説明

ポリエチレン系樹脂製フィルム

【課題】衝撃強度、剛性、ヒートシール強度、透視性、耐熱性、包装袋を製造する際の加工性のバランスに優れたフィルムを提供する。
【解決手段】以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有するポリエチレン系樹脂製フィルムであって、
該フィルムに含まれる成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計を100重量%とするとき、成分(A)の含有量が5〜40重量%であり、成分(B)の含有量が55〜85重量%であり、成分(C)の含有量が3〜15重量%であるポリエチレン系樹脂製フィルム。
成分(A):脂肪族ポリエステル
成分(B):活性化エネルギー(Ea)が20〜44kJ/molであって、密度が905〜950kg/mであるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(C):前記成分(A)と前記成分(B)との相容化剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂製フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材として使用されるフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロンなどからなるフィルムが知られている。
【0003】
しかしながら、従来から使用されているこのようなフィルムは、焼却処理した場合、その高い燃焼熱によって焼却炉の劣化を促進するなど、消費の拡大と共に廃棄物処理が社会問題となっている。
一方、ポリ乳酸やポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステルは、植物由来樹脂であるためCOガス削減効果が期待でき、また、自然環境中で生分解されるため、これらを原料とする成形品は、処理が容易になることが期待される。そこで、従来のポリオレフィン等と、ポリ乳酸とを組み合わせて使用する試みがなされている。特許文献1には、ポリ−3−ヒドロキシブチレート系重合体および/またはポリ乳酸1〜99重量%と、ポリエチレン系樹脂99〜1重量%とからなり、結晶融点および重量平均分子量が特定された樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−232228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているような樹脂組成物を用いてフィルムを製造した場合、得られるフィルムの衝撃強度、剛性、ヒートシール強度、透視性、耐熱性、包装袋を製造する際の加工性のバランスは十分なものではなかった。以上の課題に鑑み、本発明は衝撃強度、剛性、ヒートシール強度、透視性、耐熱性、包装袋を製造する際の加工性のバランスに優れたフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有するポリエチレン系樹脂製フィルムであって、
該フィルムに含まれる成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計を100重量%とするとき、成分(A)の含有量が5〜40重量%であり、成分(B)の含有量が55〜85重量%であり、成分(C)の含有量が3〜15重量%であるポリエチレン系樹脂製フィルムである。
成分(A):脂肪族ポリエステル
成分(B):活性化エネルギー(Ea)が20〜44kJ/molであって、密度が905〜950kg/mであるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(C):前記成分(A)と前記成分(B)との相容化剤
さらに本発明は、1%正割弾性率が225MPa〜1200MPaであり、衝撃強度が40kJ/m以上であり、160℃でヒートシールした際のヒートシール強度が8N以上であり、拡散透過光度(LSI)が10%以下であり、DSCで測定される融解曲線の最大ピーク温度が110℃〜125℃であるポリエチレン系樹脂製フィルムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衝撃強度、剛性、ヒートシール強度、透視性、耐熱性、包装袋を製造する際の加工性のバランスに優れたフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有するポリエチレン系樹脂製フィルムであって、該フィルムに含まれる成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計を100重量%とするとき、成分(A)の含有量が5〜40重量%であり、成分(B)の含有量が55〜85重量%であり、成分(C)の含有量が3〜15重量%であるポリエチレン系樹脂製フィルムである。
成分(A):脂肪族ポリエステル
成分(B):活性化エネルギー(Ea)が20〜44kJ/molであって、密度が905〜950kg/mであるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(C):前記成分(A)と前記成分(B)との相容化剤
以下、詳細に説明する。
【0009】
<脂肪族ポリエステル(A)>
本発明における脂肪族ポリエステル(A)は、ヒドロキシカルボン酸を重合して得られるポリエステルや、ジオールとジカルボン酸を共重合して得られるポリエステルが挙げられる。これらは単独又は2種以上併用して用いてもよい。
【0010】
ヒドロキシカルボン酸を重合して得られるポリエステルとしては、下記一般式(1)で示される3−ヒドロキシアルカノエートを繰り返し単位として有する重合体が挙げられる。
【0011】
【化1】

〔式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜15のアルキル基であり、Rは単結合、又は炭素数1〜4のアルキレン基である〕
【0012】
上記式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体は、単独重合体のほか、当該繰り返し単位を二種以上含有する多元共重合体であってもよい。多元共重合体の繰り返し単位の配列の様式は、ランダム共重合体、交替共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの様式であってもよい。
【0013】
上記単独重合体としてはポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシプロピオネート)等が挙げられる。多元共重合体としては、3−ヒドロキシブチレート−3−ヒドロキシプロピオネート共重合体、3−ヒドロキシブチレート−4−ヒドロキシブチレート共重合体、3−ヒドロキシブチレート−3−ヒドロキシバリレート共重合体、3−ヒドロキシブチレート−3−ヒドロキシヘキサノエート共重合体、3−ヒドロキシブチレート−3−ヒドロキシオクタノエート共重合体、3−ヒドロキシブチレート−3−ヒドロキシバリレート−3−ヒドロキシヘキサノエート−4−ヒドロキシブチレート共重合体、3−ヒドロキシブチレート−乳酸共重合体等が挙げられる。このうち、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステルは植物由来の樹脂であるため、バイオマスの利用を促進し、循環型社会を目指す上で好適である。
【0014】
ジオールとジカルボン酸を共重合して得られる脂肪族ポリエステルとしては、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート共重合体、ブチレンサクシネート−ブチレンテレフタレート共重合体、ブチレンアジペート−ブチレンテレフタレート共重合体、エチレンサクシネート−エチレンテレフタレート共重合体等が挙げられる。
【0015】
脂肪族ポリエステル(A)として、ポリ乳酸を用いることが好ましい。ここで、本発明におけるポリ乳酸とは、L−乳酸及び/又はD−乳酸に由来する繰り返し単位のみからなる重合体、L−乳酸及び/又はD−乳酸に由来する繰り返し単位と、L−乳酸及びD−乳酸以外のモノマーに由来する繰り返し単位と、からなる共重合体、及び、前記重合体と前記共重合体の混合物、をいう。ここで、上記L−乳酸及びD−乳酸以外のモノマーとしては、グリコール酸等のヒドロキシカルボン酸、ブタンジオール等の脂肪族多価アルコールや、コハク酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
【0016】
ポリ乳酸におけるL乳酸又はD乳酸に由来する繰り返し単位の含有量は、耐熱性を高める観点から、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上であり、さらに好ましくは95モル%以上である。ポリ乳酸のMFRは、流動性の観点から好ましくは1g/10分以上であり、より好ましくは2g/10分以上であり、更に好ましくは3g/10分以上であり、更により好ましくは5g/10分以上であり、最も好ましくは10g/10分以上である。また、フィルムの強度の観点から、20g/10分以下であり、より好ましくは18g/10分以下であり、更に好ましくは15g/10分以下である。
【0017】
<成分(B)>
本発明におけるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)としては、エチレンと1種類以上の炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。炭素数3〜12のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。このうち、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンを用いることが好ましく、1−ブテン、1−ヘキセンを用いることがより好ましい。
【0018】
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体等が挙げられる。このうち、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体を用いることが好ましく、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体を用いることがより好ましい。
【0019】
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、905〜950kg/mである。フィルムの剛性の観点から、好ましくは910kg/m以上であり、より好ましくは914kg/m以上であり、更に好ましくは916kg/m以上、更により好ましくは920kg/m以上である。また、フィルムの衝撃強度の観点から、好ましくは940kg/m以下であり、より好ましくは930kg/m以下である。なお、エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、JIS K7112(1999)に従い測定される。
【0020】
エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜10g/10分であることが好ましい。フィルムの加工性の観点から、より好ましくは0.3g/10分以上であり、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。得られるフィルムの機械的強度の観点から、好ましくは8g/10分以下、より好ましくは5g/10分以下、更に好ましくは3g/10分以下、最も好ましくは2.5g/10分以下である。なお、ここでいうメルトフローレートとは、JIS K7210(1995)に従い、試験荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定される。
【0021】
エチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギー(Ea、単位はkJ/mol)は、20〜44kJ/molであることが好ましい。流動性の観点から、好ましくは22kJ/mol以上、より好ましくは24kJ/mol以上であり、更に好ましくは25kJ/mol以上であり、更により好ましくは26kJ/mol以上である。また、高温で十分な成形性を得るという観点から、Eaは、好ましくは40kJ/mol以下であり、より好ましくは35kJ/mol以下である。
【0022】
<成分(C)>
本発明において成分(C)は、成分(A)と成分(B)との相容化剤である。
【0023】
成分(C)としては、エポキシ基を有する重合体、スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。成分(A)と成分(B)とを相容化させる樹脂成分(C)として好ましくは、エポキシ基を有する重合体が用いられる。
【0024】
エポキシ基を有する重合体としては、エチレンに由来する繰り返し単位と、エポキシ基を有する単量体に由来する繰り返し単位とを有する共重合体が挙げられる。エポキシ基を有する単量体としては、例えば、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート等のα,β−不飽和グリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル等のα,β−不飽和グリシジルエーテルを挙げることができ、好ましくはグリシジルメタアクリレートである。
【0025】
エポキシ基を有する重合体としては、具体的には、グリシジルメタアクリレート−エチレン共重合体(例えば、住友化学製 商品名ボンドファースト)、グリシジルメタアクリレート−スチレン共重合体やグリシジルメタアクリレート−アクリロニトリル−スチレン共重合体、グリシジルメタアクリルレート−プロピレン共重合体等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、水添または非水添のスチレン−共役ジエン系等に、エポキシ基を有する単量体を、溶液若しくは溶融混練でグラフト重合させたものを用いることも可能である。
【0026】
エポキシ基を有する重合体において、エポキシ基を有する単量体に由来する繰り返し単位の含有量は、通常0.01重量%〜30重量%であり、より好ましくは0.1重量%〜20重量%である(ただし、エポキシ基を有するエチレン系重合体を100重量%とする)。なお、エポキシ基を有する単量体に由来する繰り返し単位の含有量は、赤外法により測定される。
【0027】
エポキシ基を有する重合体のメルトフローレート(MFR)は、通常1g/10分〜20g/10分であり、好ましくは1g/10分〜15g/10分である。ここでいうメルトフローレートとは、JIS K 7210(1995)に規定された方法によって、試験荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定される。
【0028】
エポキシ基を有する重合体の製造方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、高圧ラジカル重合法、溶液重合法、乳化重合法等により、エポキシ基を有する単量体とエチレンと、必要に応じて他の単量体とを共重合する方法、エチレン系樹脂にエポキシ基を有する単量体をグラフト重合させる方法等を挙げることができる。
【0029】
エポキシ基を有する重合体は、他の単量体に由来する繰り返し単位を有していてもよい。他の繰り返し単位としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和ビニルエステル等が挙げられる。
【0030】
成分(C)として、スチレン系熱可塑性エラストマーを使用することもできる。スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)又はその水素添加物(H−SBR)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)又はその水素添加物(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)又はその水素添加物(SEPS、HV−SIS)、スチレン−(ブタジエン/イソプレン)ブロック共重合体、スチレン−(ブタジエン/イソプレン)ランダム共重合体等が挙げられる。
【0031】
成分(C)として、エチレン−酢酸ビニル共重合体を使用することもできる。エチレン−酢酸ビニル共重合体の製品例としては、三井・デュポン・ポリケミカル製“エバフレックス”、ランクセス製“レバプレン”、住友化学製“エバテート”、東ソー“ウルトラセン”、日本ポリエチレン“ノバテック”EVA、日本ユニカー“NUC EVAコポリマー”などを挙げることができる。
【0032】
成分(C)として、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を使用することもできる。エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製品例としては、アルケマ製“ロトリル”、三井・デュポン・ポリケミカル製“エバフレックスEEA”、住友化学製“アクリフト”、日本ユニカー“NUC EEAコポリマー”などを挙げることができる。
【0033】
本発明のポリエチレン系樹脂製フィルムに含まれる各成分の量は、該フィルムに含まれる成分(A)、(B)および(C)の合計量を100重量%として、成分(A)の含有量が5〜40重量%であり、成分(B)の含有量が55〜85重量%であり、成分(C)の含有量が3〜15重量%である。好ましくは、成分(A)の含有量が10〜35重量%であり、成分(B)の含有量が65〜85重量%であり、成分(C)の含有量が3〜10重量%であり、より好ましくは、成分(A)の含有量が12〜32重量%であり、成分(B)の含有量が60〜85重量%であり、成分(C)の含有量が3〜8重量%である。
【0034】
本発明のポリエチレン系樹脂製フィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、成分(B)以外のポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。成分(B)以外のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、高圧法ポリエチレン、HDPE、流動の活性化エネルギーが45kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。
【0035】
本発明のポリエチレン系樹脂製フィルムは、酸化防止剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、造核剤、紫外線防止剤、可塑剤、分散剤、防曇剤、抗菌剤、有機多孔質パウダー、顔料等の添加剤を含んでいてもよい。
【0036】
本発明のインフレーションフィルムの厚さは、通常500μm以下、好ましくは5〜300μm、より好ましくは10〜200μm、更に好ましくは15〜100μmである。
【0037】
〔フィルムの製造方法〕
脂肪族ポリエステル(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)および相容化剤(C)、さらに必要に応じて添加剤等の他の成分を、ドライブレンドやメルトブレンドしたものを用いて、本発明のポリエチレン系樹脂製フィルムを製造することができる。ドライブレンドする方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いる方法が挙げられ、メルトブレンドする方法としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーを用いる方法が挙げられる。
【0038】
本発明のポリエチレン系樹脂製フィルムは、公知の方法により製造される。例えば、インフレーション法、Tダイキャスト法等を挙げることができ、インフレーション法が好ましい。フィルムを製造する際の加工温度は180℃〜230℃であることが好ましい。加工性の観点から、好ましくは185℃以上、より好ましくは190℃以上であり、好ましくは220℃以下であり、より好ましくは210℃以下である。
【0039】
本発明のフィルムの1%正割弾性率(1%SM)は、225MPa〜1200MPaである。フィルムの剛性は、好ましくは250MPa以上であり、より好ましくは275MPa以上であり、更に好ましくは350MPa以上であり、更により好ましくは500MPa以上であり、最も好ましくは650MPa以上である。フィルムの剛性は好ましくは1100MPa以下であり、より好ましくは1000MPa以下であり、更に好ましくは800MPa以下であり、更により好ましくは750MPa以下である。なお、1%正割弾性率とは、幅20mm、長さ120mmの短冊形試験片を用いて、チャック間60mm、引張速度5mm/minの条件で引張試験を行い、応力−歪曲線を測定して得られる該応力−歪曲線から、1%伸び時の荷重(単位:N)を求め、下記式から算出した値である。
1%SM = [F/(t×l)]/[s/L]/10
F :1%伸び時の荷重(単位:N)
t :試験片厚み (単位:m)
l :試験片幅 (単位:m,0.02)
:チャック間距離 (単位:m,0.06)
s :1%歪み (単位:m,0.0006)
【0040】
本発明のフィルムの衝撃強度は40kJ/m以上である。フィルムの衝撃強度は、好ましくは40kJ/m以上であり、より好ましくは45kJ/m以上であり、更に好ましくは50kJ/m以上である。本発明のフィルムは、衝撃強度に優れるため、樹脂、肥料、重量物を内容物として用いる重袋として好適に用いることができる。
【0041】
本発明のフィルムを160℃でヒートシールした際のヒートシール強度は、8N以上である。フィルムのヒートシール強度は、好ましくは10N以上であり、より好ましくは12N以上であり、更に好ましくは14N以上であり、更により好ましくは15N以上である。本発明のフィルムはこのようにヒートシール強度に優れるため、包装袋に適している。フィルムを所定の箇所でヒートシールすることにより、包装袋を得ることができる。その際、フィルムを2枚以上重ね合わせてもよい。ヒートシールの方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。幅の比較的小さい包装袋を製造する際には、予め所定の幅に合わせた折径のインフレーションフィルムを製造し、所定長さに切断した後、一端をヒートシールする所謂チューブ袋がコストの点でも望ましい。
【0042】
本発明のフィルムの拡散透過光度(LSI)は、10%以下である。フィルムの透視性の観点から好ましくは9%以下であり、より好ましくは8%以下であり、更に好ましくは7%以下であり、更により好ましくは6%以下であり、最も好ましくは5%以下である。
【0043】
本発明のフィルムは、DSCで測定される融解曲線の最大ピーク温度が110℃〜125℃である。フィルムの耐熱性の観点から、最大ピーク温度は好ましくは115℃以上である。シール強度により優れるため、フィルムの最大ピーク温度は好ましくは123℃以下であり、より好ましくは120℃以下である。なお複数ピークが有る場合の最大ピーク温度とは、その中で最も高い吸熱量(単位:mW)を示す融解ピーク位置の温度である。
【0044】
本発明に係るフィルムは、食品、繊維、医薬品、肥料、雑貨品、工業部品などの包装袋、ゴミ袋、規格袋等に用いることが可能である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。物性の評価は、以下の方法によって行った。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K 7210(1995)に従い、試験荷重21.18Nで測定した。
ただし、試験温度190℃の条件で測定を行った。
(2)密度(d、単位:kg/m3
150℃でプレス成形して得られた厚さ1mmのシートを用い、JIS K 6760(1981)に従って測定を行った。ただし、アニールせずに測定した。
(3)1%正割弾性率(1%SM)(単位:MPa)
幅20mm、長さ120mmの短冊形試験片を、長手方向が引取り方向(MD)およびMD方向に対して直交する方向(TD)となるようにそれぞれ採取し、該試験片を用いて、チャック間60mm、引張速度5mm/minの条件で引張試験を行い、応力−歪曲線を測定した。該応力−歪曲線から、1%伸び時の荷重(単位:N)を求め、下記式から1%SMを算出し、フィルムの剛性とした。
1%SM = [F/(t×l)]/[s/L]/10
F :1%伸び時の荷重(単位:N)
t :試験片厚み (単位:m)
l :試験片幅 (単位:m,0.02)
:チャック間距離 (単位:m,0.06)
s :1%歪み (単位:m,0.0006)
(4)ダート衝撃強度(単位:kJ/m
ASTM D1709記載のA法に従って測定した。この値が高いほどフィルムの強度が高いことを示す。
(5)Gloss(単位:%)
JIS K7105−1981に規定された45°鏡面光沢度の測定方法に従って測定した。この値が大きいほど光沢があることを示す。
(6)拡散透過光度(LSI)(単位:%)
東洋精機(株)社製LSI試験機(±0.4°〜1.2°の散乱透過光を受光)により測定した。LSI値は、肉眼でフィルムを観察したときの透視性とかなりよく対応することから、値が小さいほど透視性がよいといえる。
(7)ヒートシール強度
フィルムのヒートシール強度を下記により測定した。同じフィルムを2枚重ねて、160℃で、シール圧1.6kg/cmで1秒シールした。シールバーは10mm×300mmのものを使用した。シールと直角方向に幅15mmの試験片を切り出し、フィルムを23℃、50%RH条件下で24時間放置した後、ショッパー型引張試験機を用いて、200mm/分の条件で剥離させ、そのときの強度を測定した。
(8)流動の活性化エネルギー(Ea、単位:kJ/mol)
流動の活性化エネルギーEaは、歪制御型の回転式粘度計(レオメーター)を用いて、下記の条件(a)〜(d)で測定される各温度T(K)における動的粘弾性データを温度−時間重ね合わせ原理に基づいてシフトする際のシフトファクター(aT)のアレニウス型方程式:log(aT)=Ea/R(1/T−1/T0)(Rは気体定数、T0は基準温度463Kである。)から算出される成形性の指標をいう。計算ソフトウェアには、Reometrics社Rhios V.4.4.4を使用し、アレニウス型プロットlog(aT)−(1/T)における直線近似時の相関係数r2が0.99以上の場合のEa値を採用した。測定は窒素下で実施した。
条件(a)ジオメトリー:パラレルプレート、直径25mm、プレート間隔:1.5〜2mm
条件(b)ストレイン:5%
条件(c)剪断速度:0.1〜100rad/sec
条件(d)温度:190、170、150、130℃
(9)最大ピーク温度
パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計Diamond DSCを用いて最大ピーク温度(単位:℃)と融解エンタルピーΔH(単位:J/g)を測定した。ここでいう最大ピーク温度とは、試料6〜12mgをアルミパンに詰めて20℃で1分間保持した後に5℃/分で200℃まで昇温した時に観測される融解ピーク温度をいう。複数ピークが有る場合、その中で最も高い吸熱量(単位:mW)を示す融解ピーク位置の温度を最大ピーク温度(単位:℃)とする。
【0046】
本発明の実施例で使用した各成分は、以下のとおりである。
成分(A):ポリ乳酸
ユニチカ株式会社製、商品名「テラマック TE−2000C」
成分(B):エチレン−α−オレフィン共重合体
B−1:エチレン−α−オレフィン共重合体(エチレン−1−ヘキセン共重合体)
住友化学株式会社製、商品名「スミカセンE FV205」(メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン、MFR(190℃)=2.0g/10分、密度=922kg/m、Ea=31kJ/mol)
B−2:エチレン−α−オレフィン共重合体
住友化学株式会社製、商品名「スミカセン EP GT140」(エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、MFR(190℃)=0.91g/10分、密度=914kg/m、Ea=64kJ/mol)
成分(C):エポキシ基を有するエチレン系重合体
住友化学株式会社製、商品名「ボンドファーストE」(エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体、MFR(190℃)=3g/10分、グリシジルメタアクリレートに由来する繰り返し単位含有量=12重量%)
【0047】
〔実施例1〜2及び比較例1〜2〕
成分(A)、成分(B)及び成分(C)を表1に記載の組成割合で、一括混合した後、スクリュー径40mmの押出機を用いて190℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。
次いで、インフレーションフィルム成形機(プラコー社製、単軸押出機(径50mmφ、L/D=28)、ダイス(ダイ径125mmφ、リップギャップ2.0mm)、シングルスリットでアイリス付エアリング)により、加工温度190℃、押出量約25kg/hr、フロストライン高さ(FLD)250mm、ブロー比1.8の加工条件で厚み50μmのインフレーションフィルムを成形した。得られたフィルムの物性評価結果を表1に示す
【0048】
〔比較例3〜6〕
成分(A)、成分(B)及び成分(C)を表1に記載の組成割合で、一括混合した後、スクリュー径40mmの押出機を用いて190℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。次いで、インフレーションフィルム成形機(プラコー社製、フルフライトタイプスクリューの単軸押出機(径30mmφ、L/D=28)、ダイス(ダイ径50mmφ、リップギャップ0.8mm)、二重スリットエアリング)を用い、加工温度190℃、押出量5.5kg/hr、フロストラインディスタンス(FLD)200mm、ブロー比1.8の加工条件で樹脂組成物を厚み50μmのフィルムに成形した。
得られたフィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0049】
〔実施例3〜4及び比較例7〕
成分(A)、成分(B)及び成分(C)を表1に記載の組成割合で、一括混合した後、スクリュー径40mmの押出機を用いて190℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。次いで、SHIモダンマシナリー(株)社製のTダイフィルム成形機にてフィルムを製造した。直径50mm、L/Dが32(Lは押出機のシリンダーの長さ、Dは押出機のシリンダーの直径)の押出機のブレーカープレート(φ51mm)に、焼結フィルター(日本精線社製MFF NF06、ろ過径:10μm)を、80メッシュの金網で挟む構成でセットした。220℃にて前記樹脂組成物を溶融混練した後、前記焼結フィルターを通して220℃に設定したTダイ(600mm幅)へ供給し、該Tダイから押し出した後、75℃のチルロールで引き取ることによって冷却固化し、50μm厚みのフィルムを得た。得られたフィルムの物性評価結果を表1に示した。
【0050】
【表1】

1:160℃におけるヒートシール強度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有するポリエチレン系樹脂製フィルムであって、
該フィルムに含まれる成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計を100重量%とするとき、成分(A)の含有量が5〜40重量%であり、成分(B)の含有量が55〜85重量%であり、成分(C)の含有量が3〜15重量%であるポリエチレン系樹脂製フィルム。
成分(A):脂肪族ポリエステル
成分(B):活性化エネルギー(Ea)が20〜44kJ/molであって、密度が905〜950kg/mであるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(C):前記成分(A)と前記成分(B)との相容化剤
【請求項2】
前記成分(A)が、ポリ乳酸および/またはポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステルである請求項1に記載のポリエチレン系樹脂製フィルム。
【請求項3】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)が0.1〜10g/10分である請求項1又は2に記載のポリエチレン系樹脂製フィルム。
【請求項4】
厚さが5〜300μmである請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレン系樹脂製フィルム。
【請求項5】
1%正割弾性率が225MPa〜1200MPaであり、衝撃強度が40kJ/m以上であり、160℃でヒートシールした際のヒートシール強度が8N以上であり、拡散透過光度(LSI)が10%以下であり、DSCで測定される融解曲線の最大ピーク温度が110℃〜125℃であるポリエチレン系樹脂製フィルム。

【公開番号】特開2011−144311(P2011−144311A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7956(P2010−7956)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】