説明

ポリエステル捲縮糸及びその製造方法と、同捲縮糸との複合糸を使った織編物

【課題】複合糸としたときセルロース系マルチフィラメント糸の優れたドレープ性を有しながら、適度な膨らみ感とハリコシ、反発感を付与することができるポリエステル捲縮糸とその製造方法、並びにその織編物を提供する。
【解決手段】単繊維繊度(D)が1.5dtex≦D≦12dtex、ヤング率(Y)が7000N/mm2 ≦Y≦12000N/mm2 、スナール指数が45以上、圧縮応力125g/cm2 のときの沸水処理後の布帛嵩高度が0.8cm3 /g以上、且つ嵩高圧縮弾性率が80%以上であることを特徴とするポリエステル捲縮糸である。その製造方法は、複屈折率(Δn)が30×10-3≦Δn≦80×10-3のポリエステル未延伸糸に延伸仮撚加工を行うに際し、仮撚加撚張力(T)が0.15g/dtex≦T≦0.5g/dtex、撚係数(K1)が7000≦K1≦20000の仮撚加工を施した後、引き続きポリマーのガラス転移温度(Tg)未満の温度で、且つ糸走行張力(T’)が0.1g/dtex≦T’≦1.0g/dtexで緊張処理の後、巻き取る。とを特徴としている。得られたポリエステル捲縮糸とセルロース系繊維との複合糸を使って織編物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光沢感、ドレープ性に優れる、アセテートマルチフィラメント糸の布帛に膨らみ感とハリコシ、反発感を付与する、ポリエステル捲縮糸とその製造方法、並びに同捲縮糸とアセテートマルチフィラメント糸との複合糸を用いた織編物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来セルロース系繊維、特にアセテート系繊維は独特のドライタッチ感や優れた発色性、光沢感、優れたドレープ性を有することから高級感のある婦人衣料として市場に広く提供されている。しかし、ドレープ性に優れる反面、ハリコシ、反発感の不足や、糸強度の不足が懸念され、このためポリエステル、ナイロンや他の繊維との合撚その他の複合によりハリコシ、反発感の付与と共に糸の強度を増すなどの提案がなされている。
【0003】
布帛にハリコシ、反発感を付与する提案としてポリエステル、ナイロンなどを仮撚することで高い捲縮、トルクを利用したり、高収縮特性を有する糸条を使用し、あるいは近年ではコンジュゲート糸を複合するものなどがある。特開昭59−26538号公報(特許文献1)、特開昭59−30927号公報(特許文献2)では伸度の異なるポリエステル繊維を低い仮撚数で引き揃え同時仮撚して得られるトルクと捲縮により、布帛に凹凸感やシボ感を与えている。しかし、この提案の高伸度糸にセルロース系繊維を用いることは、熱収縮特性の違いによる糸割れやセルロース系繊維の捲縮のフカツキ、毛羽の発生や複合糸としたとき、セルロース系繊維の特徴が損なわれ布帛の品位が著しく低下する。また、特開平2−41424号公報(特許文献3)の提案は、2本のポリエステル繊維を低い仮撚数により同時仮撚、分糸して高トルク糸を得んとするものであるが、分糸作業は熟練を要し煩雑である。更にこの提案により仮撚糸に高トルクが与えられたとしても、セルロース系繊維との複合糸による布帛では反発感が不十分である。他の高収縮糸やコンジュゲート糸との複合糸を用いた布帛においても風合いが硬くなりやすいなど、セルロース系繊維、特にアセテート系繊維の光沢感、ドレープ性などの特徴とハリコシ、反発感を充分満足する布帛は得られていない。
【特許文献1】特開昭59−26538号公報
【特許文献2】特開昭59−30927号公報
【特許文献3】特開平2−41424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、複合糸としたときセルロース系マルチフィラメント糸の優れたドレープ性を有しながら、適度な膨らみ感とハリコシ、反発感を付与することができるポリエステル捲縮糸とその製造方法、並びにその織編物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の基本的構成は、単繊維繊度(D)が1.5dtex≦D≦12dtex、ヤング率(Y)が7000N/mm2 ≦Y≦12000N/mm2 、スナール指数が45以上、圧縮応力125g/cm2 の時の沸水処理後の布帛嵩高度が0.8cm3 /g以上、且つ嵩高圧縮弾性率が80%以上であることを特徴とするポリエステル捲縮糸にある。
【0006】
また、本発明の第2の基本的構成は、複屈折率(Δn)が30×10-3≦Δn≦80×10-3のポリエステル未延伸糸に延伸仮撚加工を行うに際し、仮撚加撚張力(T)0.15g/dtex≦T≦0.5g/dtex、撚係数(K1)7000≦K1≦20000の仮撚加工を施した後、引き続きポリマーのガラス転移温度(Tg)未満の温度で、且つ糸走行張力(T’)が0.1g/dtex≦T’≦1.0g/dtex緊張処理の後、巻き取ることを特徴とするポリエステル捲縮糸の製造方法にある。
【0007】
さらに、本発明の第3の基本的構成は、上記ポリエステル捲縮糸とセルロース系マルチフィラメント糸との複合糸であって、該ポリエステル捲縮糸の混率が10重量%以上50重量%未満であることを特徴とする複合糸を用いた織編物にあり、好適には前記セルロース系マルチフィラメント糸がアセテートマルチフィラメント糸である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の特定の単繊維繊度、ヤング率、トルク特性を有するポリエステル捲縮糸により、セルロース系繊維特有のドライタッチ感や優れた発色性、光沢感、ドレープ性を有し、膨らみ感とハリコシ、反発感を有する織編物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のポリエステル捲縮糸は優れた布帛嵩高度と嵩高圧縮弾性率を有し、布帛にハリコシ、反発感を付与するものである。この嵩高度と弾性率を得るにはポリエステル捲縮糸の単繊維繊度が1.5dtex以上12dtex以下である必要があり、更に2dtex以上10dtex以下であることが好ましい。単繊維繊度が1.5dtex未満では圧縮応力による座屈から高い嵩高度を得られない。12dtexを超える単繊維繊度では嵩高度や弾性率は得られるが、単繊維繊度の剛直性と複合糸とするときの加撚による糸締りが重なり、得られる布帛が硬く、衣料用としては不十分となる。
【0010】
また、本発明のポリエステル捲縮糸のヤング率は7000N/mm2 以上12000N/mm2 以下である必要がある。7000N/mm2 未満では圧縮応力による座屈が生じ易く、12000N/mm2 を超えると剛直となる。このヤング率は、上記の単繊維繊度と下記の適正な仮撚数によって得られる。
【0011】
更にセルロース系マルチフィラメント糸と複合して得られた布帛に適度な膨らみ感を発現させるのに必要な糸のトルクを得るにはポリエステル捲縮糸のスナール指数が45以上である必要があり、さらに50以上であることが好ましい。スナール指数が45未満では後工程の合撚により、ポリエステル捲縮糸のトルク発現力が抑制され、本発明の膨らみ感、反発感を有する布帛が得られない。また、過度のスナール指数は取り扱い性が煩雑となり、後工程での糸切れが多発するなど工程通過性に問題を生じることとなる。通常、スナール指数が100以下であれば、前述の問題が生じることはなく、本発明の膨らみ感、反発感を有する複合糸の布帛が得られる。
【0012】
優れた膨らみ感、反発感を有する複合糸の布帛を得るには、ポリエステル捲縮糸の嵩高性、反発性が重要である。嵩高性は一般にJIS法「L1090の5.9」により求められるが、本発明者らはポリエステル捲縮糸の筒編地を前述JIS法に準拠した測定により得られる、嵩高性、嵩高圧縮弾性率を複合糸布帛の膨らみ感、反発感の指標とすることとした。
【0013】
すなわち、一般的に使用されている「24G(8吋)」筒編機により編成され、沸水処理された布帛に125g/cm2 の圧縮応力を与えたときの嵩高度が0.8cm3 /g以上であることが好ましい。嵩高度が0.8cm3 /g未満では複合後の布帛に本発明の目的とする膨らみ感やハリコシ感を発現させることができない。また、このときの圧縮弾性率は80%以上である必要があり、80%未満のポリエステル捲縮糸を複合した布帛は目的とする反発感が得られない。
【0014】
次に本発明のポリエステル捲縮糸の製造法について説明する。複屈折率が30×10-3≦Δn≦80×10-3のポリエステル未延伸糸に延伸仮撚加工を行うに際しては、仮撚加撚張力(T)が0.15g/dtex≦T≦0.5g/dtexが好ましい。0.15g/dtex未満の加撚張力では加撚域でバルーニングが発生しやすく、捲縮斑や糸切れの原因となり好ましくない。また0.5g/dtexを上回る加撚張力は毛羽の発生や糸切れが生じやすく好ましくない。
【0015】
通常、仮撚加工では仮撚数を多くすることで細かな捲縮が付与されるため、撚係数(K1)を30000前後とした仮撚数が用いられるのが一般的である。しかしながら、高い仮撚数では、仮撚具を通過後に糸条が弛緩されたとき、単繊維個々が捲縮を発現し、嵩高性の高い捲縮糸が得られるが、マルチフィラメント1本の糸条が持つトルク(スナール指数)や初期引っ張り抵抗度が単繊維1本1本に分散されるため、本発明のヤング率、スナール数は得られない。そこで本発明者らは鋭意検討の結果、撚係数(K1)は7000≦K1≦20000が好ましく、8000≦K1≦15000がより好ましいことを発見した。撚係数(K1)が20000を超えると単繊維個々の捲縮発現が多くなり、スナール指数やヤング率が低下し、本発明のポリエステル捲縮糸が得られない。また撚係数(K1)が7000未満では捲縮が乏しく膨らみ感を有する布帛が得られないとともに、捲縮が乏しいマルチフィラメント糸を巻取ることが非常に難しく、工業的に困難となる。
【0016】
仮撚加工を施されたポリエステル捲縮糸は引き続き緊張処理がなされた後、チーズに巻き取られる。このときの緊張処理温度はガラス転移点(Tg)未満であることが好ましく、さらにTgより30℃程度低い室温で処理することがより好ましい。Tgを上回る温度では糸条のトルクを減少、消滅させることとなる。
【0017】
また、糸走行張力(T’)は0.1g/dtex≦T’≦1.0g/dtexであることが好ましい。この緊張処理は単繊維個々の捲縮発現を抑制し、糸条の残留伸度内に応力歪を内在させるものである。この応力歪が後工程での熱処理により顕在化し、より高いトルクを発現させるものである。T’が0.1g/dtex未満の低張力下では捲縮が発現して糸条としてのトルクが減少することとなるため、捲縮発現のない糸走行張力として0.1g/dtex以上の張力が必要である。また1.0g/dtexを上回ると糸条に過度の伸長を与え、単繊維切れやニップローラの損傷、ニップローラのスリップによる不良糸が発生するため、本発明のポリエステル捲縮糸を得ることはできない。
【0018】
仮撚加撚域における処理温度は、大きな糸トルクを得るには高い温度が有益であるが、過大な温度は糸条を融着させトルクの発現を減少させる。また過小な温度では必要な捲縮やトルク力が得られない。従って加工温度は供給するポリエステル繊維のTg以上融点以下でなければならないが、150℃以上、230℃以下がより好ましい。
仮撚の手法は、ピン方式、摩擦方式、ベルトニップ方式などがあり、本発明の要件を満たすポリエステル捲縮糸が得られればどの方式であっても構わないが、撚係数の設定による適正な仮撚数の捲縮糸とするためにはピン方式による手法が好ましい。
【0019】
供給されるポリエステル未延伸糸は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする複屈折率(Δn)が30×10-3≦Δn≦80×10-3のポリエステル未延伸糸であることが好ましい。ポリエステル未延伸糸のΔnが30×10-3未満であると、捲縮糸に毛羽が発生しやすくなる。Δnが80×10-3を超えると、未延伸糸を紡糸する際の糸切れが発生しやすくなる。
【0020】
また、酸化チタンなどの無機物の添加や共重合体、分散あるいはカチオン染色性、△や☆の異型断面形状やサイドバイサイド、芯鞘など複合紡糸によるポリエステル繊維であっても構わない。
【0021】
次に本発明のポリエステル捲縮糸を10重量%以上50重量%未満含むセルロース系マルチフィラメント糸との複合糸からなる織編物に関しては、この複合に際し、ポリエステル捲縮糸の混率が多いほど布帛のハリコシ、反発感は増すが、セルロース系マルチフィラメント糸のドライタッチ感や優れた発色性、光沢感、優れたドレープ性を損なわない為には50重量%未満であることが好ましい。また10重量%未満では本発明が必要とする反発感は得られない。複合糸の総繊度は通常の織編物に提供される繊度で構わないが、近年要求が増してきている薄地織編物を得るためには、80dtex以上200dtex未満であることが好ましい。
【0022】
セルロース系マルチフィラメント糸との複合は通常のエアー混繊のみでも本発明のポリエステル捲縮糸のトルク発現力による布帛の反発感を損なうものではないが、合撚することで織編物のハリコシ、反発感が向上する。この時の合撚撚数は本発明のポリエステル捲縮糸の反発力を損なわなければ布帛の用途に合わせ適宜設定することができるが、撚係数が2000以上、20000以下であることが好ましい。撚係数が2000未満では本発明のポリエステル捲縮糸とセルロース系マルチフィラメント糸とのトルク発現力の差による糸割れの発生や均一な施撚効果が得られない。撚係数が20000を超えると強撚効果により、本発明のポリエステル捲縮糸のトルク発現力が阻害され、本発明の布帛を得ることができない。また、合撚の撚方向は仮撚によるトルク発現方向と合撚によるトルク発現方向を同一にするために仮撚方向とは逆方向であることが好ましい。
【0023】
本発明の織編物に提供されるセルロース系マルチフィラメント糸は他の熱可塑性繊維にはないドライ感、光沢感、ドレープ性を有し、再生繊維や半合成繊維などがあるが、乾式紡糸法や溶融紡糸法などの手法によって得られるアセテートマルチフィラメント糸であることが好ましく、特に発色性に優れたトリアセテートマルチフィラメント糸を複合の供給糸とすることで、撚糸による光沢感の品位の低下を補い、高級婦人衣料として市場に提供できるものである。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[ヤング率]
オリエンテック製 テンシロン「UCT−1T型」、試長20cm、ロードセル5N
引張速度10cm/分の条件で測定し、算出されたヤング率の数値を用いた。
[スナール指数]
JIS規格「L−1095 7.17A法」で測定した。
[布帛嵩高度]と[嵩高圧縮弾性率]
株式会社小池機械製作所製 筒編機「CR−B型(24G、口径3.5吋)」により筒編地を作成。30分の沸水処理後に遠心脱水し、20℃×60%RHの雰囲気で12時間以上放置させたものを試料とした。
測定方法はJIS規格「L−1090 5.9B法」に準拠し、測定した。すなわち、コの字金型(内寸:巾1cm、長さ4cm、高さ4cm)の長さ方向に試料の筒編地を入れる。次いで、「1cm×4cm」の底面の初加重(50gf)を乗せ、このときの高さを「t0(mm)」とし、引き続き荷重(500gf)を乗せ1分経過後の高さを「t1(mm)」とし、その後直ちに除重し1分間放置後、再び初加重(50gf)を乗せたときの高さを「t0’(mm)」とする。測定に使用した部分の編地(長さ4cm)の重量を「w(g)」とし、次式により算出する。
布帛嵩高度(cm3 /g):(4×t0)/(w×10)
嵩高圧縮弾性率(%) :((t0’−t1)/(t0−t1))×100
[撚係数]
次式:K=仮撚数×√D 但し、D=捲縮糸条繊度(デニール)
[風合い判定]
5人の判定員が布帛の「反発感」「ハリコシ感」「膨らみ感」を3等級に分け、その結果を○、△、×にて判定する。
判定 ○・・・・・優れている
判定 △・・・・・やや優れている
判定 ×・・・・・従来と同程度
【0025】
(実施例1)
Δnが52×10-3で、酸化チタンを0.5質量%含有する47dtex/8フィラメントのポリエステル未延伸糸を石川製作所製「IVF−338型」仮撚機により延伸仮撚を行い、32dtex/8フィラメントのポリエステル捲縮糸を得た。このときの仮撚条件は糸速150m/分、仮撚数1500t/m(Z撚)、仮撚加撚域温度215℃、加撚張力は11g、緊張処理温度は室温(23℃)で糸走行張力は20gであった。得られたポリエステル捲縮糸を筒編機により編成し、沸水処理、乾燥の後、布帛嵩高度、嵩高圧縮弾性率を測定した。これらの結果を「表1」に示す。
【0026】
該ポリエステル捲縮糸とトリアセテートマルチフィラメント糸61dtex/15フィラメントとを引き揃え、1800t/m(S撚)で合撚した後、この複合糸を緯糸としたサテン織物を作成し、定法の手段により染色加工を施した布帛の風合いを判定した。その結果を「表2」に示す。
【0027】
(実施例2)
仮撚数を3200t/m(Z撚)とした以外は「実施例1」と同様の手段を用い、織物を作成し、布帛の風合いを判定した。このときの仮撚加工条件とその物性を「表1」に、また風合い判定結果を「表2」に示す。
【0028】
(実施例3)
Δnが50×10-3で、酸化チタンを0.5質量%含有する56dtex/12フィラメントのポリエステル未延伸糸を用いた以外は「実施例1」と同様の手段を用い、織物を作成し、布帛の風合いを判定した。このときの仮撚加工条件とその物性を「表1」に、また風合い評価判定を「表2」に示す。
【0029】
(比較例1)
Δnが55×10-3で、酸化チタンを0.5質量%含有する50dtex/24フィラメントのポリエステル未延伸糸を石川製作所製「IVF−338型」仮撚機により延伸仮撚を行い、34dtex/24フィラメントのポリエステル捲縮糸を得た。このときの仮撚条件は糸速150m/分、仮撚数1500t/m(Z撚)、仮撚加撚域温度215℃、加撚張力は9g、緊張処理温度は室温(23℃)で糸走行張力は20gであった。得られたポリエステル捲縮糸を筒編機により編成し、沸水処理、乾燥の後、布帛嵩高度、嵩高圧縮弾性率を測定した。これらの結果を「表1」に示す。
【0030】
上記ポリエステル捲縮糸とトリアセテートマルチフィラメント糸61dtex/15フィラメントとを引き揃え、1800t/m(S撚)で合撚した後、この複合糸を緯糸としたサテン織物を作成し、定法の手段により染色加工を施した布帛の風合いを判定した。その結果を「表2」に示す。
【0031】
(比較例2)
酸化チタンを0.5質量%含有する33dtex/24フィラメントのポリエステル延伸糸を石川製作所製「IVF−338型」仮撚機により延伸仮撚を行い、35dtex/24フィラメントのポリエステル捲縮糸を得た。このときの仮撚条件は糸速150m/分、仮撚数3427t/m(Z撚)、仮撚加撚域温度225℃、加撚張力は5g、緊張処理温度は室温(23℃)で糸走行張力は20gであった。得られたポリエステル捲縮糸を筒編機により編成し、沸水処理、乾燥の後、布帛嵩高度、嵩高圧縮弾性率を測定した。これらの結果を「表1」に示す。
【0032】
上記ポリエステル捲縮糸とトリアセテートマルチフィラメント糸61dtex/15フィラメントとを引き揃え、1800t/m(S撚)で合撚した後、この複合糸を緯糸としたサテン織物を作成し、定法の手段により染色加工を施した布帛の風合いを判定した。その結果を「表2」に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維繊度(D)が1.5dtex≦D≦12dtex、ヤング率(Y)が7000N/mm2 ≦Y≦12000N/mm2 、スナール指数が45以上、圧縮応力125g/cm2 のときの沸水処理後の布帛嵩高度が0.8cm3 /g以上、且つ嵩高圧縮弾性率が80%以上であることを特徴とするポリエステル捲縮糸。
【請求項2】
複屈折率(Δn)が30×10-3≦Δn≦80×10-3のポリエステル未延伸糸に延伸仮撚加工を行うに際し、仮撚加撚張力(T)が0.15g/dtex≦T≦0.5g/dtex、撚係数(K1)が7000≦K1≦20000の仮撚加工を施した後、引き続きポリマーのガラス転移温度(Tg)未満の温度で、且つ糸走行張力(T’)が0.1g/dtex≦T’≦1.0g/dtexで緊張処理の後、巻き取ることを特徴とする請求項1記載のポリエステル捲縮糸の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のポリエステル捲縮糸とセルロース系マルチフィラメント糸との複合糸であって、該ポリエステル捲縮糸の混率が10重量%以上50重量%未満であることを特徴とする複合糸を用いた織編物。
【請求項4】
請求項3記載のセルロース系マルチフィラメント糸がアセテートマルチフィラメント糸であることを特徴とする織編物。

【公開番号】特開2010−24598(P2010−24598A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190624(P2008−190624)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(301067416)三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Fターム(参考)】