説明

ポリエステルフィルム

【課題】 例えば、昇華型感熱転写方式、インクジェット方式に代表される各種の方式での平滑性を要求されるような用途、特に、前述したような転写型画像保護フィルムの基材用、ブラウン管保護用フィルムのような、光学特性を要求されるような用途等において利用されるフィルムであって、表面の平滑化を工業生産上の観点から、必要最小限にとどめながら、ハンドリングを高度に維持したフィルムを提供する。
【解決手段】 厚さが6μm以下のフィルムであり、フィルム表面の算術平均粗さ(Ra)が0.031〜0.045μmであり、フィルム間の固着力が100gf/125mm幅以下であることを特徴とするポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムに関する。詳しくは、本発明は、平滑でありながら、ハンドリング性に優れたポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリエステルフィルムは、機械的性質、耐熱性、電気的特性、耐薬品性等、各種の特性を高度にバランス良く有し、コストパフォーマンスの点で優れるため、磁気テープ用、包装用、製版用等の産業用資材として広く用いられている。特に近年は各種の印画媒体の材料としての需要が増している。
【0003】
特に各種の最終用途の要求にからみ、表面の平滑性を要求される方向にあり、とりわけ、昇華型感熱転写方式の用途に代表されるように、リボン状フィルムから受像紙へ染料を転写することにより、高品質の画像を実現することが求められている。
【0004】
加えて、従来の銀塩写真に匹敵する長期間の画質維持(「耐候性」「耐光性」)を付与するため、転写後の画像の上に保護層を設けることがなされている。この保護層は、リボン状フィルム上に各色の染料層と並置して保護層が設けられ、基材の裏面より加熱することにより、保護層を画像側に転写させる方式が一般的である。
【0005】
しかしながら、この保護層を転写するためのリボンの基材が粗面化されていると、基材と転写前の保護層を積層する際に界面での保護層が粗面化してしまい、この面が転写後の保護層の表面となり、凹凸が、光の乱反射を招き、光沢度が低下してしまい、画質を損なってしまう。光沢度を高めるために基材の表面を平滑化することが容易に想像つくが、薄膜化したフィルムにおいては表面を平滑化すると、フィルムを重ね合わせた際にフィルム間が(フィルム同士が)ブロッキング(固着)しやすくなり、良品歩留まりが極端に落ち、工業生産上、不適当である。このように、基材フィルムの平滑化とブロッキング防止を経済的に同時に満たすことは、これまで不可能であった。
【特許文献1】特開平11−170465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、表面の平滑化を工業生産上の観点から、必要最小限にとどめながら、ハンドリングを高度に維持したフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、特定の表面特性を設けることにより、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、厚さが6μm以下のフィルムであり、フィルム表面の算術平均粗さ(Ra)が0.031〜0.045μmであり、フィルム間の固着力が100gf/125mm幅以下であることを特徴とするポリエステルフィルムに存する。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフィルムを構成するポリエステルとは、繰り返し単位の80%以上がエチレンテレフタレート単位またはエチレン−2,6−ナフタレート単位を有するポリエステルを指す。かかるポリエステルは、通常、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとを主な出発原料としてエステル交換反応を経由して、重縮合反応を行う、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを主な出発原料として、エステル化反応を経由して、重縮合反応を行うことにより得られる。これらの反応を行うため、通常、触媒として金属化合物を添加する方法が用いられる。例えば、エステル交換反応触媒として、Ca、Mg、Mn、Li等の化合物、重縮合反応触媒としてSb、Ti、Ge、Sn、Co等の化合物が一般的に用いられている。また、本発明の範囲を逸脱しなければ、本発明のポリエステルは他の第三成分を含有していてもよい。
【0010】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸以外に、例えば、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシエトキシ安息香酸等)等を用いることができる。グリコール成分としては、エチレングリコール以外に、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上を用いることができる。
【0011】
本発明で用いるポリエステルの極限粘度は、通常0.45以上、好ましくは0.50〜1.0、さらに好ましくは0.52〜0.80の範囲である。極限粘度が0.45未満では、フィルム製造時の生産性が低下したり、フィルムの機械的強度が低下したりするという問題が生ずることがある。一方、ポリマーの溶融押出安定性の点から、極限粘度は1.0を超えないことが好ましい。
【0012】
本発明のポリエステルフィルムは、その厚みが、6μm以下である。最終製品としての容量の点から5μm以下が好ましく、また、フィルム製造時の巻き歩留まりの点から3μm以上が好ましい。
【0013】
本発明のポリエステルフィルムは、平滑性の目的で、表面の算術平均粗さ(Ra)が0.031〜0.045μmである必要があり、好ましくは0.033〜0.038μmである。算術平均粗さ(Ra)の測定方法については、後述する。算術平均粗さ(Ra)が0.045μmを超える場合は、保護層転写後の画像の光沢度が劣り、不適当である。また、算術平均粗さ(Ra)が0.031μm未満では、基材ベースの巻き特性が悪化し、好ましくない。
【0014】
本発明の最大の特徴は、良品歩留まりを向上させる目的で、フィルム間のブロッキング(固着)を低減させることにある。すなわち、フィルム間の固着力が、100gf/125mm幅以下、好ましくは、50gf/125mm幅以下である。固着力の測定方法については、後述する。
【0015】
さらに固着力を本発明範囲内に収めるためには、表面の4次以上の突起数を300〜1500個/cmの範囲に設定することが好ましい。4次以上の突起数の測定方法については、後述する。4次以上の突起数が、300個/cm未満であると、固着力を100gf/125mm幅以下に収めにくく、その他の付加的手段を講じなければならず、コスト上、不利である。反対に4次以上の突起数が、1500個/cmを超えると、本発明の最大の特徴である平滑性を維持することが難しい。
【0016】
本発明のフィルムの好適な用途としては、例えば、昇華型感熱転写方式、インクジェット方式に代表される各種の方式での平滑性を要求されるような用途、特に、前述したような転写型画像保護フィルムの基材用、ブラウン管保護用フィルムのような、光学特性を要求されるような用途等が挙げられる。
【0017】
本発明において、ポリエステルに存在する粒子の例としては、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、カオリン、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、およびポリエステル重合時に生成させる析出粒子を挙げることができ、好ましくは、炭酸カルシウム、シリカ並びにカルシウムおよびリンを含有する析出粒子である。
【0018】
炭酸カルシウムについては、粒径分布をシャープ化し、粗大粒子(平均粒径より著しく大きい粒子)をカットしやすいこと、フィルム化後、滑り性、耐摩耗性が得やすいこと、製品にならないフィルムの不要部分を再溶融、押し出しした際に粒子がこわれにくく、粒径を維持しやすいこと等が好ましい理由である。シリカについては、他の粒子より比較的安価に入手できること、等が好ましい理由である。カルシウムおよびリンを含有する析出粒子については、あらためて粒子を添加する必要がなく、安価であること、フィルム化時の延伸時の粒子の変形が小さく、突起高さを維持でき、良好な巻き特性を発揮する、等が好ましい理由である。
【0019】
また、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記で代表される粒子をさらに、複数種、採用させることはむろん可能である。
【0020】
添加粒子を含むポリエステルの製造に際して、粒子はポリエステルの合成反応中に添加してもポリエステルに直接添加してもよい。合成反応中に添加する場合は、粒子をエチレングリコール等に分散させたスラリーとして、ポリエステル合成の任意の段階で添加する方法が好ましい。一方、ポリエステルに直接添加する場合は、乾燥した粒子として、または、水あるいは沸点が200℃以下の有機溶媒中に分散したスラリーとして、2軸混練押出機を用いてポリエステルに添加混合する方法が好ましい。なお、添加する粒子は、必要に応じ、事前に解砕、分散、分級、濾過等の処理を施しておいてもよい。
【0021】
粒子の含有量を調節する方法としては、上記した方法で高濃度に粒子を含有するマスター原料を作っておき、それを製膜時に、実質的に粒子を含有しない原料で希釈して粒子含有量を調節する方法が有効である。
【0022】
また、上記の突起形成剤以外の添加剤として、必要に応じて、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、着色剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤などを、本発明の効果を損なわない範囲内で含有していてもよい。
【0023】
次に、本発明のフィルムの製造法を具体的に説明する。
まず、ポリエステル原料を、押出装置に供給する。すなわち、スリット状のダイから溶融シートとして押し出す。次に、溶融シートを、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0024】
本発明においては、このようにして得られたシートを二軸方向に延伸してフィルム化する。二軸延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを、第一軸方向にまず延伸する。延伸温度範囲は通常70〜150℃、延伸倍率は通常2.5〜6倍の範囲とし、延伸は一段階または二段階以上で行うことができる。次に第二軸方向、すなわち第一軸方向と直交する方向に一軸配向フィルムを一旦ガラス転移点以下に冷却するか、または冷却することなく、例えば80〜150℃の温度範囲に予熱して、さらにほぼ同温度の下で2.5〜5倍、好ましくは3.0〜4.7倍に延伸を行い、二軸に配向したフィルムを得る。なお、第一軸方向の延伸を2段階以上で行うことは、長手方向の良好な厚さ均一性を達成できるので好ましい。また、横延伸した後、さらに長手方向に再延伸する方法も可能であるが、いずれにしても長手方向の総合延伸倍率と幅方向の延伸倍率の積を16倍以上とすることが、長手方向および幅方向の良好な厚さ均一性を達成するために好ましい。また、第1軸方向とその直交する方向の延伸を同時に行う、いわゆる同時二軸延伸法を採用してもよい。かくして得られたフィルムを、30%以内の伸長、制限収縮、または定長下で1秒〜5分間熱処理する。この際、熱処理工程内または熱処理後に長手方向または横方向、あるいは両方向に再延伸を行ってもよい。
【0025】
なお、本発明の効果を阻害しない範囲で、種々の最終用途に応じ、接触する層との接着性を付与するためにフィルム表面に塗布層を設けることができる。この接着性を付与するために、特に水性ポリエステル系ポリマーおよび水性アクリル系ポリマーから成る群から選ばれた少なくとも1種からなるポリマー(バインダーポリマー)が有用である。
【0026】
また、塗布層の耐固着性(耐ブロッキング性)、耐水性、耐溶剤性、機械的強度の改良のために架橋性ポリマーとしてメチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系等の化合物、エポキシ系化合物、アジリジン化合物、ブロックポリイソシアネート、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコーアルミネート系カップリング剤、過酸化物、熱および光反応性のビニル化合物や感光性樹脂などを含有してもよい。
【0027】
さらに必要に応じて、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、帯電防止剤、有機系潤滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
【0028】
上述の塗布液をポリエステルフィルムに塗布する方法としては原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるリバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターあるいはこれら以外の塗布装置を用いることができる。
【0029】
本発明において、コストの点から、塗布層を設けるには、フィルム製造工程内で塗布する、いわゆるインラインコーティング方法を推奨する。
【0030】
フィルム製造工程内で塗布する方法としては、ポリエステル未延伸フィルムに塗布液を塗布し、逐次あるいは、同時に二軸延伸する方法、一軸延伸されたポリエステルフィルムに塗布し、さらに先の一軸延伸方向と直角の方向に延伸する方法、あるいは二軸延伸ポリエステルフィルムに塗布し、さらに横および/または縦方向に延伸する方法などがある。
【発明の効果】
【0031】
本発明のフィルムは、平滑な面と良好な耐固着性を有するため、高度な機能性を与えることができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中の評価方法は下記のとおりである。実施例および比較例中、「部」とあるのは「重量部」を示し、「%」とあるのは「重量%」を示し、「ppm」とあるのは「重量ppm」を示す。
【0033】
(1)ポリマーの極限粘度 [η] (dl/g)
ポリマー1gをフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlに溶解し、30℃で測定した。
【0034】
(2)添加粒子の平均粒径(d50)(μm)
島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(SA−CP3型)で測定した等価球形分布において大粒子側から積算した積算体積分率50%の粒径を添加粒子の平均粒径(d50)とした。
【0035】
(3)析出粒子の平均粒径(d50)(μm)
析出粒子を含むポリエステルフィルムをプレパラートに挟み込んで溶融、冷却した後、顕微鏡にて観察し、その画像を画像処理装置(ライカ社製「Quantimet500+」)で処理することにより測定し、その等価球形分布において大粒子側から積算した積算体積分率50%の粒径を析出粒子の平均粒径(d50)とした。
【0036】
(4)析出粒子量の測定
ポリエステル100gにo―クロルフェノール1.0リットルを加え120℃で3時間加熱後、超遠心分離機(日立工機製商品「55P―72」)を用いて40分間遠心分離を行い、得られた粒子を100℃で真空乾燥する。走査型差動熱量計にて上記の粒子を処理し、ポリマーに相当する溶融ピークが認められる場合は、当該粒子にo―クロルフェノールを加えて加熱冷却後、再び遠心分離操作を行う。そして、溶融ピークが認められなくなった粒子を析出粒子とする。遠心分離操作は、通常2回で足りる。
【0037】
(5)算術平均粗さ Ra(μm)
マスターロールの幅方向の中央部より試験片を切り出し、小坂研究所株式会社製「SE3500」を用いて、次のように求めた。すなわち、先端半径5μm、荷重30mgの触針を用い、評価長さ2.5mmについて測定した。算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601−1994に従った。すなわち、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さLだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にx軸を、縦倍率の方向にy軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、次の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。なお、縦倍率=200,000倍、カットオフ値=0.08mmとし、ひとつの面につき、粗さ曲線を10本測定し、おのおののRaの10点平均を取った。
【0038】
Ra=(1/L)∫|f(x)|dx
【0039】
(6)固着力 (gf/125mm幅)
マスターロールの幅方向の中央部より試験片を切り出し、切り出したフィルム試験片の一方の面とこれと反対の面が接するように重ね合わせ、40℃、80%R.H.に調節された恒温恒湿室内でプレス機により、幅12.5cm、長さ10.0cmの長方形部分を圧力10kgf/cmでプレスした状態で24時間放置した後、圧力を解除し、恒温恒湿室内を23℃、50%R.H.に変更し、そのまま24時間放置した。放置後、試験片を取り出し、この重ね合わせた2枚の試料の間に緊張させた線径0.8mmΦのピアノ線を通し、プレスした長方形の幅12.5cmの辺に平行に維持した状態で、ピアノ線を50cm/分の速度で移動して前記のプレス部分を剥離した。この剥離の際にピアノ線にかかった剥離荷重(gf/125mm幅)値のチャートの平均線を求め、固着力とした。
【0040】
(7)4次以上の突起数(個/cm
マスターロールの幅方向の中央部より試験片を切り出し、表面に厚さ450オングストロームのアルミニウムを蒸着し、日本光学工業社製二光束干渉顕微鏡を用いて測定した。測定波長0.54μmで4次以上の干渉縞を示すものを4次以上の突起として5cmにわたりカウントし、単位面積当たり(1cm当たり)に換算した。4次の高さとは、測定波長の1/2の4倍=1.08μmに相当し、4次以上の突起とは、1.08μm以上の高さを持つことを意味する。
【0041】
(8)ブロッキング現象
実施例中に記載する方法で作製したマスターロールから500mm幅、35000m長のロール状に巻き取ったロールについて、これを40℃、80%R.H.に調節された恒温恒湿室内にて24時間放置し、その後、恒温恒湿室内を23℃、50%R.H.に変更し、そのまま24時間放置した。放置後、ロールを巻きだして、そのフィルム層間のブロッキング状態(固着状態)を以下の基準で判定した。
【0042】
◎:まったく、ブロッキング起きず、優秀。
○:若干、ブロッキング起こすも、実用上、問題ないレベル。良好。
×:ブロッキングひどく、使用に耐えない。不良。
【0043】
(9)転写型画像保護フィルムの作製
実施例中に記載する方法で作製したマスターロールから500mm幅、35000m長のロール状に巻き取ったロールについて、このロールを巻きだして、一方の面に、全面に亘ってバックコート層用塗料をグラビアコート方式により塗工後、55℃のオーブンにて5日間保存し硬化させてバックコート層を形成した。バックコート層用塗料は、ポリビニルアセタール系樹脂としてデンカブチラール#3000K(電気化学工業(株)製)を5.0重量部と、イソシアネートとしてコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)を0.5重量部と、燐酸エステルとしてフォスファノールGB520(東邦化学(株)製)を20重量部と、シリカとしてNipsil E−200A(日本シリカ工業(株)製)を0.5重量部と、メチルエチルケトンを37重量部と、トルエンを37重量部とを混合して調製した。続いて、バックコート層硬化後のロール状フィルムを再度巻きだして、バックコート層の反対面に、画面保護層用塗料をバーコーティングにより、厚み約2.0μmとなるように塗布し、120℃オーブンで乾燥し、転写型画像保護フィルムを作製した。画像保護層用塗料は、セルロース・アセテートブチレート樹脂としてCAB500−0.5(イーストマンケミカル社製)を20.0重量部と、メチルエチルケトンを40.0重量部と、トルエンを40.0重量部とを混合して調製した。
【0044】
(10)光沢度
上記(9)で記載した方法にて作製した転写型画像保護フィルムを用いて、非保護画像上に画像保護層を転写し、その表面の光沢度をGloss Meter VG2000(NIPPON DENSHOKU製)を用いて20°Glossを測定し、以下の基準で判定した。
◎:光沢が十分にあり、優秀
○:若干、光沢が低下するが、実用上、問題ないレベルであり、良好。
×:光沢が不十分で実用に耐えず、不良
なお、印画紙の染料受容層に印画、および熱転写する上記の転写型画像保護フィルムについては、ソニー(株)製昇華型Digital Photo Printer DPP−SVシリーズ純正メディアであるSVM−25LSインクリボンの熱転写フィルム部分と置換えてリボンと貼り合わせることによって使用した。評価用印画物作成としてソニー(株)製Digital Photo Ptinterを使用した。
【0045】
具体的には、まず、Adobe社製のソフトウエアAdope Photo Shopを使用して、白のベタ画像を作成し、そのデータをプリンターDPP−SVM77に転送、SVM−25LSインクリボンの熱転写フィルム部に、本発明の熱転写フィルムを置き換えたインクリボンを使用して、各画像保護フィルムの白ベタ画像上への転写を行った。印画紙に白ベタ画像を当該プリンターの熱転写ヘッドにより転写印画した。
【0046】
(架橋高分子粒子の製造)
脱塩水500部に水溶性重合開始剤の過硫酸カリウム0.1部とアニオン系乳化剤としてポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム0.15部を添加し均一に溶解させた後、メチルメタクリレート0.66部、エチレングリコールジメタクリレート8.3部、ジビニルベンゼン3.95部および1,4−ブタンジオールジアクリレート0.135部の混合液を加えた。次いで窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら70℃で9時間重合反応を行った。最終的な反応率は95%であった。引き続いて反応系温度を70℃に保ったまま、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム(花王(株)製 商品名 ペレックスSS−H)0.4部を添加し、さらに30分間攪拌を続け、表面処理を行った。最終的に得られた粒子の平均粒径は0.3μmであった。
【0047】
(ポリエステル原料a)
テレフタル酸86部、エチレングリコール70部を反応器にとり、約250℃で0.5kg/mmの加圧下、4時間エステル化反応を行った。次いで、三酸化アンチモン0.015部、平均粒径2.2μmのシリカ粒子およびリン酸0.01部を添加した。温度を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を常圧から徐々に減じ0.5mmHgとした。4時間後重縮合反応を停止し、極限粘度0.66のポリエステル(a)を得た。このポリエステル(a)には、0.80重量%のシリカ粒子が含有されていた。
【0048】
(ポリエステル原料b)
ポリエステル原料aにおいてシリカ粒子の替わりに、(架橋高分子粒子の製造)で記した、平均粒径0.3μmの架橋高分子粒子を添加すること以外はポリエステルaとまったく同様にして極限粘度0.66のポリエステル(b)を得た。このポリエステルbには0.20重量%の架橋高分子粒子が含有されていた。
【0049】
(ポリエステル原料c)
ポリエステル原料aにおいてシリカ粒子を添加しないこと以外はポリエステルaとまったく同様にして極限粘度0.66の希釈用ポリエステル(c)を得た。
【0050】
(ポリエステル原料d)
ポリエステル原料aにおいてシリカ粒子の替わりに、平均粒径1.8μmの炭酸カルシウム粒子を添加すること以外はポリエステルaとまったく同様にして極限粘度0.66のポリエステル(d)を得た。このポリエステルdには0.50重量%の炭酸カルシウム粒子が含有されていた。
【0051】
(ポリエステル原料e)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール70部および酢酸カルシウム一水塩0.11部を反応器にとり、加熱昇温するとともにメタノールを留去してエステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃まで昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次にこの反応混合物にトリエチルホスファイト0.124部とトリエチルホスフェート0.54部とをエチレングリコールに均一に溶解させた液を添加し、次いで三酸化アンチモン0.04部を添加したのち10分間を要して236℃に達せしめた。この時点から系内の圧力を徐々に減じ、三酸化アンチモン添加後80分で系内の温度を265℃、圧力を300mmHgとし、以後も徐々に昇温減圧し最終的に285℃、1mmHg以下とした。4時間後、系内を常圧に戻しポリマーを吐出しチップ化し、極限粘度0.66のポリエステル(e)を得た。このポリエステル(e)には均一で微細な析出粒子が多数認められ、その平均粒径は1.8μmであった。記載の方法に従ってその析出粒子量を測定したところポリエステルに対して0.40重量%であった。
【0052】
(実施例1〜3、比較例1〜2)
ポリエステル(a)とポリエステル(c)を混合し、平均粒径2.2μmのシリカ粒子 の含有濃度を表1に表すように各々、配合し、原料とした。
(製膜・スリット)
この混合した原料を常法により乾燥して押出機に供給し、290℃で溶融してシート状に押出し、静電印加密着法を用いて冷却ロール上で急冷し、無定形シートとした。得られたシートを、ロール延伸法を用いて縦方向に90℃で2.75倍延伸した後、さらに75℃で1.65倍延伸した。その後、テンターに導いて、横方向に110℃で4.35倍延伸し、230℃で熱処理を行い、厚み4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このマスターロールから500mm幅にトリミングしながら、内径6インチの巻き芯にトータル長35000m、250m/分の速度で、ロール状に巻き取り、ロール状フィルムとした。
【0053】
(実施例4)
ポリエステル(e)とポリエステル(c)を混合し、析出粒子0.10%を含有する原料とした。
(製膜・スリット)
実施例1とまったく同様にして、厚み4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このマスターロールから500mm幅にトリミングしながら、内径6インチの巻き芯にトータル長35000m、250m/分の速度で、ロール状に巻き取り、ロール状フィルムとした。
【0054】
(実施例5)
ポリエステル(b)とポリエステル(c)とポリエステル(d)を混合し、平均粒径1.8μmの炭酸カルシウム粒子 0.07%と平均粒径0.3μmの架橋高分子粒子 0.02%を含有する原料とした。
(製膜・スリット)
実施例1とまったく同様にして、厚み4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このマスターロールから500mm幅にトリミングしながら、内径6インチの巻き芯にトータル長35000m、250m/分の速度で、ロール状に巻き取り、ロール状フィルムとした。
実施例1〜5および比較例1〜2について得られた結果をまとめて下記表1に示す。
【0055】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のフィルムは、例えば、昇華型感熱転写方式、インクジェット方式に代表される各種の方式での平滑性を要求されるような用途、特に、前述したような転写型画像保護フィルムの基材用、ブラウン管保護用フィルムのような、光学特性を要求されるような用途等において、好適に利用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが6μm以下のフィルムであり、フィルム表面の算術平均粗さ(Ra)が0.031〜0.045μmであり、フィルム間の固着力が100gf/125mm幅以下であることを特徴とするポリエステルフィルム。


【公開番号】特開2006−176685(P2006−176685A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372455(P2004−372455)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000108856)三菱化学ポリエステルフィルム株式会社 (187)
【Fターム(参考)】