説明

ポリエステル不織布の処理方法および該処理された不織布からなる白血球除去フィルター。

【課題】簡便かつ安価な方法でポリエステル不織布のCWSTを増大させる方法、および溶血を起こさせない白血球除去フィルターを提供することにある。
【解決手段】ポリエステル不織布を加溶媒分解することを特徴とするポリエステル不織布の処理方法、および該処理された不織布からなる白血球除去フィルター。本発明によれば、簡便かつ安価な方法でポリエステル不織布のCWSTを増大させることができる。該処理された不織布は、溶血が起こらない白血球除去フィルターの製造に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル不織布の処理方法および該処理された不織布からなるフィルター材、さらには該フィルター材からなる白血球除去フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
輸血に用いられる血液製剤としては、供給者から採血した血液に抗凝固剤を添加した全血製剤、全血製剤から受血者の必要とする血液成分を分離した赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤などがある。ところが、これらの血液製剤に含まれる白血球は、発熱反応、輸血関連急性肺障害などの副作用、サイトメガロウイルス感染の原因となるほか、同種抗原として受血者に抗白血球抗体を産生させ、血小板不応状態を誘導することが知られている。
【0003】
これらの事故を防止するために、血液製剤中に含まれている白血球を除去してから血液製剤を輸血する、いわゆる白血球除去輸血が普及してきた。血液製剤から白血球を除去する方法には、血液成分の比重差を利用した遠心分離法と、多孔質体を濾材とするフィルター法の2種類があるが、白血球除去能力が高く、操作が簡便で、コストが安いフィルター法が広く用いられている。
【0004】
しかし、現行の白血球除去フィルター材は濡れ性が十分でないため、フィルター材が血液でプライミングされるまでに時間がかかり、血液でプライミングされない部分は血液が流れず、フィルター材が有効に活用されないことがある。特にポンプ等で高流速にて血液を処理する場合には、自然落差と異なり強制的に濾過面積が狭い状態で濾過されるので赤血球への負荷が大きく、赤血球が破壊されて溶血してしまう。よって、ポンプ等で血液を濾過する場合にはフィルター材の濡れ性が一定以上である必要がある。フィルター材が速やかにプライミングされるためにフィルター材の臨界湿潤表面張力(CWST)は73dyn/cm以上である必要がある。
【0005】
CWSTとは多孔質素子の表面特性に関連し、多孔質素子の濡れ特性を規定するのに使用される物性値である。即ち、液体を多孔質素子の表面と接触させ、わずかに圧力を加えた場合、多孔質素子への湿潤が起こるか否かを規定する表面特性値であり、ある液体の表面張力より大きなCWST値を有する多孔質素子は、その液体による湿潤が起こることになる。本発明のフィルター材は血液製剤中に混入している白血球を捕捉する捕捉材に関するものであり、実際、血液製剤から白血球を捕捉するためには、血液と多孔質素子が接触した時に、血液で多孔質素子が自然湿潤する条件が好ましい。そのため、本発明で用いる多孔質素子の表面は濾過する血液の表面張力と同等もしくはそれ以上のCWST値を有するものが好ましい。実際、血漿及び赤血球の表面張力はそれぞれ73dyn/cm、64.5dyn/cmと測定されている(血球及びタンパク質の表面張力の測定、エイ.ダブル.ニューマン他、ニューヨークアカデミーオブサイエンス 1983年、276ページ)ため、73dyn/cm未満の表面を有する多孔質素子ではかなりの圧力を負荷しなければ血液の濾過を行うことができなくなるため不適である。
【0006】
フィルター材のCWSTを73dyn/cm以上とする方法としては、親水性コポリエーテル−エステルをフィルター材の材質として使用する方法(特許文献1)、親水性ポリマーをフィルター材にコートする方法(特許文献2)、プラズマ処理する方法(特許文献3)が知られている。
【0007】
しかしながら、これらの方法はコストが高い、もしくは煩雑な操作が必要となるため、現在では安価で簡便な操作でCWSTを73dyn/cm以上とするために有効なCWSTを増大させる方法、および溶血を起こさせない白血球除去フィルターの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2007−527257
【特許文献2】特開2007−50013
【特許文献3】特表平10−508343
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、簡便かつ安価な方法でポリエステル不織布のCWSTを増大させる方法、さらには溶血を起こさせない白血球除去フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは簡便かつ安価な方法でポリエステル不織布のCWSTを増大させる方法および溶血を起こさせない白血球除去フィルターについて鋭意検討した結果、ポリエステル不織布を加溶媒分解することでCWSTが増大すること、さらには該処理された不織布からなる白血球除去フィルターでは溶血が起こらないことを見出し本発明に至った。即ち本発明は以下を提供する。
【0011】
(1)ポリエステル不織布を加溶媒分解することを特徴とするポリエステル不織布の処理方法。
【0012】
(2)加溶媒分解に用いる溶媒がアルコールであることを特徴とする(1)に記載の方法。
【0013】
(3)加溶媒分解に用いる溶媒がアルカリ水溶液であることを特徴とする(1)に記載の方法。
【0014】
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の方法を用いて製造した不織布からなるフィルター材。
【0015】
(5)親水性ポリマーを少なくとも表面に有する(4)に記載のフィルター材。
【0016】
(6)1)導入口、2)(4)及び/又は(5)に記載のフィルター材を含むフィルター、及び3)導出口、を含む、白血球除去フィルター。
【0017】
(7)前記フィルター材が流れ方向に複数個積層されている(6)に記載の白血球除去フィルター。
【0018】
(8)前記フィルター材の上流側及び/又は下流側に他のフィルター材をさらに含む(6)または(7)に記載の白血球除去フィルター。
【0019】
(9)前記フィルター材の上流側に微小凝集物除去のためのプレフィルター材を含む(6)〜(8)のいずれかに記載の白血球除去フィルター。
【発明の効果】
【0020】
本発明の方法によれば、簡便かつ安価な方法でポリエステル不織布のCWSTを増大させることができる。そして該処理を施した不織布はそのまま、あるいは必要に応じて親水性ポリマーをコーティングすることにより、溶血を発生させない白血球除去フィルターの製造に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明について、以下具体的に説明する。
ポリエステル不織布は血球にダメージを与えにくいものであれば特に制限は無く、例えば、ポリエチレンテレフタレート不織布、ポリブチレンテレフタレート不織布、ポリトリメチレンテレフタレート不織布、またはポリ乳酸不織布及びこれらをベースにした共重合、ブレンド、アロイ等の改質不織布等が挙げられる。好ましくはポリエチレンテレフタレート不織布、ポリブチレンテレフタレート不織布である。
【0022】
なおここで不織布とは、編織によらずに繊維或いは繊維の集合体が、化学的、熱的、または機械的に結合された布状のものをいう。繊維と繊維とが互いに接触することによる摩擦により、或いは互いにもつれ合うことなどにより一定の形状を保っている場合、機械的に結合されたことに含める。
【0023】
ポリエステル不織布のCWSTを増大させるために実施する加溶媒分解に用いられる溶媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ水溶液やメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、ベンジルアルコール等のアルコールが好ましく、中でも水酸化ナトリウム水溶液やエタノールの使用がより好ましい。
【0024】
これらの溶媒は単独で用いてもよい。また、2種類以上の溶媒を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。用いる溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、不織布が全て溶媒に浸かる量が好ましい。
【0025】
加溶媒分解を行う際の温度についても特に制限されるものではない。通常、−78〜180℃の範囲内であり、中でも−20〜150℃が好ましく、より好ましくは0〜100℃の範囲内である。
【0026】
加溶媒分解を行う時間は特に制限されるものではないが、好ましくは1秒〜48時間、より好ましくは1秒〜12時間である。
【0027】
本発明におけるCWSTとは、以下の方法に従って求められる値をいう。
異なる表面張力を有する酢酸、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウムの水溶液を調整する。水平にしたフィルター材上に異なる表面張力を有する水溶液を静かに10滴載せ、10分間放置する。10滴中9滴以上が湿潤した場合、フィルター材はその表面張力の溶液に湿潤したと判定する。湿潤した場合、湿潤した溶液よりも高い表面張力を有する溶液を用いて同様に滴下し、10滴中2滴以上が湿潤しなくなるまで繰り返し行う。10滴中2滴以上が湿潤しない場合、フィルター材はその表面張力の溶液に湿潤しないと判定し、湿潤した溶液と湿潤しない溶液の表面張力の平均値をフィルター材のCWSTとする。
【0028】
なお、本発明では酢酸水溶液(54〜70dyn/cm)、純水(72.4dyn/cm)、塩化ナトリウム水溶液(76〜81dyn/cm)、水酸化ナトリウム水溶液(81〜110dyn/cm)をCWST測定に使用した。
【0029】
本発明のフィルター材とは、血液中の白血球は捕捉するが他の血液成分、即ち赤血球、血漿は捕捉しないフィルター材である。
【0030】
フィルター材の平均繊維直径は0.5〜3.0μmが好ましい。更に好ましくは0.5〜2.0μm、最も好ましくは0.5〜1.5μmである。0.5μm未満のものは、安定して不織布を製造することが難しく、血液の粘性抵抗も高くなりすぎるために不適である。また、3.0μmを超えるものは、本発明のフィルターに用いる主フィルター要素として用いるには、白血球除去能力が低いため不適である。
【0031】
なお、本発明における平均繊維直径とは、以下の手順に従って求められる値をいう。即ちフィルター要素の一部をサンプリングし、走査電子顕微鏡写真を撮り、無作為に選択した100本以上の繊維の直径を測定し、それらを数平均して得られた値である。
【0032】
本発明においてCWSTをさらに増大させるために、加溶媒分解処理されたフィルター材に親水性ポリマーをコーティングしてもよい。その場合、ポリマーのフィルター支持基材へのコーティング方法はフィルター支持基材の細孔を著しく閉塞することなく、かつフィルター支持基材表面がある程度の範囲にて均一にコーティングできるものであれば特に制限はなく各種の方法を用いることができる。例えば、ポリマーを溶かした溶液にフィルター支持基材を含浸させる方法、ポリマーを溶かした溶液をフィルター支持基材に吹き付ける方法、ポリマーを溶かした溶液をグラビアロール等を用いフィルター支持基材に塗布・転写する方法、などが挙げられるが、本発明のコーティング方法は上記例示に限定されるものではない。この中でもポリマーを溶かした溶液にフィルター支持基材を含浸させる方法が連続生産性に優れ、コストも低いことから好ましい方法である。
【0033】
コーティングの際のポリマーを溶解する溶剤としては、フィルター支持基材を著しく溶解させないものであれば特に限定はなく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、水、及び上記の複数の溶剤の可溶な範囲での混合物などが挙げられるが、本発明のポリマーを溶解する溶剤は上記例示に限定されるものではない。
【0034】
コーティングポリマーは、親水性のポリマーで血液成分への負荷が大きいものでなければ特に限定しないが、親水性官能基を有するヒドロキシエチル( メタ) アクリレートなどのモノマーと塩基性官能基を有するジメチルアミノエチル( メタ) アクリレートやジエチルアミノエチル( メタ) アクリレートとの共重合体や、ポリビニルピロリドンなどは素材表面を親水化することにより濾材の濡れ性を改善するだけでなく、荷電性官能基を導入することで血液細胞の捕捉性能を向上させられるため好ましい。
【0035】
本発明の白血球除去フィルターは、本発明のフィルター材を含むフィルターを、少なくとも、導入口及び導出口を持つ容器内に適切に充填した装置である。フィルター材は、白血球含有液の流れ方向に1個又は複数個積層して容器内に充填してもよい。本発明の白血球除去フィルター装置は、そのフィルター材の上流側及び/又は下流側に他のフィルター材をさらに含んでいてもよい。
【0036】
一般に、白血球含有液には微小凝集物が含まれている場合が多い。このような微小凝集物が多く含まれている白血球含有液から白血球を除去するために、プレフィルターを使用することが好ましい。プレフィルターとしては、平均繊維径が3μm〜50μmの繊維の集合体や平均孔径20μm〜200μmの細孔を有する連続多孔質体などが好ましく用いられる。
【実施例】
【0037】
「ポリエステル不織布の加溶媒分解処理」
【0038】
(実施例1)
メルトブロー法で作製した平均繊維直径1.7μm、目付け40g/m2のポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)不織布を40℃のエタノール溶液に3時間浸漬した後、ステンレス製バスケットに入れ、50℃にて1.5時間乾燥した。取得した各不織布のCWSTを測定したところ70dyn/cmであった。
【0039】
(実施例2)
40℃のエタノール溶液に6時間浸漬する以外は実施例1と同様に処理を行なった。取得した不織布のCWSTは70dyn/cmであった。
【0040】
(実施例3)
40℃のエタノール溶液に9時間浸漬する以外は実施例1と同様に処理を行なった。取得した不織布のCWSTは70dyn/cmであった。
【0041】
(実施例4)
78℃のエタノール溶液に3時間浸漬する以外は実施例1と同様に処理を行なった。取得した不織布のCWSTは70dyn/cmであった。
【0042】
(実施例5)
78℃のエタノール溶液に6時間浸漬する以外は実施例1と同様に処理を行なった。取得した不織布のCWSTは74dyn/cmであった。
【0043】
(実施例6)
78℃のエタノール溶液に9時間浸漬する以外は実施例1と同様に処理を行なった。取得した不織布のCWSTは74dyn/cmであった。
【0044】
(実施例7)
メルトブロー法で作製した平均繊維直径1.7μm、目付け40g/m2のPET不織布を75℃の4wt%水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した。不織布を水洗した後、ステンレス製バスケットに入れ、50℃にて3時間乾燥した。取得した各不織布のCWSTを測定したところ、74dyn/cmであった。
【0045】
(実施例8)
メルトブロー法で作製した平均繊維直径1.7μm、目付け40g/m2のPET不織布を75℃の1wt%水酸化ナトリウムのエタノール溶液に1分間浸漬した。不織布を水洗した後、ステンレス製バスケットに入れ、50℃にて3時間乾燥した。取得した不織布のCWSTを測定したところ74dyn/cmであった。
【0046】
(比較例1)
メルトブロー法で作製した平均繊維直径1.7μm、目付け40g/m2のPET不織布のCWSTを測定したところ62dyn/cmであった。
【0047】
(比較例2)
2−ヒドロキシエチルメタアクリレートとN,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレートから成る共重合体(以下PMAと略す)が塗布された、メルトブロー法で作製した平均繊維直径1.2μm、目付け40g/m2のPET不織布のCWSTを測定したところ79dyn/cmであった。
【0048】
(実施例9)
比較例2の不織布を40℃のエタノール溶液に6時間浸漬し、そのエタノールを濃縮後GPCを測定し、コーティングポリマーの溶出終了を確認した。さらに不織布を40℃のエタノール溶液に3時間浸漬した後、ステンレス製バスケットに入れ、50℃にて1.5時間乾燥した。取得した不織布のCWSTを測定したところ99dyn/cmであった。
【0049】
(実施例10)
実施例9で得られた不織布をPMA濃度が1.0g/Lのエタノール溶液に20℃にて5分間浸漬した後、ステンレス製バスケットに入れ、50℃にて1.5時間乾燥した。続いて不織布を水洗した後、ステンレス製バスケットに入れ、50℃にて3時間乾燥した。取得した不織布のCWSTを測定したところ103dyn/cmであった。
【0050】
【表1】

【0051】
表1の結果から、加溶媒分解処理を施した不織布は未処理不織布(比較例1)より高いCWSTを有していることが分かる。また、加溶媒分解処理された不織布に親水性ポリマー(PMA)をコーティングするとさらにCWSTが増大することが判明した。
【0052】
(実施例11)
白血球除去フィルターを以下の手順により作製した。
<加溶媒分解>
プレフィルター、主フィルターA、主フィルターB、各フィルター用の不織布として下記に示す各不織布を40℃のエタノール溶液に9時間浸漬した後、ステンレス製バスケットに入れ、50℃にて1.5時間乾燥した。
プレフィルター:平均繊維直径15μm、目付け30g/m2のPET不織布
主フィルターA:平均繊維直径1.2μm、目付け70g/m2のPET不織布
主フィルターB:平均繊維直径1.2μm、目付け40g/m2のPET不織布
<コーティング溶液調製>
PMAを濃度が1.0g/Lになるようにエタノールに溶解し、PMAコーティング溶液を調製した。
【0053】

<不織布コーティング>
各不織布をコーティング溶液に20℃にて5分間浸漬した後、ステンレス製バスケットに入れ、50℃にて1.5時間乾燥した。続いて、各不織布を水洗した後、ステンレス製バスケットに入れ、50℃にて3時間乾燥した。得られた各不織布のCWSTを測定した結果を表2に示す。また、市販されている旭化成メディカル社の白血球除去フィルター(セパセルRZ−1000)に用いられている各不織布のCWSTを測定した結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
<不織布ディスク作製>
コーティングを行なった各不織布を、ポンチを用いて各不織布を直径9mmの円形に打抜き、プレフィルター、主フィルターA、主フィルターBをそれぞれ作製した。
【0056】

<パッキン作製>
シリコンチューブ(外径10mm、内径7mm)を巾5mmにカットしてシリコンパッキンを作製した。
【0057】

<白血球除去フィルター作製>
樹脂製注射器(テルモ製、SS−02SZ、容量2.5ml)シリンダ部にパッキンを1個先端まで挿入し、次に導入口側から導出口側へ順に、プレフィルターディスク3枚、主フィルターAディスク1枚、主フィルターBディスク26枚を挿入し、最後にパッキン1個を挿入してピストンでしっかり押し込んだ後、ピストンを抜いて白血球除去フィルターを作製した。
【0058】

<白血球除去フィルター評価方法>
ヒト血液100mLを採血して、抗凝固剤として10mLのACD−A液(テルモ製、組成:クエン酸ナトリウム22g/L、クエン酸8g/L、ブドウ糖22g/L)を入れた血液容器に加え血液試料を調製した。
【0059】
その血液試料3.5mLを前記樹脂製注射器で採取し、空気を抜いた後、上記フィルターとシリコンチューブ(外径4mm、内径4mm)で連結し、シリンジポンプにセットした。室温にて0.5mL/minの一定流速で試料を流し、受器で濾過血液を3mL回収した。
【0060】
濾過前の白血球濃度、濾過前後の赤血球濃度、血小板濃度は血球カウンター(シスメックス(株)製、K−4500)を用いて測定し、濾過後の白血球濃度はLeucoCOUNTキットおよびFACSCanto(共にベクトン・ディッキンソン社)を用いて、フローサイトメトリー法にて測定した。
【0061】
白血球除去率(−Log)、赤血球回収率(%)、及び血小板除去率(%)を以下の式で算出した。
【0062】
白血球除去率=−Log(b/a)
赤血球回収率=d/c×100(%)
血小板除去率=f/e×100(%)
上記式において、
a=濾過前血液の白血球濃度
b=濾過後血液の白血球濃度
c=濾過前血液の赤血球濃度
d=濾過後血液の赤血球濃度
e=濾過前血液の血小板濃度
f=濾過後血液の血小板濃度を表す。
評価結果を表3に示す。
【0063】
(実施例12)
主フィルターBディスクを36枚挿入する以外は、実施例11と同様にして白血球除去フィルターを作製した。作成した白血球除去フィルターを実施例11と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
【0064】
(比較例3)
市販されている旭化成メディカル社の白血球除去フィルター(セパセルRZ−1000)の不織布を表2に示す枚数用いた以外は、実施例11と同様にして白血球除去フィルターを作製した。作成した白血球除去フィルターを実施例11と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
加溶媒分解処理を施した不織布を用いて作製した実施例11および実施例12のフィルターでは溶血することなく、高い白血球除去率(4.90、>5.38)を達成できたのに対し、比較例3のフィルターでは溶血した。
【0067】
以上の結果から、加溶媒分解処理を施しCWSTを高めたフィルターでは溶血することなく、高い白血球除去率を達成できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル不織布を加溶媒分解することを特徴とするポリエステル不織布の処理方法。
【請求項2】
加溶媒分解に用いる溶媒がアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
加溶媒分解に用いる溶媒がアルカリ水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法を用いて製造した不織布からなるフィルター材。
【請求項5】
親水性ポリマーを少なくとも表面に有する請求項4に記載のフィルター材。
【請求項6】
1)導入口、2)請求項4及び/又は請求項5に記載のフィルター材を含むフィルター、及び3)導出口、を含む、白血球除去フィルター。
【請求項7】
前記フィルター材が流れ方向に複数個積層されている請求項6に記載の白血球除去フィルター。
【請求項8】
前記フィルター材の上流側及び/又は下流側に他のフィルター材をさらに含む請求項6または7に記載の白血球除去フィルター。
【請求項9】
前記フィルター材の上流側に微小凝集物除去のためのプレフィルター材を含む請求項6〜8のいずれかに記載の白血球除去フィルター。

【公開番号】特開2011−194083(P2011−194083A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65219(P2010−65219)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】