説明

ポリエステル組成物の製造方法およびそれからなるポリエステル組成物およびフィルム

【課題】 機械強度、寸法安定性に優れたフィルム、およびポリエステル組成物とその製造方法を提供する。
【解決手段】Si、Al、Tiよりえらばれる金属元素のアルコキシド化合物0.2〜90重量部と数平均分子量300〜8000のポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールモノエーテル10〜99.8重量部を混合・反応して得られた有機無機化合物(X)1〜50重量部を、ジカルボン酸とジオール化合物および/またはポリエステルオリゴマー50〜99重量部と混合し、エステル化・エステル交換反応させるポリエステル組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル組成物の製造方法、ポリエステル組成物、およびフイルムに関するものである。さらに詳しくは、機械的強度寸法安定性に優れたポリエステルフイルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に熱可塑性ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)は優れた力学特性、光学特性を有しており、フィルム、繊維などの成形品として広く用いられている。
【0003】
しかしながら、近年、汎用品では問題ないが、成形品、例えば高性能磁気テープ用フィルムに用いる場合、機械強度の要求が厳しくなり、PETフィルムそのものをそのまま用いることが難しくなってきている。機械的強度、弾性率や寸法安定性の改善としては従来から様々な対策が行われてきた。PETにガラス繊維を加え、さらに非繊維状無機物を加える技術(特許文献1)、PETにガラス繊維とマイカを組み合わせる技術(特許文献2)などガラス繊維と他の無機充填剤を組み合わせる方法が挙げられる。しかしながら、これらの添加量を増やすと磁気テープの表面性および走行性が悪くなり、磁気記録の抜け(ドロップ・アウト)などを引き起こす。また、特許文献3に記載されているようにポリエーテル化合物で処理された非常に微細な層状化合物の併用は確かにガラス繊維の使用量を減少させることを可能にし、樹脂の機械強度を上昇させることに寄与するが、層状化合物が剥がれやすいという欠点があった。
【0004】
また、最近では微細な無機化合物が均一に分散した有機無機ハイブリッド材料を創出するための方法も開示されている。特許文献4では、ポリオキシアルキレングリコール中で予め結晶性無機酸化物を合成し、その後加熱することにより有機無機ハイブリッド材料を得る方法を開示しているが、ポリエステル組成物を含む材料に関する方法については全く開示されておらず、また、この方法をそのままポリエステル組成物に適用したのでは、無機物の充分な分散性及び合成反応中のゲル化などの問題がある。
【特許文献1】特開昭54−74852号公報
【特許文献2】特開昭62−59661号公報
【特許文献3】特開2003−41097号公報
【特許文献4】特開2002−114917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記課題を解決するものであり、機械的強度および寸法安定性に優れたポリエステル組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、Si、Al、Tiよりえらばれる金属元素のアルコキシド化合物2〜90重量部と数平均分子量300〜8000のポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールモノエーテル10〜98重量部を混合・反応して得られた有機無機化合物1〜50重量部を、ジカルボン酸とジオール化合物および/またはポリエステルオリゴマー50〜99重量部と混合し、エステル化および/またはエステル交換反応させるポリエステル組成物の製造方法を開示する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性に優れており、広範な用途に応用が可能で、特に回路材料用途、磁気記録媒体用途などに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明におけるSi、Al、Tiよりえらばれる金属元素のアルコキシド化合物とは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタンなどの前駆体として一般に用いられる化合物で、例えばテトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのアルコキシシラン化合物あるいはこれら2種以上の混合物、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシドなどのアルミニウムトリアルコキシド化合物あるいはこれらの混合物、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネートなどのアルコキシドチタン化合物あるいはこれらの混合物を挙げることが出来る。
【0009】
本発明におけるポリアルキレングリコールとは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールあるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0010】
本発明におけるポリアルキレングリコールのモノエーテルとは、ポリアルキレングリコールの片末端のみがエーテル結合を形成しているものであり、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ−p−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリブチレングリコールモノメチルエーテル、ポリブチレングリコールモノエチルエーテル等あるいはこれらの混合物を挙げることが出来る。
【0011】
本発明におけるポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールモノエーテルの数平均分子量は、300〜8000であり、好ましくは300〜6000、さらに好ましくは300〜1000である。数平均分子量が300未満であると、Si、Al、Tiよりえらばれる金属元素のアルコキシド化合物と混合した際にゲル化反応を起こす。また、数平均分子量が10000を越えると、機械強度や寸法安定性の向上が不十分であり、ポリエステル組成物の耐熱性低下を引き起こす。
【0012】
Si、Al、Tiよりえらばれる金属元素のアルコキシド化合物は、ポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールモノエーテルとの和100重量部に対して2〜90重量部であり、好ましくは5〜45重量部、より好ましくは10〜40重量部である。2重量部未満であると、得られるポリエステル組成物の機械的強度、寸法安定性向上効果が得られない。90重量部を越えると、得られるポリエステル組成物の成形性が悪化する。
【0013】
本発明のポリエステルの製造法においてポリアルキレングリコールを用いる場合は、Si、Al、Tiよりえらばれる金属元素のアルコキシド化合物のモル数(Mm)とポリアルキレングリコールの数平均分子量換算モル数(Pm)の関係が式(3)を満たすことが好ましく、式(4)を満たすことがより好ましい。
0.01<Pm/2Mm<2 (3)
0.05<Pm/2Mm<2 (4)
Pm/2Mmの値が、式(3)において、0.01より大きいとゲル化物の生成防止に有効で好ましく、2より小さいことがポリエステル組成物の機械強度、寸法安定性、および耐熱性の点で望ましい。
【0014】
本発明のポリエステルの製造法においてポリアルキレングリコールモノエーテルを用いる場合は、Si、Al、Tiよりえらばれる金属元素のアルコキシド化合物のモル数(Mm)とポリアルキレングリコールモノエーテルの数平均分子量換算モル数(Pmm)の関係が式(5)を満たすことが好ましく、式(6)を満たすことがより好ましい。
0.01<Pmm/4Mm<2 (5)
0.05<Pmm/4Mm<2 (6)
Pm/2Mmの値が、式(5)において、0.01より大きいとゲル化物の生成防止に有効で好ましく、2より小さいことがポリエステル組成物の機械強度、寸法安定性、および耐熱性の点で望ましい。
【0015】
ポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールモノエーテルは、Si、Al、Tiよりえらばれる金属元素のアルコキシド化合物と混合・反応させる前に予め120〜180℃で1000Pa以下に減圧して乾燥することが好ましい。好ましい温度条件は140〜170℃であり、好ましい圧力条件は500Pa以下である。温度が120℃未満あるいは圧力が1000Paを越えると乾燥が不十分であり、反応時にゲル化を引き起こす可能性がある。一方、温度が180℃を越えるとポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールモノエーテルが熱分解を引き起こす可能性がある。減圧乾燥時間は10分以上が好ましく、より好ましくは30分以上である。ここにおける工程により、金属アルコキシドの高い反応性を制御することができるばかりでなく、ゲル化などの生産性の問題を解消することもでき、高い無機成分の分散性が可能となる。
【0016】
金属元素のアルコキシド化合物とポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールモノエーテルの混合・反応温度は60〜250℃であることが好ましく、より好ましくは80〜230℃、さらに好ましくは100〜200℃である。反応温度が60℃を下回ると、ポリエステル組成物合成時にゲル化が起こりやすくなり、反応温度が250℃を超えると、ポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールモノエーテルが熱分解を起こしやすくなる。
【0017】
なお、本発明においては、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルのいずれを用いても良く、これらを混合して用いても良いが、ポリアルキレングリコールモノエーテルを用いる方が、反応時にゲル化などを起こしにくいので好ましい。
【0018】
本発明におけるポリエステル組成物の合成においては、常法に従い、ジオールとジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体の縮重合により得ることが好ましい。ここでジカルボン酸とは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸などで代表されるものである。また、これらのエステル形成性誘導体とは、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル等に代表される化合物である。また、ジオールとは、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどで代表されるものである。本発明においては、ジカルボン酸成分のうちの80重量%以上がテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸あるいはこれらのエステル形成性誘導体、ジオール成分のうちの80重量%以上がエチレングリコールからなることが耐熱性・機械特性の両面で好ましい。
【0019】
まず、常法では第一段階としてポリエステルのオリゴマーを合成する。このオリゴマーの合成法には、ジカルボン酸成分とジオール成分のエステル化反応を経る直接重合法、ジカルボン酸のアルキルエステルとジオールのエステル交換反応を経るエステル交換反応法の2つが代表的であるが、本発明においてはいずれを用いても良い。こうして得られたオリゴマーを、徐々に昇温させながら減圧して、ジオール成分および水を反応系外に留去することにより高重合度化してポリエステルを得る。
【0020】
本発明においては、金属元素のアルコキシド化合物とポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールモノエーテルの混合・反応物(X)を、ポリエステル合成過程の任意の段階で添加することにより得られる。添加する段階は特に制限されるものではないが、ジカルボン酸あるいはジカルボン酸ジアルキルエステルとジオールからポリエステルオリゴマーを得る第一段階の任意の時期に添加することが好ましく、より好ましくは、第一段階の後半に添加することが好ましい。
【0021】
また、共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分、ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などのヒドロキシカルボン酸成分を含有していても良い。
【0022】
重合方法としてはバッチ式重合装置でも連続重合装置を用いても構わない。また、オリゴマーに有機無機化合物(X)を添加後あるいはポリエステル組成物を得た後、さらに133Pa以下の減圧下あるいは窒素等の不活性ガス雰囲気下において、結晶化温度以上融点以下の温度で加熱処理することにより固相重合を行ってもよい。この温度は、例えばポリエステルがポリエチレンテレフタレートである場合には180〜250℃が好ましく、より好ましくは200〜240℃の範囲である。
【0023】
本発明のポリエステルの製造触媒は、特に限定されるものではなく、種々の触媒を用いることができる。エステル交換反応に有効な触媒としては、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の他、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸亜鉛、酢酸スズ、アルコキシドチタンなどを用いることができる。また、重合触媒としては、3酸化2アンチモン、2酸化ゲルマニウム、アルコキシドチタンなどの他、アルミニウムやシリカの複合酸化物などを用いることができる。また、安定剤として、リン酸、亜リン酸、ジメチトリメチルホスフェートなどの各種リン化合物を添加することが好ましい。該リン化合物の添加時期は、エステル化反応後あるいはエステル交換反応後から重縮合反応の初期に添加することが好ましい。
【0024】
本発明におけるポリエステルは、フィルムに易滑性を与える目的で各種不活性粒子を含有することができる。これら不活性粒子としては、湿式あるいは乾式シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、珪酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化銅、などの酸化物無機粒子、金、銀、銅、鉄、白金等の無機金属粒子、架橋ポリスチレン、架橋ジビニルベンゼンなどに代表される有機粒子、その他炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、硫酸バリウムなどの粒子を挙げることができる。これら粒子は、ポリエステルの重縮合における任意の工程、好ましくはオリゴマーから重縮合工程に移行する前に反応系に添加されることが分散性向上の観点から好ましい。また、粒子は、水あるいはエチレングリコールなどのポリエステルモノマー化合物を分散媒として添加されることが好ましい。また、これら粒子を、ベント孔つき二軸押出機を用いて、あらかじめ得られたポリエステルに混練分散しても構わない。また、ポリエステルの重縮合触媒に起因して重縮合過程において生成する、いわゆる内部粒子を含有しても構わない。
【0025】
また、本発明のポリエステルは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、易滑剤、着色剤などの各種添加剤を、ポリエステルおよび本発明のフィルムの物性を損なわない範囲で添加することができる。
【0026】
こうして得られたポリエステル組成物は、各種成型品に成形して利用することが出来る。以下にフィルムとして用いる場合について述べる。得られたポリエステル組成物を120〜180℃で2〜4時間減圧乾燥後、溶融押出機に供給し、押出機に具備されたT型ダイ口金からシート状に押し出し、キャスティングドラム上で、ドラムを一定速度で回転させながら、静電印加法により密着固化し、未延伸フィルムを得る。用途によっては未延伸フィルムのまま利用することも出来るが、延伸フィルムを得る場合は、得られた未延伸フィルムを、複数のロール群を備えた延伸機で、ロール間の周速差を利用して長手方向に延伸する。延伸温度は90〜170℃が好ましい。延伸倍率は2〜5倍が好ましく、より好ましくは2.5〜4倍である。こうして得られた、長手方向に延伸されたフィルムの両端をクリップで把持して、加熱したテンター内で幅方向に延伸を行う。延伸倍率は2〜5倍が好ましく、より好ましくは2.5〜4.5倍である。また、延伸温度は90〜180℃が好ましい。また、幅方向に延伸した後、さらに長手方向または幅方向に110〜180℃の延伸温度範囲で1.01〜2.5倍に延伸してもよい。
【0027】
また、延伸後に融点以下の温度で熱処理を加えることが好ましく、より好ましい温度範囲は190〜245℃であり、更に好ましくは200〜230℃である。熱処理時間は、好ましくは1〜30秒間である。
【0028】
また、さらに熱処理工程後に100〜160℃の中間冷却および弛緩処理を行ってもよい。弛緩処理の倍率は、幅方向及び/または長手方向に2〜10%であることが好ましく、より好ましくは4〜9%である。
【0029】
また、本発明のフィルムは、延伸工程でコーティングなどの表面処理を行って表面を改質しても良いし、多種のポリマーを積層押し出しあるいは張り合わせにより積層構成のフィルムとしても構わない。
【0030】
こうして得られた本発明のフィルムは、機械的特性と寸法安定性に優れるため、工業用材料や磁気記録材料として好適である。
【実施例】
【0031】
[測定方法]
(1)フィルムのヤング率
ASTM−D882に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定は下記の条件とした。
【0032】
測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロン”AMF/RTA−100
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張り速度:200mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
幅方向の測定値を評価基準とし、3.5GPa以上を○(合格)とし、3.5GPa未満を×(不合格)とした。
【0033】
(2)温度膨張係数(α)(幅方向)(/℃)
フィルムを幅4mmに幅方向にサンプリングし、試長15mmになるように、真空理工(株)製TMA TM−3000および加熱制御部TA−1500にセットした。0.5gの荷重をフィルムにかけて、温度を室温(23℃)から50℃まで上昇させた後、一旦、室温まで温度を戻した。その後、再度温度を室温から50℃まで上昇させた。その時の、30℃から40℃までのフィルムの変位量(ΔLμm)を測定し、次式から温度膨張係数を算出した。
α(/℃)={ΔL/(15×1000)}/(40−30)
以下の判断基準で判定した。
【0034】
8ppm/℃未満 ;○
8ppm/℃以上 ;×
(3)湿度膨張係数(β)(幅方向)(/%RH)
フィルムを幅10mmで幅方向にサンプリングし、試長200mmになるように、大倉インダストリー製のテープ伸び試験器にセットし、温度30℃、湿度40%RHに30分保持し、その後10g荷重下で80%RHまで変化させ30分保持した後、変位量(ΔLmm)を測定し、
β(/%RH)=(ΔL/200)/(80−40)
から湿度膨張係数を算出した。
以下の判断基準で判定した。
【0035】
5ppm/%RH未満 ;○
5ppm/%RH以上 ;×
以下に本発明を実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【0036】
実施例1
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(以下PEG−Me)(アルドリッチ社製 分子量350)85重量部を、160℃で100Pa以下の減圧下30分乾燥し、オルトけい酸テトラエチル(ナカライテスク社製)15重量部を攪拌しながら徐々に添加し、添加終了後200℃まで昇温して、有機無機化合物(X)を得た。
【0037】
一方、ジメチルテレフタレート100重量部、エチレングリコール70重量部を150℃で溶解後、攪拌しながら酢酸マグネシウム4水和物を0.08重量部加え、メタノールを反応系から留去しながら250℃まで徐々に昇温する。メタノールを理論量留去したら、リン酸トリメチルを0.03重量部加え、先に合成した有機無機化合物(X)を10重量部、シリコーンオイルを0.01重量部加えた。さらにこれを290℃まで徐々に昇温しながら反応系を100Pa以下まで徐々に減圧し、2時間保持後に吐出してポリエステル組成物を得た。
【0038】
得られたポリエステル組成物を、180℃で3時間真空乾燥後、あらかじめ290℃に昇温しておいたT−ダイ口金を備えた押出機に供給し、キャスティングドラム上で冷却固化し、未延伸フィルムを得た。これを95℃に加熱したロール群からなる縦延伸装置で3.0倍延伸し、引き続いてテンターで110℃予熱後3.5倍に横延伸し、テンターの最終ゾーンで230℃に加熱してフィルムを得た。該フィルムはヤング率がMD4.8GPa、TD4.2GPaであり、温度膨張係数、湿度膨張係数とも合格であった。
【0039】
実施例2〜10
PEGの分子量や金属化合物量および種類、ポリエステルへの添加量などを変更した他は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物及びフィルムを得た。フィルム物性は良好であった。
【0040】
比較例1
有機金属化合物(X)を添加せず、すなわち通常のポリエチレンテレフタレートを延伸してフィルムを得た。温度膨張係数及び湿度膨張係数は不合格であった。
【0041】
比較例2
有機無機化合物(X)の代わりにケイ酸テトラエチルを5重量%添加する他は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得ようとしたが、塊状物が生成し、合成を中止した。
【0042】
比較例3〜5
PEGの分子量や添加量、金属化合物の添加量を表中の値とする他は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物及びフィルムを得た。ヤング率あるいは温度膨張係数、湿度膨張係数が不合格レベルであった。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si、Al、Tiよりえらばれる金属元素のアルコキシド化合物2〜90重量部と数平均分子量300〜8000のポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールモノエーテル10〜98重量部を混合・反応して得られた有機無機化合物(X)1〜50重量部を、ジカルボン酸とジオール化合物および/またはポリエステルオリゴマー50〜99重量部と混合し、エステル化および/またはエステル交換反応させるポリエステル組成物の製造方法。
【請求項2】
ポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールモノエーテルを予め120〜180℃で1000Pa以下で減圧乾燥することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
Si、Al、Tiよりえらばれる金属元素のアルコキシド化合物のモル数(Mm)とポリアルキレングリコールの数平均分子量換算モル数(Pm)の関係が次式(1)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
0.01<Pm/2Mm<2 (1)
【請求項4】
Si、Al、Tiよりえらばれる金属元素のアルコキシド化合物のモル数(Mm)とポリアルキレングリコールモノエーテルの数平均分子量換算モル数(Pmm)の関係が次式(2)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
0.01<Pmm/4Mm<2 (2)
【請求項5】
金属元素のアルコキシド化合物とポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールモノエーテルの混合・反応温度が60〜250℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
ジカルボン酸成分の80重量%以上がテレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体、ジオール成分の80重量%以上がエチレングリコールからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により製造されるポリエステル組成物。
【請求項8】
請求項7のポリエステル組成物からなるフィルム。

【公開番号】特開2007−326949(P2007−326949A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158731(P2006−158731)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成14年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノテクノロジープログラム(ナノマテリアル・プロセス技術)ナノ粒子の合成と機能化技術プロジェクト」の委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】