説明

ポリエステル

【課題】植物由来物質を原料とするポリエステルの提供。
【解決手段】下記の一般式(I)、(II)又は(III):


(式中、Pdcは2−ピロン−4,6−ジイル基を表し、Rは、炭素数12〜30の活性水素を含まない芳香族系二官能性基を表し、R’はそれぞれ独立に、同一でも異なっていてもよく、炭素数6〜12の活性水素を含まない芳香族系二官能性基を表し、R”は炭素数1〜12の活性水素を含まず、ヘテロ原子を含んでいてもよい飽和炭化水素基を表し、XはO又はSO2を表す)で表される繰り返し単位を有するポリエステル、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来の原料を使用し、耐熱性、溶解性、溶融加工性などの性能を備えたポリエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広く用いられている樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等が知られており、各種容器等の成形品やゴミ袋、包装袋等に使用されている。しかしながら、これらの樹脂は石油を原料としているため、廃棄の際、焼却により地球上の二酸化炭素を増加させる原因となり、地球温暖化の一因となる。また、埋立処分しても、自然環境下ではほとんど分解されないため、半永久的に地中に残存する。
【0003】
近年、植物由来の原料や微生物により得られる植物由来樹脂が注目されている。これらの樹脂は、石油を原料とせず、また、焼却せずに埋設処理した場合は、微生物により分解されやすい。このような樹脂としては、ポリ乳酸やポリヒドロキシ酪酸等があり、将来性のある素材として、各種成形材料への用途開発が進められている。しかしながら、これら植物由来樹脂においても、でんぷん、コーンスターチ等の食物を原料としている為、食物と競合する可能性がある。
【0004】
一方、植物成分であるリグニンは、芳香族高分子化合物として植物細胞壁に普遍的に含まれているバイオマス資源であるが、化学構造が多様な成分で構成されていることや複雑な高分子構造を持つために、有効な利用技術が開発されていない。そのため製紙工程で大量に生成するリグニンは有効利用されることなく、重油の代替え品として燃焼されている。しかしながら近年、リグニン等の植物芳香族成分が、加水分解や酸化分解、加溶媒分解などの化学的分解法、超臨界水や超臨界有機溶媒による物理化学的分解法などにより、数種の低分子混合物に変換され、更に機能性プラスチック原料や化学製品の原料となり得る単一の中間物質3−カルボキシムコノラクトンに変換することが可能になった。そのことからリグニンを食物と競合しない植物由来樹脂の原料として有効利用する余地があるといえる。
【0005】
特開2006−111654号公報では、生分解性を有するエポキシ樹脂組成物が開示されている。しかしながら、使用されているエポキシ樹脂は、トリエチレングリコールジビニルエーテル等の植物由来のものではない化合物を原料としている。
【0006】
WO99/54376は、リグニン分解産物である2H−ピラン−2−オン−4,6−ジカルボン酸(PDC)にジオール類を重合させて得られるポリエステル及びその製造方法を開示している。しかしながら、現在使用されている各種合成樹脂の多くが石油由来のものであり、植物由来樹脂による代替の必要性は依然として存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−111654号公報
【特許文献2】WO99/54376
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、植物由来物質を原料とするポリエステルを提供し、環境負荷の少ないバイオマス樹脂のバリエーションを増大させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、有効な利用方法が未だ十分に確立されていないリグニンの分解産物のうち、2H−ピラン−2−オン−4,6−ジカルボン酸(以下、PDC)に着目し、これを骨格とする新規ポリエステルを合成したところ、当該ポリエステルが成形品の加工に有用な耐熱性、溶解性、溶融加工性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、(1)本発明は、下記の一般式(I)、(II)又は(III):
【化1】

(式中、
dcは2−ピロン−4,6−ジイル基を表し、
Rは、炭素数12以上、好ましくは炭素数12〜30の活性水素を含まない芳香族系二官能性基を表し、
R’はそれぞれ独立に、同一でも異なっていてもよく、炭素数6以上、好ましくは炭素数6〜12の活性水素を含まない芳香族系二官能性基を表し、
R”は炭素数1以上、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数6の活性水素を含まず、ヘテロ原子を含んでいてもよい飽和炭化水素基を表し、
XはO又はSO2を表す)
で表される繰り返し単位を有するポリエステル、を提供する。
(2)本発明は、下記の式
【化2】

(式中、nは1〜12の整数、好ましくは2〜8の整数、より好ましくは6である)で表される繰り返し単位を有する(1)のポリエステル、を提供する。
(3)本発明は、下記の式
【化3】

で表される繰り返し単位を有する(1)のポリエステル、を提供する。
(4)本発明は、下記の式
【化4】

で表される繰り返し単位を有する(1)のポリエステル、を提供する。
(5)本発明は、下記の式
【化5】

で表される繰り返し単位を有する(1)のポリエステル、を提供する。
(6)本発明は、下記の式
【化6】

で表される繰り返し単位を有する(1)のポリエステル、を提供する。
(7)本発明は、下記の式
【化7】

で表される繰り返し単位を有する(1)のポリエステル、を提供する。
(8)本発明は、下記の式
【化8】

で表される繰り返し単位を有する(1)のポリエステル、を提供する。
(9)本発明は、下記の式
【化9】

で表される繰り返し単位を有する(1)のポリエステル、を提供する。
(10)本発明は、下記の式
【化10】

で表される繰り返し単位を有する(1)のポリエステル、を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、植物由来のPDCを利用することで、化石資源を原料とすることなくポリエステルを製造することが可能となり、また、本発明のエステルは従来のものと同程度又はそれ以上の性能を有する成形体の提供を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリエステルの骨格となるPDCは、以下の構造を有する。
【化11】

【0013】
PDCはリグニン等の植物芳香族成分の生分解最終中間体であり、工業的スケールで製造できることが報告されている(例えば、特開2005-278549号公報参照)。PDCは機能性プラスチック原料や化学製品の原料として有用であることが期待される。
【0014】
本発明の一般式(I)、(II)又は(III)において:
Rは、炭素数12以上、好ましくは炭素数12〜30の活性水素を含まない芳香族系二官能性基を表す。このような芳香族系二官能性基の例としては、特に限定することなく、置換又は非置換のビスフェノール、ビナフトール、ビフェニル、フェニルナフタレンなどの二官能性基であってよい。置換基としては特に限定されるものではないが、炭素数1〜7のアルキル、アルキニル、アルケニルや、ハロゲン、シアノなどであってよい。
R’はそれぞれ独立に、同一でも異なっていてもよく、炭素数6以上、好ましくは炭素数6〜30の活性水素を含まない芳香族系二官能性基を表す。このような芳香族系二官能性基の例としては、特に限定することなく、置換又は非置換のベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェニルナフタレン、ペンタレン、インデン、アズレン、ヘプタレン、インダンセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、ビスフェノール、ビナフトール、ビフェニル、フェニルナフタレンなどの二官能性基であってよい。置換基としては特に限定されるものではないが、炭素数1〜7のアルキル、アルキニル、アルケニルや、ハロゲン、シアノなどであってよい。
R”は炭素数1以上、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数6の活性水素を含まず、ヘテロ原子を含んでいてもよい飽和炭化水素基を表す。このような飽和炭化水素基の例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、メチルエチレン、エチルエチレン、メチルプロピレンなどが挙げられる。好ましくは、直鎖の飽和炭化水素基、例えば、ヘキサメチレンである。
【0015】
本発明のポリエステルの製造の例としては、一般的なポリエステルの製造法を適用することができる。例えば、遊離のPDCを原料として使用する場合には、ジオール成分とPDCとを反応器に入れて加熱し、反応により生成する水を系外に留去させることによりポリエステル重合体を製造できる。この反応は必ずしも触媒を必要としないが、触媒を用いることにより反応を促進させることができる。触媒としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、チタン、コバルト、マンガンなどの金属の酢酸塩、炭酸塩、水酸化物、アルコキシドなどが挙げられる。反応温度は120〜300℃程度、好ましくは160〜300℃程度である。反応圧力は、通常、常圧であるが、水及び過剰のジオール成分の留去を促進させるため減圧下でエステル化反応を行ってもよい。ジオール成分とPDCとのモル比は約1であってもよいが、高分子量のポリエステルを得るため、ジオール成分を過剰量用いてもよい。
【0016】
またPDCのエステルを原料として用いる場合には、ジオール成分とPDCエステルと触媒とを反応器に仕込み、反応で生成するアルコールを系外に留去させることによりポリエステルを製造できる。PDCのエステルとしては、PDCのメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステルなどを使用できる。前記触媒としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、鉛、チタン、コバルト、マンガン、スズ、アンチモン、ゲルマニウムなどの金属のカルボン酸塩、炭酸塩、水酸化物、アルコキシド、酸化物などが挙げられる。反応温度は120〜300℃程度、好ましくは160〜300℃程度である。反応圧力は、常圧であってもよいが、アルコールの留去を促進させるため減圧下でエステル化反応を行ってもよい。また、ジオール成分とPDCエステルとのモル比は約1であってもよいが、高分子量のポリエステルを得るため、ジオール成分を過剰量用いてもよい。
【0017】
PDCの塩化物などのPDCハロゲン化物を原料に用いてポリエステル重合体を得る方法としては、ジオール成分とPDCハロゲン化物とを高温無溶媒下で反応させ、生成するハロゲン化水素を留去する方法、ジオール成分とPDCハロゲン化物とを溶媒中低温で反応させ、生成するハロゲン化水素を留去するか又は塩基性物質により中和する方法などが挙げられる。反応温度は0〜280℃程度の範囲から適宜選択できる。
【0018】
前記方法において用いる溶媒としては、反応に不活性であれば特に限定されず、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;1,3−ジメチル−2−イミダゾリンなどのイミダゾリン類;ヘキサンメチルホスホルアミドなどが例示できる。また、前記塩基性物質としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどの第3級アミン;ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリンなどの塩基性含窒素複素環化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属塩などが挙げられる。なお、前記N−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒は塩基性物質としても機能する。重合により生成したポリエステルは、濾過、濃縮、沈殿、晶析、冷却固化などの慣用の方法により単離できる。
【0019】
ポリエステルの成形加工はポリエステルチップを溶媒に溶解させてから成形処理を行なう溶解加工法と、ポリエステルチップを加熱溶融し、成形処理を行なう溶融成形法がある。溶解加工法による成形加工性を有するには、ポリエステル重合体が所定の溶媒に対して溶解性を示す必要がある。溶融成形法による成形加工性を有する場合、溶媒を使用しなくてもよいため、環境に優しいという面で有利である。溶解加工性に優れ、しかも耐熱性に優れた条件を満たすポリエステルであるためには、成形品の耐熱性を左右する熱分解温度が高く、しかも溶融成形性を確保するためにガラス転移温度が熱分解温度よりも十分に低い必要がある。
本発明に係るポリエステルは熱分解温度(5%重量減少温度)が高く、しかもガラス転移温度がそれに比して低いという特徴を有し、したがって耐熱性に優れ、しかも溶解加工性も有するという利点を示すことができる。
【0020】
本発明のポリエステルの分子量は特に制限されず、用途により異なるが、通常数平均分子量で1万〜100万程度、好ましくは2万〜20万程度、より好ましくは5万〜10万程度であろう。
【0021】
本発明のポリエステルには、各種添加剤、例えば酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、保存安定化剤、可塑剤、滑剤、充填剤、濡性改質剤、塗面改質剤などを適宜配合してよい。
【0022】
以下の実施例を用いて、本発明を更に具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、得られた重合体の物性は、以下の方法により測定した。(1)ガラス転移温度:示差走査熱量法(DSC法)にて昇温速度10℃/分で昇温し、測定した。(2)熱重量:熱重量分析(TGA)計(Rigaku製、Thermo plus TG8120)により、窒素雰囲気下、50℃から昇温速度10℃/分で昇温した時の初期重量から減少した重量の温度を測定した。
【実施例】
【0023】
実施例1
【化12】

PDC10.0g、塩化チオニル150ml、ジメチルホルムアミド0.3ml を還流管付きフラスコ中でかき混ぜながら1時間沸点還流させ、溶媒を減圧溜去してPDC の酸クロリド化体(PDC-Cl と略)を定量的に得た。
PDC-Cl 175mg(0.785mmol)のジクロロメタン(DCM と略)15ml 溶液に、p−ヒドロキシベンゾイックアシッド+1,6−ジブロモヘキサン294mg(0.820mmol)、水酸化ナトリウム66.0mg(1.65mmol)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド15.0mg、水5.0ml を加え、蓋をしたガラス容器中にて1500rpm程度に激しく電磁攪拌しながら4時間反応させた。
DCM10ml を加えて有機相を分離し、10ml ずつの水で8回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧溜去し、残渣をDCM5ml に溶解して、攪拌している200ml のメタノール中に滴下した。白色沈殿をろ集、メタノールで洗浄、真空乾燥して、式II1のポリエステルを白色粉末として177mg(収率42%)得た。NMR スペクトル(δ ,ppm CDCl3中)PDC 環プロトン7.81(s, 1H)および 7.43(s, 1H) , p−ヒドロキシベンゾイックアシッド+1,6−ジブロモヘキサン骨格のオルト-位プロトン7.24-7.31(m, 4H) , p−ヒドロキシベンゾイックアシッド+1,6−ジブロモヘキサン骨格のメタ-位プロトン 8.11-8.15(m,4H)。IR スペクトル(KBr ペレット,cm-1)C=O 伸縮1750、ベンゼン環振動1503、−CO−O−対称伸縮 1278、−CO−O−逆対称伸縮1160。熱重量分析/示差熱測定(10℃/min)Td5(5%重量減少温度)=331℃、 Tg(ガラス転移温度)=74℃。ゲル浸透クロマトグラフィー(クロロホルム,PSt スタンダード)より数平均分子量=1.6 万、分子量分散=2.2。クロロホルム、DCM、ベンゼン、テトラヒドロフランなどに可溶。
【0024】
実施例2
【化13】

実施例1のp−ヒドロキシベンゾイックアシッド+1,6−ジブロモヘキサンの代わりにビスフェノール−Aを188mg(0.825mmol)用いたほかは実施例1とまったく同様にして、式I2のポリエステルを195mg(収率66%)得た。NMR スペクトル(δ ,ppm CDCl3 中) PDC環プロトン7.78(s, 1H)および 7.39(s, 1H) , ビスフェノール−A骨格のオルト-位プロトン7.28-7.32(m, 4H) , ビスフェノール−A骨格のメタ-位プロトン 7.08-7.15(m, 4H) ,メチル基 1.66-1.71(m, 6H)。IR スペクトル(KBr ペレット,cm-1)C=O 伸縮1745、ベンゼン環振動1495、−CO−O−対称伸縮 1253、−CO−O−逆対称伸縮1200。熱重量分析/示差熱測定(10℃/min)Td5(5%重量減少温度)=310℃、 Tg(ガラス転移温度)=164℃。
ゲル浸透クロマトグラフィー(クロロホルム,PSt スタンダード)より数平均分子量=2.3万、分子量分散=2.4。クロロホルム、DCM、ベンゼン、テトラヒドロフランなどに可溶。
【0025】
実施例3
【化14】

実施例1のp−ヒドロキシベンゾイックアシッド+1,6−ジブロモヘキサンの代わりに1,3−ビス[2−(4ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼンを321mg(0.881mmol)用いたほかは実施例1とまったく同様にして、式I3のポリエステルを180mg(収率41%)得た。NMR スペクトル(δ ,ppm CDCl3 中) PDC 環プロトン7.79-7.83(m,1H)および 7.39-7.41(m, 1H) , 1,3−ビス[2−(4ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン骨格の4ヒドロキシフェニル基のオルト-位プロトン7.21-7.28(m, 4H) , メタ-位、および1,3−ビス[2−(4ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン骨格のベンゼン環のオルト、パラ位プロトン 7.09-7.16(m, 7H) ,1,3−ビス[2−(4ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン骨格のベンゼン環のメタ-位プロトン 7.01-7.04(m,1H) ,メチル基 1.54-1.80(m, 12H)。IR スペクトル(KBr ペレット,cm-1)C=O 伸縮1748、ベンゼン環振動1505、−CO−O−対称伸縮 1258、−CO−O−逆対称伸縮1203。熱重量分析/示差熱測定(10℃/min)Td5(5%重量減少温度)=317℃、 Tg(ガラス転移温度)=126℃。ゲル浸透クロマトグラフィー(クロロホルム,PSt スタンダード)より数平均分子量=2.3 万、分子量分散=2.6。クロロホルム、DCM、ベンゼン、テトラヒドロフランなどに可溶。
【0026】
実施例4
【化15】

実施例1のp−ヒドロキシベンゾイックアシッド+1,6−ジブロモヘキサンの代わりに(R)−(+)−ビ−2−ナフトールを242mg(0.856mmol)用いたほかは実施例1とまったく同様にして、式I4のポリエステルを144mg(収率41%)得た。NMR スペクトル(δ ,ppm CDCl3 中)7.05-7.60(m, 8H), 7.65-8.12(m, 6H)。IR スペクトル(KBrペレット,cm-1)C=O 伸縮1754、ベンゼン環振動1559、−CO−O−対称伸縮 1250、−CO−O−逆対称伸縮1219。熱重量分析/示差熱測定(10℃/min)Td5(5%重量減少温度)=363℃、 Tg(ガラス転移温度)=207℃。ゲル浸透クロマトグラフィー(クロロホルム,PSt スタンダード)より数平均分子量=1.5 万、分子量分散=2.6。クロロホルム、DCM、ベンゼン、テトラヒドロフランなどに可溶。
【0027】
実施例5
【化16】

実施例1のp−ヒドロキシベンゾイックアシッド+1,6−ジブロモヘキサンの代わりに(S)−(−)−ビ−2−ナフトールを217mg(0.758mmol)用いたほかは実施例1とまったく同様にして、式I5のポリエステルを45mg(収率14%)得た。尚、式I5のポリエステル構成単位は式I4のポリエステルの構成単位の光学異性体である。NMR スペクトル(δ ,ppm CDCl3 中)7.05-7.60(m, 8H), 7.65-8.12(m, 6H)。IR スペクトル(KBrペレット,cm-1)C=O 伸縮1757、ベンゼン環振動1563、−CO−O−対称伸縮 1246、−CO−O−逆対称伸縮1214。熱重量分析/示差熱測定(10℃/min)Td5(5%重量減少温度)=360℃、 Tg(ガラス転移温度)=204℃。ゲル浸透クロマトグラフィー(クロロホルム,PSt スタンダード)より数平均分子量=1.2 万、分子量分散=2.8。クロロホルム、DCM、ベンゼン、テトラヒドロフランなどに可溶。
【0028】
実施例6
【化17】

実施例1のp−ヒドロキシベンゾイックアシッド+1,6−ジブロモヘキサンの代わりに4,4‘−(1,3−ヒドロキシブチルジエン)ジフェノールを221mg(0.816mmol)用いたほかは実施例1とまったく同様にして、式I6のポリエステルを137mg(収率42%)得た。NMR スペクトル(δ ,ppm CDCl3 中) PDC 環プロトン7.78(s, 1H)および 7.39(s, 1H) , 4,4‘−(1,3−ヒドロキシブチルジエン)ジフェノール骨格のオルト-位プロトン7.28-7.32(m, 4H) , 4,4‘−(1,3−ヒドロキシブチルジエン)ジフェノール骨格のメタ-位プロトン 7.08-7.15(m, 4H) ,メチル基 1.66-1.71(m, 9H)。IR スペクトル(KBr ペレット,cm-1)C=O伸縮1745、ベンゼン環振動1495、−CO−O−対称伸縮 1253、−CO−O−逆対称伸縮1200。熱重量分析/示差熱測定(10℃/min)Td5(5%重量減少温度)=330℃。ゲル浸透クロマトグラフィー(クロロホルム,PSt スタンダード)より数平均分子量=2.5 万、分子量分散=2.7。クロロホルム、DCM、ベンゼン、テトラヒドロフランなどに可溶。
【0029】
実施例7
【化18】

実施例1のp−ヒドロキシベンゾイックアシッド+1,6−ジブロモヘキサンの代わりに4,4−ジヒドロキシジフェニルエーテルを169.3mg(0.837mmol)用いたほかは実施例1とまったく同様にして、式III7のポリエステルを202mg(収率72%)得た。
NMR スペクトル(δ ,ppm DMSO 中) PDC 環プロトン7.62(s, 1H)および 7.28(s, 1H)
4,4−ジヒドロキシジフェニルエーテル骨格のオルト-位プロトン7.10-7.45(m, 4H) , 4,4−ジヒドロキシジフェニルエーテル骨格のメタ-位プロトン 6.70-7.02(m, 4H)。IR スペクトル(KBr ペレット,cm-1)C=O 伸縮1738、ベンゼン環振動1501、−CO−O−対称伸縮1222、−CO−O−逆対称伸縮1101。熱重量分析/示差熱測定(10℃/min)Td5(5%重量減少温度)=221℃。ゲル浸透クロマトグラフィー(DMF,PSt スタンダード)より数平均分子量=2.1 万、分子量分散=2.6。DMSO、DMF などに可溶。DCM に不溶。
【0030】
実施例8
【化19】

実施例1のp−ヒドロキシベンゾイックアシッド+1,6−ジブロモヘキサンの代わりにビスフェノール−Sを211.4mg(0.845mmol)用いたほかは実施例1とまったく同様にして、式III8のポリエステルを263mg(収率89%)得た。NMR スペクトル(δ ,ppm CDCl3 中) PDC 環プロトン8.02-8.04(m, 1H)および 7.80-7.82(d, 1H) , ビスフェノール−S骨格のオルト-位プロトン7.60-7.66(m, 4H) , ビスフェノール−S骨格のメタ-位プロトン 8.14-8.16(m, 4H)。IR スペクトル(KBr ペレット,cm-1)C=O 伸縮1748、ベンゼン環振動1488、−CO−O−対称伸縮 1200、−CO−O−逆対称伸縮 1253。熱重量分析/示差熱測定(10℃/min)Td5(5%重量減少温度)=244℃、 Tg(ガラス転移温度)=268℃。ゲル浸透クロマトグラフィー(DMF,PSt スタンダード)より数平均分子量=2.5 万、分子量分散=2.4。DMSO、DMF などに可溶。DCM に不溶。
【0031】
実施例9
【化20】

実施例1のp−ヒドロキシベンゾイックアシッド+1,6−ジブロモヘキサンの代わりに9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを300mg(0.925mmol)用いたほかは実施例1とまったく同様にして、式I9のポリエステルを317mg(収率68%)得た。NMR スペクトル(δ ,ppm CDCl3 中) PDC 環プロトン7.76(s, 1H)および 7.35(m,1H) , 9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン骨格のオルト-位プロトン7.78-7.82(m, 4H) , 9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン骨格のメタ-位プロトン 7.06-7.10(m, 4H) , 9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン骨格のフルオレン骨格の1 位プロトン7.36-7.42(m, 4H) , 9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン骨格のフルオレン骨格の2 位プロトン7.28-7.32(m, 4H)。IR スペクトル(KBrペレット,cm-1)C=O 伸縮1748、ベンゼン環振動1501、−CO−O−対称伸縮 1251、−CO−O−逆対称伸縮1226。熱重量分析/示差熱測定(10℃/min)Td5(5%重量減少温度)=356℃、 Tg(ガラス転移温度)=256℃。ゲル浸透クロマトグラフィー(DMF,PStスタンダード)より数平均分子量=1.3 万、分子量分散=2.8。DMSO、DMF などに可溶。
DCM に不溶。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のポリエステルは、バイオマス由来の原料を使用し、耐熱性、溶解性、溶融加工性などの性能を備える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)、(II)又は(III):
【化1】

(式中、
dcは2−ピロン−4,6−ジイル基を表し、
Rは、炭素数12〜30の活性水素を含まない芳香族系二官能性基を表し、
R’はそれぞれ独立に、同一でも異なっていてもよく、炭素数6〜12の活性水素を含まない芳香族系二官能性基を表し、
R”は炭素数1〜12の活性水素を含まず、ヘテロ原子を含んでいてもよい飽和炭化水素基を表し、
XはO又はSO2を表す)
で表される繰り返し単位を有するポリエステル。
【請求項2】
下記の式
【化2】

(式中、nは1〜12の整数、好ましくは2〜8の整数、より好ましくは6である)で表される繰り返し単位を有する、請求項1記載のポリエステル。
【請求項3】
下記の式
【化3】

で表される繰り返し単位を有する、請求項1記載のポリエステル。
【請求項4】
下記の式
【化4】

で表される繰り返し単位を有する、請求項1記載のポリエステル。
【請求項5】
下記の式
【化5】

で表される繰り返し単位を有する、請求項1記載のポリエステル。
【請求項6】
下記の式
【化6】

で表される繰り返し単位を有する、請求項1記載のポリエステル。
【請求項7】
下記の式
【化7】

で表される繰り返し単位を有する、請求項1記載のポリエステル。
【請求項8】
下記の式
【化8】

で表される繰り返し単位を有する、請求項1記載のポリエステル。
【請求項9】
下記の式
【化9】

で表される繰り返し単位を有する、請求項1記載のポリエステル。
【請求項10】
下記の式
【化10】

で表される繰り返し単位を有する、請求項1記載のポリエステル。

【公開番号】特開2011−241271(P2011−241271A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113254(P2010−113254)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【出願人】(501186173)独立行政法人森林総合研究所 (91)
【Fターム(参考)】