説明

ポリエステルの製造方法

【課題】本発明は、ポリエステル樹脂および/もしくはその組成物からポリエステル樹脂組成物の簡易なリサイクル方法を提案ことを目的とした。
【解決手段】グリコール成分(A1)とジカルボン酸成分(B1)を原料とするポリエステル(C1)を、グリコール成分(A1)よりも沸点の高いグリコール成分(A2)の存在下、減圧、常圧のいずれかの条件で加熱する工程、および反応系中で遊離したグリコール成分(A1)を系外に除去する工程を含むことを特徴とするポリエステル(C2)の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル(C1)を原料とし、ポリエステル(C1)を構成するグリコール成分単位とは異なるグリコール成分単位を含むポリエステル(C2)への変換が達成できる技術であり、特に廃棄物回収ポリエステルの新しいリサイクル方法を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境・資源保全の見地からプラスチックの廃棄物処理が注目され、その処理方法が問題となっている。現在プラスチック容器やペットボトル等は回収・再利用するリサイクル活動に取り組まれている。しかしながら、リサイクルはそのコストや設備投資、リサイクル技術の確立等の問題もあり、ペットボトル等の一部がリサイクルされ再利用されているものの未だ焼却や埋め立てで処理されるものも多い。
【0003】
このような背景のもと、ペットボトルを解重合して原料を回収・精製してポリマー原料として再利用するリサイクル方法が各種提案されている。特許文献1ではペットボトル廃棄物からエチレングリコール(EG)とジメチルテレフタレート(DMT)を分離精製して再びポリエチレンテレフタート(PET)樹脂を合成する方法が、特許文献2ではペットボトル廃棄物からEGとテレフタル酸を分離精製して再びPET樹脂を合成する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−167469号公報(第1〜3頁)
【特許文献2】特開平6−72922号公報(第1〜4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1の方法では、まずPETをEGで解重合を行い、EGを回収した後に多量のメタノールを加えてジメチル化反応させてDMTとして回収し、メタノールを除去した後、さらに再びEGを加えて重合を行う必要があり、特許文献2の方法では、PETを多量の水で解重合を行い、粗テレフタル酸を回収した後に多量の水を除去してEGを回収した後に、さらに再びEGと粗テレフタル酸を加えて重合を行う必要があり、多量の溶媒が必要であったり、作業工程が増えるものであった。またこれらの内容はPETをPETに再利用する方法であった。
【0005】
本発明は、ポリエステル(C1)を原料とし、異なるグリコール成分から構成される、実用性に優れたポリエステル(C2)を簡素な工程で製造する方法、ひいては廃棄物として回収されたポリエステル(C1)を原料として再利用し、異なるグリコール成分から構成される、実用性に優れたポリエステル(C2)を簡素な工程で製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、グリコール成分(A1)とジカルボン酸成分(B1)を原料とするポリエステル(C1)を、グリコール成分(A1)よりも沸点の高いグリコール成分(A2)の存在下、加熱することで、グリコール成分(A2)とジカルボン酸成分(B1)を含むポリエステル(C2)を製造する方法を見出し、本発明に至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
(i)グリコール成分(A1)とジカルボン酸成分(B1)を原料とするポリエステル(C1)を、グリコール成分(A1)よりも沸点の高いグリコール成分(A2)の存在下、減圧、常圧のいずれかの条件で加熱する工程、および反応系中で遊離したグリコール成分(A1)を系外に除去する工程を含むことを特徴とするポリエステル(C2)の製造方法、
(ii)ポリエステル(C1)がポリエチレンテレフタレート(PET)であり、グリコール成分(A2)が1,3−プロパンジオール(PG)、1,4−ブタンジオール(BG)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)、ポリエチレングリコール(PEG)から選ばれる少なくとも1種以上である(i)記載のポリエステル(C2)の製造方法、
(iii)ポリエステル(C1)が廃棄物回収ポリエステルであることを特徴とする(i)または(ii)記載のポリエステル(C2)の製造方法
(iv)前記(i)記載のポリエステル(C2)の製造方法に際し、系外に除去したグリコール成分(A1)を回収することを特徴とするグリコール成分の回収方法、
(v)(i)〜(iv)いずれか記載の方法により製造されるポリエステル(C2)100重量部に対し、1〜100重量部の充填剤を配合することを特徴とする樹脂組成物の製造方法、
(vi)(i)〜(v)いずれか記載の方法により製造されるポリエステル(C2)100重量部に対し、エラストマーを1〜100重量部配合することを特徴とする樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリエステル(C1)と、ポリエステル(C1)の構造に含まれるグリコール成分(A1)よりも沸点の高いグリコール成分(A2)を用いてポリエステル(C1)をエステル交換および/もしくは解重合し、その反応系中でポリエステル(C1)から遊離したグリコール成分(A1)を系外へ除去して残った成分とグリコール成分(A2)とを重縮合することで、異なる構造のポリエステル(C2)を、簡素な工程で、容易に得ることができる。また、このような方法で製造したポリエステル(C2)は、単独で、もしくは、充填剤やエラストマー等の添加剤を配合することにより、成形材料として実用性に優れた性能を有する樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のグリコール成分(A1)とジカルボン酸成分(B1)を原料とするポリエステル(C1)について説明する。ポリエステル(C1)とは、グリコール成分(A1)とジカルボン酸成分(B1)を原料として、重縮合して得られるポリエステルであり、グリコール成分(A1)単位とジカルボン酸成分(B1)単位を主たる繰返単位とするポリエステル樹脂であるが、3成分以上の共重合体でもよく、グリコール成分(A1)やジカルボン酸成分(B1)以外の共重合成分が含まれても良い。
【0010】
上記グリコール成分(A1)としては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物などが挙げられ、これらは一種またはニ種以上で用いることができる。
上記グリコール成分(A1)のなかでも好ましくは、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールであり、特に好ましくはエチレングリコールである。
【0011】
ジカルボン酸成分(B1)としては、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、およびこれらのジメチルエステル体などが挙げられるが、好ましくはアジピン酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、およびこれらのジメチルエステル体であり、特に好ましくは、テレフタル酸、およびテレフタル酸ジメチルエステルである。なおこれらも一種またはニ種以上で用いることができる。
【0012】
また、その他共重合成分としてグリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸を含んでも良い。上記その他の共重合成分の量は、ポリエステル(C1)成分((A1)単位、(B1)単位およびその他共重合成分単位により構成されるポリマーの繰返単位)中、0〜50モル%であることが好ましく、0〜30モル%がより好ましく、0〜10モル%であることが特に好ましい。本発明はポリエステル(C1)を原料とし、異なるグリコール成分(A2)単位を含むポリエステル(C2)を製造することを目的とし、ひいては廃物となったポリエステル(C1)を原料とし、ポリエステル(C1)を構成するグリコール成分(A1)を回収し、さらに異なるグリコール成分(A2)を含むポリエステル(C2)を製造することを目的としており、原料となるポリエステル(C1)を構成するグリコール成分(A1)単位およびジカルボン酸成分(B1)単位以外の共重合成分単位(その他の共重合成分単位)がこれらの繰返単位に対して50モル%を越えると、ポリエステル(C2)の重合反応等が進行しにくくなる等の問題、ポリエステル(C2)の純度が低下するという問題、さらにはグリコール成分(A1)の回収が困難になるという問題があるため好ましくない。
【0013】
好ましく用いられるポリエステル(C1)としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、その他共重合体が挙げられるが、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートであり、特に好ましくは、ポリエチレンテレフタレートである。
【0014】
本発明で用いられるポリエステル(C1)は、分別・洗浄された回収ペットボトルや成形時に発生する成形くず等の廃棄物回収ポリエステルを用いても良く、本発明の効果を損なわない範囲で、共重合ポリエステルを用いても良いが、前述したように、共重合成分の量は前述した範囲内であることが好ましい。
【0015】
本発明では、グリコール成分(A1)とジカルボン酸成分(B1)を原料とするポリエステル(C1)を、グリコール成分(A1)よりも沸点の高いグリコール成分(A2)の存在下、加熱する工程、および反応系中で遊離したグリコール成分(A1)を系外に除去する工程を行うことによりグリコール成分(A2)単位とジカルボン酸成分(B1)単位を含むポリエステル(C2)を製造することができる。
【0016】
上記グリコール成分(A2)としては、グリコール成分(A1)よりも沸点が高ければ、本発明の目的を達成でき、特に制限はないが、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物などが挙げられ、なかでも1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0017】
本発明ではポリエステル(C1)を、ポリエステル(C1)を構成するグリコール成分(A1)よりも、沸点の高いグリコール成分(A2)の存在下、加熱する工程、および反応系中で遊離したグリコール成分(A1)を系外に除去する工程を行うことにより、グリコール成分(A2)単位とジカルボン酸成分(B1)単位を含むポリエステル(C2)を製造するものであるが、加熱下で行われる反応としては、エステル交換、解重合あるいは重縮合等の反応が生じているものと推察される。グリコール成分(A1)を系外に除去する工程は、この加熱する工程を行う最中(主としてエステル交換および/または解重合時)に、ポリエステル(C1)からグリコール成分(A1)が遊離してくるので、これを除去する工程である。ポリエステル(C1)とともに加熱するグリコール成分(A2)の添加量はポリエステル(C1)成分((A1)単位、(B1)単位およびその他共重合成分単位により構成されるポリマーの繰り返し単位)に対し、1〜1000モル%であることが好ましく、10〜500モル%であることがより好ましく、10〜250モル%であることが特に好ましい。本発明は上記ポリエステル(C1)を原料とし、異なるグリコール成分(A2)単位を含むポリエステル(C2)を製造することを目的とし、ひいては廃棄物となって回収されたポリエステル(C1)を原料とし、さらに異なるグリコール成分(A2)単位を含むポリエステル(C2)を製造することを目的としており、原料となるポリエステル(C1)に対し、グリコール成分(A2)の添加量が10モル%未満ではグリコール成分(A2)を添加する効果が低く、1000モル%を越えるとポリエステル(C2)製造時に過剰なグリコール成分(A2)を除去する際の効率が悪い等の問題があるため好ましくない。
【0018】
なお、本発明のポリエステル(C2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、原料のポリエステル(C1)の主たるグリコール成分(A1)単位を共重合成分として含んでも良い。ポリエステル(C2)に共重合成分として含まれるグリコール成分(A1)としては、ポリエステル(C2)成分中((A1)単位、(A2)単位、(B1)単位およびその他の共重合単位により構成される繰返単位中)0〜50モル%であることが好ましく、0〜30モル%であることがより好ましく、0〜10モル%であることが特に好ましい。
【0019】
また、本発明において加熱する工程で生ずる反応は溶媒中、あるいは無溶媒中で行うことが可能であり、工程を簡素にする観点から無溶媒中で行うことが好ましいが、その溶媒の有無に拘わらず、触媒を用いることにより、解重合および/もしくは重合時間を短縮することができる。触媒としては、例えば、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウムなどの金属及びその誘導体が挙げられる。誘導体としては、金属アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物が好ましい。具体的には、塩化錫、オクチル酸錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらの中でも、チタン化合物が好ましく、例えばチタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラエトキシド、オクタアルキルトリチタネート、ヘキサアルキルジチタネート、アルキルチタネート、酢酸チタン等が挙げられる。
【0020】
触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、原料となるポリエステル(C1)100重量部に対し0.0001〜0.1重量部添加することが好ましく、0.001〜0.05重量部の範囲がより好ましい。
【0021】
本発明で用いるポリエステル製造装置に使用される反応容器は特に限定されるものではないが、公知のポリエステル樹脂の重合装置を用いることができ、ミキサー型反応器、塔型反応器および押出し機型反応器などを用いることができる。また、これらの反応器は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明において、目的とするポリエステル(C2)製造時に添加するグリコール成分(A2)は、その沸点が、原料とするポリエステル(C1)から遊離するグリコール成分(A1)の沸点よりも高いことが必要である。添加するグリコール成分(A2)の沸点が低いと、エステル交換および/または解重合により、原料とするポリエステル(C1)から遊離したグリコール成分(A1)が系外へ抜けず、効率よく目的とするポリエステル(C2)が得られないため、好ましくない。
【0023】
エステル交換および/または解重合時の反応温度は特に限定されるものではないが、常圧下で行う場合は、グリコール成分(A2)の沸点以下で反応を行うことが好ましい。
【0024】
グリコール成分(A1)回収時の温度は特に限定されるものではないが、常圧下で行う場合は、グリコール成分(A1)の沸点以上かつグリコール成分(A2)の沸点以下で行うことが好ましい。
【0025】
ポリエステル製造装置の反応圧力は、特に限定されるものではなく、減圧、常圧および加圧いずれの条件でもよいが、エステル交換および/または解重合時は加圧条件(好ましくは0.1MPa〜1MPa)、グリコール成分の回収は減圧条件(好ましくは100kPa〜3kPa)で行うことでそれぞれ反応時間を短縮することが出来る。
【0026】
重合温度は特に限定されるものではないが、本重合反応は溶融状態で反応を行うことが好ましいため、ポリマーを溶融させるためにはポリマーの融点以上で反応させることが好ましく、熱分解反応を抑制するという点で、反応物が固まらない程度にできる限り温度を下げて反応を行うことが好ましい。重合時の反応圧力は反応時間を短く高分子量体を得るためには減圧条件で行うことが好ましく、1.5kPa以下にすることが好ましく、150Pa以下がより好ましく、30Pa以下が特に好ましい。
【0027】
本発明においてろ過や精製工程は必ずしも必要ではなく、その方法も特に限定されるものではないが、ポリエステル樹脂の組成に関係のない異物や不要物が多い場合には解重合後のモノマーをフィルター等で取り除く方法が有効である。
【0028】
本発明のポリエステル製造時に、遊離したグリコール成分(A1)を優先的に系外へ取り除くために、用いるグリコール成分(A2)の沸点はグリコール成分(A1)の沸点よりも高いものを選択することで優先的にグリコール成分(A1)が系外へ取り除かれ、効率よくポリエステル構造の変換が行われる。
【0029】
具体例として、ポリエステル(C1)として、リサイクルポリマーの中でも最も回収・再利用の期待されるポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた場合、グリコール成分(A1)がエチレングリコール(EG)であるため、グリコール成分(A2)にEGよりも沸点の高い1,4−ブタンジオール(BG)を用いることでPET中のEGが優先的に系外へ取り除かれ、残ったテレフタル酸成分とBG成分のエステル交換、あるいは重縮合によりポリブチレンテレフタレート(PBT)が得られる。同様にEGよりも沸点の高い1,3−プロパンジオール(PG)を用いることで、ポリプロピルテレフタレート(PPT)が、1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)を用いることでポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)が、ポリエチレングリコール(ぺG)を用いることでPET−PEG共重合体が得られる。
【0030】
なお、系外に除去されたグリコール成分(A1)は、回収し、ポリエステル(C1)もしくはその他のポリエステルを製造する際の原料とすることが可能である。
【0031】
本発明のポリエステル(C2)の重合反応後に得られる分子量は、特に限定されるものではないが、より実用性に優れたポリマーを得るために、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の数平均分子量(Mn)の値で1000以上であることが好ましく、2000以上がより好ましく、3000以上が最も好ましい。
【0032】
本発明のポリエステル(C2)は、本発明の目的を損なわない範囲で重合時および/もしくは重合後に充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、天然繊維、有機繊維、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土など)、酸化防止剤(ヒンダートフェノール系、アミン系、ホスファイト系、チオエステル系など)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系など)、赤外線吸収剤、有機顔料(シアニン系、スチルベン系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリノン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、クノフタロン系など)、無機顔料、蛍光増白剤、滑剤、離形剤、難燃剤(リン系、ブロム系など)、抗菌剤、制電剤、核化剤、撥水剤、防カビ剤、消臭剤、ブロッキング防止剤などを添加することができる。
【0033】
その他、天然由来の有機充填剤として、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材などのチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維などの植物繊維もしくはこれらの植物繊維から加工されたパルプやセルロース繊維および絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダなどの動物繊維などの繊維状のもの、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉などの粉末状のものを配合することができる。
【0034】
また、本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、重合時および/もしくは重合後に他の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンなど)および熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂およびエポキシ樹脂など)および軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体、ポリエステルエラストマーおよびポリアミドエラストマーなど)などの少なくとも1種以上をさらに含有させることができる。
【0035】
また、本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、重合時および/もしくは重合後に必要に応じて、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、未水添または水添スチレン/イソプレン/スチレントリブロック共重合体、未水添または水添スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、(「g」はグラフトを表わす、以下同じ)、エチレン/メタクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−マレイミド共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−N−フェニルマレイミド共重合体およびこれら共重合体の部分ケン化物、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/グリシジルエーテル共重合体エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/2,5−ノルボルナジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−N−フェニルマレイミド共重合体、エチレン/ブテン−1−g−N−フェニルマレイミド共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/イソプレン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、ナイロン12/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ナイロン12/ポリトリメチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート/ポリトリメチレングリコール共重合体などのエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物を添加することができる。
【0036】
本発明で製造するポリエステル(C2)は単体で、もしくは樹脂組成物として、溶融加工性に優れるため、射出成形や押出成形などの方法によって、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フイルム、繊維、シートなどとして利用できる。またフイルムとしては、未延伸、一軸延伸、二軸延伸、インフレーションフィルムなどの各種フイルムとして、繊維としては、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維として利用することができる。また、これらの物品は、電気・電子部品、建築部材、土木部材、農業資材、自動車部品、日用品など各種用途に利用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0038】
(1)分子量測定
数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の数平均分子量の値である。GPC測定は、検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410を用い、ポンプにMODEL510高速液体クロマトグラフィーを用い、カラムにShodex GPC HFIP−806MとShodex GPC HFIP−LGを直列に接続したものを用いて行った。測定条件は、流速0.5mL/minとし、溶離液にヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入した。
【0039】
(2)成分組成特定
得られたポリマーおよび回収した留出液はNMR(核磁気共鳴)装置を用いプロトンおよび/もしくはカーボンの測定によって得られたスペクトルで成分組成を求めた。NMR測定は日本分光JEOL−EX90を用い、測定溶媒に重水素化HFIP、重水素化クロロホルム(CDCl3)を用い、試料濃度0.02〜1mg/mLの溶液で測定した。
【0040】
(3)熱特性測定
得られたポリマーの熱特性は、セイコー電子工業(株)製ロボットDSCを用い、サンプル量5〜8mg、窒素雰囲気下で、測定温度条件は得られるポリマーによって適宜設定した。昇温・降温速度条件は20℃/minで室温から測定対象ポリマーの融点(Tm)+25℃まで昇温し、20℃/minで室温へ冷却し、これを繰り返し2回施行して、2回目の昇温時に得られた融点(Tm)および融解熱量(ΔHm)を測定結果とした。
【0041】
(4)引張試験
ASTM D638に準じて23℃で実施した。
【0042】
(5)曲げ試験
ASTM D790に準じて23℃で実施した。
【0043】
参考例1
ポリエステルの重合装置にDMTを100g、BGを51g仕込み、窒素フロー条件下でオイルバスで200℃へ昇温した。攪拌しながらDMT溶解後に触媒チタンテトラブトキシ(TBT)を0.05g添加し、3時間かけて徐々に減圧と昇温を行い、最終的に30Pa以下に減圧し、240℃まで昇温して攪拌したまま放置した。分子量増加と共に粘度が増加し、トルクが0.4N・mへ達した時点で吐出、ペレット化し、回収した。得られたポリマーはTm226℃、ΔHm51J/g、数平均分子量9200のPBTであった。
【0044】
参考例2
ポリエステルの重合装置にDMTを100g、PGを43g仕込み、窒素フロー条件下でオイルバスで200℃へ昇温した。攪拌しながらDMT溶解後に触媒チタンテトラブトキシ(TBT)を0.05g添加し、3時間かけて徐々に減圧と昇温を行い、最終的に30Pa以下に減圧し、240℃まで昇温して攪拌したまま放置した。分子量増加と共に粘度が増加し、トルクが0.4N・mへ達した時点で吐出、ペレット化し、回収した。得られたポリマーはTm229℃、ΔHm52J/g、数平均分子量8900のPPTであった。
【0045】
参考例3
ポリエステルの重合装置にDMTを100g、EGを35g仕込み、窒素フロー条件下でオイルバスで200℃へ昇温した。攪拌しながらDMT溶解後に触媒チタンテトラブトキシ(TBT)を0.05g添加し、3時間かけて徐々に減圧と昇温を行い、最終的に30Pa以下に減圧し、270℃まで昇温して攪拌したまま放置した。分子量増加と共に粘度が増加し、トルクが0.4N・mへ達した時点で吐出、ペレット化し、回収した。得られたポリマーはTm258℃、ΔHm45J/g、数平均分子量8800のPETであった。
【0046】
参考例4
参考例1で得られたPBTとガラス繊維(平均繊維径10μmチョップドストランド)を表3に示す配合比でドライブレンドした後、40mmφ単軸押出機のホッパーに供給し、シリンダー温度270℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、ガラス繊維強化樹脂組成物を得た。この組成物を射出成形機により、シリンダー温度270℃、金型温度80℃の条件でASTM規格の物性試験片を成形した。機械物性評価を行った結果を表3に示す。
【0047】
参考例5
参考例1で得られたPBTとエラストマー(エチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体(共重合比:64/30/6wt%))を表3に示す配合比でドライブレンドした後、40mmφ単軸押出機のホッパーに供給し、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、エラストマー配合樹脂組成物を得た。この組成物を射出成形機により、シリンダー温度270℃、金型温度80℃の条件でASTM規格の物性試験片を成形した。機械物性評価を行った結果を表3に示す。
【0048】
実施例1
ポリエステルの重合装置に、参考例3で製造したPETを100g、BGを100g(PETのエチレングリコール単位とテレフタル酸単位から構成される繰返単位に対して160モル%)仕込み、窒素フロー条件下でオイルバスで200℃へ昇温した。反応系を攪拌しながら2時間かけて徐々に220℃へ昇温してPETを融解させて、留出してきたEGを回収した。その後、留出液の温度を確認しながら1時間かけて徐々に240℃へ昇温して、留出してきたEGおよびBGをそれぞれ回収した。240℃で留出速度が低下してきたら3時間かけて徐々に減圧して留出してきた過剰のBGを回収しながら、最終的に30Pa以下に減圧し攪拌したまま放置した。分子量増加と共に粘度が増加し、トルクが3.5N・mへ達した時点で吐出、回収した。得られたポリマーはTm222℃、ΔHm40J/g、数平均分子量6900のPBTであった。この結果からPETがエステル交換もしくは解重合され、沸点の低いEGがBGよりも先に系外へ留出し、残ったBGが重合したことがわかる。
【0049】
実施例2
ポリエステルの重合装置に、参考例3で製造したPETを100g、PGを87g(PETのエチレングリコール単位とテレフタル酸単位から構成される繰返単位に対して160モル%)仕込み、窒素フロー条件下でオイルバスで200℃へ昇温した。反応系を攪拌しながら2時間かけて徐々に215℃へ昇温してPETを融解させて、留出してきたEGを回収した。その後、留出液の温度を確認しながら1時間かけて徐々に240℃へ昇温して、留出してきたEGおよびPGをそれぞれ回収した。240℃で留出速度が低下してきたら3時間かけて徐々に減圧して留出してきた過剰のPGを回収しながら、最終的に30Pa以下に減圧し攪拌したまま放置した。分子量増加と共に粘度が増加し、トルクが3.4N・mへ達した時点で吐出、回収した。得られたポリマーはTm227℃、ΔHm48J/g、数平均分子量6700のPPTであった。
この結果からPETがエステル交換もしくは解重合され、沸点の低いEGがPGよりも先に系外へ留出し、残ったPGが重合したことがわかる。
【0050】
実施例3
ポリエステルの重合装置に、洗浄しペレット状にしたペットボトルを100g、BGを100g(PETのエチレングリコール単位とテレフタル酸単位から構成される繰返単位に対して160モル%)仕込み、窒素フロー条件下でオイルバスで200℃へ昇温した。反応系を攪拌しながら2時間かけて徐々に220℃へ昇温してPETを融解させて、留出してきたEGを回収した。その後、留出液の温度を確認しながら1時間かけて徐々に240℃へ昇温して、留出してきたEGおよびBGをそれぞれ回収した。240℃で留出速度が低下してきたら3時間かけて徐々に減圧して留出してきた過剰のBGを回収しながら、最終的に30Pa以下に減圧し、攪拌したまま放置した。分子量増加と共に粘度が増加し、トルクが3.4N・mへ達した時点で吐出、回収した。得られたポリマーはTm223℃、ΔHm43J/g、数平均分子量5800のPBTであった。
【0051】
実施例4
ポリエステルの重合装置に、参考例3で製造したPETを100g、BGを100g(PETのエチレングリコール単位とテレフタル酸単位から構成される繰返単位に対して160モル%)仕込み、窒素フロー条件下でオイルバスで240℃へ昇温した。攪拌し、PETを溶解させながら留出してきたEGおよびBG液を回収した。PETが溶解し、留出速度が低下してきたら3時間かけて徐々に減圧して過剰のBGを回収し、最終的に30Pa以下に減圧し攪拌したまま放置した。分子量増加と共に粘度が増加し、トルクが3.4N・mへ達した時点で吐出、回収した。得られたポリマーはTm212℃、ΔHm24J/g、数平均分子量6200のPET成分18%とPBT成分82%の共重合ポリマーであった。この結果から、EG、BGともに沸点以上の240℃で反応を行ったため、PETのエステル交換もしくは解重合中にもBGが留出して、EGが一部残ったものと考えられる。
【0052】
実施例5
ポリエステルの重合装置に、参考例3で製造したPETを100g、BGを100g(PETのエチレングリコール単位とテレフタル酸単位から構成される繰返単位に対して160モル%)仕込み、窒素フロー条件下でオイルバスで200℃へ昇温した。攪拌しながら2時間かけて徐々に220℃へ昇温してPETを融解させて、留出してきたEGを回収した。その後、留出液の温度を確認しながら1時間かけて徐々に240℃へ昇温してPETを溶解させ、留出してきたEGおよびBGをそれぞれ回収した。その後240℃で留出速度が低下してきたら触媒TBTを0.045g添加。その後3時間かけて徐々に減圧して留出してきた過剰のBGを回収しながら、最終的に30Pa以下に減圧し攪拌したまま放置。分子量増加と共に粘度が増加し、トルクが3.5N・mへ達した時点で吐出、回収した。得られたポリマーはTm224℃、ΔHm46J/g、数平均分子量8600のPBTであった。
【0053】
実施例6
ポリエステルの重合装置に、参考例3で製造したPETを100g、1,4−CHDM(cys−trans mixture)を160g(PETのエチレングリコール単位とテレフタル酸単位から構成される繰返単位に対して160モル%)仕込み、窒素フロー条件下でオイルバスで200℃へ昇温。攪拌しながら2時間かけて徐々に220℃へ昇温してPETを融解させて、留出してきたEGを回収した。その後、留出液の温度を確認しながら2時間かけて270℃へ昇温し、留出してきたEGおよび1,4−CHDMをそれぞれ回収した。270℃で留出速度が低下してきたら触媒TBTを0.045g添加した。その後3時間かけて徐々に減圧・昇温して留出してきた過剰の1,4−CHDMを回収しながら、最終的に30Pa以下に減圧し、オイルバス温度285℃で攪拌したまま放置した。分子量増加と共に粘度が増加し、トルクが3.6N・mへ達した時点で吐出、回収した。得られたポリマーはTm276℃、ΔHm51J/g、数平均分子量6600のPCTであった。この結果からPETがエステル交換もしくは解重合され、沸点の低いEGが1,4−CHDMよりも先に系外へ留出し、残った1,4−CHDMが重合したことがわかる。
【0054】
実施例7
実施例1で得られたPBTとガラス繊維(平均繊維径10μmチョップドストランド)を表3に示す配合比でドライブレンドした後、40mmφ単軸押出機のホッパーに供給し、シリンダー温度270℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、ガラス繊維強化樹脂組成物を得た。この組成物を射出成形機により、シリンダー温度270℃、金型温度80℃の条件でASTM規格の物性試験片を成形した。機械物性評価を行った結果を表3に示す。参考例4と比べ、リサイクル品でも同等の機械物性を維持することがわかる。
【0055】
実施例8
実施例1で得られたPBTとエラストマー(エチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体(共重合比:64/30/6wt%))を表3に示す配合比でドライブレンドした後、40mmφ単軸押出機のホッパーに供給し、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、エラストマー配合樹脂組成物を得た。この組成物を射出成形機により、シリンダー温度270℃、金型温度80℃の条件でASTM規格の物性試験片を成形した。機械物性評価を行った結果を表3に示す。参考例5と比べ、リサイクル品でも同等の機械物性を維持することがわかる。
【0056】
実施例9
ポリエステルの重合装置に、参考例3で製造したPETを100g、PEG(ALDRICH社製、数平均分子量14000)を43g(PETのエチレングリコール単位とテレフタル酸単位から構成される繰返単位に対して100モル%)仕込み、窒素フロー条件下でオイルバスで200℃へ昇温した。反応系を攪拌しながら2時間かけて徐々に220℃へ昇温してPETを融解させて、その後、1時間かけて徐々に240℃へ昇温して、3時間かけて徐々に減圧して留出してきたEG、ジエチレングリコール(DEG)を回収しながら、最終的に30Pa以下に減圧し攪拌したまま放置した。エステル交換反応と共に粘度が増加し、撹拌翼に絡まり固化した時点で取りだし、水洗後、回収した。得られたポリマーはTmが確認されず、エラストマー状であり、PET成分が10%とテレフタル酸/PEGからなるポリエステル成分が90%のブロックポリマー(PEG−PET)であった。この結果からPETとPEGがエステル交換してブロックポリマーが得られたものと考えられる。
【0057】
実施例10
ポリエステルの重合装置に、参考例3で製造したPETを100g、PEG(ALDRICH社製、数平均分子量14000)を4.3g(PETのエチレングリコール単位とテレフタル酸単位から構成される繰返単位に対して60モル%)仕込み、窒素フロー条件下でオイルバスで200℃へ昇温した。反応系を攪拌しながら2時間かけて徐々に220℃へ昇温してPETを融解させて、その後、1時間かけて徐々に240℃へ昇温して、3時間かけて徐々に減圧して留出してきたEG、ジエチレングリコール(DEG)を回収しながら、最終的に30Pa以下に減圧し攪拌したまま放置した。エステル交換反応と共に粘度が増加し、トルクが振り切れた時点で取りだし、水洗後、回収した。得られたポリマーはTm237℃、ΔHm10J/gであり、PET成分が50%とテレフタル酸/PEGからなるポリエステル成分が50%のブロックポリマー(PEG−PET)であった。この結果からPETとPEGがエステル交換して一部ブロックポリマーが得られたものと考えられる。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
以上の結果、用いるグリコール成分の沸点が高いものが系内に残る傾向があることがわかり、ポリエステルに含まれるグリコール成分よりも高い沸点のグリコール成分を用いることで、ポリエステルを原料に新たに異なる組成のポリエステルが簡素な工程で合成できることがわかった。この方法を用いることで、容易にポリエステルの再利用・原料の回収が可能なリサイクル技術が提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコール成分(A1)とジカルボン酸成分(B1)を原料とするポリエステル(C1)を、グリコール成分(A1)よりも沸点の高いグリコール成分(A2)の存在下、減圧、常圧のいずれかの条件で加熱する工程、および反応系中で遊離したグリコール成分(A1)を系外に除去する工程を含むことを特徴とするポリエステル(C2)の製造方法。
【請求項2】
ポリエステル(C1)がポリエチレンテレフタレートであり、グリコール成分(A2)が1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種以上である請求項1記載のポリエステル(C2)の製造方法。
【請求項3】
ポリエステル(C1)が廃棄物回収ポリエステルであることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル(C2)の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載のポリエステル(C2)の製造方法に際し、系外に除去したグリコール成分(A1)を回収することを特徴とするグリコール成分(A1)の回収方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の方法により製造されるポリエステル(C2)100重量部に対し、1〜100重量部の充填剤を配合することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の方法により製造されるポリエステル(C2)100重量部に対し、エラストマーを1〜100重量部配合することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−176757(P2006−176757A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315788(P2005−315788)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】