説明

ポリエチレン配管材料用樹脂組成物

【課題】本発明は、剛性を保持しながら、特に高温加速条件での長期特性と伸び特性、耐衝撃性、成型加工性に優れるとともに、成形加工時の目やに性にも優れた新規の高密度ポリエチレンを用いて得られるポリエチレン配管材料用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】MFR、密度で規定された2種類以上のポリエチレン樹脂が、規定された混合比で配合された組成物を用いて製造されたポリエチレン配管材料用樹脂組成物を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形時の目やに発生が抑えられ、パイプとして用いた時の物性と長期特性、および継ぎ手として用いた時の生産性に優れたポリエチレン樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン樹脂はクリープ特性、耐環境応力亀裂性、衝撃特性、可とう性に優れており、従来より広く配管材料として使用されている。本発明で述べる配管材料とは上下水道管、ガス管、給水管として使用されるパイプ及び継ぎ手を指す。近年、ポリエチレンパイプは地震に対しても地盤の変動にパイプが追従して伸びるなどの特性を持つために、鋼管、ダクタイル鋳鉄管などの管種よりも優れていることが実証されている。継ぎ手についても鋼管、ダクタイル鋳鉄管のようなメカニカル継ぎ手と異なり、EF(エレクトロフュージョン)継ぎ手によりパイプと継ぎ手を溶着する為、施工も簡易であり耐震性にも優れるという特徴を持つ。このような特性から上下水道管、ガス管、給水管などの配管材料として注目を浴びるようになってきている。
【0003】
また各配管材料に求められる安全性への要求は高く、ガス管ではPE80、上水道管ではPE100を取得した材料によるパイプが使われるようになってきている。ここでPE100とは、ISO9080に記載されている熱間内圧クリープ試験において、異なる3水準の温度での応力−破壊時間曲線の測定を少なくとも9000時間まで行うことにより、20℃での50年後の最小保証応力(Minimum Require Strength:以下MRSと記述することもある)を推定した値が10MPa以上、即ちISO12162に規定されている分類表でPE100に分類されているポリエチレンである。ポリエチレンパイプ用樹脂を配水管として長期間使用する場合、パイプ内部からの水圧や埋設時外部からの土圧などにより応力が加わるため、パイプ内の微少な構造欠陥部分に応力集中が起こり、脆性的な破壊が起こる可能性がある。このような長期間にわたる応力が加わる厳しい条件下において、脆性破壊割れを起こさない材料を提供する為に従来まで改良が行われてきた。
【0004】
しかしながら、PE100に分類されるポリエチレン樹脂材料であっても、樹脂デザインによっては、長期特性が脆性的なものもある。特に脆性的な破壊は80℃での内圧クリープ試験条件に於いて顕著に見られ、ISO記載のPE100分類されていても、高温下では脆性的なポリエチレン樹脂が少なくないことがわかる。長期のクリープ特性を推定する際に延性破壊に比べ脆性的な破壊は急激に進行するため、破壊の予測が困難であり、配水管などのようなライフラインに使われる材料としては不適切である。
【0005】
また、長期特性及び伸び特性に加え、成形加工性に優れた材料は現在の技術では非常に困難である。特にパイプと継ぎ手は融着の面からも同一樹脂であることが望ましく、継ぎ手が射出成形によって成形されることも考慮すれば、パイプとしての機械特性だけでなく、成形加工性にも優れたPE100のポリエチレンが必要となってくる。
【0006】
特公昭61−42736号公報(特許文献1)や特公昭61−43378号公報(特許文献2)には、長期にわたる機械特性を改良するために分子量分布の広幅化や、共重合性コモノマーを重合時に側鎖として導入することなどが開示されているが、これだけでは長期の機械特性の改良は不十分であった。
【0007】
また、特開平10−17619号公報(特許文献3)では、長期特性や耐衝撃性を改良するためにコモノマーの分布を制御し、コモノマーの高分子量側への寄与を昇温溶出分別とGPCとのクロス分別により求められる分子量−溶出温度−溶出量の相関に着目し、ポリエチレンのデザインを改良する方法が提案されている。しかしながら、PE100に分類されるポリエチレン樹脂を得るにはさらに限定された樹脂デザインが必要である。
【0008】
特開平8−301933号公報(特許文献4)等には、機械特性に優れたポリエチレン性パイプが開示されているが、このパイプを形成するポリエチレンは、2つの分子量分布を持つポリエチレンからなり、メルトフローレート(コードT)(JIS K7210−1999、コードT:以下MFR5と記述する)が0.35g/10分以下であり、分子量が高く、成形加工性に劣る。従って、実際の押し出し成形及び射出成形によるパイプ及び継ぎ手の生産において、特に射出成形では生産性が非常に劣ることが予想される。さらに、パイプ生産時に押出機から樹脂を筒状に出す際に、ダイス出口に目やにが大量に発生して成形品の表面に目やにが移行したり、析出した目やにがパイプ表面に傷をつけてパイプの商品価値がなくなるだけでなく、パイプの脆性破壊の起点にもなるので、目やにを取り除くためにパイプ成形を中断して押出機出口のダイスを一日に何度も清掃をしなければならないという問題があった。
【0009】
また、特開平8−134285号公報(特許文献5)には、極限粘度と密度の異なる2成分からなる組成物が開示されている。この組成物を用いてパイプ成形体を成形すれば、熱間内圧クリープ試験、引張クリープ試験、引張疲労試験等の結果が従来の材料よりも飛躍的に向上するとされている。そして、これによると、低分子量、高密度のポリエチレンと高分子量、低密度のポリエチレンの2成分からなる組成物の密度及び極限粘度がそれぞれ0.945〜0.970g/cm3(JIS K7112−1999)、2.41〜6.3dyne/cm2の範囲にあり、190℃におけるキャピラリーのずり応力が2.4×106dyne/cm2に達するときのずり速度(FI)が350sec-1以下であることを特徴とする組成物によりパイプ成形体としたときに、成形性、パイプ疲労特性などに優れたパイプを成形する事が可能であるとしている。しかしながら、このような組成物では分子量等が高くなることにより、疲労特性などのパイプ特性は確かに高くなるが、成形加工性の面では逆に悪くなり、特に継ぎ手を成形する射出成形などで悪くなる傾向にあると推察される。流動インデックス(FI)と呼ばれる値がFI≦350sec-1とある実施例、比較例のMFRから判断するに、物性を考慮した高分子量側のデザインであるために、成形加工性が優れているとは言えないものであると考えられる。
【0010】
同様に特開平9−286820号公報(特許文献6)には、ポリエチレン管及びその管継ぎ手が開示されているが、記載されているFIの値が100〜400sec-1では、射出成形による高せん断速度領域での成形法による継ぎ手には向かない。
【0011】
また、特開2000−109521号公報(特許文献7)にはパイプ及び継ぎ手用の樹脂組成物が開示されている。該方法による樹脂組成物は、パイプとしたときの成形性や疲労特性などのパイプ特性に優れるとともに、継ぎ手などの射出成形においても優れた成形性を備える。しかし、パイプ生産時に押出機から樹脂を筒状に出す際に、ダイス出口に目やにが大量に発生して成形品の表面に目やにが移行したり、析出した目やにがパイプ表面に傷をつけてパイプの商品価値がなくなるだけでなく、パイプの脆性破壊の起点にもなるので、目やにを取り除くためにパイプ成形を中断して押出機出口のダイスを一日に何度も清掃をしなければならないという問題があった。
【特許文献1】特公昭61−42736号公報
【特許文献2】特公昭61−43378号公報
【特許文献3】特開平10−17619号公報
【特許文献4】特開平8−301933号公報
【特許文献5】特開平8−134285号公報
【特許文献6】特開平9−286820号公報
【特許文献7】特開2000−109521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、剛性を保持しながら、特に高温加速条件での長期特性と伸び特性、耐衝撃性、成型加工性に優れるとともに、成形加工時の目やに性にも優れた新規の高密度ポリエチレンを用いて得られるポリエチレン配管材料用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ある特定の構成条件を全て満たしたポリエチレン組成物が上記目的を達成しうることを見いだし、本発明をなすに到った。
【0014】
すなわち本発明は、
〔1〕エチレン単独重合体またはエチレンと炭素数3以上20以下のα−オレフィンとの共重合体であり、密度が967〜977kg/m3、メルトフローレート(コードD)が100〜300g/10分である低分子量成分(A)57〜52重量部と、エチレンと炭素数3以上20以下のα−オレフィンとの共重合体であり、密度が895〜949kg/m3、重量平均分子量が50万〜100万である高分子量成分(B)43〜48重量部と、を含み、密度が943〜957kg/m3、α−オレフィン含量(Y)が0.30〜1.50mol%、メルトフローレート(コードT)が0.25〜0.50g/10分、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が25〜40、である、ポリエチレン配管材料用樹脂組成物;
〔2〕高速引張り試験において厚みに対するノッチ深さの割合が11%のときの引張り伸びが7%以上であることを特徴とする、上記〔1〕に記載のポリエチレン配管材料用樹脂組成物;
〔3〕パイプに成形されたとき、該パイプについてISO9080記載の方法で行う熱間内圧クリープ試験で、20℃における50年後の最小保証応力が10MPa以上となることを特徴とする、上記〔1〕または〔2〕に記載のポリエチレン配管材料用樹脂組成物;
〔4〕パイプに成形されたとき、該パイプについてISO9080記載の方法で行う熱間内圧クリープ試験で、80℃での応力−破壊時間クリープ線図において、脆性破壊によるKneePointが1万時間以内で見られないことを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリエチレン配管材料用樹脂組成物;
〔5〕スクリュー径50mmφフルフライトにて200℃にて設定した押出し条件下に於いてスクリュー回転数45rpm時の押出量(Q)をその回転数(Ns)で除した値(Q/Ns)が0.25(kg/hr/rpm)以上であり、かつ射出成形による、キャビティー幅10mm厚み2mm、230℃でのスパイラルフロー(SFD)値が35cm以上であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のポリエチレン配管材料用樹脂組成物;
〔6〕灰分が0.07重量%以下であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のポリエチレン配管材料用樹脂組成物;
〔7〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のポリエチレン配管材料用樹脂組成物から成形されるパイプ及び継ぎ手;
〔8〕水道用に使用されることを特徴とする、上記〔7〕に記載のパイプ及び継ぎ手、に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
本願発明の組成物は、長期特性、伸び特性、耐衝撃性に優れたPE100に分類される材料であり、成形加工性も良好で、成形加工時の目やにの発生も少ない。成形加工性に優れていることから、配管材料であるパイプも継ぎ手も同一の樹脂組成物で製造することができるので、生産性が飛躍的に向上するだけでなく、パイプと継ぎ手を良好に融着させることができる。また、成形加工時の目やに性も改善され、かつ成形物は機械特性をバランスよく備えたものとなる。本発明の組成物によって成形されたパイプ及び継ぎ手は、ライフラインとしての上下水道管、ガス管、給水管として良好に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明に係るポリエチレン配管材料用樹脂組成物は、低分子量成分(A)と高分子量成分(B)とを含む。
【0017】
[低分子量成分(A)]
まず、ポリエチレン樹脂低分子量成分(A)について説明する。
ポリエチレン樹脂の低分子量成分(A)の密度(JIS K7112−1999)は967〜977kg/m3であり、好ましくは970〜977kg/m3であり、より好ましくは973〜977kg/m3である。
密度が967kg/m3以上の場合は、熱間内圧クリープ特性において長期側の突然の脆性破壊が起こりにくくなり長期特性は十分なものとなる。またコモノマーを含んでもよいが、ポリエチレンホモポリマーであることがより好ましい。ホモポリマーである場合、密度はメルトフローレートに依存し、メルトフローレート、コードD(JIS K7210−1999、コードD:以下「MFR2.16」と記述する)が50〜300g/10分の範囲では、密度は事実上977kg/m3を超えることはない。
【0018】
コモノマーとしては炭素数3〜20のα−オレフィンが用いられ、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−イコセン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン及びシクロヘキサジエン等が挙げられる。
【0019】
低分子量成分(A)のMFR2.16は100〜300g/10分であり、好ましくは100〜250g/10分であり、より好ましくは125〜200g/10分である。MFR2.16が300g/10分を超えると成形加工性は良好であるが、熱間内圧クリープの長期側の寿命及び伸び特性は低下し、また耐衝撃性も劣る方向である。MFR2.16が100g/10分未満の高密度ポリエチレンは、機械特性は向上するが成形加工性に劣り、とくに射出成形が困難となる。
【0020】
[高分子量成分(B)]
次にポリエチレン樹脂の高分子量成分(B)について説明する。
高分子量成分(B)は、エチレンと炭素数3以上20以下のα−オレフィンとの共重合体である。コモノマーとして用いられる炭素数3〜20のα−オレフィンは、低分子量成分(A)で説明したものと同様のものを使用することができるので、ここでは説明を省略する。
【0021】
ポリエチレン樹脂の高分子量成分(B)の密度(JIS K7112−1999)は895〜949kg/m3であり好ましくは900〜945kg/m3であり、より好ましくは910〜940kg/m3であり、さらに好ましくは916〜933kg/m3である。
密度が895kg/m3以上の場合は、成型した管の剛性が十分なものとなり、949kg/m3以下の場合、高温加速条件下での耐環境応力亀裂時間(以下、「ESCR」と略す)や伸び特性が低下することがなく、長期間使用によるクラックの発生、低速亀裂破壊などの脆性的な破壊を起こすことがない。
【0022】
また重量平均分子量は50万〜100万であり、好ましくは60万〜95万でありより好ましくは70万〜90万である。重量平均分子量が50万以上では成形加工性は良好であり、かつ、熱間内圧クリープの長期側の寿命及び伸び特性が良く、また耐衝撃性も十分である。重量平均分子量が100万以下では、機械特性が充分で、かつ成形加工性、とくに射出成形性が良好となる。
一般に、高分子量成分の重量平均分子量は、高分子量成分と低分子量成分を別々に重合して混合する場合はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する。しかしながら、本発明のポリエチレン樹脂組成物は、少なくとも2つの重合器を用いる多段重合によっても好適に製造され、多段重合による重合では高分子量成分を単離して重量平均分子量を測定することができない。そのため、次の方法により低分子量成分(A)と組成物(C)のMFR2.16から、高分子量成分(B)のMFR2.16を計算し、さらに高分子量成分(B)の重量平均分子量を算出する。この重量平均分子量が50万〜100万となるように調整して、本発明に係るポリエチレン配管材料用樹脂組成物を得ることができる。
i)低分子量成分(A)と組成物(C)のMFR2.16から高分子量成分(B)のMFR2.16への換算。
MFRの異なるポリエチレンを混合する場合、混合後のMFRは以下のように計算できることが知られている。
(MFRfinal)-0.175
(1−R)×(MFR1st)-0.175+R×(MFR2nd)-0.175・・・(式1)
式中、低分子量成分のMFR2.16をMFR1st、高分子量成分のMFR2.16をMFR2nd、組成物のMFR2.16をMFRfinal、高分子量成分量と低分子量成分量の和に対する高分子量成分量の比(混合比率)をRで示している。
(式1)より、高分子量成分のMFR2ndは次の通り表すことができる。
MFR2nd=(((MFRfinal)-0.175
−(1−R)×(MFR1st)-0.175)/R)-0.175/1 ・・・(式2)
ii)高分子量成分のMFR2.16から重量平均分子量への換算
MFR2.16と重量平均分子量には次の関係があることが知られている。
Mw×10-4=13.291×MFR2.16-0.2842 ・・・・・・・・(式3)
式中、Mwは重量平均分子量を示す。
(式2)及び(式3)から重量平均分子量Mwは次のように表される。
Mw=13.291×10-4×((((MFRfinal)-0.175
−(1−R)×(MFR1st)-0.175)/R)-0.175/1-0.2842・・(式4)
【0023】
[ポリエチレン配管材料用樹脂組成物]
次に、本発明に係るポリエチレン配管材料用樹脂組成物について説明する。
ポリエチレン配管材料用樹脂組成物の密度(JIS K7112−1999)は943〜957kg/m3であり好ましくは945〜955kg/m3であり、より好ましくは947〜953kg/m3である。
密度が943kg/m3以上の場合は、管としての剛性が十分となり、また957kg/m3以下では高温加速条件下でのESCRや伸び特性が十分なものとなり、長期間使用でもクラックの発生による低速亀裂破壊などの脆性的な破壊を起こすことがない。とくに熱間内圧クリープでは短期側でのクリープ特性は高く、長期側では、使用圧力によらない突然脆性的破壊が起こることもなく、長期特性を満足する。
【0024】
次に、本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物のα−オレフィン含量(Y)は、0.30〜1.50mol%で有り、好ましくは0.40〜1.20mol%であり、より好ましくは0.50〜1.00mol%である。ここで、α−オレフィン含量とは、当該樹脂組成物中のα−オレフィンの総含量のことである。α−オレフィン含量(Y)が0.30mol%未満では高温加速化条件でのESCRや伸び特性が低下する。α−オレフィン含量(Y)が1.50mol%を超える高密度ポリエチレンは、製造が困難であり、得られる組成物もゲルの発生により機械特性は低下する。
【0025】
本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物のMFR5は0.25〜0.50g/10分であり、好ましくは0.30〜0.45g/10分である。MFR5が0.50g/10分を超えると成形加工性は良好であるが、熱間内圧クリープの長期側の寿命及び伸び特性は低下し、また耐衝撃性も劣る方向である。MFR5が0.25g/10分未満の高密度ポリエチレンは、機械特性は向上するが、成形加工性に劣り、とくに射出成形が困難となる。
【0026】
さらに、本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物の分子量分布の指標として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められるMwとMnとの比(Mw/Mn)は、25〜40、好ましくは28〜38である。Mw/Mnが25未満では熱間内圧クリープの長期寿命及び伸び特性が低下し、成形加工性、特に射出成形も悪化する方向である。また、Mw/Mnが40を超えると低分子量成分の影響により、成形加工性などが向上するが、熱間内圧クリープ特性や耐衝撃性も劣る方向である。
【0027】
本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物を構成する低分子量成分(A)と高分子量成分(B)の混合の割合は、低分子量成分(A)が57〜52重量部、高分子量成分(B)が43〜48重量部であり、好ましくは低分子量成分(A)が56〜54重量部、高分子量成分(B)が44〜46重量部である。高分子量成分(B)の割合を43重量部以上とすることでパイプを成型したときの肌荒れが抑えられるとともに、押出し機ダイスに発生する目やにを効果的に抑えることができる。また該割合が48重量部以下では高分子量成分が十分なものとなり熱間内圧クリープの長期側の寿命及び伸び特性や耐衝撃性が十分なものとなる。
例えばこれは樹脂組成物のメルトフローレートを変えることなく混合の比率を上げることは、肌荒れに影響する高分子量成分の分子量を下げること、目やにに影響する低分子量成分の分子量を上げることに関わる。
低分子量成分が多いと目やにが発生しやすくなるが、少ないとメルトフローレートが低下して押出し性や肌荒れ性が悪化する。低分子量成分を減少させてもメルトフローレートを維持するためには、高分子量成分の分子量を下げるか高分子量成分の比率を下げることが考えられる。しかしながら、いずれも機械物性や長期物性が低下する方向であるので低分子量成分、高分子量成分それぞれの分子量及び分子量分布、両成分の組成比率等、両成分のバランスが必要である。
【0028】
また、本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物は、昇温溶出分別とゲルパーミエーションクロマトグラフィーとのクロス分別により求められる分子量−溶出温度−溶出量の相関において、分子量10万以上且つ溶出温度90℃以下の溶出成分の積算溶出量の、全積算溶出量に対する割合(R(wt%))が、次式によって求められるR0以上であることが好ましい。
R0=17.73(Y)1.59 ・・・・・・・・・・・(式5)
ここで(Y)はα−オレフィン含量(mol%)を示す。
RがR0未満では、熱間内圧クリープでの長期寿命が劣り、耐衝撃性も低下する方向である。
【0029】
また、本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物の分岐パラメーターは、0以上2以下であることが好ましい。本発明において分岐パラメーターとは、1000炭素原子あたりの分岐数C(M(i))と分子量M(i)の最小二乗法近似直線関係式
C(M(i))=P×log(M(i))+Q ・・・・・(式6)
における係数Pのことを示す。本発明において、0≦P≦2であることが好ましく、より好ましくは0.1≦P≦1.5、さらに好ましくは0.5≦P≦1.0である。
Pが0より小さい(すなわち負である)場合はポリエチレン組成物の高分子領域におけるコモノマー濃度が低いことを表し、ESCRが低下する。Pが0以下の場合でも、コモノマーの含有量を増加させれば、ある程度ESCRが向上するが、密度が低くなり剛性が低下するため好ましくない。一方、MFRを下げることによってもESCRは向上するが、成型加工性が低下するため好ましくない。よって、剛性及び成型加工性を落とすことなくESCRを上げるために、Pを0以上にすることが必要である。また、Pが2を超えるポリエチレン組成物を得ることは実質上困難である。
ここで、Pの計算を行う際、GPC曲線のピーク値が小さい点のC(M(i))は精度が低下するため、計算には用いない。また、GPC曲線の最大値M(max)以下の領域でのC(M(i))は、分子両端の末端メチル基の影響が大きいため、計算には用いない。本願発明ではM(max)のピーク値の30%以上である範囲で、M(max)より高分子側をPの計算領域とする。
本発明において、Pを0以上に制御するには、例えば低分子量成分(A)の製造においては、エチレンの単独重合を行い、高分子量成分(B)の製造においてはエチレンとα−オレフィンとの共重合を行えば良い。さらに高分子量成分(B)の製造において、共重合性の良い即ち高分子量領域にコモノマーを沢山導入することができる触媒を使用することが望ましい。
低分子量成分(A)および高分子量成分(B)の密度およびメルトフローレートは重合時の条件を変えることによって可変である。すなわちメルトフローレートは重合温度を上げる、重合圧力を上げる、水素濃度を上げることにより下げることができる。密度はα−オレフィン量を下げることにより下げることができる。
【0030】
また成形加工性を表す目安としては、押出機のダイス径に対する長さの比(L/D)が20、圧縮比が3.6/1、シリンダーからダイ温度までが200℃、スクリュー径50mmφ(フルフライト)の条件下でスクリュー回転数45rpmで押し出した際の押出量(Q)をそのときの回転数(Ns;45rpm)で除した値で評価を行った。ここで言う圧縮比とは、メタリングゾーンの面積S(M)に対するフィードゾーンの面積S(F)の比S(F)/S(M)であり、それぞれの面積はそれぞれのスクリューの溝深さから次のように算出する。スクリュー外径をRとし、メタリングゾーンの溝深さをtMフィードゾーンの溝深さをtFとすると下式で表される。ここでπは円周率を示す。
S(M)=(R2―(R−tF)2)π ・・・(式7)
S(F)=(R2―(R−tM)2)π ・・・(式8)
このQ/Nsの値が0.25(kg/hr/rpm)以上であり、好ましくは0.28以上、更に好ましくは0.30以上である。このQ/Nsが0.25未満では、実生産では更に押出量が下がり、また樹脂圧力も上がるなどの傾向にあるため、押出性に劣る。他方該メルトフローレート領域では実質0.40を超えることはない。また、キャビティーの幅10mm、厚み2mm、230℃の条件下で射出成形によりスパイラルフローを行った際、SFD値が35cm未満の材料では継ぎ手などを成形する際の成形加工性が劣り、残留応力などによる配向歪みなども生じやすくなる。そこで高分子量化により流動性を損なわず、より有効的に長期特性を改良する為には高分子量側に選択的にコモノマーを導入した上記のポリエチレンを用いることが必要となる。
【0031】
次に、本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物は、高速引張り試験において厚みに対するノッチ深さの割合が11%である場合における引張り伸びが7%以上であることが好ましい。高速引張試験は地震等で埋設されたパイプに急激な力がかかった時、パイプに傷があった場合の破壊のしやすさを評価するもので、パイプに傷が有る場合でも引張伸びの低下しないものがよい。厚みに対するノッチ深さの割合(以下ノッチ比と記述する)を11%としたときに引張伸びが7%以上あることにより、急激な力が加わったときのパイプ破断がおこりにくくなる。他方引張伸びは大きいことが望ましいが、事実上30%を越えることはない。
【0032】
本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物中の電気炉による灰化による灰分量は0.07重量%以下である。国内に於いて水道水を使用する際には塩素水による気泡の発生と、これに伴う表層剥離などが起こるため、いわゆる耐塩素水性能が必要となる。特に、着色顔料を含むポリエチレンパイプ及び継ぎ手用樹脂において灰分が多いと、耐塩素水性を低下させることが考えられるため、灰分は所定量以下に制限することがJIS K6762の水道用ポリエチレン管に記載されている。本発明に係る樹脂組成物では、灰分量0.07重量%を超える触媒残渣、添加剤はパイプが塩素を含む水道水に晒されたときパイプ表面の水泡発生につながる。
【0033】
本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物は、ポリエチレンパイプや継ぎ手の形成に適している。
本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物を用いて押出成形にてパイプを、射出成形にてパイプ継ぎ手を成形し、該成形パイプまたは継ぎ手を用いてISO9080記載の方法で熱間内圧クリープ試験を行うと、20℃における50年後のMRSは規格として10MPa以上と求められ、PE100として認定される。
【0034】
また、上記成形パイプまたは継ぎ手を用いてISO9080の記載の方法での熱間内圧クリープ試験を行うと、80℃における応力−破壊時間クリープ線図において延性破壊から脆性破壊に変わるKnee Pointが1万時間以内で見られない。Knee Pointが1万時間より短い場合は長期使用に際し脆性破壊を生じる可能性がある。
前記MRSおよびKneePoint時間を達成するためにはポリエチレン樹脂の分子量を上げること、ポリエチレン樹脂(A)と(B)の混合比を小さくして組成物(C)の分子量分布を広く取ること、高分子量成分(B)に集中的にα−オレフィンを導入することにより達成される。
【0035】
また、本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物は、通常、ポリエチレンパイプ及び継ぎ手を生産する際には、パイプとしての使途を限定するために、着色顔料と共に着色した形で提供されるのが通常である。
【0036】
次に本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物の製造方法の一例として、多段重合法について説明する。当該多段重合法は、例えば特公昭35−15246号公報、特公昭46−11349号公報、特公昭48−42716号公報、特開昭51−47079号公報、特開昭52−19788号公報、特許2505752号公報等で報告されている公知技術であり、複数の重合器が通常は直列に連結された多段重合装置によりα−オレフィンを単独重合または共重合する方法である。
【0037】
重合器内の水素濃度は、低分子量成分製造時は40モル%以上90モル%以下であることが好ましく、45モル%以上80モル%以下であることがより好ましい。40モル%以上であれば成型加工性に優れたポリオレフィンの製造が可能であり、十分に分子量を制御することが可能であるとともに、90モル%以下であれば衝撃強度が改善できる。なお、重合器内の水素濃度とは、重合器内の気相部分をガスクロマトグラフィーを用いて分析することにより得られた水素濃度(単位はモル/L)とα−オレフィン濃度(単位はモル/L)とを用いて、下記の数式に従って算出された値のことであり、単位はモル%である。
水素濃度(モル%)=
水素濃度(モル/L)/{水素濃度(モル/L)
+α−オレフィン濃度(モル/L)} ・・・(式9)
オレフィン重合においては、一般に分子量は重合器内の水素濃度(モル%)で制御されており、重合器内の水素濃度(モル%)が高いほうが、生成するポリオレフィンの分子量が低下する。従って、上述の多段重合法により低分子量成分を製造するためには、重合器内の水素濃度を高める必要がある。一方、水素濃度を高めた際には重合活性が低下することが一般に知られている。この高い水素濃度での重合時において、α−オレフィンに含酸素化合物および含硫黄化合物が混入した場合には、顕著に活性が低下することが判った。この原因については明確ではないが、この活性の低下を抑制することが可能となった。
【0038】
上記多段重合における低分子量成分製造時の平均滞留時間は、1.5時間以上10時間以下が好ましく、2時間以上6時間以下であることがより好ましい。平均滞留時間が1.5時間以上である場合には、触媒あたりのポリオレフィンの生産性が充分に高いために耐塩素水性、耐溶出性が向上し、10時間以下である場合には高い単位時間あたりの生産性でポリオレフィンを製造することができる。なお、本発明における平均滞留時間とは、重合器内において触媒とモノマーとが反応している平均的な時間のことである。本発明における平均滞留時間とは、バッチ重合の場合には触媒とモノマーとがリアクター内で反応を開始してから、重合器内での重合反応を停止させるまでの時間のことであり、連続重合の場合には、重合器内の溶媒の体積とポリオレフィンの体積との和を、重合器から溶媒とポリオレフィンとが定常的に抜き取られる体積あたりの速度で除すことにより得られる値である。すなわち、平均滞留時間を延長するためには、重合器内の溶媒の体積とポリオレフィンの体積との和に対する、重合器から定常的に抜き取られる体積あたりの速度を下げる必要がある。したがって、平均滞留時間を延長しつつ、単位時間あたりの生産性を一定に保つためには、定常的に抜き取られるポリオレフィンの量を一定に保つことが必要であり、このためには重合器内の溶媒に対するポリオレフィンの割合を上げる必要がある。一方、重合器内の溶媒に対するポリオレフィンの割合には限界があり、この限界は重合の条件により異なるが、この限界を超えると重合器内のスラリーの流動性が悪化する、ポリオレフィンの塊が発生する等の不具合が生じて安定生産が困難になる可能性がある。
次に、本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物の重合に好適な固体触媒[A]について説明する。固体触媒[A]が、下記一般式(式10)で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物と下記一般式(式11)で表される塩素化剤との反応により調製された担体(A−1)に、下記一般式(式12)で表されるチタン化合物(A−2)を担持することにより調製される。
(M1)α(Mg)β(R1a(R2b(OR3c・・・・・(式10)
(式中、M1は周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R1、R2およびR3はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、bおよびcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、0<a+b、0≦c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(ただし、kはM1の原子価))
dSiCle4(4-(d+e))・・・・・(式11)
(式中、R4は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす数である。1≦d、1≦e、2≦d+e≦4)
Ti(OR5f(4-f)・・・・・(式12)
(式中、fは0以上4以下の実数であり、R5は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
【0039】
次に、本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物の重合に好適な不活性炭化水素溶媒について説明する。本発明における不活性炭化水素溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素化合物ないしシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物のことであり、脂肪族炭化水素であることが好ましい。
【0040】
次に、上記一般式(式10)で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物について説明する。この有機マグネシウム化合物は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジヒドロカルビルマグネシウム化合物およびこの化合物と他の金属化合物との錯体のすべてを包含するものである。記号α、β、a、b、cの関係式kα+2β=a+b+cは金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
上記一般式(式10)において、R1ないしR2で表される炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、プロピル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくはR1ないしR2はアルキル基である。α>0の場合、金属原子M1としては、周期律表第1族ないし第3族および第13族に属する金属元素が使用でき、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、アルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛が特に好ましい。
金属原子M1に対するマグネシウムの比β/αは、任意に設定可能であるが、好ましくは0.1〜30、特に0.5〜10の範囲が好ましい。また、α=0である或る種の有機マグネシウム化合物を用いる場合、例えば、R1が1−メチルプロピル等の場合には不活性炭化水素溶媒に可溶であり、このような化合物も本発明に好ましい結果を与える。一般式(式10)において、α=0の場合のR1、R2は次に示す三つの群(1)、(2)、(3)のいずれか一つであることが推奨される。
(1)R1、R2の少なくとも一方が炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基であること、好ましくはR1、R2がともに炭素原子数4〜6であり、少なくとも一方が二級または三級のアルキル基であること。
(2)R1とR2とが炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはR1が炭素原子数2または3のアルキル基であり、R1が炭素原子数4以上のアルキル基であること。
(3)R1、R2の少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR1、R2に含まれる炭素原子数を加算すると12以上になるアルキル基であること。
【0041】
以下これらの基を具体的に示す。(1)において炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基としては、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチル−2−エチルプロピル基等が用いられ、1−メチルプロピル基が特に好ましい。次に(2)において炭素原子数2または3のアルキル基としてはエチル、1−メチルエチル、プロピル基等が挙げられ、エチル基が特に好ましい。また炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられ、ブチル、ヘキシル基が特に好ましい。
【0042】
さらに、(3)において炭素原子数6以上の炭化水素基としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、2−ナフチル基等が挙げられる。炭化水素基の中ではアルキル基が好ましく、アルキル基の中でもヘキシル、オクチル基が特に好ましい。一般に、アルキル基に含まれる炭素原子数が増えると不活性炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘度が高くなるために必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。なお、上記有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶液として使用されるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含有され、あるいは残存していても差し支えなく使用できる。
【0043】
次にアルコキシ基(OR3)について説明する。R3で表される炭化水素基としては、炭素原子数1以上12以下のアルキル基またはアリール基が好ましく、3以上10以下のアルキル基またはアリール基が特に好ましい。具体的には、たとえば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチル−4−メチルペンチル、2−プロピルヘプチル、2−エチル−5−メチルオクチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、ナフチル基等が挙げられ、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルペンチルおよび2−エチルヘキシル基が特に好ましい。
【0044】
これらの有機マグネシウム化合物は、一般式R1MgXおよびR12Mg(R1は前述の意味であり、Xはハロゲンである)からなる群に属する有機マグネシウム化合物と、一般式M12kおよびM12(k-1)H(M1、R2、kは前述の意味である)からなる群に属する有機金属化合物とを不活性炭化水素溶媒中、室温〜150℃の間で反応させ、必要な場合には続いてR3で表される炭化水素基を有するアルコールまたは不活性炭化水素溶媒に可溶な上記R3で表される炭化水素基を有するアルコキシマグネシウム化合物、等と反応させる方法により合成される。
【0045】
このうち、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとを反応させる場合、反応の順序については、有機マグネシウム化合物中にアルコールを加えていく方法、アルコール中に有機マグネシウム化合物を加えていく方法、または両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。本発明において不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとの反応比率については特に制限はないが、反応の結果、得られるアルコキシ基含有有機マグネシウム化合物における、全金属原子に対するアルコキシ基のモル組成比c/(α+β)の範囲は0≦c/(α+β)≦2であり、0≦c/(α+β)<1が特に好ましい。
【0046】
上記担体(A−1)を合成する際に使用される塩素化剤は、下記の一般式(式11)で示される、少なくとも一つはSi−H結合を有する塩化珪素化合物である。
dSiCle4(4-(d+e)) ・・・(式11)
(式中、R4は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす数である。1≦d、1≦e、2≦d+e≦4)
【0047】
上記の(式11)において、R4で表される炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル基等の炭素数1〜3のアルキル基が特に好ましい。また、dおよびeは2≦d+e≦4の関係を満たす1以上の実数であり、eが2以上であることが特に好ましい。
【0048】
これらの化合物としては、HSiCl3、HSiCl2CH3、HSiCl225、HSiCl237、HSiCl2(1−CH325)、HSiCl249、HSiCl265、HSiCl2(4−Cl−C64)、HSiCl2CH=CH2、HSiCl2CH265、HSiCl2(1−C107)、HSiCl2CH2CH=CH2、H2SiClCH3、H2SiClC25、HSiCl(CH32、HSiCl(C252、HSiClCH3(1−CH325)、HSiClCH3(C65)、HSiCl(C652等が挙げられ、これらの化合物またはこれらの化合物から選ばれた二種類以上の混合物からなる塩化珪素化合物が使用される。塩化珪素化合物としては、トリクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、エチルジクロロシランが好ましく、トリクロロシラン、モノメチルジクロロシランが特に好ましい。
【0049】
次に、上記有機マグネシウム化合物と塩素化剤との反応について説明する。有機マグネシウム化合物と塩素化剤との反応に際しては、塩素化剤を予め反応溶媒体、たとえば、不活性炭化水素溶媒、1,2−ジクロロエタン、o−ジクロロベンゼン、ジクロロメタン等の塩素化炭化水素、もしくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系媒体、あるいはこれらの混合媒体を用いて希釈した後利用することが好ましい。特に、触媒の性能上、不活性炭化水素溶媒が好ましい。本発明においては、反応の温度については特に制限はないが、反応の進行上、好ましくは塩素化剤として使用する塩化珪素化合物の沸点以上もしくは40℃以上で実施される。有機マグネシウム化合物と塩化珪素化合物との反応比率にも特に制限はないが、通常有機マグネシウム化合物1モルに対し、塩化珪素化合物0.01〜100モルであり、好ましくは有機マグネシウム化合物1モルに対し、塩化珪素化合物0.1〜10モルの範囲である。
【0050】
本発明における反応方法については、有機マグネシウム化合物と塩化珪素化合物とを同時に反応器に導入しつつ反応させる同時添加の方法、塩化珪素化合物を事前に反応器に仕込んだ後に有機マグネシウム化合物を反応器に導入させる方法、もしくは有機マグネシウム化合物を事前に反応器に仕込んだ後に塩化珪素化合物を反応器に導入させる方法等があるが、塩化珪素化合物を事前に反応器に仕込んだ後に有機マグネシウム化合物を反応器に導入させる方法が好ましい。上記反応により得られる固体成分はろ過あるいはデカンテーション法により分離した後、不活性炭化水素溶媒を用いて充分に洗浄し、未反応物あるいは副生成物等を除去することが好ましい。
【0051】
本発明においては、有機マグネシウム化合物と塩化珪素化合物との反応を固体の存在下に行うこともできる。この固体は無機固体、有機固体のいずれでもよいが、無機固体を用いるほうが好ましい。無機固体として、下記のものが挙げられる。
(i)無機酸化物
(ii)無機炭酸塩、珪酸塩、硫酸塩
(iii)無機水酸化物
(iv)無機ハロゲン化物
(v)(i)〜(iv)なる複塩、固溶体ないし混合物
無機固体の具体例としては、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、水和アルミナ、マグネシア、トリア、チタニア、ジルコニア、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、珪酸マグネシウム、マグネシウム・カルシウム、アルミニウムシリケート[(Mg・Ca)O・Al23・5SiO2・nH2O]、珪酸カリウム・アルミニウム[K2O・3Al23・6SiO2・2H2O]、珪酸マグネシウム鉄[(Mg・Fe)2SiO4]、珪酸アルミニウム[Al23・SiO2]、炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、よう化マグネシウム等が挙げられるが、特に好ましくは、シリカ、シリカ・アルミナないし塩化マグネシウムが好ましい。無機固体の比表面積は、好ましくは20m2/g以上特に好ましくは90m2/g以上である。
【0052】
次に、上記チタン化合物(A−2)について説明する。本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物の製造においては、チタン化合物(A−2)として下記の一般式(12)で表されるチタン化合物が使用される。
Ti(OR5f(4-f)・・・・・(式12)
(式中、fは0以上4以下の実数であり、R5は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
【0053】
5で表される炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、アリル基等の脂肪族炭化水素基、シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、シクロペンチル基等の脂環式炭化水素基、フェニル、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられるが、脂肪族炭化水素基が好ましい。Xで表されるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、塩素が好ましい。具体的には、四塩化チタンが好ましい。上記から選ばれたチタン化合物(A−2)を、2種以上混合して使用することが可能である。
【0054】
チタン化合物(A−2)の担体(A−1)に対する担持量は、担体(A−1)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.01以上20以下が好ましく、0.05以上10以下が特に好ましい。チタン化合物(A−2)の担体(A−1)に対する担持量は、担体(A−1)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.01以上であれば、触媒あたりの重合活性が充分に高く、20以下であればチタンあたりの重合活性が充分に高い。本発明においては、担持の際の反応温度については、特に制限はないが、室温ないし150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0055】
本発明においては、固体触媒[A]は、担体(A−1)、アルコール(A−3)、有機金属化合物(A−4)、有機金属化合物(A−5)、チタン化合物(A−2)からなるものであることが好ましい。
【0056】
次に、アルコール(A−3)について説明する。本発明における固体触媒[A]の調製において、担体(A−1)にチタン化合物(A−2)を担持する前に、担体(A−1)とアルコール(A−3)とを接触させることが好ましい。本発明におけるアルコール(A−3)は炭素数1以上20以下の飽和又は不飽和のアルコールが好ましい。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、フェノール、クレゾール等が挙げられ、炭素数3〜8の直鎖アルコールが特に好ましい。これらのアルコールを混合して使用することも可能である。
【0057】
アルコール(A−3)の使用量は、担体(A−1)中に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0より大きく10以下であることが好ましく、0.05以上5以下がさらに好ましく、0.1以上3以下がさらに好ましい。担体(A−1)とアルコール(A−3)との反応は、不活性炭化水素溶媒の存在下または非存在下において行う。反応時の温度は特に制限はないが、25℃以上200℃以下の範囲で実施されることが好ましい。
【0058】
次に、本発明における有機金属化合物(A−4)について説明する。本発明における固体触媒[A]の調製時において、担体(A−1)とアルコール(A−3)を反応させた後、有機金属化合物(A−4)を反応させることがさらに好ましい。本発明においては、この有機金属化合物(A−4)は下記の一般式(式13)で表される。
一般式、M27s(t-s)・・・(式13)
(式中M2は周期律表第1族、第2族および第13族からなる群に属する金属原子、R7は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、QはOR8、OSiR91011、NR1213、SR14およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は水素原子または炭化水素基であり、sは0より大きな実数であり、tはM2の原子価である)
【0059】
上記M2は周期律表第1族、第2族および第13族からなる群に属する金属原子であり、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、マグネシウム、ホウ素、アルミニウムが特に好ましい。R5で表される炭化水素基はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基である。QはOR8、OSiR91011、NR1213、SR14およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は水素原子または炭化水素基であり、Qがハロゲンであることが特に好ましい。
【0060】
本発明における有機金属化合物(A−4)の例としては、メチルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムアイオダイド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムアイオダイド、ブチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムアイオダイド、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、トリエチルホウ素、トリメチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムメトキシド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ(2−メチルプロピル)アルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等が挙げられ、有機アルミニウム化合物が特に好ましい。
これらの化合物を混合して使用することも可能である。
【0061】
(A−4)の使用量は、(A−3)に対するモル比で、0.01倍以上20倍以下であることが好ましく、0.1倍以上10以下であることがさらに好ましい。また、(A−4)の使用量は、担体(A−1)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.01倍以上20倍以下であることが好ましく、0.05倍以上10倍以下であることがさらに好ましい。反応の温度については特に制限はないが、25℃以上200℃以下であり、かつ反応媒体の沸点未満の範囲が好ましい。
【0062】
次に、本発明における有機金属化合物(A−5)について説明する。本発明においては、担体(A−1)をアルコール(A−3)と接触させ、次いで有機金属化合物(A−4)と反応させた後にチタン化合物(A−2)を担持する際、チタン化合物(A−2)と有機金属化合物(A−5)とを反応させることにより担持することが好ましい。有機金属化合物(A−5)は上記の一般式(式13)で表される有機金属化合物であり、有機金属化合物(A−4)と同一であっても異なっていても良い。
【0063】
本発明における有機金属化合物(A−5)の例としては、メチルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムアイオダイド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムアイオダイド、ブチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムアイオダイド、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、トリエチルホウ素、トリメチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムメトキシド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ(2−メチルプロピル)アルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等が挙げられ、有機アルミニウム化合物が特に好ましい。
【0064】
チタン化合物(A−2)と有機金属化合物(A−5)の添加順序には特に制限は無く、チタン化合物(A−2)に続いて有機金属化合物(A−5)を加える、有機金属化合物(A−5)に続いてチタン化合物(A−2)を加える、チタン化合物(A−2)と有機金属化合物(A−5)とを同時に添加するのいずれの方法も可能であり、チタン化合物(A−2)に続いて有機金属化合物(A−5)を加えることが好ましい。チタン化合物(A−2)に対する有機金属化合物(A−5)のモル比は、好ましくは0.1〜10、特に好ましくは0.5〜5である。チタン化合物(A−2)と有機金属化合物(A−5)との反応は不活性炭化水素溶媒中で行われるが、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いることが好ましい。反応の温度については特に制限はないが、25℃以上200℃以下であり、かつ反応媒体の沸点未満の範囲が好ましい。
【0065】
次に、有機金属化合物(A−4)または(A−5)として用いられる有機アルミニウム化合物[B]について説明する。本発明における有機アルミニウム化合物[B]は下記の一般式(式14)で表される。
一般式 R6hAlZ(3-h) ・・・(式14)
(式中、R6は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、Zは水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、シロキシ基からなる群に属する基であり、hは2以上3以下の実数である。)
【0066】
6の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−メチルプロピル基、ペンチル基、3−メチルブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基等が挙げられ、中でもエチル基、2−メチルプロピル基が特に好ましい。これらの炭化水素基は二種類以上含まれていても良い。hは0.05以上1.5以下であることが好ましく、0.1以上1.2以下であることが特に好ましい。
【0067】
有機アルミニウム化合物[B]は(式14)中のZが水素の場合は、トリヒドロカルビルアルミニウムとジヒドロカルビルアルミニウムハイドライドとを混合することによる合成方法が好ましい。具体的には、トリイソブチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライドとを混合する、トリエチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライドとを混合する、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムハイドライドとを混合する、等の合成方法が好ましい。混合の条件には特に制限は無いが、0℃以上80℃以下の温度で攪拌により混合することが好ましい。
【0068】
(式14)中のZが水素以外では、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ(2−メチルプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリ(3−メチルブチル)アルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ビス(2−メチルプロピル)アルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド等のハロゲン化アルミニウム化合物、ジエチルアルミニウムエトキシド、ビス(2−メチルプロピル)アルミニウムブトキシド等のアルコキシアルミニウム化合物、ジメチルヒドロシロキシアルミニウムジメチル、エチルメチルヒドロシロキシアルミニウムジエチル、エチルジメチルシロキシアルミニウムジエチル等のシロキシアルミニウム化合物およびこれらの混合物が好ましく、トリアルキルアルミニウム化合物が好ましい。
【0069】
本発明で使用されるα−オレフィンとは、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン及びシクロヘキサジエン等が挙げられる。
【0070】
本発明において、ポリオレフィンの製造方法に特に制限はなく、一般に用いられている溶液法、高圧法、高圧バルク法、ガス法、スラリー法のいずれの製造方法にも適用できる。
例えば、重合圧力はゲージ圧として0.1MPa以上200MPa以下であり、重合温度は25℃以上250℃以下であり、溶媒としてプロパン、ブタン、イソブタン、ヘキサン、シクロヘキサン等を用いるものも含まれる。
【0071】
本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物は、スラリー重合、バルク重合、ガス重合、溶液重合等の方法で製造される。本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物は、一段重合、二段重合、若しくはそれ以上の多段重合等で製造が可能であるが、本発明の構成条件を充足させるためには、コモノマーであるα―オレフィンを重点的にポリマーの高分子量部へ共重合させる必要がある。本発明に於いて使用される好ましい二段重合の例を図1に参照しながら以下に説明する。
【0072】
重合器1ではライン2よりエチレン、ヘキサン、水素、触媒成分等が供給される。α―オレフィンは供給しない。これより、低分子量のホモのポリエチレンが重合される。重合圧力はゲージ圧として0.1〜200MPa、好ましくは0.1〜3MPa、より好ましくは0.1〜2.5MPa、重合温度は25℃〜250℃であり、好ましくは60℃〜100℃、より好ましくは70〜90℃である。重合器1内のスラリーはフラッシュドラム3に導かれ、未反応のエチレン、水素が除かれる。除去されたエチレン、水素はコンプレッサー4により昇圧された重合器1に戻される。一方、フラッシュドラム3内のスラリーは、ポンプ5により二段目の重合器6に導入される。重合器6ではライン7よりエチレン、α―オレフィンコモノマー、ヘキサン、水素、触媒成分等が供給されることにより、α―オレフィンが共重合された高分子量のポリエチレンが重合される。重合圧力はゲージ圧で0.1〜3MPa、好ましくは0.1〜2MPaで、重合温度は40〜110℃、好ましくは60〜90℃である。重合器6のポリマーが製品として後処理工程を経て取り出される。
【0073】
本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物は又、公知の混合方法、例えば一軸もしくは二軸押出機またはバンバリーミキサーによる混練等により混合して得られるものでもかまわないが、この場合も得られたポリマーがα-オレフィンを重点的にポリマーの高分子量部へ共重合させたものとなるように混合前のポリエチレンを選択する必要がある。
【0074】
本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物には、必要に応じて、フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料等の公知の添加剤を混合して使用できるが、JIS K6762に示される灰分を0.07重量%以下にする処方でなければならない。
【0075】
次に、本発明のポリエチレン配管材料用樹脂組成物を用いたパイプの成形方法を説明する。上記記載のPE100である高密度ポリエチレンを170℃ないし220℃の温度で溶融し、65mmφ押出機(東芝プラスチックエンジニアリング社製)に付属の外径80mm、内径68mmダイより円筒状に押し出し、サイジング槽にてサイジングプレートを通すことにより外径を形成させるとともに、一次冷却としてサイジング槽水温を20℃〜60℃で冷却を行い、さらにサイジング槽を出てから二次冷却として水温15℃〜25℃にて冷却を行ったパイプを、引き取り機にてSDR(外径/肉厚比)=11となるよう引き取り、呼び径50mm、肉厚5.5mmの管状体のパイプを成形した。
【0076】
本発明の高密度ポリエチレンを用いたポリエチレン配管材料用樹脂組成物は従来のポリエチレン配管材料用樹脂組成物に比べ、熱間内圧クリープ特性に優れるので長期での使用が可能であり、ガス管などの中密度ポリエチレンパイプ用樹脂に比べると長期の機械特性においてより高い応力域においても破壊せずに長期側での安全性を高める事が出来る。
【0077】
長期特性の評価法として熱間内圧クリープ試験が広く行われているが、上水道用に用いられるポリエチレンパイプ及び継ぎ手用樹脂では、長期の機械特性に優れる為、温度を上げた加速試験条件下において充分長い時間(最低でも1年以上)測定を行っても脆性的な破壊は見られない場合がある。従って材料判定には長い時間の測定評価が必要である。またパイプに高い応力を与えると塑性変形による延性破壊が支配的になるため、剛性の高い材料は高い応力領域においては塑性変形が起こりにくく、短い試験期間の間ではあたかも長期の機械特性に優れたような傾向を示す。しかしながら、低応力下におけるパイプの破壊形態はむしろ塑性変形を伴う延性破壊とは逆に塑性変形を伴わない脆性破壊を示す場合があり、このような場合は、長時間低い応力下に置かれる事により突然起こる破壊である為、必ずしも高応力領域における塑性変形の起きにくい材料が長期特性に優れる材料という事にはならない。
また上記記載のPE100である高密度ポリエチレンは成形加工性を犠牲にして分子量、密度、分子量分布、R0をデザインすることにより得ることは可能であるが、パイプ及び継ぎ手が同一の樹脂で融着がなされるような場合では、継ぎ手側の射出成形が困難になる。そのため、成形性に優れたPE100が市場では望まれており、本発明により、かかるPE100を提供することができた
【実施例】
【0078】
次に、実施例および参考例などに基づき、本発明をさらに具体的に説明する。
以下に本発明で用いた基礎物性の測定方法について述べる。
【0079】
(1)密度(ρ、単位:kg/m3
JIS K7112−1999に準拠し、密度勾配管法(23℃)で測定した。
【0080】
(2)α−オレフィン含量(Y、単位:mol%)
機種は日本電子(株)JEOL、α400核磁気共鳴装置、測定モード:13C−NMR、温度135℃、積算回数10,000回、試料30μg/0.4ccオルトジクロロベンゼン、基準物質:重水素化ベンゼン(C66)にて測定した。α−オレフィン含量の計算は下記の式で実施した。
Y=1/2(XE) (式15)
(EE)+(XE)=100mol% (式16)
ここでXはα−オレフィンのユニット、Eはエチレンのユニットを示しており、ユニットが2つつながった連鎖(dyad構造)のみを想定して計算する。(XE)はαーオレフィンとエチレンの連鎖、(EE)はエチレンとエチレンの連鎖を示し、(EE)と(XE)の和が100mol%として計算する。
【0081】
(3)メルトフローレート(単位:g/10分)JIS K7210−1999に準拠し、コードDは2.16kg荷重で、コードTは5kg荷重にて190℃で測定した。
【0082】
(4)重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)
分子量分布(Mw/Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定によって得られる重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比である。
GPCはWaters社製Alliance GPCV2000を用いて測定した。使用したカラムは、1本の昭和電工社製Shodex AT−807Sと2本の東ソー社製TSK−gelGMH−H6であり、まず1本のShodex AT−807Sを通り、次に2本のTSK−gelGMH−H6を通るように直列に接続して使用した。移動相溶媒として、10質量ppmのペンタエリスリチル テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を含む1,2,4−トリクロロベンゼンを使用した。測定温度は140℃であった。移動相溶媒の流速は1.0ml/分であった。測定試料は、20mgのポリマーを0.1質量%の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを含む1,2,4−トリクロロベンゼン20mlに溶解させることにより調製した。検出器は示差屈折形を用いた。重量平均分子量は標準物質として東ソー社製の単分散のポリスチレンを用いて作成した検量線を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量に0.43(ポリエチレンのQファクター/ポリスチレンのQファクター=17.7/41.3)を乗ずることにより算出した。
高分子量成分の重量平均分子量は、高分子成分と低分子成分を別々に重合して混合する場合はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する。他方多段重合における場合は高分子量成分のメルトフローレート(MFR2.16)を低分子量成分のメルトフローレートと組成物のメルトフローレートから求め、高分子量成分のメルトフローレートから重量平均分子量を計算した。
【0083】
(5)GPC−FTIR(分岐パラメーター)
Waters社製AllianceGPCV2000にオンラインで検出器;パーキンエルマー(株)社製FT−IR1760Xを接続しGPC測定と同時に行った。測定波長はメチル基の吸収バンドである2960cm-1、メチレン基の吸収バンドである2930cm-1およびベースとする2980cm-1を6秒ごとに測定し、デコンボルーションしてピーク分離の後、それぞれのピークの面積を算出しその比率から各GPCリテンションタイムでの炭素原子1000個あたりの分岐数を求めた。なお分岐の炭素原子1000個あたりの数は核磁気共鳴(NMR)により測定した値を用いて補正した。
【0084】
(6)昇温溶出分別GPCクロス分別
分子量10万以上且つ溶出温度90℃以下の溶出成分の積算溶出量の全積算溶出量に対する割合(R、単位:wt%)についてR0は昇温溶出分別とゲルパーミエーションクロマトグラフィーとのクロス分別により求められる分子量−溶出温度−溶出量の相関より算出した。図3に溶出量を等高線で表した模式図を示す。分子量10万以上且つ溶出温度90℃以下の溶出成分の積算溶出量は、同図において斜線の部分に相当する。その全積算溶出量に対する比がRである。測定装置は(株)ダイヤインスツルメンツ製CFC−T−150A型を用いた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー用カラムとしては昭和電工(株)製AD−806MSカラム3本を使用した。溶媒はオルトジクロロベンゼンを使用し、昇温溶出分別部以外は常時140℃設定で測定した。
試料濃度は0.1〜0.3wt/vol%とし、注入量0.5ml、流速1.0ml/minであった。試料を140℃2時間加熱後0℃まで10℃/hrで降温、更に0℃で60min保持して試料をコーティングした。検出器に赤外分光器を用い、3.42μmの赤外光を検知した。溶出温度は0℃〜140℃までを分け、溶出ピーク付近では2℃刻みのフラクションに分けた。各温度での溶出したフラクションの分子量を測定した。
【0085】
(7)ESCR(単位:hr)
JIS K6922−2付属書に準拠するが、恒温水槽の水温は80℃に変更して測定した。試験液としては、ライオン(株)製リポノックスNC−140(登録商標)の10重量%水溶液を使用した。
【0086】
(8)引張り伸び(l、単位:%)
JIS K7113に準拠するが、試験速度は10mm/secに変更し、破壊時の引張伸び(l)は以下の式で算出した。l=(L−L0)/L0×100 ・・・(式17)
(ここで、l;引張破壊時の伸び、L;破壊時のつかみ具間距(mm)、L0;元のつかみ具間距離(mm)を示す)
【0087】
(9)引張弾性率(単位:MPa)
JIS K7113に準拠するが、試験速度は10mm/secに変更し、伸びが0〜2%の傾きから求めた。
【0088】
(10)高速引張伸び(単位:%)
JIS K7113に準拠するが、試験速度は100mm/secで行った。試験片はJIS2号を用い試験片中央部、引張方向とは直角に方向にESCR用刃で片面にノッチを入れた。ノッチ深さは210倍顕微鏡観察にて求めた。試験片厚みに対するノッチ深さの比率をノッチ比とした。伸びはチャック間距離(80mm)に対する伸びを比率で表した。ノッチ比率を9〜13%間に少なくとも2水準測定し、ノッチ比率11%の時の伸びを求めた。
【0089】
(11)アイゾット衝撃強度(IZOD、単位:kJ)
JIS K7110に準拠し、試験片形状は2号A型で23℃にて測定した。
【0090】
(12)スパイラルフロー長さ(SFD、単位:cm)
幅10mm、厚さ2mmのスパイラル状のキャビティをもつ金型により、射出温度230℃、射出圧力100kg/cm2、金型温度50℃の成形条件で、試料を射出成形し、成形されたスパイラルの長さを測定した。成形機は東芝機械製の射出成形機IS150ENを用いた。
【0091】
(13)回転数当たりの押し出し量(Q/Ns、Q:kg/hr、Ns:rpm)
プラコー性押出機(スクリュー径50mmφ、L/D=20、CR=3.6)によりシリンダー温度、ダイ温度を以下の条件で行い、回転数45rpmにおける吐出量を測定し、これを回転数で除した。
シリンダー温度:C1:C2:C3=200:200:200℃
ダイ温度:H:D1:D2:D3=200:200:200:200℃、
ダイ外径:15mm、
ダイ内径:10mm。
【0092】
(14)パイプ成形
パイプとしての物性測定はパイプを以下のように成形してテストに供した。
パイプはΦ65mm押出機(東芝プラスチックエンジニアリング社製)を用い、樹脂温度220℃の温度で溶融し、押出機に付属した外径80mm、内径68mmダイより円筒状に押出し、サイジング槽にてサイジングプレートを通すことにより外径を形成させるとともに、一次冷却としてサイジング槽水温を25℃で冷却を行い、さらにサイジング槽をでてから次の水槽で二次冷却として水温20℃にて冷却を行ったパイプを、引取り機にて外径/肉厚比=11となるように引き取り、呼び径50mm、肉厚5.5mmの管状体のパイプを成形した。
【0093】
(15)耐塩素水性の測定
耐塩素水性試験は呼び径50mmのパイプを用いJIS−K6762に準拠して行った。
耐塩素水試験は塩素濃度を2000ppm、浸漬温度を60℃、液のpHを6.5±0.5(液交換時)、液交換は毎日行い、336時間(2週間)浸漬の後、試験片に水泡が発生したかどうかの確認を行った。水泡の発生が見られたものを×、発生が見られなかったものを○と判定した。
【0094】
(16)熱間内圧クリープ試験
JIS K6774に記載されるガス用ポリエチレン管用の口径のパイプ(50A)を用い、ISO 9080記載の試験法により20℃、60℃、80℃の3水準の温度を選び、任意のフープストレスにて熱間内圧試験を9000時間以上のデータを少なくとも1点含むように測定を行った。
Knee PointはISO9080に基づき、ノッチ無しのパイプを用い80℃で熱間内圧試験を行い、経過時間に対するフープストレスを表した時の低時間側の延性破壊から高時間側の脆性破壊に変化(Knee)が現れたものを“有”、延性破壊のみであるものを“無”とした。
【0095】
(17)灰分量
JIS R1301に規定の100ml磁性るつぼを洗浄後電気マッフル炉中700〜800℃で1時間加熱し冷却した。10mgの試料を入れ試料質量を秤量した後、電熱器上で炎が出ないように注意しながら炭化させ、電気マッフル炉中700〜800℃で灰化するまで加熱し灰分の質量を秤量した。灰化前の試料重量に対する灰化後の試料重量を%で計算した。
【0096】
(18)成型加工性の測定
φ65mm押出機(東芝プラスチックエンジニアリング社製)を用い、樹脂温度220℃の温度で溶融し、押出機に付属した外径80mm、内径68mmダイより円筒状に押出し、表面の荒れ具合を判定した。凹凸がなく滑らかなものを○、鮫肌状に荒れたものを×と判定した。
【0097】
(19)目やに性
東洋精機(株)ラボプラストミルを用い単軸押出し機(L/D=20)、フルフライトスクリュー(CR=3.0)にノズル径(1.8)mmのテフロン(登録商標)加工したノズルを取り付け、メッシュとして80/100/400/100/80メッシュ、樹脂温度を180/200/200/180℃、スクリュー回転数150rpmで押出した。
3時間押出しをつづけノズル周りに目やにが多く発生したものを“多”、ほとんどみられなかったものを“少”とした。
【0098】
[参考例1]
固体触媒成分[A−1]の調製
(1){(A−1)−1}担体の合成
充分に窒素置換された内容積20Lのステンレス製オートクレーブに1mol/Lのヒドロキシトリクロロシランヘキサン溶液4Lを仕込み、50℃で攪拌しながら組成式AlMg5(C4911(OC252で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液9L(マグネシウム6.5モル相当)を4hかけて滴下し、さらに50℃で1h攪拌しながら反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、7Lのヘキサンで4回洗浄した。この担体を分析した結果、担体1g当たりに含まれるマグネシウムが8.44ミリモルであった。
(2)固体触媒成分[A−1]の調製
上記担体500gを含有するヘキサンスラリー13Lに50℃で攪拌しながら1mol/Lの1−プロパノールヘキサン溶液450mLを30分かけて添加した。添加後、50℃で1時間反応を継続した。反応終了後、上澄み液7Lを除去し、ヘキサン6.4Lを添加し、温度を65℃にして1mol/Lのジエチルアルミニウムクロリドヘキサン溶液600mlを1時間30分かけて添加した。添加後、65℃で1時間反応を継続した。反応終了後、上澄み液7Lを除去し、ヘキサン7Lで4回洗浄した。洗浄後のスラリーの上澄み600mLを除去し、50℃で攪拌しながら1mol/Lのジエチルアルミニウムクロリドヘキサン溶液265mLを5分かけて添加し、引き続き1mol/Lの四塩化チタンヘキサン溶液265mLを5分かけて添加した。添加後、50℃で2時間反応を継続した。反応終了後、7Lの上澄み液を除去し、7Lのヘキサンで4回洗浄することにより、固体触媒成分[C]を調製した。この固体触媒成分1g中に含まれるチタン量は0.52ミリモルであった。
【0099】
[実施例1]
(1)重合
触媒として、固体触媒[A−1]とトリイソブチルアルミニウム[B−1]を使用した。
最初に、1段目の重合では低分子量成分を製造するために、反応容積300Lのステンレス製重合器1を用いた。γ線を使用した液面計により測定された重合器内の溶媒の体積とポリオレフィンの体積との和は170Lであり、重合器から溶媒とポリオレフィンとが定常的に抜き取られる体積あたりの速度は51L/hであった。従って、1段目の平均滞留時間は3.3時間であった。重合器1から低分子量成分は10kg/hの速度で抜き取られた。重合温度85℃、重合圧力1MPaの条件で、触媒は上記の固体触媒[A−1]をTi原子換算で0.5ミリモル/h、上記の有機アルミニウム化合物[B−1]をAl原子換算で20ミリモル/h、またヘキサンは40L/hの速度で導入した。分子量調整剤としては水素を用い、エチレンと水素との和に対する水素の気相モル濃度(水素/(エチレン+水素))が65モル%になるように供給し、エチレンの供給量が10kg/hになるように重合器に供給し重合を行った。
重合器1における重合活性は、3200g/g/hであった。重合器1で製造された低分子量成分のメルトフローレート(MFR2.16)は190g/10分、密度は974kg/m3であった。
ポリマースラリー中の水素を除去するため、重合器1内のポリマースラリー溶液を51L/hの速度で圧力0.1MPa、温度75℃のフラッシュドラムに導き、未反応のエチレン、水素を分離した後反応容積250Lの重合器2にスラリーポンプで、ポリマースラリー溶液は51L/hの速度で、ヘキサンは95L/hの速度で、混合し昇圧して導入した。
次に、2段目の重合では高分子量成分を製造するために、反応容積300Lのステンレス製重合器2を用いた。ポリマースラリー溶液とヘキサンとが合わせて146L/hの速度で重合器2に導入された。上記の有機アルミニウム化合物[B−1]をAl原子換算で47ミリモル/hで導入した。γ線を使用した液面系により測定された重合器内の溶媒の体積とポリオレフィンの体積との和は146Lであり、重合器から溶媒とポリオレフィンとが定常的に抜き取られる体積あたりの速度は157L/hであった。従って、一段目の平均滞留時間は0.90時間であった。重合器2から、低分子量成分および高分子量成分からなるポリオレフィン組成物は20kg/hの速度で抜き取られた。
重合器2では、温度70℃、圧力0.2MPaの条件下で、有機アルミニウム化合物[B−1]をAl原子換算で47.5ミリモル/hrの速度で導入した。これに、エチレン、水素、1−ブテンを、全圧0.2MPa、水素の気相濃度が1.3モル%、1−ブテンの気相濃度が4.3モル%、エチレンの供給量と1−ブテンの供給量との和が10kg/hになるように重合器に導入して、重合器1で生成した低分子量部分と、重合器2で生成した高分子量部分の重量比(高分子量部分)/(低分子量部分)が45/55となるように高分子量部分を重合した。なお、1−ブテンの気相濃度は、ガスクロマトグラフィーを用いた気相の分析により得られた値を用いて、下記の式により算出された値である。
1−ブテンの気相濃度(モル%)=
1−ブテンの気相濃度(モル/L)×100/{1−ブテンの気相濃度(モル/L)+エチレンの気相濃度(モル/L)} ・・・・(式18)
重合器2における重合活性は9500g/g/hであった。
MFR5が0.88g/10分、密度が950kg/m3であるパウダー状のポリエチレンを製造した。
(2)物性測定
上記重合により得られたパウダーを乾燥し、パウダー100重量部に対して、二次抗酸化剤としてトリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを1000ppm、耐熱安定剤としてテトラキス(3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート)メタンを1500ppm、耐候剤として2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを400ppm、ステアリン酸カルシウムを300ppm、日本製鋼製TEX−44型押出機(スクリュー径44mm、L/D=42)設定温度200℃、樹脂押出量40kg/hrにて押出し造粒することによりペレットを得た。ペレットのMFR5は0.40g/10分、密度が950kg/m3であった。このペレットを用いて試験片を作成し、物性測定を行った。
また該ペレットを用いて50φのパイプを成形しパイプの物性測定を行った。
その結果を表1に示す。
【0100】
[実施例2]
1段目の水素の気相モル濃度が60モル%でメルトフローレート(MFR2.16)120g/10分、密度973kg/m3の低分子量成分を得、2段目の水素の気相濃度が1.7モル%であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.39g/10分、密度950kg/m3のペレットを得た。
【0101】
試験片の物性測定およびパイプ物性測定の結果を表1に示す。
【0102】
[実施例3]
2段目の水素の気相濃度が1.5モル%であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.44g/10分、密度950kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表1に示す。
【0103】
[実施例4]
2段目の1−ブテンの気相濃度が1.8モル%であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.27g/10分、密度955kg/m3のペレットを得た。
物性測定および、パイプ物性の結果を表1に示す。
【0104】
[実施例5]
2段目の水素の気相濃度が1.8モル%であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.48g/10分、密度949kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表1に示す。
【0105】
[実施例6]
2段目の水素の気相濃度が1.0モル%、1−ブテンの気相濃度が2.9モル%であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.26g/10分、密度952kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表1に示す。
【0106】
[比較例1]
一段目の1−ブテンの気相濃度が0.4モル%、2段目の水素の気相濃度が1.1モル%、1−ブテンの気相濃度が2.0モル%、重合器1で生成した低分子量部分と重合器2で生成した高分子量部分との重量比が49/51であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.32g/10分、密度954kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表2に示す。
高分子側のコモノマー量が少なく混合比も大きいため長期物性に劣る。
【0107】
[比較例2]
1段目の水素の気相濃度が62モル%、1−ブテンの気相濃度が0.2モル%、重合圧力が1.2MPaでメルトフローレート(MFR2.16)50g/10分、密度971kg/m3の低分子量成分を得、2段目の重合温度が65℃、重合圧力が0.35MPa、2段目の水素の気相濃度が0.2モル%、1−ブテンの気相濃度が18.0モル%、重合器1で生成した低分子量部分と重合器2で生成した高分子量部分との重量比が40/60であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.35g/10分、密度947kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表2に示す。
押出し性が悪く、肌荒れが生じた。
【0108】
[比較例3]
1段目の重合圧力が1MPa、水素の気相濃度が80モル%でメルトフローレート(MFR2.16)600g/10分、密度977kg/m3の低分子量成分を得、2段目の重合温度が50℃、重合圧力が0.3MPa、水素の気相濃度が1.0モル%、1−ブテンの気相濃度が18.0モル%であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.18g/10分、密度951kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表2に示す。
成形性や肌荒れ性は良いが、高速引張性が著しく悪い。
【0109】
[比較例4]
1段目の重合圧力が1MPa、水素の気相濃度が80モル%でメルトフローレート(MFR2.16)600g/10分、密度977kg/m3の低分子量成分を得、2段目の水素の気相濃度が0.7モル%、1−ブテンの気相濃度が8.0モル%、重合器1で生成した低分子量部分と重合器2で生成した高分子量部分との重量比が50/50であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.18g/10分、密度951kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表2に示す。
成形性や肌荒れ性は良いが、高速引張性が著しく悪い。
【0110】
[比較例5]
1段目の重合圧力が12MPa、水素の気相濃度が67モル%でメルトフローレート(MFR2.16)100g/10分、密度972kg/m3の低分子量成分を得、2段目の重合温度が50℃、重合圧力が0.3MPa、水素の気相濃度が1.2モル%、1−ブテンの気相濃度が20.0モル%、重合器1で生成した低分子量部分と重合器2で生成した高分子量部分との重量比を50/50であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.40g/10分、密度948kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表3に示す。
長期特性が低く、PE100を達成しない。
【0111】
[比較例6]
2段目の水素の気相濃度が1.8モル%、重合器1で生成した低分子量部分と重合器2で生成した高分子量部分との重量比が50/50であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.51g/10分、密度950kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表3に示す。
長期特性が低く、PE100を達成しない。また目やにの発生が非常に多い。
【0112】
[比較例7]
2段目の水素の気相濃度が1.0モル%、1−ブテンの気相濃度が1.8モル%であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.23g/10分、密度955kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表4に示す。
押出し時に肌荒れのため外観が悪く、高速引張性が悪い。
【0113】
[比較例8]
1段目の重合圧力が0.6MPa、水素の気相濃度が79モル%でメルトフローレート(MFR2.16)800g/10分、密度977kg/m3の低分子量成分を得、2段目の重合温度が50℃、重合圧力が0.3MPa、水素の気相濃度が7.0モル%、1−ブテンの気相濃度が13モル%であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.52g/10分、密度950kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表4に示す。
押出性は良いが、長期特性や高速引張性が著しく悪い。
【0114】
[比較例9]
2段目の水素の気相濃度が0.9モル%、1−ブテンの気相濃度が3.2モル%、重合器1で生成した低分子量部分と重合器2で生成した高分子量部分との重量比が50/50であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.18g/10分、密度951kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表4に示す。
長期特性は良くPE100を満足するが、押出し時に肌荒れが発生し外観が悪い。
【0115】
[比較例10]
2段目の水素の気相濃度が0.8モル%、1−ブテンの気相濃度が2.8モル%であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.16g/10分、密度951kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表4に示す。
長期特性は良くPE100を満足するが、高速引張性が低くまた押出し時に肌荒れが発生し外観が悪い。
【0116】
[比較例11]
1段目の重合圧力が12MPa、水素の気相濃度が67モル%でメルトフローレート(MFR2.16)100g/10分、密度972kg/m3の低分子量成分を得たこと以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.35g/10分、密度949kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表5に示す。
長期特性が悪く、また押出し時に肌荒れが発生し外観が悪い。
【0117】
[比較例12]
2段目の水素の気相濃度が0.2モル%、1−ブテンの気相濃度が17.5モル%であること以外は実施例1と同様にして、メルトフローレート(MFR5)0.28g/10分、密度948kg/m3のペレットを得た。
物性測定およびパイプ物性測定の結果を表5に示す。
高フープ領域で短時間での脆性割れが発生した。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
【表4】

【0122】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の樹脂組成物は水道管用ポリエチレン製パイプに好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の実施態様の二段重合プロセスのフローシートである。
【符号の説明】
【0125】
1.重合器1
2.ライン
3.フラッシュドラム
4.コンプレッサー
5.ポンプ
6.重合器2
7.ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン単独重合体またはエチレンと炭素数3以上20以下のα−オレフィンとの共重合体であり、密度が967〜977kg/m3、メルトフローレート(コードD)が100〜300g/10分である低分子量成分(A)57〜52重量部と、
エチレンと炭素数3以上20以下のα−オレフィンとの共重合体であり、密度が895〜949kg/m3、重量平均分子量が50万〜100万である高分子量成分(B)43〜48重量部と、を含み、
密度が943〜957kg/m3
α−オレフィン含量(Y)が0.30〜1.50mol%、
メルトフローレート(コードT)が0.25〜0.50g/10分、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が25〜40、である、ポリエチレン配管材料用樹脂組成物。
【請求項2】
高速引張り試験において厚みに対するノッチ深さの割合が11%のときの引張り伸びが7%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリエチレン配管材料用樹脂組成物。
【請求項3】
パイプに成形されたとき、該パイプについてISO9080記載の方法で行う熱間内圧クリープ試験で、20℃における50年後の最小保証応力が10MPa以上となることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリエチレン配管材料用樹脂組成物。
【請求項4】
パイプに成形されたとき、該パイプについてISO9080記載の方法で行う熱間内圧クリープ試験で、80℃での応力−破壊時間クリープ線図において、脆性破壊によるKneePointが1万時間以内で見られないことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエチレン配管材料用樹脂組成物。
【請求項5】
スクリュー径50mmφフルフライトにて200℃にて設定した押出し条件下に於いてスクリュー回転数45rpm時の押出量(Q)をその回転数(Ns)で除した値(Q/Ns)が0.25(kg/hr/rpm)以上であり、かつ射出成形による、キャビティー幅10mm厚み2mm、230℃でのスパイラルフロー(SFD)値が35cm以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエチレン配管材料用樹脂組成物。
【請求項6】
灰分が0.07重量%以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレン配管材料用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエチレン配管材料用樹脂組成物から成形されるパイプ及び継ぎ手。
【請求項8】
水道用に使用されることを特徴とする、請求項7に記載のパイプ及び継ぎ手。

【図1】
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【公開番号】特開2008−101074(P2008−101074A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283636(P2006−283636)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】