説明

ポリエチレン系成形材料

【課題】成形性、高流動性、臭い、耐衝撃性、食品安全性に優れ、かつ、ガスバリア性に優れた、ポリエチレン系成形材料の提供。
【解決手段】(A)ポリエチレン:50重量%を超え90重量%以下、(B)エチレン−ビニルアルコール共重合体:5〜30重量%、及び(C)不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーをポリオレフィンにグラフトした変性ポリオレフィン:5〜40重量%を含有し、(1)成形温度190℃、金型温度40℃におけるt=2mmのスパイラルフローが30cm以上、(2)密度が0.910〜1.01g/cm3、(3)引張衝撃値が100KJ/m以上、(4)酸素透過度が180ml・mm/m・day・atm以下、の各条件を満足することを特徴とするポリエチレン系成形材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系成形材料に関し、詳しくは、成形性、高流動性、臭い、耐衝撃性、食品安全性に優れ、かつ、ガスバリア性に優れたポリエチレン系成形材料に関し、特に、射出成形性に優れ、酸素透過防止性に優れ、なおかつ耐衝撃性等の物性低下が少ない食品を収容する容器及び容器蓋等を成形できるポリエチレン系成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品容器やシール容器の蓋、液体食品ボトル用のキャップなどに、その柔軟性、軽量、低価格を生かして低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)のポリエチレン系材料が広く用いられている。そのような容器においては、一般には射出成形にて成形されている。しかしながら、ポリエチレン単独による容器は、ポリエチレンのガスバリア性不足によって、食品等の内容物が酸化するため、長期保管ができないとの問題があった。
【0003】
ちなみに、食品容器用の蓋においては、近年、生産効率の向上及びコストダウンのため、スコアとヒンジ部の一体化された所謂ワンピース構造の蓋が主流となり、一般に直鎖状低密度ポリエチレンが用いられ、例えば、(a)温度190℃において、荷重2.16KgにおけるMFRが6〜40g/10分、(b)密度が0.910〜0.930g/cm、(c)耐折強度が3000回以上、(d)引裂き強度が1Kg/mm以上10Kg/mm以下、(e)揮発分が80ppm以下、(f)ビカット軟化点が90℃以上、(g)繰り返し折り曲げ試験後でも剥離が認められない、(h)耐ストレスクラック性(ESCR)が5時間以上のポリエチレン樹脂が提案されワンピース型容器蓋が可能となった(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、食品等を充填するには、その内容物の酸化劣化防止のため、さらに、容器及び容器蓋の酸化劣化防止性能の改善が求められている。
また、エチレン−ビニルアルコール共重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物に、必要によりポリエチレン、及びカルボン酸変性ポリエチレン接着性樹脂からなる樹脂組成物から成形されたことを特徴とするガスバリア性キャップが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、これをさまざまな食品容器に展開するには実用上問題点が多い。さらに、(a)ポリオレフィン樹脂と(b)エチレン−ビニルアルコール共重合体がそれぞれ55〜95容量%および45〜5容量%の関係を有する樹脂組成物で構成され、かつ、特定の相構造を形成する薬液及びガスの耐透過性に優れた射出成形品が開示されており、容器及び容器蓋用の材料として応用が可能である(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、一般に、バリア樹脂を多量に添加すればバリア性は良くなるが、製品が脆くなり、実用上問題点が多い。
【特許文献1】特開2005−60517号公報
【特許文献2】特公平7−112865号公報
【特許文献3】特開2002−249595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、成形性、高流動性、臭い、耐衝撃性、食品安全性に優れ、かつ、ガスバリア性に優れた、特に、射出成形性に優れ、酸素透過防止性に優れ、なおかつ耐衝撃性等の物性低下が少ないポリエチレン系成形材料、特に、食品を収容する容器及び容器蓋等を成形できるポリエチレン系成形材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のポリエチレンに特定量のエチレン−ビニルアルコール共重合体、変性ポリオレフィンを配合し、かつ特定の特性を満足するポリエチレン系材料が成形性、高流動性、臭い、耐衝撃性、食品安全性に優れ、かつ、ガスバリア性に優れた成形用材料となり得ることを見出し本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の成分(A)〜(C)を含有し、下記の特性(1)〜(4)の条件を満足することを特徴とするポリエチレン系成形材料が提供される。
成分(A)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分及び密度が0.910〜0.940g/cmのポリエチレン:50重量%を超え90重量%以下
成分(B)エチレン−ビニルアルコール共重合体:5〜30重量%
成分(C)不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーをポリオレフィンにグラフトした変性ポリオレフィン:5〜40重量%
特性(1)成形温度190℃、金型温度40℃におけるt=2mmのスパイラルフローが30cm以上
特性(2)密度が0.910〜1.01g/cm
特性(3)引張衝撃値が100KJ/m以上
特性(4)酸素透過度が180ml・mm/m・day・atm以下
【0007】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、上記成分(A)が、引裂き強度が0.5Kg/mm以上、15Kg/mm以下のポリエチレンであることを特徴とするポリエチレン系成形材料が提供される。
【0008】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、上記成分(B)が、下記の特性(b−1)〜(b−3)の条件を満足するエチレン−ビニルアルコール共重合体であることを特徴とするポリエチレン系成形材料が提供される。
特性(b−1)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが1〜20g/10分
特性(b−2)密度が1.10〜1.20g/cm
特性(b−3)エチレン共重合比率が10〜80mol%
【0009】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、上記成分(C)が、下記の特性(c−1)〜(c−2)の条件を満足する変性ポリオレフィンであることを特徴とするポリエチレン系成形材料が提供される。
特性(c−1)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが0.1〜50g/10分
特性(c−2)密度が0.915〜0.965g/cm
【0010】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、上記成分(A)が、メタロセン系触媒にて重合されたエチレン・α−オレフィン共重合体を30〜100重量%含み、残部70〜0重量%が高圧法低密度ポリエチレンからなることを特徴とするポリエチレン系成形材料が提供される。
【0011】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、上記成分(C)の変性ポリオレフィンが、不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーのグラフト率が、0.001〜5重量%であることを特徴とするポリエチレン系成形材料が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成形性、高流動性、臭い、耐衝撃性、食品安全性に優れ、かつ、ガスバリア性に優れたポリエチレン系成形材料が得られ、特に射出成形性に優れ、酸素透過防止性に優れ、なおかつ耐衝撃性等の物性低下が少ない容器及び容器蓋用ポリエチレン系成形材料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、(A)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分及び密度が0.910〜0.940g/cmのポリエチレン、(B)エチレン−ビニルアルコール共重合体、(C)不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーをポリオレフィンにグラフトした変性ポリオレフィンを含有し、特性(1)成形温度190℃、金型温度40℃におけるt=2mmのスパイラルフローが30cm以上、特性(2)密度が0.910〜1.01g/cm、特性(3)引張衝撃値が100KJ/m以上、特性(4)酸素透過度が180ml・mm/m・day・atm以下を満足するポリエチレン系成形材料である。以下に本発明を各項目毎に詳細に説明する。
【0014】
1.ポリエチレン系成形材料の構成成分
(A)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分及び密度が0.910〜0.940g/cmのポリエチレン
本発明のポリエチレン系成形材料で用いる(A)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分及び密度が0.910〜0.940g/cmのポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、又はこれらの混合物が好ましく例示され、エチレンと、あるいは炭素数4〜18のα−オレフィンから選ばれる1種又はそれ以上のコモノマーとのエチレン・α−オレフィン共重合体を含むものである。共重合体に用いるα−オレフィンの代表例としては、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いるポリエチレン(A)の温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートは0.1〜100g/10分であり、6〜50g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは8〜20g/10分である。温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが0.1g/10分未満では、成形性が劣る傾向があり、100g/10分を超えると衝撃強度などの特性が劣りやすくなる。温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートは、重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、所望のものを得ることができる。
ここで、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートは、JIS−K6922−2:1997に準じて測定される値である。
【0016】
本発明で用いるポリエチレン(A)の密度は、0.910〜0.940g/cmであり、好ましくは0.918〜0.935g/cmである。密度が0.910g/cm未満では、剛性が劣り成形体が変形しやすくなり、0.940g/cm超えるとスコア切れ性が低下しやすい。密度は、オレフィンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることができ、所望のものを得ることができる。
ここで、密度は、JIS−K6922−1,2:1997に準じて測定される値である。
【0017】
本発明で用いるポリエチレン(A)の引裂き強度は、0.5Kg/mm以上、15Kg/mm以下が好ましく、さらに好ましくは1.0Kg/mm以上、10Kg/mm以下である。引裂き強度が1Kg/mm未満では不必要な応力により容易に引裂かれてしまいやすく、10Kg/mmを超えるとスコアがついていても引裂きし難くなる傾向がある。引裂き強度は、メルトフローレート、密度を増減させることにより調節することができ、密度を増加又はメルトフローレートを低下させると引裂き強度を上げることができる。
ここで、引裂き強度は、試験片として190℃で成形した120×120×2mmの板を用い、JIS−K7128−3に準拠して測定される値である。
【0018】
本発明で用いる成分(A)の製造方法は、上記物性を満足する限り触媒、製造方法等を特に限定するものではなく、チーグラー系触媒やメタロセン系触媒などの重合用触媒を用いて、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法などの製造プロセスにより製造することができる。
【0019】
(A)成分の中でも、好ましい一つとして挙げられる高圧法低密度ポリエチレンは、高圧ラジカル重合法により製造される低密度ポリエチレンであり、例えば、圧力500〜3500Kg/cmGの範囲、重合温度は100〜400℃の範囲、重合開始剤として酸素又は有機過酸化物を用いたラジカル重合で、オートクレーブ型あるいはチューブラー型反応器にて製造することができる。高圧ラジカル法低密度ポリエチレンとしては、密度が0.915〜0.925g/cm、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが10〜50g/10分のものが好ましい。
【0020】
また、(A)成分として、好ましいものとして挙げられるのが、所謂メタロセン触媒によって製造されたポリエチレンである。これは、少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含むシングルサイト系(シングルサイト系)触媒の存在下にエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合させるものが好ましく挙げられる。
【0021】
上記シングルサイト系触媒としては、以下の触媒成分(a1)〜触媒成分(a4)の化合物を混合して得られる触媒を用いて製造する方法が代表的なものとして例示される。以下に、詳説する。
【0022】
触媒成分(a1):一般式(1)で表される化合物
Me(OR4−p−q−r …(1)
(式中、Meはジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R及びRはそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、Rは2,4−ペンタンジオナト配位子又はその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子又はその誘導体、Xはハロゲン原子を示し、p、q及びrはそれぞれ0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を示す整数である。)
【0023】
一般式(1)中、Meはジルコニウム、チタン、ハフニウムを示すが、これらの遷移金属の種類はいずれか一種類に限定されるものではなく、複数を用いることもできる。R及びRはそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフィル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。Rは、2,4−ペンタンジオナト配位子又はその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子又はその誘導体を示す。Xはフッ素、ヨウ素、塩素及び臭素などのハロゲン原子を示す。p、q及びrはそれぞれ0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦P+q+r≦4の範囲を満たす整数である。
【0024】
上記触媒成分(a1)の一般式で示される化合物の例としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタン、テトラブトキシハフニウムなどが挙げられ、特にテトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのZr(OR)化合物が好ましく、これらを2種類以上混合して用いても差し支えない。
また、前記2,4−ペンタンジオナト配位子又はその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子又はその誘導体の具体例としては、テトラ(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム、トリ(2,4−ペンタンジオナト)クロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジクロライドジルコニウム、(2,4−ペンタンジオナト)トリクロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジベンジルジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジネオフィルジルコニウム、テトラ(ジベンゾイルメタナト)ジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルアセトナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルアセトナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルアセトナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム等が挙げられる。
【0025】
触媒成分(a2):一般式(2)で表される化合物
Me(ORz−m−n …(2)
(式中、Meは周期律表第I〜III族元素、R及びRはそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、Xはハロゲン原子又は水素原子(ただし、Xが水素原子の場合はMeは周期律表第III族元素の場合に限る)を示し、zはMeの価数を示し、m及びnはそれぞれ0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を示す整数であり、かつ0≦m+n≦zである。)
【0026】
一般式(2)中、Meは周期律表第I〜III族元素を示し、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどである。R及びRはそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフィル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。Xはフッ素、ヨウ素、塩素及び臭素などのハロゲン原子又は水素原子を示すものである。ただし、Xが水素原子の場合はMeはホウ素、アルミニウムなどに例示される周期律表第III族元素の場合に限るものである。また、zはMeの価数を示し、m及びnはそれぞれ0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ0≦m+n≦zである。
【0027】
触媒成分(a3):共役二重結合を持つ有機環状化合物
触媒成分(a3)の共役二重結合を持つ有機環状化合物は、環状で共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個を有する環を1個又は2個以上持ち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基(典型的には、炭素数1〜12のアルキル基又はアラルキル基)で置換された環状炭化水素化合物;共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個又は2個以上持ち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基又はアルカリ金属塩(ナトリウム塩又はリチウム塩)で置換された有機ケイ素化合物が含まれる。特に好ましくは分子中のいずれかにシクロペンタジエン構造を持つものが望ましい。上記の好適な化合物としては、シクロペンタジエン、インデン、アズレン又はこれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ又はアリールオキシ誘導体などが挙げられる。また、これらの化合物がアルキレン基(その炭素数は通常2〜8、好ましくは2〜3)を介して結合(架橋)した化合物も好適に用いられる。
【0028】
上記環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物は、一般式(3)で表すことができる。
SiR4−L …(3)
(式中、Aは環状炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜24の炭化水素残基又は水素を示し、Lは1≦L≦4である。)
【0029】
一般式(3)において、Aはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基で例示される前記環状炭化水素基を示し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジル基などのアラルキル基で示され、炭素数1〜24、好ましくは1〜12の炭化水素残基又は水素を示し、Lは1≦L≦4、好ましくは1≦L≦3である。
【0030】
上記触媒成分(a3)の有機環状炭化水素化合物の具体例として、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、1,3−ジメチルシクロペンタジエン、インデン、4−メチル−1−インデン、4,7−ジメチルインデン、シクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、アズレン、フルオレン、メチルフルオレンのような炭素数5〜24のシクロポリエン又は置換シクロポリエン、モノシクロペンタジエニルシラン、ビスシクロペンタジエニルシラン、トリスシクロペンタジエニルシラン、モノインデニルシラン、ビスインデニルシラン、トリスインデニルシランなどが挙げられる。
【0031】
触媒成分(a4):Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物及び/又はホウ素化合物
触媒成分(A4)のAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物とは、アルキルアルミニウム化合物と水とを反応させることにより、通常アルミノキサンと称される変性有機アルミニウムオキシ化合物が得られ、分子中に通常1〜100個、好ましくは1〜50個のAl−O−Al結合を含有する。また、変性有機アルミニウムオキシ化合物は線状でも環状でもいずれでもよい。
有機アルミニウムと水との反応は、通常不活性炭化水素中で行なわれる。該不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましい。水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は通常0.25/1〜1.2/1、好ましくは0.5/1〜1/1であることが望ましい。
【0032】
触媒成分(a4)のホウ素化合物としては、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリエチルアルミニウムトリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウムジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0033】
上記触媒は、触媒成分(a1)〜触媒成分(a4)を混合接触させて使用してもよいが、好ましくは無機担体及び/又は粒子状ポリマー担体(a5)に担持させて使用することが望ましい。該無機担体及び/又は粒子状ポリマー担体(a5)とは、炭素物質、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩又はこれらの混合物あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0034】
該無機担体に用いることができる好適な金属としては、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。具体的にはその酸化物として、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等又はこれらの混合物が挙げられ、SiO−Al、SiO−V、SiO−TiO、SiO−MgO、SiO−Cr等が挙げられる。これらの中でもSiO及びAlからなる群から選択された少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。また、有機化合物としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用でき、具体的には、粒子状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリメタアクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリノルボルネン、各種天然高分子及びこれらの混合物等が挙げられる。上記無機担体及び/又は粒子状ポリマー担体は、このまま使用することもできるが、好ましくは予備処理としてこれらの担体を有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物などに接触させた後に成分(a5)として用いることもできる。
【0035】
成分(A)の好ましい重合方法は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で製造することができ、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で製造される。重合条件は特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃であり、重合圧力は低中圧法の場合通常常圧〜7MPa・Gauge(70kg/cmG)、好ましくは常圧〜2MPa・Gauge(20kg/cmG)であり、高圧法の場合通常150MPa・Gauge(1500kg/cmG)以下が望ましい。重合時間は低中圧法の場合通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度が望ましい。高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度が望ましい。また、重合は、一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法など特に限定されるものではない。特に好ましい製造方法としては、特開平5−132518号公報に記載の方法が挙げられる。
【0036】
(A)成分として、特に好ましいのは、メタロセン系触媒にて重合されたエチレン・α−オレフィン共重合体を少なくとも30〜100重量%含み、残部70〜0重量%が高圧法低密度ポリエチレンからなるものが挙げられる。
また、(A)成分のポリエチレンには、本発明の効果を著しく損なわない範囲で添加剤、充填材等を添加しても良い。添加剤として、例えば酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を1種又は2種以上適宜併用することができる。充填材としては、例えばタルク、マイカ等が使用できる。成分(A)のポリオレフィンは連続的に多段重合してもよく、別々に重合した後ブレンドして得ることも可能である。いずれの場合でも、上記ポリエチレンに必要に応じ各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。
【0037】
本発明のポリエチレン系成形材料において、(A)成分の配合量は、50重量%を超え90重量%以下であり、好ましくは50重量%を超え80重量%以下である。(A)成分の配合量が50重量%以下では、成形性が低下し、また、脆くなることおよび硬くなることにより、実用性能上劣り、90重量%を超えるとガスバリア性が満たされなくなる。
【0038】
(B)エチレン−ビニルアルコール共重合体
本発明のポリエチレン系成形材料で用いる(B)エチレン−ビニルアルコール共重合体としては、下記の特性(b−1)〜(b−3)の条件を満足するものが好ましい。
【0039】
特性(b−1)メルトフローレート
エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)の温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートは、1〜20g/10分を満足することが好ましい。温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが1g/10分未満では成形性が悪く、20g/10分を超えるとガスバリア性が低下する。温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートは、重合温度や連鎖移動剤の使用等により変化させることができ、所望のものを得ることができる。
ここで、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートは、JIS−K6922−2:1997に準じて測定される値である。
【0040】
特性(b−2)密度
エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)の密度は、1.10〜1.20g/cmを満足することが好ましい。密度が1.10g/cm未満では剛性が劣り成形体が変形しやすくなり、1.20g/cm超えるとスコア切れ性が低下する傾向がある。密度は、オレフィンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることができ、所望のものを得ることができる。
ここで、密度はJIS−K6922−1,2:1997に準じて測定される値である。
【0041】
特性(b−3)エチレン共重合比率
エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)のエチレン共重合比率は、10〜80mol%が好ましく、より好ましくは20〜50mol%である。また、鹸化度は、好ましくは80%以上、好適には85%以上である。エチレン含有量が10mol%未満では溶融成形性が悪くなりやすく、一方80mol%を超えると、ガスバリア性が不足しやすい。また、鹸化度が80%未満では、ガスバリア性及び熱安定性が悪くなりやすい。
【0042】
本発明のポリエチレン系成形材料において、(B)成分の配合量は、5〜30重量%であり、好ましくは5〜25重量%である。(B)成分の配合量が5重量%未満ではガスバリア性が発現せず、30重量%を超えると機械物性が低下し、実用性能上使用できないことになりやすい。
【0043】
(C)変性ポリオレフィン
本発明のポリエチレン系成形材料で用いる(C)変性ポリオレフィンは、不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーをポリオレフィンにグラフトした変性ポリオレフィンであり、下記の特性(c−1)〜(c−2)の条件を満足するものが好ましい。
【0044】
特性(c−1)メルトフローレート
変性ポリオレフィン(C)の温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートは、0.1〜50g/10分が好ましく、さらに好ましくは0.15〜30g/10分であり、特に好ましくは0.2〜20g/10分である。温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが0.1g/10分未満では、成形体に加工する際、加工機のモーターに過負荷がかかるために生産効率を低下させ、50g/10分を超えると、成形体の酸素透過防止性が低下するおそれがある。
ここで、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートは、JIS−K6922−2:1997に準拠して測定される値である。
【0045】
特性(c−2)密度
変性ポリオレフィン(C)の密度は、0.915〜0.965g/cmが好ましく、さらに好ましくは0.917〜0.961g/cmであり、特に好ましくは0.920〜0.957g/cmである。密度が0.915g/cm未満では、成形体の剛性が低下しやすく、また酸素透過防止性や耐油性が低下しやすく、0.965g/cmを超えると成形体の耐衝撃性が低下するおそれがある。
ここで、密度は、JIS−K6922−1,2:1997に準拠し測定される値である。
【0046】
本発明の(C)変性ポリオレフィンは、不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーをポリオレフィンにグラフトした変性ポリオレフィンであり、ポリオレフィンに、有機過酸化物等のラジカル発生剤の存在下で、不飽和カルボン酸カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーをグラフトさせることにより得ることができる。
【0047】
変性ポリオレフィンの原料となるポリオレフィンとしては、エチレン単独重合体あるいはエチレンとα−オレフィンとの共重合体が好ましい。α−オレフィンとしては、直鎖又は分岐鎖状の炭素数3〜20のオレフィンが好ましく、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンを挙げることができる。またそれらを2種類以上組み合わせて使用しても良い。これら共重合体の中でも、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体が経済性の観点から好適である。上記ポリオレフィンは、特に触媒、プロセス等を限定されるものではなく、通常一般の方法により製造することが可能である。即ち、チーグラー系触媒、シングルサイト系触媒等や、スラリー法、溶液法、気相法の各重合様式にて、各種重合器、重合条件、触媒にて製造することが可能であるが、好ましくは、特公昭55−14084号公報などに記載の特定のチーグラー系触媒あるいはシングルサイト系触媒を用いて重合温度、圧力等の重合条件、助触媒等をコントロールすることにより好適に製造可能である。
【0048】
本発明の変性ポリオレフィンにグラフトされる不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、一塩基不飽和カルボン酸及び二塩基不飽和カルボン酸ならびにこれらの金属塩、アミド、イミド、エステル及び無水物が挙げられる。これらのうち、一塩基不飽和カルボン酸の炭素数は一般的には多くとも20個以下、好ましくは15個以下である。また、その誘導体の炭素数は通常多くとも20個以下、好ましくは15個以下である。さらに二塩基性不飽和カルボン酸の炭素数は一般的には30個以下、好ましくは25個以下である。また、その誘導体の炭素数は通常30個以下、好ましくは25個以下である。これらの不飽和カルボン酸及びその誘導体の中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びその無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸及びその無水物ならびにメタクリル酸グリシジルが好ましく、特に無水マレイン酸及び5−ノルボルネン酸無水物が好適である。
【0049】
本発明の(C)変性ポリオレフィンを製造する際に、ラジカル開始剤を用いることができる。その種類は特に限定されないが、好ましくは有機過酸化物が望ましい。有機過酸化物としては、半減期の分解温度が100℃以上のものが好適である。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどが挙げられる。
【0050】
本発明の(C)変性ポリオレフィンは、上記のポリオレフィンと、上記の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体、有機過酸化物とを均一混合し処理することにより製造される。具体的には、押出機やバンバリーミキサー、ニーダーなどを用いる溶融混練法、適当な溶媒に溶解させる溶液法、適当な溶媒中に懸濁させるスラリー法、あるいはいわゆる気相グラフト法等が挙げられる。グラフト処理温度としては、ポリオレフィンの劣化、不飽和カルボン酸やその誘導体の分解、使用する過酸化物の分解温度などを考慮して適宜選択されるが、前記の溶融混練法を例に挙げると、通常190〜350℃であり、とりわけ200〜300℃が好適である。
また、本発明の(C)変性ポリオレフィンを製造するにあたり、その性能を向上する目的で、特開昭62−10107号公報に記載のごとく既に公知の方法、例えば前記のグラフト変性時あるいは変性後にエポキシ化合物又はアミノ基もしくは水酸基などを含む多官能性化合物で処理する方法、さらに加熱や洗浄などによって未反応モノマー(不飽和カルボン酸やその誘導体)や副生する諸成分などを除去する方法を採用することができる。
【0051】
上記不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーのグラフト量は高いほど望ましいが、好ましくは0.001〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体のグラフと量が0.001重量%未満であると、グラフト変性が不十分となり、組成物成分の分散状態が不十分となり、また、最終的に得られる成形品の機械的強度が低下することがある。一方、5重量%を超えると、得られる変性ポリオレフィンのゲル化、劣化、着色等のおそれがある。また、ラジカル開始剤の添加量は、好ましくは0.001〜0.50重量%であり、より好ましくは0.005〜0.30重量%であり、特に好ましくは0.010〜0.30重量%である。ラジカル開始剤の割合が0.001重量%未満であると、グラフト変性を完全に行うには長時間を要する。又は、ポリオレフィンのグラフト変性が不十分となり、成分分散状態が不十分になることがある。一方、0.50重量%を超えると、ラジカル開始剤によって過度に分解したり、架橋反応を起こすことがある。
【0052】
本発明のポリエチレン系成形材料において、(C)成分の配合量は、5〜40重量%であり、好ましくは5〜30重量%である。成分(C)の配合量が5重量%未満では、(A)、(B)、(C)の3成分が分散しにくくなり、40重量%を超えると製品が劣化しやすくなる。
【0053】
(D)その他の成分
本発明のポリエチレン系成形材料には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で添加剤、充填材等を添加しても良い。添加剤としては、例えば、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられ、これらを1種又は2種以上適宜併用することができる。充填材としては、例えばタルク、マイカ等を使用できる。
【0054】
2.成形材料の製造と特性
本発明のポリエチレン系成形材料は、前記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、必要に応じて、他の成分を任意の順番に配合して、一軸押出機、二軸押出機、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等通常の混練機を用いて溶融混練することによって得られる。この場合、各成分の分散を良好にすることができる溶融混練方法を選択することが好ましく、二軸押出機を用いて、溶融混練することが好ましい。
また、このようにして得られる本発明のポリエチレン系成形材料は、次の特性(1)〜(4)を満足する必要がある。
【0055】
特性(1)スパイラルフロー
本発明のポリエチレン系材料は、成形温度190℃、金型温度40℃におけるt=2mmのスパイラルフローが30cm以上であり、好ましくは35cm以上である。このスパイラルフローに特に上限はもうけないが、一般には100cm以下である。このスパイラルフローが30cm未満であれば成形性が低下する。
ここで、スパイラルフローは、幅10mm、厚み2mm、最長流路長2000mmのスパイラル流路を有する金型を用い、東芝機械株式会社製IS−80EPN射出成形機を用い、設定温度190℃、射出圧力75MPa、保持圧力75MPa、保圧切り替え位置7mm、射出時間5秒、冷却時間10秒にて、クッション量が1.9〜2.1mmとなるように計量位置を調整し、試料の最長流動長を測定するものである。
【0056】
特性(2)密度
本発明のポリエチレン系成形材料は、密度が0.910〜1.01g/cmであり、好ましくは0.919〜1.00g/cmである。密度が0.910g/cm未満では剛性が劣り、容器及び容器蓋等に用いた場合は変形しやすくなり、1.01g/cmを超えると柔軟性が劣り、実用上好ましくない。
ここで、密度はJIS−K6922−1,2:1997に準じて測定される。
【0057】
特性(3)引張衝撃値
本発明のポリエチレン系成形材料は、引張衝撃値が100KJ/m以上であり、好ましくは130KJ/m以上である。この引張衝撃値は特に上限はもうけないが、一般には2000KJ/m以下である。引張衝撃値が100J/m未満では衝撃強度が低く、実用上、好ましくない。
ここで、引張衝撃値はJIS−K6922−2:1997に準じて測定される。
【0058】
特性(4)酸素透過度
本発明のポリエチレン系成形材料は、酸素透過度は180ml・mm/m・day・atm以下であり、好ましくは150ml・mm/m・day・atm以下である。酸素透過度が180ml・mm/m・day・atmを超えると、容器等に用いる場合は容器内容物の酸化を抑制が不十分となり、食品等の長期間の保存が難しくなる。なお、酸素透過度が0.01〜180ml・mm/m・day・atmであれば実用的に支障なく採用可能である。
ここで、酸素透過度はJIS−K7126に基づき、40℃、50%RH条件で測定される。測定における試験片は、東芝機械社製IS−150E射出成形機にて190℃、金型温度40℃にて成形された120×120×1mmの平板を用いて行う。
【0059】
3.成形材料の用途
本発明のポリエチレン系成形材料は、上記特性(1)〜(4)の条件を満足するものであるので、成形性、高流動性、臭い、耐衝撃性、食品安全性、ガスバリア性、特に射出成形性、酸素透過防止性に優れ、なおかつ耐衝撃性に優れる。したがって、このような特性を必要とする、容器、容器蓋等の用途に使用でき、特に、食用油、わさび等の香辛料、調味料、アルコール飲料、炭酸飲料などの食品及び飲料容器や容器蓋、化粧品、ヘアクリーム等の容器及び容器蓋の用途に使用でき、射出成形等で成形される食品容器及びその容器蓋に好適に用いることができる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。なお、実施例で用いた測定方法、使用した材料は以下の通りである。
【0061】
1.測定方法
(1)成形温度190℃、金型温度40℃におけるt=2mmのスパイラルフロー:幅10mm、厚み2mm、最長流路長2000mmのスパイラル流路を有する金型を用い、東芝機械株式会社製IS−80EPN射出成形機を用い、設定温度190℃、射出圧力75MPa、保持圧力75MPa、保圧切り替え位置7mm、射出時間5秒、冷却時間10秒にて、クッション量が1.9〜2.1mmとなるように計量位置を調整し、試料の最長流動長を測定した。
(2)引張衝撃値:JIS−K6922−2:1997に準拠して測定した。
(3)酸素透過度:JIS−K7126に基づき、40℃、50%RH条件で測定した。測定における試験片は東芝機械社製IS−150E射出成形機にて190℃、金型温度40℃にて成形された120×120×1mmの平板を用いて行なった。
(4)温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート:JIS−K6922−2:1997に準拠して測定した。
(5)密度:JIS−K6922−1,2:1997に準拠して測定した。
(6)引裂強度:試験片として190℃で成形した120×120×2mmの板を用い、JIS−K7128−3に準拠して測定した。
(7)曲げ弾性率:JIS−K6922−2に準拠して測定した。
(8)耐折強度:射出成形にて15×110×1mmの試験片を作成し、JIS−P8115に準拠して測定した。
(9)定ひずみESCR:190℃にて射出成形された120×120×2mmの板から試験片を切り出し、JIS−K6922−2に準拠して測定した。
【0062】
2.使用樹脂
(1)(A)成分
製造例1で製造した直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(PE−1)、市販のチーグラー触媒によるポリエチレン(ZN:日本ポリエチレン株式会社製UJ270)、市販の高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(LDPE:日本ポリエチレン株式会社製LJ802)を配合して得た(A1)〜(A3)を用いた。PE−1、ZN、LDPEの密度及びメルトフローレートを表1に、(A1)〜(A3)の組成及び物性値を表2に示す。
【0063】
(製造例1)
(1)固体触媒の調製
電磁誘導撹拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラプロポキシジルコニウム(Zr(OPr))26g及びインデン22g及びメチルブチルシクロペンタジエン88gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2424ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m/g)2000gを加え、室温で1時間撹拌の後、40℃で窒素ブロー及び減圧乾燥を行ない、流動性のよい固体触媒を得た。
(2)気相重合
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度65℃、全圧2MPa・Gauge(20kgf/cmG)でエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセン及び水素等を所定のモル比に保つように供給して重合を行ない、エチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−1)を得た。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
(2)(B)成分
表3に示す性状の市販のエチレン−ビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製エバールG156(B1))を用いた。
【0067】
【表3】

【0068】
(3)(C)成分
製造例2〜3により得られた変性ポリエチレンを用いた。その性状を表4に示す。
【0069】
(製造例2)
特公昭55−14084号公報に記載のチーグラー触媒を用いスラリー重合によりエチレンとブテン−1を共重合してなるメルトフローレート3.2g/10分、密度0.955g/cmの性状を有するポリエチレン(D1)100重量部に、無水マレイン酸0.6重量部及び2,5−ジメチル−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.013重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合した後、モダンマシナリー株式会社製50mm単軸押出機を用いて、スクリュー回転数50rpm、樹脂温度280℃の条件で溶融混練し、メルトフローレート1.6g/10分、密度0.955g/cmの変性ポリエチレン(C1)を得た。
【0070】
(製造例3)
上記の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(PE−1)の製造方法に準じてエチレンとヘキセン−1を共重合して製造したメルトフローレート3.7g/10分、密度0.929g/cmの性状を有するポリエチレン(D2)100重量部に、無水マレイン酸0.6重量部及び2,5−ジメチル−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.013重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合した後、モダンマシナリー株式会社製50mm単軸押出機を用いて、スクリュー回転数50rpm、樹脂温度280℃の条件で溶融混練し、メルトフローレート2.1g/10分、密度0.929g/cmの変性ポリエチレン(C2)を得た。
【0071】
【表4】

【0072】
(実施例1〜6)
(A)〜(C)の各成分を表5に示す量の配合でそれぞれブレンドし、各種物性を測定した。その結果を表5に示す。表5から明らかなように、酸素透過防止性に優れ、ウェルド強度などの機械物性に優れたものが得られ、耐折強度等の容器蓋適性が優れていた。
【0073】
(比較例1〜4)
(A)〜(C)の各成分を表6に示す量の配合でそれぞれブレンドし、各種物性を測定した。その結果を表6に示す。表6から明らかなように、成分(B)エチレン−ビニルアルコールの配合量の少ない比較例1、3は酸素透過防止性に劣り、成分(A)ポリエチレンの配合量の少ない比較例2、4は引張衝撃強さ(ウェルド強度)が劣り、容器蓋適性が十分ではなかった。
【0074】
【表5】

【0075】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のポリエチレン系成形材料は、成形性、高流動性、柔軟性、耐ストレスクラック性、低臭気性、食品安全性に優れ、かつヒンジの耐久性と引裂き性の適度なバランスを有し、なおかつ、酸素透過防止性に優れ、ウェルド強度低下などの機械物性低下がないので、容器及び容器蓋とすることができ、工業的に非常に利用価値の高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)〜(C)を含有し、下記の特性(1)〜(4)の条件を満足することを特徴とするポリエチレン系成形材料。
成分(A)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分及び密度が0.910〜0.940g/cmのポリエチレン:50重量%を超え90重量%以下
成分(B)エチレン−ビニルアルコール共重合体:5〜30重量%
成分(C)不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーをポリオレフィンにグラフトした変性ポリオレフィン:5〜40重量%
特性(1)成形温度190℃、金型温度40℃におけるt=2mmのスパイラルフローが30cm以上
特性(2)密度が0.910〜1.01g/cm
特性(3)引張衝撃値が100KJ/m以上
特性(4)酸素透過度が180ml・mm/m・day・atm以下
【請求項2】
上記成分(A)が、引裂き強度が0.5Kg/mm以上、15Kg/mm以下のポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン系成形材料。
【請求項3】
上記成分(B)が、下記の特性(b−1)〜(b−3)の条件を満足するエチレン−ビニルアルコール共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエチレン系成形材料。
特性(b−1)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが1〜20g/10分
特性(b−2)密度が1.10〜1.20g/cm
特性(b−3)エチレン共重合比率が10〜80mol%
【請求項4】
上記成分(C)が、下記の特性(c−1)〜(c−2)の条件を満足する変性ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエチレン系成形材料。
特性(c−1)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが0.1〜50g/10分
特性(c−2)密度が0.915〜0.965g/cm
【請求項5】
上記成分(A)が、メタロセン系触媒にて重合されたエチレン・α−オレフィン共重合体を30〜100重量%含み、残部70〜0重量%が高圧法低密度ポリエチレンからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエチレン系成形材料。
【請求項6】
上記成分(C)の変性ポリオレフィンが、不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーのグラフト率が、0.001〜5重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレン系成形材料。

【公開番号】特開2007−161879(P2007−161879A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360211(P2005−360211)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】