説明

ポリエステル樹脂の製造方法

ポリエステル樹脂の製造に際し、リン酸系添加剤を用いて、エステル化反応又はエステル交換反応の反応性と、ポリエステル樹脂の難燃性及び色相安定性とを向上させ得るポリエステル樹脂の製造方法の提供。明細書の一般式1〜3で表される化合物よりなる群から選ばれる1以上のリン酸系添加剤の存在下で、ジアシド成分及びジオール成分をエステル化反応及び/又はエステル交換反応させるステップと、エステル化反応及び/又はエステル交換反応の生成物を重縮合させるステップと、を含むポリエステル樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル樹脂の製造方法に係り、さらに詳しくは、ポリエステル樹脂の製造に際し、リン酸系添加剤を用いて、エステル化反応又はエステル交換反応の反応性と、ポリエステル樹脂の難燃性及び色相安定性を向上させ得るポリエステル樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、芳香族及び脂肪族ジカルボン酸と適正な構造のアルキレングリコールとから製造されるポリエステル樹脂は、優れた物理的・化学的性質をはじめとして、汎用溶剤への溶解性及び柔軟性、幅広い素材への接着力、コーティング性などを兼ね備えることから、繊維、フィルム、接着剤など多岐に亘る用途に使用されている。
【0003】
ポリエステル樹脂の製造に際して、エステル化反応又はエステル交換反応では各原料の反応性に応じて、重縮合では各原料の気化度に応じて、最終ポリエステル樹脂主鎖中に存在する各原料の割合が異なり、アルキレングリコールで代表されるジオール成分では、1級ジオールよりは2級又は3級ジオールの方が、且つ、2級ジオールよりは3級ジオールの方が反応性に劣るため、2級ジオール及び/又は3級ジオールのポリエステル主鎖中の残存率が低下する。
【0004】
高分子量のポリエステル樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸の製造時に生成される触媒残渣によって望まない色相を発色する場合が頻発しており、これらの触媒残渣としては、マンガン、亜鉛、鉄及びモリブデンが挙げられる。この問題を解消するために、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム又はヒドロキシ塩化アルミニウムと組み合わせられるコバルト塩を含有する重合触媒を用いてポリエチレンテレフタレートを製造する方法が米国特許US5,674,801号明細書に提案されている。同特許には、金属触媒残渣をリン酸で封止して無色又は白色の最終生成物を得る方法が記載されており、多数の金属が強酸性の媒質中でリン酸と結合してヘテロポリ酸を形成することにより、金属不純物を封止しているが、極めて攻撃的な強酸性を示すリン酸が用いられるという欠点がある。
【0005】
ポリエステル樹脂は、火気に接触すれば燃焼され易くなるため、難燃性が求められる電気電子用接着剤、難燃塗料などにはその使用が限られてきており、やむを得ずこのような用途に使用するためには、多量の難燃剤を配合しなければならない。この種の難燃剤としては、アンチモン、金属化物などの無機難燃剤や、ハロゲン化有機難燃剤が主に用いられるが、これらは、電気電子用接着剤若しくはコーティング剤組成物に求められる絶縁性、組成物の貯蔵安定性などの問題を引き起こすだけではなく、素材の燃焼時に有毒ガスが発生するという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ポリエステル樹脂の難燃性及び色相安定性を向上させ得るポリエステル樹脂の製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、エステル化反応又はエステル交換反応の反応性を向上させて反応時間を短縮させ、2級及び/又は3級ジオールのポリエステル樹脂内残存率を高め得るポリエステル樹脂の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、下記の一般式1〜3で表される化合物よりなる群から選ばれる1以上のリン酸系添加剤の存在下で、ジアシド成分及びジオール成分をエステル化反応及び/又はエステル交換反応させるステップと、前記エステル化反応及び/又はエステル交換反応の生成物を重縮合させるステップと、を含むポリエステル樹脂の製造方法を提供する。
【化1】

【化2】

【化3】

上記の一般式1中、Rは、炭素数0〜10の線状、分岐状、単環状又は多環状の飽和若しくは不飽和炭化水素であり、上記の一般式2中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の線状の飽和若しくは不飽和炭化水素であり、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜10の線状、分岐状、単環状又は多環状の飽和若しくは不飽和炭化水素であり、上記の一般式3中、Rは、炭素数1〜10の線状、分岐状、単環状又は多環状の飽和若しくは不飽和炭化水素であり、Rは、炭素数1〜10の飽和若しくは不飽和炭化水素である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるポリエステル樹脂の製造方法は、前記一般式1〜3で表されるリン酸系添加剤の存在下で、ポリエステル樹脂を製造することから、エステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応性を向上させて反応時間を短縮させることができ、また、反応性が弱い2級又は3級ジオールの反応性を強化させて、重合された最終ポリエステル樹脂の主鎖中の2級又は3級ジオールの残存率を高めることも可能となり、更に、エステル化反応及び/又はエステル交換反応及び重縮合反応の全般に亘って熱分解及び付加反応を抑えることにより、色相安定性を高め、重合された最終ポリエステル樹脂に難燃性を持たせる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明によるポリエステル樹脂の製造方法は、リン酸系添加剤の存在下でジアシド成分及びジオール成分をエステル化反応又はエステル交換反応させるステップ、及び前記エステル化反応又はエステル交換反応の生成物を重縮合させるステップを含むことにより、ジアシド成分及びジオール成分の反応性を向上させて反応時間を短縮させ、反応性が弱い2級及び/又は3級ジオールのポリエステル樹脂中の残存率を高めると共に、ポリエステル樹脂の色相安定性及び難燃性を向上させ得る。
【0012】
前記反応性は、ジアシド成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の活性化エネルギー値と関連し、そして、一般に過剰に投入されるジオール成分の競争反応時のジオール成分の反応率とも関連する。前記残存率とは、それぞれの成分(モノマー)の投入量に対する、重合工程後の最終的なポリエステル樹脂に含まれる成分(モノマー)の含量のことをいい、前記反応時間は、エステル化反応及び/又はエステル交換反応にかかる時間であり、ジアシド成分及びジオール成分の投入時を反応開始時点とし、水又はアルコールなどの副産物が理論量の80%程度が系外に流出されたときを反応終了時点として測定される。
【0013】
前記色相安定性は、エステル化反応及び/又はエステル交換反応並びに重縮合反応時に加えられる熱、追加的に発生する反応熱、及び攪拌により発生する摩擦熱などによって分子鎖を短くする逆反応又は分解反応によって発生する着色体の生成を抑えたり、あるいは触媒の活性を調節したりして望まない付加反応を抑えることによって、最終ポリマーの色相が無色又は白色になった状態をいう。通常、色相安定性を高めるために安定剤を使用し、この安定剤は、反応中に生成されるラジカルを吸収したり、触媒による付加反応を抑える。なお、ポリマーの色相を所望の用途に合わせるために色相を変化させる有/無機系の添加剤を追加することもある。
【0014】
本発明に用いられるリン酸系添加剤は、下記の一般式1〜3で表される化合物及びこれらの混合物よりなる群から選ばれるものである。
【化4】

【化5】

【化6】

上記の一般式1中、Rは、炭素数0〜10、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4の線状、分岐状、単環状又は多環状の飽和若しくは不飽和炭化水素であり、上記の一般式2中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4の線状の飽和若しくは不飽和炭化水素であり、R及びRは、それぞれ炭素数1〜10、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4の線状、分岐状、単環状又は多環状の飽和若しくは不飽和炭化水素であり、上記の一般式3中、Rは、炭素数1〜10、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4の線状、分岐状、単環状又は多環状の飽和若しくは不飽和炭化水素であり、Rは、炭素数1〜10、好ましくは1〜6、さらに好ましくは、1〜4の飽和若しくは不飽和炭化水素である。
【0015】
前記リン酸系添加剤の添加量は、前記ジアシド成分100重量部に対して、0.001〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部である。前記リン酸系添加剤の添加量が0.001重量部未満であれば、反応性、ポリエステル樹脂の難燃性、及び色相安定性を向上させる効果がわずかなものとなる虞があり、2重量部を超えると、反応時間が延びて色相安定性が低下する虞がある。
【0016】
本発明に用いられるジアシド成分は、2つのカルボキシ基(−COOH)を有する化合物(ジカルボン酸)又はこれらのエステル誘導体であり、ポリエステル樹脂の通常の重合に用いられるジアシド成分を広く使用することが可能であり、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸、及びジメチルテレフタレート、ビフェニルジメチルジカルボキシラートなどのエステル誘導体を、単独又は混合して使用することができる。前記エステル誘導体は、ジカルボン酸のカルボキシル基(−COOH)がアルキルエステル基(−COOR、Rは炭素数1〜4のアルキル基)で置換されたものであり、ジオール成分とエステル交換反応をしてポリエステル樹脂重合に参加する。
【0017】
本発明に用いられるジオール成分は、2つのアルコール基(−OH)を有する化合物であり、1級ジオールを単独で使用するか、あるいは、1級ジオールと2級及び/又は3級ジオールとを混合してポリエステル樹脂重合に使用する。ここで、1級ジオールとは、アルコール基と結合した炭素が、他の一つの炭素と結合している形態のものであり、2つのアルコール基を有する化合物のことを言う。本発明のポリエステル樹脂重合に広く使用される1級ジオールとしては、通常の1級ジオールがあり、例えば、エチレングリコール(EG)、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられ、好ましくは、エチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、又はエチレングリコールと1、4−シクロヘキサンジメタノールとの混合物が挙げられる。
【0018】
前記1級ジオールは、前記ジアシド成分100モル部に対して、1〜200モル部、好ましくは10〜150モル部投入し、前記投入量が1モル部未満であれば、エステル化反応又はエステル交換反応が十分に起こらない結果、最終重合度が下がる虞があり、200モル部を超えると、重合時間が延びるだけではなく、これといったメリットがない。
【0019】
前記2級ジオールとは、アルコール基と結合した炭素が、他の2つの炭素と結合している形態のものであり、2つのアルコール基を有する化合物のことをいう。本発明のポリエステル樹脂の重合に広く使用される2級ジオールとしては、通常の2級ジオールがあり、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、イソソルビド、2,2,4,4−テトラメチルシクロ−1,3−ブタンジオールなどが挙げられる。前記3級ジオールとは、アルコール基と結合した炭素が、他の3つの炭素と結合している形態のものであり、2つのアルコール基を有する組成物のことをいう。本発明のポリエステル樹脂の重合に広く使用される3級ジオールとしては、通常の3級ジオールがあり、例えば、ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0020】
本発明に用いられる2級及び/又は3級ジオールは、イソソルビド、1,2−プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、2,2,4,4−テトラメチルシクロ−1,3−ブタンジオール、ビスフェノールA及びこれらの混合物よりなる群から選ばれることが好ましく、前記2級及び/又は3級ジオールの投入量は、前記ジアシド成分100モル部に対して、0〜200モル部、好ましくは1〜140モル部、さらに好ましくは10〜70モル部である。前記2級及び/又は3級ジオールの投入量が200モル部を超えると、重合時間が延びるだけで、これといったメリットがない。
【0021】
一般に、1級ジオールの方が2級及び3級ジオールよりも立体的妨害効果が低いことから、反応性及び反応率が高く、これと同じ理由から、2級ジオールの方が3級ジオールよりも反応性及び反応率が高い。
【0022】
本発明によるポリエステル樹脂の製造方法は、前記リン酸系添加剤の存在下で、ジアシド成分とジオール成分とがエステル化反応及び/又はエステル交換反応をして生成される副産物(水又はアルカノール)を系外に流出させることにより、エステル化反応及び/又はエステル交換反応の生成物、例えば、1〜15量体の化合物であるジグリコールエステル(例えば、ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート;BHT)を製造する第1ステップと、前記エステル化反応及び/又はエステル交換反応の生成物を高温及び高真空下で重縮合させる第2ステップとに分けて行う。前記重縮合反応は、置換(交換)エステル化反応とも呼ばれ、エステル交換と脱ジオール反応があり、第1ステップの反応よりも活性化エネルギーが高いため、アンチモン、亜鉛などの触媒を必要とする。なお、重合されるポリエステル樹脂の融点を考慮せねばならず、脱ジオールを系外に流出せねばならないため、高温及び高真空下で行われる。
【0023】
前記ポリエステル樹脂の製造方法において、投入されるジアシド成分とジオール成分とのモル比は、重合度、すなわち、分子量と関連する数値であり、そのモル比が1に近いほど高い重合度、高い分子量の高分子を有するが、通常、ジオール成分/ジアシド成分のモル比を1.05〜2.2にして、ジオール成分が過剰に存在する状態で前記第1ステップを行い、前記第2ステップにおいて、過剰のジオールを系外に流出させて分子量を増大させる方法により重合を行う。所定の温度以上になると、過剰に投入されるジオール成分は、ジアシド成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応時に、それぞれ異なるジオールとの競争反応に参加することとなり、ジオール個々の反応性に応じて反応率が異なる。前記反応率は、後続する高真空下での重縮合反応における各ジオールの沸点及びポリマー内の残存率と関連する。
【0024】
以下のより詳細に説明された実施例及び比較例によって、本発明のよりよい理解が得られるが、本発明の範疇はこれらの例に限定されるものではない。
【0025】
[実施例1]ポリエステル樹脂の製造
反応器にテレフタル酸(TPA)100g(0.6mol)、エチレングリコール(EG)55g(0.886mol)及びリン酸系添加剤としての(2−カルボキシルエチル)フェニルホスフィン酸(一般式1、R=−CHCH−)0.24g(0.001mol)を添加しこれらを混合して250℃までに徐々に昇温させて、副産物である水やメタノールが理論量の80%になるまで流出させた。次いで、重縮合触媒として酸化ゲルマニウム(GeO)を添加し、温度を275℃に上昇させ、3時間かけて真空反応を行うことにより、固有粘度が0.60dL/g以上であり、数平均分子量が20,000〜30,000であるポリエステル樹脂を得た。その特性を下記表1に示す。
【0026】
[実施例2]ポリエステル樹脂の製造
リン酸系添加剤の添加量を0.24g(0.001mol)から0.48g(0.002mol)に変えた以外は、前記実施例1の方法と同様にして、固有粘度が0.60dL/g以上であり、数平均分子量が20,000〜30,000であるポリエステル樹脂を得た。その特性を下記表1に示す。
【0027】
[実施例3]ポリエステル樹脂の製造
テレフタル酸100g(0.6mol)の代わりにジメチルテレフタレート(DMT)117g(0.6mol)を添加し、エチレングリコールの添加量を55g(0.886mol)から65g(1.047mol)に変えた以外は、前記実施例1の方法と同様にして、固有粘度が0.60dL/g以上であり、数平均分子量が20,000〜30,000であるポリエステル樹脂を得た。その特性を下記表1に示す。
【0028】
[実施例4]ポリエステル樹脂の製造
イソソルビド(ISB)16g(0.109mol)をさらに添加した以外は、前記実施例1の方法と同様にして、固有粘度が0.60dL/g以上であり、数平均分子量が20,000〜30,000であるポリエステル樹脂を得た。その特性を下記表1に示す。
【0029】
[実施例5]ポリエステル樹脂の製造
リン酸系添加剤の添加量を0.24g(0.001mol)から0.48g(0.002mol)に変え、イソソルビド(ISB)16g(0.109mol)をさらに添加した以外は、前記実施例1の方法と同様にして、固有粘度が0.60dL/g以上であり、数平均分子量が20,000〜30,000であるポリエステル樹脂を得た。その特性を下記表1に示す。
【0030】
[実施例6]ポリエステル樹脂の製造
テレフタル酸100g(0.6mol)の代わりにジメチルテレフタレート(DMT)117g(0.6mol)を添加し、エチレングリコールの添加量を55g(0.886mol)から65g(1.047mol)に変え、イソソルビド(ISB)16g(0.109mol)をさらに添加した以外は、前記実施例1の方法と同様にして、固有粘度が0.60dL/g以上であり、数平均分子量が20,000〜30,000であるポリエステル樹脂を得た。その特性を下記表1に示す。
【0031】
[比較例1]ポリエステル樹脂の製造
リン酸系添加剤を使用しなかった以外は、前記実施例1の方法と同様にして、固有粘度が0.60dL/g以上であり、数平均分子量が20,000〜30,000であるポリエステル樹脂を得た。その特性を下記表1に示す。
【0032】
[比較例2]ポリエステル樹脂の製造
リン酸系添加剤を使用しなかった以外は、前記実施例3の方法と同様にして、固有粘度が0.60dL/g以上であり、数平均分子量が20,000〜30,000であるポリエステル樹脂を得た。その特性を下記表1に示す。
【0033】
[比較例3]ポリエステル樹脂の製造
リン酸系添加剤を使用しなかった以外は、前記実施例4の方法と同様にして、固有粘度が0.60dL/g以上であり、数平均分子量が20,000〜30,000であるポリエステル樹脂を得た。その特性を下記表1に示す。
【0034】
[比較例4]ポリエステル樹脂の製造
リン酸系添加剤を使用しなかった以外は、前記実施例6の方法と同様にして、固有粘度が0.60dL/g以上であり、数平均分子量が20,000〜30,000であるポリエステル樹脂を得た。その特性を下記表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
前記実施例及び比較例に従い得られたポリエステル樹脂の色相安定性を測定するために、コニカミノルタセンシング株式会社製の色差計(Data Processor DP−400 for Chroma meter)でColor a、b値を測定し、前記難燃性はUL−94法を参考にして、試片の燃える時間を計る方法により測定した。表1から、本発明のリン酸系添加剤の存在下(実施例)で、ポリエステル樹脂を製造することにより、ポリエステル樹脂の難燃性を向上させ、Color a又はb値を同じ条件下でリン酸系添加剤を使用しなかった比較例と比べて、0に近づくように色相安定性を向上させ、ポリエステル樹脂中の2級又は3級ジオールの残存率を同じ条件下で6%以上増大させ、しかも、エステル化反応及びエステル交換反応の時間を短縮させることが確認できた。なお、一般式1のリン酸系添加剤の代わりに、一般式2又は3のリン酸系添加剤を使用した場合にも、前記実施例と同じ結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式1〜3で表される化合物よりなる群から選ばれる1以上のリン酸系添加剤の存在下で、ジアシド成分及びジオール成分をエステル化反応及び/又はエステル交換反応させるステップと、
前記エステル化反応及び/又はエステル交換反応の生成物を重縮合させるステップと、
を含む、ポリエステル樹脂の製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】

(上記の一般式1中、Rは、炭素数0〜10の線状、分岐状、単環状又は多環状の飽和若しくは不飽和炭化水素であり、上記の一般式2中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の線状の飽和若しくは不飽和炭化水素であり、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜10の線状、分岐状、単環状又は多環状の飽和若しくは不飽和炭化水素であり、上記の一般式3中、Rは、炭素数1〜10の線状、分岐状、単環状又は多環状の飽和若しくは不飽和炭化水素であり、Rは、炭素数1〜10の飽和若しくは不飽和炭化水素である。)
【請求項2】
前記リン酸系添加剤は、ジアシド成分100重量部に対して、0.001〜2重量部で添加されるものである、請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記ジオール成分は、1級ジオール単独であるか、あるいは1級ジオールと2級及び/又は3級ジオールとの混合物であり、前記ジアシド成分100モル部に対して、前記1級ジオールは1〜200モル部添加され、前記2級及び/又は3級ジオールは0〜200モル部添加される、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂の製造方法。

【公表番号】特表2012−514091(P2012−514091A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544363(P2011−544363)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/KR2009/007715
【国際公開番号】WO2010/077009
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(500116041)エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド (49)
【Fターム(参考)】