説明

ポリエステルの製造方法

【課題】反応速度が大きく、副生成物として環状オリゴマーの生成を抑制したポリエステルの製造方法を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される化合物と、(B)エポキシ化合物とを(C)ホスフィン類の存在下で反応させることを特徴とするポリエステルの製造方法を提供する。


(式(1)中、R1〜R6は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルの製造方法として、金属アルコキシドをはじめとする有機金属化合物などの求核試薬を用い、双環状ビス(γ−ブチロラクトン)類とエポキシドの交互共重合を行う方法が知られている(特許文献1および非特許文献1〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−62065号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T. Takata, A. Tadokoro, and T. Endo Macromolecules 1992, 25,2782.
【非特許文献2】A. Tadokoro, T. Takata, and T. Endo Macromolecules 1993, 26,4400.
【非特許文献3】T. Takata, A. Tadokoro, K. Chung, and T. Endo Macromolecules1995, 28, 1340.
【非特許文献4】K. Chung, T. Takata, and T. Endo Macromolecules 1995, 28, 3048.
【非特許文献5】K. Chung, T. Takata, and T. Endo Macromolecules 1997, 30, 2532.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のポリエステルの製造方法では、反応速度が小さく、また、副生成物として環状オリゴマーが生成するという問題があった。
従って本発明の課題は、開始剤として有機金属化合物を用いずに、反応速度が大きく、副生成物としての環状オリゴマーの生成を抑制したポリエステルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、双環状ビス(γ−ブチロラクトン)類と、エポキシ化合物とを、ホスフィン類の存在下で反応させれば、反応速度が大きく、環状オリゴマーの生成を抑制でき、純度の高いポリエステルが効率良く得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)下記一般式(1)で表される化合物と、(B)エポキシ化合物とを、(C)ホスフィン類の存在下で反応させることを特徴とするポリエステルの製造方法を提供するものである。
【0008】
【化1】

【0009】
(式(1)中、R1〜R6は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基を示す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリエステルの製造方法によれば、有機金属化合物を用いずに、反応速度が大きく、副生成物として環状オリゴマーの生成を抑制したポリエステルを効率良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1で得られた生成物の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図2】実施例1で得られた生成物の13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例1で得られた生成物のIRスペクトルを示す図である。
【図4】実施例1および比較例1で得られた生成物のMALDI−Tof−Massスペクトルを示す図である。
【図5】実施例1及び比較例1において評価した重合反応中のモノマー消費率と重合反応時間との関係を示す図である。
【図6】実施例4で得られた生成物のIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリエステルの製造方法は、(A)下記一般式(1)で表される化合物と、(B)エポキシ化合物と、を(C)ホスフィン類の存在下で反応させることを特徴とする。
【0013】
【化2】

【0014】
(式(1)中、R1〜R6は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基を示す。)
【0015】
まず、本発明のポリエステルの製造方法に用いる各成分について説明する。
[(A)成分]
(A)成分は、双環状ビス(γ−ブチロラクトン)類であり、上記式(1)で表される化合物である。
式(1)中、R1〜R6は、同一又は異なって水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基を示す。炭素数1〜12の炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基等を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル等を挙げることができる。また、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素数3〜12のハロゲン化シクロアルキル基、炭素数6〜12のハロゲン化芳香族炭化水素基を挙げることができ、具体的には、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタブロモエチル基、クロロフェニル基、クロロナフチル基等を挙げることができる。また、炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、アリルオキシ基、ベンジルオキシ基等を挙げることができる。
【0016】
1、R2としては、これらの中でも、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基であることがさらに好ましい。
また、R3〜R6としては、これらの中でも、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基であることがさらに好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0017】
式(1)で表される化合物としては、具体的には、2,8−ジオキサ−1−メチルビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(R1=CH3、R2〜R6=H)、2,8−ジオキサ−1−エチルビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(R1=C25、R2〜R6=H)、2,8−ジオキサ−1−プロピルビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(R1=C37、R2〜R6=H)、2,8−ジオキサ−1−イソプロピルビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(R1=i−Pr、R2〜R6=H)、2,8−ジオキサ−1−フェニルビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(R1=C65、R2〜R6=H)、2,8−ジオキサ−1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(R1=C62(OCH33、R2〜R6=H)、2,8−ジオキサ−1−(フェノキシメチル)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(R1=CH2OC65、R2〜R6=H)等を挙げることができる。
【0018】
[(B)成分]
(B)成分は、少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシ化合物であり、1つのエポキシ基を有する化合物と、2つ以上のエポキシ基を有する化合物のいずれも用いることができるが、好ましくは、1つ又は2つのエポキシ基を有する化合物である。
なお、少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、エポキシ基を含有する重合体も含む。この場合、エポキシ基は、分子構造のいずれの部位に存在してもよい。例えば、主鎖の末端に存在してもよいし、側鎖の末端に存在してもよい。反応効率の観点からは、通常、側鎖の末端にエポキシ基を有する化合物が好ましい。エポキシ基を含有する重合体としては、例えば、ポリグリシジルメタクリレート、ポリグリシジルアクリレートなどが挙げられる。
【0019】
1つのエポキシ基を有する化合物としては、式(3)
【0020】
【化3】

【0021】
(式(3)中、R10及びR11は、同一又は異なって、水素原子、又は置換基(エポキシ基以外)を有していてもよい炭素数1〜24の炭化水素基を示す)で表される化合物が挙げられる。ここで、R10及びR11で示される炭化水素基上の置換基としてはハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。また炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基が挙げられ、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基がより好ましい。このような1つのエポキシ基を有する化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、グリシドール、エポキシブタン、ペンタメチレンオキシド、エポキシペンタン、エポキシブタン、エポキシシクロペンタン、エポキシシクロヘキサン、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。
【0022】
2つのエポキシ基を有する化合物としては、式(4)
【0023】
【化4】

【0024】
(式(4)中、R12及びR13は、同一又は異なって、水素原子、又は置換基(エポキシ基以外)を有していてもよい炭素数1〜24の炭化水素基を示し、R14は炭素数2〜24の置換基を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよい複素環式基を示す)で表される化合物が挙げられる。R12〜R14で示される炭化水素基及び複素環式基上の置換基としてはハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。また炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基及びこれらが結合した基が挙げられ、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基がより好ましい。複素環式基としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれる1〜4個を有する複素環式基が挙げられる。このような2つのエポキシ基を有する化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,3−ビス−{4−[1−メチル−1−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−エチル]−フェノキシ}−プロパン−2−オール、1,3−ビス−{2,6−ジブロモ−4−[1−(3,5−ジブロモ−4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−メチル−エチル]−フェノキシ}−プロパン−2−オール、1−(3−(2−(4−((オキシラン−2−イル)メトキシ)フェニル)プロパン−2−イル)フェノキシ)−3−(4−(2−(4−((オキシラン−2−イル)メトキシ)フェニル)プロパン−2−イル)フェノキシ)プロパン−2−オール、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0025】
上述のエポキシ化合物の中でも、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好適に用いられ、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルがより好適に用いられる。
【0026】
[(C)成分]
(C)成分としては、ホスフィン類であり、ホスフィン化合物、ホスファイト化合物等を挙げることができ、中でも下記式(2)で表される化合物が好適に用いられる。
【0027】
【化5】

【0028】
式(2)中、R7〜R9は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基を示す。
【0029】
炭素数1〜12の炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基等を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を挙げることができる。また、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素数3〜12のハロゲン化シクロアルキル基、炭素数6〜12のハロゲン化芳香族炭化水素基を挙げることができ、具体的には、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタブロモエチル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、クロロナフチル基等を挙げることができる。また、炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、アリルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
【0030】
7〜R9としては、これらの中でも、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基等であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基であることがさらに好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。
【0031】
また、本発明のポリエステルの製造方法に用いられる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロムヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン化化合物;酢酸エチル等の飽和カルボン酸エステル;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、1,4−ジオキサンが好ましく、ハロゲン化化合物がより好ましく、具体的には、テトラヒドロフランが特に好ましい。
【0032】
上記反応の反応時間は、1〜360時間が好ましく、24〜120時間がより好ましく、48〜72時間が特に好ましい。上記反応の反応温度は、室温〜300℃が好ましく、60〜180℃がより好ましく、100〜140℃が特に好ましい。また、上記反応の反応圧力は1〜2気圧程度で行うことが好ましく、大気圧下で行うのがより好ましい。
【0033】
反応終了後は、溶媒留去、再沈澱、遠心分離、またはろ過等の公知の手段により、目的とするポリエステルを採取することができる。得られるポリエステルには、副生成物として環状オリゴマーの混入が少なく、純度が高いポリエステルが得られる。
【0034】
(A)上記一般式(1)で表される化合物と、(B)エポキシ化合物と、反応させて得られるポリエステルは、(B)エポキシ化合物として上記式(3)で表される化合物を用いた場合には、下記式(5)で表される繰り返し単位を有するものである。
【0035】
【化6】

【0036】
(式(5)中、R1〜R6、R10及びR11は前記と同じ)
【0037】
また、得られるポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000であることが好ましく、3,000〜50,000であることがより好ましい。本発明方法により得られるポリエステルは、純度が高く、開始剤の残渣として金属を含まないことから電気材料、電子材料等に特に有用である。
【実施例】
【0038】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
窒素雰囲気下、10mL容量のアンプルに2,8−ジオキサ−1−メチルビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(R1=CH3、R2〜R6=H)250mg(1.6mmol)、グリシジルフェニルエーテル239mg(1.6mmol)、トリフェニルホスフィン3.7mg(12.8μmol)、テトラヒドロフラン0.8mLを入れ、脱気封管をした後、120℃で72時間重合反応を行った。反応後、反応混合物を冷却した後、酢酸のクロロホルム溶液(1vol%,2mL)を加えることによって、反応を停止した。この反応溶液をメタノールに注ぎ、メタノールに不溶なオイル状の生成物を集め、真空乾燥を行い、収率87%で生成物を得た。
得られた生成物について、下記の方法により、構造分析、重量平均分子量を評価した。また、重合反応中のモノマー消費率を下記の方法により評価した。
【0040】
(1)構造分析
NMR(400MHz、CDCl3)、IR(KBr法)により行った。
(2)重量平均分子量
重量平均分子量は、溶媒には、テトラヒドロフランを用い、測定温度40℃にて、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
(3)モノマー消費率
反応溶液から採取した測定用試料を溶媒除去した後、NMRにより、2,8−ジオキサ−1−メチルビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオンを定量し、下記式よりモノマー消費率を算出した。
モノマー消費率=1−(測定用試料中の2,8−ジオキサ−1−メチルビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオンの量)/2,8−ジオキサ−1−メチルビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオンの仕込み量)
【0041】
得られた生成物の重量平均分子量(Mw)は8,600であり、Mw/Mnは1.32であった。
得られた生成物の1H−NMR、13C−NMR(400MHz、溶媒CDCl3)を測定した結果をそれぞれ図1、2に、得られた生成物のIRを測定した結果を図3に示す。
【0042】
(比較例1)
窒素雰囲気下、10mL容量のアンプルに2,8−ジオキサ−1−メチルビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(R1=CH3、R2〜R6=H)250mg(1.6mmol)、グリシジルフェニルエーテル239mg(1.6mmol)、t−ブトキシカリウム5.6mg(12.8μmol)、テトラヒドロフラン0.8mLを入れ、脱気封管をした後、120℃で72時間重合反応を行った。反応後、反応混合物を冷却した後、酢酸のクロロホルム溶液(1vol%,2mL)を加えることによって、反応を停止した。この反応溶液をメタノールに注ぎ、メタノールに不溶なオイル状の生成物を集め、真空乾燥を行い、収率72%で生成物を得た。得られた生成物の重量平均分子量(Mw)は8,100であり、Mw/Mnは1.22であった。また、重合反応中のモノマー消費率を実施例1と同様の方法により評価した。
【0043】
実施例1および比較例1で得られた生成物を、MALDI−Tof−Massを用いて測定した結果を図4に示す。実施例1で得られた生成物は、環状オリゴマー(CY)のピーク強度が従来の三級ブトキシカリウムを開始剤として用いた場合と比較して著しく減少している。すなわち、金属アルコキシド存在下で重合を行った場合より、ホスフィン類の存在下で重合を行った場合に、環状オリゴマーの生成が抑制されていることがわかる。
得られた生成物の1H−NMR、13C−NMR(400MHz、溶媒CDCl3)およびFT−IR(Neat)を測定した結果は実施例1で得られた生成物と同様のスペクトルを示した。
【0044】
実施例1および比較例1において評価した重合反応中のモノマー消費率と重合反応時間との関係を図5に示す。実施例1においては、比較例1と比較してモノマー消費率が大きく、反応速度が高いことがわかる。すなわち、金属アルコキシド存在下で重合を行った場合より、ホスフィン類の存在下で重合を行った場合に、反応速度が向上していることがわかる。
【0045】
(実施例2)
窒素雰囲気下、10mL容量のアンプルに2,8−ジオキサ−1−メチルビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(R1=CH3、R2〜R6=H)250mg(1.6mmol)、グリシジルフェニルエーテル239mg(1.6mmol)、トリノルマルブチルホスフィン2.6mg(12.8μmol)、テトラヒドロフラン0.8mLを入れ、脱気封管をした後、120℃で72時間重合反応を行った。反応後、反応混合物を冷却した後、酢酸のクロロホルム溶液(1vol%,2mL)を加えることによって、反応を停止した。この反応溶液をメタノールに注ぎ、メタノールに不溶なオイル状の生成物を集め、真空乾燥を行い、収率90%で生成物を得た。
得られた生成物について、実施例1と同様に、構造分析、重量平均分子量を評価した。得られた生成物の重量平均分子量(Mw)は8,500であり、Mw/Mnは1.31であった。また、得られた生成物の1H−NMR、13C−NMR(400MHz、溶媒CDCl3)、IRを測定したところ、実施例1と同様のスペクトルが得られた。
【0046】
(実施例3)
窒素雰囲気下、10mL容量のアンプルに2,8−ジオキサ−1−メチルビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(R1=CH3、R2〜R6=H)250mg(1.6mmol)、グリシジルフェニルエーテル239mg(1.6mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン3.6mg(12.8μmol)、テトラヒドロフラン0.8mLを入れ、脱気封管をした後、120℃で72時間重合反応を行った。反応後、反応混合物を冷却した後、酢酸のクロロホルム溶液(1vol%,2mL)を加えることによって、反応を停止した。この反応溶液をメタノールに注ぎ、メタノールに不溶なオイル状の生成物を集め、真空乾燥を行い、収率64%で生成物を得た。
得られた生成物について、実施例1と同様に、構造分析、重量平均分子量を評価した。得られた生成物の重量平均分子量(Mw)は7,800であり、Mw/Mnは1.31であった。また、得られた生成物の1H−NMR、13C−NMR(400MHz、溶媒CDCl3)、IRを測定したところ、実施例1と同様のスペクトルが得られた。
【0047】
(実施例4)
2,8−ジオキサ−1−メチルビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン(R1=CH3、R2〜R6=H)160mg(1.0mmol)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル269mg(0.5mmol)、トリフェニルホスフィン5.4mg(2.0μmol)をTHF2mLに溶解し、その溶液を2mL容量の型に入れた後、減圧下(200mmHg)、室温でTHFを留去した。THFを留去後、型をオーブンに入れ窒素雰囲気下120℃で72時間反応を行った。反応後、型から取り出した硬化物をメタノールで洗浄、乾燥することにより定量的に硬化物を得た。
得られた硬化物について、下記の方法により、構造分析を行った。
【0048】
(1)構造分析
IRスペクトル測定およびTG、DSC測定により行った。
【0049】
得られた生成物のIRを測定した結果を図6に示す。TG測定の結果から10%熱分解温度(Td10)が321℃であり、また、DSC測定の結果からガラス転移点(Tg)が−19℃であることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される化合物と、(B)エポキシ化合物とを(C)ホスフィン類の存在下で反応させることを特徴とするポリエステルの製造方法。
【化1】

(式(1)中、R1〜R6は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基を示す。)
【請求項2】
ホスフィン類が下記一般式(2)で表される化合物である、請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
【化2】

(式(2)中、R7〜R9は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基を示す。)
【請求項3】
(B)エポキシ化合物が、下記式(3)で表される化合物と下記式(4)で表される化合物の少なくとも1種である、請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
【化3】

(式(3)中、R10及びR11は、同一又は異なって、水素原子、又は置換基(エポキシ基以外)を有していてもよい炭素数1〜24の炭化水素基を示す)
【化4】

(式(4)中、R12及びR13は、同一又は異なって、水素原子、又は置換基(エポキシ基以外)を有していてもよい炭素数1〜24の炭化水素基を示し、R14は炭素数2〜24の置換基を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよい複素環式基を示す)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−254944(P2010−254944A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191452(P2009−191452)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】