説明

ポリエステルの製造方法

【課題】CD含有量および溶出量を低減したポリエステルの製造方法であって、しかもポリエステルの物性低下が少なく、更に成形性良好なポリエステルを提供。
【解決手段】脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを反応させるエステル化反応工程と、該エステル化反応工程を経て得られるポリエステルをペレット化する工程と、得られるポリエステルペレットと、エタノールおよび水を含有する混合液とを、接触させる接触処理工程と、を有するポリエステルの製造方法であって、該混合液が混合液全体に対して水を10質量%以上99質量%以下含有する、ポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを主原料とするポリエステルの製造方法に関する。更に詳しくは環状二量体などのオリゴマー含有量の少ないポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンサクシネートに代表される脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを主原料とするポリエステル(以下、ポリエステルと略記することがある)は、その原料を植物資源由来のものに求めることができること、良好な物性および分解性を有することなどから、農業資材、土木資材、植生資材、包装材等の製品に加工され、広範な利用が期待されている。
【0003】
しかしながら、上記ポリエステルの成形品は、成形後一定期間放置すると、その表面に曇り(以下、ブリードアウトまたは白化現象と記載することがある)が生じて、表面光沢が消失するという問題があった。こうした問題は、ポリエステルの製造時、該ポリエステルの生成と同時に生成される環状二量体(以下、CDと略記することがある)が、成形後、一定期間経過した後に成形品の表面に析出することによるものと考えられている。また、CD含有量が多いと飲料容器などに成形して内容液による溶出テストを行った場合、溶出量が多く容器に適さないという問題もある。このため、ポリエステルから環状二量体を取り除く方法が研究されている。
【0004】
特許文献1には、ポリエステルをアセトン処理することによる、CD含有量の低減方法が記載されている。また、特許文献2には、ポリエステルを粉末、ペレットまたは成形品の状態にてアルコールまたはアルコールを主成分とする水/アルコール混合液によるCD含有量の低減処理方法が記載されており、具体的に適用可能なアルコールとしてメタノール、イソプロパノールが記載されている。更に、水を主成分とする水/アルコール混合液による処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2004−107457号公報
【特許文献2】日本国特開平7−316276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CD含有量の低減のためにポリエステルをアセトン処理した場合には、処理後のペレットに残存するアセトンによる異臭の問題が生じることなどから、アセトン処理後更に、別途水処理工程を要するなど過大な設備を要するという問題があった。
また、ポリエステルを粉末、ペレットまたは成形品の状態にてアルコールまたはアルコールを主成分とする水/アルコール混合液により処理をした場合には、特にメタノール、イソプロパノールをアルコールとして用いた場合、CD含有量の低減の効果が必ずしも満足できるものではなく、また処理時間も長いなどの問題点があった。更に、イソプロパノールを用いた場合は、接触処理後の乾燥においてペレット中にイソプロパノールが残留しやすく、ペレットを溶融成形するときに溶融粘度が低下するという問題があった。また、CDを効率よく低減させようと処理温度をより高温にする方法があるが、その場合、接触処理時のポリエステルの加水分解が大きく、分子量低下など物性を損なうおそれがあるという問題があった。
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、CD含有量および溶出量を低減したポリエステルの製造方法であって、しかも当該製造方法を経た後でもポリエステルの物性低下が少なく、更に成形性良好なポリエステルを製造することのできる、ポリエステルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを反応させるエステル化反応工程を経て得られるポリエステルをペレット化してなるポリエステルペレットと、混合液全体に対して水を10質量%以上99質量%以下含有するエタノールおよび水を含有する混合液とを、接触処理することにより、ポリエステル中に含有されるCDを効率よく除去することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明の要旨は下記[1]〜[7]に存する。
[1] 脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを反応させるエステル化反応工程と、該エステル化反応工程を経て得られるポリエステルをペレット化する工程と、得られるポリエステルペレットと、エタノールおよび水を含有する混合液とを、接触させる接触処理工程と、を有するポリエステルの製造方法であって、該混合液が混合液全体に対して水を10質量%以上99質量%以下含有する、ポリエステルの製造方法。
[2] ポリエステルペレットと前記混合液とを接触させる温度が、25℃以上且つポリエステルの融点以下である、請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
[3] ポリエステルペレットと前記混合液との接触により混合液に抽出されたオリゴマーを、ポリエステルの原料として使用する、上記[1]または[2]に記載のポリエステルの製造方法。
[4] 前記混合液が、混合液全量に対して15質量%以下のイソプロパノールを含有する、上記[1]から[3]のいずれか1に記載のポリエステルの製造方法。
[5] 接触処理工程後に乾燥工程を有し、乾燥工程後のポリエステルが、1000質量ppm以下のエタノールを含んでいる、上記[1]から[4]のいずれか1に記載のポリエステルの製造方法。
[6] 上記[1]から[5]のいずれか1に記載の製造方法により得られるポリエステルであって、固有粘度が1.4dL/g以上2.8dL/g以下であり、環状二量体含有量が500質量ppm以上6000質量ppm以下であるポリエステル。
[7] 末端カルボキル基量が80(当量/トン)以下、5(当量/トン)以上である、上記[6]に記載のポリエステル。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、CD含有量および溶出量を低減したポリエステルであって、しかも優れたポリエステル物性を有するものであって、更に成形性も良好なポリエステルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明で採用するエステル化反応工程の一実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明で採用する重縮合工程の一実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明で採用する接触処理工程の一実施形態を示す概略図である。
【図4】本発明で採用する乾燥工程の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、“質量%”、“質量ppm”及び“質量部”と、“重量%”、“重量ppm”及び“重量部”とは、それぞれ同義である。
【0013】
本発明の製造方法は、少なくとも脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを反応させるエステル化反応工程を経て得られるポリエステルをペレット化し、得られるポリエステルペレットと、エタノールおよび水を含有する混合液とを、接触させる接触処理工程を有するポリエステルの製造方法であって、該混合液が混合液全体に対して水を10質量%以上99質量%以下含有する、ポリエステルの製造方法である。本発明の製造方法では、少なくとも脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを主原料として反応させるエステル化反応工程を有するが、「脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを主原料として」とは、原料として使用するジオール成分が脂肪族ジオールを主成分とするものであること、および原料として使用するジカルボン酸成分が脂肪族ジカルボン酸を主成分とするものであることを意味する。
【0014】
ここで、「脂肪族ジオールを主成分とする」とは、「脂肪族ジオールの合計モル比率が、原料ジオール中で最も多いこと」を意味する。中でもポリエステルの物性、生分解性の観点から、脂肪族ジオールの合計が、原料ジオールの合計に対して、50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは、60モル%以上、更に好ましくは、70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
【0015】
また、本発明において「脂肪族ジカルボン酸を主原料とする」とは、脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸アルキルエステルのうち少なくとも一方を主成分とすることであって、「脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸アルキルエステルのうち少なくとも一方を主成分とする」とは、「脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸アルキルエステルの合計モル比率が、原料ジカルボン酸およびジカルボン酸アルキルエステルの合計中で最も多いこと」を意味する。中でもポリエステルの物性、生分解性の観点から、脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸アルキルエステルの合計が、原料ジカルボン酸の合計に対して、50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは、60モル%以上、更に好ましくは、70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
【0016】
更に、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸は、本発明のポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分の50モル%以上が脂肪族ジカルボン酸であること、および、本発明のポリエステルを構成する全ジオール成分の50モル%以上が脂肪族ジオールであることが好ましい。本発明においてポリエステルを製造する際の各反応工程は、回分法でも連続法でも行うことができるが、品質の安定化、エネルギー効率の観点からは、原料を連続的に供給し、連続的にポリエステルを得るいわゆる連続法が好ましい。
【0017】
<ジオール成分>
本発明に用いるジオール成分としては、前記の通り少なくとも脂肪族ジオールが用いられ、且つその合計モル比率が原料ジオール中で最も多く用いられれば、通常ポリエステルの原料に用いられるものを特に制限無く使用することができる。
より具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのオキシアルキレンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのシクロアルキレンジオールがあげられ、これらの中でも、得られるポリエステルの物性の面から、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどの炭素数6以下のアルキレンジオール、または1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの炭素数6以下のシクロアルキレンジオー
ルが好ましい。中でも特には、1,4−ブタンジオールが好ましい。なお、これらは2種以上が併用されていてもよい。ジオール成分として1,4−ブタンジオールを用いた場合、1,4−ブタンジオールの使用量は、得られるポリエステルの融点(耐熱性)、生分解性、力学特性の観点から全脂肪族ジオールに対して50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、特に好ましくは90モル%以上である。更に、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールは植物原料由来のものを使用することができる。
【0018】
<ジカルボン酸成分>
本発明に用いるジカルボン酸成分としては、前記の通り少なくとも脂肪族ジカルボン酸が用いられ、且つその合計モル比率が原料カルボン酸中で最も多く用いられれば、通常ポリエステルの原料に用いられるものを特に制限無く使用することができる。
より具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられ、これらの中で、得られるポリエステルの物性の面から、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸が好ましい。特にはコハク酸、無水コハク酸などの炭素数4以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。なお、これらは2種以上が併用されていてもよい。
【0019】
ジカルボン酸成分としてコハク酸を用いた場合、コハク酸の使用量は得られるポリエステルの融点(耐熱性)、生分解性、力学特性の観点から、全脂肪族ジカルボン酸に対して50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、特に好ましくは90モル%以上である。また、脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。芳香族ジカルボン酸の具体的な例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびジフェニルジカルボン酸等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として上記脂肪族ジカルボン酸に加えて使用してもよい。また、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、などは植物原料由来のものを使用することができる。
【0020】
<その他の共重合成分>
本発明のポリエステルには、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸以外のその他の構成成分を共重合させても構わない。この場合に使用することのできる共重合成分としては、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、フマル酸等のオキシカルボン酸、およびこれらオキシカルボン酸のエステルやラクトン、オキシカルボン酸重合体等、あるいはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコール、あるいは、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの無水物などの3官能以上の多価カルボン酸またはその無水物等が挙げられる。また、3官能以上のオキシカルボン酸、3官能以上のアルコール、3官能以上のカルボン酸などは少量加えることにより高粘度のポリエステルを得やすい。中でも、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸などのオキシカルボン酸が好ましく、特にはリンゴ酸が好ましく用いられる。
【0021】
3官能以上の多官能化合物は全ジカルボン酸成分に対して、0.001〜5モル%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5モル%である。この範囲の上限超過では得られるポリエステル中にゲル(未溶融物)が生成しやすく、下限未満では多官能化合物を使用したことによる利点(通常、得られるポリエステルの粘度を上昇させることが
可能となる)が得られにくくなる。
【0022】
<ポリエステルの物性>
本発明において、エタノールと水を含有する混合液と接触処理させるポリエステルペレットの固有粘度(IV、dL/g)は、下限が1.4dL/gであることが好ましく、特に好ましくは、1.6dL/gである。上限は2.8dL/gが好ましく、更に好ましくは2.5であり特に好ましくは2.3dL/gである。固有粘度が下限未満であると、成形品にしたとき十分な機械強度が得にくい。固有粘度が上限超過であると、成形時に溶融粘度が高く成形しにくい。
【0023】
本発明において、エタノールと水を含有する混合液と接触処理させるポリエステルの末端カルボキシル基量は通常80(当量/トン)以下であり、好ましくは60(当量/トン)以下、更に好ましくは40(当量/トン)以下、特に好ましくは25(当量/トン)以下である。下限は低いほど熱安定性、耐加水分解性がよいが、通常5(当量/トン)以上である。上限を超えると、加水分解による粘度低下が顕著となり、品質を著しく損なう場合がある。
【0024】
<ポリエステルの製造方法>
以下に連続製造法を例にして、本発明の接触工程に用いるポリエステルの製造方法について述べる。
本発明の接触工程に用いるポリエステルの製造方法において、連続製造法では、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、連続する複数の反応槽を用いて、エステル化反応工程、溶融重縮合反応工程を経て連続的にポリエステルのペレットを得るものであるが、本発明の効果を妨げない限り、連続法に限定されるものではなく、従来公知のポリエステルの製造方法を採用することができる。ポリエステルペレットは、エタノールおよび水を含有する混合液と接触処理され、その後乾燥される。
【0025】
<エステル化反応工程>
本発明の接触工程に用いるポリエステルの製造方法では、用いるポリエステルを、少なくともジカルボン酸成分とジオール成分とを反応させるエステル化反応工程を経て製造する。エステル化反応工程とそれに続くその他の工程は、連続する複数の反応槽で行うことも単一の反応槽でも行うこともできるが、得られるポリエステルの物性の変動を小さくするために、連続する複数の反応槽で行うことが好ましい。
【0026】
エステル化反応工程での反応温度は、エステル化反応を行うことのできる温度であれば特に制限は無いが、反応速度を高めることができるという点で、好ましくは200℃以上、より好ましくは210℃以上であって、ポリエステルの着色などを防止するために、250℃以下であることが好ましく、より好ましくは245℃以下であって、特に好ましくは240℃以下である。反応温度が低すぎると、エステル化反応速度が遅く反応時間を長時間必要とし、脂肪族ジオールの脱水分解など好ましくない反応が多くなる。また、反応温度が高すぎると、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸の分解が多くなり、また反応槽内に飛散物が増加し異物発生原因となりやすく、反応物に濁り(ヘーズ)を生じやすくなる。また、エステル化温度は一定温度であることが好ましい。一定温度であることによりエステル化率が安定する。一定温度とは設定温度±5℃、好ましくは±2℃である。
【0027】
反応雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。反応圧力は、50kPa〜200kPaであることが好ましく、より好ましくは60kPa以上、更に好ましくは70kPa以上で、より好ましくは130kPa以下、更に好ましくは110kPa以下である。下限未満では反応槽内に飛散物が増加し反応物のヘーズが高くなり異物増加の原因となりやすく、また脂肪族ジオールの反応系外への留出が多くなり重
縮合反応速度の低下を招きやすい。上限超過では脂肪族ジオールの脱水分解が多くなり、重縮合速度の低下を招きやすい。
【0028】
反応時間は、好ましくは1時間以上であり、上限が好ましくは10時間以下、より好ましくは、4時間以下である。エステル化反応を行う脂肪族ジカルボン酸成分に対する脂肪族ジオール成分のモル比は、エステル化反応槽の気相および反応液相に存在する、脂肪族ジカルボン酸およびエステル化された脂肪族ジカルボン酸に対する、脂肪族ジオールおよびエステル化された脂肪族ジオールとのモル比を表し、反応系で分解されエステル化反応に寄与しない脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオールおよびそれらの分解物は含まれない。分解されてエステル化反応に寄与しないとは、例えば、脂肪族ジオールである1,4−ブタンジオールが分解してテトラヒドロフランになったものはこのモル比には含めない。本発明において、上記モル比は下限が、通常1.10以上であり、好ましくは1.12以上、更に好ましくは1.15以上、特に好ましくは1.20以上である。上限は、通常2.00以下、好ましくは1.80以下、更に好ましくは1.60以下、特に好ましくは1.55以下である。下限未満ではエステル化反応が不十分になりやすく後工程の反応である重縮合反応が進みにくく高重合度のポリエステルが得にくい。上限超過では脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸の分解量が多くなる傾向がある。このモル比を好ましい範囲に保つ為にエステル化反応系に脂肪族ジオールを適宜補給するのは好ましい方法である。
【0029】
本発明においては、エステル化率80%以上のエステル化反応物を重縮合反応に供する。本発明において、重縮合反応とは反応圧力50kPa以下で行うポリエステルの高分子量化反応をいい、エステル化反応は50〜200kPaで、通常、エステル化反応槽で行い、重縮合反応は50kPa以下、好ましくは10kPa以下で重縮合反応槽で行う。本発明でエステル化率とはエステル化反応物試料中の全酸成分に対するエステル化された酸成分の割合を示すものであり次式で表される。
【0030】
エステル化率(%)=(ケン化価−酸価)/ケン化価×100
エステル化反応物のエステル化率は、好ましくは85%以上、更に好ましくは88%以上、特に好ましくは90%以上である。下限以下であると後工程の反応である重縮合反応性が悪くなる。また、重縮合反応時の飛散物増え、壁面に付着して固化し、更にこの飛散物が反応物内に落下し、ヘーズの悪化(異物発生)の要因となる。上限は後工程の反応である重縮合反応の為には高いほうが良いが、通常99%である。
【0031】
本発明において、エステル化反応におけるジカルボン酸とジオールとのモル比、反応温度、反応圧力および反応率とを上記範囲にして連続反応を行い、連続的に重縮合反応に供することにより、ヘーズが低く異物が少ない高品質のポリエステルを効率的に得ることができる。
【0032】
<重縮合反応工程>
本発明の接触工程に用いるポリエステルの製造では、エステル化反応工程に続き重縮合反応工程で重縮合反応を行うことが好ましい。重縮合反応は、連続する複数の反応槽を用い減圧下で行うことができる。最終重縮合反応槽の反応圧力は、下限が通常0.01kPa以上、好ましくは0.03kPa以上であり上限が通常1.4kPa以下、好ましくは0.4kPa以下として行う。重縮合反応時の圧力が高すぎると、重縮合時間が長くなり、それに伴いポリエステルの熱分解による分子量低下や着色が引き起こされ、実用上充分な特性を示すポリエステルの製造が難しくなる傾向がある。
【0033】
一方、反応圧力を0.01kPa未満とするような超高真空重縮合設備を用いて製造する手法は重縮合反応速度を向上させる観点からは好ましい態様であるが、極めて高額な設備投資が必要となる為、経済的には不利である。反応温度は、下限が通常215℃、好ま
しくは220℃であり、上限が通常270℃、好ましくは260℃の範囲である。下限未満であると、重縮合反応速度が遅く、高重合度のポリエステル製造に長時間を要するばかりでなく、高動力の撹拌機も必要となる為、経済的に不利である。一方、上限超過であると製造時のポリエステルの熱分解が引き起こされやすく、高重合度のポリエステルの製造が難しくなる傾向がある。
【0034】
反応時間は、下限が通常1時間であり、上限が通常15時間、好ましくは10時間、より好ましくは8時間である。反応時間が短すぎると反応が不充分で高重合度のポリエステルが得にくく、その成形品の機械物性が劣る傾向となる。一方、反応時間が長すぎると、ポリエステルの熱分解による分子量低下が顕著となり、その成形品の機械物性が劣る傾向となるばかりでなく、ポリエステルの耐久性に悪影響を与えるカルボキシル基末端量が熱分解により増加する場合がある。
【0035】
重縮合反応温度と時間および応圧力をコントロールすることにより所望の固有粘度のポリエステルを得ることができる。
【0036】
<反応触媒>
エステル化反応および重縮合反応は反応触媒を使用することにより、反応が促進される。エステル化反応においてはエステル化反応触媒が無くても十分な反応速度を得ることができる。またエステル化反応時にエステル化反応触媒が存在するとエステル化反応によって生じる水により触媒が反応物に不溶の析出物を生じ、得られるポリエステルの透明性を損なう(即ちヘーズが高くなる)ことがあり、また異物化することがあるので、反応触媒はエステル化反応中には添加使用しないことが好ましい。また、触媒を反応槽の気相部に添加するとヘーズか高くなることがあり、また触媒が異物化することがあるので反応液中に添加することが好ましい。
【0037】
重縮合反応においては無触媒では反応が進みにくく、触媒を用いることが好ましい。重縮合反応触媒としては、一般には、周期表1〜14族の金属元素のうち少なくとも1種を含む化合物が用いられる。金属元素としては、具体的には、スカンジウム、イットリウム、サマリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウムおよびカリウム等が挙げられる。その中では、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、亜鉛、鉄、ゲルマニウムが好ましく、特に、チタン、ジルコニウム、タングステン、鉄、ゲルマニウムが好ましい。更に、ポリエステルの熱安定性に影響を与えるポリエステル末端濃度を低減させる為には、上記金属の中では、ルイス酸性を示す周期表3〜6族の金属元素が好ましい。具体的には、スカンジウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステンであり、特に、入手のし易さからチタン、ジルコニウムが好ましく、更には反応活性の点からチタンが好ましい。
【0038】
本発明においては、触媒として、これらの金属元素を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩有機スルホン酸塩またはβ―ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物およびそれらの混合物が好ましく用いられる。
【0039】
本発明においては、触媒は、重合時に溶融あるいは溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。また、重縮合は無溶媒で行うことが好ましいが、これとは別に、触媒を溶解させる為に少量の溶媒を使用しても良い。この触媒溶解用の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオールなどの前述のジオール類、ジエチルエーテル、テ
トラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ヘプタン、トルエン等の炭化水素化合物、水ならびにそれらの混合物等が挙げられ、その使用量は、触媒濃度が、通常0.0001質量%以上、99質量%以下となるように使用する。
【0040】
チタン化合物としては、テトラアルキルチタネートおよびその加水分解物が好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネートおよびこれらの混合チタネート、ならびにこれらの加水分解物が挙げられる。
【0041】
また、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、およびブチルチタネートダイマー等も好んで用いられる。また、アルコール、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における第2族金属化合物(以下、長周期型周期表における第2族金属化合物ということがある)、リン酸エステル化合物、およびチタン化合物を混合することにより得られる液状物も用いられる。
【0042】
これらの中では、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネートおよびテトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、ならびに、アルコール、長周期型周期表における第2族金属化合物、リン酸エステル化合物、およびチタン化合物を混合することにより得られる液状物、が好ましく、テトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、ならびに、アルコール、長周期型周期表における第2族金属化合物、リン酸エステル化合物、およびチタン化合物を混合することにより得られる液状物がより好ましく、特に、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ならびに、アルコール、長周期型周期表における第2族金属化合物、リン酸エステル化合物、およびチタン化合物を混合することにより得られる液状物が好ましい。
【0043】
ジルコニウム化合物としては、具体的には、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニルジアセテイト、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートならびにそれらの混合物が例示される。
【0044】
これらの中では、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシドが好ましく、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムア
セテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドがより好ましく、特にジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレートが着色のない高重合度のポリエステルが容易に得られる理由から好ましい。
【0045】
ゲルマニウム化合物としては、具体的には、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウムおよびムおよびテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0046】
鉄の化合物としては、塩化第二鉄などの無機塩化物、四酸化三鉄などの無機酸化物、フェロセンなどの有機鉄錯体などがあげられる。なかでも無機酸化物が好ましい。
【0047】
その他の金属含有化合物としては、炭酸スカンジウム、スカンジウムアセテート、スカンジウムクロリド、スカンジウムアセチルアセトネート等のスカンジウム化合物、炭酸イットリウム、イットリウムクロリド、イットリウムアセテート、イットリウムアセチルアセトネート等のイットリウム化合物、バナジウムクロリド、三塩化バナジウムオキシド、バナジウムアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネートオキシド等のバナジウム化合物、モリブデンクロリド、モリブデンアセテート等のモリブデン化合物、タングステンクロリド、タングステンアセテート、タングステン酸等のタングステン化合物、セリウムクロリド、サマリウムクロリド、イッテルビウムクロリド等のランタノイド化合物等が挙げられる。
【0048】
これらの重縮合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒添加量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常、0.1質量ppm以上、好ましくは0.5質量ppm以上、より好ましくは1質量ppm以上であり、上限値が通常、3000質量ppm以下、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは250質量ppm以下、特に好ましくは130質量ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなく、理由は未だ詳らかではないが、ポリエステル中のカルボキシル基末端濃度が多くなる場合がある為、カルボキシル基末端量ならびに残留触媒濃度の増大によりポリエステルの熱安定性や耐加水分解性が低下する場合がある。逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリエステル製造中にポリエステルの熱分解が誘発され、実用上有用な物性を示すポリエステルが得られにくくなる。
【0049】
触媒の反応系への添加位置は、重縮合反応工程以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよいが、水が多く存在、もしくは発生している状況下で触媒が共存すると触媒が失活し、異物が析出する原因となり製品の品質を損なう場合がある為、エステル化反応工程以後に添加するのが好ましい。
【0050】
<反応槽>
本発明に用いるエステル化反応槽としては、公知のものが使用でき、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽等の型式のいずれであってもよく、また、単数槽としても、同種または異種の槽を直列させた複数槽としてもよい。中でも攪拌装置を有する反応槽が好ましく、攪拌装置としては、動力部および受、軸、攪拌翼からなる通常のタイプの他、タービンステーター型高速回転式攪拌機、ディスクミル型攪拌機、ローターミル型攪拌機等の高速回転するタイプも用いることができる。
【0051】
攪拌の形態にも制限はなく、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部等から直接攪拌する通常の攪拌方法の他、反応液の一部を反応槽の外部に配管等で持ち出してライン
ミキサ−等で攪拌し、反応液を循環させる方法もとることができる。攪拌翼の種類も公知のものが選択でき、具体的にはプロペラ翼、スクリュー翼、タービン翼、ファンタービン翼、デイスクタービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等が挙げられる。
【0052】
本発明に用いる重縮合反応槽の型式に特に制限はなく、例えば、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽などを挙げることができる。重縮合反応槽は、1基とすることができ、あるいは、同種または異種の複数基の槽を直列させた複数槽とすることもできるが、反応液の粘度が上昇する重縮合の後期は界面更新性とプラグフロー性、セルフクリーニング性に優れた薄膜蒸発機能を有した横型攪拌重合機を選定することが好ましい。
【0053】
<ペレット化>
重縮合反応を経て得られたポリエステルはペレット化され、ペレットの状態でエタノールおよび水を含有する混合液により接触処理を行う。
ペレット化の方法は、溶融ポリエステルをギヤポンプまたは押出機を用いてダイスヘッドのノズル孔より押出し、水などで冷却しつつまたは冷却固化したストランドをカッターで切断するストランドカット法、ノズル孔より水中に押出し溶融状態で直ちに切断する水中ホットカット法などが広く用いられる。本発明のポリエステルにおいてはペレット中に切り屑が少ないこと、得られるペレットの安息角が低いこと、ペレットの移送安定性、成形時の成形機へのフィードの安定性が良好なことから水中ホットカット方式が好ましく採用される。水中カット方式における冷却水温は、下限は10℃以上が好ましく、より好ましくは20℃以上であり、上限は70℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以下、さらには50℃以下が好ましい。
【0054】
ノズル孔の大きさは、通常、1mmから30mmの孔径を有するものが使用される。開口部の形状も特に制限はないが、円形、楕円形、長円形、角形または星形等の形状が用いられる。また、1開口部当たりの吐出量は通常5から100kg/時間、好ましくは10から70kg/時間、より好ましくは20から50kg/時間である。
【0055】
ペレットの形状は球状、円柱状、楕円柱状、長円柱状、角柱状、繭玉状など、およびこれらが扁平になったものなどがある。水中ホットカット方式では球状、繭玉状およびそれらの扁平状となることが多い。その大きさは特に制限はないが接触処理によるCDの抽出効率や乾燥工程の乾燥効率、ペレット移送操作性等の観点からペレット一粒当たりの重量は1から50mg、好ましくは3から40mg、更に好ましくは5から30mgである。また質量当たりのペレット表面積が大きいほうが接触処理工程における抽出効率の点から好ましい。
【0056】
<接触処理工程>
(エタノールと水を含有する混合液)
本発明においては、得られたペレットをエタノールおよび水を含有する混合液に接触させる処理(以下、接触処理と言うことがある。)をし、ペレット中に含有されるCDを混合液に抽出することによりペレット中のCD含有量を低減する。接触処理工程は、通常ペレット化後連続して行われるが、得られたペレットを一時的に貯槽に保管した後に接触処理しても構わない。
【0057】
ポリエステルペレットと接触させるエタノールおよび水を含有する混合液(以下接触処理液ということがある)全体に対する水の割合は、通常10質量%以上であり、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。また、通常99質量%以下であり、好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。
【0058】
水の混合割合を少なく(エタノールの割合を増加)すると、アルコール分解による分子量低下により、ポリエステルの品質が低下する傾向がある。また、アルコール使用割合を多くすると、使用時の液および当該液から発生するガスの爆発危険性が高くなるなど、安全性の観点から取り扱いに注意を要する。一方、水の割合が上限を超えると、オリゴマー除去が十分でなく、CD含有量を充分に低減できず、望ましい品質のポリエステルが得られない場合がある。
【0059】
本発明で使用する接触処理液には、イソプロパノールを含有させることができる。その含有量は通常20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。イソプロパノール含有量が上限を超えると、オリゴマー除去が十分でなく、望ましい品質のポリエステルが得られない場合がある。
【0060】
(接触温度)
ポリエステルペレットと接触処理液とを接触させる接触液の温度は、下限が25℃であり、好ましくは30℃、更に好ましくは35℃、特に好ましくは40℃である。上限は通常ポリエステルの融点であり、好ましくは95℃、更に好ましくは90℃、特に好ましくは85℃である。接触させる温度を下限未満にすると、処理時間に長時間を必要とし、経済的に不利となるばかりでなく、オリゴマー除去効果の低下により、望ましいポリエステルが得られない場合がある。一方、接触させる温度が上限を超えると、加水分解、アルコール分解により粘度低下が大きくなり、品質を損なうばかりでなく、ペレット間の融着やペレット抜き出し不良を引き起こすなど運転面にも困難を伴う。
【0061】
(接触時間)
ポリエステルペレットと接触処理液を接触させる時間は、下限が通常0.1時間、好ましくは1時間、更に好ましくは3時間である。上限は通常24時間であり、好ましくは18時間、更に好ましくは10時間である。接触させる時間が下限未満であると、オリゴマー除去が十分でなく、望ましい品質のポリエステルが得られない場合がある。一方、接触させる時間が上限を超えると、加水分解、アルコール分解により粘度低下が大きくなり、品質を損なう場合がある。
【0062】
(ポリエステルペレットと接触処理液との比)
接触させるポリエステルペレットと接触処理液との比(処理液/ペレット比)は、質量比にして下限が通常1.0以上、好ましくは1.5以上、更に好ましくは2.0以上である。上限は通常50以下であり、好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。接触させるペレットと液の質量比が下限未満であると、処理中の処理液中のCD濃度増加によりCD除去効果が低下し、望ましい品質のポリエステルが得られない場合がある。一方、接触させるペレットと液の質量比が上限を超えると、使用する接触処理液量が多いことによる設備の大型化、接触処理液のコスト増加などプロセス面、コスト面で不利である。
【0063】
(接触方法)
ポリエステルペレットと接触処理液とを接触させる態様としては、回分式と連続式があり、いずれの態様も採用することができる。
本発明における回分式の態様としては、処理槽にペレットと接触処理液を入れて所定温度、時間接触処理させた後抜き出す方法が挙げられる。ペレットと接触処理液とを接触処理させる間、接触処理液の循環下に行うこともできるし、非循環下に行うこともできる。本発明における連続式の態様としては、配管、または処理槽にペレットを連続的に供給しつつ、所定温度の接触処理液をペレットの流れに対して並流、または向流で接触させ所定の接触時間を保持しつつ連続的にペレットを抜き出す方法などがある。
【0064】
本発明において、接触処理後の接触処理液は蒸留で回収しリサイクル使用できる。また、抽出された環状二量体を含んだオリゴマー類は、冷却などにより接触処理液と分離された後、または濃縮された後に、エステル化反応工程や重縮合反応工程に供給されて、ポリエステルの原料として使用することができる。エステル化反応工程のエステル化反応槽や、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのスラリー槽に戻すのは好ましい方法である。
【0065】
接触処理後の接触処理液は、抜き出した接触処理液をそのまま循環再利用することもできるし、抜き出した接触処理液の一部を廃棄し、廃棄した量だけ新たに接触処理液を追加することもできる。
接触処理後、蒸留濃縮およびまたは冷却などにより接触処理液と分離されたCDを含んだオリゴマー類は、一旦溶融状態あるいは原料である脂肪族ジオールに加熱溶解させた溶液とした後、ポリエステルの原料として回収することができる。回収したオリゴマー類は、エステル化反応槽に直接供給することもできるし、図1に例示する脂肪族ジオールの再循環ライン(2)、エステル化反応物の抜き出しライン(4)に供給することもできる。また、図2に例示する重縮合槽(a)に供給することもできる。また、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのスラリー槽に供給することもできる。
【0066】
<乾燥工程>
接触処理されたポリエステルペレットはエタノール、水などの接触処理液を含んでいるのでこれらを除くために乾燥工程において乾燥する。
乾燥工程で用いる乾燥機には、乾燥ガスとして加熱空気あるいは加熱窒素等の不活性ガスを流通させる、棚段式の乾燥機、バンド乾燥機、横型円筒回転乾燥機、回転翼付き横型乾燥機、回転翼付き縦型乾燥機(いわゆるホッパードライヤー型乾燥機)、移動床式縦型乾燥機、流動床式乾燥機などがある。また、上記のガス流通方式と異なる乾燥機としてはダブルコーン型回転真空乾燥機、タンブラー型回転真空乾燥機、マイクロ波乾燥機などがある。
【0067】
これらは回分式、半回分式、連続式で行うことができるが大量生産には生産効率の観点から連続式が好ましい。また、設備が複雑にならないことより、移動床式縦型乾燥機、あるいはこれを複数段連続したものは好ましく使用できる。
【0068】
乾燥温度はガス温度として下限は25℃であり、好ましくは30℃、更に好ましくは35℃、特に好ましくは40℃である。上限は通常ポリエステルの融点であり、好ましくはポリエステルの融点マイナス5℃、更に好ましくはポリエステルの融点マイナス8℃、特に好ましくはポリエステルの融点マイナス10℃である。温度を下限未満にすると、乾燥時間に長時間を必要とし、経済的に不利となる。一方、温度が上限を超えると、ペレット同士の融着やペレットを乾燥機から抜き出す際の抜出し不良を引き起こすなど運転面に困難を伴うことがある。乾燥機を通過した乾燥ガスは水、エタノールなどの接触処理液成分を含んでおり、乾燥ガスの冷却、吸着などにより接触処理液成分を減少させ、乾燥ガスとして再利用することができる。
【0069】
乾燥時間は、通常0.1〜100時間、好ましくは1〜80時間、より好ましくは5〜50時間である。乾燥ガスの流速は移動床式の場合、通常0.05〜1.0m/秒(空塔速度)である。乾燥後のペレットはエタノール含有量の上限が、通常1000質量ppm、好ましくは800質量ppm、より好ましくは500質量ppmである。含有エタノールが多いと本ペレットを溶融成形時に溶融粘度の低下が著しく成形性不良となる傾向がある。下限は少ないほど良好であるが、工業的に合理的に得る濃度としては通常50質量ppmである。通常乾燥後のペレットの水分含有量はエタノール含有量より少なくなる。ペレットの水分含有量は1000質量ppm以下、好ましくは500質量ppm以下、より
好ましくは250質量ppm以下である。水分が多いと本ペレットを溶融成形時に加水分解によるIVの低下が著しく成形性不良となり成形品物性の低下する傾向がある。
【0070】
<製造プロセス例>
以下に例として、脂肪族ジカルボン酸としてコハク酸、脂肪族ジオールとして1,4−ブタンジオール(以下、BGと略記することがある)、多官能化合物としてリンゴ酸を原料とするポリエステルの製造方法の好ましい実施態様を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0071】
以下、添付図面に基づき、ポリエステルの製造方法の好ましい実施態様を説明する。図1は、本発明で採用するエステル化反応工程の一例の説明図、図2は、本発明で採用する重縮合工程の一例の説明図である。
図1において、原料のコハク酸およびリンゴ酸は、通常、原料混合槽(図示せず)でBGと混合され、原料供給ライン(1)からスラリーまたは液体の形態でエステル化反応槽(A)に供給される。また、エステル化反応時に触媒を添加する場合は、触媒調整槽(図示せず)でBGの溶液とした後、触媒供給ライン(3)に溶液を供給してなされる。図1では再循環1,4−ブタンジオールの再循環ライン(2)に触媒供給ライン(3)を連結し、両者を混合した後、エステル化反応槽(A)の液相部に供給する態様を示した。
【0072】
エステル化反応槽(A)から留出するガスは、留出ライン(5)を経て精留塔(C)で高沸成分と低沸成分とに分離される。通常、高沸成分の主成分は1,4−ブタンジオールであり、低沸成分の主成分は、水およびBGの分解物であるテトラヒドロフラン(以下、THFと略記することがある)である。
精留塔(C)で分離された高沸成分は抜出ライン(6)から抜き出され、ポンプ(D)を経て、一部は再循環ライン(2)からエステル化反応槽(A)に循環され、一部は循環ライン(7)から精留塔(C)に戻される。また、余剰分は抜出ライン(8)から外部に抜き出される。一方、精留塔(C)で分離された軽沸成分はガス抜出ライン(9)から抜き出され、コンデンサ(G)で凝縮され、凝縮液ライン(10)を経てタンク(F)に一時溜められる。タンク(F)に集められた軽沸成分の一部は、抜出ライン(11)、ポンプ(E)および循環ライン(12)を経て精留塔(C)に戻され、残部は、抜出ライン(13)を経て外部に抜き出される。コンデンサ(G)はベントライン(14)を経て排気装置(図示せず)に接続されている。エステル化反応槽(A)内で生成したエステル化反応物は、抜出ポンプ(B)およびエステル化反応物の抜出ライン(4)を経て図2に示す第1重縮合反応槽(a)に供される。
【0073】
図1に示す工程においては、再循環ライン(2)に触媒供給ライン(3)が連結されているが、両者は独立していてもよい。また、原料供給ライン(1)はエステル化反応槽(A)の液相部に接続されていてもよい。
重縮合槽前のエステル化反応物に触媒を添加する場合は、触媒調製槽(図示せず)で所定濃度に調製した後、図2における触媒供給ライン(L7)を経て、原料供給ライン(L8)に連結され、BGで更に希釈された後、エステル化反応物の抜出ライン(4)に供給される。
【0074】
次に、エステル化反応物の抜出ライン(4)からフィルター(p)を経て第1重縮合反応槽(a)に供給されたエステル化反応物は、減圧下に重縮合されてポリエステル低重合体となりその後、抜出用ギヤポンプ(c)および抜出ライン(L1)、フィルター(q)を経て第2重縮合反応槽(d)に供給される。第2重縮合反応槽(d)では、通常、第1重縮合反応槽(a)よりも低い圧力で更に重縮合反応が進む。得られた重縮合物は、抜出用ギヤポンプ(e)および出口流路である抜出ライン(L3)、フィルター(r)を経て、第3重縮合槽(k)に供給される。第3重縮合反応槽(k)は、複数個の攪拌翼ブロッ
クで構成され、2軸のセルフクリーニングタイプの攪拌翼を具備した横型の反応槽である。抜出ライン(L3)を通じて第2重縮合反応槽(d)から第3重縮合反応槽(k)に導入された重縮合反応物は、ここで更に重縮合反応が進められた後、ペレット化の工程に移送される。
【0075】
ペレット化の工程では、溶融状態のポリエステルを抜出用ギヤポンプ(m)、出口流路であるフィルター(s)および抜出ライン(L5)を経てダイスヘッド(g)から溶融したストランドの形態で大気中に抜き出され、水などで冷却された後、回転式カッター(h)で切断されてポリエステルペレットとなる。また、大気中に抜き出さずに水中にストランドの形態で抜きだし、回転式水中カッターで切断してペレットとすることもできる。
【0076】
図2における符号(L2)、(L4)、(L6)は、それぞれ、第1重縮合反応槽(a)、第2重縮合反応槽(d)、第3重縮合反応槽(k)のベントラインである。フィルター(p)、(q)、(r)、および(s)は必ずしも全部設置する必要はなく、異物除去効果と運転安定性とを考慮して適宜設置することができる。
【0077】
図3は、本発明で採用するエタノールと水を含有する混合液接触処理工程の一例の説明図である。接触処理液としてのエタノール/水は循環タンク(I)からポンプ(IX)により熱交換器(II)を経由し温度コントロールされ、接触処理液供給ライン(101)より処理槽(III)へ供給される。処理槽内でペレットと向流接触させた後、抜出ライン(102)より抜き出し、微粉除去機(IV)を経由して循環タンク(I)へ回収する。
【0078】
接触処理に供するペレットはペレット供給ライン(103)より連続的に供給され、所定時間エタノール/水と接触処理された後、ロータリーバルブ(V)で抜き出し量を調整しながら抜出ライン(104)より連続的に抜き出す。ペレットに同伴して抜き出された接触処理液は、予備固液分離機(VI)で分離され、回収タンク(VII)を経由後、ポンプ(X)により供給ライン(105)を通じて、回収ライン(106)へ戻す。循環タンク(I)からは抜出ライン(107)より、接触処理液の抜き出しを連続的に行う。供給ライン(108)からは抜き出された接触処理液相当量のエタノール/水を供給する。連続的に抜き出されたペレットは予備固液分離機で同伴された接触処理液と分離された後、固液分離機(VIII)を経由し、乾燥工程へ連続的に供給される。
【0079】
図4は、本発明で採用する乾燥工程の一例の説明図である。図示したのは乾燥塔を二基(I)、(K)備えた例である。
接触処理工程を終えたポリエステルペレットはペレット供給ライン(201)を経て第一乾燥塔(I)に連続的に供給される。第一乾燥塔には加熱乾燥窒素ガスを供給ライン(208)から連続的に導入し、ガス回収ライン(207)より排出する。排出されたガスはコンデンサー(L)を経て熱交換器(N)で加熱され供給ライン(208)を経て第一乾燥塔へ循環使用される。コンデンサー(L)、熱交換器(M)で凝縮された接触処理液は抜出しライン(210)から抜出す。新乾燥ガス供給ライン(209)からは新たな乾燥窒素ガスを供給する。ペレットは第一乾燥塔からロータリーバルブ(O)を経て冷却塔(J)へ連続的に送られる。冷却塔へは冷却ガス供給ライン(212)から乾燥空気が導入され冷却ガス抜出ライン(211)から放出される。
【0080】
第一乾燥塔の乾燥温度より低温側に冷却されたペレットはペレット抜出ライン(204)、ロータリーバルブ(P)、ペレット供給ライン(205)を経て、第二乾燥塔(K)へ供給される。第二乾燥塔へは乾燥ガス(通常空気)を熱交換器(S)、乾燥ガス供給ライン(214)を経て供給し、抜出ライン(213)より排出する。
第二乾燥塔へ供給する空気温度は通常第一乾燥塔へ供給する窒素ガス温度より低く例え
ば窒素ガス温度80℃、空気温度50℃である。
【0081】
乾燥後のポリエステルペレットはロータリーバルブ(Q)ペレット抜き出しライン(206)を経て連続的にまたは間歇的に抜き出され、貯蔵タンク、微粉除去機、包装機などを経て、製品となる。貯蔵タンクは第二乾燥塔と兼用させることもできる。本図では貯蔵タンク以降は図示していない。
【0082】
本発明で得られるポリエステルの環状二量体含有量は、下限は好ましくは1質量ppm以上であり、より好ましくは100質量ppm以上、更に好ましくは500質量ppm以上、特に好ましくは1000質量ppm以上である。上限が通常6,000質量ppm以下であり、好ましくは5000質量ppm以下、更に好ましくは4,000質量ppm以下、特に好ましくは3,500質量ppm以下である。環状二量体量が下限未満であると、品質的に良好であるが、オリゴマー除去に要する時間の長期化による設備大型化のため経済的に不利である。上限を超えると、ポリエステル成形後一定期間放置すると、その表面に曇り(ブリードアウト、白化現象と同義。)が生じて表面光沢が消失するなどの不具合を生ずる。
【0083】
また、本発明で得られるポリエステルをシートに成形しこれを20質量%エタノール水溶液に、60℃下で30分浸漬したときの溶出量は、上限が30μg/mL以下が好ましく、より、好ましくは28μg/mL以下、更に好ましくは25μg/mL以下である。上限を超えると食品添加物等の規格基準のうち器具および容器包装の基準を満たさないことから、食品用の容器包装への適用が認められない。なお、溶出量は、実施例の項において示す方法で測定した値である。
【0084】
本発明のポリエステルは、さらに好ましくは、固有粘度が1.4dL/g以上2.8dL/g以下、環状二量体含有量が500質量ppm以上5000質量ppm以下である。これにより、成形後品質を損なうことのない、良好なポリエステル成形品の原料となることができる。
【0085】
<ポリエステル組成物>
本発明のポリエステルに、芳香族−脂肪族共重合ポリエステル、および脂肪族オキシカルボン酸等を配合させてもよい。更に必要に応じて用いられるカルボジイミド化合物、充填材、可塑剤以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の生分解性樹脂、例えば、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等や、澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末、あるいはこれらの混合物を配合することができる。更に、成形体の物性や加工性を調整する目的で、熱安定剤、可塑剤、滑剤、ブロッキング防止剤、核剤、無機フィラー、着色剤、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤、改質剤、架橋剤等を含有させてもよい。
【0086】
本発明のポリエステル組成物の製造方法は、特に限定されないが、ブレンドしたポリエステルの原料チップを同一の押出機で溶融混合する方法、各々別々の押出機で溶融させた後に混合する方法、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーブレンダー等の通常の混練機を用いて混練することによって混合する等が挙げられる。また、各々の原料チップを直接成形機に供給して組成物を調製すると同時に、その成形体を得ることも可能である。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例で採用した物性およ
び評価項目の測定方法は次の通りである。
<固有粘度(IV) dL/g>
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度0.5g/dLのポリマー溶液および溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(1)より求めた。
【0088】
IV=((1+4Kηsp0.5−1)/(2KC) ・・・ (1)
ただし、式(1)において、ηSP=η/η−1であり、ηは試料溶液落下秒数、ηは溶媒の落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、Kはハギンズの定数である。Kは0.33を採用した。
【0089】
<エステル化率(%)>
以下の計算式(2)によって、試料酸価およびケン化価から算出した。酸価はエステル化反応物試料0.3gをベンジルアルコール40mLに180℃で20分間加熱させ、10分間冷却した後、0.1mol/Lの水酸化カリウム/メタノール溶液により滴定して求めた。ケン化価は0.5mol/Lの水酸化カリウム/エタノール溶液でオリゴマーを加水分解し、0.5mol/Lの塩酸で滴定し求めた。
エステル化率(%)=(ケン化価−酸価)/ケン化価×100 ・・・(2)
【0090】
<ポリエステルの末端カルボキシル基量(AV) 当量/トン>
ペレット状ポリエステルを粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥し、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mLを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させた。次いで、クロロホルム5cmを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして、ポリエステル試料を加えずに同様の操作を実施し、以下の式(3)によって末端カルボキシル基量(酸価)を算出した。
【0091】
末端カルボキシル基量(当量/トン)=(a−b)×0.1×f/W・・・(3)
ここで、aは、滴定に要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、bは、ブランクでの滴定に要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、Wはポリエステルの試料の量(g)、fは、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。
【0092】
なお、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は、以下の方法で求めた。試験管にメタノール5cmを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液の指示薬として1〜2滴加え、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4cmで変色点まで滴定し、次いで力価既知の0.1mol/Lの塩酸水溶液を標準液として0.2cm採取して加え、再度、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定した(以上の操作は、乾燥窒素ガス吹き込み下で行った。)。そして、以下の式(4)によって力価(f)を算出した。
力価(f)=0.1mol/Lの塩酸水溶液の力価×0.1Nの塩酸水溶液の採取量(μL)/0.1mol/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(μL)・・・(4)
【0093】
<ペレットの環状二量体含有量の定量 質量ppm>
試料0.5gを精秤量し、クロロホルム10mLを加え、室温で溶解後、エタノール/水混合液(容量比4/1)30mLを攪拌下ゆっくりと滴下し、ポリマー成分を沈殿させた。15分後、攪拌を止め、90分間静置分離を行った。次いで、上澄み液を2mL採取
し、蒸発乾固させた後、アセトニトリルを2mL加え溶解させた。口径0.45μmのフィルターで濾過した後、島津製作所製液体クロマトグラフィー「LC−10」を用い、移動相をアセトニトリル/水(容量比=4/6)とし、カラムは資生堂社製「SHISEIDOCAPCELL PAK C−18 TYPE MG」を用いてCDを定量しペレットに対する質量ppmで表した。CDの定量には、環状2量体純粋品を用いた絶対検量線法を採用した。環状2量体純粋品は下記のようにして得られた。すなわち、コハク酸と1,4−ブタンジオールを重合して得られたポリマーペレットをアセトン中50℃で12時間撹拌して、オリゴマー成分を抽出した。抽出終了後、ペレットを濾別し、オリゴマー成分を抽出したアセトン溶液から、アセトンを揮発させて固形物を得た。この固形物をアセトン中50℃で飽和溶液となるように溶解した後、徐冷し、上澄みを捨て、針状の析出物を取り出し、更に数回この再結晶操作を繰り返して精製した。この針状析出物は、1H−NMR分析および高速液体クロマトグラフ分析にて環状2量体であることが確認された。
【0094】
<溶液ヘーズ>
フェノール/テトラクロロエタン=3/2(重量比)の混合液20mLにポリエステル試料2.70gを入れ、110℃で30分間で溶解させた後、この溶液を30℃の恒温水槽で15分間冷却し、日本電色(株)製濁度計(NDH−300A)を使用して、光路長10mmのセルで溶液の濁度を測定し溶液ヘーズとした。値が低いほど透明性が良好であることを示す。
【0095】
<溶出量の測定 μg/mL>
金属板の上にテフロン(登録商標)シート、厚み6mmの金属枠(外:240×240mm、内:200×200mm)をおき、枠内に樹脂30gを均一に敷き詰め、その上にテフロン(登録商標)シート、金属板の順にのせ、それら一式を200℃に加熱された電気加熱式プレス機に入れた。2分間圧力をかけずに予熱した後、100kg/cmの圧力で2分間加熱後、金属板一式を取り出し、冷却水流通式冷却プレスに入れ、100kg/cmの圧力に加圧し、2分間冷却した。冷却した金属板一式を取り出し、樹脂プレス片(200mm×200mm×6mm)を取り出し、サンプルを50mm×70mmのサイズに切り出した。切り出した0.6mm厚のプレスシートを、1cm当たり2mLの割合となるように、20質量%エタノール水溶液中へ浸漬し、60℃下で30分間加温した。プレスシートを濾過により取り除き、濾液の蒸発乾固後、105℃で2時間加熱乾燥を行い、乾燥後の質量を秤量し、溶出量(μg/mL)を算出した。
【0096】
<ペレット中のアルコールの定量 質量ppm>
試料4g、純水16gを精秤量し、密閉耐圧容器へ仕込み、その容器を100℃へ昇温したオイルバスへ4時間浸漬する。4時間後、オイルバスより容器を抜き出し冷却する。
冷却後、容器内の液を採取し島津製作所製ガスクロマトグラフィー「GC−14B」を用い、カラムはアジレント・テクノロジー株式会社製「DB−1」を用いて定量しペレットに対する質量ppmで表した。エタノール、イソプロパノールの定量には、絶対検量線法を採用した。
【0097】
<ペレット中水分の定量 質量ppm>
試料約1gを、水分気化装置(三菱化学アナリテック社製「VA−200」)で窒素気流中210℃で約10分間加熱して、資料中に含まれる水分を窒素気流中に気化させ、その窒素気流中に含まれる水分量をカールフィッシャー水分計(三菱化学アナリテック社製「CA−200」)を用いて電量滴定法にて測定しペレットに対する質量ppmで表した。
【0098】
<溶融粘度 MVR (cm/10分)>
測定方法はJIS K7210で規定された方法を用いる。測定温度は190℃、使用
荷重は2.16kg、オリフィス径:1.0mmとし、株式会社テクノ・セブン社製メルトインデクサ「L242」を用いて測定した。数値が大きいほうが、溶融粘度が低い。
【0099】
<カラーb値>
ペレット状ポリエステルを内径30mm、深さ12mmの円柱状の粉体測定用セルに充填し、測色色差計Z300A(日本電色工業(株))を使用して、JIS Z8730の参考例1に記載されるLab表示系におけるハンターの色差式の色座標によるb値を、反射法により、測定セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の相加平均値として求めた。
【0100】
(実施例1)
[重縮合用触媒の調製]
撹拌装置付きのガラス製ナス型フラスコに、酢酸マグネシウム・4水和物を100質量部入れ、更に1500質量部の無水エタノール(純度99質量%以上)を加えた。更にエチルアシッドホスフェート(モノエステル体とジエステル体の混合質量比は45:55)を65.3質量部加え、23℃で撹拌を行った。15分後に酢酸マグネシウムが完全に溶解したことを確認後、テトラ−n−ブチルチタネートを122質量部添加した。更に10分間撹拌を継続し、均一混合溶液を得た。この混合溶液を、ナス型フラスコに移し、60℃のオイルバス中でエバポレーターによって減圧下で濃縮を行った。1時間後に殆どのエタノールが留去され、半透明の粘稠な液体を得た。オイルバスの温度を更に80℃まで上昇させ、5Torrの減圧下で更に濃縮を行い粘稠な液体を得た。この液体状の触媒を、1,4−ブタンジオールに溶解させ、チタン原子含有量が3.36質量%となるよう調製した。この触媒溶液の1,4−ブタンジオール中における保存安定性は良好であり、窒素雰囲気下40℃で保存した触媒溶液は少なくとも40日間析出物の生成が認められなかった。また、この触媒溶液のpHは6.3であった。
【0101】
[ポリエステルの製造]
図1に示すエステル化工程と図2に示す重縮合工程により、以下のようにしてポリエステルを製造した。先ず、リンゴ酸を0.18質量%含有したコハク酸1.00モルに対して、1,4−ブタンジオールを1.30モルおよびリンゴ酸を総量0.0033モルの割合となるように混合した50℃のスラリーを、スラリー調製槽(図示せず)から原料供給ライン(1)を通じ、予め、窒素雰囲気下エステル化率99質量%のポリエステル低分子量体(エステル化反応物)を充填した攪拌機を有するエステル化反応槽(A)に、45.5kg/時間となるように連続的に供給した。
【0102】
エステル化反応槽(A)を内温230℃、圧力101kPaとし、生成する水、テトラヒドロフランおよび余剰の1,4−ブタンジオールを、留出ライン(5)から留出させ、精留塔(C)で高沸成分と低沸成分とに分離した。系が安定した後の塔底の高沸成分は精留塔(C)の液面が一定になるように、抜出ライン(8)を通じて、その一部を外部に抜き出した。一方、水とテトラヒドロフランを主体とする低沸成分は、塔頂よりガスの形態で抜き出し、コンデンサ(G)で凝縮させ、タンク(F)の液面が一定になるように、抜出ライン(13)より外部に抜き出した。同時に、再循環ライン(2)より100℃の精留塔(C)の塔底成分(98質量%以上が1,4−ブタンジオール)全量を、また、原料供給ライン(1)より、エステル化反応槽で発生したテトラヒドロフランと等モルの1,4−ブタンジオールを併せて供給し、エステル化反応槽内のコハク酸に対する1,4−ブタンジオールモル比が1.30となるように調整した。供給量は、再循環ライン(2)と原料供給ライン(1)合わせて3.8kg/時間であった。また、1,4−ブタンジオールがテトラヒドロフランに転化した量はコハク酸1.00モルに対し、0.042モル(THF化率4.2モル%対コハク酸)であった。
【0103】
エステル化反応槽(A)で生成したエステル化反応物は、ポンプ(B)を使用し、エステル化反応物の抜出ライン(4)から連続的に抜き出し、エステル化反応槽(A)内液のコハク酸ユニット換算での平均滞留時間が3時間になるように液面を制御した。抜出ライン(4)から抜き出したエステル化反応物は、図2第1重縮合反応槽(a)に連続的に供給した。系が安定した後、エステル化反応槽(A)の出口で採取したエステル化反応物のエステル化率は92.4%であり末端カルボキシル基量は884当量/トンであった。
【0104】
予め前述手法で調製した触媒溶液を、触媒調製槽において、チタン原子としての濃度が0.12質量%となるように、1,4−ブタンジオールで希釈した触媒溶液を調製した後、供給ライン(L8)を通じて、1.4kg/hで連続的にエステル化反応物の抜出ライン(4)に供給した(触媒は反応液の液相に添加された)。供給量は運転期間中安定していた。
【0105】
第1重縮合反応槽(a)の内温は240℃、圧力2.7kPaとし、滞留時間が120分間になるように、液面制御を行った。減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L2)から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、初期重縮合反応を行った。抜き出した反応液は第2重縮合反応器(d)に連続的に供給した。
第2重縮合反応器(d)の内温は240℃、圧力400Paとし、滞留時間が120分間になるように、液面制御を行い、減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L4)から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、更に重縮合反応を進めた。得られたポリエステルは、抜出用ギヤポンプ(e)により抜出ライン(L3)を経由し、第3重縮合反応器(k)に連続的に供給した。
第3重縮合反応器(k)の内温は240℃、圧力は130Pa、滞留時間は120分間とし、更に、重縮合反応を進めた。得られたポリエステルは、ダイスヘッド(g)からストランド状に連続的に抜き出し水冷しつつ、回転式カッター(h)でカッティングしペレットとした。エステル化反応、重縮合反応は連続7日間行い反応スタート後16時間経過してから8時間ごとにサンプリングして得られたポリエステル物性を測定した。それぞれのサンプルの平均値およびれ幅を示す。固有粘度は1.85±0.02dL/g、末端カルボキシル基濃度は19±1当量/トン、カラーb値は1.9±0.1、溶液ヘーズは0.4±0.1%、ペレット重量19±1mg/粒であり、品質の安定したポリエステルペレットであった。ペレット重量は100粒の重量を測定して一粒当たりに換算した。
【0106】
[ポリエステルペレットのエタノールと水を含有する混合液による接触処理]
得られたポリエステルペレットを、図3に示す接触処理工程により、接触処理を行った。接触処理液として用いるエタノールと水との混合液は、循環タンク(I)からポンプ(IX)により熱交換器(II)を経由して70℃に制御され、供給ライン(101)より処理槽(III)へ供給した。接触処理液のエタノール(以下、EtOHと略記することがある)と水の割合は、接触処理液全体に対して水を90質量%とした。処理槽内における接触処理液とペレットの質量比は5とした(処理液/ペレット比)。
【0107】
接触処理液は、処理槽内でペレットと向流接触させた後、抜出ライン(102)より抜き出し、微粉除去機(IV)を経由して循環タンク(I)へ回収した。接触処理に供するペレットは供給ライン(103)より連続的に供給され、8時間接触処理液と接触させた後、ロータリーバルブ(V)で抜出ライン(104)より連続的に抜き出した。
ペレットに同伴して抜き出された接触処理液は、予備固液分離機(VI)で分離され、回収タンク(VII)を経由後、ポンプ(X)により供給ライン(105)を通じて、回収ライン(106)へ戻した。循環タンク(I)からは抜出ライン(107)より、接触処理液の抜き出しを連続的に行い、その量は接触処理液全循環流量の1/20(流量比)とした。供給ライン(108)からは抜き出された接触処理液に相当する量のエタノールと水を循環タンク(I)へ供給した。連続的に抜き出されたペレットは予備固液分離機(
IV)で同伴された接触処理液と分離された後、固液分離機(VIII)より抜出ライン(109)を経由し、乾燥工程へ連続的に供給された。
【0108】
[ペレットの乾燥]
乾燥は図4に示す乾燥工程により行った。第一乾燥塔の乾燥窒素ガスは純度99%以上(露点マイナス40℃)、ガス温度80℃、ガス(空塔)速度0.125m/秒、ペレット滞留時間15時間、第二乾燥塔の乾燥空気(露点マイナス40℃)温度50℃、ガス(空塔速度)0.125m/秒、ペレット滞留時間24時間で行った。
【0109】
乾燥後のサンプルについて測定した固有粘度の接触処理前の固有粘度に対する比(保持率%表示)、および乾燥後のサンプルの環状二量体含有量、ペレット重量を表1に示す。
【0110】
(実施例2)〜(実施例7)、(比較例1)
実施例1において、接触処理液の組成と接触処理時間をそれぞれ表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして接触処理を行った結果を表1に示した。
【0111】
(実施例8)
実施例1において第三重縮合槽からポリエステルを抜出す抜出しライン(L3)の長さを4倍の長さの配管に替えて抜きだした以外は実施例1と同様に重縮合を行いポリエステルペレットを得た。得られたポリエステルは固有粘度は1.85±0.02dL/g、末端カルボキシル基量は30±1当量/トン、カラーb値は2.0±0.1、溶液ヘーズは0.4±0.1%であり、品質の安定したポリエステルペレットであった。得られたペレットを接触処理液の組成と接触処理時間をそれぞれ表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして接触処理を行った結果を表1に示した。
【0112】
(実施例9)
実施例3において溶融重縮合後のペレット化時のカッター速度を変えてペレット重量を30±1mg/粒に変更した以外は実施例3と同様に行った。結果を表1に示す。
【0113】
(実施例10,11)、(比較例4)
実施例1において、接触処理液組成、接触処理液温度をそれぞれ表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして接触処理を行い、実施例1と同様に固有粘度の接触処理前の固有粘度に対する比(保持率%表示)、CD含有量、溶出量、乾燥後のペレット中のエタノール(但し比較例4においてはイソプロパノール)含有量および溶融粘度MVRを測定し、結果を表2に示した。
【0114】
(比較例2、3、5)
実施例10において接触処理液に用いたエタノールを表2に示すように、それぞれメタノール(以下、MeOHと略記することがある)、アセトン、イソプロパノール(以下、IPAと略記することがある)に変えた以外は実施例10と同様にして接触処理を行い、実施例1と同様に固有粘度の接触処理前の固有粘度に対する比(保持率%表示)、CD含有量および溶出量を測定し、結果を表2に示した。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
表1に示したように、エタノール/水混合液の水の含有量が0質量%であると(比較例1)は、IV保持率が低くなり、アルコール分解によるものと予想される粘度低下が起こり、ポリエステルの品質が劣るものとなる。また、表2に示したように、ポリエステルペレットを接触させる接触処理液に用いるエタノールを他の有機溶媒(アルコールやケトン)にした場合(比較例2,3,4,5)、エタノールに比べてCD含有量の低減効果が劣り溶出量が増加し、特にメタノールを使用した場合には接触処理中の固有粘度低下が大きく、IV保持率が低くなりポリエステルの品質が劣るものとなる(比較例2,5)。イソプロパノールを使用した場合は乾燥後のペレット中のイソプロパノール量が多くMVRが大きくなる。
【0118】
これに対し、本発明のエタノールと水を含有する混合液と接触させた場合、IV低下等の品質低下が小さい上、CD含有量の低減を効率よく行うことができCD含有量が少なく溶出量の少ないポリエステルを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の製造方法によりCD含有量が低減された溶出量の少ない、ポリエステルを効率
的に得ることができ、成形品にしたとき表面に曇りが生じない成形品の原料ポリエステルを提供することができる。
【符号の説明】
【0120】
1:原料供給ライン
2:再循環ライン
3:触媒供給ライン
4:エステル化反応物の抜出ライン
5:留出ライン
6:抜出ライン
7:循環ライン
8:抜出ライン
9:ガス抜出ライン
10:凝縮液ライン
11:抜出ライン
12:循環ライン
13:抜出ライン
14:ベントライン
15:供給ライン
A:エステル化反応槽
B:抜出ポンプ
C:精留塔
D:ポンプ
E:ポンプ
F:タンク
G:コンデンサー
L1、L3、L5:重縮合反応物抜出ライン
L2、L4、L6:ベントライン
L7:触媒供給ライン
L8:原料供給ライン
a:第1重縮合反応槽
d:第2重縮合反応槽
k:第3重縮合反応槽
c、e、m:抜出用ギヤポンプ
g:ダイスヘッド
h:回転式カッター
p、q、r、s:フィルター
I:循環タンク
II:熱交換器
III:接触処理槽
IV:微粉除去機
V:ロータリーバルブ
VI:予備固液分離機
VII:回収タンク
VIII:固液分離機
IX:ポンプ
X:ポンプ
101:接触処理液供給ライン
102:抜出ライン
103:ペレット供給ライン
104:抜出ライン
105:供給ライン
106:回収ライン
107:抜出ライン
108:供給ライン
109:抜出ライン
I:第一乾燥塔
J:冷却塔
K:第二乾燥塔
L:コンデンサー
M:熱交換器
N:熱交換器
O:ロータリーバルブ
P:ロータリーバルブ
Q:ロータリーバルブ
R:ブロア
S:熱交換器
201:ペレット供給ライン
202:ペレット抜出ライン
203:ペレット供給ライン
204:ペレット抜出ライン
205:ペレット供給ライン
206:ペレット抜出ライン
207:乾燥ガス回収ライン
208:乾燥ガス供給ライン
209:新乾燥ガス供給ライン
210:凝縮液抜出ライン
211:冷却ガス抜出ライン
212:冷却ガス供給ライン
213:乾燥ガス抜出ライン
214:乾燥ガス供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを反応させるエステル化反応工程と、該エステル化反応工程を経て得られるポリエステルをペレット化する工程と、得られるポリエステルペレットと、エタノールおよび水を含有する混合液とを、接触させる接触処理工程と、を有するポリエステルの製造方法であって、該混合液が混合液全体に対して水を10質量%以上99質量%以下含有する、ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
ポリエステルペレットと前記混合液とを接触させる温度が、25℃以上且つポリエステルの融点以下である、請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項3】
ポリエステルペレットと前記混合液との接触により混合液に抽出されたオリゴマーを、ポリエステルの原料として使用する、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項4】
前記混合液が、混合液全量に対して15質量%以下のイソプロパノールを含有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項5】
接触処理工程後に乾燥工程を有し、乾燥工程後のポリエステルが、1000質量ppm以下のエタノールを含んでいる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の製造方法により得られるポリエステルであって、固有粘度が1.4dL/g以上2.8dL/g以下であり、環状二量体含有量が500質量ppm以上6000質量ppm以下であるポリエステル。
【請求項7】
末端カルボキル基量が80(当量/トン)以下、5(当量/トン)以上である、請求項6に記載のポリエステル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−92310(P2012−92310A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209173(P2011−209173)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】