説明

ポリエステル樹脂フィルムの製造方法、およびこの製造方法により製造されたポリエステル樹脂フィルム、反射防止フィルム、拡散フィルム

【課題】ポリエステル樹脂フィルムのカール、ムラおよびしわの発生を抑制しながら、さらにヘイズの発生・悪化を防止することができるポリエステル樹脂フィルムの製造方法、およびこの製造方法により製造されたポリエステル樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂をシート状に溶融押出しし、キャスティングドラム12上で冷却固化しポリエステル樹脂シートを製造した後、二軸延伸を行うポリエステル樹脂フィルムの製造方法において、溶融押出し後のポリエステル樹脂シートの厚みが1500μm以上であり、冷却固化の際、冷風発生装置14から5℃以上50℃以下の冷風を吹きつけ、シートの表面温度を前記ポリエステル樹脂の(降温結晶化開始温度+40℃)から(降温結晶化終了温度−40℃)の範囲で、350℃/min以上590℃/min以下の平均冷却速度で冷却固化することを特徴とするポリエステル樹脂フィルムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂フィルムの製造方法に係り、特に、優れた透明性を有する光学用途に適用するポリエステル樹脂フィルムの製造方法、この製造方法により製造されたポリエステル樹脂フィルム、およびこのポリエステル樹脂フィルムを基材に用いた反射防止フィルム、拡散フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータの普及、特に携帯性の良いノート型パソコンや省スペースのデスクトップ型パソコンの普及が著しい。また、家庭用薄型大画面テレビとして液晶テレビが普及しつつある。それに伴い液晶ディスプレイの需要が増し、かつ大画面化が進められている。
【0003】
これらに用いられる各種の光学用フィルムとして、優れた透明性を有することから、二軸配向ポリエステル樹脂フィルムが用いられている。また、光学用フィルムには、優れた強度、寸法安定性が要求されるため、比較的厚手のフィルムが好適に用いられている。
【0004】
このようなフィルムの製造方法としては、ポリエステル樹脂を、表面を平滑にしたドラム(キャスティングドラム)などに押出し、キャスティングドラム上で溶融樹脂を冷却することで、フィルムを成型する。
【0005】
しかしながら、溶融樹脂の冷却は、キャスティングドラムに冷媒などを通過させることにより、冷却しているため、溶融樹脂膜の膜厚が厚くなると、溶融樹脂膜表面が冷却不足となる。その結果、結晶化が起こり、フィルムの白濁、透明性(ヘイズ)の悪化という問題が生じていた。透明性が悪化すると、結晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)向けの光学用フィルムとして使用する際、画面の輝度が落ち、問題となっていた。
【0006】
このような問題を解決するため、特許文献1には、冷却ドラムの他に、補助冷却装置として、空気により冷却する方法が記載されている。また、特許文献2には、冷却速度を1sec/10℃以上にし、部分的な結晶化による光学異物の発生を抑止する製造方法が記載されている。
【特許文献1】特開平9−204004号公報
【特許文献2】特開2000−229355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、近年は特に優れた強度などが必要とされるため、厚手のフィルムが用いられていた。しかしながら、特許文献1および特許文献2記載の方法では、シートの冷却速度を速くしているため、フィルムに生じるヘイズを防止することはできる。しかし、冷却速度を速くするためには、冷風を多く供給する必要があり、この冷風により、ビードが揺らぎ均一に製膜することができず、厚みムラが生じる。また、急冷によりフィルムの表と裏の冷却速度に差が生じ、カールおよびしわが発生するなどの問題が生じている。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、カールの発生、シートのムラ、しわの発生を抑制しながら、ヘイズの発生も防止することができるポリエステル樹脂フィルムの製造方法、この製造方法により製造されたポリエステル樹脂フィルム、およびこのポリエステル樹脂フィルムを基材に用いた反射防止フィルム、拡散フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1は、前記目的を達成するために、ポリエステル樹脂をシート状に溶融押出しし、キャスティングドラム上で冷却固化しポリエステル樹脂シートを製造した後、二軸延伸を行うポリエステル樹脂フィルムの製造方法において、前記溶融押出し後の前記ポリエステル樹脂シートの厚みが1500μm以上であり、前記冷却固化の際、前記キャスティングドラムに対面した冷風発生装置から5℃以上50℃以下の冷風を吹きつけることでシートを強制的に冷却し、該シートの表面温度を前記ポリエステル樹脂の(降温結晶化開始温度+40℃)から(降温結晶化終了温度−40℃)の範囲で、350℃/min以上590℃/min以下の平均冷却速度で冷却固化することを特徴とするポリエステル樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【0010】
本発明のポリエステル樹脂フィルムの製造方法は、厚手のフィルムの製造に好適に用いることができる。具体的には、溶融押出し後のポリエステル樹脂シートの厚みが1500μm以上である。本発明の製造方法は、キャスティングドラムでの冷却に加えて、冷風発生装置から冷風を吹き付けることにより、冷却している。したがって、厚みのあるシートに対しても充分に冷却を行うことができる。また、冷却速度を350℃/min以上590℃/min以下の範囲とすることにより、ヘイズの発生をおさえ、急冷によるしわの発生も少ないフィルムを製造することができる。
【0011】
請求項2は請求項1において、前記ポリエステル樹脂シート表面の平均冷却速度A(℃/min)と、前記キャスティングドラム内を流れる冷媒温度B(℃)と、該キャスティングドラムから該ポリエステル樹脂シート裏面への総括熱伝達係数C(J/m・s・K)が以下の式を満たすことを特徴とする。
【0012】
30≦C×(300−B)÷A≦4000 ・・・(1)
0≦B≦Tg ・・・(2)
請求項2は、シート冷却時のシートの表面と裏面の冷却速度の差を規定したものである。表面と裏面との冷却速度の差が大きいと、物性差が生じ、フィルムにカールが発生する。また、式(1)が30より小さい場合は、キャスティングドラム側からの冷却不足となるため、フィルムにヘイズが発生するため好ましくない。また、冷媒の温度Bを0℃より低くするとキャスティングドラムに結露が生じ、Tgより高くするとシートがドラムに接着するため好ましくない。
【0013】
請求項3は請求項1または2において、前記冷風発生装置から前記ポリエステル樹脂シート表面への熱伝達係数が1J/m・s・K以上500J/m・s・K以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項3によれば、冷風発生装置からポリエステル樹脂シート表面への熱伝達係数を上記範囲内とすることにより、シートの厚みムラの発生がなく、所定の冷却速度を維持したまま、冷却することができる。熱伝達係数が500J/m・s・Kをこえると、均一にシートを冷却することができず、フィルムの厚みムラが悪化する。また、1J/m・s・Kより小さいと冷却不足となり、シートが結晶化しやすくなり、ヘイズの発生の原因となる。
【0015】
請求項4は請求項1から3において、前記冷風の平均風速が5m/min以上100m/min以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項4によれば、冷風の平均風速を上記範囲とすることにより、厚みムラの発生がなく、所定の冷却速度を維持したまま、冷却することができる。風速が100m/minをこえると均一にシートを冷却することができず、フィルムの厚みムラが悪化する。また、5m/minより小さいと冷却不足となり、シートが結晶化しやすくなり、ヘイズの発生の原因となる。
【0017】
請求項5は請求項1から4において、前記ポリエステル樹脂シート表面の幅方向での冷却速度の差が100℃/min以下であることを特徴とする。
【0018】
請求項5によれば、冷却速度の差を上記範囲内とすることにより、均一な品質のフィルムを製造することができる。冷却速度の差が100℃/minを超えるとフィルムの幅方向に、ヘイズの分布が生じるなど、品質に差が生じるため、好ましくない。
【0019】
請求項6は請求項1から5において、前記冷風発生装置の冷風出口形状が、前記ポリエステル樹脂シート表面の幅方向に広がるスリットノズルであり、該スリットノズルのスリット幅が0.5mm以上10mm以下、該スリットノズルのピッチが10mm以上100mm以下、該スリットノズルとキャスティングドラム間の距離が5mm以上200mm以下であることを特徴とする。
【0020】
請求項6によれば、スリットノズルのスリット幅、ピッチ、およびスリットノズルとキャスティングドラムとの距離を所定の範囲内にすることにより、冷却ムラの発生がなく、所定の冷却速度での冷却が可能である。スリット幅が0.5mmより小さいと圧力損失が大きすぎて充分な風量を供給することができず、冷却速度が遅くなり、ヘイズが発生することがある。10mmより大きいとスリットから出る風にバラツキが生じるため、シートに冷却ムラが発生する。また、スリットノズルのピッチを10mmより小さくしても、10mmであるときと比較し、それ以上の冷却効果は得られない。100mmより大きい場合は、スリット間の距離が開きすぎているため、シートの走行方向に冷却ムラが生じ、好ましくない。さらに、スリットノズルとキャスティングドラム間の距離が5mmより短いと、ノズルから吐出する冷風が直接シートにあたるため、シートの面状が悪化する。200mmより長いと、冷風による冷却効果が得られず、充分な冷却速度が得られない。
【0021】
請求項7は、請求項1から6において、前記冷風発生装置の冷風出口風量が一定になるように、外気温度および圧力に応じて冷風ファンのインバータの回転数を制御することを特徴とする。
【0022】
請求項7によれば、冷風の風量が外気温度または外気圧力に影響されず、一定の風量で冷風を供給することができる。したがって、フィルムの走行方向にヘイズの分布など品質のムラが発生することなく、製造することができる。
【0023】
請求項8は請求項1から7において、前記冷風発生装置には、排気ファンが備えられており、前記冷風の総給気風量X(m/min)と、前記排気ファンの総排気風量Y(m/min)が以下の式を満たすことを特徴とする。
【0024】
0.5≦Y÷X≦4 ・・・(3)
請求項8によれば、冷風発生装置には、排気ファンが備えられている。したがって、冷風発生装置から供給された冷風を排気することができるため、シート付近の雰囲気が極端に加圧とならずに、冷却することができる。式(3)の数値が、0.5を下回ると給気風量が多くなるため、ダイから吐出されるビードが冷風により揺れ、フィルムの厚みムラが悪化する。また、式(3)の数値が、4を上回ると排気風量が多くなり、冷風のみでなく、周辺の空気を排気ファンに吸い込むため、浮遊する異物がシートに付着し、シートの透明性が悪化する。
【0025】
請求項9は請求項1から8において、前記冷風発生装置に防塵フィルターを備えることを特徴とする。
【0026】
請求項9によれば、冷風発生装置に防塵フィルターを備えているため、冷風中に含まれる異物が、フィルムに付着することを防止することができる。
【0027】
請求項10は請求項1から9において前記ポリエステル樹脂シートを二軸延伸したポリエステル樹脂フィルムの厚みが150μm以上であることを特徴とする。
【0028】
本発明の製造方法は、シートの裏側からキャスティングドラム、シートの表側から冷風によりシートを冷却しているため、厚手のフィルムに対しても、所定の速度で冷却することができるため、150μm以上の厚みのフィルムに対して特に有効である。
【0029】
請求項11は請求項1から10において、前記ポリエステル樹脂フィルムのヘイズが2%以下であることを特徴とする。
【0030】
請求項11によれば、ヘイズを上記範囲とすることにより、FPD画面の輝度が向上し、光学用フィルムとして好適に用いることができる。
【0031】
請求項12は請求項1から11において、前記ポリエステル樹脂フィルムのカールが50mm以下であることを特徴とする。
【0032】
請求項12によれば、カールを上記範囲とすることにより、加工適正のよい、ポリエステル樹脂フィルムを提供することができる。また、反りのないパネルを製造することができる。
【0033】
請求項13は、請求項1から12の製造方法により製造されたポリエステル樹脂フィルムを提供する。
【0034】
請求項14は、請求項13のポリエステル樹脂フィルムを基材に用いたことを特徴とする反射防止フィルムを提供する。
【0035】
請求項15は、請求項13のポリエステル樹脂フィルムを基材に用いたことを特徴とする拡散フィルムを提供する。
【0036】
本発明の製造方法により得られたポリエステル樹脂フィルムは、光学用フィルムとして、特に、反射防止フィルム、拡散フィルムに好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、キャスティングドラムと冷風発生装置からの冷風とで、所定の温度範囲内および冷却速度範囲内で、ポリエステル樹脂シートを冷却固化することにより、厚手のポリエステル樹脂フィルムの製造に際しても、ヘイズの発生、カールの発生、シートのしわの発生を抑制した、良好な品質のポリエステル樹脂フィルムを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、添付図面により本発明のポリエステル樹脂フィルムの製造方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0039】
図1はポリエステル樹脂フィルムの製造装置の概略を示す図で、この図において、10はポリエステル樹脂フィルム1を製膜する製膜工程部、20はこの製膜工程部10で製膜されたポリエステル樹脂フィルム1を縦方向に延伸する縦延伸機、30は縦延伸機20で縦方向に延伸されたポリエステル樹脂フィルム1を横方向に延伸する横延伸機、40は横延伸機30で延伸されたポリエステル樹脂フィルム1を巻き取る巻取り機である。そして、製膜工程部10にはダイ11、キャスティングドラム12、および冷風発生装置13が設けられ、縦延伸機20が設けられている。また、冷風発生装置13には、冷風を供給する給気ファン14、冷風を排気する排気ファン15が設けられている。なお、図1に記載されている冷風発生装置はあくまでも代表的なものであり、形状は特に限定されず用いることができる。
【0040】
また、本発明においては、製膜工程後、縦延伸工程前のフィルムを「ポリエステル樹脂シート」、縦延伸工程後のフィルムを「縦延伸ポリエステル樹脂フィルム」、横延伸後、つまり縦延伸と横延伸の2軸延伸後のフィルムを「ポリエステル樹脂フィルム」という。
【0041】
[製膜工程]
まず、製膜工程について説明する。ポリエステル樹脂を十分乾燥後、例えば、融点+10〜50℃の温度範囲に制御された押出機(図示せず)、フィルター(図示せず)およびダイ11を通じてシート状に溶融押し出しし、回転するキャスティングドラム12上にキャストして急冷固化することによりポリエステル樹脂フィルム1を得る。さらに、キャスティングドラム12上で急冷固化する際、キャスティングドラム12に対面する位置に備える冷風発生装置13より、冷風を吹き付けることにより、冷却を行う。これにより、シートの裏面はキャスティングドラム12により、シートの表面は冷風により冷却することができるので、シートを所望の速度で均一に冷却することができる。
【0042】
冷風発生装置13からシートに吹き付ける冷風の温度は、5℃以上50℃以下の温度の冷風を供給する。好ましくは10℃以上40℃以下、より好ましくは15℃以上35℃以下である。冷風の温度が5℃より低いと、キャスティングドラムで結露を起こす可能性があり、また、50℃を越えると冷却の効果が小さくなるため好ましくない。
【0043】
また、冷風の平均風速は5m/min以上100m/min以下であることが好ましい。より好ましくは、10m/min以上90m/min以下、さらに好ましくは、15m/min以上80m/min以下、さらに好ましくは、20m/min以上70m/min以下である。平均風速を上記範囲とすることにより、所定の冷却速度を維持しながら、均一な膜厚のフィルムを製造することができる。平均風速が5m/minより遅くなると、充分な冷却が行われないため、冷却不足で結晶化しやすくなり、ヘイズの原因となる。また、100m/minより速くなると、フィルムの厚みムラが悪化するため、好ましくない。
【0044】
図2は、冷風発生装置13をキャスティングドラム12側からみた正面図である。冷風発生装置13は、装置の中心に、走行方向に冷風出口16を備え、その冷風出口16の横に排気ノズル17が設けられている。
【0045】
冷風出口16の好ましい形状としては、図2に示すように、ポリエステル樹脂シート表面の幅方向に広がるスリットノズルであることが好ましい。冷風出口形状をスリットノズルとすることにより、効率よくシートの冷却をすることができる。スリットノズルのスリット幅は、0.5mm以上10mm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8mm以上8mm以下、さら好ましくは1mm以上6mm以下、さらに好ましくは1.2mm以上4mm以下である。上記範囲とすることで充分な冷却速度を維持したまま、均一な膜厚のフィルムを製造することができる。スリット幅が0.5mmより小さいと、圧力損失が大きくなり、充分な風量が得られないため、冷却速度が遅くなる。また、10mmより大きいと、スリットから供給される冷風にバラツキが生じるため、冷却ムラが生じることがある。
【0046】
また、スリットノズルのピッチは10mm以上100mm以下であることが好ましい。より好ましくは、20mm以上90mm以下、さらに好ましくは30mm以上80mm以下、さらに好ましくは、40mm以上70mm以下である。上記範囲とすることにより、所定の冷却速度で、均一な膜厚のフィルムを製造することができる。ノズルのピッチを10mmより小さくしても、それ以上の冷却効果は得られない。また、100mmより大きいとスリット間の距離が開きすぎてしまい、シートの走行方向に冷却ムラが生じるため、好ましくない。
【0047】
さらに、冷風発生装置のスリットノズル14からキャスティングドラム12の距離が5mm以上200mm以下であることが好ましい。より好ましくは8mm以上150mm以下、さらに好ましくは12mm以上100mm以下、さらに好ましくは15mm以上50mm以下である。上記範囲とすることにより、充分な冷却速度を維持したまま、良好な面状のフィルムを製造することができる。スリットノズル14とキャスティングドラム12との距離が5mmより短いと、スリットノズル14から供給される冷風が直接シートにあたるため、シートの面状が悪化する。また、200mm以上であると、充分な冷却速度が得られないため、結晶化によりヘイズが発生する場合がある。
【0048】
冷風の出口風量は、常に一定になるように、外気温度および圧力に応じて冷風ファンのインバータの回転数を制御することが好ましい。回転数を制御する方法としては、ファンで供給した風を、ファンから冷風発生装置のスリットノズルの間で冷却・温度制御した後、風速測定機等で風量を測定し、その風量が一定になるようファンの回転数を制御する方法を挙げることができる。回転数を制御することにより、冷風の出口風量を一定にすることができるため、外気温度、外気圧力などにより冷風の風量変動がなくなるため、フィルムの走行方向に対する品質のムラがなくなるため、良好な品質のフィルムを製造することができる。
【0049】
また、冷風発生装置13は、防塵フィルターを備えていることが好ましい。防塵フィルターを設けることにより、冷風中に含有する塵、埃などをとりのぞくことができるため、清浄化した冷風を供給することができる。したがって、塵、埃などの付着がない、きれいなフィルムを製造することができる。
【0050】
また、冷風発生装置13には、冷風を排気する排気ノズル17および排気ファン15を備えていることが好ましい。冷風発生装置13は、シート表面に向けて冷風を供給している。したがって、シートの表面付近で圧力が高くなり、冷却ムラが発生する場合がある。しかし、排気ノズル17および排気ファン15を設けることにより、冷風が排気ノズル17を通して排気ファン15で排気されるため、シート表面付近の圧力を一定にし、冷却ムラの発生を防止することができる。また、排気ノズル17および排気ファン15を備えることにより、冷風の風向きを一定にすることができるため、冷風をシートに向けて吹きつけやすくなる。なお、シート表面付近の圧力が高くならず、かつ、周辺の空気を排気ノズル17から吸気しないようにするため、冷風発生装置からの冷風の総給気風量X(m/min)と、排気ファンの総排気風量Y(m/min)が下記の式を満たすことが好ましい。
【0051】
0.5≦Y÷X≦4 ・・・(3)
式(3)の値は、より好ましくは0.8以上3以下、さらに好ましくは1以上2.5以下、さらに好ましくは1.2以上2以下である。上記範囲内とすることにより、均一な膜厚で塵、埃の付着が少ない良好な品質のフィルムを製造することができる。式(3)が、0.5より小さいと給気風量が多すぎて冷風発生装置から吹き出す冷風により、ダイ11から吐出されるビードを揺らして厚みムラが悪化するため、好ましくない。また、式(3)が、4を上回ると排気風量が多くなるため、周辺に浮遊する異物がシートに付着するため、好ましくない。
【0052】
なお、排気ノズル17は、冷風発生装置13の冷風出口16の左右両側に設けられていることが好ましい。冷風出口16の左右に設けることにより、冷風出口16から吹き出された冷風が、シートに当たりそのまま排気ノズル17で排出される。したがって、シート付近が加圧状態となることなく、冷風の供給、排気をすることができる。
【0053】
なお、本発明の製造方法に用いられる冷風発生装置の代表例として、図2を用いて説明したが、ポリエステル樹脂フィルムが、冷却不足により結晶化し、ヘイズが発生しなければ、特に限定されず、あらゆる装置を用いることができる。また、位置、形状なども適宜変更が可能である。
【0054】
次に、シートの冷却の作用機構について説明する。
【0055】
ダイ11からシート状に吐出されたポリエステル樹脂は、キャスティングドラム上で冷却固化される。冷却は、キャスティングドラム中の冷媒と、冷風により行われる。ポリエステル樹脂シート表面の平均冷却速度をA(℃/min)、キャスティングドラム内の冷媒温度をB(℃)、キャスティングドラムからポリエステル樹脂シート裏面への総括熱伝達係数をC(J/m・s・K)とした場合、以下の式を満たすことが好ましい。
【0056】
30≦C×(300−B)÷A≦4000 ・・・(1)
0≦B≦Tg ・・・(2)
シート冷却時にシートの表裏の冷却速度の差が大きいと、表裏に物性差が生じるため、フィルムにカールが発生しやすい。そのため、上記式を満たすことにより、ヘイズの発生、カールの発生が抑制された品質のよいフィルムを製造することができる。上記式(1)が4000を超えると表面の冷却速度が速いため、カールが悪化し、好ましくない。また、30を下回ると裏面の冷却が不十分であり、結晶化によりヘイズが発生することがある。また、冷媒温度が0℃より低いとキャスティングドラムに結露が生じるため、好ましくない。また、Tg(ガラス転移点)を超えると、シート剥離時にシートがドラムに付着するため好ましくない。式(1)は、より好ましくは100以上3000以下、さらに好ましくは200以上2500以下、さらに好ましくは300以上2000以下である。式(2)は、より好ましくは5以上(Tg−10)以下、さらに好ましくは10以上(Tg−20)以下、さらに好ましくは10以上(Tg−30)以下である。
【0057】
また、冷風発生装置13からシート表面への熱伝達係数は、1J/m・s・K以上500J/m・s・K以下であることが好ましい。より好ましくは、10J/m・s・K以上400J/m・s・K以下であり、さらに好ましくは20J/m・s・K以上300J/m・s・K以下であり、さらに好ましくは30J/m・s・K以上200J/m・s・K以下である。熱伝達係数を上記範囲とすることにより、充分な冷却速度を維持したまま、均一な膜厚のフィルムを製造することができる。熱伝達係数が1J/m・s・Kより小さいと冷却不足で結晶化しやすくなり、ヘイズの発生がみられる。また、500J/m・s・Kより大きいと、シートの厚みムラが悪化するため、フィルムの厚みムラも悪化する。
【0058】
また、冷却時のポリエステル樹脂シートの表面温度は、ポリエステル樹脂の(降温結晶化開始温度+40℃)から(降温結晶化終了温度−40℃)の範囲である。表面温度をこの範囲とすることにより、ポリエステル樹脂シートを容易に結晶化させることができるので、フィルムの製造が容易になる。
【0059】
なお、ポリエステル樹脂の降温結晶化開始温度、および降温結晶化終了温度は、例えば示差走査型熱量計(DSC−50:(株)島津製作所製)により測定することができる。測定方法は、あらかじめ秤量したポリエステル樹脂のペレット8mgを測定器にセットし、10℃/minの昇温速度で300℃まで昇温して、300℃で10分間保持した後、10℃/minの降温速度で冷却した際の降温結晶化ピークの立ち上がり温度を降温結晶化開始温度、ピークの立ち下がり温度を降温結晶化終了温度とする。測定時の降温結晶化ピークの一例を図3に示す。
【0060】
さらに、シート表面の平均冷却速度は、350℃/min以上590℃/min以下である。より好ましくは、380℃/min以上590℃/min以下、さらに好ましくは400℃/min以上590℃/min以下である。平均冷却速度をこの範囲とすることにより、結晶化によりヘイズの悪化を防止し、さらに、急冷によるしわの発生を防止することができる。また、シート表面の幅方向の冷却速度の差が100℃/min以下であることが好ましい。より好ましくは、80℃/min以下、さらに好ましくは50℃/min以下、さらに好ましくは30℃/min以下である。冷却速度の差を上記範囲内とすることにより、シートの幅方向にヘイズの分布が生じない均一な品質のフィルムを製造することができる。幅方向の冷却速度の差が、100℃/min以上であると、フィルムの幅方向に品質差が生じるため好ましくない。
【0061】
[縦延伸工程]
次に縦延伸工程について説明する。縦延伸工程を実施する縦延伸機について図4を参照して説明する。図4は縦延機の概略図である。なお、縦延伸機は図4に記載されている装置に限定されず、通常、フィルムの縦延伸に用いられている装置を使用することもできる。図4において、縦延伸機20は、周速が異なる加熱延伸ロール23と冷却延伸ロール24とが設けられるとともに、加熱延伸ロール23の上方に遠赤外線ヒータ25が設けられている。縦延伸工程で未延伸のポリエステル樹脂シートを縦延伸した後、ガラス転移点以下に冷却する。
【0062】
以上のような縦延伸機で縦延伸工程が行われるが、この縦延伸工程は、ポリエステル樹脂シートの加熱手段として遠赤外ヒータを用い、縦延伸倍率1.5〜4.5倍となるように延伸して縦延伸ポリエステル樹脂フィルムを得るものである。
【0063】
以上のような特定の条件で縦延伸された縦延伸ポリエステル樹脂フィルムは、横延伸工程に送られ横延伸される。
【0064】
[横延伸工程]
次に横延伸工程について説明する。横延伸工程を実施する横延伸機について図5を参照して説明する。図5は横延伸機の概略図である。この図において、31はテンターで、このテンター31は、熱風などにより個々に温調可能で遮風カーテン32で区分された多数のゾーンからなり、入口より、予熱ゾーンT、横延伸ゾーンT、T、T、T、熱固定ゾーンT、T、T、熱緩和ゾーンT〜Tn−3および冷却ゾーンTn−2〜Tが配置されている。
【0065】
以上のような横延伸機で横延伸工程が行われるが、横延伸工程は、縦延伸ポリエステル樹脂フィルムをテンター内に通し、横延伸ゾーンでガラス転移点(Tg)以上、ガラス転移点(Tg)+100℃以下の範囲で横延伸を行う。好ましくはガラス転移点(Tg)+25℃以上、ガラス転移点(Tg)+45℃の範囲で横延伸する。横延伸温度がガラス転移点(Tg)未満の場合、延伸中のポリエステル樹脂フィルムに破れが生じる。一方、ガラス転移点(Tg)+100℃を超える場合、ポリエステル樹脂フィルム幅方向で伸びムラが生じる。また、横延伸ゾーンにおいて横延伸する倍率は2.0〜5.0倍が好ましい。横延伸倍率が2.0倍未満の場合はポリエステル樹脂フィルムに厚みムラができ、5.0倍を超える場合はポリエステル樹脂フィルムが延伸途中で破断する。
【0066】
横延伸ゾーンで横延伸した後、熱固定ゾーンで融点(Tm)−30℃以上、融点(Tm)−5℃以下の範囲で熱固定処理を行う。熱固定温度が融点(Tm)−30℃未満の場合、ポリエステル樹脂フィルムが劈開しやすくなるため、光学用フィルムとしては、次工程以降の加工で破損等生じて耐えられないものとなる。一方、熱固定温度が融点(Tm)−5℃を超える場合、フィルム搬送中に部分的なたるみが生じてスリキズ故障などの原因となり、製造安定性がよくない。
【0067】
[巻き取り工程]
以上のようにして、厚みムラの小さい、光学用フィルムとして有用なポリエステル樹脂フィルムを得ることができ、このポリエステル樹脂フィルムは巻取機で巻き取られる。
【0068】
[ポリエステル樹脂材料]
次に、本発明のポリエステル樹脂フィルムの製造方法に用いられる材料について説明する。本発明において使用されるポリエステル樹脂は、ジオールとジカルボン酸とから重縮合により得られるものである。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などで代表されるものである。また、ジオールとしてはエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどで代表されるものである。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレン−P−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどが挙げられる。これらのポリエステルは、ホモポリマーであっても、成分が異なるモノマーとの共重合体あるいはブレンド物であっても良い。共重合成分としては、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのカルボン酸成分などが挙げられる。
【0069】
上記ポリエステルの製造におけるエステル化反応、エステル交換反応にはそれぞれ公知の触媒を使用することができる。エステル化反応は特に触媒を添加しなくても進行するが、エステル交換反応に時間がかかるため、ポリマーを高温で長時間保持しなければならず、結果、熱劣化を生じるなどの不都合がある。そこで、下記に示すような触媒を加えることによりエステル交換反応を効率よく進めることができる。
【0070】
例えば、エステル交換反応の触媒としては、酢酸マンガン、酢酸マンガン4水和物、酢酸コバルト、酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム4水和物、酢酸カルシウム、酢酸カドミウム、酢酸亜鉛、酢酸亜鉛2水和物、酢酸鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛等が一般に使用される。これらは単独に使用しても混合して使用しても良い。
【0071】
また、溶融押出されるポリエステル樹脂の比抵抗は、5×10〜3×10Ω・cmに調整されている。比抵抗が5×10Ω・cm未満であると、黄色味が増加するとともに、異物の発生が多くなり好ましくない、また、比抵抗が3×10Ω・cmを超えると、エア巻込み量が大きくなりフィルム面に凹凸が発生するものである。
【0072】
このポリエステル樹脂の比抵抗を調整するには、前記金属触媒含有量を調整することにより行う。一般に、ポリマー中の金属触媒含有量が多いほどエステル交換反応が速く進行し、比抵抗値も小さくなるのであるが、金属触媒含有量が多すぎるとポリマー中に均一に溶けなくなり、凝集異物発生の原因になる。
【0073】
また、ポリエステル樹脂中には、重合段階でリン酸、亜リン酸およびそれらのエステル並びに無機粒子(シリカ、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナなど)が含まれていても良い。また、重合後ポリマーに無機粒子等がブレンドされていても良い。さらに、公知の熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、顔料、遮光剤、フィラー類、難燃化剤等を添加しても良い。
【0074】
[ポリエステル樹脂フィルム]
溶融押し出し後のポリエステル樹脂シートの厚みは、1500μm以上である。また、ポリエステル樹脂フィルムの厚みは、150μm以上であることが好ましい。本発明のポリエステル樹脂フィルムの製造方法は、厚手のポリエステル樹脂フィルムの製造に効果的であるため、上記範囲のシート、およびフィルムに特に効果的である。
【0075】
また、ポリエステル樹脂フィルムのヘイズは2.0%以下であることが好ましい。ヘイズが低いと、FPD画面の輝度が向上し、好適に用いることができる。より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。また、ポリエステル樹脂フィルムのカールは、50mm以下であることが好ましい。カールが小さいと加工適正が良く、パネルの反りを抑えることができる。より好ましくは30mm以下、さらに好ましくは20mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
【0076】
なお、カールは、以下の測定方法により測定した。二軸延伸後のポリエステル樹脂フィルムを全幅で長さ30cmに切り取り、25℃、60%rhに調温調湿した部屋に24時間つるした状態で保管した。その後、フィルムをカール方向が上になるように地面に置き、フィルム端部が地面から浮いた距離を求め、その値をカールとした。
【0077】
本発明の製造方法により製造されたポリエステル樹脂フィルムは、反射防止フィルムの基材、拡散フィルムの基材として好適に用いることができる。反射防止フィルムは、ブラウン管表示装置(CRT)、LCD、PDPなどのディスプレイの前面板(光学フィルタ)に貼って、反射防止層により光干渉を利用し、画面の表面反射・映り込みを抑え、反射光を低減する効果を持つものである。また、拡散フィルムとは、液晶用バックライトを構成する材料の一つであり、光を散乱・拡散させる半透明なフィルム(シート又は板)である。蛍光管からの光をLCD前面に均一に伝えるために使用されている。本発明の製造方法により製造されたポリエステル樹脂は、厚手で強度があり、さらに、結晶化によるヘイズの悪化を防いでいるため透明である。したがって、光学フィルム用の基材、特に反射防止フィルム、拡散防止フィルムとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例により本発明の実質的な効果を説明するが本発明はこれに限定されるものではない。図6〜8に、本発明の実施例試験条件および結果を示す。図6は、試験に用いた樹脂、シートおよびキャスティングドラムの条件を示す。図7は、冷風発生装置および冷却ファンの条件を示す。また、図8は、試験の評価結果を示す。なお、図6における樹脂Aの原料はポリエチレンテレフタレートであり、樹脂Bの原料はポリエチレンナフタレートである。また、図8中の評価は、以下の基準により評価した。
【0079】
<ヘイズ>
◎・・・0.5%以下
○・・・1.0%以下
△・・・2.0%以下
×・・・2.0%より大きく実害あり
<カール>
◎・・・10mm以下
○・・・20mm以下
△・・・50mm以下
×・・・50mmより大きく実害あり
<厚みムラ>
○・・・良好
△・・・やや悪いが実害はなく許容範囲内
×・・・実害あり
<面状>
○・・・良好
△・・・やや悪いが実害はなく許容範囲内
×・・・実害あり
<しわ>
○・・・良好
△・・・やや悪いが実害はなく許容範囲内
×・・・実害あり
図8に示すように、シート厚みを薄くする(比較例1)、冷風の風速を速くする(比較例4)、冷却ファンの排気量を多くする(比較例7)ことにより、表面平均冷却速度の速い比較例においては、面状が悪く実用化レベルのフィルムが製造できなかった。表面平均速度の遅い比較例2、5、6は、ヘイズの発生が見られた。また、シートの表面と裏面との冷却速度の大きい比較例3は、カールの発生がみられた。
【0080】
逆に、本発明の条件により試験を行った実施例1から4はヘイズ、カール、ムラおよびしわの発生が少ない面状の良好なフィルムを形成することができた。また、キャスティングドラム内を流れる冷媒温度が高い実施例5および実施例6は面状がやや悪かったが実害はなく許容範囲内であった。冷風発生装置のスリットノズルが好ましい数値範囲内で形成されていない実施例7、冷風の給気量が排気量より多い実施例8は、シート付近の冷風の影響によりムラなどが確認でき、やや悪かったが許容範囲内であった。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】ポリエステル樹脂フィルムの製造装置の概略図である。
【図2】冷風発生装置のキャスティングドラム側からみた正面図である。
【図3】ポリエステル樹脂の昇温、冷却による降温結晶化ピークを説明する図である。
【図4】縦延伸工程を実施する縦延機の概略図である。
【図5】横延伸工程を実施する横延機の概略図である。
【図6】本実施例の結果を示す表図である。
【図7】本実施例の結果を示す表図である。
【図8】本実施例の結果を示す表図である。
【符号の説明】
【0082】
1…ポリエステル樹脂フィルム、10…製膜工程部、11…ダイ、12…キャスティングドラム、13…冷風発生装置、14…給気ファン、15…排気ファン、16…冷風出口(スリットノズル)、17…排気ノズル、20…縦延伸機、23…加熱延伸ロール、24…冷却延伸ロール、30…横延伸機、31…テンター、32…遮風カーテン、40…巻取り機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂をシート状に溶融押出しし、キャスティングドラム上で冷却固化しポリエステル樹脂シートを製造した後、二軸延伸を行うポリエステル樹脂フィルムの製造方法において、
前記溶融押出し後の前記ポリエステル樹脂シートの厚みが1500μm以上であり、
前記冷却固化の際、前記キャスティングドラムに対面した冷風発生装置から5℃以上50℃以下の冷風を吹きつけることでシートを強制的に冷却し、該シートの表面温度を前記ポリエステル樹脂の(降温結晶化開始温度+40℃)から(降温結晶化終了温度−40℃)の範囲で、350℃/min以上590℃/min以下の平均冷却速度で冷却固化することを特徴とするポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂シート表面の平均冷却速度A(℃/min)と、前記キャスティングドラム内を流れる冷媒温度B(℃)と、該キャスティングドラムから該ポリエステル樹脂シート裏面への総括熱伝達係数C(J/m・s・K)が以下の式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
30≦C×(300−B)÷A≦4000 ・・・(1)
0≦B≦Tg ・・・(2)
【請求項3】
前記冷風発生装置から前記ポリエステル樹脂シート表面への熱伝達係数が1J/m・s・K以上500J/m・s・K以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記冷風の平均風速が5m/min以上100m/min以下であることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載のポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂シート表面の幅方向での冷却速度の差が100℃/min以下であることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載のポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記冷風発生装置の冷風出口形状が、前記ポリエステル樹脂シート表面の幅方向に広がるスリットノズルであり、該スリットノズルのスリット幅が0.5mm以上10mm以下、該スリットノズルのピッチが10mm以上100mm以下、該スリットノズルとキャスティングドラム間の距離が5mm以上200mm以下であることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載のポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記冷風発生装置の冷風出口風量が一定になるように、外気温度および圧力に応じて冷風ファンのインバータの回転数を制御することを特徴とする請求項1から6いずれかに記載のポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記冷風発生装置には、排気ファンが備えられており、
前記冷風の総給気風量X(m/min)と、前記排気ファンの総排気風量Y(m/min)が以下の式を満たすことを特徴とする請求項1から7いずれかに記載のポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
0.5≦Y÷X≦4 ・・・(3)
【請求項9】
前記冷風発生装置に防塵フィルターを備えることを特徴とする請求項1から8いずれかに記載のポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記ポリエステル樹脂シートを二軸延伸したポリエステル樹脂フィルムの厚みが150μm以上であることを特徴とする請求項1から9いずれかに記載のポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記ポリエステル樹脂フィルムのヘイズが2%以下であることを特徴とする請求項1から10いずれかに記載のポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記ポリエステル樹脂フィルムのカールが50mm以下であることを特徴とする請求項1から11いずれかに記載のポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項1から12いずれかに記載の製造方法で製造されたポリエステル樹脂フィルム。
【請求項14】
請求項13に記載のポリエステル樹脂フィルムを基材に用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項15】
請求項13に記載のポリエステル樹脂フィルムを基材に用いたことを特徴とする拡散フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−239788(P2008−239788A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82006(P2007−82006)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】