説明

ポリウレタン軟質スラブフォーム及びその製造方法

【課題】 連続的に大量の軟質ポリウレタンフォームを生産可能なスラブ成形法を用いてなる、高反発性ポリウレタン軟質スラブフォーム、及び、当該ポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】 (A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート、(B)ヒドロキシル基を供給し、且つ数平均分子量が6,000以上であるポリオール、(C)有機化ケイ酸塩、(D)水、を含むポリウレタン発泡原液を発泡硬化させてなるポリウレタン軟質スラブフォーム、及び、前記(B)成分と前記(D)成分とを混合して水和ポリオールを調製する工程と、前記水和ポリオールに前記(C)成分を混合してポリオール組成物を調製する工程と、このポリオール組成物と前記(A)成分とを混合してポリウレタン発泡原液を調製する工程とを含むことを特徴とするポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に反発性に優れるスラブフォーム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スラブフォームとは製品の切り出しに供される発泡成形体を意味する。ポリウレタン軟質スラブフォームは一般に、コンベア上に連続的に繰り出される紙またはプラスチックフィルムの上に、専用の発泡機で連続的に計量混合した原液を吐出し、発泡硬化させて製造される。
ここで、ポリウレタン軟質スラブフォームの物性は、原料ポリオールの構造により最も影響を受ける(非特許文献1:ポリウレタン樹脂ハンドブック,日刊工業新聞社,初版第1刷,p156〜160参照)。そして、高反発性のスラブフォームを得る方法としては、例えばポリオール成分の分子量を高く設定する方法を挙げることができる。
【0003】
しかし、以下の(1)及び(2)の理由、
(1)スラブフォームが一般に開放系で自然発泡させて得られるものであるため、ゲル化反応と発泡反応とのバランスを保つことが求められること、
(2)後工程で切り出しに供されるため、品質の安定(外観や物性上、欠陥がなく均質であること)、及び取得率の改善(切り出し可能な部分の割合を大きくすること)が求められること、
から、ポリウレタン軟質スラブフォーム発泡原液を構成する原料は制限を受けることとなる。即ち、ポリオール成分の分子量を高くし過ぎると、ポリウレタン軟質スラブフォーム発泡原液の発泡が不十分となって満足な成形体が得られない場合があるため、実際にポリウレタン軟質スラブフォームを成形する際に使用されるポリオール成分の数平均分子量としては3000〜5000未満程度の範囲である。従って、ポリオール成分の分子量を調節して高い反発性を有するポリウレタン軟質スラブフォームを得ようにも、自ずと限界があった。
【0004】
また、高反発性のポリウレタン軟質スラブフォームを得る他の方法としては、ポリウレタン軟質スラブフォーム発泡原液に通常使用されるTDI(トリレンジイソシアネート)とMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)とを併用する方法も挙げられるが、上記と同様に収縮問題が生じる場合があり、高反発性のポリウレタン軟質スラブフォームを得る手段としては妥当でない。
【0005】
一方、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の物性を向上させる一般的な手法として、層状粘土鉱物を配合する方法(特許文献1:特開平10−168305号公報、特許文献2:特開平10−330534号公報)が提案され、また、本発明者らは先に、有機化処理された無機充填材をポリウレタン発泡成形体用材料に配合して発泡成形してなる自動車用シートパッドが、振動吸収特性に優れ、硬度が高く、耐湿熱圧縮性に優れた自動車用シートパッドとなることを見出している(特許文献3:特開2004−254755号公報)。しかし、これらにスラブ成形に関する具体的な記載はなされていない。
【0006】
連続的に大量の軟質ポリウレタンフォームを生産可能なスラブ成形法において、より高い反発性を有するポリウレタン軟質スラブフォームを得る新たな手段の開発が望まれていた。
【0007】
【非特許文献1】ポリウレタン樹脂ハンドブック,日刊工業新聞社,初版第1刷,p156〜160
【特許文献1】特開平10−168305号公報
【特許文献2】特開平10−330534号公報
【特許文献3】特開2004−254755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、連続的に大量の軟質ポリウレタンフォームを生産可能なスラブ成形法を用いてなる、高反発性ポリウレタン軟質スラブフォーム、及び、当該ポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討の結果、比較的分子量が高いため、スラブフォーム成形に用いた場合には収縮が生じて満足な成形体が得られないと通常考えられるポリオール成分に対し、有機化ケイ酸塩を組み合わせることにより、スラブフォーム発泡成形時の収縮を抑制し得、しかも、得られた軟質スラブフォームは非常に高い反発性を有するものとなることを知見した。また、各原料成分の配合順序を特定の順序とすることにより、得られる軟質スラブフォームの反発性をより高め得ることを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下のポリウレタン軟質スラブフォーム、及びポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法を提供する。
請求項1:
次の(A)〜(D)の各成分、
(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート、
(B)ヒドロキシル基を供給し、且つ数平均分子量が6,000以上であるポリオール、
(C)有機化ケイ酸塩、
(D)水
を含むポリウレタン発泡原液を発泡硬化させてなるポリウレタン軟質スラブフォーム。
請求項2:
前記ポリウレタン発泡原液が、更に、以下の(E)成分、
(E)モールド系整泡剤、
を含む請求項1記載のポリウレタン軟質スラブフォーム。
請求項3:
前記(B)成分が、分子鎖末端にエチレンオキシドユニットを有するエチレンオキシド末端ポリオールを含むと共に、分子鎖末端に存するエチレンオキシドユニットが全ポリオール成分中に占める割合が0.1〜20質量%である請求項1又は2記載のポリウレタン軟質スラブフォーム。
請求項4:
次の(A)〜(D)の各成分、
(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート、
(B)ヒドロキシル基を供給し、且つ数平均分子量が6,000以上であるポリオール、
(C)有機化ケイ酸塩、
(D)水
を含むポリウレタン発泡原液をスラブ製造装置内で発泡させるポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法であって、
前記(B)成分と前記(D)成分とを混合して水和ポリオールを調製する工程と、前記水和ポリオールに前記(C)成分を混合してポリオール組成物を調製する工程と、このポリオール組成物と前記(A)成分とを混合してポリウレタン発泡原液を調製する工程と、を含むことを特徴とするポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法。
請求項5:
前記ポリウレタン発泡原液が、更に、次の(E)成分、
(E)モールド系整泡剤、
を含むと共に、前記水和ポリオールを調製する工程が、前記(B),(D)成分を混合し、更に(E)成分を混合する工程である請求項4記載のポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法。
請求項6:
前記(B)成分が、分子鎖末端にエチレンオキシドユニットを有するエチレンオキシド末端ポリオールを含むと共に、分子鎖末端に存するエチレンオキシドユニットが全ポリオール成分中に占める割合が0.1〜20質量%である請求項4又は5記載のポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反発性に優れるポリウレタン軟質スラブフォームを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳述する。
本発明のポリウレタン軟質スラブフォームは、次の(A)〜(D)の各成分、
(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート、
(B)ヒドロキシル基を供給し、且つ数平均分子量が6,000以上であるポリオール、
(C)有機化ケイ酸塩、
(D)水
を含むポリウレタン発泡原液を発泡硬化させてなるポリウレタン軟質スラブフォームである。
【0013】
前記(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネートとしては、スラブ成形性の観点から、トリレンジイソシアネート(TDI)が好適に用いられるが、成形密度領域の観点から、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を適宜配合することも可能である。
上記TDIとしては、特に限定されるものではないが、2,4−TDIと2,6−TDIとの配合比が80/20〜50/50(質量比)の混合物であることが好ましく、80/20〜65/35(質量比)の混合物であることが特に好ましい。
一方、MDIとしても特に限定されるものではなく、その分子量分布の広狭を問わず用いることができ、例えば、純(ピュア)MDI(4,4’−MDI)、ポリメリックMDI、粗(クルード)MDIなどを用いることができる。
このようなTDI、MDIとしては市販品を使用することができ、TDIとしては、例えばTDI−80(住友バイエルウレタン(株)製)、MDIとしては、例えば44V20(住友バイエルウレタン(株)製 クルードMDI)を用いることができる。
【0014】
上記TDIとMDIとを併用する場合、両者の配合比としては、TDI/MDI(質量比)の値として通常20/80〜80/20(質量比)、好ましくは50/50〜80/20(質量比)である。
【0015】
前記(A)成分が上記ポリウレタン発泡原液中に占める割合(2種以上のイソシアネートを併用する場合には、その総量がポリウレタン発泡原液中に占める割合)としては、その目安としてのイソシアネート当量(軟質ポリウレタン発泡原液中の活性水素量(モル)を100とした時の、軟質ポリウレタン発泡原液中のイソシアネ−ト基の当量(モル)比)値として通常80以上、好ましくは95以上、上限として通常120以下、好ましくは115以下である。イソシアネート当量が80未満であると、攪拌不良が起こる場合があり、一方120を超えると、フォームダウンする場合がある。
【0016】
本発明における上記(B)ヒドロキシル基を供給し、且つ数平均分子量が6,000以上であるポリオールとしては、特に限定されるものではないが、ポリエーテルポリオール、又はポリエーテルポリオールとポリマーポリオールとの混合物が好適に用いられる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、反応性の観点から、アルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオールが好適である。このようなアルキレンオキシドとしてはプロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0017】
中でも、上記ポリエーテルポリオールとしては、原料活性の観点から、上記POとEOとを共重合して得たポリエーテルポリオールが好適に用いられる。共重合の際のPOとEOとの配合比としては、EO/PO(モル比)として通常0/100〜18/82(モル比)、好ましくは5/95〜10/90(モル比)である。EO/PO(モル比)が上記範囲を逸脱すると、ポリエーテルポリオールの生成が困難になる場合がある。
【0018】
また、上記ポリエーテルポリオールの一分子中に含まれるヒドロキシル基の数としては、通常2〜4個、特に3個であることが好ましい。ヒドロキシル基の数が多すぎると原料粘度が上昇する場合があり、少なすぎると物性が低下する場合がある。
【0019】
上記ポリエーテルポリオールの数平均分子量としては6,000以上、好ましくは6,000〜10,000、より好ましくは6,000〜8,000である。数平均分子量が6,000未満であると、得られるポリウレタン軟質スラブフォームの反発性に劣り、本発明の目的が達成されない。一方、数平均分子量が10,000を超えると、粘度が高すぎて攪拌が困難になる場合がある。
なお、本発明において数平均分子量とは、GPC法によりポリスチレン換算値として算出した数平均分子量を意味する。
【0020】
一方、本発明における上記(B)成分として、上記ポリエーテルポリオールと併用されることがあるポリマーポリオールとしては、ポリウレタン発泡成形体用として汎用のポリマーポリオールを用いることが可能である。より具体的には、例えば、ポリアルキレンオキシドからなる好ましくは数平均分子量が3,000以上8,000以下、好ましくは4,000以上7,000以下のポリエーテルポリオールにポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のポリマー成分をグラフト共重合させたポリマーポリオール等が挙げられる。ポリアルキレンオキシドの原料となるアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシドを含むことが好ましく、プロピレンオキシド単独のもの、又はプロピレンオキシド及びエチレンオキシドを共に含むものであることが特に好ましい。また、上記ポリマーポリオール中に占める上記のようなポリマー成分の割合としては、通常25〜50質量%である。
【0021】
本発明における上記(B)成分としてポリエーテルポリオール、又はポリエーテルポリオールとポリマーポリオールとの混合物を用いる場合、その両者の配合比としては、(ポリエーテルポリオール)/(ポリマーポリオール)(質量比)として通常30/70〜100/0、好ましくは40/60〜80/20である。両者の配合比が上記範囲を逸脱すると、得られるポリウレタン発泡成形体の物性が低下したり、反応不具合を生じたりする場合がある。
【0022】
本発明における上記(B)成分としては、分子鎖末端にエチレンオキシドユニットを有するエチレンオキシド末端ポリオールを含むと共に、分子鎖末端に存するエチレンオキシドユニットが全ポリオール成分中に占める割合が0.1〜20質量%、中でも5〜10質量%であるものが、反応制御性の観点から好適である。
【0023】
また、本発明における上記(B)成分としては、粘度((B)成分として複数種のポリオールを混合して使用する場合には、その混合したポリオール全体の粘度)が液温25℃において5000mPa・s以下であるポリオールが好ましく使用される。本発明におけるポリウレタン発泡原液には、イソシアネート基を供給するポリイソシアネートと、ヒドロキシル基を供給するポリオールとが含まれるが、このような特定の粘度を有するポリオールを用いることにより、ポリウレタン発泡原液の増粘速度を抑制することが可能となって攪拌効率が上昇し、イソシアネート基とヒドロキシル基とがより均一に反応することが可能となるため、従来に比べて発生ガスの発生効率が増加するのみならず、その発生ガスの発生箇所としてもポリウレタン発泡原液内で均一に発生することとなり、軽量かつ均質なポリウレタン発泡成形体を得ることが可能となる。
なお、本発明において「粘度」とは、JIS Z 8803−1991に準拠し、液温25℃において、毛細管粘度計を用いて測定した粘度を意味する。
【0024】
ここで、上記(B)成分の液温25℃における粘度としてより具体的には、通常5000mPa・s以下、好ましくは1800mPa・s以下である。ポリオールの粘度が大きすぎると、ポリウレタン発泡原液の攪拌効率が低くなって良好なスラブ成形が困難となる場合がある。
【0025】
本発明における上記(C)有機化ケイ酸塩を構成するケイ酸塩としては、例えば、単位骨格中にケイ素原子を1つ含むネソケイ酸塩、数個含むソロケイ酸塩、多数のケイ素原子を含むイソケイ酸塩、フェロケイ酸塩等が挙げられ、具体的にはモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーキュライト、ハロイサイト、又はマイカなどが挙げられる。これらは天然品でも人工合成品でもよい。また、これらは1種を単独で、あるいは2種以上を併用することも可能である。
本発明において、これらケイ酸塩の膨潤性の有無については特に限定されるものではないが、ポリオール成分への分散性の観点から、膨潤性マイカであることが好ましい。また、ポリオール成分中での分散状態の安定性の観点から、マイカ表面のOH基がフッ素原子で置換されたフッ素化マイカを使用することも好適である。
【0026】
本発明における上記(C)成分は、上記ケイ酸塩を有機化処理したものである。このような有機化処理方法としても特に限定されるものではなく、ケイ酸の対イオンのナトリウムイオンをイオン交換することにより、ケイ酸塩を4級アンモニウム塩化する方法や、化学結合やイオン結合等によりケイ酸塩表面に有機基を導入する方法等を挙げることができるが、中でもポリオールへの分散性の観点から、ケイ酸の対イオンのナトリウムイオンをイオン交換することにより、ケイ酸塩を4級アンモニウム塩化する方法が好適である。
【0027】
上記有機オニウムイオンとしては、例えば、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシル(ラウリル)アンモニウムイオン、オクタデシル(ステアリル)アンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオンといった有機アンモニウムイオン;アルキルビピリジニウムイオンといった有機ピリジニウムイオン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも、ポリオール成分中での安定性の観点から、有機アンモニウムイオンが好適である。これらは4級アンモニウムイオンであることが好ましいが、1級、2級、3級アミンをプロトン化したものでもよい。
【0028】
また、上記有機アンモニウムイオンとしては、窒素原子に結合する有機基がアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基であるものが好ましく、特に、ジ(ヒドロキシアルキル)ジアルキルアンモニウムイオンが好ましい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。一方、ヒドロキシアルキル基としては、OH基を1つ有するもの、2つ以上のOH基を有するもののいずれでもよく、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基等の末端の炭素原子に結合するOH基を有するもの、2−ヒドロキシ−n−プロピル基、2−ヒドロキシ−n−ブチル基等の炭素鎖途中の炭素原子に結合するOH基を有するもの、1,3−ジヒドロキシ−n−ブチル基のように末端及び炭素鎖途中の炭素原子に結合するOH基を有するものなどが挙げられる。中でも、製造される軟質ポリウレタンフォームの強度の観点から、末端にOH基を有するものが好ましい。なお、窒素原子に結合する有機基としては、アルキル基、ヒドロキシアルキル基等の炭素鎖の途中にエステル結合、ウレタン結合などを有するものであってもよい。
【0029】
本発明における上記(C)成分としては市販品を用いても良く、例えばソマシフMEE、ソマシフME−100、ソマシフMAE、ソマシフMTE(いずれもコープケミカル(株)製)が挙げられる。
【0030】
本発明における(C)成分の配合量としては、特に限定されるものではないが、前記(B)成分のポリオール100質量部に対して通常0.1質量部以上、好ましくは1.0質量部以上、上限として通常30質量部以下、好ましくは5質量部以下である。0.1質量部未満であると、スラブ成形時の収縮を抑制する効果がほとんど発現しない場合があり、一方、30質量部を超えるとポリオール成分が高粘度化してしまい、混合液が均一化できず、(C)成分をウレタンフォーム中に均一に分散させることができない場合がある。
【0031】
上記(D)水は、上記(A)成分と反応して炭酸ガスを発生させることから、本発明においては発泡剤として用いられる。
なお、ポリウレタン発泡原液中の(D)水の配合量としては、上記(B)成分のポリオール100質量部に対して通常0.5〜7質量部、好ましくは1〜5質量部である。(D)成分の配合量が上記範囲を逸脱すると、得られるポリウレタン軟質スラブフォームの熱圧縮残留歪み特性に劣る場合がある。
【0032】
前記ポリウレタン発泡原液としては、各成分の相溶性向上及びフォーム成長段階のセル強度向上の観点から、更に(E)モールド系整泡剤、を含むことが好適である。
【0033】
上記(E)モールド系整泡剤は、通常、ポリウレタン軟質モールドフォーム用に使用されるものである。即ち、上述の通り、スラブ成形に際してはゲル化反応と発泡反応のバランスを保つこと、品質の安定、及び取得率の改善が同時に求められるが、モールド系整泡剤をスラブ成形に用いた場合には、一般に活性が弱く、フォーム成長時にセルが崩壊するという不都合が生じるものと考えられていたことから、当該モールド系整泡剤がスラブ成形に積極的に用いられることは考えられなかった。
しかし、当該モールド系整泡剤を本発明における上記ポリウレタン発泡原液に配合した場合、詳細は詳らかでないが、スラブ発泡成形時の収縮をより高いレベルで抑制し得、しかも、上記フォーム成長時にセルが崩壊するという不都合をも解消し得る。しかも得られたポリウレタン軟質スラブフォームは反発性、硬度、均質性、安定性に優れたものとなる。
【0034】
上記(E)成分としては、例えばシリコーン系整泡剤、アニオン系整泡剤、カチオン系整泡剤を挙げることができ、中でも、分子鎖末端に水酸基を有する整泡剤が好ましく用いられる。
このような(E)成分の数平均分子量としては通常1,000〜10,000、好ましくは1,300〜7,000、より好ましくは1,500〜5,000である。数平均分子量が小さすぎると整泡力が弱くなりすぎる場合がある。一方、大きすぎると整泡力が強くなりすぎる場合がある。
また、(E)成分のHLB(hydrophile−lipophile balance)値としては、通常1以上、好ましくは2〜20、より好ましくは8〜13である。当該値が小さすぎるとプレミックスしたポリオール成分内で分離する場合がある。一方、大きすぎるとイソシアネートとの攪拌が悪化する場合がある。
更に、(E)成分の表面張力値(mN/m)としては通常15以上、好ましくは18〜30、より好ましくは20〜23である。当該値が小さすぎるとプレミックスしたポリオール成分内で分離する場合がある。一方、大きすぎるとイソシアネートとの攪拌が悪化する場合がある。
【0035】
上記(E)成分としては市販品を用いることができ、例えば、L−3601,L−5309,L−5366,SZ−1302,SZ−1306,SZ−1313,SZ−1327,SZ−1333,SZ−1336,SZ−1339,SZ−1342,SZ−1355,Y−10184(以上、日本ユニカー(株)製);SF2965,SF2962,SF2961,SRX274C,SF2964,SF2969,PRX607(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)等を用いることができる。
なお、上記ポリウレタン発泡原液中の(E)成分の配合量としては、上記(B)成分のポリオール100質量部に対して通常0.3〜2質量部、好ましくは0.5〜1質量部である。
【0036】
上記ポリウレタン発泡原液には、更に触媒を配合することが好適である。触媒は、ポリウレタン軟質スラブフォームの製造サイクルタイムの短縮に寄与し得る。
前記触媒としては、ポリウレタンフォーム用として常用のものが使用可能であり、特に限定されるものではないが、例えば、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン等のアミン触媒が挙げられる。ポリウレタン発泡原液中の触媒の配合量としては、上記(B)成分のポリオール100質量部に対して通常0.3〜2質量部である。
なお、このような触媒としては市販品を用いることができ、例えばトリエチレンジアミン(花王(株)製)、ジエタノールアミン(日本触媒製)等を挙げることができる。
【0037】
本発明のポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法は、上記(A)〜(D)の各成分を含むポリウレタン発泡原液をスラブ製造装置内で発泡させるポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法であって、
前記(B)成分と前記(D)成分とを混合して水和ポリオールを調製する工程と、前記水和ポリオールに前記(C)成分を混合してポリオール組成物を調製する工程と、このポリオール組成物と前記(A)成分とを混合してポリウレタン発泡原液を調製する工程と、を含むことを特徴とするポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法である。
スラブ成形においては、ポリウレタン発泡原液を構成する各成分は通常、コンベア上にポリウレタン発泡原液が吐出される直前にミキシングヘッド内で一括混合される。しかし、有機化ケイ酸塩がポリウレタン発泡原液に配合される場合、混合液の粘度が必要以上に上昇してスラブ成形に悪影響を及ぼす場合がある。
しかし、本発明においてポリウレタン発泡原液を調製する際、まず前記(B)成分と前記(D)成分とを混合して水和ポリオールを調製し、その後、前記水和ポリオールに前記(C)成分を混合してポリオール組成物を調製し、更に、このポリオール組成物と前記(A)成分とを混合してポリウレタン発泡原液を調製することにより、混合液の粘度上昇を軽減することができて良好なスラブ成形を実施し得、ケイ酸塩をポリウレタン発泡原液中により良好に分散させることが可能となるためスラブフォームの均質化を実現し得、しかも得られたスラブフォームは反発弾性に優れたものである。
【0038】
更に、前記ポリウレタン発泡原液が上記(E)成分を含むと共に、前記水和ポリオールを調製する工程が、前記(B),(D)成分を混合し、更に(E)成分を混合する工程であると、更にポリウレタン発泡原液の粘度上昇を抑制し得て好適である。なお、前記ポリウレタン発泡原液が他の成分、例えば上述の触媒成分等が配合されてなる場合にも、当該他の成分については前記水和ポリオールの調整時に配合する((C)成分を配合する前にポリオール成分に混合させる)ことが、ポリウレタン発泡原液の粘度上昇の抑制、乃至、得られるスラブフォームの反発弾性向上の観点から好適である。
【0039】
本発明のポリウレタン軟質スラブフォームは非常に高い反発性を有するものであり、マットレス、枕、ベッド等の素材として好適である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0041】
[実施例1〜3,比較例1〜3]
表1に示す配合及び調製方法にてポリウレタン発泡原液を調製した。得られたポリウレタン発泡原液をスラブ成型装置に投入した。発泡硬化時の成形性、並びに得られたポリウレタン軟質スラブフォームの諸物性を評価した。結果を表1に併記した。
【0042】
【表1】

【0043】
ポリオール1
三洋化成社製商品名FA155。数平均分子量6,700、官能基(OH基)数3、末端EO 8%。
ポリオール2
ダウケミカル社製商品名Voranol CP3010。数平均分子量3,000、官能基(OH基)数3、末端EO 3%。
ポリオール3
旭硝子社製商品名EL828。数平均分子量5,000、官能基(OH基)数3、末端EO 16%。
有機化ケイ酸塩
ソマシフMEE(コープケミカル(株)製、有機化マイカ)
整泡剤1
SRX−274C(東レ・ダウ(株)製)。分子鎖末端が水酸基。数平均分子量1,650、HLB値10、表面張力値22.6(mN/m)。
整泡剤2
F−242TB(信越化学(株)製)。分子鎖末端が水酸基。数平均分子量4,450、HLB値12、表面張力値21.2(mN/m)。
イソシアネート1
T−80(三井武田ケミカル(株)製)
イソシアネート2
44V20(住友バイエルウレタン(株)製)
【0044】
発泡原液調製法
A:まずポリオールと水とを混合して1800rpmで20分間攪拌し、その後整泡剤を混合して1800rpmで10分間攪拌し、その後有機化ケイ酸塩を1800rpmで攪拌しながら徐々に添加して添加終了後、1800rpmで30分間攪拌することにより、ポリオール組成物を得た。このポリオール組成物とイソシアネート1及び2とを混合して5000〜7000rpmで5〜10秒間攪拌し、ポリウレタン発泡原液を得た。
B:各成分を一括に混合してポリウレタン発泡原液を得た。
スラブ成形性
◎:成形時に収縮が起こらず、しかも、取得率(切り出し可能な部分の割合)が大きかった(成形体の品質が均質であった)。
○:成形時に収縮が起こらなかった。
×:成形時に収縮が生じた。
【0045】
密度(kg/m3
JIS K 6400:2004に記載の方法により、全密度の測定を実施した。全密度は、JIS規格で規定している「見掛け密度」を指す。スラブフォームの中心部(スキン層を含まない部分)から直方体フォームサンプルを切り出し、全密度の測定を行った。
25%硬度,65%硬度(kgf)、反発弾性(%)
いずれもJIS K 6400:2004に準じて測定した。
スラブフォームの中心部(スキン層を含まない部分)から直方体フォームサンプルを切り出して試験片とした。
試験片の空気を逃げ易くするために、直径6mm、中心距離19mmの多数の小孔のあいた台上に試験片を置いた。次に自動記録装置を有するインストロン型圧縮荷重試験機を用いて、直径200mmの円形加圧板で試験片の上面から押さえつけた。このとき、φ300mm以上の円形を含む大きさの試験片を用い、ILD(局部圧縮)で試験を行った。
前荷重として4.9Nかけた時の厚さを測定し、これをはじめの厚さとした。次に、円形加圧板を50mm/minの速さではじめの厚さの75%の距離を押し込んだ。押し込んだ後、直ちに50mm/minに速さで加圧板を上昇させ、はじめの厚さまで戻した。1分間放置後、再び同じ速度で初めの厚さの25%(又は65%)の距離まで圧縮し、静止させて20秒後の荷重を読んだ。これを25%(又は65%)硬さとした。
また、金属のボールを所定の位置から落下させて最初の高さに対する跳ね返った高さの割合を反発弾性率とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)〜(D)の各成分、
(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート、
(B)ヒドロキシル基を供給し、且つ数平均分子量が6,000以上であるポリオール、
(C)有機化ケイ酸塩、
(D)水
を含むポリウレタン発泡原液を発泡硬化させてなるポリウレタン軟質スラブフォーム。
【請求項2】
前記ポリウレタン発泡原液が、更に、以下の(E)成分、
(E)モールド系整泡剤、
を含む請求項1記載のポリウレタン軟質スラブフォーム。
【請求項3】
前記(B)成分が、分子鎖末端にエチレンオキシドユニットを有するエチレンオキシド末端ポリオールを含むと共に、分子鎖末端に存するエチレンオキシドユニットが全ポリオール成分中に占める割合が0.1〜20質量%である請求項1又は2記載のポリウレタン軟質スラブフォーム。
【請求項4】
次の(A)〜(D)の各成分、
(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート、
(B)ヒドロキシル基を供給し、且つ数平均分子量が6,000以上であるポリオール、
(C)有機化ケイ酸塩、
(D)水
を含むポリウレタン発泡原液をスラブ製造装置内で発泡させるポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法であって、
前記(B)成分と前記(D)成分とを混合して水和ポリオールを調製する工程と、前記水和ポリオールに前記(C)成分を混合してポリオール組成物を調製する工程と、このポリオール組成物と前記(A)成分とを混合してポリウレタン発泡原液を調製する工程と、を含むことを特徴とするポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法。
【請求項5】
前記ポリウレタン発泡原液が、更に、次の(E)成分、
(E)モールド系整泡剤、
を含むと共に、前記水和ポリオールを調製する工程が、前記(B),(D)成分を混合し、更に(E)成分を混合する工程である請求項4記載のポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法。
【請求項6】
前記(B)成分が、分子鎖末端にエチレンオキシドユニットを有するエチレンオキシド末端ポリオールを含むと共に、分子鎖末端に存するエチレンオキシドユニットが全ポリオール成分中に占める割合が0.1〜20質量%である請求項4又は5記載のポリウレタン軟質スラブフォームの製造方法。

【公開番号】特開2006−316210(P2006−316210A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142286(P2005−142286)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】