説明

ポリウレタン用難燃剤としてのジホスフィン誘導体

少なくとも一種の式(I)のジホスフィン:
【化1】


(式中、
Xは、SまたはOであり;
nは、0または1であり;
1とR2とR3とR4は、独立して、C1−C10−アルキル、C1−C10−ヒドロキシアルキル、C1−C10−アルコキシ、C1−C10−ヒドロキシアルコキシ、C3−C10−シクロアルキル、C3−C10−シクロアルコキシ、C6−C10−アリール、C6−C10−アリールオキシ、C6−C10−アリール−C1−C4−アルキル、C6−C10−アリール−C1−C4−アルコキシ、C6−C10−ヒドロキシ−アリール、C6−C10−ヒドロキシ−アリールオキシ、C1−C10−チオアルキル、C6−C10−チオアリール、C1−C4−チオアルキル−C6−C10−アリール、NR56、COR2、COOR5またはCONR56であり;
5とR6は、H、C1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、C6−C10−アリールまたはC6−C10−アリール−C1−C4−アルキルである)
のポリウレタン材料中での難燃剤としての利用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のジホスフィンのポリウレタン(PU)用難燃剤としての利用と、ポリウレタンにこれらの特定ジホスフィンを投入してその可燃性を低下させる方法に関する。本発明はまた、少なくとも一種の本発明のジホスフィンを含むポリウレタン材料に関する。
【背景技術】
【0002】
木材(主に材木)や紙、厚紙、織物、易燃性液体、また特に高分子材料などの有機物質にとって、難燃性は重要な性質である。いくつかの用途では、例えば飛行機や自動車や公共輸送車両用の構造材においては、人的及び物的な危険のため難燃性が第一に考えられている。電子用途では、その部品が局所的に高温となるため難燃性が必要である。したがって、耐炎/耐火性の保証が必要となる。
【0003】
このため通常、有機物質には、特に高分子材料には難燃剤が加えられる。
【0004】
現在の難燃剤市場は、化学的手段及び/又は物理的手段により燃焼過程を阻害するように機能する製品からなる。機構的には、これらの難燃剤は、物品の燃焼時に、気相、凝縮相または両方の相で機能するように提案されている。
【0005】
これまでに工業的に使用されている最も汎用の難燃剤は、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルエタン、臭素化カーボネートオリゴマー、臭素化エポキシオリゴマー、ポリ(ブロムスチレン)などのハロゲン含有化合物であり、特にPU硬質発泡体用では、イクソールB251などの臭素化エーテルまたはPHT−4−ジオールなどの臭素化アルコールである。軟質ポリウレタンフォーム中では、トリス(クロロイソプロピル)ホスフェートなどの塩素化化合物が最も広く用いられている。これらの有機ハロゲンは、気相において高分子基材からのフリーラジカル有機「燃料」を阻害するハロゲン種を生成するように提案されている。
【0006】
一般的には、上述のようなハロゲン含有難燃剤は、安全で効果的であると考えられている。しかしながら、ハロゲンを含まない難燃物質の使用に対する興味が増加してきている。これらの化合物を備える材料が、難燃能の要件を満たすことができ、また現在使用されているハロゲン化材料で提供される性能と同等以上の性能、例えば機械抵抗、靱性、耐溶媒性、耐湿性などを示すことが望ましい。
【0007】
ハロゲンを使用することなく有機ポリマーを難燃化するため、いろいろな異なるアプローチが検討されてきた(最近の総説としては、Journal of Fire Sciences 24, 345−364, 2006; Journal of Fire Sciences 22, 251−264, 2004; Polymer International 54, 11−35, 2005; Polymer International 54, 981−998, 2005を参照)。
【0008】
PUに好適である既知のハロゲンフリーのリン系難燃剤は、例えばトリエチルホスフェート(TEP)やジエチルエチルホスホネート(DEEP)、トリフェニルホスフェート(TPP)などである。これらは、難燃剤としてハロゲン化ホスフェートより効果が低いか、その可塑化効果または気泡開放効果のため材料の特性を低下させる。難燃性を上げるためのもう一つの方法は、無機難燃剤を添加することである。これらは、ポリウレタン中では効果が小さくて多量に使用する必要があり、及び/又は機械的性質及び/又は加工性に悪影響を与える。ときどき使用される充填剤には、メラミンやメラミンシアヌレート、ポリリン酸アンモニウム、発泡性グラファイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホウ酸亜塩、ケイ酸塩、シリコーン、ガラス繊維、ガラスバルブ、アスベスト、カオリン、マイカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウムがあげられ、また酸化亜鉛や水酸化マグネシウム、アルミニウム三水和物、シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどの金属の酸化物や水和物、水酸化物があげられる。
【0009】
JP−A2004−075729には、ジホスフィンモノオキシドとジオキシドのポリマー用難燃剤としての利用が開示されている。適用可能なポリマーの長いリスト中に熱硬化性ポリウレタンが含まれているが、具体例は示されていない。
【0010】
US3,957,720には、ポリアミドやポリエステル、ポリオレフィン用の難燃剤として、環状配位子をもつジホスフィンジスルフィドが開示されている。この文書から、これらの化合物の他の特定のポリマー用の難燃剤としての適性についての結論を得ることはできない。
【0011】
US5,436,280には、ビニルポリマー重合時の連鎖移動剤としてのジホスフィンオキシドとスルフイドが開示されている。難燃特性についての言及があるが、最終のポリマーはジホスフィンをまったく含んでいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】JP−A2004−075729
【特許文献2】US3,957,720
【特許文献3】US5,436,280
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Journal of Fire Sciences 24, 345−364, 2006
【非特許文献2】Journal of Fire Sciences 22, 251−264, 2004
【非特許文献3】Polymer International 54, 11−35, 2005
【非特許文献4】Polymer International 54, 981−998, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、PU中で利用可能で、効果的かつ経済的で、既知の系の欠点を示さないハロゲンフリー難燃剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
特定のジホスフィン誘導体をPUに用いると優れた難燃特性を示すことが明らかとなった。
【0016】
本発明の一つの側面では、少なくとも一種の式(I)のジホスフィン:
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、
Xは、SまたはOであり;
nは、0または1であり;
1とR2とR3とR4は、独立して、C1−C10−アルキル、C1−C10−ヒドロキシアルキル、C1−C10−アルコキシ、C1−C10−ヒドロキシアルコキシ、C3−C10−シクロアルキル、C3−C10−シクロアルコキシ、C6−C10−アリール、C6−C10−アリールオキシ、C6−C10−アリール−C1−C4−アルキル、C6−C10−アリール−C1−C4−アルコキシ、C6−C10−ヒドロキシ−アリール、C6−C10−ヒドロキシ−アリールオキシ、C1−C10−チオアルキル、C6−C10−チオアリール、C1−C4−チオアルキル−C6−C10−アリール、NR56、COR2、COOR5またはCONR56であり;
5とR6は、H、C1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、C6−C10−アリールまたはC6−C10−アリール−C1−C4−アルキルである)
のポリウレタン材料中での難燃剤としての利用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の他の側面では、ポリウレタン材料の難燃性を増加させる方法であって、上記の少なくとも一種の式(I)のジホスフィン化合物をポリウレタン材料に添加する工程を含む方法が提供される。
【0020】
本発明のさらに他の側面では、
a)ポリウレタン成分と
b)少なくとも一種の式(I)のジホスフィン化合物とを含むポリウレタン材料が提供される。
【0021】
下の実施例の部に示されるように、本発明のポリウレタン材料は、ハロゲン化物質を使用しなくても優れた難燃性を示す。これらのジホスフィン添加物は、ポリウレタン材料の機械的および物理的性質に悪影響を与えない。これらは高沸点または高分解温度を有し、このためポリウレタン材料から揮散しにくく、ポリマーの分解温度でも難燃性を示す。また、本発明のジホスフィンは、重合反応、また発泡成形プロセスを妨害せず、したがって好ましくは、この段階に加えると、最終製品中に均一分布させることができる。
【0022】
本明細書において、「難燃剤」は、それを含む基材の可燃性を低下させる物質をいうものとする。これらは、燃焼の初期に、難燃材料の熱応力による分解に対する抵抗性を増加させ、及び/又は発火源の難燃材料への拡大を抑えて燃焼拡大を防止、遅延、または阻害する。
【0023】
本発明のジホスフィン化合物(I)は、式(II)〜(IV)のジホスフィン、またはこれらの化合物の2種以上の混合物である。
【0024】
【化2】

【0025】
式中、記号は上記の意味を持つ。
【0026】
ある好ましい実施様態において、このジホスフィンは、(III)と(IV)の群の化合物から選ばれ、群(IV)の化合物が特に好ましい。
【0027】
好ましくは、式(I)中の記号と添字は、以下の意味をもつ:
Xは、好ましくはSまたはOである。
nは、好ましくは1である。
1とR2とR3とR4は、好ましくは独立して、C1−C10−アルキル、C1−C10−ヒドロキシアルキル;C1−C10−アルコキシ、C1−C10−ヒドロキシアルコキシ;C3−C10−シクロアルキル、C3−C10−シクロアルコキシ、C6−C10−アリール、C6−C10−アリールオキシ、C6−C10−アリール−C1−C4−アルキル、C6−C10−アリール−C1−C4−アルコキシ、C6−C10−ヒドロキシ−アリール、C6−C10−ヒドロキシ−アリールオキシ、C1−C10−チオアルキル、C6−C10−チオアリールまたはC1−C4−チオアルキル−C6−C10−アリールである。
【0028】
式(I)のジホスフィンが好ましい。なお、すべての記号と添字は上記の好ましい意味をもつ。
【0029】
より好ましくは、(I)中の記号と添字が以下の意味をもつ:
Xは、より好ましくはSまたはOである。
nは、より好ましくは1である。
1とR2は、より好ましくは、同一であって、C1−C10−アルキル、C6−C10−アリール、C1−C10−アルコキシまたはC6−C10−アリールオキシである。
3とR4は、より好ましくは、同一であって、C1−C10−アルキル、C6−C10−アリール、C1−C10−アルコキシまたはC6−C10−アリールオキシである。
【0030】
より好ましくは、式(I)の化合物であり、式中、すべての記号と添字が、より好ましい意味をもっている。
【0031】
特に好ましくは、式(I)中の記号と添字が以下の意味を持つ:
Xは、特に好ましいSまたはOである。
nは、特に好ましくは1である。
1とR2は、特に好ましくは、同一であって、C6−C10−アリールである。
3とR4は、特に好ましくは、C6−C10−アリールまたはC1−C10−アルコキシである。
【0032】
式(I)の化合物が特に好ましい。なお、すべての記号と添字は特に好ましい意味をもつ。
【0033】
また、特に好ましいのは、以下の化合物である。
【0034】
【化3】

【0035】
さらに好ましい式(I)の化合物は、R1=R2で、R3=R4のものである。
【0036】
さらに好ましい式(I)の化合物は、R1=R2=R3=R4であるものである。
【0037】
さらに好ましい式(I)の化合物は、R1とR2とR3とR4がC6−C10−アリールであり、好ましくはフェニルまたはパラ−メチルフェニルなどのアルキル置換フェニルであるものである。
【0038】
さらに好ましい式(I)の化合物は、室温で(20〜25℃)で液体である。
【0039】
さらに好ましいのは、ポリウレタンのポリオール成分またはイソシアネート成分に可溶な、より好ましくはポリオール成分に可溶な式(I)の化合物である。
【0040】
さらに好ましいのは、R1とR2またはR3とR4またはR1とR2とR3とR4が、C1−C10−ヒドロキシアルキルまたはC1−C10−ヒドロキシアルコキシ、好ましくはC2−C4−ヒドロキシアルコキシである式(I)の化合物である。R1とR2またはR3とR4が、C1−C10−ヒドロキシアルコキシ、好ましくはC2−C4−ヒドロキシアルコキシである化合物が特に好ましい。
【0041】
本発明の用語中で、C1−C4−アルキルは、1〜4個の炭素原子をもつ分岐状または直鎖状の飽和炭化水素基をさす。その例としては、メチルやエチル、プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、ブチル、1−メチルプロピル(sec−ブチル)、2−メチルプロピル(イソブチル)、1,1−ジメチルエチル(tert−ブチル)があげられる。
【0042】
1−C6−アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する分岐状または直鎖状の飽和炭化水素基をさす。その例としては、C1−C4−アルキルとしてあげたものに加えて、ペンチルや1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルがあげられる。
【0043】
1−C8−アルキルは、1〜8個の炭素原子を有する分岐状または直鎖状の飽和炭化水素基をさす。その例としては、上のC1−C6−アルキルにあげたものに加えて、
ヘプチルやオクチル、2−エチルヘキシル、またこれらの位置異性体があげられる。
【0044】
1−C10−アルキルは、1〜10個の炭素原子を有する分岐状または直鎖状の飽和炭化水素基をさす。したがって、例としては、C1−C8−アルキルに挙げたものに加えて、ノニルやデシル、またその位置異性体があげられる。
【0045】
アルコキシは、n〜m個の炭素原子を持つ、例えば1〜10、特に1〜8または1〜6または1〜4の炭素原子をもつ直鎖または分岐状のアルキル基で、そのアルキル基のいずれかの原子上にある酸素結合で結合しているものをいう。C1−C4−アルコキシは、酸素原子を経由して直鎖又は分岐鎖のC1−C4−アルキル基が結合しているものであり、例えばメトキシやエトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシである。C1−C6−アルコキシは、酸素原子を経由して直鎖又は分岐鎖のC1−C6−アルキル基が結合しているものである。例としては、C1−C4−アルキルに対するもの加えて、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、これらの位置異性体があげられる。C1−C8−アルコキシは、酸素原子を経由して直鎖又は分岐鎖のC1−C8−アルキル基が結合しているものである。例としては、C1−C6−アルキルに対するもの加えて、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、これらの位置異性体があげられる。C1−C10−アルコキシは、酸素原子を経由して直鎖又は分岐鎖のC1−C10−アルキル基が結合しているものである。例としては、C1−C8−アルキルに対するもの加えて、ノニルオキシ、デシロキシ、これらの位置異性体があげられる。
【0046】
1−C4−アルキルチオは、硫黄原子を経由して直鎖又は分岐鎖のC1−C4−アルキル基が結合しているものであり、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、1−メチルエチルチオ(イソプロピルチオ)、ブチルチオ、1−メチルプロピルチオ(sec−ブチルチオ)、2−メチルプロピルチオ(イソブチルチオ)、1,1−ジメチルエチルチオ(tert−ブチルチオ)があげられる。
【0047】
5−C6−シクロアルキルは、単環式の五員または六員の飽和脂環式基、例えばシクロペンチルやシクロヘキシルをさす。C3−C6−シクロアルキルは、単環式の三員〜六員の飽和脂環式基、例えばシクロプロピルやシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルをさす。C3−C8−シクロアルキルは、単環式の三員〜八員の飽和脂環式基をさす。例としては、上にC3−C6−シクロアルキルとして挙げたものに加えて、シクロヘプチルやシクロオクチルがあげられる。C3−C10−シクロアルキルは、単環式の三員〜十員の飽和脂環式基をさす。例としては、上にC3−C8−シクロアルキルとして挙げたものに加えて、シクロノニルやシクロデシルがあげられる。
【0048】
シクロアルコキシは、酸素原子を経由して結合している上記の単環式飽和脂環式基をさす。例としては、シクロプロピルオキシやシクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ、シクロノニルオキシ、シクロデシルオキシがあげられる。
【0049】
6−C10−アリールは、フェニルまたはナフチルをさす。このアリール基は、無置換であっても、1〜3個の置換基を有していてもよい。適当な置換基としては、ヒドロキシ、NO2、C1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、フェニル、ナフチル、NRab、CORa、COORa、CONRabがあげられる。なお、RaとRbは、それぞれ独立して、HとC1−C4−アルキルから選ばれる。好ましくは、アリールは、無置換フェニルかメチルフェニルである。
6−C10−アリールオキシは、酸素原子を経由して結合した上に定義したC6−C10−アリールである。一つの例がフェノキシである。
6−C10−アリールチオは、硫黄原子を経由して結合した上記定義のC6−C10−アリールである。一つの例がフェニルチオである。
6−C10−アリール−C1−C4−アルキルは、C1−C4−アルキレン結合を経由して結合した上記定義のC6−C10−アリールである。例としては、ベンジルと2−フェニルエチルがあげられる。
6−C10−アリール−C1−C4−アルコキシは、C1−C4−アルコキシ基を経由して結合したC6−C10−アリールである。一つの例がベンジルオキシである。
1−C10−ヒドロキシアルキルは、上に定義のC1−C10−アルキルで、一個の水素原子、好ましくはω−炭素原子上の水素原子が、ヒドロキシル基で置き換えられたものである。一つの例がヒドロキシメチル基である。
1−C10−ヒドロキシアルコキシは、上に定義のC1−C10−アルコキシで、一個の水素原子、好ましくはω−炭素原子上の水素原子がヒドロキシル基で置き換えられたものである。一つの例が2−ヒドロキシエトキシ基である。
【0050】
本発明の式(I)〜(IV)の化合物の利用に関して、上記の実施様態が好ましく、いずれの場合も単独の実施様態であっても、相互の組み合わせであってもよい。
【0051】
好ましい実施様態においては、Rは、それぞれ独立して、C1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキルまたはC6−C10−アリールである。より好ましくは、Rは、それぞれ独立して、C1−C6−アルキル、C5−C6−シクロアルキルまたはC6−C10−アリールである。さらに好ましくは、Rは、それぞれ独立して、C1−C4−アルキルまたはフェニルである。C6−C10−アリールは無置換であることが好ましい。すなわち、これは、無置換フェニルまたは無置換ナフチルである。
【0052】
式(I)の化合物は、既知のテトラフェニルジホスフィンモノオキシドの製造方法により、例えばJ. Chem. Soc. 1965, 3500; Zh. Obshch. Khim. 1979,49,2418により生産可能である。なお、本文献の内容を引用として本明細書に組み込む。好適な方法は、例えばジアリールハロゲノホスフィンを、次式のジアリールアルコキシホスフィンと反応させることである。
【0053】
【化4】

【0054】
式中、Rはアルキル基である。この反応は、一般的には適当な溶媒中で行われるか、無溶媒で行われる。適当な溶媒は、ジエチルエーテルやジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tertブチルエーテルなどの非環式エーテルや、テトラヒドロフランや1,4−ジオキサンなどの環状エーテル、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの非プロトン性芳香族溶媒である。過剰の液体ジアリールアルコキシホスフィンの存在下でこの製品を製造することが好ましい。ジアリールハロゲノホスフィンとジアリールアルコキシホスフィンは、モル比が0.5:1〜1:5で、より好ましくは0.8:1〜1:3、さらに好ましくは0.9:1〜1:2.6で用いられることが好ましい。反応温度は、好ましくは0〜150℃または20〜130℃である。反応の終了後、反応混合物は、通常用いる溶媒と未反応の出発原料から、例えば濾過と溶媒の蒸発により分離される。得られる生成物はそのまま使用しても、さらに精製してもよい。精製は、既知の方法で、例えば非溶媒での残渣の洗浄または消化、あるいは再結晶で行うことができるが、後者が好ましい。再結晶は、適当な溶媒中で、一般的には高温で、例えばこの混合物の沸点で行われる。適当な溶媒は、空気の非存在下で非プロトン性あるいはプロトン性である。例としては、ベンゼン、トルエンまたはキシレンなどの芳香族溶媒、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンなどの脂環式溶媒、酢酸エチル、プロピオン酸エチルまたは酢酸プロピルなどのカルボン酸誘導体、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水またはこれらの混合物があげられる。芳香族溶媒、具体的にはトルエンの使用が好ましい。
【0055】
本発明のある好ましい実施様態において、式(I)の化合物が難燃剤として用いられる。
【0056】
さらに好ましい実施様態においては、2種以上の、好ましくは二種の(I)の化合物が難燃剤として用いられる。
【0057】
式(I)のジホスフィン化合物を、さらに一種以上の他の既存の難燃剤と組み合わせて用いてもよい。
【0058】
さらに好ましい実施様態においては、少なくとも一種のジホスフィン(I)と一種以上の、好ましくは一種または二種の構造的に異なる難燃剤、例えば有機リン酸化合物の混合物が、難燃剤として用いられる。
【0059】
一般的には、1〜35重量部、好ましくは1〜25、より好ましくは2〜15、特に5〜15重量部(100重量部のポリウレタン成分に対して)が用いられる。
【0060】
ある好ましい混合物中では、ジホスフィンと構造的に異なる難燃剤の重量比は、好ましくは10:1〜1:10であり、より好ましくは5:1〜1:5である。
【0061】
好ましい既存の難燃剤は、2、4、12、13、14、15族の(半)金属の水酸化物、酸化物、酸化物水和物や窒素系難燃剤、リン系難燃剤である。
【0062】
2、4、12、13、14、15族の(半)金属の水酸化物や酸化物、酸化物水和物の例としては、酸化または水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、アルミニウム三水和物、シリカ、酸化スズ、酸化アンチモン(III及びIV)、酸化アンチモン水和物、酸化チタン、酸化亜鉛または亜鉛酸化物水和物があげられる。
【0063】
窒素系難燃剤の例としては、メラミンや尿素、メラミン系及び尿素系樹脂、メラミンシアヌル酸塩、メラミンほう酸塩があげられる。
【0064】
リン系難燃剤の例としては、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステル、特にトリフェニルホスフェートやトリベンジルホスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリ−(ジメチルフェニル)ホスフェート、ベンジルジメチルホスフェート、ジ−(ジメチルフェニル)フェニルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート(DPK)、レゾルシノール−ビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、レゾルシノール−ビス−[ジ−(2,6−ジメチルフェニル)−ホスフェート](PX−200)、アルミニウムジエチルホスフィネート(エキソリット(登録商標)OP1230)などのトリアリールホスフェートや、トリス(2−クロロイソプロピル)ホスフェート(ルプラゲン(登録商標)TCPP)、トリエチルホスフェート(TEP)などの脂肪族ホスフェート、US2004/0249022に記載の化合物のようなビスフェノール由来のポリホスフェートなどの芳香族ポリホスフェート、ジメチル−メチルホスホネートジエチル−エチルホスホネート(DEEP)やホスホン酸(2−((ヒドロキシメチル)カルバミル)エチル)ジメチルエステルなどのホスホン酸エステル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO)などの多環式リン含有化合物、ホスフィット、ホスフィナイトがあげられる。
【0065】
ある好ましい実施様態においては、式(I)のジホスフィン化合物が、ハロゲン系の難燃剤から選ばれる他の難燃剤と共に使用されない。ある実施様態においては、式(I)のジホスフィン化合物が、他の難燃剤と共に使用されない。
【0066】
さらに他の好ましい実施様態においては、本発明のジホスフィンが、一種以上の他の難燃剤及び/又は一種以上のシナージストと共に用いられる。シナージストは、適当な難燃剤の効果を増強する、しばしば添加量以上に(相乗的に)増強する化合物である。本発明のジホスフィンと好ましく組み合わせることのできるシナージストは、2、4、12、13、14、15族の(半)の水酸化物、酸化物、酸化物水和物(例えば、酸化マグネシウムまたは水酸化物マグネシウム、酸化アルミニウム、アルミニウム三水和物、シリカ、酸化スズ、酸化アンチモン(III及びIV)とアンチモン酸化物水和物、酸化チタン、酸化亜鉛または亜鉛酸化物水和物)、他の亜鉛化合物(例えば、ホウ酸亜塩、亜鉛錫酸鉛または硫化亜鉛)や、窒素系難燃剤(例えば、メラミンと尿素、メラミン系および尿素系樹脂類、メラミンシアヌレート、メラミンボレート、メラミンホスフェート、メラミンポリホスフェートまたはメラミンピロリン酸)、リン系難燃剤(例えば、アルミニウムジエチルホスフィネート(エキソリット(登録商標)OP1230などのホスフィネート金属塩)、レゾルシノール−ビス[ジフェニルホスフェート]、レゾルシノール−ビス[ジ−(2,6−ジメチルフェニル)−ホスフェート](PX−200)、またはトリス(2−クロロイソプロピル)ホスフェート(ルプラゲン(登録商標)TCPP)などのリン酸塩、ジメチル−メチルホスホネートなどのホスホン酸エステル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO)多環のリン−含有化合物、またはこれらの誘導体)から選ばれる。他のシナージストは、フェノールノボラック属の材料で、例えばフェノール−ホルムアルデヒド縮合反応から得られるものである。元素状硫黄や、チオエーテルやチオホスフェート、ジフェニルジスルフィドなどの有機ジスルフィド等の含硫物質も、他の難燃剤及び/又はシナージストとして使用できる。好ましいシナージストは、無機または有機リン酸化合物である。
【0067】
上述の水酸化物や酸化物、酸化物水和物は、通常熱可塑性PUに関わるアンチドリップ特性を有する。アンチドリップ剤の他の例は、ポリテトラフルオロエチレンである。
本明細書中で用いられる「ポリウレタン材料」は、(a)ポリウレタン成分と、(b)一種以上の式(I)のジホスフィン化合物と、必要なら一種以上の他の難燃剤化合物及び/又は一種以上のシナージストを含む難燃剤を含み、必要ならさらに(c)一種以上の非ポリウレタンポリマーと、さらに(d)一種以上の難燃剤ではない添加物を含む。
【0068】
本明細書中で用いられる「ポリウレタン成分」は、一種以上のポリウレタンを意味する。本明細書中で用いられる「ポリウレタン」は、ポリウレタンとポリイソシアヌレートを含む。
【0069】
好適なポリイソシアネート重付加生成物(ポリウレタン)は、例えば、発泡ポリウレタンである。これらのポリマーは公知であり、その製造法は広く記載されている。これらは、通常、二官能性の、あるいはさらに多官能性のイソシアネートまたは対応するイソシアネート類似体を、イソシアネート反応性化合物と反応させて製造される。この製造は、典型的な方法で行われ、例えばワンショト法またはプレポリマー法で、開放金型または閉鎖金型中で、反応押出機中またはベルト装置上で行われる。ある特定の製造プロセスは反応射出成型プロセスであり、これは、多孔性または緻密な中心部と、高緻密で非多孔性の表面とをもつポリウレタンの製造に好ましく用いられる。ジホスフィン化合物(I)は、これらすべてのプロセスに好適である。
【0070】
ポリウレタンは、一般的には少なくとも一種のポリイソシアネートと少なくとも一種のイソシアネート反応性基を分子あたり少なくとも2個持っている化合物とから合成される。適当なポリイソシアネートは、好ましくは2〜5個のNCO基をもつ。イソシアネート反応性基は、ヒドロキシ、メルカプト、第一級と第二級アミノ基から選ばれることが好ましい。この中には、二価オイルオールまたはさらに多価のポリオールが含まれることが好ましい。
【0071】
好適なポリイソシアネートは、脂肪族イソシアネートや、脂環式、芳香脂肪族、芳香族イソシアネートである。好適な芳香族ジイソシアネートは、例えば、ジフェニルメタン2.2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、3,3’−ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネートである。脂肪族および脂環式ジイソシアネートには、例えば、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、1−メチル−2,4−及び/又は2,6−シクロヘキサンジイソシアナト及び/又はジシクロヘキシルメタン4,4’−、2,4−及び/又は2,2’−ジイソシアネートが含まれる。より多官能性のイソシアネートの例としては、高分子状MDIや、モノマー状MDIと高分子状MDIの混合物(いわゆる粗製MDIまたはルプラネートM50などの市販の混合物)、トリフェニルメタン4,4,4”−トリイソシアネートなどのトリイソシアネート、また上記のジイソシアネートのイソシアヌレート、カルボジイミド、アロファネート、及び/又はウレトジオン、またジイソシアネートの水との部分的反応で得られるオリゴマー(例えば、上記のジイソシアネートのビウレット)や、半封鎖ジイソシアネートと平均して2個を超える、好ましくは3個以上のヒドロキシル基をもつポリオールの標的反応で得られるオリゴマーがあげられる。好適なポリイソシアネートには、プレポリマーも含まれ、これは、ジ−及び/又はポリイソシアネートと二官能性及び/又は多官能性のNCO反応性の化合物(例えば、ポリオール)との反応により、過剰のNCO基が存在し、例えば主鎖内にウレタン結合をもち、主鎖末端にNCO基をもつオリゴマーを含む生成物が得られるようにして製造される。
【0072】
この点で、硬質ポリウレタンフォーム用に用いられるポリオール成分(適当なら、イソシアヌレート構造を有していてもよい)は、多価ポリオールであり、特に多価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンアルコール、ペンタエリスリトールアルコール、糖アルコール及び/又はサッカリドを出発分子とするポリエーテルポリオールである。他のポリオールとして、低官能性ポリオールを使用することもできる。多くの場合には、ポリエステルオールも使用される。軟質ポリウレタンフォームまたはRIM材料などの軟質ポリイソシアネート重付加生成物の製造に好ましいポリオールは、グリセロール及び/又はトリメチロールプロパン及び/又はグリコールを出発分子とする二官能性〜三官能性ポリエーテルポリオールと、グリセロール及び/又はトリメチロールプロパン及び/又はグリコールをエステル化用アルコールとする二官能性〜三官能性ポリエーテルポリオールである。より多官能性のポリオールや官能基数が1.5〜2の間のポリオールを、他のポリオールとして使用してもよい。熱可塑性ポリウレタンは、通常、主に二官能性ポリエステルポリアルコール及び/又は平均官能基数が好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.9〜2.1であるポリエーテルポリアルコールから製造される。
【0073】
このためポリエーテルポリオールの製造は、既知の技術で行われる。ポリオールの製造に好適なアルキレンオキシドの例としては、プロピレン1,3−オキシド、ブチレン1,2−及び/又は2,3−オキシド、スチレンオキシドがあげられ、エチレンオキシドとプロピレン1,2−オキシドが好ましい。これらのアルキレンオキシドは、単独で用いても、交互に連続して使用しても、混合物として用いてもよい。特定のポリオールは、アルコキシル化プロセスの最後にエチレンオキシドでアルコキシル化してもよく、このため第一級ヒドロキシル基をもっていてもよい。ポリオールは、アミンまたはアミノアルコールの、アルコキシル化で得ることもできる。特に、エタノールアミンまたはトリエタノールアミンなどのアミノアルコールのアルコキシル化、トルエンジアミンなどの芳香族アミンのアルコキシル化、またはエチレンジアミンなどの脂肪族アミンのアルコキシル化で得られるポリオールが好ましい。他の好適なポリエーテルオールは、ポリテトラヒドロフランとポリオキシ−メチレンである。これらのポリエーテルポリオールの官能基数は、好ましくは2〜8、特に2〜5であり、その分子量は100〜15000、好ましくは200〜8000である。
【0074】
好適なポリエステルポリオールは、例えば2〜12個の炭素原子を持つ有機ジカルボン酸、好ましくは4〜8個の炭素原子をもつジカルボン酸(例えば、フタル酸またはテレフタル酸などの芳香族二酸やアジピン酸、コハク酸またはセバシン酸などの脂肪族二酸)と、2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子をもつ多価アルコール、好ましくはジオールとから製造できる。これらのポリエステルポリオールの官能基数は、好ましくは2〜5であり、特に1.8〜3であり、その分子量は250〜8000、好ましくは300〜4000、特に300〜3000である。
【0075】
このポリオール成分が、さらにジオールまたはさらに多価のアルコールを含んでいてもよい。好適なジオールは、好ましくは2〜25個の炭素原子を有するグリコールである。これらには、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,5−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,6−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)または1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールC)が含まれる。好適なより多価のアルコールは、例えば、三価アルコール(トリオール)、四価アルコール(テトロール)及び/又は五価アルコール(ペントール)である。これらは、一般的には3〜25個の、好ましくは3〜18個の炭素原子をもっている。これらには、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、およびこれらのアルコキシ化物が含まれる。
【0076】
ポリマーで変性されたポリオール類、好ましくはグラフトポリオールを、例えばスチレン系及び/又はアクリロニトリル系のものを、ポリオールとして使用することもできる。ドイツ特許DE1111394とDE1222669、DE1152536、DE1152537に記載のように、このようなグラフトポリオールは、いずれかの支持体ポリオール中でのスチレン、アクリロニトリルまたは好ましくは両方の混合物の現場重合で製造可能である。
【0077】
機械的性質、例えば硬度を変更するために、鎖延長剤や架橋剤、停止剤を、あるいは適当ならこれらの混合物を加えることが望ましい。鎖延長剤及び/又は架橋剤の分子量は、通常40〜300である。好適な例には、2〜14個の、好ましくは2〜10個の炭素原子をもつ脂肪族、脂環式及び/又は芳香脂肪族ジオールが含まれ、具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,10−デカンジオール−、1,2−、1,3−、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール(好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、andビス(2−ヒドロキシエチル)ヒドロキノン)が含まれ、また1,2,4−、1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミンなどのトリオールや、エチレンオキシド系及び/又はプロピレン1,2−オキシド系の低分子量ヒドロキシル含有ポリアルキレンオキシド、上記の出発分子として説明したジオール及び/又はトリオールがあげられる。好適な停止剤には、例えば単官能性アルコールや二級アミンがあげられる。
【0078】
反応性を増加させるため、末端アミン構造体を、単独であるいはポリオールと組み合わせて使用できる。このような化合物には、メチレンジフェニルジアミン(MDA)やテトラエチルトルエンジアミン(TETDA)などの芳香族ポリアミンや、ポリメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、ポリエーテルポリアミンが含まれる。
【0079】
ある好ましい実施様態においては、このポリウレタン成分が、硬質発泡体、具体的にはPU硬質発泡体またはPIR(ポリイソシアヌレート)硬質発泡体である。PIR硬質発泡体は、通常一定量のウレタン基を含む材料である。これには、イソシアヌレート基よりウレタン基を多量にもつ材料も含まれる。
【0080】
難燃性硬質発泡体は、絶縁ボード中で、現場噴射発泡体として、剛直面(例えば、金属シート)または柔軟面(例えば、アルミニウム箔)をもつサンドイッチパネル中で用いることが好ましい。
【0081】
他の好ましい実施様態においては、このポリウレタン成分が軟質発泡体である。この軟質発泡体は、成型発泡体であっても、または好ましくはスラブ発泡体であってもよい。これらのスラブ発泡体は、既存の発泡体であっても、高耐久性スラブ発泡体であってもよい。難燃性軟質発泡体は、家具や、寝具(例えば、マットレスや枕)、シート用途(例えば、自動車シート)に用いることが好ましい。
【0082】
さらに好ましい実施様態においては、このポリウレタン成分が熱可塑性エラストマー(TPU)である。このTPUは、押出成型物であっても射出成型物であってもよい。難燃性TPUは、ケーブルの外被材料や被覆材料、ホース、箔、靴底、塗料、接着剤、封止用中で使用されることが好ましい。
【0083】
このポリウレタン成分は、必要ならいろいろな既存の添加物を含んでいてもよい。
【0084】
好適な既存の添加物には、例えば、触媒や酸化防止剤、スコーチ防止剤、UV吸収剤/光安定剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、強化剤、充填材、防曇剤、殺菌剤、潤滑剤、乳化剤、界面活性剤、気泡安定剤、気泡形成剤、消泡剤、着色剤、顔料、流動性添加剤、離型剤、粘着性付与剤、流動制御剤、光増白剤、発泡剤、煙抑制剤、核剤、可塑剤が含まれる。
【0085】
発泡ポリウレタン材料が望ましい場合、熱硬化性ポリウレタンのポリウレタン反応の間に発泡剤を投入する。発泡剤は、化学発泡剤であっても物理発泡剤であってもよい。これらは、前もってポリウレタン原料に加えられるか、ポリオールとイソシアネートの混合領域に別個の供給液として送られる。発泡熱可塑性ポリウレタンを得るために、ポリウレタン反応の反応前、反応中、または反応後に発泡剤を入れてもよい。
【0086】
好適な発泡剤は、水または有機カルボン酸、特にギ酸などの化学発泡剤である。いずれの低沸点化学物質を物理発泡剤として用いてもよい。典型的な物理発泡剤は、二酸化炭素、低沸点炭化水素、tert−ブタノールなどの低分子量単官能性アルコール、ジメチルアセタールなどのアセタール、メチルホルメートなどのエステル、完全または部分ハロゲン化炭化水素である。好ましい炭化水素は、最大で12個の炭素を持つ低沸点の環状または非環状の飽和炭化水素であり、特にシクロペンタンやn−ペンタンなどのペンタンである。好ましいハロゲン化炭化水素は、ジクロロフルオロエタン(141b)などの部分的に塩素化およびフッ素化された炭化水素や、テトラフルオロエタン(134a)やペンタフルオロプロパン(245fa)、ペンタフルオロブタン(365mfc)、ヘキサフルオロブタン(356mmf)、ヘプタフルオロプロパン(227ea)などの部分フッ素化炭化水素などである。また、テトラフルオロプロペンなどの不飽和ハロゲン化炭化水素も発泡剤として使用可能である。
【0087】
他の種類の発泡剤は、アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)などの(熱)分解でガス状生成物を放出する物質である。
【0088】
上記の発泡剤のうちの一種のみを用いてもよいし、少なくとも二種の所望数の混合物を用いてもよい。
【0089】
触媒として、イソシアネートとイソシアネート反応性化合物との反応を、またイソシアネート間の反応を加速させるいずれの化学化合物を使用することができる。触媒としては、ウレタン反応、尿素反応、イソシアヌレート反応を加速させる化合物が好ましい。
【0090】
好ましいのは、アミン(特に、第三級アミン)、スズとビスマス化合物、金属カルボキシレート、第四級アンモニウム塩、s−ヘキサヒドロトリアジン、トリス−(ジアルキルアミノメチル)−フェノールである。
【0091】
典型的な触媒は、有機金属化合物であり、好ましくは有機カルボン酸のスズ(II)塩などのスズ化合物(例えば、酢酸スズ(II))や有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩(例えば、ジブチル−スズ(IV)ジラウレート)である。触媒として用いられる有機アミンは、2,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジンまたは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エンなどのアミジンや、トリアルキルアミン、N−アルキルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルポリメチレンジアミン、ペンタメチル−ジ(ポリメチレン)トリアミン、テトラメチル−ジアミノアルキルエーテル、N,N’−ジアルキルピペラジン、N−アルキル−イミダゾールなどの第三級アミン、1,4−ジアザ−ビシクロ(2,2,2)オクタン(DABCOまたはトリエチレンジアミン)などのビシクロアミンやジアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンなどのアルカノールアミンである。
【0092】
他の触媒として、トリス(ジアルキルアミノアルキル)s−ヘキサヒドロトリアジン、テトラアルキルアンモニウムまたはアルカリ水酸化物、アルコラート、脂肪酸アルカリ塩などのカルボキシレートを用いてもよい。
【0093】
ポリウレタンの製造前、製造中、あるいは製造後に、式(I)の化合物を(また任意の他の難燃剤、シナージスト及び/又は添加物とともに)、ポリウレタン材料に投入してもよい。
【0094】
この熱硬化ポリウレタンは、ポリオール成分をイソシアネート成分と反応させて製造される。一般に、ポリオール成分またはイソシアネート成分の前に、好ましくはポリオール成分の前に、式(I)の化合物と任意の他の成分を添加することができる。もう一つの実施様態においては、ポリオールとイソシアネートの混合領域に、式(I)の化合物を別個の供給液とし直接添加してもよい。
【0095】
熱可塑性ポリウレタンの場合、式(I)の化合物を、ポリウレタン反応の前にポリオール成分またはイソシアネート成分に添加でき、あるいはポリウレタン反応中に押出機に、またはポリウレタン反応後に本発明で用いる混合装置に添加することができる。顆粒、粉末、ペレットまたは粉砕物状のポリウレタン成分を、次いで例えば150〜260℃の温度で溶融させる。これらのポリウレタン成分と式(I)の化合物といずれか他の任意の添加物は、冷たいままで混合でき、この混合物をその後溶融させて均一とすることができる。適当な温度は、通常150〜260℃の範囲である。
【0096】
式(I)の化合物をポリウレタン材料の上に噴霧することもできる。噴霧塗布には、その化合物自体が使用でき、あるいはその化合物の適当な溶媒中の溶液を使用できる。
【0097】
式(I)の化合物と、必要なら他の添加物は、ポリウレタン中にこれらの成分を、例えば濃縮物の総重量に対して約1%〜約40%の濃度で、例えば約2%〜約20重量%で含むマスターバッチ(濃縮物)の形で熱可塑性ポリウレタンに添加することもできる。このマスターバッチは、添加物が添加されるポリウレタンと同じ構造である必要はない。このような操作において、このマスターバッチは、粉末、顆粒、溶液、懸濁液の形であってもよく、ラテックス状であってもよい。
【0098】
式(I)の化合物は、式(I)の化合物がカプセルの芯を形成して適当な被覆材で覆われた被覆カプセルの形でポリマー成分に添加できる。好適な被覆材は、酸素や水分で誘起される有害作用から本発明のジホスフィンを守り、適当な塗膜を与えるものである。好適な被覆材は、上にアンチドリップ剤としてあげた充填剤や、本発明のジホスフィン用に適当であるシナージストとしてあげた材料、メラミン樹脂や尿素樹脂、アクリレート樹脂及び/又はPU樹脂などの樹脂である。この被覆材が、難燃作用を与えるように、特に本発明のジホスフィンのシナージストとして働くように、即ちその難燃剤としての有効性を増加させるように選ばれることが好ましい。好ましい被覆材は、(半)金属水酸化物、(半)金属酸化物と(半)金属酸化物水和物であり、具体的には、アルミニウム三水和物(Al(OH)3)、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、シリカ、酸化スズ、酸化スズ水和物、酸化アンチモン(III及びV)、二酸化チタンであり、特にアルミニウム三水和物であり、必要なら他の水酸化物または酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛または水酸化鉛)との組み合わせである。塗布は、US4,210,630に記載の塗布方法と同様に実施でき、例えばアルカリ水酸化物または炭酸アルカリまたは炭酸アルカリ土類などの塩基の存在下で、式(I)の化合物の水懸濁液を、一種以上の上述の水溶性の(半)金属の塩で処理することにより実施できる。得られる(半)金属水酸化物は、分散した式(I)の化合物の粒子上に析出する。この被覆カプセルの平均(メジアン)径は、1μm〜約100μmであることが好ましい。
【0099】
室温で液体であり及び/又はポリオール成分またはイソシアネート成分、好ましくはポリオール成分に可溶であるジホスフィン化合物(I)が、特にこの実施様態に適当である。
【0100】
また、ヒドロキシ価が、好ましくは2または4、特に2である化合物(I)が、本ポリマーに含まれていることが好ましい。
【0101】
式(I)の化合物が、本ポリウレタン成分中に、100重量部のポリウレタン成分に対して1〜35重量部の量で、より好ましくは1〜25重量部、さらに好ましくは2〜15重量部、例えば3〜13重量部または3〜12重量部、特に5〜15重量部、例えば6〜13重量部、あるいは7〜12重量部の量で含まれていることが好ましい。
【0102】
他の側面では、本発明は、材料に少なくとも一種の上記の式(I)の化合物を添加する工程を含むポリウレタン材料の難燃化方法あるいはその可燃性を低下させる方法を提供する。上記の式(I)の化合物の好ましい実施様態と、好適で好ましいポリウレタン成分と任意の添加物は、式(I)〜(V)の化合物と他の任意の添加物をポリウレタン成分発泡体に添加する方法にも適用される。
【0103】
他の側面では、本発明は、
(a)ポリウレタン成分と、
(b)上述の少なくとも一種の式(I)の化合物と必要なら他の難燃剤化合物及び/又はシナージストと、
(c)必要なら一種以上のポリウレタンではない他のポリマーと、
(d)必要なら他の添加物を含むポリウレタン材料を提供する。
【0104】
その場合、成分(b)は、100重量部のポリウレタン成分(a)に対して1〜15重量部の量で含まれていることが好ましい。
【0105】
式(I)の化合物の好ましい実施様態と、適当で好ましいポリウレタン成分と任意の添加物、また本発明のジホスフィン誘導体と他の任意の添加物のポリウレタン材料への添加方法の好ましい実施様態が、同様に適応される。
【0106】
このポリウレタン材料が発泡体の場合、この材料は、式(I)〜(IV)の化合物を、ポリウレタン成分の重量に対して3〜15重量%の量で、より好ましくは6〜15重量%、例えば6〜13重量%または6〜12重量%、特に8〜15重量%、例えば8〜13重量%、または8〜12重量%の量で含んでいることが好ましい。
【0107】
このPU発泡体が一種以上の式(I)の化合物を含んでいる場合、これらの2つ以上の成分は、PU材料の重量に対して好ましくは2〜15重量%の量で含まれ、より好ましくは3〜15重量%、さらに好ましくは6〜15重量%、例えば6〜13重量%または6〜12重量%、特に8〜15重量%、例えば8〜13重量%または8〜12重量%の量で含まれている。
【0108】
さらに他の側面では、本発明は、
(a)ポリウレタンモノマー成分と
(b)少なくとも一種の上記の式(I)の化合物を含む組成物を提供する。
【0109】
式(I)の化合物の好ましい実施様態と任意の添加物についての記述が、ここにも適用される。
【0110】
この重合性モノマーは、少なくとも一種の本発明のジホスフィンに適合するなら、上記ポリウレタン成分について上に述べたモノマーのいずれであってもよい。なお、「適合」とは、ジホスフィンとモノマーの間に、上記組成のモノマーから製造される高分子材料の難燃性能に悪影響を与えるような悪い相互作用がないことを意味する。
【0111】
好ましくは、本発明の組成物は、大気温度(25℃)で液状または固体状である。したがってモノマーは、ポリウレタン材料区分により、あるいは目的用途により、大気温度で液状または固体状となるように選ばれることが好ましい。
【0112】
好適なポリオールと多官能性イソシアネートは、上述のものである。
【0113】
本発明の組成物は、一般的には少なくとも一種式(I)のジホスフィンをモノマーまたはモノマー混合物と混合して製造される。
【0114】
この組成物は、さらに少なくとも一種の上記のポリウレタン材料用の添加物を含んでいてもよい。この組成物はまた、早まった/望まざる重合を起こしやすいモノマーを安定化させるための重合禁止剤を含んでいてもよい。
【0115】
式(I)〜(IV)の成分の難燃特性は、難燃性評価の標準的な方法で決められる。これらには、装置や機器中の部品用のプラスチック材料の燃焼性試験(UL94),第5版,1996年10月29日、限界酸素指数(Limiting Oxygen Index、LOI),(ASTM D−2863)、及び、コーンカリリメトリー(ASTM−E−1354), BKZV, B2, crib 5, California TB 117 Aが含まれる。
【0116】
本発明を以下の実施例をもとに説明するが、これらの実施例により本発明は制限を受けない。
【実施例】
【0117】
ポリオールの官能基数は、平均のポリオール構造当たりの平均のOH基数と定義される。OH価は、次式で定義されるポリオール当たりのOH基の平均質量濃度である。

OH価=56100×ポリオールの官能基数/ポリオールの分子量

指数は、NCO基のモル数/NCO反応性基のモル数×100と定義される。
【0118】
A)低密度の高耐久性(HR)ポリウレタン発泡体
一般的な方法
イソシアネートと金属触媒以外のすべての成分を合わせて攪拌し、次いで金属触媒を攪拌下で添加する。その後、攪拌下で測定量のイソシアネート成分を添加する。この混合物を攪拌して反応を開始させ、次いでプラスチック箔で覆われた金属製の箱に注ぎ入れる。いずれの場合も、バッチの大きさは1800gである。一夜で発泡体形成反応を終了させ、得られた発泡体を所望の大きさに切断した。比較例1と2及び実施例1〜4が、この方法で得られた。
【0119】
出発原料
ポリオール1:ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオール;OH価:35mg−KOH/g;官能基数:2.7
ポリオール2:スチレン−アクリロニトリル系のグラフトポリオール;固体含量:45重量%;ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオール;OH価:20mg−KOH/g;官能基数:2.7
触媒系1:金属触媒とアミン触媒を含む標準的な触媒系
触媒系2:有機酸で部分封鎖したアミン系触媒の組合せ
【0120】
本発明の高耐久性発泡体材料の特性と難燃性を表1に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
1)DIN−EN−ISO845により測定
2)圧縮荷重撓みは、DIN−EN−ISO3386により測定
3) California TB 117A試験(縦燃焼試験。この試験の詳細な説明が、Technical Bulletin 117 of the State of California − Department of Consumer Affairs Bureau of Home Furnishing and Thermal Insulationに見られる。)
4)テゴスタブB8681は、エボニック・ゴールドシュミット社のケイ素系泡安定剤である。
5)オルテゴル204は、エボニック・ゴールドシュミット社の架橋/硬化剤である。
【0123】
これらの結果から、ジホスフィン化合物を含む本発明のハロゲンフリーポリウレタン軟質発泡体が、ハロゲンを含む類似の発泡体と較べて同等以上の優れた防炎効果を示すことがわかる。
【0124】
B)ポリウレタン硬質発泡体
一般的な方法
ポリオールと安定剤と難燃剤と触媒と発泡剤を合わせて攪拌する。次いでイソシアネートを添加し、全体の混合物を発泡させてポリウレタン硬質発泡体とする。いずれの場合も、触媒量を調整して加硫時間を45秒間にする。発泡剤量を調整して密度を一定の45g/lとする。
【0125】
出発原料
ポリオール1:ジメチルテレフタレートとジエチレングリコールのエステル化生成物、OH価=240g−KOH/g
ポリオール2:フタル酸無水物とジエチレングリコールのエステル化生成物、OH価=220mg−KOH/g
ポリオール3:ポリエチレングリコール、OH価=200mg−KOH/g
ポリオール4:プロポキシ化ソルビトール、OH価=490mg−KOH/g
安定剤1:テゴスタブB8462(エボニック・ゴールドシュミット社)
安定剤2:テゴスタブB8467(エボニック・ゴールドシュミット社)
安定剤3:ナイアックスシリコーンL6635(GEシリコーンズ社)
難燃剤1:テトラフェニルジホスフィンモノオキシド
難燃剤2:トリス(2−クロロイソプロピル)ホスフェート(TCPP)
難燃剤3:テトラフェニルジホスフィンジスルフィド
難燃剤4:1,1−ジエトキシ−2,2−ジフェニル−ジホスフィン−1−オキシド−2−スルフイド
発泡剤1:n−ペンタン
発泡剤2:ギ酸(85重量%)
発泡剤3:水:ジプロピレングリコール=3:2
触媒1:ギ酸カリウム(エチレングリコール中36重量%)
触媒2:ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(ジプロピレングリコール中70重量%)
イソシアネート1:ルプラネートM50(BASF社)
【0126】
本発明のポリウレタン硬質発泡体の特性と難燃性を表2に示す。
【0127】
【表2】

【0128】
測定法
密度:発泡体の嵩密度は、DIN53420により、発泡体の質量をその体積で割った商として計算する。
【0129】
タックフリー時間は、攪拌開始時刻と発泡体を棒で触った時にほとんど粘着効果が見られなくなる時刻との間の時間と定義される。タックフリー時間は重合効率の尺度である。
ボルト:成分混合の6分後に、引張圧縮疲労試験装置により、半径が10mmの球状キャップをもつスチールボルトを成型発泡体中に10mm押し込む。これを達成するのに必要な最大の力(N)は、発泡体硬化度の指標となる。発泡体の脆さの指標として、ボルト試験中に発泡体表面に破損領域が認められる時間を測定した。早く破損領域が認められほど、発泡体の脆さが高い。
【0130】
B2試験:DIN4102の燃焼試験において、炎の高さ(mm)を測定する。炎の高さは、15cmを越えてはならない。
BKZ5試験:スイスnorm BKZ/Vによる燃焼試験において、火炎の高さ(cm)を測定する。
【0131】
TGA:熱重量分析は、空気雰囲気(フラッシュガスとして60mlの空気)下で、加熱速度を5K/分として650℃まで加熱して行った。発泡体の残留質量が90%と75%と50%の温度を記録する。より高温での発泡体の質量減少は、防炎発泡体の熱的安定性と酸化安定性が高いことを意味する。
【0132】
表2中の実施例から、本発明のハロゲンフリーポリウレタン硬質発泡体が、ハロゲン含有の類似発泡体と較べて同等以上の優れた防炎性を示すことがわかる。また驚くべきことに、TGA測定での熱安定性と酸化安定性が、比較の発泡体と較べて全測定温度範囲において明らかに高い。また好ましいことに、一般的にはタックフリー状態により早く到達し、硬化が非常に良く、脆さが比較用発泡体と較べて同等以下である。
【0133】
C)熱可塑性ポリウレタン(TPU)
一般的な方法
粒状のTPUと難燃剤とを混合し、押し出して難燃性熱可塑性ポリウレタン粒子を得る。射出成型法で試験板を得る。
【0134】
出発原料
TPU:エラストラン1185A、エラストグラン社製の熱可塑性ポリエーテル系ウレタンエラストマー
難燃剤1:レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)
難燃剤2:メラミンシアヌレート
難燃剤3:テトラフェニルジホスフィンスルフィドオキシド
【0135】
本発明の熱可塑性ポリウレタンの特性と難燃性を表3に示す。
【0136】
【表3】

【0137】
測定法
UL94Vは、装置と器機の部品用のプラスチック材料の可燃性のUL94試験法により燃焼試験である。V0の等級は、残炎時間が<10秒で、燃焼ドリップが無く、クランプへの燃焼が無いことを意味する。
【0138】
LOIは、ISO4589−2:1996による限界酸素指数(limiting oxygen index)である。これは、ある特定の雰囲気中でTPU材料の燃焼を継続するのに必要な最小の酸素濃度である。
【0139】
ショアA強度は、DIN53505により測定するものであり、標準的な押さえの上である力の下でポリウレタン材料中に形成される窪みの深さを記録する。
【0140】
質量減少による摩耗は、DIN−ISO4649−Aにより測定する。
【0141】
引裂強度は、DIN−ISO34−1Bbにより測定する。
【0142】
引張強度と破断伸度と張力値は、DIN53504−S2により測定する。
【0143】
表3中の実施例から、本発明のハロゲンフリー熱可塑性ポリウレタンが、市販の難燃剤を含む熱可塑性ポリウレタンと較べて同等以上の防炎効果を示すことがわかる。また、驚くべきことに、比較用材料と較べてLOI値がさらに改善されている。
【0144】
D)ジホスフィン化合物の安定性
二官能性アルコールと水(96/4重量部)の存在化で攪拌することで、ジホスフィン化合物の加水分解性安定性を測定した。ジホスフィン化合物をこの溶媒混合物に溶解し、この溶液を5分間100℃で攪拌した。冷却後、残留するジホスフィン化合物の比率を分光学的な方法で測定した。表4に、ジホスフィン化合物の残留量を示す結果をまとめる。
【0145】
【表4】

【0146】
これらの結果から、水とアルコールの存在下ではジホスフィンモノオキシドが不安定であることがわかる。驚くべきことに、第二のリンを酸化して硫黄を導入することで、この安定性が大幅に増加する。難燃剤としてポリウレタン材料中に、特にポリウレタン軟質及び硬質発泡体や熱可塑性ポリウレタンエラストマー中にこのジホスフィン化合物を入れることができるほど、安定性が高くなる。
【0147】
上記の燃焼試験の結果と合わせて、これらの結果から、本明細書記載のハロゲンフリーのジホスフィン化合物系難燃剤が、既知のジホスフィンモノオキシド化合物より優れ、性能において市販のハロゲン化難燃剤と同等であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の式(I)のジホスフィン:
【化1】

(式中、
Xは、SまたはOであり;
nは、0または1であり;
1とR2とR3とR4は、独立して、C1−C10−アルキル、C1−C10−ヒドロキシアルキル、C1−C10−アルコキシ、C1−C10−ヒドロキシアルコキシ、C3−C10−シクロアルキル、C3−C10−シクロアルコキシ、C6−C10−アリール、C6−C10−アリールオキシ、C6−C10−アリール−C1−C4−アルキル、C6−C10−アリール−C1−C4−アルコキシ、C6−C10−ヒドロキシ−アリール、C6−C10−ヒドロキシ−アリールオキシ、C1−C10−チオアルキル、C6−C10−チオアリール、C1−C4−チオアルキル−C6−C10−アリール、NR56、COR2、COOR5またはCONR56であり;
5とR6は、H、C1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、C6−C10−アリールまたはC6−C10−アリール−C1−C4−アルキルである)
のポリウレタン材料中での難燃剤としての利用。
【請求項2】
式(I)の記号と添字が以下の意味を持つ:
Xは、SまたはOであり;
nは、1であり;
1とR2とR3とR4は、独立して、C1−C10−アルキル、C1−C10−ヒドロキシアルキル;C1−C10−アルコキシ、C1−C10−ヒドロキシアルコキシ、C3−C10−シクロアルキル、C3−C10−シクロアルコキシ、C6−C10−アリール、C6−C10−アリールオキシ、C6−C10−アリール−C1−C4−アルキルまたはC6−C10−アリール−C1−C4−アルコキシである
請求項1に記載の利用。
【請求項3】
式(I)の記号と添字が以下の意味を持つ:
Xは、SまたはOであり;
nは、1であり;
1とR2は、同一であって、C1−C10−アルキル、C6−C10−アリール、C1−C10−アルコキシまたはC6−C10−アリールオキシであり、
3とR4は、同一であって、C1−C10−アルキル、C6−C10−アリール、C1−C10−アルコキシ、またはC6−C10−アリールオキシである
請求項1または2に記載の利用。
【請求項4】
式(I)の記号と添字が以下の意味を持つ:
Xは、SまたはOであり;
nは、1であり;
1とR2は、同一であって、C6−C10−アリールであり、
3とR4は、C6−C10−アリールまたはC1−C10−アルコキシである
請求項1〜3のいずれか一項に記載の利用。
【請求項5】
式(I)において、R1=R2でR3=R4である請求項1〜4のいずれか一項に記載の利用。
【請求項6】
式(I)において、R1=R2=R3=R4である請求項1〜5のいずれか一項に記載の利用。
【請求項7】
式(I)において、R1とR2とR3とR4がC6−C10−アリールである請求項1〜6のいずれか一項に記載の利用。
【請求項8】
1とR2とR3とR4がフェニルである請求項7に記載の利用。
【請求項9】
上記の少なくとも一種の式Iの化合物が、
【化2】

から選ばれる請求項1〜8のいずれか一項に記載の利用。
【請求項10】
少なくとも一種の式(I)の化合物が室温(20〜25℃)で液体である請求項1〜6のいずれか一項に記載の利用。
【請求項11】
上記少なくとも一種の式(I)の化合物が、ポリウレタンのポリオール成分またはイソシアネート成分に可溶である請求項1〜10のいずれか一項に記載の利用。
【請求項12】
少なくとも二種の式(I)の化合物が用いられる請求項1〜11のいずれか一項に記載の利用。
【請求項13】
上記少なくとも一種の式(I)の化合物が、式(I)の化合物とは異なる構造をもつ一種以上の他の難燃剤及び/又は一種以上のシナージストと組み合わせて用いられる請求項1〜12のいずれか一項に記載の利用。
【請求項14】
ポリウレタン材料中に少なくとも一種の請求項1〜13のいずれか一項に記載の式(I)のジホスフィン化合物を投入する工程を含むポリウレタン材料の難燃性を増加させる方法。
【請求項15】
a)ポリウレタン成分と、
b)少なくとも一種の請求項1〜13のいずれか一項に記載の式(I)のジホスフィン化合物と、
c)必要なら他のポリマーと
d)必要なら他の添加剤とからなる
ポリウレタン材料。
【請求項16】
上記少なくとも一種の式(I)の化合物の量が、100重量部のポリウレタン成分a)に対して1〜35重量部である請求項15に記載のポリウレタン材料。
【請求項17】
発泡体である請求項15または16に記載のポリウレタン材料。
【請求項18】
軟質発泡体である請求項17に記載のポリウレタン材料。
【請求項19】
硬質発泡体である請求項17に記載のポリウレタン材料。
【請求項20】
熱可塑性エラストマーである請求項15または16に記載のポリウレタン材料。
【請求項21】
被覆材である請求項15または16に記載のポリウレタン材料。
【請求項22】
上記の少なくとも一種の式(I)の化合物が2個以上のヒドロキシル基を持ち、該ポリマーに投入されている請求項15〜20のいずれか一項に記載のポリウレタン材料。
【請求項23】
請求項15〜21のいずれか一項に記載のポリウレタン材料の、マットレス、家具部品、自動車/電車/飛行機シートとしての;建物や自動車中の遮音材としての;剛直面を有すあるいは有さない建築基材、パイプライン、現場噴射発泡体、業務用及び家庭用冷凍機の断熱材としての;エネルギー吸収発泡体または空隙充填発泡体としての;外被材料や被覆材料、ホース、箔、靴底ソールなどの押出成型物または射出成型物としての;塗料、接着剤、封止材としての利用。

【公表番号】特表2013−518162(P2013−518162A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550436(P2012−550436)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051110
【国際公開番号】WO2011/092232
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】