説明

ポリエチレン積層フィルム

【課題】特定の組成物を表層および表層と直接接する内層に配することにより、高透明性、高光沢性、強いコシを併せ持つポリエチレン積層フィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも3つの層を有し、かつ下記(1)〜(4)の条件を満たすポリエチレン積層フィルム:
(1)両表層が、920〜968kg/mの密度を有するポリエチレン樹脂組成物からなること、
(2)表層と直接接する内層のいずれもが、922〜970kg/mの密度を有するポリエチレン樹脂組成物からなること、
(3)表層と直接接する内層を構成するポリエチレン樹脂組成物の密度が、その表層を構成するポリエチレン樹脂組成物の密度よりも2kg/m以上高いこと、及び
(4)表層と直接接する内層を構成するポリエチレン樹脂組成物のMFRが、その表層を構成するポリエチレン樹脂組成物のMFRよりも0.2g/10分以上低いこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン樹脂の積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンフィルムは、安価で、加工が容易であり、化学的性質に優れ、物理的な諸特性のバランスも取れているため、食品・飲料、医療品・医薬品、産業資材、生活資材等の各種包装材料として広く使用されている。市場において、食品・飲料、医療品・医薬品、光学フィルム、液晶部材、電子・電気部品、精密部品等を保管、輸送するために使用されるポリエチレンフィルムとしては、内容物の確認や異物混入を検査するための高透明性が求められている。また、ポリエチレンの密度が低い場合は透明性が高くなるが、加工方法によりフィルム表面の凹凸が大きくなる場合、光が乱反射することによって、透明性の低下につながる。そのため、フィルム表面の光沢性(平滑性)が求められるようになってきている。
【0003】
ポリエチレンフィルムの透明性を向上させる方法として、例えば特許文献1及び2では、特定のエチレン・α−オレフィン共重合体組成物に、高圧ラジカル法によって形成された低密度ポリエチレンをブレンドする方法が提案されている。特許文献3では、外層及び内層がエチレン・α−オレフィン共重合体からなり、中間層が、外層及び内層より0.003g/cm密度が高いエチレン・α−オレフィン共重合体、外層及び内層と同じ密度又はそれより小さい密度であるエチレン・α−オレフィン共重合体、及び密度0.915〜0.930g/cmの高圧ラジカル重合法によって形成された低密度ポリエチレンからなるポリエチレン系の多層フィルムが、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−283477号公報
【特許文献2】特開2002−179856号公報
【特許文献3】特開平10−323948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載の方法では、エチレン・α−オレフィン共重合体組成物と、高圧ラジカル法によって形成された低密度ポリエチレンとをブレンドすることによって、単層フィルムの透明性の改良を図っている。しかし、透明性を高めるために低密度ポリエチレンを用いるため、フィルムのコシが低く、作業性が低下する。
【0006】
特許文献3に記載の方法では、外層及び内層と中間層との密度差を規定することによって、ポリエチレン系多層フィルムの透明性の改良を行っている。しかし、多層フィルムの中間層にMFR値の高い樹脂組成物を用いた場合には、十分な透明性の改良効果が発現されない。また、この方法においては、低密度樹脂を用いることによりフィルムの透明性が上がるが、一方でフィルムのコシの低下によって、作業性の悪化が懸念される。
【0007】
このように、特許文献1〜3に記載の方法では、原料樹脂の組合せによって透明性を高めることが可能であるが、一方でフィルムのコシが低下するなどの問題が生じる。したがって、特許文献1〜3に記載の方法では、積層フィルムとして必要な透明性、光沢性及びフィルムのコシを併せて発現しているとはいえず、市場の要求レベルを満足するには至っていない。従って、優れた透明性及び光沢性並びに強いコシを兼ね備えたポリエチレン樹脂の積層フィルムの開発が、強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題の解決のために鋭意検討した結果、特定の密度及びMFRを有する組成物を表層及び表層と直接接する内層に配することにより、高透明性、高光沢性及び強いコシを併せ持つ物性バランスに優れたポリエチレン積層フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下の態様を包含する。
【0009】
[1] 少なくとも3つの層を有し、かつ下記(1)〜(4)の条件を満たすポリエチレン積層フィルム:
(1)両表層が、920〜968kg/mの密度を有するポリエチレン樹脂組成物からなること、
(2)表層と直接接する内層のいずれもが、922〜970kg/mの密度を有するポリエチレン樹脂組成物からなること、
(3)表層と直接接する内層を構成するポリエチレン樹脂組成物の密度が、その表層を構成するポリエチレン樹脂組成物の密度よりも2kg/m以上高いこと、及び
(4)表層と直接接する内層を構成するポリエチレン樹脂組成物のMFRが、その表層を構成するポリエチレン樹脂組成物のMFRよりも0.2g/10分以上低いこと。
[2] 両表層のヘイズ改良率が50%以上である、[1]に記載のポリエチレン積層フィルム。
[3] 両表層のグロス改良率が30%以上である、[1]または[2]に記載のポリエチレン積層フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面光沢性、透明性が高く、かつコシの強いポリエチレン樹脂の積層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ポリエチレン積層フィルムの両表層及びこれらの表層と直接接する内層にポリエチレンA1を使用した場合における微分干渉像(写真)である。
【図2】ポリエチレン積層フィルムの両表層にポリエチレンA1を使用し、これらの表層と直接接する内層にポリエチレンA2を使用した場合における微分干渉像(写真)である。
【図3】ポリエチレン積層フィルムの両表層にポリエチレンA1を使用し、これらの表層と直接接する内層にポリエチレンA3を使用した場合における微分干渉像(写真)である。
【図4】図1の写真に対応したイメージ図である。
【図5】図2の写真に対応したイメージ図である。
【図6】図3の写真に対応したイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本実施形態のポリエチレン積層フィルムは、表層、及び表層と直接接する内層を含む3層以上のポリエチレン積層フィルムである。このようなポリエチレン積層フィルムは、空冷インフレーション法、水冷インフレーション法、Tダイキャスト法等の公知の方法で製造することができる。汎用性の点からインフレーション法で製造されるポリエチレン積層フィルムが好ましく、特に空冷インフレーション法で製造されるポリエチレン積層フィルムがより好適である。空冷インフレーション法とは、押出機の先端にリングダイス(またはクロスヘッドダイ)と呼ばれる環状のリップを持つ金型を設置し、チューブ状に材料を押し出して連続的に成型する。より具体的には、リングダイスの中央に空気孔が設置されており、ここから圧搾空気を吹き込んでチューブを膨張させ、ピンチロールと呼ばれるローラーで引っ張りながら冷却してフィルムを巻き取ることによって、ポリエチレン積層フィルムを製造することができる。
【0013】
本実施形態で、ポリエチレン積層フィルムの表層とは、空冷インフレーション、水冷インフレーションの場合は、環状ダイスの中心側の面(層)、及びその反対面(層)である。また、Tダイキャスト法の場合は、Tダイを出た直後に水冷ロールに接触する面(層)、及びその反対面(層)である。また、ポリエチレン積層フィルムの表層と直接接する内層とは、2つの表層のいずれか又は両方と接している層のことである。従って、フィルムの積層数が4層以上である場合は、表層と直接接する内層は別々に2層存在する。
【0014】
本実施形態の2つの表層を構成するポリエチレン樹脂組成物は、コシの低下による作業性の悪化や、製膜時のしわを防止する観点から、密度が920kg/m以上であり、好ましくは密度が930kg/m以上であり、さらに好ましくは密度が940kg/m以上である。また、2つの表層を構成するポリエチレン樹脂組成物は、フィルム伸度低下や、引裂き強度低下を防止する観点から、密度が968kg/m以下であり、好ましくは965kg/m以下、さらに好ましくは962kg/m以下である。なお、本明細書でのポリエチレン樹脂組成物の密度は、JIS K7112:1999に準拠して測定した値を意味する。
【0015】
表層に用いられるポリエチレン樹脂は、メタロセン型触媒、チーグラー型触媒、フィリップス触媒を用いて、種々のプロセスにより、エチレン単独もしくはC〜C12のα−オレフィンを共重合して得られる樹脂であって、フィルム成形可能なものが好ましい。
【0016】
表層のポリエチレン樹脂組成物に含まれてもよい樹脂以外の成分としては、特に限定される訳ではないが、本発明の効果を損なわない程度の範囲で、ブロッキング防止剤、スリップ剤、酸化防止剤、帯電防止剤、中和剤、光安定剤、結晶核剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0017】
なお、ブロッキング防止剤としては、アルミノケイ酸塩、タルク、珪藻土、カオリン、クレー等が挙げられる。スリップ剤としては、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、アルコールの脂肪酸エステル、ワックス、高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン等が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等があるが、フェノール酸化防止剤として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(ジブチルヒドロキシトルエン)、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート))メタン等、リン系酸化防止剤として、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスフォナイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−t−ブチルフェニルフォスファイト)等が挙げられる。帯電防止剤としては、高分子型の帯電防止剤が好ましく、非イオン性やイオン性または両性の活性剤やその混合物が挙げられ、それぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても構わない。中和剤としては、各種のステアリン酸金属塩、ハイドロタルサイト等が挙げられ、それぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても構わない。
【0018】
本実施形態のポリエチレン積層フィルムの表層と直接接する内層の各々を構成するポリエチレン樹脂組成物は、コシの低下による作業性の悪化や、製膜時のしわを防止する観点から、密度が922kg/m以上であり、好ましくは932kg/m以上、さらに好ましくは、942kg/m以上である。また、内層の各々を構成するポリエチレン樹脂組成物は、フィルム伸度低下や、引裂き強度低下を防止する観点から、密度が970kg/m以下であり、好ましくは967kg/m以下、さらに好ましくは964kg/m以下である。
【0019】
本実施形態のポリエチレン積層フィルムの表層と直接接する内層の各々に用いられるポリエチレン樹脂は、エチレン単独からなるホモポリマーであっても、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなる共重合ポリマーであってもよい。エチレンと共重合させる炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、6−メチル−ヘプテン−1などが挙げられる。また、これらを2種類以上、任意の比率でドライブレンド、あるいはメルトブレンドしたものであってもよい。
【0020】
この内層のポリエチレン樹脂組成物に含まれてもよい樹脂以外の成分としては、特に限定される訳ではないが、中和剤、光安定剤、結晶核剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0021】
ポリエチレン積層フィルムの透明性及び表面光沢の改良効果の観点から、表層と直接接する内層に含まれるポリエチレン樹脂組成物は、その表層のポリエチレン樹脂組成物よりも2kg/m以上密度が高く、好ましくは3kg/m以上、さらに好ましくは4kg/m以上密度が高い。さらに、ポリエチレン積層フィルムの透明性及び表面光沢の改良効果の観点から、表層と直接接する内層に含まれるポリエチレン樹脂組成物のJIS K7210:1999コードDメルトフローレート(以下MFRと記す)は、その表層に含まれるポリエチレン樹脂組成物のMFRよりも、0.2g/10分以上低く、好ましくは0.3g/10分以上低い。
【0022】
なお、ポリエチレン積層フィルムが3層の場合は、表層と直接接する内層に含まれるポリエチレン樹脂組成物は、両表層に含まれるポリエチレン樹脂組成物のいずれとも、密度及びMFR値において上記関係を満たす必要がある。一方、ポリエチレン積層フィルムが4層以上の場合、表層と直接接する内層のポリエチレン樹脂組成物はいずれも、その内層が接している表層のポリエチレン樹脂組成物と、密度及びMFR値において上記関係を満たす必要がある。
ポリエチレン積層フィルムにおいて、表層と直接接する内層のいずれもが、その表層との間で、密度差及びMFR差について上記関係を満たすことによって、透明性及び表面光沢の改良効果が得られる。
【0023】
本実施形態のポリエチレン積層フィルムは、透明性向上の観点から、ヘイズ改良率が、好ましくは50%以上であり、より好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上である。
【0024】
ヘイズ改良率は、表層及び表層と直接接する内層に同一の原料を用いて製膜したポリエチレン積層フィルムのヘイズ値(透明性の指標)を基準にして、表層と異なる原料を表層と直接接する内層に用いた場合のポリエチレン積層フィルムのヘイズ値を評価する。ヘイズ改良率は次式で定義される。
ヘイズ改良率(%)=(Ha−Hb)/Hb×100
ここで、両表層が同じ原料からなるポリエチレン積層フィルムを評価する場合、表層及び表層と直接接する内層に同一原料を用いたポリエチレン積層フィルムのヘイズ値を測定し、Haとする。両表層が異なる原料からなるポリエチレン積層フィルムを評価する場合、各表層と同じ原料を、両表層及び表層と直接接する内層に用いたポリエチレン積層フィルムのヘイズ値をそれぞれ測定し、得られるヘイズ値を比較して高い値をHaとする。また、Hbは、表層と異なる原料を表層と直接接する内層に用いたポリエチレン積層フィルムのヘイズ値を示す。なお、本明細書におけるヘイズ値は、ASTM D1003に準じて測定した値を意味する。
【0025】
本実施形態のポリエチレン積層フィルムは、光沢性向上の観点から、グロス改良率が、好ましくは30%以上であり、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。
【0026】
グロス改良率は、表層及び表層と直接接する内層に同一の原料を用いて製膜したポリエチレン積層フィルムのグロス値(表面光沢性の指標)を基準にして、表層と異なる原料を表層と直接接する内層に用いた場合のポリエチレン積層フィルムのグロス値を評価する。グロス改良率は次式で定義される。グロス値は、それぞれの表層面側から測定する。
グロス改良率(%)=(Gb−Ga)/Gb×100
Gaは、評価する面の表層と同じ原料を、表層及び表層と直接接する内層に用いた積層フィルムの、該表層面側のグロス値を示す。Gbは、評価するフィルムの面の表層と異なる原料を表層と直接接する内層に用いた場合の該表層面側のグロス値を示す。なお、本明細書におけるグロス値は、ASTM D523(2457)に準じて、入射角20°で測定した値を意味する。
【0027】
本実施形態のポリエチレン積層フィルムは、内容物を充填する際のフィルムの取り扱い易さの観点から、フィルムのコシが高い方が良い。このポリエチレン積層フィルムの引張割線弾性率(規定ひずみ2%)は、好ましくは400MPa以上、より好ましくは450MPa以上である。
【0028】
本実施形態のポリエチレン積層フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、経済性、使いやすさの点から、フィルム全体の厚さが、好ましくは5〜250μmであり、より好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは10〜150μmである。また、本実施形態のポリエチレン積層フィルムの層間厚み比率は、特に限定されるものではないが、成形性バランスや生産性の点から、表層と直接接する内層の厚さの合計が、フィルム全体の厚さの20〜80%であることが好ましい。
【0029】
本発明の他の実施形態として、5層以上からなるポリエチレン積層フィルムの場合、本発明の効果の範囲を損なわない範囲で、上記の条件を満たす表層及び表層と直接接する内層以外の層を更に含有しても良い。前記表層及び表層と直接接する内層以外の層としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、アイオノマーを含む層等が挙げられる。
【0030】
本発明によるポリエチレン積層フィルムが所期の効果を奏するメカニズムについては明らかではないが、以下のように考えることができる。ただし、本発明は以下の理論に拘束されるものではない。
【0031】
ポリエチレン積層フィルムは、押出機にてポリマーを溶融させダイスから押出した後に引き伸ばし、外部の雰囲気によって冷却、固化することによって製造される。ポリエチレン積層フィルムの製造においては、冷却にともない結晶化が進行して球晶が生成されるが、冷却により球晶サイズが変化し、フィルムの透明性が変化する場合がある。球晶サイズは、分子量、分子量分布、密度などの樹脂の構造によって変化し、冷却時間、冷却温度などの樹脂の加工条件によっても変化する。例えばインフレーションフィルムの場合は、冷却時のエアーの温度によってフィルムの透明性が変化することが一般的に知られている。
【0032】
また、外部エアーにてフィルムを冷却する際は、外部エアーの温度及びエアーの当たり方によって、冷却が必ずしも均一とは限らない。そのため、結晶の成長が不均一となり、結果としてフィルムの表面に細かな凹凸ができ、フィルムの表面光沢及び透明性が低下する。一般的には外部ヘイズが高くなる。
【0033】
しかしながら、本発明のポリエチレン積層フィルムは、表層及び表層と直接接する内層の密度及びMFRの組み合わせを上記のとおり設定することで、表層と直接接する内層から、もしくは表層及びこれと直接接する内層の界面付近から結晶化が起こり、この結晶を基点として表層の結晶化が進行する。そのため、表層の球晶サイズが小さく、かつ均一に球晶が生成されて、外部ヘイズが小さくなり、ポリエチレン積層フィルムの透明性及び表面光沢が飛躍的に改良されると考えられる。
【0034】
このような理論を確認するため、OLYMPUS製BX51N−33−PHU−D顕微鏡にて、ポリエチレン積層フィルムの断面をミクロトームにて20μm厚みに切削した後、ノマルスキープリズムを使用した微分干渉像より球晶を確認した。微分干渉像を、写真1(図1)、写真2(図2)及び写真3(図3)として示す。また、写真1〜3に対応したイメージ図を図4〜6として示す。
【0035】
写真1は、両表層および表層と直接接する内層にA1原料(密度941kg/cm、MFR2.5g/10分のポリエチレン(実施例参照))を使用したポリエチレン積層フィルムの微分干渉像であり、球晶サイズが比較的大きい事が確認される。写真2は、A1原料を両表層とし、表層と直接接する内層にA2原料(密度946kg/cm、MFR1.3g/10分のポリエチレン(実施例参照))を使用したポリエチレン積層フィルム(本発明の条件を満たす)であり、両表層部および表層と直接接する内層の球晶が小さいことが確認される。また、写真3は、A1原料を両表層に用いて表層と直接接する内層にA3原料(密度947kg/cm、MFR5.0g/10分のポリエチレン(実施例参照))を使用したポリエチレン積層フィルムの微分干渉像であり、球晶サイズが比較的大きい事が確認される。
【0036】
写真1〜3は、いずれも両表層にA1原料を用いたものであり、両表層と直接接する内層に用いた原料により両表層の球晶サイズが異なる事が確認される。写真2(本発明の条件を満たすポリエチレン積層フィルム)では、球晶サイズが他よりも小さくなることによって、透明性及び表面光沢性が改良されると考えられる。
【0037】
本発明による表層及び表層と直接接する内層を含む3層以上のポリエチレン積層フィルムの製造方法は、表層用として密度が920〜968kg/mのポリエチレン樹脂組成物、表層と直接接する内層用として密度922〜970kg/mのポリエチレン樹脂組成物をそれぞれ溶融混練し、共押出した後冷却固化する工程を含む。ここで、表層と直接接する内層用のポリエチレン樹脂組成物は、これと接している表層に含まれるポリエチレン樹脂組成物よりも、2kg/m以上高い密度、及び0.2g/10分以上低いMFR値を各々有する。溶融混練温度としては、160℃〜200℃が好ましい。ブロー比は、製膜安定性の観点から1.5〜3.0が好ましい。
【実施例】
【0038】
本発明のポリエチレン積層フィルムについて、以下実施例に沿って具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例におけるインフレーション成形用のポリエチレン樹脂の製造、インフレーション成形、及び当該樹脂及びポリエチレン積層フィルムの物性評価は、以下の方法によって実施した。実施例および比較例で用いたポリエチレン原料の種類及び物性を表1に記載する。
【0039】
[メタロセン触媒の調製]
<メタロセン担持触媒(a)の調製>
シリカP−10[富士シリシア社(日本国)製](商標)を、窒素雰囲気下、400℃で5時間焼成し、脱水した。エトキシジエチルアルミニウムを表面水酸基と反応させてエタンガスを発生させ、ガスビュレットを用いて、発生したエタンガスの量を測定した。発生したエタンガスの量に基づいて脱水シリカの表面水酸基の初期量を求めたところ、1.3mmol/g−SiOであった。容量1.8リットルのオートクレーブにおいて、この脱水シリカ40gをヘキサン800cc中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーを攪拌下50℃に保ちながら、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1mol/リットル)を60cc加え、その後2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基とを反応させ、トリエチルアルミニウム処理されたシリカと上澄み液とを含み、該トリエチルアルミニウム処理されたシリカの全ての表面水酸基がつぶされている成分[D]を得た。その後、得られた反応混合物中の上澄み液をデカンテーションによって除去することにより、上澄み液中の未反応のトリエチルアルミニウムを除去した。その後、ヘキサンを適量加え、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのヘキサンスラリー800ccを得た。
一方、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以下、「チタニウム錯体」という)200mmolをアイソパーE[エクソンケミカル社(米国)製の炭化水素混合物の商品名]1000ccに溶解し、予めトリエチルアルミニウムとジブチルマグネシウムより合成した組成式AlMg6(C(n−C12の1mol/リットルヘキサン溶液を20cc加え、更にヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1mol/リットルに調整し、成分[E]を得た。
【0040】
また、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称する)5.7gをトルエン50ccに添加して溶解し、ボレートの100mmol/リットルトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムの1mol/リットルヘキサン溶液5ccを室温で加え、さらにヘキサンを加えてトルエン溶液中のボレート濃度が70mmol/リットルとなるようにした。その後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混合物を得た。
ボレートを含むこの反応混合物46ccを、上で得られた、成分[D]のスラリー800ccに15〜20℃で攪拌しながら加え、ボレートを物理吸着によりシリカに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。さらに上で得られた成分[E]のうち32ccを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応させた。こうしてシリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成されているメタロセン担持触媒(a)を得た。
【0041】
<液体助触媒成分(b)の調製>
有機マグネシウム化合物として、AlMg(C(n−C12で示される有機マグネシウム化合物を使用した。これと反応させるシロキサン化合物として、メチルヒドロポリシロキサン(25℃における粘度20センチストークス)を使用した。
200ccのフラスコに、ヘキサン40ccとAlMg(C(n−C12を、MgとAlの総量として37.8mmolを攪拌しながら添加し、25℃でメチルヒドロポリシロキサン2.27g(37.8mmol)を含有するヘキサン40ccを攪拌しながら添加し、その後80℃に温度を上げて3時間、攪拌下に反応させることにより、液体助触媒成分(b)を調製した。
上記のメタロセン担持触媒(a)及び液体助触媒成分(b)を組み合わせたものをメタロセン触媒として用い、メタロセン触媒系高密度ポリエチレンA1の調製を行った。
【0042】
[メタロセン触媒系高密度ポリエチレンA1の調製]
上記により得られたメタロセン触媒、溶媒として精製したヘキサン、モノマーとしてエチレン及びブテン−1、分子量調整剤として水素を用いて反応を行った。反応温度は77℃として、エチレン、ブテン−1、水素の混合ガス(ガス組成はブテン−1とエチレン+ブテン−1のモル比が0.40%、水素とエチレン+水素のモル比が0.25%を維持できるように調節)から、全圧を0.98MPaとしてエチレン・α−オレフィンとの共重合体を重合した。重合により得られたエチレン・α−オレフィンとの共重合体は、日本製鋼(株)社製押出機(スクリュー径65mm、L/D=28)を用い、200℃にて押出して造粒した。得られたエチレン・α−オレフィン共重合体A1は、分子量分布(Mw/Mn)が4.0、密度が941kg/m、MFRが2.5g/10分であった。
【0043】
[メタロセン触媒系高密度ポリエチレンA2の調製]
エチレン、ブテン−1、水素の混合ガス組成(ガス組成はブテン−1とエチレン+ブテン−1のモル比が0.27%、水素とエチレン+水素のモル比が0.20%を維持できるように調節)を変えた以外は、メタロセン触媒系高密度ポリエチレンA1の調製と同様に操作し、エチレン・α−オレフィンとの共重合体を得た。得られたエチレン・α−オレフィン共重合体A2は、分子量分布(Mw/Mn)が4.1、密度が946kg/m、MFRが1.3g/10分であった。
【0044】
[メタロセン触媒系高密度ポリエチレンA3の調製]
反応温度を70℃として、エチレン、ブテン−1、水素の混合ガス組成(ガス組成はブテン−1とエチレン+ブテン−1のモル比が0.26%、水素とエチレン+水素のモル比が0.28%を維持できるように調節)を変えた以外は、メタロセン触媒系高密度ポリエチレンA1の調製と同様に操作し、エチレン・α−オレフィンとの共重合体を得た。得られたエチレン・α−オレフィン共重合体A3は、分子量分布(Mw/Mn)が4.0、密度が947kg/m、MFRが5.0g/10分であった。
【0045】
[チーグラー触媒の調製]
充分に窒素置換された15リットルの反応器に、トリクロルシランを2mol/リットルのノルマルヘプタン溶液として3リットル仕込み、攪拌しながら65℃に保ち、続いて、組成式AlMg(C(n−C6.4(On−C5.6で示される有機マグネシウム成分のノルマルヘプタン溶液7リットル(マグネシウム換算で5mol)を1時間かけて加え、更に65℃にて1時間攪拌下反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、n−ヘキサン7リットルで4回洗浄を行い、固体物質スラリーを得た。この固体を分離・乾燥して分析した結果、固体1グラム当たり、Mg 7.45mmolを含有していた。
このうち固体500gを含有するスラリーを、n−ブチルアルコール1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.93リットルとともに、攪拌下50℃で1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで1回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1mol/リットルのn−ヘキサン溶液1.3リットルを攪拌下加えて1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで2回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルおよび四塩化チタン1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルを加えて、2時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、固体触媒を単離し、遊離のハロゲンが検出されなくなるまでヘキサンで洗浄した。この固体触媒は2.3重量%のチタンを有していた。
【0046】
[チーグラー触媒系高密度ポリエチレンB1の調製]
上記により得られたチーグラー触媒を用い、単段重合プロセスにおいて、容積230リットルの重合器で重合を行った。重合温度は85℃、重合圧力は0.98MPaとした。この重合器に、合成したチーグラー触媒を0.3g/hrの速度で、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr、ヘキサンを60リットル/hrの速度で導入した。これに、エチレン、水素、プロピレンの混合ガス(ガス組成はプロピレンとエチレン+プロピレンのモル比が3.30%、水素とエチレン+水素のモル比が26%を維持できるように調節)を導入し、エチレン・α−オレフィンとの共重合体を重合した。重合により得られたエチレン・α−オレフィンとの共重合体は、日本製鋼(株)社製押出機(スクリュー径65mm、L/D=28)を用い、200℃にて押出して造粒した。得られたエチレン・α−オレフィン共重合体B1は、分子量分布(Mw/Mn)が7.0、密度が952kg/m、MFRが1.0g/10分であった。
【0047】
[チーグラー触媒系高密度ポリエチレンB2の調製]
エチレン、プロピレンの混合ガス(ガス組成はプロピレンとエチレン+プロピレンのモル比が0.55%を維持できるように調節)を変えた以外は、チーグラー触媒系高密度ポリエチレンB1の調製と同様に操作し、エチレン・α−オレフィンとの共重合体を得た。得られたエチレン・α−オレフィン共重合体B2は、分子量分布(Mw/Mn)が9.7、密度が959kg/m、MFRが0.8g/10分であった。
【0048】
[低密度ポリエチレンC1の調製]
チューブラーリアクターにて、重合平均温度260℃、重合圧力270MPa、開始剤にt−ブチルパーオキシオクテートを用い、低密度ポリエチレンを重合した。得られた低密度ポリエチレンは、分子量分布(Mw/Mn)が3.6、密度が929kg/m、MFRが1.3g/10分であった。
【0049】
[線状低密度ポリエチレンD1の調製]
旭化成ケミカルズ株式会社製サンテックTM−LL LM2020(登録商標)(分子量分布(Mw/Mn)が4.0、MFR=2.1g/10min 密度=920kg/m)を使用した。
【0050】
[インフレーション成形方法]
住友重機械モダン株式会社製の3種3層インフレーションフィルム製造装置(押出機3台:スクリュー径50mm、スクリュー:L(押出しスクリュー長)/D(押出しスクリュー直径)=28、ダイス:3種3層スパイラルダイス、リップ径、125mm、リップ間隙、2.5mm、エアーリング:デュアルリップ、φ125用、固定式)を用いて、シリンダー温度180℃、ダイス温度180℃にて、3層合計押出量を29.5kg/時間とし、ブロー比2.4で、インフレーション成形を行い、ポリエチレン積層フィルムを得た。
【0051】
[物性評価方法]
ポリエチレン積層フィルム及び各層のポリエチレン樹脂組成物の物性評価方法は、以下の通りである。なお、ポリエチレン積層フィルムの物性評価は、製膜したフィルムを温度23℃、湿度50%の環境中に24時間以上静置した後に行った。
【0052】
(1)メルトフローレイト(MFR)
JIS K7210:1999(コードD 温度=190℃、荷重=2.16kg)に準拠して測定した。
(2)密度
JIS K7112:1999に準拠して、密度勾配管法(23℃)で測定した。
【0053】
(3)ヘイズ値
株式会社村上色彩技術研究所製 HAZE METER HM−150を使用し、ASTM D1003に準じて測定した。測定したヘイズ値は、フィルムの透明性の評価に用いた。
【0054】
(4)ヘイズ改良率
ヘイズ改良率は、表層及び表層と直接接する内層に同一の原料を用いて製膜したポリエチレン積層フィルムのヘイズ値を基準にして、接している表層と異なる原料を表層と直接接する内層に用いた場合のポリエチレン積層フィルムのヘイズ値を評価する。ヘイズ改良率は次式で定義される。
ヘイズ改良率(%)=(Ha−Hb)/Hb×100
両表層が同じ原料からなるポリエチレン積層フィルムを評価する場合、表層及び表層と直接接する内層に同一原料を用いたポリエチレン積層フィルムのヘイズ値を測定し、Haとする。両表層が異なる原料からなるポリエチレン積層フィルムを評価する場合、各表層と同じ原料を、両表層及び表層と直接接する内層に用いたポリエチレン積層フィルムのヘイズ値をそれぞれ測定し、得られるヘイズ値を比較して高い値をHaとする。また、Hbは、接している表層と異なる原料を表層と直接接する内層に用いたポリエチレン積層フィルムのヘイズ値を示す。
【0055】
(5)グロス値
株式会社村上色彩技術研究所製 GLOSS METER GM−26Dを使用し、ASTM D523(2457)に準じて、入射角20°で測定した。測定したグロスは、フィルムの表面光沢性の評価に用いた。
【0056】
(6)グロス改良率
グロス改良率は、表層及び表層と直接接する内層に同一の原料を用いて製膜したポリエチレン積層フィルムのグロス値を基準にして、表層と異なる原料を表層と直接接する内層に用いた場合のポリエチレン積層フィルムのグロス値を評価する。グロス改良率は次式で定義される。グロス値は、それぞれの表層面側から測定する。
グロス改良率(%)=(Gb−Ga)/Gb×100
Gaは、評価する面の表層と同じ原料を、表層及び表層と直接接する内層に用いたポリエチレン積層フィルムの、該表層面側のグロス値を示す。Gbは、評価するフィルムの面の表層と異なる原料を表層と直接接する内層に用いた場合の該表層面側のグロス値を示す。
【0057】
表1に記載の原料を表層、表層と直接接する内層の共通原料として使用し、これらの原料を各押出機(表層用、表層と直接接する内層用)にて180℃に溶融させて3層用ダイスに導入し、空冷インフレーション成形を行い、厚さ20μm(4μm/12μm/4μm)および60μm(12μm/36μm/12μm)で製膜し、ポリエチレン積層フィルムを得た。ここで、環状ダイスの中心側の面(層)を表層1とし、表層1の反対面(層)を表層2とした。表2に得られたポリエチレン積層フィルムの各種物性の評価結果を示した。なお、この結果をヘイズ改良率およびグロス改良率の基準値とした。
【0058】
(7)分子量分布測定
GPCから求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を分子量分布とした。GPC測定は、ウォーターズ社製GPCV2000を用い、カラムは昭和電工(株)製UT−807(1本)と東ソー(株)製GMHHR−H(S)HT(2本)を直列に接続して使用し、移動相トリクロロベンゼン(TCB)、カラム温度140℃、流量1.0ml/分、試料濃度20mg/15ml(TCB)、試料溶解温度140℃、試料溶解時間2時間の条件で行った。分子量の校正は、東ソー(株)製標準ポリスチレンのMwが1050〜206万の範囲の12点で行い、それぞれの標準ポリスチレンのMwに係数0.43を乗じてポリエチレン換算分子量とし、溶出時間とポリエチレン換算分子量のプロットから一次校正直線を作成し、分子量を決定した。
【0059】
(8)コシ
ポリエチレン積層フィルムを用いて、オリエンテック(株)製引張試験機RTC−1310AにてJIS K−7127−1989に準拠した引張割線弾性率(規定ひずみ2%)測定を行った。フィルムの引取方向に対して平行方向を縦方向(MD方向)、垂直方向を横方向(TD方向)として、引張割線弾性率の平均値をコシの指標とした。
【0060】
[実施例1]
A1を両表層の共通原料として用い、表層と直接接する内層にB1を使用した。これらの原料を各押出機(表層1用、表層と直接接する内層用、表層2用)にて180℃に溶融させて3層用ダイスに導入し、空冷インフレーション成形を行い、厚さ20μmのポリエチレン積層フィルム(表層1/表層と直接接する内層/表層2=4/12/4μm)を得た。得られたポリエチレン積層フィルムの各種物性の評価結果を表3に示す。
【0061】
[実施例2]
実施例1と同じ原料構成として、原料を各押出機(表層1用、表層と直接接する内層用、表層2用)にて180℃に溶融させて3層用ダイスに導入し、空冷インフレーション成形を行い、厚さ60μmのポリエチレン積層フィルム(表層1/表層と直接接する内層/表層2=12/36/12μm)を得た。得られたポリエチレン積層フィルムの各種物性の評価結果を表3に示す。
【0062】
[実施例3〜4]
表層と直接接する内層の原料をB2もしくはA2に変更した以外は実施例2と同様にしてポリエチレン積層フィルムを得た。得られたポリエチレン積層フィルムの各種物性の評価結果を表3に示す。
【0063】
[実施例5]
A2を両表層の共通原料として用い、表層と直接接する内層にB1を使用した以外は実施例2と同様にしてポリエチレン積層フィルムを得た。得られたポリエチレン積層フィルムの各種物性の評価結果を表3に示す。
【0064】
[実施例6]
A3を両表層の共通原料として用い、表層と直接接する内層にB1を使用した以外は実施例2と同様にしてポリエチレン積層フィルムを得た。得られたポリエチレン積層フィルムの各種物性の評価結果を表3に示す。
【0065】
[実施例7]
B1を両表層の共通原料として用い、表層と直接接する内層にB2を使用した以外は実施例2と同様にしてポリエチレン積層フィルムを得た。得られたポリエチレン積層フィルムの各種物性の評価結果を表3に示す。
【0066】
[実施例8]
D1を両表層の共通原料として用い、表層と直接接する内層にA2を使用した以外は実施例2と同様にしてポリエチレン積層フィルムを得た。得られたポリエチレン積層フィルムの各種物性の評価結果を表3に示す。
【0067】
[実施例9]
A1を表層2の原料、A2を表層1の原料として用い、表層と直接接する内層にB1を使用した以外は実施例2と同様にしてポリエチレン積層フィルムを得た。得られたポリエチレン積層フィルムの各種物性の評価結果を表3に示す。
【0068】
[実施例10]
A1を表層2の原料、A3を表層1の原料として用い、表層と直接接する内層にB1を使用した以外は実施例2と同様にしてポリエチレン積層フィルムを得た。得られたポリエチレン積層フィルムの各種物性の評価結果を表3に示す。
【0069】
[実施例11]
A1を表層2の原料、B1を表層1の原料として用い、表層と直接接する内層にB2を使用した以外は実施例2と同様にしてポリエチレン積層フィルムを得た。得られたポリエチレン積層フィルムの各種物性の評価結果を表3に示す。
【0070】
[実施例12]
A2を表層2の原料、B1を表層1の原料として用い、表層と直接接する内層にB2を使用した以外は実施例2と同様にしてポリエチレン積層フィルムを得た。得られたポリエチレン積層フィルムの各種物性の評価結果を表3に示す。
【0071】
[比較例1]
表4に記載の原料および層構成にて、実施例1と同様にして厚さ20μmの積層フィルム(表層1/表層と直接接する内層/表層2=4/12/4μm)を得た。得られたポリエチレン積層フィルムの各種物性の評価結果を表4に示す。
【0072】
[比較例2〜7]
表4に記載の原料および層構成にて、実施例2と同様にして厚さ60μmのポリエチレン積層フィルム(表層1/表層と直接接する内層/表層2=12/36/12μm)を得た。得られたポリエチレン積層フィルムの各種物性の評価結果を表4に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
上記実施例及び比較例の結果から、本発明によるポリエチレン積層フィルムは、高透明性、高光沢性、及び強いコシを併せ持つことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のポリエチレン積層フィルムは、高透明性及び高光沢性並びに強いコシを併せ持つため、各種包装材料として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの層を有し、かつ下記(1)〜(4)の条件を満たすポリエチレン積層フィルム:
(1)両表層が、920〜968kg/mの密度を有するポリエチレン樹脂組成物からなること、
(2)表層と直接接する内層のいずれもが、922〜970kg/mの密度を有するポリエチレン樹脂組成物からなること、
(3)表層と直接接する内層を構成するポリエチレン樹脂組成物の密度が、その表層を構成するポリエチレン樹脂組成物の密度よりも2kg/m以上高いこと、及び
(4)表層と直接接する内層を構成するポリエチレン樹脂組成物のMFRが、その表層を構成するポリエチレン樹脂組成物のMFRよりも0.2g/10分以上低いこと。
【請求項2】
両表層のヘイズ改良率が50%以上である、請求項1に記載のポリエチレン積層フィルム。
【請求項3】
両表層のグロス改良率が30%以上である、請求項1または2に記載のポリエチレン積層フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−221702(P2010−221702A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40010(P2010−40010)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】