説明

ポリエチレンを含む混合物から製造される単層回転成形物品

【課題】回転成形(rotomoulded)で得られる単層の物品。
【解決手段】この単層物品はポリエチレンと、官能化ポリオレフィンと、ポリエーテルエステル、飽和ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリアミドの中から選択される一種または複数の他の成分とを混合したブレンドを用いて製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンと、ポリエーテルエステル、飽和ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリアミドの中から選択される一種または複数の他の成分とを混合したブレンドを用いて製造される、回転成形(rotomoulded)で得られる単層の物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転成形(rotomoulding)で使用されるポリマーの80%以上はポリエチレンである。その理由は、ポリエチレンが加工中の熱劣化に対して優れた耐久性を示し、研摩(grinding)が容易で、流動性および低温衝撃性に優れているためである。
この回転成形は簡単なものから複雑なものまで、中空なプラスチック製品を製造するのに使用されている。回転成形では種々の材料、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート・ポリアミド、ポリ塩化ビニール(PVC)を用いることができる。直鎖低密度ポリエチレンが好ましくは使われることは例えば下記文献に記載されている。
【非特許文献1】D. Annechini、E. TakacsおよびANTEC、第1巻、2001のJ. Vlachopoulos、「回転成形でのメタロセンポリエチレンの新しい結果」
【0003】
回転成形では一般にチーグラー‐ナッタ触媒を用いて製造されたポリエチレンが用いられているが、メタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンの方が望ましい。その理由は分子分布の幅が狭く、衝撃特性に優れ、加工サイクル時間が短くなるためである。
【0004】
しかし、従来のメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンは収縮およびメクレ(warpage)が大きく(下記文献参照)、そのままでは白色で、用途によっては問題になる。
【非特許文献2】ANTEC、第1巻、2001
【0005】
回転成形では例えば下記文献に記載のようなプラストエラストメリック(plastoelastomeric)な組成物も使用できるが、混合および加硫の複雑な加工階段を必要とする。
【特許文献1】米国特許第US-5457159号明細書
【0006】
下記文献には、単一モノマーから「ワンポット」重合法で製造した互いに異なる制御されたミクロ構造の鎖を有する半-結晶性ポリオレフィンを含むポリマーアロイを回転成形で使用することが開示されている。
【特許文献2】米国特許第US-6,124,400号明細書
【0007】
このポリマーアロイの重合は有機金属触媒先駆物質と、カチオン形成共触媒と、クロスオーバー試薬とから成る複雑な触媒系を必要とする。
【0008】
従って、完成品の最終特性を改善するために、ポリエチレンと、それに類似または類似していない他の材料の一種または複数の樹脂との混合物から単層の回転成形品を製造することが望まれている。
【0009】
例えば、ポリエーテルエステルの衝撃緩衝性および耐衝撃性とポリエチレンの食品接触許容性および品質とを組合せること、例えば低温で優れた耐衝撃性と低コストとを組合せることが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、優れたバリアー性を有する物品を回転成形で製造することにある。
本発明の他の目的は、優れた衝撃吸収特性を有する物品を回転成形で作ることにある。
本発明のさらに他の目的は、追加の部品を容易に接着することができる物品を回転成形で作ることにある。
本発明のさらに他の目的は、ソストタッチ(柔らかな触覚)を有する物品を回転成形で作ることにある。
本発明のさらに他の目的は、疎水性または親水性の特性を有する物品を回転成形で作ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は下記(a)〜(c)の混合物(ブレンド)から回転成形によって製造された単層物品を開示する:
(a) 10〜99.9重量%のポリエチレン、
(b) 0.1〜90重量%のポリエーテルエステルまたは飽和ポリエステルまたはポリカーボネートまたはポリアミドまたはエチレン-酢酸ビニル(EVA)の中から選択される一種または複数の樹脂(必要に応じてマイナー成分が混合されていてもよい)、
(c)0〜20重量%の官能化されたポリオレフィン。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい実施例では、上記混合物がメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンを少なくとも75重量%含む。
上記の官能化されたポリオレフィンは、官能化されたポリエチレンまたはグラフトしたポリエチレンまたはアイオノマーの中から選択するのが好ましく且つ0.5〜20重量%の量で存在するのが好ましい。
【0013】
上記混合物はポリエチレン樹脂と、ポリエーテルエステルまたは飽和ポリエステルまたはポリカーボネートまたはポリアミドの中から選択される一種または複数の他の樹脂および官能化されたポリオレフィンを共押出しして得られる標準的なペレットとして提供される。この標準的ペレットをさらに粉砕して粉末またはマイクロペレットにすることもできる。
【0014】
本発明の回転成形物品は追加の層を任意の数だけ含むことができる。
ポリエチレン(PE)はチーグラー−ナッタ触媒系またはメタロセン触媒系またはこれらの組合せをベースにしたもので作るのが好ましい。
本発明で使われるポリエーテルエステル、飽和ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリアミドは、ポリエーテル-ブロックコポリアミド、熱可塑性ポリウレタンおよびフルオロポリマから成る群の中から選択されるマイナー成分をさらに含むことができる。マイナー成分とはその成分が50重量%未満であることを意味する。
【0015】
ポリエーテルエステルはポリエステルブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーで、典型的にはポリエーテルジオールの残基であるソフトなポリエーテルブロックと、一般に少なくとも一つのジカルボン酸と少なくとも一つの鎖延長用の短いジオール単位との反応で得られるハードセグメント(ポリエステル・ブロック)とから成る。一般に、ポリエステルブロックとポリエーテルブロックは酸の酸官能基とポリエーテルジオールのOH官能基との反応で生じるエステル結合を介して連結される。短鎖で延びたジオールはネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールおよび式:HO(CH2)nOHの脂肪族グリコール(ここで、nは2〜10の整数)から成る群の中から選択できる。二酸は8〜14の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸であるのが好ましい。芳香族ジカルボン酸の50mol%以下を8〜14の炭素原子を有する少なくとも一つの他の芳香族ジカルボン酸に代えるか、および/または、20mol%以下を2〜12の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸に代えることができる。
【0016】
芳香族ジカルボン酸の例はテレフタル酸、イソフタル酸、ジ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ジフェニレンジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン酸、エチレンビス(p-安息香酸)、1,4-テトラメチレンビス(p-オキシ安息香酸)、エチレンビス(パラオキシ安息香酸)および1,3-トリメチレンビス(p-オキシ安息香酸)である。グリコールの例としてはエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレングリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,8-オクタメチレングリコール、1,10-デカメチレングリコールおよび1,4-シクロヘキシレンジメタノールが挙げられる。ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーの例は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)またはポリテトラメチレングリコール(PTMG)のようなポリエーテルジオールから誘導されるポリエーテルブロックと、テレフタル酸のようなジカルボン酸単位と、グリコール(エタンジオール)または1,4-ブタンジオール単位とを有するコポリマーである。ポリエーテルと二酸との鎖連結が柔らかいセグメントを形成し、グリコールまたはブタンジオールと二酸との鎖連結がコポリエーテルエステルのハードセグメントを形成する。このコポリエーテルエステルは例えば下記文献に記載されている。
【特許文献3】欧州特許第EP 402 883号公報
【特許文献4】欧州特許第EP 405 227号公報
【0017】
これらのポリエーテルエステルは熱可塑性エラストマーであり、可塑剤を含むことができる。ポリエーテルエステルは例えばデュポン社からHytrel(登録商標)の名称で入手できる。
飽和ポリエステル樹脂はジカルボン酸とジヒドロキシアルコールとの重縮合物である。これらは特別な種類のアルキド樹脂で、通常脂肪酸または乾性油で変性されず、室温で圧力を加えずに触媒を用いて硬化できる。飽和ポリエステルの好ましい例はポリアルキレンテレフタレート、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)である。飽和ポリエステルは例えばCyclics社からCyclics CBT(登録商標)の名称で入手できる。
【0018】
ポリカーボネート(PC)はジヒドロキシ化合物と、カルボン酸誘導体または炭酸エステルジエステルから得られる熱可塑性樹脂である。好ましいポリカーボネートはビスフェノールAとホスゲンとの縮合物である。
ポリアミドは下記の縮合物である:
(1)一種または複数のアミノ酸、例えばアミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸および12-アミノドデカン酸または一種または複数のラクタム、例えばカプロラクタム、エナントラクタムおよびラウリルラクタム;
(2)一種または複数のジアミンの塩または混合物、例えばヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタ−キシリレンジアミン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタンおよびトリメチルヘキサメチレンジアミンと、二酸、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、コルク酸、セバシン酸およびドデカンジカルボン酸。
ポリアミドの例としてPA 6およびPA 6-6を挙げることができる。
【0019】
コポリアミドを使用することも好ましい。コポリアミドの例としては少なくとも2つのα、ω−アミノカルボン酸または2つのラクタムまたは1種のラクタムと1種のα、ω−アミノカルボン酸との縮合で得られるコポリアミドが挙げられる。例としては少なくとも一種のα、ω−アミノカルボン酸(またはラクタム)と、少なくとも一種のジアミンと、少なくとも一種のジカルボン酸との縮合で得られるコポリアミドを挙げることができる。コポリアミドはPA 6/12およびPA 6/6-6から選択するのが好ましい。
【0020】
より一般的には、本発明の混合物ではアミン末端を有する材料を使用でき、これはポリアミドジアミン(PAジNH2)から選択するのが好ましい。ポリアミドはその製造方法および/または使用する連鎖制限剤に応じて酸末端基またはアミン末端基が過剰であるか、選択した連鎖制限剤の構造から生じるアルキル、その他の末端基、例えばアリール、その他の基をある比率で含むこともある。酸末端基の過剰は二酸の鎖連鎖制限剤から生じる。アミン末端基の過剰はジアミン鎖連鎖制限剤から生じる。第一アミンの鎖連鎖制限剤からはアルキル末端およびアミン末端を有するポリアミド鎖ができる。
【0021】
本発明の混合物で使用可能なポリアミドは衝撃性が改質されたポリアミドでもよい。例えば、可撓性改質剤は官能化されたポリオレフィン、グラフトされた脂肪族ポリエステル、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むグラフトされていてもよいコポリマーおよびエチレンとアルキル(メタ)アクリレートおよび/または飽和ビニルカルボン酸エステルとのコポリマーにすることができる。改質剤はポリアミドグラフト鎖またはポリアミドオリゴマーを有するポリオレフィン鎖、従ってポリオレフィンとポリアミドとに親和性を有するポリオレフィン鎖にすることもできる。可撓性改質剤はブロック共重合体でもよい。
【0022】
発泡ポリアミドを使用することもできる。
ポリアミド混合物はポリウレタンまたはポリアミドとエチレン/ビニルアルコールコポリマー(EVOH)とを含む組成物、より一般的には、ポリアミドとバリヤー層とを含む任意の組成物にするのが好ましい。
【0023】
ポリエーテル−ブロックコポリアミドは下記一般式を有する:
HO-[C(O)-PA-C(O)-O-PEth-O]n-H (I)
(ここで、PAはポリアミドセグメントを表し、PEthはポリエーテル・セグメントを表す)
ポリアミドセグメントは例えばPA 6、PA 66、PA 11またはPA 12にすることができる。ポリエーテルセグメントは例えばポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)またはポリテトラメチレングリコール(PTMG)にすることができる。ポリアミド単位の分子量Mnは一般に300〜15,000の間にある。ポリエーテル単位の分子量Mnは一般に100〜6000の間にある。この材料は例えばアルケマ(Arkema)社からペバックス(Pebax)(登録商標)の商品名で市販されている。
【0024】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーは一般に反応性末端基を有するポリエーテルブロックと反応性末端基を有するポリアミドブロックとの縮重合、例えば下記の縮重合で得られる:
1)ジカルボン酸鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックとジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックとの縮重合、
2)ポリエーテルジオールとよばれる、ジヒドロキシ化された脂肪族α、ω−ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化および水素化で得られる、ジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックとジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとの縮重合、
3)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとポリエーテルジオールとの縮重合。この場合に得られる製品がポリエーテルエステルアミドである。
【0025】
ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖停止用カルボキシルジアシッドの存在下でポリアミド先駆物質を縮合して得られる。
ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖停止用ジアミンの存在下でポリアミド先駆物質を縮合して得られる。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーはランダムに分布した単位を含むことができる。これらのポリマーはポリエーテルとポリアミドブロックの先駆物質との同時反応で製造できる。例えば、ポリエーテルジオールと、ポリアミド先駆物質と、連鎖停止用ジアシッドとを一緒に反応させることができる。基本的にポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有する種々の長さのポリマーが得られるが、それに加えて、ランダムに反応したポリマー鎖に沿ってランダムに分布した種々の反応物も得られる。
【0026】
ポリエーテルジアミン、ポリアミド先駆物質および連鎖停止用ジアシッドを一緒に反応させることができる。得られるポリマーは本質的に種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するが、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布したランダムに反応した種々の反応物も含まれる。ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するこれらのコポリマーのポリエーテルブロックの量はコポリマーの重量の10〜70%、好ましくは35〜60%であるのが好ましい。
【0027】
ポリエーテルジオールブロックはそのまま使用されるか、カルボキシル末端基を有するポリアミドブロックと共重縮合されるか、アミン化してポリエーテルジアミンに変換し、カルボキシル末端を有するポリアミドブロックと縮合することができる。さらに、ポリアミド先駆物質およびジアシッド連鎖停止剤とブレンドして、ランダムに分布した単位を有するポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーにすることもできる。
【0028】
第2のタイプのポリアミドブロック以外の場合のポリアミドブロックの数平均モル質量Mnは一般に300〜15,000の間にある。ポリエーテルブロックの質量Mnは一般に100〜6000の間にある。
【0029】
ポリウレタンが存在する場合のポリウレタンは一般に柔らかいポリエーテルブロック(これは一般にポリエーテルジオールの残基である)と、少なくとも一種の短いジオールと少なくとも一種のジイソシアナートとの反応で得られる硬いブロック(ポリウレタン)とから成る。短鎖で延びたジオールは上記のポリエーテルエステルで説明したグリコールから選択できる。ポリウレタンブロックとポリエーテルブロックはイソシアネート官能基とポリエーテルジオールのOH官能基との反応で得られる結合で連結される。
熱可塑性ポリウレタンは例えばElastogran社から市販の商品エラストラン(Elastollan)(登録商標)またはダウケミカル社から市販の商品ペルエタン(Pellethane)(登録商標)である。
【0030】
本発明で加工助剤として適したフルオロポリマーは例えばビニリデンフルオリド(H2C=CF2)のポリマーおよび/またはビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレン(F2C=CF-CF3)とのコポリマーである。
ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマーはエラストマ特性を有しないが、一般に「フッ素エラストマー」とよばれている。
【0031】
フッ素エラストマーのコモノマーのヘキサフルオロプロピレンの含有量は一般に30〜40重量%である。本発明での加工助剤として適したフルオロポリマーの例はDyneon社、DuPont-Dow Elastomers社またはArkema社から市販のダイナマール(Dynamar)(登録商標)、ビトン(Viton)(登録商標)およびキナール(Kynar)(登録商標)である。
【0032】
回転成形ではチーグラー−ナッタ触媒またはメタロセン触媒または最近(late)遷移金属触媒系を用いて製造したポリエチレンが一般に使われる。直鎖低密度ポリエチレンが好ましくは使われることは例えば下記文献に記載されている。
【非特許文献3】D. Annechini、E. Takacs、J. Vlachopoulos、「メタロセン・ポリエチレンの回転成形上の新しい結果」、ANTEC、第1巻、2001
【0033】
本発明で好ましいポリエチレンはシリカ/アルミノキサン担体上のメタロセンから成る触媒を用いて製造したエチレンのホモポリマーまたはコポリマーである。メタロセン成分はエチレン-ビステトラヒドロインデニルジルコニウム二塩化物またはビス(n-ブチル-シクロペンタジエニル)ジルコニウム二塩化物またはジメチルシリレン−ビス (2-メチル-4-フェニル-インデニル)ジルコニウム二塩化物であるのが好ましい。最も好ましいメタロセン成分はエチレン-ビステトラヒドロインデニルジルコニウム二塩化物である。
【0034】
本明細書でコポリマーという用語は一種のモノマーと一種または複数のコモノマーとの重合製品を意味する。
本発明で一般に好ましくは使用されるポリエチレンのメルトインデックスは0.1〜25dg/分、好ましくは0.2〜15dg/分、最も好ましくは0.5〜10dg/分の範囲にある。メルトフローインデックスMI2は温度19O℃、2.16kgの荷重下でASTM D 1283規格のテスト方法で測定される。
【0035】
本発明において、好ましくは使うことができるエチレンのホモポリマーおよびコポリマーは、0.975グラム/ミリリットルまで、そして、好ましくは、範囲0.915において、0.955グラム/ミリリットルまで範囲0.910の密度を有する。密度は23℃でASTM D 1505規格のテスト方法で測定される。
【0036】
本発明のポリエチレンはビモダル(bi-modal、2峰の)またはマルチモダル(multi-modal、多峰の)分子量分布を有することができる。すなわち、本発明のポリエチレンは異なる分子量分布を有する少なくとも2つのポリオレフィンの混合物でよく、混合は物理的または化学的に行うことができる(すなわち、2つ以上の反応を連続して行うことができる)。
【0037】
本発明に適したポリエチレンの多分散度Dは2〜20の範囲、好ましくは2〜8、より好ましくは5以下、最も好ましくは4以下であり、後者の範囲は一般に好ましいメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレンの場合である。多分散性指数Dは数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mnとして定義される。
【0038】
本発明のポリオレフィンは他の添加剤、例えば抗酸化剤、酸スカベンジャ、帯電防止剤、充填剤、スリップ添加剤またはブロッキング防止剤を含むことができる。
【0039】
官能化されたポリオレフィンが存在する場合、それは極性および/または反応性を与える材料をグラフトしたポリオレフィンであり、従って、隣接層の種類に依存する。本発明では無水物がグラフトしたポリオレフィンが好ましく、ポリオレフィンはポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンであるのがより好ましい。官能化されたポリオレフィンはアイオノマーであっしてもよい。グラフトされたポリエチレンは優秀な接着特性を与え、アイオノマーは機械特性を改良する。本発明のより好ましい実施例の一つでは、官能化されたポリオレフィンがアイオノマーとグラフトされたポリエチレンとの混合物である。
【0040】
上記の層がポリエーテルエステルで作られた場合には、回転成形された外側層上に追加の部品を接着するのが容易になる。外側層は所望される最終特性、例えば下記のような特性に合わせてポリエーテルエステル、飽和ポリエステルまたはポリカーボネートから選択することができる:
(1)優れた衝撃吸収性、
(2)優れた耐衝撃特性、
(3)ソフトな触覚、
(4)ポリアミドと同様な良好な障壁特性で且つコストを抑える、
(5)乾燥時にスリップを防止し、湿潤時にスリップを容易にする、
(6)加工温度範囲を広くする、
(7)良好な硬度
(8)耐引掻き抵抗性
【0041】
最終物品の壁の厚さは最終製品の寸法、所望特性およびコストによって決まり、1mm〜数cmである。回転成形で得られる物品の寸法は0.1Lから70m3である。本発明で作られた回転成形物品は優れた耐衝撃性とショック吸収特性を有するので、ドラム、バンパーまたは大型コンテナのように大型の物品が作れる。
【0042】
本発明はさらに、単層の回転成形物品の製造方法を提供する。
材料の導入は回転成形中にマニュアル(手作業)で行うか、ドロップボックスを使用して材料を導入できる。
手作業で材料を添加する場合には、オーブンから金型を取り出し、ガス抜き管またはプラグを取り外して部品に開口を作り、ロートまたはワンドを用いて材料を追加する工程が含まれ、各追加層毎にこの操作を繰り返す。
【0043】
一般に、ドロップボックスは一つの層用の単一材料を収容した容器で、サイクルの適切な時間にその材料が放出されるまでその材料を保持する断熱容器である。一般に、材料の放出信号は装置のアームを通る送気ホースを介して圧力パルスとして送られる。また、ドロップボックス内部の材料が溶けるのを防止するために低温の断熱状態を維持しなければならない。
【実施例】
【0044】
以下のようにして複数の物品を回転成形で製造した。
複数の混合物を共押出しで製造した。
一つの混合物は下記から成る:
(1)エチレン-ビステトラヒドロインデニルジルコニウム二塩化物をベースにしたメタロセン触媒系を用いて製造した77重量%のポリエチレン(メルトフローインデックスMI2は4dg/分、密度は0.940g/cm3)。
(2)下記の式で表される3重量%のグラフトされたポリエチレン(メルトフローインデックスMI2は25dg/分、密度は0.940g/cm3
【0045】

【0046】
(3)20重量%の疎水性を有するペバックス(Pebax)(登録商標)3533または親水性を有するペバックス(Pebax)(登録商標)MH1657。
【0047】
他の混合物では、上記の3重量%のグラフトされたポリエチレンをアイオノマーに代えた。
【0048】

【0049】
上記混合物はマイクロペレット(micropellets)として作るか、標準ペレットを研磨して粉末にした。混合物で使用したペバックス(Pebax)(登録商標)のヤング係数はポリエチレンよりはるかに低く、可塑化剤(plasticiser)である。
【0050】
全てのテスト成形はROTOSPEED回転成形機械で行った。このROTOSPEED回転成形機械はオフセットアームと、バーナー容量が523kW/hrのLPGバーナーアームと、冷却空気ファンと、1.5mの最大プレート直径とを有する回転木馬(carrousels)型の機械である。
【0051】
テスト成形品の作るのにアルミニウムのボックス金型を用いた。この金型は離型を容易にするためのドラフト角度を備え、二重層物品はドロップボックスを用いて製造した。ドロップボックスには第1層に必要な材料を充填して金型の蓋に取付けた。材料は必要な温度に達するまでドロップボックス中に維持し、空気シリンダーを駆動して材料を流し込んだ。この操作は下記の条件下で各層毎に繰り返した:
【0052】
(1)オーブン温度:300℃
(2)内部ピーク温度(PIAT):200℃
(3)冷却媒体:強制空冷
(4)予熱アームおよび金型を使用
(5)サイクル時間:20分
(6)回転成形物の壁の厚さ:1.5 mm
【0053】
得られた回転成形物品は優れた均一性を有し、[図1]に示すように、ペバックス(Pebax)(登録商標)は最終回転成形品中に完全に分散している。ペバックス(Pebax)(登録商標)は分散が難しい材料であることが知られているので、この結果は驚くべきことである。さらに、[図1]に示すように、ミクロ構造は極めて細かく、[図2]に示す一般的なポリエチレンよりはるかに細かい。これによって最終物品に優れた機械特性が与えられる。
【0054】
衝撃強度はISO 6602-3規格のテスト方法を使用して-40℃の温度でテストした。落下質量は26.024k、落下速度は4.43m/sで、衝撃エネルギーは255Jである。[図3]に示すように、全てのテストで延性(ductile)挙動が示された。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】77重量%ポリエチレンと、3重量%のグラフトされたポリエチレンと、20重量%のペバックス(Pebax)(登録商標)3533との混合物を用いて製造した回転成形物品のミクロ構造図。
【図2】図1の混合物で使用したものと同じポリエチレンのみで作られた回転成形物品のミクロ構造図。
【図3】時間(msで表す)を関数とした衝撃強度(ニュートンで表す)の図で、最大エネルギーはPで示してある。このグラフには時間を関数とした物品の変形度も示してある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c)を共押出しした混合物から製造される単層の回転成形物品:
(a) 10〜99.9重量%のポリエチレン、
(b) 0.1〜90重量%のポリエーテルエステルまたは飽和ポリエステルまたはポリカーボネートまたはポリアミドまたはエチレン-酢酸ビニル(EVA)の中から選択される一種または複数の樹脂(必要に応じてマイナー成分が混合されていてもよい)、
(c)0〜20重量%の下記(i)または(ii)または(iii)の官能化されたポリオレフィン
(i)グラフトされたポリエチレンまたは
(ii)またはアイオノマーまたは
(iii)これらの混合物
【請求項2】
下記(a)〜(c)の混合物から成る請求項1の単層回転成形物品:
(a) 50〜99.9重量%のポリエチレン、
(b) 0.1〜50重量%のポリエーテルエステルまたは飽和したポリエステルまたはポリカーボネートのまたはポリアミドの中から選択される一種または複数の樹脂、
(c)0.5〜20重量%の官能化ポリオレフィン。
【請求項3】
ポリエチレンがチーグラー−ナッタ触媒系またはメタロセン触媒系またはそれの組合せをベースにした触媒系を用いて製造された請求項1または2に記載の単層回転成形物品。
【請求項4】
混合物がメタロセン-触媒系を用いて製造したポリエチレンを少なくとも75重量%含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の単層回転成形物品。
【請求項5】
メタロセン触媒成分がビス(テトラヒドロインデニル)またはビス(n-ブチル-シクロペンタジエニル)である請求項1〜4のいずれか一項に記載の単層回転成形物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−540757(P2008−540757A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510567(P2008−510567)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062154
【国際公開番号】WO2006/120191
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】