、気泡安定剤の良い影響は、安定剤の使用濃度に関して、飽和挙動の影響下にある。すなわち、気泡の細かさには制限があり、安定剤濃度をさらに増加することによって、それ以上に気泡を小さくすることができない。
【0010】
しかしながら、製造方法および使用される更なる原料しだいでは、不十分な細かさの気泡だけになることもある。
【0011】
更なる技術的解決策として、固体上への不均一な核生成、特にナノ粒子またはナノ構造粒子の使用が提案されている(欧州特許第1 683 831号、欧州特許第1 209 189号、国際公開第2005/019328号パンフレット)。これらは一般に、ポリオール成分に予め混合される。これらの粉末の平均一次粒径は、少なくとも1つの次元で、好ましくは1〜200nmの範囲、好ましくは10〜50nmの範囲にある。
【0012】
かかる粒子は好ましくは、少なくとも1つの次元においてナノサイズ粒子またはナノ構造粒子であり、金属、金属酸化物、混合酸化物、窒化物、水酸化物、炭酸塩、金属塩、他の無機もしくは有機塩、ケイ酸塩、シリコーン樹脂、シリコーン、炭素(例えば、活性炭)および/または有機ポリマーからなる群から特に好ましくは選択される。好ましい例は、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ケイ酸塩および窒化ホウ素、およびさらに他の無機塩である。
【0013】
ナノサイズ粒子が使用される場合、気泡構造はより微細になることが立証されている(欧州特許第1 683 831号、欧州特許第1 209 189号、国際公開第2005/019328号パンフレット)。しかし実際には、異なるポリウレタンまたはポリイソシアヌレート硬質フォーム配合物に関して、非常に異なる反応挙動が観察されている。すなわち、適切なナノ粒子を含有する一部の配合物においては有意な気泡精密化が見出されている一方、他の配合物の場合には所望の効果が見られない。
【0014】
完全性を得るために、フォームの形成は、ポリウレタン配合物に関して本明細書に記載のように重合反応中だけでなく、押出し成形プロセスにおいても起こり得ることに言及され得る。しかしながら、これらの押出し成形プロセスは、原則的に、本明細書に記載の熱硬化性フォーム形成を伴うポリウレタン形成反応と異なる。よって、例えば、国際公開第2002/034823号パンフレットには、多峰性熱可塑性ポリマーフォームの形成を導く、熱可塑性材料の押出し成形プロセスが記載されている。
【0015】
一方、本発明が関わる、非熱可塑性であるが、熱硬化性のポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの系は、一般に好ましい均一な、単峰性の気泡サイズ分布を示す。したがって、本出願が関わる熱硬化性系は、押出し成形プロセスによって得ることができない。
【0016】
多くの(ナノ)粒子で認められる更なる不利点は、これらの粒子がその中に存在する(ポリオール)混合物はさらに、即座に、または少なくとも非常に短時間の内に処理しなければならないことである。しかしながら、工業プロセスにおける操業上の理由のために一般に必要とされる保管期間の後、最初に認められる効果は最小限となるか、あるいはもはや存在しないことが多い。したがって、断熱材を製造するためのポリウレタンフォーム(PUフォーム)における核剤としてのナノ粒子の使用は、工業的に確立されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、PU断熱フォーム用の通例の工業用配合物における断熱効率の向上と等価の、少量でさえ気泡数の増加をもたらす、すなわち、より小さな気泡直径への気泡サイズ分布のシフトをもたらす有効な核剤が継続して必要とされている。
【0018】
向上した断熱作用を有する硬質ポリウレタンフォーム成形品を製造する新規な方法を提供することが本発明の目的である。
【0019】
驚くべきことに今回、核剤としての多孔質固体、特にゼオライト構造を有するケイ酸塩の使用によって、気泡数の増加、したがって、達成される断熱作用の向上が可能となることが分かった。本発明による粒子のこの効果は、PUフォーム原料および系中の粒子の分散と、断熱フォームを製造するためのその処理との間に、工業的に通例の保管時間が存在する場合でさえ維持される。
【0020】
PUフォームにおけるゼオライトの使用は既に知られている。
【0021】
硬質ポリウレタンフォーム成形品の製造は、例えば独国特許第1 694 138号に記載されている。その成形体は、高密度の外皮(outer skin)を有し、成形品の断面にわたる異なる密度分布を有する。かかるフォームは一般に、「一体型フォーム」と呼ばれる。発泡剤としての低沸点溶媒の使用は、この「一体型構造」の製造に必須であり;クロロフルオロカーボン(CFC)R11およびR113は、この目的に特に非常に適している。
【0022】
ゼオライト構造を有するアルカリ金属、ケイ酸アルミニウムを使用した、高密度表面と気泡コア(「一体型構造」)を有するポリウレタンフォームの製造は、独国特許第1 804 362号からも知られている。しかしながら、この先行の公開に開示されているフォームは、範囲約60〜120kg/mのフォーム密度を有するフォームであり、著者の主な関心事は、フルオロクロロカーボンの使用を伴うにもかかわらず収縮しないフォームを製造することである。
【0023】
欧州特許第0 319 866号には、少なくとも300kg/mのフォーム密度を有するポリウレタン成形品(「一体型構造」)を製造する方法が記載されており、その方法では、水および/または二酸化炭素と共にゼオライト吸着剤が使用される。
【0024】
欧州特許第1 544 229号には、
(A)少なくとも1種類のポリオール成分を含むポリオール配合物を、
(B)有機および/または修飾有機ポリイソシアネートおよび無機ゼオライトを含むイソシアネート成分と反応させることを特徴とする、一体型ポリウレタンフォームを製造する方法が記載されている。
【0025】
米国特許第4,518,718号には、ハイブリッドポリウレタン−ポリイミドフォームを製造する方法であって、反応混合物から水/ガスを除去するために、ゼオライトタイプの分子ふるいが使用される方法が記載されている。
【0026】
多くの参考文献には、揮発性成分の除去(米国特許第2007/78193号);ハロゲン化炭化水素を含有する発泡剤の量の低減(米国特許第5,137,929号);触媒(欧州特許第0 396 092号)または発泡剤(特開昭57−051728号)用の担体材料として;フォームからの二酸化炭素の吸着(欧州特許第0 723 988号、国際公開第90/11320号パンフレット、特開平01−102288号、特開平01−121675号、特開平02−206625号、特開平03−292113、特開平03−137138、特開平08−073775、特開平08−198996、特開昭56−041233、特開昭57−049628、特開昭64−067585、特開昭64−079571);などの更なる応用が記載されている。
【0027】
しかしながら、本発明の目的(核剤としての微小多孔質および/またはメソ多孔質固体の使用)は先行の公開に開示されておらず、明白にされてもいないことから、これらの参考文献は、本発明の方法を明白にすることができない。いずれの参考文献にも、ポリウレタンまたはポリイソシアヌレート断熱フォームの気泡を細かくするための、ゼオライトまたは他の微小多孔質粒子および/またはメソ多孔質粒子の核剤としての使用は記載されておらず、代わりに粒子の吸着特性に焦点が当てられている。これらの吸着特性は、例えばフォーム原料を乾燥させるため、気泡ガスの成分(特に二酸化炭素)を吸着するため、またはフォームからの揮発性有機成分(VOC)の遊離を減らすために用いられる。十分な吸着能力を確実に得るために、時にポリオール100重量部あたり50重量部を超える多量で使用される。使用されるこれらの量は、今回特許請求される、核生成による気泡の精密化をもたらす最適値をはるかに超える。多量で使用される場合、断熱フォーム系に固形充填剤を高濃度で使用した場合に通常認められる、気泡の細かさおよび独立気泡の含有率への有害作用が優勢となる。したがって、先行技術に従いゼオライトをポリウレタンフォームに使用した場合には、気泡精密化作用は起こらない。
【課題を解決するための手段】
【0028】
したがって、本発明は、ポリイソシアネート、反応性水素原子を有する化合物、発泡剤、安定剤、必要に応じて更なる添加剤を含有する発泡性反応混合物をベースとするポリウレタンまたはポリイソシアヌレート断熱フォーム(insulation form)の製造方法であって、多孔質固体、特にゼオライト構造を有するケイ酸塩が核剤として使用される方法を提供する。
【0029】
本発明はさらに、この方法によって製造されるポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォームを提供する。
【0030】
本発明の更なる主題は、従属請求項の内容によって特徴付けられる。
【0031】
本発明の方法によって製造されるPU断熱フォームは、密度50kg未満/m、通常25〜45kg/mを有し、従来の断熱フォームと比較して、気泡数の増加、すなわちより小さな気泡直径への気泡サイズ分布のシフトを示し、したがって向上した断熱効率を示す。
【0032】
このように驚くべきことに、本発明に従って使用される多孔質粒子中で混合することによって、フォームの初期状態とエージング状態の両方で望ましく低減された熱伝導率と共に、1センチメートル当たりの気泡数の著しい増加を達成することが可能となった。本発明による多孔質粒子の添加は、ナノ粒子の添加よりも有効であること、すなわち、気泡精密化作用および付随する熱伝導率の減少は、同量のナノ粒子が添加された場合よりも、多孔質粒子が添加された場合に顕著であることが特に意外であり、かつ注目に値する。
【0033】
本発明に従って使用される多孔質粒子の有効性は、ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートベースの配合物にほとんど左右されない。すなわち、多種多様なポリウレタンまたはポリイソシアヌレート配合物においてイオン特性を向上させるために多孔質粒子を使用することができる。気泡の細かさおよび低い熱伝導率に関して当業者に公知の方法を活用することによって既に最適化されている配合物、すなわち断熱フォームとして使用される先行技術に相当する配合物と、他のフォーム特性に関しては最適化されているが先行技術によって達成される最良の気泡の細かさおよび熱伝導率をまだ示さない配合物との両方の場合において、多孔質粒子中に混合した結果としての熱伝導率の低減を確認することができる。
【0034】
本発明に従って定義される未最適化フォームは、実験室条件下、本発明の効果を強調するための実証用組成物を用いて、22.4mW/mK以下の熱伝導率を有し、これは当業者に公知の更なる助剤および添加剤を添加することによってさらに著しく低減することができる。20mW/mK未満の熱伝導率が特に好ましい。
【0035】
センチメートル当たりの気泡数もまた、40気泡未満/cmの範囲であり、したがって使用に適した範囲にあるが、同様に、更なる公知の助剤および添加剤を添加することによって、さらに最適化することができる。少なくとも50気泡/cmの気泡数が特に好ましい。
【0036】
本発明の目的のために使用される多孔質固体は、微小多孔質からメソ多孔質の粒子である。微小多孔質とは、IUPAC定義に従って、その孔の平均直径が2nm未満であることを意味する。メソ多孔質とは、IUPAC定義に従って、その平均直径が2〜50nmであることを意味する。
【0037】
本発明に従って使用される多孔質固体の粒径は、比較的重要ではなく、ナノメートル範囲からミクロン範囲であることができる。一般的な平均粒径は、100μm未満、好ましくは50μmで未満である。
【0038】
本発明によれば、反応混合物中で不溶性である、すべての微小多孔質およびメソ多孔質有機および/または無機固体、例えば多孔質シリカ、微小多孔質および/またはメソ多孔質シリカゲル、微小多孔質および/またはメソ多孔質ケイ酸塩あるいはアルミノケイ酸塩(メソ多孔質ケイ酸塩の例として「MCM41」)ならびにさらには微小多孔質および/またはメソ多孔質カーボンを使用することが可能である。
【0039】
本発明によれば、ゼオライト構造を有する固体、例えば一般式
2/nO:Al:xSiO:yH
(式中、Mは、原子価nを有する少なくとも1種類の金属であり、
xおよびyは、ゼオライトに通例の値を有し得る)
のアルミノケイ酸塩が好ましい。
【0040】
本明細書において、「ゼオライト」という用語は、1998年のIMA(International Mineralogical Association)の以下の定義に従って理解される。すなわち「ゼオライトは、それぞれが、カチオンを取り囲む4つの酸素原子からなる、連結四面体のフレームワークを特徴とする構造を有する結晶質物質である。このフレームワークは、チャネル(channel)形およびカゴ形の開口空洞を含有する。これらは通常、一般に交換可能な水分子および追加フレームワークカチオンによって占有される。チャネルは、ゲスト種が通過できるのに十分な大きさである。水和段階において、脱水は、主に約400℃未満の温度で起こり、おおむね可逆的である。フレームワークは、(OH、F)基によって割り込まれることもあり;これらは隣接する四面体と共有されない四面体頂点を占有する」(Coombs, D. S., Alberti, A., Armbruster, Th., Artioli, G., Colella, C., Galli, E., Grice, J. D., Liebau, F., Mandarino, J. A., Minato, H., Nickel, E. H., Passaglia, E., Peacor, D. R., Quartieri, S., Rinaldi, R., Ross, M., Sheppard, R. A., Tillmanns, E., Vezzalini, G.; Eur. J. Mineral., 10 (1998) 1037)。
【0041】
フォージャサイト型FAUのゼオライト(ゼオライトXおよびゼオライトY)、構造型LTAのゼオライト(ゼオライトA)、構造型MFIのゼオライト(ZSM−5)、モルデナイト型MORのゼオライトおよびギスモンディン(gismondine)型GISのゼオライト(ゼオライトPおよびゼオライトB)が特に好ましい。
【0042】
微小多孔質およびメソ多孔質固体は、非常に大きな(内部)表面積を有し、天然に優れた吸着剤であり、すなわち、孔は様々な物質で充填することができる。孔の標的化された充填による多孔質粒子の前処理は、断熱フォームの製造に使用されるとき、粒子の気泡精密化作用に影響を及ぼす。例えば、孔を揮発性フッ素化炭化水素、好ましくはHFC245fa、HFC134a、HFC365mfcおよびHCFC141b、特に好ましくは、パーフルオロペンタンおよびパーフルオロヘキサンなどの過フッ素化化合物で充填した場合に、未処理の多孔質粒子と比較して、気泡精密化作用をさらに高めることができる。したがって、本発明は、断熱フォームを製造するための、それに応じて前処理された微小多孔質およびメソ多孔質粒子の使用、およびこのように製造された断熱フォームも提供する。多孔質固体は、反応性混合物に直接添加されるか、または成分のうちの1つと、好ましくはポリオール成分と、適切な場合には更なる助剤および添加剤と共に予め混合される。
【0043】
それらは、ポリオール成分100重量部につき、0.1〜5重量部未満、好ましくは0.2〜3重量部、特に0.5〜1.5重量部の量で使用される。
【0044】
本発明に従って使用される核剤は原則的に、反応性水素原子を有する化合物(A)、ポリイソシアネート成分(B)および通例の助剤および添加剤(C)を含む、断熱フォーム用の通例の発泡性配合物において使用可能である。
【0045】
ポリオール成分(A)として、断熱フォームの配合物に通例の化合物、例えばポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールを使用することが可能である。ポリエーテルポリオールは、多価アルコールまたはアミンとアルキレンオキシドとの反応によって得られる。ポリエステルポリオールは、多塩基カルボン酸(通常、フタル酸またはテレフタル酸)と多価アルコール(通常、グリコール)とのエステルをベースとする。
【0046】
ポリイソシアネート成分(B)として、断熱フォームの配合物に通例の化合物、例えばジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)を使用することが可能である。MDIと、「ポリマーMDI」(「粗製MDI」)として知られる、平均官能価2〜4を有するさらに縮合された類似体との混合物が特に有用である。
【0047】
配合の指数として表される、ポリオールに対するイソシアネートの適切な比は、80〜500、好ましくは100〜350の範囲である。助剤および添加剤(C)として、断熱フォームの配合物に通例の化合物、触媒、気泡安定剤、発泡剤、難燃剤、充填剤、染料および光安定剤などを使用することが可能である。
【0048】
本発明の目的に適している触媒は、ゲル化反応(イソシアネート−ポリオール)、発泡反応(イソシアネート−水)またはイソシアネートの二量体化もしくは三量体化を触媒する物質である。一般的な例は、アミン類、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルピペラジン、1,2−ジメチルイミダゾール、N−エチルモルホリン、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノールおよびビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、ジブチルスズジラウレートなどのスズ化合物、酢酸カリウムおよび2−エチルヘキサン酸カリウムなどのカリウム塩である。適切な量は触媒の種類に応じて異なり、カリウム塩の場合には、通常、ポリオール100重量部に対して0.05〜5重量部または0.1〜10重量部の範囲である。
【0049】
適切な気泡安定剤は、有機界面活性剤または好ましくはシリコーン界面活性剤(ポリエーテル−ポリジメチルシロキサンコポリマー)などの界面活性物質である。使用されるポリエーテルシロキサン気泡安定剤の一般的な量は、ポリオール100重量部につき0.5〜5重量部、好ましくはポリオール100重量部につき1〜3重量部である。
【0050】
二酸化炭素ガスを発生しながら、イソシアネートと反応することから、水が通常、発泡性配合物に化学発泡剤として添加される。本発明の目的に適した水含有量は、水の他に、物理的発泡剤が使用されるかどうかに応じて異なる。水のみで発泡されるフォームの場合には、その値は、通常ポリオール100重量部につき1〜20重量部であり、他の発泡剤がさらに使用される場合には、使用される量は通常、ポリオール100重量部につき0.1〜5重量部に低減される。
【0051】
本発明の目的に適した物理的発泡剤は、ガス、例えば液化COおよび揮発性液体、例えば炭素原子4〜5個を有する炭化水素、好ましくはシクロペンタン、イソペンタンおよびn−ペンタン、フッ素化炭化水素、好ましくはHFC245fa、HFC134aおよびHFC365mfc、クロロフルオロカーボン、好ましくはHCFC141b、ギ酸メチルおよびジメトキシメタンなどの酸素含有化合物、または塩素化炭化水素、好ましくは1,2−ジクロロエタンである。水を除いて、かつ適切な場合には物理的発泡剤を除いて、ガスを発生しながらイソシアネートと反応する他の化学発泡剤、例えばギ酸を使用することも可能である。
【0052】
建造物の断熱のための断熱フォームは、防火規定を受け、難燃剤を施さなければならない。この目的に適した難燃剤は、好ましくは液体有機リン化合物、例えばハロゲン不含有機リン酸エステル、例えばトリエチルホスフェート(TEP)、ハロゲン化ホスフェート、例えばトリス(1−クロロ−2−プロピル)ホスフェート(TCPP)およびトリス(2−クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、および有機ホスホン酸エステル、例えばジメチルメタンホスホネート(DMMP)、ジメチルプロパンホスホメート(DMPP)、またはポリリン酸アンモニウム(APP)および赤リンなどの固体である。更なる適切な難燃剤は、ハロゲン化化合物、例えばハロゲン化ポリオール、および発泡性グラファイトおよびメラミンなどの固体である。
【0053】
本発明の更なる主題は、その開示内容が参照により本明細書に完全に組み込まれる、特許請求の範囲から誘導される。
【0054】
以下の実施例は本発明を例証するが、決してその範囲を制限するものではない。
【0055】
ポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォームを製造する本発明の方法、およびこれらの方法における多孔質固体の使用が、一例として以下に記載されるが、本発明はこれらの例示的な実施形態に限定されない。化合物の範囲、一般式または種類が以下に示される場合、これらは、明示される化合物のそれぞれの範囲および群のみを包含するだけでなく、個々の値(範囲)または化合物を省くことによって得られる化合物のすべての部分領域および部分群も包含する。文献が本明細書に記載されている場合、その内容は、本発明の開示内容に参照により完全に組み込まれる。
【実施例】
【0056】
本発明の目的に一般的なポリウレタンまたはポリイソシアヌレート断熱フォーム配合物は、フォーム密度25〜45kg/mを与え、かつ以下の組成を有する。
【0057】
【表1】

【0058】
硬質フォームを得るための、本発明による配合物の処理は、当業者によく知られているすべての方法によって、例えば手作業での混合プロセスにおいて、または好ましくは、高圧発泡機を使用して、行うことができる。
【0059】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。更なる添加剤の添加および凝集塊によって生じる二次的な影響を除外することができるように、その使用特性に関して最適化されていない、実験用ポリウレタン系に実験データが基づくことが指摘され得る。
【0060】
比較のために、以下のフォーム配合物を使用した(表2):
【0061】
【表2】

【0062】
使用した核剤を以下に示す(表3):
【0063】
【表3】

【0064】
手作業の混合プロセスによって、比較発泡試験を行った。この目的のために、ポリオール、触媒、水、気泡安定剤、核剤および発泡剤を計量してビーカーに入れ、ディスク攪拌機(直径6cm)を用いて1,000rpmで30秒間混合した。混合中に蒸発した発泡剤の量は、再び計量することによって決定し、置き換えた。MDIを添加し、2,500rpmで回転する攪拌機を用いて、反応混合物を7秒間攪拌し、直ぐに寸法145cm×14cm×3.5cmを有するアルミニウム製の型に移し、角度10度で傾け(145cmの面に沿って)、ポリエチレンフィルムで裏当てし、45℃にてサーモスタットで調温した。発泡性フォームが導入領域で型を満たし、高いレベルに位置する末端の方向に上昇するように、低いレベルに位置する末端にフォーム配合物を導入した。型に充填するのに必要な量を10%超えるように、使用するフォーム配合物の量を計算した。
【0065】
10分後、型からフォームを取り出した。発泡して1日後、フォームを分析した。1〜10の等級で表面欠陥および内部欠陥を主観的に評価した。10は破壊されていないフォームを表し、1は非常に強く破壊されたフォームを表す。比較用フォームと比較することによって、孔の構造(1cm当たりの気泡平均数)を切断面で目視評価した。試験片の下側および表側の温度10℃および36℃にて、Hesto λ Control装置を使用して、厚さ2.5cmのディスクで熱伝導率を測定した。エージング後の熱伝導率の値を決定するために、試験片を70℃で7日間保管し、次いで再び測定した。
【0066】
その結果を以下の表4に示す:
【0067】
【表4】

【0068】
この結果から、熱伝導率の著しい向上が、本発明による多孔質粒子を用いて達成することができること−初期の状態とエージングされた状態の両方での値は、核剤を添加していないフォームの参照値を0.3〜0.7mW/mK下回っていることが示されている。
【0069】
フォームの気泡の細かさを比較すると、核剤を含まない比較用フォームに比べて、本発明による粒子を添加したフォームの場合、1センチメートル当たりに多数の気泡、すなわちより細かい気泡構造が見られる。より細かい気泡構造は、多孔質粒子が発泡セルの核生成を促進することを示し、熱伝導率低減の理由とみなすことができる。
【0070】
用途に関連する他のすべてのフォーム特性は、本発明による粒子によって、影響を受けるか、またはごくわずかに影響を受ける。フォーム試験片のかなりデリケートな表面品質の場合でさえ、劣化が見られないか、または縁の劣化のみが見られる。
【0071】
本発明によらない比較例として同様に調べられたケイ砂粉末は、本発明による粒子の正の効果を示さない、すなわち、その気泡構造はより細かくならず、熱伝導率はケイ砂粉末によって低減されない。
【0072】
熱分解法シリカ形状のナノ粒子が使用される場合でさえ、観察される熱伝導率の低減は極めてわずかであり(0.1〜0.2mW/mK)、本発明による多孔質粒子の場合よりも著しく小さな効果である。
【0073】
化学用語では、ケイ砂および熱分解法シリカの両方が二酸化ケイ素であり、したがって、ケイ酸塩の系統に属する上述の多孔質粒子と化学的関係を有する。しかしながら、本発明による粒子とは異なり、ケイ砂および熱分解法シリカは微小多孔質でもなくメソ多孔質でもないことが著しい相違である。これによって、本発明による粒子の正の効果は、その微小多孔質またはメソ多孔質構造によるものであると示唆される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート、反応性水素原子を有する化合物、発泡剤、安定剤、核剤、および適切な場合には更なる添加剤を含有する発泡性反応混合物をベースとする、ポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォームの製造方法であって、多孔質固体が核剤として使用されることを特徴とする方法。
【請求項2】
微小多孔質および/またはメソ多孔質固体が核剤として使用されることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォームの製造方法。
【請求項3】
多孔質シリカ、微小多孔質および/またはメソ多孔質シリカゲル、微小多孔質および/またはメソ多孔質ケイ酸塩またはアルミノケイ酸塩および微小多孔質および/またはメソ多孔質カーボンも核剤として使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォームの製造方法。
【請求項4】
ゼオライト構造を有する多孔質固体が核剤として使用されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォームの製造方法。
【請求項5】
フォージャサイト型FAUのゼオライトが核剤として使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォームの製造方法。
【請求項6】
構造型LTAのゼオライトが核剤として使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォームの製造方法。
【請求項7】
構造型MFIのゼオライトが核剤として使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォームの製造方法。
【請求項8】
モルデナイト型MORのゼオライトが核剤として使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォームの製造方法。
【請求項9】
ギスモンディン型GISのゼオライトが核剤として使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォームの製造方法。
【請求項10】
核剤として使用される多孔質固体が、標的化された方法において前記孔を充填するために前処理されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォームの製造方法。
【請求項11】
前記多孔質固体の孔が、フッ素含有有機化合物で充填されることを特徴とする、請求項10に記載のポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォームの製造方法。
【請求項12】
前記多孔質固体の孔が、フッ素化炭化水素および/またはパーフルオロアルカンで充填されることを特徴とする、請求項11に記載のポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォームの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法によって製造される、ポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォーム。
【請求項14】
22.4mW/mK以下の熱伝導率を有することを特徴とする、請求項13に記載のポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォーム。
【請求項15】
1センチメートル当たりの気泡数が、40気泡/cmを超える範囲であることを特徴とする、請求項13または14に記載のポリウレタンおよびポリイソシアヌレート断熱フォーム。

【公表番号】特表2011−510142(P2011−510142A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543407(P2010−543407)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/068136
【国際公開番号】WO2009/092505
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】