説明

ポリエチレン系樹脂組成物、発泡体及びその製造方法

【課題】特定のエチレン系重合体を、クリーンな発泡剤である炭酸ガスにて押出発泡させて得られる高発泡倍率のポリエチレン連続気泡発泡体及び製造方法を提供する。
【解決手段】密度(d)が935kg/m以上であるエチレン系重合体からなる、発泡倍率が4〜30倍で連続気泡率が90%以上のポリエチレン連続気泡発泡体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂組成物に関するものである。更に詳細には、特定のエチレン系重合体とエチレン・酢酸ビニル共重合体とからなるポリエチレン系樹脂組成物、クリーンな発泡剤である炭酸ガスにて押出発泡させて得られる発泡体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂の発泡体は、緩衝材、クッション材、衝撃吸収材などを中心に幅広く用いられている。従来、ポリエチレン系樹脂で高発泡倍率の発泡体を得るためには、発泡剤としてブタン、ペンタン、ジクロロジフロロメタン(フロンR−12)のような有機ガス又は揮発性液体が用いられてきた。しかしながら、使用する発泡剤がブタン、ペンタンのような低沸点有機物である場合は、発泡体製造時に爆発性のガスが発生するので、爆発の危険性がある。また、使用する発泡剤がジクロロジフロロメタン(フロンR−12)である場合は、爆発の危険が少なく高発泡倍率の発泡体が得られ易いが、オゾン層破壊等の環境問題への配慮から、これらのフロン系ガスは全廃の方向へ進んでいる。
【0003】
上記問題点を解決するために、(1)発泡剤として二酸化炭素やアルゴンのような不活性ガスを用いて、低密度ポリエチレン系樹脂を押し出す方法(例えば、特許文献1参照)、(2)低密度ポリエチレン系樹脂をラジカル発生剤の存在下加熱するか、あるいは同樹脂を放射線照射により変性して得られる変性低密度ポリエチレン系樹脂に、二酸化炭素を混合し押し出す方法(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。
【0004】
また、一般に二酸化炭素、窒素等の不活性ガスはポリエチレンとの親和性が低く溶解性が乏しいことが知られているが、(3)二酸化炭素との親和性が高いと考えられるカルボニル基を含む共単量体を特定の割合で共重合したエチレン系共重合体を用いることで、二酸化炭素による押出発泡にて高発泡倍率のポリエチレン系発泡体を得る方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【0005】
さらに、本発明者らは、先に(4)、(5)特定の要件を満足するエチレン系重合体を押出発泡成形することによりポリエチレン押出発泡体を提供し得ることを見出している(特許文献4,5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平10−500151号公報
【特許文献2】特開2002−331566号公報
【特許文献3】特開2003−313347号公報
【特許文献4】特開2006−096910号公報
【特許文献5】特開2006−199872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発泡剤として不活性ガスを使用する上記特許文献1〜2の方法においては、発泡倍率が5倍程度までしか上がらない。また、上記特許文献3の方法では、発泡倍率30倍以上の発泡体が得られるものの、カルボニル基を含む共単量体を多く含むため、結晶性が低下し、耐熱性に劣る発泡体しか得られない。更に、本発明者らが先に提案した上特許文献4,5においては、特定の要件を満足するエチレン系重合体を押出発泡成形することにより高発泡倍率のポリエチレン押出発泡体が得られることは記載されているが、本発明者らの更なる研究により、得られる発泡体は柔軟性に劣り、緩衝材などの用途には応用が困難であることが明らかとなってきた。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を克服し、クリーンな無機ガスのうち、特に炭酸ガスを用いて、耐熱性に優れ、高発泡倍率で柔軟性に優れたポリエチレン発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、発泡剤として無機ガス、特に炭酸ガスを用いた場合に、特定のエチレン系重合体とエチレン・酢酸ビニル共重合体とからなるポリエチレン系樹脂組成物が発泡特性に優れることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記(A)、(B)を満足するエチレン系重合体99〜50重量%と酢酸ビニル含有量が5重量%以上であるエチレン・酢酸ビニル共重合体1〜50重量%とからなるポリエチレン系樹脂組成物、を要旨とする。
(A)JIS K6760に準拠して密度勾配管法により測定した密度(d)が935kg/m以上970kg/m以下。
(B)150℃、せん断速度60.8s−1で測定したスウェル比が1.60以上。
【0011】
以下に本発明に関し詳細に説明する。
【0012】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン系重合体は、(A)JIS K6760に準拠して密度勾配管法により測定した密度(d)が、935kg/m以上970kg/m以下、好ましくは940kg/m以上960kg/m以下のものである。ここで、密度(d)が935kg/m未満の場合、ポリエチレン系樹脂の融解温度が低くなりポリエチレン系樹脂組成物の耐熱性が低下する。一方、970kg/mを超える場合、機械的強度に劣るポリエチレン系樹脂組成物となる。
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン系重合体は、(B)150℃、せん断速度60.8s−1で測定したスウェル比が1.60以上のものである。ここで、スウェル比が1.60未満である場合、ポリエチレン系樹脂組成物を発泡成形体とする際のガス抜けが大きくなり、発泡倍率が低下し、製品形状の制御が困難となったり、特殊な温度制御が必要となり、その成形性が劣るばかりか、安定して発泡成形体を得ることができなくなる。
【0013】
なお、本発明におけるスウェル比の測定には、長さが40mm、直径が1mm、流入角90°であるダイスを有するキャピラリーレオメーターを使用する。JIS K 7199に従って、150℃、せん断速度60.8s−1において、溶融状態のエチレン系重合体を押し出す。押し出されたストランドの長さがダイス出口から20mmになった時点で、ダイス出口から15mm下の位置でのストランドの直径を測定する。測定値を用いてスウェル比は下式により算出する。
【0014】
スウェル比=L/L
ここで、Lはストランドの直径(mm)、Lはダイスの直径(mm)である。
【0015】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン系重合体は、190℃で、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(以下、MFRと記す。)が、0.1g/10分以上30g/10分以下のものが好ましく、さらに好ましくは1g/10分以上20g/10分以下のものである。ここで、MFRが0.1g/10分以上である場合、得られるポリエチレン系樹脂組成物を発泡成形体とする際の押出機の負荷が小さくなり、生産性が向上すると共に、成形品とする際の成形加工性に優れるポリエチレン系樹脂組成物となる。一方、30g/10分以下の場合、成形加工性、機械的強度に優れるポリエチレン系樹脂組成物が得られる。
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン系重合体は、重量平均分子量(以下、Mwと記す。)と数平均分子量(以下、Mnと記す。)の比(Mw/Mn)が5以上12以下であることが好ましく、特に6以上11以下であることが好ましい。ここで、Mw/Mnが5未満の場合、気泡が均一な発泡成形体が得られなくなる。一方、Mw/Mnが12を超える場合、得られるポリエチレン系樹脂組成物を発泡成形体とする際の成形加工温度の厳密な調節が必要となり、ひいては成形可能範囲が狭くなるばかりか、気泡が均一な発泡成形体を得ることができなくなる。
【0016】
なお、本発明でいうMw及びMnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)によって測定した溶出曲線より標準ポリエチレン換算値として算出することが可能である。
【0017】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン系重合体は、145〜190℃の範囲で求めた流動の活性化エネルギー(kJ/mol)(以下、Eaと記す場合がある。)が、40kJ/mol以下のものが好ましい。ここで、Eaが40kJ/mol以下のを超える場合、溶融粘度の温度依存性が小さくなるため、このようなエチレン系重合体を配合したポリエチレン系樹脂組成物は成形加工温度の調節が容易で、成形可能範囲が広くなる。
【0018】
なお、本発明におけるEaは、145〜190℃の温度範囲における動的粘弾性測定を行い、得られるシフトファクターをアレニウス式に代入することにより求めることができる。
【0019】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有率が5重量%以上、好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上のものである。ここで、酢酸ビニル含有率が5重量%未満である場合、エチレン系重合体に配合しポリエチレン系樹脂組成物とした後に成形して得られる発泡体の柔軟性が劣るものとなるため、用途が制限される。
【0020】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン系重合体とエチレン・酢酸ビニル共重合体の混合比率は、99/1〜50/50(重量%)、好ましくは95/5〜55/45(重量%)、更に好ましくは90/10〜60/40(重量%)である。エチレン系重合体の比率が99重量%を超えると、ポリエチレン系樹脂組成物とした際の柔軟性が低くなり、成形して得られる発泡体の柔軟性も劣るものとなる。また、エチレン系重合体の比率が50重量%より少ないとポリエチレンが本来有している耐熱性が低下することとなる。
【0021】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン系重合体とエチレン・酢酸ビニル共重合体を配合する際には、通常樹脂組成物とする際の方法を用いることができ、例えば溶融・混合方法として、押出混練、ロール混練など公知の方法を挙げることができ、該方法で溶融混練することにより得ることができる。
【0022】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物には、さらに本発明の要旨を逸脱しない範囲において、必要に応じて、安定剤、滑剤、難燃剤、分散剤、充填剤、発泡剤、発泡核剤、架橋剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、着色剤などを含有させることができる。また、他の熱可塑性樹脂と混合して用いることもできる。これらの例として、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、これらの無水マレイン酸グラフト物等を例示することができる。
【0023】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン系重合体の製造方法としては、上記要件を満足するエチレン系重合体の製造が可能であれば如何なる製造方法を用いることも可能であり、例えば重合触媒及び/又は重合条件を多段階で変更する多段重合法、複数の重合触媒を混合した触媒による重合法、同一又は異なる重合触媒で調製した複数のエチレン系重合体をブレンドする方法等を挙げることができる。
【0024】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン系重合体は、後述する本願実施例の製造条件そのもの、あるいは条件因子のマイナー変動によって任意に作り分けることが可能である。条件因子変動の具体例を述べると、用いる成分(a)および成分(b)の構造、成分(a)に対する成分(b)の量、用いる助触媒成分の種類など触媒成分に関する要件や、重合温度、エチレン分圧、共存させる水素などの分子量調整剤の量、添加するコモノマー量など重合条件制御によっても作り分けが可能である。またさらに多段重合との組み合わせで、物性の範囲を拡大することも可能である。
【0025】
より具体的には、例えばスウェル比は、成分(a)の選択または炭素数3〜8のα−オレフィンの添加量の増加により、成分(a)で得られるエチレン系重合体成分の末端ビニル数を増加させること、成分(b)の選択または成分(a)に対する成分(b)の比率増加により、ポリエチレン系樹脂の長鎖分岐数を増加させること、成分(a)の選択による成分(a)で得られるエチレン系重合体成分の分子量低下、または、成分(b)の選択による成分(b)で得られるエチレン系重合体成分の分子量増加によりMw/Mnを増加させること等により増加させることが可能である。
【0026】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン系重合体の製造に用いる重合触媒としては、例えば、特開2004−346304号公報、特開2005−248013号公報、特開2006−321991号公報、特開2007−169341号公報、特開2008−50278号公報に記載の重合触媒を挙げることができる。例えばメタロセン化合物として、2つの置換または非置換シクロペンタジエニル基が2種類以上の原子の連鎖からなる架橋基で架橋されているか、もしくは2個以上の原子の連鎖からなる架橋基で架橋されている架橋型ビス(置換または非置換シクロペンタジエニル)ジルコニウム錯体[成分(a)]と、成分(a)とは異なる構造を有する架橋型ビス(置換または非置換シクロペンタジエニル)ジルコニウム錯体[成分(b)]を用いたメタロセン触媒の存在下に、エチレンを重合する、またはエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンを共重合する方法を用いることができる。
【0027】
成分(a)の具体例としては、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウム、ジクロライド1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1,1−ジメチル−1−シラエタン−1,2−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、プロパン−1,3−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ブタン−1,4−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、シス−2−ブテン−1,4−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1,1,2,2−テトラメチルジシラン−1,2−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等のジクロライドおよび上記遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体を例示することができる。また上記遷移金属化合物のシクロペンタジエニル誘導体の水素が炭化水素基で置換されたもの、中心金属のジルコニウム原子をチタン原子またはハフニウム原子に置換した化合物も例示することもできる。
【0028】
成分(b)の具体例としては、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−トリメチルシリル−1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイル(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−フェニル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等のジクロライドおよび上記遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体を例示することができる。また上記遷移金属化合物のシクロペンタジエニル誘導体の水素が炭化水素基で置換されたもの、中心金属のジルコニウム原子をチタン原子またはハフニウム原子に置換した化合物も例示することもできる。
【0029】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン系重合体の製造における、成分(a)に対する成分(b)の量は、特に制限はなく、0.0001〜100倍モルであることが好ましく、特に好ましくは0.001〜10倍モルである。
【0030】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン系重合体の製造に用いることができる方法における成分(a)と成分(b)を用いたメタロセン触媒としては、成分(a)と成分(b)と有機アルミニウム化合物[成分(c)]からなる触媒、成分(a)と成分(b)とアルミノオキサン[成分(d)]からなる触媒、さらに成分(c)を含んでなる触媒、成分(a)と成分(b)とプロトン酸塩[成分(e)]、ルイス酸塩[成分(f)]又は金属塩[成分(g)]から選ばれる少なくとも1種類の塩からなる触媒、さらに成分(c)を含んでなる触媒、成分(a)と成分(b)と成分(d)と無機酸化物[成分(h)]からなる触媒、成分(a)と成分(b)と成分(h)と成分(e)、成分(f)、成分(g)から選ばれる少なくとも1種類の塩からなる触媒、さらに成分(c)を含んでなる触媒、成分(a)と成分(b)と粘土鉱物[成分(i)]と成分(c)からなる触媒、成分(a)と成分(b)と有機化合物で処理された粘土鉱物[成分(j)]からなる触媒を例示することができるが、好ましくは成分(a)と成分(b)と成分(j)からなる触媒を用いることができる。
【0031】
成分(i)および成分(j)として用いることが可能な粘土鉱物は、微結晶状のケイ酸塩を主成分とする微粒子である。粘土鉱物の大部分は、その構造上の特色として層状構造を成しており、層の中に種々の大きさの負電荷を有することが挙げられる。この点で、シリカやアルミナのような三次元構造を持つ金属酸化物と大きく異なる。これらの粘土鉱物は、一般に層電荷の大きさで、パイロフィライト、カオリナイト、ディッカイトおよびタルク群(化学式当たりの負電荷がおよそ0)、スメクタイト群(化学式当たりの負電荷がおよそ0.25から0.6)、バーミキュライト群(化学式当たりの負電荷がおよそ0.6から0.9)、雲母群(化学式当たりの負電荷がおよそ1)、脆雲母群(化学式当たりの負電荷がおよそ2)に分類されている。ここで示した各群には、それぞれ種々の粘土鉱物が含まれるが、スメクタイト群に属する粘土鉱物としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト等が挙げられる。また、上記粘土鉱物は複数混合して用いることもできる。
【0032】
成分(j)における有機化合物処理とは、粘土鉱物層間に有機イオンを導入し、イオン複合体を形成することをいう。有機化合物処理で用いられる有機化合物としては、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−エイコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−ドコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルオレイルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−ビス(n−オクタデシル)アミン塩酸塩、N−メチル−ビス(n−エイコシル)アミン塩酸塩、N−メチル−ジオレイルアミン塩酸塩、N−メチル−ジベヘニルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルアニリン塩酸塩を例示することができる。
【0033】
成分(a)と成分(b)と成分(j)からなる触媒は、有機溶媒中、成分(a)と成分(b)と成分(j)を接触させることによって得られるが、成分(a)と成分(j)の接触生成物に成分(b)を添加する方法、成分(b)と成分(j)の接触生成物に成分(a)を添加する方法、成分(a)と成分(b)の接触生成物に成分(j)を添加する方法、成分(j)に成分(a)と成分(b)の接触生成物を添加する方法を例示することができる。
【0034】
接触溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタンもしくはシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエンもしくはキシレン等の芳香族炭化水素類、エチルエーテルもしくはn−ブチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレンもしくはクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、1,4−ジオキサン、アセトニトリルまたはテトラヒドロフランを例示することができる。
【0035】
接触温度については、0〜200℃の間で選択して処理を行うことが好ましい。
【0036】
各成分の使用量は、成分(j)1gあたり成分(a)が、0.0001〜100mmol、好ましくは0.001〜10mmolである。
【0037】
このようにして調製された成分(a)と成分(b)と成分(j)の接触生成物は、洗浄せずに用いても良く、また洗浄した後に用いても良い。また、成分(a)または成分(b)がジハロゲン体の時、さらに成分(c)を添加することが好ましい。また、成分(j)、重合溶媒およびオレフィン中の不純物を除去することを目的に成分(c)を添加することができる。
【0038】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン系重合体の製造に用いることができる方法において、重合温度は−100〜120℃が好ましく、特に生産性を考慮すると20〜120℃、さらには60〜120℃の範囲で行うことが好ましい。重合時間は10秒〜20時間の範囲が好ましく、重合圧力は常圧〜300MPaの範囲で行うことが好ましい。エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンの供給割合として、エチレン/炭素数3〜8のα−オレフィン(モル比)が、1〜200、好ましくは3〜100、さらに好ましくは5〜50の供給割合を用いることができる。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段階以上に分けて行うことも可能である。また、エチレン系共重合体は、重合終了後に従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0039】
重合はスラリー状態、溶液状態または気相状態で実施することができ、特に、重合をスラリー状態で行う場合にはパウダー粒子形状の整ったエチレン系共重合体を効率よく、安定的に生産することができる。また、重合に用いる溶媒は一般に用いられる有機溶媒であればいずれでもよく、具体的には例えばベンゼン、トルエン、キシレン、プロパン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ガソリン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0040】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン系重合体には、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、必要に応じて、さらに安定剤、滑剤、難燃剤、分散剤、充填剤、発泡剤、発泡核剤、架橋剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、着色剤などを含有させることができる。
【0041】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡体は、緩衝性の観点から発泡倍率が3倍以上であることが好ましい。
【0042】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡体の厚み方向に対する25%圧縮時の圧縮応力は1〜80kPa、好ましくは1〜50kPa、更に好ましくは1〜30kPaであることが好ましい。25%圧縮時の圧縮応力が1kPa未満では、圧縮に対して容易に変形してしまう。一方、80kPaを越える圧縮応力では、柔軟性を必要とする用途への応用が困難となる。
【0043】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡体は、50%圧縮時の圧縮永久歪みが20%以下であることが好ましい。50%圧縮時の圧縮永久歪みが20%を超える場合、発泡体が歪易くなるために、寸法安定性を必要とする用途への応用が困難となる。
【0044】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡体は、JIS A9511に準拠して測定した120±5℃の厚さ収縮率が7%以下であることが好ましい。厚さ収縮率が7%を超える場合、耐熱性を必要とする用途への応用が困難となる。
【0045】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡体の製造方法としては、発泡体が得られる限りいかなる方法を用いてもよく、例えば、上記エチレン系重合体と、必要に応じて添加するタルク等の気泡調整剤、収縮防止剤等とを押出機に供給し加熱溶融、混練し、更に発泡剤を供給して発泡性溶融樹脂混合物とした後、押出樹脂温度、押出ダイ内部圧力、吐出量等を調整して、押出機先端に取り付けたダイから低圧域に押出して発泡させる方法が挙げられる。特に、発泡倍率の高い発泡体を得るためには、上記エチレン系重合体に発泡剤として炭酸ガスを添加し押出発泡することにより製造することが好ましい
また、目的とする発泡体の形状に応じて、押出機先端に取り付けるダイを選択することにより、丸棒状発泡体、シート状発泡体、板状発泡体、などの各種形状の押出発泡体を製造することができる。例えば、ストランドダイを取り付ければ丸棒状の発泡体を得ることができ、環状ダイを取り付ければシート状の発泡体を得ることができ、スリットダイを取り付ければ板状の発泡体を製造することができる。
【0046】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡体の製造方法としては、上記エチレン系重合体、添加剤、発泡剤等を押出機に供給し、加熱溶融混練して発泡性溶融樹脂混合物とした後、押出樹脂温度を適正範囲内に調節して押出機から低圧域に押し出すことによって形成することが好ましい。すなわち、押出樹脂温度が適正範囲内に調節された発泡性溶融樹脂混合物は、発泡剤の発泡力に抗する溶融張力を有し、均一に発泡すると考えられる。
【0047】
具体的な押出樹脂温度は、上記エチレン系重合体の融点を基準として、発泡性溶融樹脂の押出樹脂温度を(上記エチレン系重合体の融点−10℃)〜(上記エチレン系重合体の融点+10℃)の範囲内に調節することが好ましく、(上記エチレン系重合体の融点−5℃)〜(上記エチレン系重合体の融点+5℃)の範囲内に調節することがより好ましい。押出樹脂温度が、(上記エチレン系重合体の融点の融点−10℃)を下回る場合は、ダイ部での結晶化が起こり、発泡体が得られ難くなる。一方、押出温度が(上記エチレン系重合体の融点+10℃)を超える温度である場合には、得られる発泡体の気泡が破泡し、発泡倍率が顕著に低下する。
【0048】
上記エチレン系重合体の融点は、JIS K7121(1987)に基づいて熱流束DSC曲線により一定の熱処理を行なった試験片から求められるピークの頂点温度とする。尚、二つ以上のピークが現れる場合は、ピーク面積の最も大きな主ピークの頂点温度を融点とする。
【0049】
また、押出発泡成形の際の発泡剤としては、例えば二酸化炭素、窒素、アルゴン、空気等の無機ガス発泡剤等を挙げることができ、該発泡剤の添加量としては、本発明のポリエチレン系樹脂組成物100重量部に対し1〜30重量部であることが好ましく、特に3〜20重量部の範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0050】
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、耐熱性、柔軟性に優れるとともに高発泡倍率となる発泡体を提供することができる。また、発泡剤として炭酸ガスを用いるので、ブタンやペンタンなどの有機ガスによる爆発の危険性や、フロン系ガスのようなオゾン層破壊等の環境汚染の恐れがない。本発明のポリエチレン樹脂組成物からなる発泡体の用途は、特に制限されず、建材、暖房機器などの断熱成形体として好適に使用できる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〜密度の測定〜
エチレン系重合体の密度(d)は、JIS K6760(1995)に準拠して密度勾配管法で測定した。
【0052】
〜スウェル比〜
エチレン系重合体のスウェル比は、キャピラリー型粘度計(東洋精機(株)製 商品名PMD−C)を用いて、JIS K 7199に準拠して、150℃、せん断速度60.8s−1において、長さが40mm、直径が1mm、流入角90°であるダイスから溶融状態のポリエチレン系樹脂を押し出した。押し出されたストランドの長さがダイス出口から20mmになった時点で、ダイス出口から15mm下の位置でのストランドの直径を測定した。測定値を用いてスウェル比は下式により算出した。
【0053】
スウェル比=L/L
ここで、Lはストランドの直径(mm)、Lはダイスの直径(mm)である。
【0054】
〜MFR〜
エチレン系重合体のMFRはJIS K6922−1(1998)に準拠して190℃、2.16kg荷重で測定した。
【0055】
〜重量平均分子量(M)、数平均分子量(M)およびMとMの比(M/M)の測定〜
エチレン系重合体のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPC)によって測定した。GPC装置(東ソー(株)製 商品名HLC−8121GPC/HT、カラム(東ソー(株)製 商品名TSKgel GMHhr−H(20)HTを装着)にて、カラム温度140℃、溶離液1,2,4−トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正されている。なお、MおよびMは直鎖状ポリエチレン換算の値として求めた。
【0056】
〜マクロモノマー1mol当たりの末端ビニル量〜
マクロモノマー1mol当たりの末端ビニル量(Z)は、13C−NMRによって測定したビニル末端数(X)と飽和末端数(Y)を下記式(1)に代入することにより計算した。13C−NMR測定装置は日本電子(株)製JNM−ECA400型核磁気共鳴装置を用いた。測定溶媒としてテトラクロロエタン−dを用いた。測定は130℃で行った。ビニル末端数(X)は、主鎖メチレン炭素(化学シフト:30ppm)1,000個当りの個数として、114ppm、139ppmのピークの平均値から求めた。また、飽和末端数は、同様に32.3ppm、22.9ppm、14.1ppmのピークの平均値から求めた。
【0057】
〜流動の活性化エネルギーの算出〜
エチレン系重合体の流動の活性化エネルギー(Ea)は、円板−円板レオメーター((株)アントンパール製、商品名:MCR−300)を用い、145℃、160℃、175、190℃の各温度で角速度0.1〜100rad/sの範囲のせん断貯蔵弾性率G’、せん断損失弾性率G”を求め、基準温度160℃での横軸のシフトファクターを求め、アレニウス型の式により計算した。
【0058】
〜発泡倍率〜
発泡体から直径20mm×長さ20mmの円筒状の発泡体を切り出し、重量W2(g)を測定し、JIS K6767に準拠して、次式で見掛密度を算出する。
【0059】
見掛密度(g/cm)=W2/(1.0×1.0×π×2)
発泡倍率は、この見掛密度より、次式で求めた。
【0060】
発泡倍率=1/見掛密度
〜圧縮応力〜
発泡体の圧縮応力は、JISZ0234(1976)に準拠して、温度25℃、相対湿度65%の雰囲気下に24時間放置した縦20mm、横20mm、厚み(試験片の厚み)の試験片を、荷重速度10mm/分として、試験片の50%まで圧縮した。ひずみ量が25%の荷重を読み取り、該荷重を圧縮される試験片の面積400mmで除した値をkPaに単位換算して圧縮応力とした。
【0061】
〜圧縮永久歪み〜
発泡体から直径20mm×長さ20mmの円筒状の発泡体を切り出し、50%圧縮、23℃環境にて20秒静置し、圧縮から解放して30分後にサンプル厚みを測定した。圧縮永久歪みは、以下の式により算出した。
【0062】
圧縮永久歪み=(t0−t1)/(t0−t2)×100
t0:サンプル原厚(mm)
t1:サンプルを圧縮装置から取り出し30分後の厚み(mm)
t2:スペーサー厚み(mm))
〜加熱収縮率〜
発泡体から直径20mm×長さ20mmの円筒状の発泡体を切り出し、その中心に各辺に平行となる各々長さ10mmの直交した標線を書き、このサンプルを120℃の熱風循環オーブンに入れ、1時間加熱後、取り出し、室温になるまで自然冷却した。この加熱処理サンプルの各標線長さを測定し、平均値をLa(mm)とし、下記の式に従って加熱収縮率を算出した。
【0063】
加熱収縮率(%)=[(10−La)/10]×100
製造例1
[変性ヘクトライトの調製1]
水3リットルにエタノール3リットルと37%濃塩酸100ミリリットルを加えた後、得られた溶液にN−メチルジオレイルアミン585g(1.1mol:ライオン株式会社製・商品名:アーミンM2O)を添加し、60℃に加熱することによって、塩酸塩溶液を調製した。この溶液にヘクトライト1kgを加えた。この懸濁液を60℃で、3時間撹拌し、上澄み液を除去した後、60℃の水50Lで洗浄した。その後、60℃、10−3torrで24時間乾燥し、ジェットミルで粉砕することによって、平均粒径10.5μmの変性ヘクトライトを得た。
[ポリエチレン系樹脂の製造触媒の調製1]
上記変性ヘクトライト500gをヘキサン1.7リットルに懸濁させ、ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド6.97g(20.0mmol)、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド2.33g(3.53mmol)およびトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)2.8リットル(2mol)を添加して室温で6時間撹拌した。静置して上澄み液を除去、ヘキサンで触媒固体を2回洗浄し、ヘキサンを添加して最終的に100g/Lの触媒スラリーを得た。
[ポリエチレン系樹脂の製造]
内容積540Lの重合器に、ヘキサンを145kg/時、エチレンを33.0kg/時、ブテン−1を1.0kg/時、水素を19NL/時およびポリマー生産量が30kg/時になるように[ポリエチレン系樹脂の製造触媒の調製1]を連続的に供給し、全圧を3,000kPa、重合器内温を85℃に保ちながら連続的に重合反応を行った。重合器からの連続的にスラリー抜き出し未反応の水素、エチレン、ブテン−1を除去した後、分離、乾燥の工程を経てエチレン系重合体粉末を得た。得られたポリエチレン系樹脂ペレットの密度は950kg/m、MFRは4.0g/10分であった。
【0064】
製造例2
製造例1[ポリエチレン系樹脂の製造]において、水素供給量を19NL/時から12NL/時に変えたこと以外は、製造例1と同様に行なった。得られたエチレン系樹脂ペレットの密度は950kg/m、MFRは2.0g/10分であった。
【0065】
製造例3
[変性ヘクトライトの調製]
水3リットルにエタノール3リットルと37%濃塩酸100ミリリットルを加えた後、得られた溶液にN,N−ジメチル−オクタデシルアミン330g(1.1mol:ライオン株式会社製・商品名:アーミンDM18D)を添加し、60℃に加熱することによって、塩酸塩溶液を調製した。この溶液にヘクトライト1.0kgを加えた。この懸濁液を60℃で、3時間撹拌し、上澄液を除去した後、60℃の水5Lで洗浄した。その後、60℃、10−3torrで24時間乾燥し、ジェットミルで粉砕することによって、平均粒径10.5μmの変性ヘクトライトを得た。
[マクロモノマー合成触媒の調製]
上記変性ヘクトライト500gをヘキサン1.7リットルに懸濁させ、ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド6.97g(20.0mmol)およびトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)2.8リットル(2mol)を添加して室温で6時間撹拌した。静置して上澄み液を除去、ヘキサンで触媒固体を2回洗浄し、ヘキサンを添加して最終的に100g/Lの触媒スラリーを得た。
[マクロモノマーの合成]
内容積370Lの重合器に、ヘキサンを80kg/時で、エチレンを33kg/時で、ブテン−1を0.6kg/時で、トリイソブチルアルミニウムを液中の濃度が0.19mmol/kgヘキサンとなるように連続的に供給しながら、上記[マクロモノマー合成触媒の調製]で調製したマクロモノマー合成触媒を、マクロマー合成量が30kg/時になるように連続的に供給した。重合温度は85℃に制御した。重合器から連続的に抜き出したマクロモノマースラリーは、未反応の水素、エチレン、ブテン−1を除去した後、内容積540Lの2段目の重合器に移送した。重合器から抜き出したマクロモノマーのMn=9,200であり、Mw/Mn=2.5であった。また、NMRによりマクロモノマーの末端構造を解析したところ、マクロモノマー1mol当たりの末端ビニル量(Z)は0.37molであった。
[ポリエチレン系樹脂の製造触媒の調製]
ヘキサン21.2リットルに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)2.8リットル(2.0mol)およびジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド670g(1.0mol)を添加し、室温で1時間攪拌することによって触媒溶液を調製した。
[ポリエチレン系樹脂の製造]
前記[マクロモノマーの合成]で合成したマクロモノマーが移送された内容積540Lの2段目の重合器に、エチレンを2.5kg/時で、水素を20NL/時で連続的に供給しながら、前記[ポリエチレン系樹脂の製造触媒の調製]で調製した触媒溶液を、ポリエチレン系樹脂の製造量が32kg/時になるように連続的に供給した。重合温度は85℃に制御した。得られたポリエチレン系樹脂を含むスラリーを重合器から連続的に抜き出し、未反応の水素、エチレンを除去した後、分離、乾燥の工程を経てポリエチレン系樹脂粉末を得た。得られたポリエチレン系樹脂ペレットの密度は950kg/m、MFRは8.0g/10分であった。
【0066】
製造例4
製造例1[ポリエチレン系樹脂の製造]において、水素供給量を19NL/時から10NL/時とし、1−ブテンの導入量を1.0kg/時から1.5kg/時とした以外、同様の条件重合を実施した。得られたエチレン系樹脂ペレットの密度は945kg/m、MFRは4.0g/10分であった。
【0067】
製造例5
製造例1[ポリエチレン系樹脂の製造]において、水素供給量を19NL/時から26NL/時とし、1−ブテンの導入量を1.0kg/時から0.5kg/時とした以外、同様の条件重合を実施した。得られたエチレン系樹脂ペレットの密度は955kg/m、MFRは4.0g/10分であった。
【0068】
実施例1
[高密度ポリエチレン系樹脂組成物の製造]
市販の高密度ポリエチレンペレット(商品名:ニポロンハード5110、東ソー製、MFR=0.9g/10分、密度=961kg/m)と製造例1[ポリエチレン系樹脂の製造]で製造したポリエチレン系樹脂とを80:20(重量%)の比率でドライブレンドを行い、これをプラコー社製50mm径単軸押出機にて溶融混合した。バレルの温度はC1;180℃、C2;200℃、C3;220℃、ダイヘッド;220℃とした。この高密度ポリエチレン系樹脂組成物ペレットを押出発泡に用いた。
[ポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡体の製造]
上記ポリエチレン系樹脂組成物100重量部に対し、発泡核剤としてタルク(商品名:MS、日本タルク製、平均粒径8μm)を0.1重量部の割合で含有する発泡成形用ポリエチレン系樹脂組成物をドライブレンドにより調製した。そして、バレルの途中に揮発性液体注入用のバレル孔を有する単軸押出機(スクリュー径50mmφ、L/D=36、共伸機械製)の発泡成形用押出設備を用い、発泡成形用ポリエチレン系樹脂組成物を15kg/時で供給し、溶融混練を行った後、圧縮された液状二酸化炭素を80g/時でバレル孔から圧入して、該液状二酸化炭素を分散させ、150℃に設定したスリットダイ(幅500mm)によりシート状の発泡成形体を押出した。該棒状発泡成形体の外側に空気を吹き付け5.0m/分で引き取り、発泡成形体を得た。
【0069】
実施例2
実施例1[高密度ポリエチレン系樹脂組成物の製造]において、ポリエチレン系樹脂の配合割合を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0070】
実施例3
実施例1[高密度ポリエチレン系樹脂組成物の製造]において、ポリエチレン系樹脂の配合割合を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0071】
実施例4
実施例1[高密度ポリエチレン系樹脂組成物の製造]において、ポリエチレン系樹脂を製造例2で製造したポリエチレン系樹脂に変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0072】
実施例5
実施例1[高密度ポリエチレン系樹脂組成物の製造]において、ポリエチレン系樹脂を製造例3で製造したポリエチレン系樹脂に変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0073】
実施例6
実施例1[高密度ポリエチレン系樹脂組成物の製造]において、ポリエチレン系樹脂を製造例4で製造したポリエチレン系樹脂に変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0074】
実施例7
実施例1[高密度ポリエチレン系樹脂組成物の製造]において、ポリエチレン系樹脂を製造例5で製造したポリエチレン系樹脂に変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0075】
比較例1
実施例1においてエチレン・酢酸ビニル共重合体の添加量を0.9重量%とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0076】
結果を表2に示す。
【0077】
比較例2
実施例1においてエチレン・酢酸ビニル共重合体の添加量を55重量%とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0078】
結果を表2に示す。
【0079】
比較例3
実施例1においてエチレン・酢酸ビニル共重合体を市販の高圧法により製造された低密度ポリエチレン(LDPE)(商品名:ペトロセン350、東ソー(株)製、MFR=16.0g/10分、密度=920kg/m)に変えた以外は、実施例1と同様に行った。
【0080】
結果を表2に示す。
【0081】
比較例4
実施例1においてエチレン・酢酸ビニル共重合体を市販の高圧法により製造された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(商品名:ニポロンーLM65、東ソー(株)製、MFR=20.0g/10分、密度=920kg/m)に変えた以外は、実施例1と同様に行った。
【0082】
結果を表2に示す。
【0083】
比較例5
実施例1においてエチレン系重合体を市販の低圧法により製造された高密度ポリエチレン(HDPE)(商品名:ニポロンハード4000、東ソー(株)製、MFR=5.0g/10分、密度=965kg/m)に変えた以外は、実施例1と同様に行った。
【0084】
結果を表2に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)を満足することを特徴とするエチレン系重合体99〜50重量%と酢酸ビニル含有率が5重量%以上であるエチレン・酢酸ビニル共重合体1〜50重量%とからなるポリエチレン系樹脂組成物。
(A)JIS K6760に準拠して密度勾配管法により測定した密度(d)が935kg/m以上970kg/m以下。
(B)150℃、せん断速度60.8s−1で測定したスウェル比が1.60以上。
【請求項2】
請求項1に記載のポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡倍率3倍以上の発泡体。
【請求項3】
下記(A)、(B)を満足するエチレン系重合体99〜50重量%と酢酸ビニル含有量が5重量%以上であるエチレン・酢酸ビニル共重合体1〜50重量%とからなるポリエチレン系樹脂組成物を押出機に供給し、加熱溶融、混練し、更に無機ガス発泡剤を供給して発泡性溶融樹脂混合物とした後、低圧域に押し出して発泡させることを特徴とする請求項2に記載の発泡体の製造方法。
(A)JIS K6760に準拠して密度勾配管法により測定した密度(d)が935kg/m以上970kg/m以下。
(B)150℃、せん断速度60.8s−1で測定したスウェル比が1.60以上。
【請求項4】
無機ガス発泡剤が炭酸ガスであることを特徴とする請求項3に記載の発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2011−219678(P2011−219678A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92257(P2010−92257)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】