説明

ポリウレタン糸およびその製造方法

【課題】
適度な伸びがあり、かつ、ある程度の機械セット性、深色性および制電性を有するポリウレタン糸およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
主構成成分がポリオールとジイソシアネートであるポリウレタン溶液にカーボンブラックおよびモノアミンを加え、該ポリウレタン溶液を乾式紡糸してポリウレタン糸を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン糸およびその製造方法に関する。
【0002】
さらに詳しくは、他の繊維と組み合わせて編物、織物等のストレッチ布帛とした場合、得られるストレッチ布帛や衣服などの、濃色鮮明性、外観品位、制電性、ほこりの付着防止性など品質を優れたものにすることができるポリウレタン糸およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ポリウレタン糸は、その優れた伸縮機能からストレッチ素材として、ストッキング、ソックス、インナー、アウターなど一般衣料用途に広く使用されている。そしてポリウレタン糸は、こうした衣料のストレッチ機能をさらに向上せしめるため、布帛中の含有率がますます高くなっている。ポリウレタン糸の混率が高い布帛とすることにより、その伸縮特性、着用感などを従来より良好なものとすることができるのである。
【0004】
しかしながら、ポリウレタン糸の混率を高くすると、これらポリウレタン糸は混用するポリアミド繊維、天然繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等のハードヤーンに比べ染色性や制電性が著しく劣るため、布帛の外観品位を阻害することが問題となっていた。特に濃色布帛ではこの傾向が顕著であり、衣料とした場合の生地色の深みである濃色鮮明性、制電性不足によるほこりの付着に伴う外観品位低下が発生し、用途によってはポリウレタン糸の混率が限定される場合があった。
【0005】
この問題に対して原糸から高次加工まで幾つかの手段が試みられ、とりわけ、ポリウレタン糸を加工糸にする方法が多用されてきた。例えば、芯糸となるポリウレタン糸を鞘糸となるハードヤーンで被覆した被覆弾性糸が採用されている。このように、芯糸としてポリウレタン糸を用いた被覆弾性糸は、芯糸であるポリウレタン糸が露出し難く、濃色鮮明性に優れた布帛を形成することができる。しかしながら、前述のように、ますますポリウレタン糸の混率を高めてその伸縮量を大きくとる設計を施した布帛、特に、最も濃色度の高い場合であるブラックフォーマル衣料の場合は縫製後、一見、外観品位には優れていても、実際に着用し、生地を伸長させた際、芯糸のポリウレタン糸が外側に露出し、肘や膝部等の伸長部分の濃色鮮明性が不十分で、被覆糸の効果も不満足なものであった。
【0006】
また、ほこりの付着についても、ポリウレタン糸を含有する布帛は静置下、時間の経過により、また、衣服とした場合、その着脱時、濃色度の高い布帛の場合にはほこりの付着が目立ち、製品の外観品位を著しく低下させることが問題であった。
【0007】
この対策として、ほこりの付着を防止するため、制電加工を施す方法があるが、コストアップ等の問題があった。すなわち高次加工では前述した目的を解決するにはその効果は不十分であり、高伸長のストレッチ機能を持たせるためポリウレタン含有量が高く、濃色度も高い衣料には対応し難い問題点があった。
【0008】
また、前述の問題に対する原糸からの対応として、特許文献1に着色したポリウレタン糸をパンティストッキング腰部に使用した例が開示されている。また、特許文献2にも着色したポリウレタン糸の製造方法について開示されている。
【0009】
しかしながら、これら溶融紡糸による方法では低繊度糸または低繊度単糸を収束したマルチ糸で高品位のポリウレタン糸を得るのが困難であり、前述した目的を解決するにはその効果は不十分な場合があり、とりわけ、薄手で、ポリウレタン混率が高く、濃染色したストレッチ布帛に対する濃色鮮明性や外観品位を付与することには対応できなかった。
【特許文献1】特公昭60−44406号公報
【特許文献2】特公平8−30288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、衣服などに使用した場合に、得られるストレッチ布帛や衣服などの、濃色鮮明性、外観品位、制電性、ほこりの付着防止性などを優れたものとすることができるポリウレタン糸およびその製造方法を提供することにある。詳しくは、適度な伸びがあり、かつ、ある程度の機械セット性、深色性および制電性を有するポリウレタン糸およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のポリウレタン糸は前記課題を解決するため、以下の解決手段を採用する。すなわち、乾式紡糸により製造されたポリウレタン糸であって、該ポリウレタンの主構成成分がポリオールとジイソシアネートであり、かつ、カーボンブラックおよびモノアミンを含有していることを特徴とするポリウレタン糸である。
【0012】
また、本発明のポリウレタン糸の製造方法は前記課題を解決するため、以下の解決手段を採用する。すなわち、主構成成分がポリオールとジイソシアネートであるポリウレタン溶液にカーボンブラックおよびモノアミンを加え、該ポリウレタン溶液を乾式紡糸してポリウレタン糸を製造することを特徴とするポリウレタン糸の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリウレタン糸を使用した衣服等は、深色性、濃色鮮明性、埃付着防止性、制電性などに優れたものとなる。これらの優れた特性を有することから、本発明のポリウレタン糸は単独での使用はもとより、各種繊維との組み合わせにより、例えば、ソックス、ストッキング、丸編、トリコット、水着、スキーズボン、作業服、煙火服、洋服、ゴルフズボン、ウエットスーツ、ブラジャー、ガードル、手袋や靴下等の各種繊維製品の締め付け材料、紙おしめなどサニタニー品の漏れ防止用締め付け材料、防水資材の締め付け材料、似せ餌、造花、電気絶縁材、ワイピングクロス、コピークリーナー、ガスケットなど、種々の用途に使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず本発明で使用されるポリウレタンについて説明する。
【0015】
本発明に使用されるポリウレタンは、乾式紡糸により製造されたものであって、主構成成分がポリオールとジイソシアネートである。
【0016】
すなわち、例えば、ポリオールとジイソシアネートとジアミンからなるポリウレタンウレアであってもよく、また、ポリオールとジイソシアネートとジオールからなるポリウレタンであってもよい。
【0017】
また、鎖伸長剤として水酸基とアミノ基を分子内に有する化合物を使用したポリウレタンウレアであってもよい。
【0018】
なお、本発明の効果を妨げない範囲で3官能性以上の多官能性のグライコールやイソシアネート等が使用されることも好ましい。
【0019】
ここで、本発明のポリウレタン糸を構成する代表的な構造単位について述べる。
【0020】
本発明に使用されるポリオールはポリエーテル系グリコール、ポリエステル系グリコール、ポリカーボネートジオール等が好ましい。
【0021】
そして、特に柔軟性、伸度を糸に付与する観点からポリエーテル系グリコールが使用されることが好ましい。ポリエーテル系グリコールとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、THFおよび3−MeTHFの共重合体である変性PTMG(以下、3M−PTMGと略する)、THFおよび2,3−ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG、特許公報第2615131号公報などに開示される側鎖を両側に有するポリオール等が好ましく使用される。これらポリエーテル系グリコールを1種または2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0022】
また、ポリウレタン糸として耐摩耗性や耐光性を得る観点から、ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、特開昭61−26612号公報などに開示されている側鎖を有するポリエステルポリオールなどのポリエステル系グリコールや、特公平2−289516号公報などに開示されているポリカーボネートジオール等が好ましく使用される。
【0023】
また、こうしたポリオールは単独で使用されてもよいし、2種以上混合もしくは共重合して使用されてもよい。本発明に使用されるポリオールの分子量は糸にした際の伸度、強度、耐熱性などを得る観点から数平均分子量は1000以上8000以下が好ましく、1800以上6000以下がより好ましい。この範囲の分子量のポリオールが使用されることにより、伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れた弾性糸を得ることができる。
【0024】
次に本発明に使用されるジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが、特に耐熱性や強度の高いポリウレタンを合成するのに好適である。さらに脂環族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、H12MDIと称する。)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5−ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、特にポリウレタン糸の退色を抑制する際に有効に使用できる。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
次に本発明における鎖伸長剤は、低分子量ジアミンおよび低分子量ジオールのうち少なくとも1種以上を使用するのが好ましい。
【0026】
なお、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を分子中に有するものであってもよい。好ましい低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p,p’−メチレンジアニリン、1,3−シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらの中から1種または2種以上が使用されることも好ましい。特に好ましくはエチレンジアミンである。エチレンジアミンを用いることにより伸度および弾性回復性、さらに耐熱性に優れた糸を得ることができる。これらの鎖伸長剤に架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン等を効果を失わない程度に加えてもよい。
【0027】
また、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、1−メチル−1,2−エタンジオールなどは代表的なものである。これらの中から1種または2種以上が使用されることも好ましい。特に好ましくはエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールである。これらを用いると、ジオール伸長のポリウレタンとしては耐熱性が高く、また、強度の高い糸を得ることができるのである。
【0028】
また、本発明の弾性糸の分子量は、耐久性や強度の高い繊維を得る観点から、数平均分子量として40000以上150000以下の範囲であることが好ましい。
【0029】
なお、本発明における分子量はGPCで測定しており、ポリスチレンにより換算している。
【0030】
そして、本発明のポリウレタン糸として、工程通過性も含め、実用上の問題がなく、かつ、熱セット性に優れたものを得る観点から、特に好ましいものは、ジオールとジイソシアネートからなり、かつポリウレタン糸の高温側の融点が200℃以上280℃以下の範囲となるものである。本発明における高温側の融点とは、DSCで糸を測定した際のセカンドランの値をいい、ポリウレタンのいわゆるハードセグメントの融点が該当する。
【0031】
そして、ポリオールとして分子量が1800以上6000以下の範囲にあるPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、ジオールとしてエチレングライコール、1,3プロパンジオールおよび1,4ブタンジオールからなる群から少なくとも1種選ばれたものが使用されて合成され、かつ、高温側の融点が200℃以上280℃以下の範囲であるポリウレタン糸は、特に伸度が高くなり、さらに上記のように、工程通過性も含め、実用上の問題はなく、かつ、熱セット性に優れるので好ましい。
【0032】
なお、ポリウレタン糸の高温側の融点を200℃以上280℃以下にする観点から、事前にテストをし、ジイソシアネートとポリオール、ジオールの比率を選択することが好ましく行われる。
【0033】
さらに、本発明で使用されるポリウレタンは、末端封鎖剤として、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミンを用いる。末端封鎖剤が1種または2種以上混合使用されることも好ましく、その場合、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどを使用することも好ましい。
【0034】
本発明のポリウレタン糸は、色素を含有するものである。本発明においては、色素を含有しないと、高い深色性が得られないという問題がある。
【0035】
本発明では、色素としてカーボンブラックが用いられる。フタロシアニン顔料、アゾ顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化鉄、酸化セリウム、酸化マグネシウム、アゾ染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料のいずれかを組み合わせて用いてもよく、好ましくはカーボンブラックとフタロシアニン系化合物であり、さらに好ましくはカーボンブラックと銅フタロシアニンである。本発明に用いるカーボンブラック以外の色素は、その組み合わせによりポリウレタン糸として、黒の色相になるものであればよく、いかなる色相のものを用いても構わない。例えば、補色関係にあるものを用いることも好ましい。色素の粒子径、特にカーボンブラックの平均一次粒子径や比表面積によってはポリウレタン糸の色相が赤方向へシフトする場合があり、フタロシアニン系化合物、特に、銅フタロシアニン顔料のピグメントブルーやピグメントグリーンを添加することで、ポリウレタン糸を無彩色の黒にすることができる。さらには、色相を補う観点からカーボンブラック以外の色素は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0036】
本発明のポリウレタン糸においては、カーボンブラックを含有すると高い深色性と制電性の効果が顕著であり、他の繊維と組み合わせて編物、織物等のストレッチ布帛とした場合、顕著な濃色鮮明性、埃付着防止性を得ることができ好ましい。
【0037】
本発明で使用されるカーボンブラックとしては、JIS K6200に示される炭化水素、または炭素を含む化合物を空気の供給が不十分な状態で燃焼または熱分解させてできる結晶子の集合体のものが適用でき、オイルファーネス法、ガスファーネス法、チャネル法又はサーマル法のいずれの製法で製造されたものも使用でき、特に限定されるものではない。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、チャンネルブラック、ローラーブラック、ファインサーマルブラック、メディアムサーマルブラック、ランプブラック、松煙、油煙、ベジタブルブラックなどが挙げられる。
【0038】
本発明においては、カーボンブラックの含有量は、良好な黒色均一性、紡糸性を得る観点から、0.1重量%以上20重量%以下の範囲が好ましく、良好な濃色性、制電性を得る観点から、0.5重量%以上10重量%以下がより好ましい。
【0039】
なお、これらの含有量は、用途に応じて事前にテストし、適宜決定することも好ましく行われる。
【0040】
さらに、本発明のカーボンブラックは、ポリウレタンへの分散を速くし、製造されるポリウレタン糸の特性を目標の特性とせしめる観点から、電子顕微鏡で測定されるカーボンブラックの平均一次粒子径が20nm〜100nmであるものが好ましい。さらに良好な濃色性、制電性を得る観点から、30nm〜80nmがより好ましい。
【0041】
さらに、本発明のカーボンブラックは、ポリウレタン糸の濃色度を高める観点から、比表面積(BET吸着法)が20m/g以上であるのが好ましい。さらに、好ましくは30m/g以上である。
【0042】
また、本発明で使用されるカーボンブラックは、製造されるポリウレタン糸への不純物の混入を防ぎ、目標の特性とする観点から、日本工業規格K6221に定められた950℃で7分間加熱した際の減量(揮発分)が0.5〜5%の範囲であるものが好ましい。
【0043】
本発明のポリウレタン糸は、L値が35以下となるように色素を添加するものである。L値が35を越えると、他の繊維と組み合わせて編物、織物等のストレッチ布帛とした場合、濃色鮮明性が得られない。
【0044】
L値は、ハンターLab系の色表示における明度であり、その値が小さいほど明度が低い、すなわち黒色の発色が深いことを意味する。黒発色性の点からは、L値は35以下であることが重要である。L値は好ましくは30以下であり、さらに好ましくは27以下である。
【0045】
また、本発明において、ポリウレタンに各種安定剤などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などにBHTや住友化学工業株式会社製の“スミライザーGA−80”などのヒンダードフェノール系薬剤、各種のチバガイギー社製“チヌビン”などのベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザーP−16”などのリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、タルク等鉱物などの無機物、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などが含まれることも好ましく、またこれらがポリマと反応させられることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、例えば、日本ヒドラジン株式会社製のHN−150などの酸化窒素補足剤、例えば、住友化学工業株式会社製の“スミライザーGA−80”などの熱酸化安定剤、例えば、住友化学工業株式会社製の“スミソーブ300♯622”などの光安定剤が使用されることも好ましい。
【0046】
本発明のポリウレタンの構成は好ましくはかかるものからなるものである。
【0047】
本発明のポリウレタン糸の繊度、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、本発明のポリウレタン糸を他の繊維と組み合わせて編物、織物等のストレッチ布帛とした場合、得られるストレッチ布帛の濃色鮮明性を得る観点から、ポリウレタン糸の繊度は10〜110デシテックスの範囲が好ましく、15〜55デシテックスの範囲がより好ましい。
【0048】
また、糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
【0049】
次に本発明のポリウレタン糸の製造方法について詳細に説明する。
【0050】
本発明においては最初にポリウレタン溶液を作製するのが好ましい。ポリウレタン溶液の製法、また、溶液の溶質であるポリウレタンの製法は溶融重合法でも溶液重合法のいずれであってもよく、他の方法であってもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタンにゲルなどの異物の発生が少なく、紡糸しやすく、低繊度のポリウレタン糸を得やすい。
【0051】
また、当然のことであるが、溶液重合の場合、溶液にする操作が省けるという利点がある。
【0052】
そして本発明に特に好適なポリウレタンとしては、ポリオールとして分子量が1800以上6000以下のPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、ジオールとしてエチレングライコール、1,3プロパンジオールおよび1,4ブタンジオールのうちの少なくとも1種を使用して合成され、かつ、高温側の融点が200℃以上280℃以下の範囲のものが挙げられる。
【0053】
かかるポリウレタンは、例えば、DMAc、DMF、DMSO、NMPなどやこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することにより得られる。例えば、こうした溶剤中に、各原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンとする、いわゆるワンショット法、また、ポリオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述のジオールと反応させてポリウレタンとする方法などが、特に好適な方法として採用され得る。
【0054】
鎖伸長剤にジオールを用いる場合、ポリウレタンの高温側の融点を200℃以上280℃以下の範囲に調節する代表的な方法は、ポリオール、MDI、ジオールの種類と比率をコントロールすることにより達成され得る。ポリオールの分子量が低い場合には、MDIの割合を相対的に多くすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができ、同様にジオールの分子量が低いときはポリオールの割合を相対的に少なくすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができる。
【0055】
ポリオールの分子量が1800以上の場合、高温側の融点を200℃以上にするには、(MDIのモル数)/(ポリオールのモル数)=1.5以上の割合で、重合を進めることが好ましい。
【0056】
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。アミン系触媒としては、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチル−ピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)モルホリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0057】
また、有機金属触媒としては、オクタン酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸鉛ジブチル等が挙げられる。
【0058】
こうして得られるポリウレタン溶液の濃度は、通常、30重量%以上80重量%以下の範囲が好ましい。
【0059】
本発明のポリウレタン糸の製造方法においては、かかるポリウレタン溶液にポリウレタン糸のL値(明度)が35以下となるように色素を添加する。
【0060】
かかる色素として、前記したカーボンブラック等が好ましく使用される。色素のポリウレタン溶液への添加方法としては、任意の方法が採用できる。
【0061】
色素はポリウレタン溶液へ添加する際には、粉末状、スラリー状またはペースト状などの状態で使用できる。添加するタイミングは、ポリウレタン重合時に添加する方法、色素を含むマスターバッチを予め作っておき、紡糸時にベースポリマー溶液にマスターバッチをブレンドする方法、あるいは色素を含む液状体を作っておき紡糸時にブレンドする方法など一般的な原着方法によって色素を添加させることができる。混合について、その代表的な方法としては、スタティックミキサーによる方法、攪拌による方法、ホモミキサーによる方法、2軸押し出し機を用いる方法など各種の手段が採用できる。ここで、添加される色素は、ポリウレタン溶液への均一な添加を行う観点から、溶液のマスターバッチにして添加することが好ましい。
【0062】
なお、色素のポリウレタン溶液への添加により、添加後の混合溶液の溶液粘度が添加前のポリウレタンの溶液粘度に比べ予想以上に高くなる現象が発生するおそれがあり、この現象を防止する観点からジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミンを末端封鎖剤として使用する。エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどの末端封鎖剤をさらに混合して使用することも好ましく行われる。
【0063】
色素のポリウレタン溶液への添加の際に、前記した、例えば、耐光剤、耐酸化防止剤などの薬剤などと同時に添加してもよい。
【0064】
本発明においては、ポリウレタン溶液を乾式紡糸してポリウレタン糸を製造する。
【0065】
本発明のポリウレタン糸のセット性と応力緩和は、特にゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので、糸の使用目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。
【0066】
すなわち、所望のセット性と応力緩和を有するポリウレタン糸を得る観点から、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.15以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましい。そして、特に高いセット性と、低い応力緩和を有するポリウレタン糸を得る際には、ゴデローラと巻取機の速度比は1.15以上1.4以下の範囲がより好ましく、1.15以上1.35以下の範囲がさらに好ましい。
【0067】
一方、低いセット性と、高い応力緩和を有するポリウレタン糸を得る際には、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.25以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましく、1.35以上1.65以下の範囲がより好ましい。
【0068】
また、紡糸速度は、得られるポリウレタン糸の強度を向上させる観点から、450m/分以上であることが好ましい。
【0069】
本発明のポリウレタン糸を他の繊維と組み合わせて編物、織物等のストレッチ布帛とした場合、婦人・紳士用途、学生服、和装品、裏地などに用いられるが、特にブラックフォーマル用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0070】
本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。
【0071】
本発明における強度、伸度、セット性、応力緩和、深色性、濃色鮮明性、埃付着防止性、制電性を説明する。
【0072】
[強度、伸度、セット性、応力緩和]
セット性、応力緩和、強度、伸度は、ポリウレタン糸をインストロン4502型引張試験機を用い、引張テストすることにより測定した。
【0073】
5cm(L1)の試料を50cm/分の引張速度で300%伸長を5回繰返した。このときの応力を(G1)とした。次に試料の長さを30秒間保持した。30秒間保持後の応力を(G2)とした。次に試料の伸長を回復せしめ応力が0になった際の試料の長さを(L2)とした。さらに6回目に試料が切断するまで伸長した。この破断時の応力を(G3)、破断時の試料長さを(L3)とした。以下、上記特性は下記式により算出される。
【0074】
強度=(G3)
応力緩和=100×{((G1)−(G2))/(G1)}
セット性=100×{((L2)−(L1))/(L1)}
伸度 =100×{((L3)−(L1))/(L1)}
[熱セット性]
熱セット性は次の方法で測定した。
【0075】
試料糸をフリーで100℃のスチームで10分間処理し、次にフリーで100℃の沸騰水で2時間処理し、一日、室温で乾燥した。つぎに試料糸(長さ=(L5))を100%伸長した(長さ=2×(L5))。この長さのまま115℃のスチームで、1分間処理した。さらに同長さで、130℃の乾熱処理を施し、さらに同長さで、1日室温で放置した。次に、試料糸の伸長状態をはずし、その長さ(L6)を測定した。
熱セット性は下記式により算出される。
【0076】
熱セット性=100×{((L6)−(L5))/(L5)}
[深色性]
試験片作成法は試料糸を5x5cmの試料板に、試料板の色の影響が現れない程度に密接に最小荷重で巻き取り、試料とした。試料および常用標準白色面(JIS Z 8722の4.3.4)の前面を均質平坦で透明な約1mm厚のガラス板で密着させ覆った。
【0077】
L値(明度)の測定は多光源分光測色計MSC−IS−2DH(スガ試験機製)を用いた。L値は、ハンターLab系の色表示における明度であり、その値が小さいほど明度が低い、すなわち黒色の発色が深いことを意味する。
【0078】
[濃色鮮明性、埃付着防止性]
次の方法で織物ストレッチ布帛を製作し、濃色鮮明性を評価した。
【0079】
まず、試料のポリウレタン糸を加工し、カバーリング糸を得た。混用相手糸としてカチオン可染ポリエステル168DTEX−48FILを使用し、カバーリング機を用いてヨリ数=450t/m,ドラフト=3.0の条件で糸加工したヨコ糸用カバーリング糸を得た。同様に、カチオン可染ポリエステル168dTEX−48FILをカバーリング機を用いてヨリ数700T/M ドラフト=3.5の条件で加工したタテ糸用カバーリング糸を得た。
【0080】
次に、整経・製織を実施した。タテ糸を5100本(荒巻き整経1100本)を糊付け整経し、レピアー織機を用いて2/1綾組織で製織した。
【0081】
次に、染色加工を実施した。製織で得た生機を常法に従い精練加工、中間セット(185℃)、減量加工、染色加工(カチオン染料、120℃)、乾燥、仕上げ剤処理、仕上げセット(180℃、布速20m/min、セットゾーン24m)を実施した。
【0082】
そして、得られた布帛の濃色鮮明性および埃付着防止性を評価した。
【0083】
濃色鮮明性は生地の目むき(ポリウレタンの露出)に注目して5段階で判定した。生地を1.8kg/2inの荷重下で伸長し、5級−目むきが全くない,4級−やや目むきがあるがほとんど気にならない,3級−やや目むきが気になる、2級−目むきが気になる、1級−目むきが多くウレタンが露出し品位が低いとした。
【0084】
埃付着防止性は3段階で判定した。23℃×40%RHの雰囲気で1m長×70cm幅の生地を斜度60度の正三角台に1週間放置した後の埃付着度に注目して評価した。3級−埃付着無し、2級−やや埃付着有り、1級−埃付着が気になるとした。
【0085】
[制電性]
前述の織物ストレッチ布帛を試料とし、制電性を示す指標として摩擦帯電圧を次の方法で測定した。
【0086】
摩擦帯電圧は興亜商会社製ロータリースタティックテスターを用い、対象布を木綿金幅3号、温湿度を20℃×30%RH、回転速度を400 r.p.mで1分間回転後の帯電圧(摩擦帯電圧)を測定した。
【0087】
[参考例1]
分子量2900のPTMG、MDIおよびエチレングリコールからなるポリウレタンのDMAC溶液(35重量%)を重合し、ポリマ溶液A1とした。次に、A1に対し、旭カーボン社製カーボンブラック(平均一次粒子径が44nm、比表面積が40m/g)、さらにDMAcを追加し、カーボンブラックのマスターバッチ分散液を調整した。調整には水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、85%ジルコニアビーズを充填、20g/分の流速で均一な微分散液を調整し、これをB1(固形分のカーボンブラック7重量%、固形分のポリウレタン28重量%、合計35重量%)とした。さらに、アメリカ合衆国特許3555115号に記載されているt−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタンと米国特許第3553290号明細書に記載されているp−クレゾ−ルとジビニルベンゼンの縮合重合体の2対1重量比の混合物のDMAc溶液(35重量%)を調整し、酸化防止剤溶液C1(35重量%)とした。ポリマ溶液A1、B1、C1を95.5重量%、2.5重量%、2.0重量%で均一に混合し、溶液D1とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分のスピードで乾式紡糸することにより、20デシテックス、モノフィラメント、カーボンブラックの含有量が0.5重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
【0088】
得られた糸の破断伸度、破断強度、セット性、応力緩和、深色性を表1に示す。L値は25であり、良好な深色性を示した。また、破断強度はベースポリマが同じで、カーボンブラックの含有量も同じであるが、L値(明度)が36以上の比較例1と同等以上であった。次に得られたストレッチ布帛の濃色鮮明性、埃付着防止性、制電性を表2に示す。ベースポリマが同じで、カーボンブラックの含有量も同じであるが、L値(明度)が36以上の比較例1の濃色鮮明性2級、埃付着防止性1級に比べ、参考例1の濃色鮮明性は4級、埃付着防止性は3級であり、制電性も格段に優れたストレッチ布帛を得た。
【0089】
[参考例2]
A1に対し、三菱化学社製カーボンブラック(平均一次粒子径が22nm、比表面積が114m/g)、銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Green 7)、さらにDMAcを追加し、カーボンブラックのマスターバッチ分散液を調整した。調整は参考例1と同一の方法で実施した。これをB2(固形分のカーボンブラック7重量%、固形分の銅フタロシアニン顔料1重量%、固形分のポリウレタン27重量%、合計35重量%)とした。ポリマ溶液A1、B2、C1を78重量%、20重量%、2重量%で均一に混合し、溶液D2とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.40として540m/分のスピードで乾式紡糸することにより、20デシテックス、モノフィラメント、カーボンブラックの含有量が10重量%、銅フタロシアニン顔料の含有量が1.4重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
【0090】
得られた糸の破断伸度、破断強度、セット性、応力緩和、深色性を表1に示す。L値は18であり、良好な深色性を示した。機械セットも適度であった。次に得られたストレッチ布帛の濃色鮮明性、埃付着防止性、制電性を表2に示す。ベースポリマが同じでL値(明度)が36以上の比較例1の濃色鮮明性2級、埃付着防止性1級に比べ、参考例1の濃色鮮明性は5級、埃付着防止性は3級であり、制電性も格段に優れたストレッチ布帛を得た。
【0091】
[実施例1]
分子量1800のPTMG、MDI、エチレンジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレアのDMAc溶液(35重量%)を重合し、溶液A2とした。次に、A2に対し、ライオン社製カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、平均一次粒子径が40nm、比表面積が1270m/g)とDMAcを追加し、カーボンブラックのマスターバッチ分散液を調整した。これをB3(固形分のカーボンブラック7重量%、固形分のポリウレタン28重量%、合計35重量%)とした。調整は参考例1と同一の方法で実施した。A2、B3、C1を88重量%、10重量%、2重量%で均一に混合し、溶液D3とした。溶液D3をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分のスピードで乾式紡糸することにより、20デシテックスのマルチフィラメント、カーボンブラックの含有量が2.0重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0092】
得られた糸の破断伸度、破断強度、セット性、応力緩和、深色性を表1に示す。L値は23であり、良好な深色性を示した。次に得られたストレッチ布帛の濃色鮮明性、埃付着防止性、制電性を表2に示す。ベースポリマが同じで、カーボンブラック種も同じであるが、L値(明度)が36以上の比較例2の濃色鮮明性1級、埃付着防止性1級に比べ、参考例1の濃色鮮明性は5級、埃付着防止性は3級であり、制電性も格段に優れたストレッチ布帛を得た。
【0093】
[実施例2]
分子量1800のPTMG、MDI、モル比80/20のエチレンジアミンと1,3−シクロヘキシルジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるからなるポリウレタンウレアのDMAC溶液(35重量%)を重合し、溶液A3とした。A3、B3、C1を78重量%、20重量%、2重量%で均一に混合し、溶液D3とした。溶液D3をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分のスピードで乾式紡糸することにより、20デシテックスのマルチフィラメント、カーボンブラックの含有量が4.0重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0094】
得られた糸の破断伸度、破断強度、セット性、応力緩和、深色性を表1に示す。L値は21であり、良好な深色性を示した。次に得られたストレッチ布帛の濃色鮮明性、埃付着防止性、制電性を表2に示す。ベースポリマが同じでL値(明度)が36以上の比較例3の濃色鮮明性1級、埃付着防止性1級に比べ、参考例1の濃色鮮明性は5級、埃付着防止性は3級であり、制電性も格段に優れたストレッチ布帛を得た。
【0095】
[比較例1]
ポリマ溶液A1、添加剤溶液C1を混合し、これに参考例2で使用したものと同一の三菱化学社製カーボンブラック(平均一次粒子径が22nm、比表面積が114m/g)と追加DMAcを加え、攪拌翼にて一次混合したのち、栗本鐵工所社製45mm径2軸押し出し機にて均一溶液E1とした。溶液E1をゴデローラーと巻取機の速度比を1.40として540m/分のスピードで乾式紡糸することにより、18デシテックス、モノフィラメント、カーボンブラックの含有量が0.5重量%である糸を得た。
【0096】
得られた糸の破断伸度、破断強度、セット性、応力緩和、深色性を表1に示す。L値は48であった。濃色鮮明性は2級であり、L値が高いポリウレタン糸を布帛にした場合は目むきが気になり、本件の濃色鮮明性は不満足な結果であった。
【0097】
[比較例2]
ポリマ溶液A2、添加剤溶液C1を混合し、これにライオン社製カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、平均一次粒子径が40nm、比表面積が1270m/g)と追加DMAcを加え、攪拌翼にて一次混合したのち、栗本鐵工所社製45mm径2軸押し出し機にて均一溶液E2とした。溶液E2をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分のスピードで乾式紡糸することにより、20デシテックスのマルチフィラメント、カーボンブラックの含有量が0.05重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0098】
得られた糸の破断伸度、破断強度、セット性、応力緩和、深色性を表1に示す。L値は39であった。濃色鮮明性は1級であり、L値が高いポリウレタン糸を布帛にした場合は目むきが多くウレタンが露出し、本件の濃色鮮明性は不満足な結果であった。
【0099】
[比較例3]
ポリマ溶液A3、添加剤溶液C1を混合し、これに新日化カーボン社製カーボンブラック(平均一次粒子径が140nm以上、比表面積が20m/g)と追加DMAcを加え、攪拌翼にて一次混合したのち、栗本鐵工所社製45mm径2軸押し出し機にて均一溶液E3とした。溶液E3をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分のスピードで乾式紡糸することにより、20デシテックスのマルチフィラメント、カーボンブラックの含有量が0.05重量%の500g巻糸体を得た。
【0100】
得られた糸の破断伸度、破断強度、セット性、応力緩和、深色性を表1に示す。L値は43であった。濃色鮮明性は1級であり、L値が高いポリウレタン糸を布帛にした場合は目むきが多くウレタンが露出し、本件の濃色鮮明性は不満足な結果であった。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式紡糸により製造されたポリウレタン糸であって、該ポリウレタンの主構成成分がポリオールとジイソシアネートであり、かつ、カーボンブラックおよびモノアミンを含有していることを特徴とするポリウレタン糸。
【請求項2】
さらに、p−クレゾ−ルとジビニルベンゼンとの縮合重合体を含有していることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン糸。
【請求項3】
さらに、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタンを含有している、請求項1または2に記載のポリウレタン糸。
【請求項4】
前記カーボンブラックの含有量が0.1重量%以上20重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン糸。
【請求項5】
前記カーボンブラックの平均一次粒子径が20nm〜100nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン糸。
【請求項6】
前記カーボンブラックの比表面積が20m/g以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタン糸。
【請求項7】
さらに、カーボンブラック以外の色素を含有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリウレタン糸。
【請求項8】
前記カーボンブラック以外の色素がフタロシアニン系化合物であることを特徴とする請求項7に記載のポリウレタン糸。
【請求項9】
繊度が10〜110デシテックスであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリウレタン糸。
【請求項10】
主構成成分がポリオールとジイソシアネートであるポリウレタン溶液にカーボンブラックおよびモノアミンを加え、該ポリウレタン溶液を乾式紡糸してポリウレタン糸を製造することを特徴とするポリウレタン糸の製造方法。
【請求項11】
前記ポリウレタン溶液に、p−クレゾ−ルとジビニルベンゼンとの縮合重合体を加えることを特徴とする請求項10に記載のポリウレタン糸の製造方法。
【請求項12】
前記ポリウレタン溶液に、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)との反応によって生成せしめたポリウレタンを加える、請求項10または11に記載のポリウレタン糸の製造方法。
【請求項13】
前記カーボンブラックを0.1重量%以上20重量%以下含有せしめることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載のポリウレタン糸の製造方法。
【請求項14】
前記カーボンブラックの平均一次粒子径が20nm〜100nmであることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載のポリウレタン糸の製造方法。
【請求項15】
前記カーボンブラックの比表面積が20m/g以上であることを特徴とする請求項10〜14のいずれかに記載のポリウレタン糸の製造方法。

【公開番号】特開2008−2055(P2008−2055A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209001(P2007−209001)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【分割の表示】特願2002−216373(P2002−216373)の分割
【原出願日】平成14年7月25日(2002.7.25)
【出願人】(502179282)オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】