説明

ポリエステルミシン糸

【課題】可縫性に優れ、埋蔵資源の使用を削減することができるポリエステルミシン糸を提供する。
【解決手段】少なくとも2種類のポリエステルマルチフィラメント糸からなるミシン糸でとし、一方が、生分解性を有する脂肪族ポリエステルからなるマルチフィラメント糸、他方が、芳香族ポリエステルからなるマルチフィラメント糸であり、それぞれのマルチフィラメント糸に撚係数が4000〜7000の下撚が施され、さらにこれらを合糸して撚係数が5000〜8000の上撚が施されていることを特徴とするポリエステルミシン糸とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球環境への配慮が必要とされる社会において、埋蔵天然資源の使用削減を可能としたポリエステルミシン糸に関する。さらに詳しくは、環境への負荷が軽い生分解性ポリエステルとリサイクル可能な芳香族ポリエステルを用いたポリエステルミシン糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリエステルは、その性能の優秀性から衣料繊維、産業繊維、フィルム、飲料用のボトル等広範囲の用途に使用されている。しかし、芳香族ポリエステルの原料となるテレフタル酸およびジメチルテレフタレート等のテレフタル酸誘導体は、石油・石炭等の埋蔵天然資源が出発物質であり、将来資源不足が懸念されている。これらポリエステル製品は、使用後廃棄、回収され処分されるが、その際、燃焼しようとすると高熱を発し、通常の仕様の焼却炉では焼却炉が損傷し易いなどの問題が生じ、そのため高温耐久性に優れた焼却炉が必要になるばかりでなく、燃焼時に大量の酸素が必要であるために、炭酸ガス排出量が増大し地球温暖化などの原因となる。また、燃焼されずに廃棄される場合には、ほぼ永久的に分解されず残存する為、環境保護の観点からも大きな社会問題となっている。
【0003】
一方、ポリ乳酸を代表とする脂肪族ポリエステルは、その優れた生分解性を生かして、農業資材、土木資材等へ利用されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、これらの脂肪族ポリエステルは、耐熱性や強伸度等の物性面において芳香族ポリエステルより劣っており、これを用いた実用可能なミシン糸の提案は未だされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−264343号公報
【特許文献2】特開平6−264378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術における問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、可縫性に優れ、埋蔵資源の使用を削減することができるポリエステルミシン糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の目的は、少なくとも2種類のポリエステルマルチフィラメント糸からなるミシン糸であって、一方が、生分解性を有する脂肪族ポリエステルからなるマルチフィラメント糸、他方が、芳香族ポリエステルからなるマルチフィラメント糸であり、それぞれのマルチフィラメント糸に撚係数が4000〜7000の下撚が施され、さらにこれらを合糸して撚係数が5000〜8000の上撚が施されていることを特徴とするポリエステルミシン糸により達成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリエステルミシン糸は、生分解性に優れる脂肪族ポリエステルとリサイクル可能な芳香族ポリエステルの2種の成分から実質的に構成されているので、循環型社会を実現していくのに必須である埋蔵天然資源の使用削減が可能となる。また、脂肪族ポリエステルのマルチフィラメント糸と芳香族ポリエステルのマルチフィラメント糸を合撚することにより、脂肪族ポリエステルマルチフィラメント単独のミシン糸を上回る強伸度を達成可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明のポリエステルミシン糸(以下、単にミシン糸と称することがある)は、少なくとも2種類のポリエステルマルチフィラメント糸からなるミシン糸であって、一方が、生分解性を有する脂肪族ポリエステルからなるマルチフィラメント糸(以下、肪族ポリエステルマルチフィラメント糸と称することがある)、他方が、芳香族ポリエステルからなるマルチフィラメント糸(芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸と称することがある)である。上記ミシン糸は、他の繊維、樹脂、油剤、または、機能性付与剤などの成分を含んでいてもよく、該他の成分の割合はミシン糸の重量に対して、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。他の成分がこれより多く含まれる場合は、後述する芳香族ポリエステルの回収工程において、不純物として残存することになり、残渣が生分解性を有する脂肪族ポリエステルだけでなくなるため、生分解が困難になり、地球環境に悪影響を及ぼすので好ましくない。また、生分解性を有する脂肪族ポリエステル単独ではポリマーの融点が低く、他の芳香族ポリエステル等と比較すると、強伸度や耐熱性といった点で十分な性能が得られない。一方、芳香族ポリエステル単独では、リサイクル性は良好であるが、生分解性に劣るという問題点がある。
【0009】
本発明で用いる脂肪族ポリエステルは、生分解性を有する脂肪族ポリエステルであれば特に限定する必要はない。例えば、主成分として(1)グリコール酸、乳酸、ヒドロキシブチルカルボン酸などのようなヒドロキシアルキルカルボン酸、(2)グリコリド、ラクチド、ブチロラクトンなどの脂肪族ラクトン、(3)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのような脂肪族ジオール、(4)ジエチレングリコール、ジヒドロキシエチルブタンなどのようなポリアルキレンエーテルなどのオリゴマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレンエーテルなどのポリアルキレングリコール、(5)コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族カルボン酸からなる脂肪族ポリエステルがあげられる。これらのポリエステルは、一種を単独で使用してもよくまた二種以上を混合して使用してもよい。さらにラクトンとしては、L−ラクトン、D−ラクトンの他にその他の成分を共重合したものもよく、共重合可能な他の成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ酪酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、アジピン酸、セバシン酸等の分子内に複数のカルボン酸を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられる。
【0010】
一方、本発明で用いられる芳香族ポリエステルは特に限定はされないが、テレフタル酸またはナフタレンジカルボン酸主たる酸成分とするポリエステルが好ましく、特にテレフタル酸がより好ましい。
【0011】
上記の脂肪族ポリエステルおよび芳香族ポリエステルには、必要に応じて、例えば結晶核剤、艶消し剤、酸化防止剤、糸摩擦低減剤、顔料、光安定剤、耐候剤、抗菌剤などの各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で添加することができる。
【0012】
さらに本発明のポリエステルミシン糸においては、芳香族ポリエステルが、廃ポリエステルから再生された芳香族ポリエステルであることが好ましいことがわかった。原因は定かではないが、廃ポリエステルから再生された芳香族ポリエステルからなるマルチフィラメント糸は、ポリエステルのバージンチップから製造されたマルチフィラメント糸に比べ低強度かつ高伸度であり、同様の低強度かつ高伸度という特徴を持つ脂肪族ポリエステルマルチフィラメント糸との相性が良く、可縫性に優れたミシン糸が得られると考えられる。これに対して、バージンチップから製造された芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸は高強力かつ低伸度であるため、脂肪族ポリエステル原糸との物性特性の差が大きく、合撚しても可縫性に優れたミシン糸が得られ難い傾向にある。
【0013】
本発明のミシン糸に用いられる各マルチフィラメント糸の物性は、脂肪族ポリエステルマルチフィラメント糸の強度が3〜5cN/dtex、伸度が20〜40%、芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸の強度が3〜6cN/dtex、伸度が20〜40%であることが好ましい。
【0014】
上記の廃ポリエステルから再生された芳香族ポリエステルとしては、例えばPETボトルなどを洗浄、粉砕した廃ポリエステルを再溶融して得られる(いわゆる、マテリアルリサイクルされた)芳香族ポリエステル、廃ポリエステルを化学分解し回収したポリエステル原料を再重合して得られる(いわゆる、ケミカルリサイクルされた)芳香族ポリエステルなどを例示することができる。但し、前者の場合、廃ポリエステルは、不純物を含んでいることが多く、また品質なども異なっていることが多いため、これを再溶融してマルチフィラメント糸を成形する場合、製糸工程が不安定となり、効率よく再生マルチフィラメント糸を製造することが難しい。よって、後者のように、廃ポリエステルを化学分解し回収したポリエステル原料を再重合して得られる芳香族ポリエステルを用いることが望ましい。
【0015】
本発明のミシン糸は、少なくとも上述した脂肪族ポリエステルマルチフィラメント糸と芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸とからなること、さらに、それぞれのマルチフィラメント糸に撚係数が4000〜7000の下撚が施され、さらにこれらを合糸して撚係数が5000〜8000の上撚が施されていることが肝要である。撚係数が上記範囲を下回ると、マルチフィラメントが糸軸方向へ十分に収束しないため、ミシン糸として十分な強度が得られない。また逆に、撚係数が上記範囲を上回ると、強撚により脂肪族ポリエステルマルチフィラメント糸に過度な負荷が掛かり、強度が低下するため、ミシン糸として十分な強度が得られない。なお、撚係数は下記式により算出することができる。
撚係数k=t×√d
ここで、tは撚数(T/m)、dは総繊度を表す。
【0016】
本発明のミシン糸は、例えば次の方法により製造するとができる。先ず、脂肪族ポリエステルマルチフィラメント糸および芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸にそれぞれ下撚が施され、さらに得られた下撚糸が引き揃えられ上撚が施される。この際、下撚および上撚は、例えばリング撚糸機などを用いて行うことができる。脂肪族ポリエステルマルチフィラメント糸および芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸からなる下撚糸はそれぞれ1本であっても複数本であってもよく、例えば、各1本の下撚糸を用いた場合は2子撚糸、脂肪族ポリエステルマルチフィラメント糸の下撚糸2本および芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸の下撚糸1本を用いた場合は3子撚糸と呼ばれる糸構造からなるミシン糸が得られる。本発明のミシン糸においては、好ましくは2〜3子撚糸、より好ましくは3子撚糸の糸構造が望ましい。
【0017】
それぞれのマルチフィラメント糸1本の繊度は30〜170dtex、単繊維フィラメント総本数は6〜570本であることが好ましい。また、引き揃え後の総繊度は60〜500dtexであることが好ましい。
【0018】
以上に説明した本発明のミシン糸は、生分解性を有する脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルとから構成されているので、分別回収(例えば、脂肪族ポリエステルを溶剤に溶解して分離する方法、脂肪族ポリエステルを優先的に加水分解する方法、脂肪族ポリエステルを微生物で分解する方法、脂肪族ポリエステルをエステラーゼなどの分解酵素で分解する方法など)により、芳香族ポリエステルを分離して再利用することができる。この場合、分離された芳香族ポリエステルは、そのまま成形して種々の製品とするマテリアルリサイクルであっても、一旦芳香族ポリエステルを構成する原料成分に変換するケミカルリサイクルであっても構わない。もちろん、溶解分離した脂肪族ポリエステルおよび加水分解した脂肪族ポリエステルの構成モノマーも、分離精製処理することにより再利用することができる。また、分別回収されたミシン糸をそのまま加水分解処理し、脂肪族ポリエステルおよび芳香族ポリエステルの原料成分に変換してから分離精製して再利用しても構わない。
【実施例】
【0019】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例に記載の各物性は次の方法で測定した。
(1)マルチフィラメント糸およびミシン糸の強度および伸度
JIS L 1013に基づいて定速伸長引張試験機であるオリエンテック(株)社製テンシロンを用いて、つかみ間隔20cm、引張速度20cm/分にて測定した。
(2)可縫性
本縫可縫時間:4枚重ねのTRサージ(ポリエステル65%、レーヨン35%)を、本縫で所定の回転数にて縫製し、ミシン糸が切断した秒数を測定した。秒数は最大60秒とした。n=5回測定し、平均値を求めた。
千鳥縫可縫長:TRサージ1枚を、千鳥縫で75cm×5回縫製した時の糸切れ回数をx回とし、以下のように千鳥縫可縫長を求めた。n=5回測定し、平均値を求めた。
千鳥縫可縫長=375/(x+1)
【0020】
[参考例1:脂肪族ポリエステルマルチフィラメント糸の調整]
Lラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、攪拌翼のついた反応機にて、180℃で2時間反応し、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加し、その後、13.3kPaで残存するラクチドを除去し、チップ化し、融点が172℃のポリL乳酸チップを得た。
上記のポリL乳酸チップを60℃に設定した真空乾燥機で48時間乾燥し、乾燥したチップを日本製鋼製1軸溶融紡糸機で溶融し、紡糸パックに導入し、丸断面型吐出孔36個を有する紡糸口金から紡出した。紡出した糸条を冷却固化後に油剤を付与し、引き取りローラーにて引き取った後、加熱延伸ローラーを用いて80℃下で4.9倍に延伸し、強度3.6cN/dtex、伸度23.0%の167dtex、36フィラメントのマルチフィラメント糸とした。
【0021】
[参考例2:廃ポリエステルから再生された芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸の調整]
エチレングリコール200部を500mlセパラブルフラスコに投入し、更に炭酸ソーダ1.5部、粉砕されたPETボトル等からなるポリエチレンテレフタレート屑50部を投入し、撹拌しながら昇温して、185℃とした。この状態を4時間保持したところ、ポリエチレンテレフタレート屑は溶解し解重合反応が完結した。得られた解重合物を減圧蒸留で濃縮し、留分としてエチレングリコール150部回収した。この濃縮液にエステル交換反応触媒として炭酸ソーダ0.5部とMeOH100部を投入し、常圧で液温を75℃、1時間撹拌し、エステル交換反応を実施した。得られた混合物を40℃まで冷却し、ガラス製フィルターで濾過した。フィルター上に回収できた粗テレフタル酸ジメチルを100部のMeOH中に投入し、40℃に加温・撹拌洗浄し、再度ガラス製のフィルターで濾過した。この洗浄は2回繰り返した。フィルター上に捕捉できた粗テレフタル酸ジメチルを蒸留装置に仕込み、圧力6.65kPa還流比0.5の条件で減圧蒸留を実施し、留分としてテレフタル酸ジメチルを得た。留分は47部回収できた。釜残を測定しテレフタル酸ジメチル量を測定すると2部であり、投入したポリエステルを基準にするとテレフタル酸ジメチルの反応率は93重量%であった。蒸留により精製された回収テレフタル酸ジメチル中には、2−ヒドロキシテレフタル酸ジメチルが0.5重量ppm検出された。精製された回収テレフタル酸ジメチルの品質は、純度99.9重量%以上であった。
【0022】
上記製法にて製造したテレフタル酸ジメチル100部とエチレングリコール70部との混合物に、エステル交換反応触媒として二酢酸マンガン四水和物0.0315部を撹拌機、精留塔及びメタノール留出コンデンサーを設けた反応器に仕込み、140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた。エステル交換反応終了後、安定剤としてリン酸トリメチル0.0202部、重合触媒として三酸化二アンチモン0.0405部を添加し、反応生成物を重合容器に移し、285℃まで昇温し、26.67Pa以下の高真空で重縮合反応を行って、固有粘度0.63、ジエチレングリコール量が0.7重量%であるポリエステルを得た。得られたポリエチレンテレフタレートを120℃に設定した真空乾燥機で12時間乾燥し、乾燥したチップを日本製鋼製1軸溶融紡糸機で溶融し、紡糸パックに導入し、丸断面型吐出孔36個を有する紡糸口金から紡出した。紡出した糸条を冷却固化後に油剤を付与し、引き取りローラーにて引き取った後、加熱延伸ローラーを用いて120℃下で4.9倍に延伸し、強度5.8cN/dtex、伸度23.5%の、167dtex、36フィラメントのマルチフィラメント糸とした。
【0023】
[参考例3:芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸の調整]
融点が256℃で固有粘度が0.63のポリエチレンテレフタレート(帝人ファイバー製)を[参考例2]と同法にて紡糸及び延伸し、強度7.2cN/dtex、伸度19.3%の、167dtex、36フィラメントのマルチフィラメント糸とした。
【0024】
[実施例1]
[参考例1]の脂肪族ポリエステルマルチフィラメント糸2本、[参考例2]の廃ポリエステルから再生された芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸1本にそれぞれS方向に450T/m(撚係数5800)の下撚を施し、この下撚糸を3本引き揃えてZ方向に300T/m(撚係数6720)の上撚を施し3子撚糸を作成した。上撚および下撚はいずれもリング撚糸機を用いて行った。該3子撚糸を染色加工し、油剤を付与しながらボビンに巻き上げポリエステルミシン糸を作成した。結果を表1に示す。
【0025】
[実施例2]
脂肪族ポリエステルマルチフィラメント糸2本および芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸1本に代えて、[参考例1]の脂肪族ポリエステルマルチフィラメント糸1本および[参考例2]の廃ポリエステルから再生された芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸2本を用いた他は[実施例1]と同法にてポリエステルミシン糸を作成した。結果を表1に示す。
【0026】
[実施例3]
下撚を450T/mから500T/m(撚係数6450)に、上撚を300T/mから350T/m(撚係数7840)に変更した他は[実施例1]と同法にてポリエステルミシン糸を作成した。結果を表1に示す。
【0027】
[実施例4]
下撚を450T/mから500T/m(撚係数6450)に、上撚を300T/mから350T/m(撚係数7840)に変更した他は[実施例2]と同法にてポリエステルミシン糸を作成した。結果を表1に示す。
【0028】
[実施例5]
[参考例2]の廃ポリエステルから再生された芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸に代えて、[参考例3]の芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸を用いた他は[実施例1]と同法にてポリエステルミシン糸を作成した。結果を表1に示す。
【0029】
[比較例1]
脂肪族ポリエステルマルチフィラメント糸2本および芳香族ポリエステルマルチフィラメント糸1本に代えて、[参考例1]の脂肪族ポリエステルマルチフィラメント糸3本用いた他は[実施例1]と同法にてポリエステルミシン糸を作成した。結果を表1に示す。
【0030】
[比較例2]
下撚を450T/mから600T/m(撚係数7740)に、上撚を300T/mから450T/m(撚係数10080)に変更した他は[実施例1]と同法にてポリエステルミシン糸を作成した。結果を表1に示す。
【0031】
[比較例3]
下撚を450T/mから230T/m(撚係数2970)に、上撚を300T/mから190T/m(撚係数4260)に変更した他は[実施例1]と同法にてポリエステルミシン糸を作成した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のミシン糸は、衣料、日用品、車両内装材など、リサクルや廃棄に関わる自然環境負荷の低減が求められている繊維製品全般に幅広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類のポリエステルマルチフィラメント糸からなるミシン糸であって、一方が、生分解性を有する脂肪族ポリエステルからなるマルチフィラメント糸、他方が、芳香族ポリエステルからなるマルチフィラメント糸であり、それぞれのマルチフィラメント糸に撚係数が4000〜7000の下撚が施され、さらにこれらを合糸して撚係数が5000〜8000の上撚が施されていることを特徴とするポリエステルミシン糸。
【請求項2】
生分解性を有する脂肪族ポリエステルが、ヒドロキシアルキルカルボン酸、脂肪族ラクトン、脂肪族ジオール、ポリアルキレングリコール、脂肪族カルボン酸を主成分とする脂肪族ポリエステルのうちの少なくとも一種である、請求項1記載のポリエステルミシン糸。
【請求項3】
芳香族ポリエステルが、テレフタル酸またはナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とするポリエステルである、請求項1または2記載のポリエステルミシン糸。
【請求項4】
芳香族ポリエステルが、廃ポリエステルから再生された芳香族ポリエステルである、請求項1または2記載のポリエステルミシン糸。
【請求項5】
廃ポリエステルから再生された芳香族ポリエステルが、廃ポリエステルを化学分解し回収したポリエステル原料を再重合して得られた芳香族ポリエステルである、請求項4に記載のポリエステルミシン糸。
【請求項6】
生分解性を有する脂肪族ポリエステルからなるマルチフィラメント糸の強度が3〜5cN/dtex、伸度が20〜40%、芳香族ポリエステルからなるマルチフィラメント糸の強度が3〜6cN/dtex、伸度が20〜40%である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステルミシン糸。

【公開番号】特開2011−21282(P2011−21282A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164772(P2009−164772)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】