説明

ポリエステル製捲縮繊維

【目的】 本発明は、土壌等に埋めた合合生分解性を有し、捲縮性、弾性回復性に優れている捲縮繊維を提供することにある。
【構成】 温度190℃、剪断速度1,000sec-1における溶融粘度が100×102 〜1.0×104 ポイズであり、融点が70〜190℃である脂肪族ポリエステルからなる捲縮繊維。
【効果】 生分解性を有し、捲縮性、弾性回復性に優れた捲縮繊維が得られた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、生分解性を有し、実用上十分な高分子量と特定の溶融特性を有する脂肪族ポリエステルを用いて成形された捲縮性、弾性回復性の良い捲縮繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、動物性、植物性繊維に代り、合成(プラスチック)繊維が衣料、住宅用インテリヤ等に用いられているが、一方多量に使用されているこれらプラスチックの廃棄物が、河川、海洋、土壌を汚染する可能性を有し、大きな社会問題になっており、この汚染防止のために生分解性を有するプラスチックの出現が待望され既に、例えば、微生物による発酵法により製造されるポリ(3−ヒドロキシブチレート)やブレンド系の天然高分子である澱粉と汎用プラスチックとのブレンド物等が知られている。しかし、前者はポリマーの熱分解温度が融点に近いため成形加工性に劣ることや微生物が作りだすため、原料原単位が非常に悪い欠点を有している。また、後者は天然高分子自身が熱可塑性でないため、成形性に難があり、利用範囲に大きな制約を受けている。一方、脂肪族のポリエステルは生分解性を有することは知られていたが、実用的な成形品物性を得るに十分な高分子量物が得られないために、ほとんど利用されなかった。最近、ε−カプロラクトンが開環重合により高分子量になることが見いだされ、生分解性樹脂として提案されているが、融点が62℃と低く、原料が高価なため特殊用途への利用に限定されている。グリコール酸や乳酸などもグリコリドやラクチドの開環重合により高分子量が得られ、僅かに医療用繊維等に利用されているが、融点と分解温度が近く、成形加工性に欠点を持ち、衣料用とか、住宅インテリヤ用に大量に使用されるには至っていない。
【0003】これら衣料用、住宅インテリヤ用等の材料の一つとして、捲縮繊維の成形に通常用いられている高分子量ポリエステル(ここで言う高分子量ポリエステルとは、数平均分子量が10,000以上のものを指す)は、テレフタル酸(ジメチルテレフタレートを含む)とエチレングリコールとの縮合体であるポリエチレンテレフタレートに限定されるといっても過言ではない。テレフタル酸の代りに、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いた例もあるが、いずれも、生分解性を付与しようとする試みはまだされていないのが現状である。従って、従来、ジカルボン酸に脂肪族タイプを使用した、生分解性を有する脂肪族のポリエステルを用いて、捲縮繊維を成形し、実用化しようとする思想は皆無といってよい。この実用化の思想の生まれていない理由の一つは、捲縮繊維が、特殊な成形条件と成形品物性が要求されるにもかかわらずたとえ結晶性であったとしても、前記脂肪族のポリエステルの融点は100℃以下のものがほとんどであり、その上溶融時の熱安定性に乏しいこと、更に重要なことはこの脂肪族のポリエステルの性質、特に引張り強さで代表される機械的性質が、上記ポリエチレンテレフタレートと同一レベルの数平均分子量でも著しく劣った値しか示さず、強度等を要する成形物を得ようとする発想をすること自体困難であったものと考えられる。さらに脂肪族のポリエステルの数平均分子量をより上昇させて物性向上を期待する研究は、その熱安定性の不良から十分に進展していないこともその理由の一つと推察される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これら脂肪族のポリエステルをその成分として用い、実用上十分な高分子量を有し、熱安定性および引張り強さに代表される機械的性質に優れ、且つ、廃棄処分手段のひとつとしての生分解性、即ち、微生物等による分解も可能な、使用後廃棄処分のしやすい、捲縮性、弾性回復性に優れた捲縮繊維を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高分子量で十分な実用性をもった捲縮繊維成形性を有するポリエステルを得るための反応条件を種々検討した結果、生分解性を保持しつつ、実用上十分な高分子量を有する特定の脂肪族ポリエステルを得、これから成形された捲縮繊維は上記生分解性を有することはもちろん捲縮性、弾性回復性、風合いに優れ本発明を完成するに至った。
【0006】即ち、本発明の要旨は、(A)温度190℃、剪断速度1,000sec-1における溶融粘度が1.0×102 〜1.0×104 ポイズであり、融点が70〜190℃である脂肪族ポリエステルを主成分として押出成形されてなる捲縮繊維、(B)脂肪族ポリエステルが数平均分子量10,000以上であり、0.03〜3.0重量%のウレタン結合を含む(A)の捲縮繊維、(C)数平均分子量が5,000以上、融点が60℃以上の脂肪族ポリエステルプレポリマー100重量部に、0.1〜5重量部のジイソシアナートを反応させることにより得られる脂肪族ポリエステルを用いてなる(A)または(B)の捲縮繊維、(D)引張強度が2.0〜10g/d,捲縮率3〜20である(A)、(B)または(C)の捲縮繊維にある。以下、本発明の内容を詳細に説明する。
【0007】本発明でいう脂肪族ポリエステルとは、グリコール類と多塩基酸( またはその酸無水物)とから合成されるポリエステルを主成分とするものであり、分子量を高くするため、両端にヒドロキシル基を有する、比較的高分子量のポリエステルプレポリマーを選び、カップリング剤により、さらに反応させたものである。
【0008】従来から、末端基がヒドロキシル基である、数平均分子量が2,000〜2,500の低分子量ポリエステルプレポリマーをカップリング剤としてのジイソシアナートと反応させて、ポリウレタンとし、ゴム、フォーム、塗料、接着剤とすることは広く行われている。しかし、これらのポリウレタン系フォーム、塗料、接着剤に用いられるポリエステルプレポリマーは、無触媒で合成されうる最大限の、数平均分子量が2,000〜2,500の低分子量プレポリマーであり、この低分子量プレポリマー100重量部に対して、ポリウレタンとしての実用的な物性を得るためには、ジイソシアナートの使用量は10〜20重量部にも及ぶ必要があり、このように多量のジイソシアナートを150℃以上の溶融した低分子量ポリエステルに添加すると、ゲル化してしまい、通常の溶融成形可能な樹脂は得られない。従って、このような低分子量のポリエステルプレポリマーを原料とし、多量のジイソシアナートを反応させて得られるポリエステルは本発明の捲縮繊維用原料には用いえない。
【0009】またポリウレタンゴムの場合のごとく、ジイソシアナートを加えて、ヒドロキシル基をイソシアナート基に転換し、さらにグリコールで数平均分子量を増大する方法も考えられるが、使用されるジイソシアナートの量は前述のように実用的な物性を得るにはプレポリマー100重量部に対して10重量部以上であり上記と同様の問題がある。比較的高分子量のポリエステルプレポリマーを使用しようとすればそのプレポリマー合成に必要な重金属系の触媒が上記使用量のイソシアナート基の反応性を著しく促進して、保存性不良、架橋反応、分岐生成をもたらし、好ましくないことから、ポリエステルプレポリマーとして無触媒で合成されたものを使用しようとすれば数平均分子量は高くても2,500位のものが限界である。
【0010】本発明に用いられる脂肪族ポリエステルを得るためのポリエステルプレポリマーはその合成用触媒を含有する上記のような比較的高分子量のものであり、末端基が実質的にヒドロキシル基であり、数平均分子量が5,000以上、好ましくは10,000以上の比較的高分子量であり、融点が60℃以上の飽和脂肪族のポリエステルであり、グリコール類と多塩基酸(またはその無水物)とを触媒反応させて得られる。数平均分子量が5,000未満、例えば2,500程度であると、本発明で利用する0.1〜5重量部という少量のカップリング剤では、良好な物性を有する捲縮繊維用ポリエステルを得ることができない。数平均分子量が5,000以上のポリエステルプレポリマーは、ヒドロキシル価が30以下であり、少量のカップリング剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残存する触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量ポリエステルを合成することができる。
【0011】用いられるグリコール類としては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等があげられる。エチレンオキシドも利用することができる。これらのグリコール類は、併用してもよい。
【0012】グリコール類と反応して脂肪族のポリエステルを形成する多塩基酸(またはその酸無水物)には、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、などが一般に市販されており、本発明に利用することができる。多塩基酸(またはその酸無水物)は併用してもよい。
【0013】これらグリコール類および多塩基酸は脂肪族系が主成分であるが、少量の他成分たとえば芳香族系を併用してもよい。但し、他成分を導入すると生分解性が悪くなるため、20重量%以下、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0014】本発明に用いられる脂肪族ポリエステル用ポリエステルプレポリマーは、末端基が実質的にヒドロキシル基であるが、そのためには合成反応に使用するグリコール類および多塩基酸(またはその酸無水物)の使用割合は、グリコール類を幾分過剰に使用する必要がある。
【0015】比較的高分子量のポリエステルプレポリマーを合成するには、エステル化に続く脱グリコール反応の際に、脱グリコール反応触媒を使用することが必要である。脱グリコール反応触媒としては、例えばアセトアセトイル型チタンキレート化合物、並びに有機アルコキシチタン化合物等のチタン化合物があげられる。これらのチタン化合物は、併用もできる。これらの例としては、例えばジアセトアセトキシオキシチタン(日本化学産業(株)社製“ナーセムチタン”)、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等があげられる。チタン化合物の使用割合は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対して0.001〜1重量部、望ましくは0.01〜0.1重量部である。チタン化合物はエステル化の最初から加えてもよく、また脱グリコール反応の直前に加えてもよい。
【0016】さらに、数平均分子量が5,000以上、望ましくは10,000以上の末端基が実質的にヒドロキシル基であるポリエステルプレポリマーに、さらに数平均分子量を高めるためにカップリング剤が使用される。カップリング剤としては、ジイソシアナート、オキサゾリン、ジエポキシ化合物、酸無水物等があげられ、特にジイソシアナートが好適である。なお、オキサゾリンやジエポキシ化合物の場合はヒドロキシル基を酸無水物等と反応させ、末端をカルボキシル基に変換してからカップリング剤を使用することが必要である。ジイソシアナートはその種類には特に制限はないが、例えば次の種類があげられる。2,4−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナートと2,6−トリレンジイソシアナートとの混合体、ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、特に、ヘキサメチレンジイソシアナートが、生成樹脂の色相、ポリエステル添加時の反応性、等の点から好ましい。
【0017】これらカップリング剤の添加量は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対して0. 1〜5重量部、望ましくは0. 5〜3重量部である。0. 1重量部未満では、カップリング反応が不十分であり、5重量部を超えると、ゲル化が発生し易くなる。
【0018】添加は、ポリエステルプレポリマーが均一な溶融状態であり、容易に撹拌可能な条件下で行われることが望ましい。固形状のポリエステルプレポリマーに添加し、エクストルーダーを通して溶融、混合することも不可能ではないが、脂肪族ポリエステル製造装置内か、或は溶融状態のポリエステルプレポリマー(例えばニーダー内での)に添加することが実用的である。
【0019】本発明において使用される脂肪族ポリエステルは押出成形をして捲縮性を持つ繊維にするためには特定の溶融特性が要求される。即ち、温度190℃、剪断速度1,000sec-1における溶融粘度は1.0×102 〜1.0×104 ポイズであり、好ましくは2.0×102 〜6.0×103 ポイズ、3.0×102〜4.0×103 ポイズが特に好ましい。1.0×102 ポイズ未満では操作性が悪く、また十分な強度を持つ捲縮繊維が得られない。1.0×104 ポイズを超えるとノズルでの糸切れが生じ紡糸が困難となる。なお、溶融粘度の測定はノズル径が1.0mmであり、L/D=10のノズルを用い樹脂温度190℃で測定した剪断速度と見かけ粘度の関係のグラフより剪断速度1,000sec-1の時の粘度を求めた。
【0020】さらに、本発明において使用される脂肪族ポリエステルの融点は70〜190℃であることが必要であり、70〜150℃であることがより好ましく、特に80〜135℃が好ましい。70℃未満では耐熱性が不十分であり、190℃を超えるものは製造が難しい。融点が70℃以上で結晶性があれば、捲縮性、弾性回復性、風合いに優れた捲縮繊維とすることができ、カ−ペット、衣料用等として利用することが可能である。70℃以上の融点を得るためには、ポリエステルプレポリマーの融点は60℃以上であることが必要である。
【0021】本発明において使用される脂肪族ポリエステル中にウレタン結合を含む場合のウレタン結合量は0.03〜3.0重量%であり、0.05〜2.0重量%が好ましく、0.1〜1.0重量%が特に好ましい。ウレタン結合量はC13NMRにより測定され、仕込み量とよく一致する。0.03重量%未満ではウレタン結合による高分子量化の効果が少なく、成形加工性に劣り、3.0重量%を超えるとゲルが発生する。
【0022】本発明に係る捲縮繊維成形のため上記の脂肪族ポリエステルを使用するに際しては、必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等の他、滑剤、ワックス類、着色剤、結晶化促進剤等を併用できることは勿論である。すなわち、酸化防止剤としては、p−tブチルヒドロキシトルエン、p−tブチルヒドロキシアニソール等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤等、熱安定剤としては、トリフェニルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等、紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン等、滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸ナトリウム等、帯電防止剤としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アルキルアミン、アルキルアミン、アルキルアリルスルホネート、アルキルスルフォネート等、難燃剤として、ヘキサブロモシクロドデカン、トリス−(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、ペンタブロモフェニルアリルエーテル等があげられる。
【0023】本発明において用いられる脂肪族ポリエステルを主成分とする原料は、通常は溶融紡糸、空冷却、熱延伸により繊維化される。紡糸温度は170〜240℃、好ましくは180〜210℃である。融点近くでは紡糸切れが生じやすく、また240℃を超えると糸の揺れが大きくなるばかりなく成形時の操作性が甚だ悪くなる。延伸は加熱ロールにより延伸される。延伸温度は50〜100℃、好ましくは70〜90℃である。50℃未満では延伸性が極端に低下する。また100℃以上では延伸性が極端に低下するばかりでなく延伸切れが生じやすくなる。捲縮温度は60〜100℃、このましくは75〜90℃である。60℃未満では十分な捲縮率を持つ捲縮繊維が得られず、100℃以上では捲縮中に糸切れが多発する。
【0024】
【実施例】以下、本発明を実施例、比較例により説明する。
【0025】(実施例1)700Lの反応機を窒素置換してから、1,4−ブタンジオール183kg、コハク酸224kgを仕込んだ。窒素気流下に昇温を行い、195〜210℃にて3.0時間、更に窒素を停止して15〜5mmHgの減圧下にて3.5時間にわたり脱水縮合によるエステル化反応を行った。採取された試料は、酸価が6.3mg/g、数平均分子量(Mn)が5,200、また重量平均分子量(Mw)が10,100であった。引続いて、常圧の窒素気流下に触媒のテトライソプロポキシチタン34gを添加した。温度を上昇させ、温度215〜220℃で5〜0.2mmHgの減圧下にて7.5時間、脱グリコール反応を行った。採取された試料は数平均分子量(Mn)が18,600、また重量平均分子量(Mw)が50,300であった。このポリエステル(A1)は、凝縮水を除くと収量は339kgであった。
【0026】ポリエステル(A1)339kgを含む反応器にヘキサメチレンジイソシアナート4.07kgを添加し、180〜200℃で1時間カップリング反応を行った。粘度は急速に増大したが、ゲル化は生じなかった。ついで、抗酸化剤としてイルガノックス1010(チバガイギー社製)を1.70kgおよび滑剤としてステアリン酸カルシウムを1.70kgを加えて、更に30分間撹拌を続けた。この反応生成物をエクストルーダーにて水中に押出し、カッターで裁断してペレットにした。90℃で6時間、真空乾燥した後のポリエステル(B1)の収量は270kgであった。
【0027】得られたポリエステル(B1)は、僅かにアイボリー調の白色ワックス状結晶で、融点が110℃、数平均分子量(Mn)が29,500、重量平均分子量(Mw)が127,000、MFR(190℃)は9.2g/10分、オルトクロロフェノールの10%溶液の粘度は170ポイズ、温度190℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度は3.0×103 ポイズであった。平均分子量の測定は、Shodex GPC System−11(昭和電工社製ゲルクロマトグラフィー),溶媒はCF3 COONaのHFIPA5mmol溶液、濃度0.1重量%、検量線は昭和電工(株)製PMMA標準サンプルShodex Standard M−75で行った。
【0028】ポリエステル(B1)を用い、スクリュー径40mmφ、ノズル径0.6mmφ、68孔の押出機よりスクリュ−温度190℃、ヘッド温度200℃、ノズル温度205℃で溶融紡糸した。押し出された未延伸マルチフィラメントを収束剤をローラーで付与後、70℃で6倍に延伸し、80℃の加熱空気により捲縮ノズルをもちいて、捲縮加工を行い、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の強伸度を測定したところ、強度4.0g/d,伸度45%であった。なお、JIS L1036及びJIS L1074により捲縮率、捲縮弾性率を測定したところ、捲縮率13.2,捲縮弾性率80.5であった。そしてこの捲縮は60℃30分間の熱処理によっても変化がみられなかった。この捲縮繊維を土中に5ヶ月間埋めておいたところ、捲縮繊維の形はとどめていない程に分解変化していた。
【0029】(実施例2)ポリエステル(B1)を用い、スクリュー径40mmφ、ノズル径0.6mmφ、68孔の押出機よりスクリュー温度190℃、ヘッド温度200℃、ノズル温度205℃で溶融紡糸した。押し出された未延伸マルチフィラメントを収束剤をローラーで付与後、70℃で4倍に延伸し、80℃の加熱空気により捲縮ノズルをもちいて、捲縮加工を行い、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の強伸度を測定したところ、強度2.9g/d,伸度70%であった。なお、JIS L1036及びJIS L1074により捲縮率、捲縮弾性率を測定したところ、捲縮率10.7,捲縮弾性率71.5であった。そしてこの捲縮は60℃30分間の熱処理によっても変化がみられなかった。この捲縮繊維を土中に5ヶ月間埋めておいたところ、捲縮繊維の実用的強度、捲縮弾性率はなくなる程に分解変化していた。
【0030】(実施例3)ポリエステル(B1)を用い、スクリュー径40mmφ、ノズル径0.6mmφ、128孔の押出機よりスクリュー温度200℃、ヘッド温度210℃、ノズル温度200℃で溶融紡糸した。押し出された未延伸マルチフィラメントを収束剤をローラーで付与後、70℃で6倍に延伸し、80℃の加熱空気により捲縮ノズルをもちいて、捲縮加工を行い、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の強伸度を測定したところ、強度4.3g/d,伸度42%であった。なお、JIS L1036及びJIS L1074により捲縮率、捲縮弾性率を測定したところ、捲縮率17,捲縮弾性率90.4であった。そしてこの捲縮は60℃30分間の熱処理によっても変化がみられなかった。この捲縮繊維を土中に5ヶ月間埋めておいたところ、強伸度、捲縮弾性率ともに実用的値を持たない程度に分解変化していた。
【0031】(比較例1)ポリエステル(A1)を用い、(実施例1)と同様な条件で紡糸、延伸後、110℃の加熱空気で捲縮をおこなった。捲縮中に糸切れが発生し、安定した捲縮繊維が得られなかった。
【0032】
【発明の効果】本発明の、温度190℃、剪断速度1,000sec-1における溶融粘度が100×102 〜1.0×104 ポイズであり、融点が70〜190℃である脂肪族ポリエステルを主成分とするモノフィラメント、特に、数平均分子量が5,000以上、融点が60℃以上の脂肪族ポリエステルプレポリマー100重量部に、0.1〜5重量部のジイソシアナートを反応させることにより得られる、脂肪族ポリエステルを用いてなるモノフィラメントは、土壌等に埋めた場合生分解性を有し、焼却処理したとしても燃焼発熱量はポリエチレンやポリプロピレンと比較して低く、捲縮性、弾性回復性に優れており、カーペット,衣料用として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 温度190℃、剪断速度1,000sec-1における溶融粘度が1.0×102 〜1.0×104 ポイズであり、融点が70〜190℃である脂肪族ポリエステルを主成分として押出成形されてなる捲縮繊維。
【請求項2】 脂肪族ポリエステルが数平均分子量10,000以上であり、0.03〜3.0重量%のウレタン結合を含む請求項1に記載の捲縮繊維。
【請求項3】 数平均分子量が5,000以上、融点が60℃以上の脂肪族ポリエステルプレポリマー100重量部に、0.1〜5重量部のジイソシアナートを反応させることにより得られる、脂肪族ポリエステルを用いてなる請求項1または2記載の捲縮繊維。
【請求項4】 引張強度が2.0〜10g/d,捲縮率3〜20である請求項1ないし請求項3記載の捲縮繊維。

【公開番号】特開平7−11516
【公開日】平成7年(1995)1月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−117655
【出願日】平成4年(1992)5月11日
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)