説明

ポリエーテルの製造方法及びポリエーテル製造用触媒

【課題】環状エーテルを触媒の存在下に開環重合してポリエーテルを製造する方法において、触媒性能の経時悪化を抑制した触媒を用いることにより、必要な触媒量を削減し、かつ、粘度の低い即ち分子量分布の小さいポリエーテルを高い収率で長期に亘り安定に製造する。
【解決手段】環状エーテルの開環重合によるポリエーテル製造用触媒として、それ自身で環状エーテルを開環重合することが可能な固体酸触媒に、ポーリングの電気陰性度が0.9以上1.3以下の、アルカリ金属以外の金属元素の1種又は2種以上を含有させたポリエーテル製造用触媒を用いるポリエーテルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルの製造方法及びポリエーテル製造用触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルは、弾性繊維や可塑性エラストマーなどのソフトセグメントの原料をはじめ、ポリウレタン、ウレタンウレア、ポリエステル等の原料や、その他の広範囲な用途を有するポリマーである。
【0003】
ポリエーテルの代表的なものとしては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−プロパンジオール)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが知られている。中でもテトラヒドロフラン(THF)の開環重合により合成されるポリテトラメチレンエーテルグリコールは、伸縮性、弾性等の面で優れており、注目されている。
【0004】
ポリエーテルの粘度は比較的高く、これを原料として、更にポリウレタン等を製造する場合には、その反応工程において、希釈又は加熱の必要があるため、低粘度(低分子量分布(分子量分布=重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)))のポリエーテルが望まれている。ポリエーテルを工業的に製造する場合、得られるポリエーテルの分子量分布は、用いる重合用触媒に大きく影響を受けると考えられている。勿論、重合用触媒の性能は、ポリエーテルを製造する際の転化率にも影響する。
【0005】
特許文献1及び2には、ポリエーテルを製造する際に用いられる触媒として、ゼオライトやシリカ等の酸化物担体上に金属酸化物を担持した固体酸触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−241374号公報
【特許文献2】特開2000−327770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者の検討によれば、特許文献1及び2に開示されているような従来より用いられているポリエーテル製造用触媒では、工業的にポリエーテルを製造する場合、十分に満足し得る品質のポリエーテルは得られなかった。即ち、従来の触媒は、反応を継続するにつれて触媒の性能劣化が大きく、活性の劣化及び生成ポリエーテルの分子量分布(Mw/Mn)の経時悪化が著しく、そのため、安定したポリエーテルの製造には多量の触媒が必要で、かつ、得られるポリエーテルの粘度(分子量分布)も大きいものしか製造できなかった。
【0008】
従って、本発明は、ポリエーテルの製造において、触媒性能の経時悪化を抑制した触媒を用いることにより、必要な触媒量を削減し、かつ、粘度の低い即ち分子量分布の小さいポリエーテルを高い転化率で長期に亘り安定に製造できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、それ自身で環状エーテルを開環重合することが可能な固体酸触媒に、ポーリングの電気陰性度が0.9以上1.3以下の、アルカリ金属以外の金属元素を含有させた触媒を用いることにより、触媒性能の経時悪化が抑制可能であり、この触媒を用いることでポリエーテルを製造するための触媒の使用量が削減され、かつ、ポリエーテルの粘度(分子量分布)を低下させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の第1の要旨は、環状エーテルを触媒の存在下に開環重合してポリエーテルを製造する方法において、該触媒として、それ自身で環状エーテルを開環重合することが可能な固体酸触媒に、ポーリングの電気陰性度が0.9以上1.3以下の、アルカリ金属以外の金属元素(以下「特定金属元素」と称す。)の1種又は2種以上を含有させた触媒を用いることを特徴とするポリエーテルの製造方法、に存する。
【0011】
本発明の第2の要旨は、前記特定金属元素がMg、Ca、Y、及びYbよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリエーテルの製造方法、に存する。
【0012】
本発明の第3の要旨は、前記固体酸触媒が、複合金属酸化物触媒、金属酸化物担持触媒、及び粘土触媒からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエーテルの製造方法、に存する。
【0013】
本発明の第4の要旨は、前記固体酸触媒が、担体細孔内で均一沈殿法を行うことにより製造されたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリエーテルの製造方法、に存する。
【0014】
本発明の第5の要旨は、前記固体酸触媒が、Zr、Al、Ti、及びSiよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む複合金属酸化物触媒又は金属酸化物担持触媒である請求項3又は4に記載のポリエーテルの製造方法、に存する。
【0015】
本発明の第6の要旨は、それ自身で環状エーテルを開環重合することが可能な固体酸触媒に、ポーリングの電気陰性度が0.9以上1.3以下の、アルカリ金属以外の金属元素の1種又は2種以上を含有させたポリエーテル製造用触媒、に存する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、環状エーテルの開環重合によるポリエーテル製造用触媒として、それ自身で環状エーテルを開環重合することが可能な固体酸触媒に、ポーリングの電気陰性度が0.9以上1.3以下の、アルカリ金属以外の金属元素の1種又は2種以上を含有させたポリエーテル製造用触媒を用いることにより、低粘度のポリエーテルを安定的に製造することができ、かつ使用する触媒量も削減することができる。即ち、ポリエーテルを製造するに際し、触媒の性能(触媒活性)の経時劣化が抑制されることより、同量のポリエーテルを製造するための触媒使用量が削減できる。また、分子量分布の経時的悪化も抑制されるため、製造されるポリエーテルの粘度が低下し、低粘度で、耐熱性等の特性に優れた高品質のポリエーテルの製造が可能になる。
【0017】
本発明で製造された低粘度のポリエーテルを原料としてさらにポリウレタンなどを製造する際には、反応を可能にするための粘度調整に必要な希釈剤の量を少なくすることができ、コスト的にもまた生産性の面でも有利な効果が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
【0019】
[ポリエーテル製造用触媒]
本発明で用いる触媒は、それ自身で環状エーテルを開環重合することが可能な固体酸触媒に、ポーリングの電気陰性度が0.9以上1.3以下の、アルカリ金属以外の群から選ばれる1種又は2種以上の特定金属元素を含有させた触媒である。
【0020】
ポーリングの電気陰性度が0.9以上1.3以下、かつ、アルカリ金属以外の群から選ばれる1種又は2種以上の特定金属元素とは、通常、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Y、ランタノイド元素であり、好ましくはMg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Sm、Ybであり、さらに好ましくはMg、Ca、Y、Ybが、安全性や取り扱いが容易などの点で有利である。これらの特定金属元素は、1種のみが固体酸触媒に含有されていても良く、任意の組み合わせの2種以上が任意の比率で含有されていても良い。
【0021】
それ自身で環状エーテルを開環重合することが可能な固体酸触媒とは、例えば、MFI、X、Y等の結晶構造を持つゼオライト類、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどの金属酸化物類、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア、アルミナ−チタニアなどの金属酸化物を複数組み合わせた複合金属酸化物類、金属酸化物や活性炭を担体として、硫酸、ヘテロポリ酸、ナフィオンなどの酸性質を有する化合物もしくは担体とは異なる金属酸化物を担持した担持型酸触媒類、活性白土などの粘土類、酸性質を有する化合物又は、金属、又は金属酸化物を担持した粘土類などが挙げられる。
【0022】
なかでも複合金属酸化物類、担持型酸触媒類、粘土類が好ましく、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ、ジルコニア担持シリカ、アルミナ担持シリカが特に好ましい。
【0023】
これらの固体酸触媒は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0024】
それ自身で環状エーテルを開環重合することが可能な固体酸触媒の製造方法としては、公知の技術を用いることができ特に制限されないが、具体的には前述の特開平9−241374号公報や特開2000−327770号公報等に記載の製造方法によって製造可能である。
【0025】
特に、本発明で使用する固体酸触媒は、担体の細孔内で均一沈殿法を行い、担体の細孔内に金属水酸化物及び/又は金属酸化物を均質かつ微細な分散状態で担持したものが好ましい。
【0026】
固体酸触媒にポーリングの電気陰性度が0.9以上1.3以下の、アルカリ金属以外の特定金属元素を含有させる方法としては、特に制限はなく、例えば以下の[1]〜[3]の方法などを採用することができるが、[2]の固体酸触媒を調製する際に同時に特定金属元素を含有させる方法が、添加された特定金属元素が触媒中に均一に分散しやすい点、工程が少なくてたりる点などから好ましい。
【0027】
[1]固体酸触媒を調製する際に、使用する担体に予め特定金属元素を含有させておく方法
[2]固体酸触媒を調製する際に同時に特定金属元素を含有させる方法
[3]固体酸触媒を調製した後に特定金属元素を添加する方法
【0028】
以下に均一沈殿法による固体酸触媒の製造に当たり、同時に特定金属元素を含有させて、本発明のポリエーテル製造用触媒を製造する方法の一例を記載する。
【0029】
本発明に係る均一沈殿法は、例えば、金属塩と、溶液中で加水分解などの化学反応によって沈殿剤を発生させる沈殿剤前駆体とを同時に担体に含浸させた後、この含浸担体を加熱処理などの、沈殿剤前駆体から沈殿剤を生成させる処理を行うことで、実施される。均一沈殿法であるので、金属塩と沈殿剤前駆体とは液相、即ち溶液となっていることが重要である。即ち、金属塩と沈殿剤前駆体とを含む含浸溶液を担体に含浸させ、その後、沈殿剤前駆体から沈殿剤を生成させる処理を行う。
【0030】
なお、ここで、固体酸触媒の製造時に同時に特定金属元素を含有させるために、金属塩としては、固体酸触媒に必須な金属塩と特定金属元素の金属塩とを用いる。
【0031】
(1)担体
本発明に用いられる担体としては、特に制限はないが、金属酸化物類、複合金属酸化物類、ゼオライト類、粘土類が好ましく、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニアがより好ましく、シリカ、アルミナ、ジルコニアが特に好ましい。
【0032】
担体の粒径、細孔径、細孔容積については、固体酸触媒としての用途、使用形態に応じて異なり、一概には言えない。
【0033】
これらの担体は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0034】
(2)含浸溶液に溶解させる金属塩
含浸溶液に溶解させて、担体に担持させ、固体酸触媒を構成するための金属塩の金属元素(以下、「固体酸触媒用金属元素」と称す場合がある。)は、通常、周期表第3族、第4族、第5族、第13族及び第14族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素、好ましくは、Ti、Zr、Hf、Nb、Al、及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素、特に好ましくはTi、Zr、Al、及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素である。従って、含浸溶液には、上記固体酸触媒用金属元素の酸化物及び/又は水酸化物を生成して、得られる固体酸触媒に担持させることができる金属塩(以下、「固体酸触媒用金属塩」と称す場合がある。)として、上述の周期表第3、4、5、13、14族の金属元素、好ましくはTi、Zr、Hf、Nb、Al、Si、特に好ましくはTi、Zr、Al、Nbの塩が用いられる。
【0035】
塩の種類としては特に制限はないが、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、オキシ硝酸塩、塩化物、オキシ塩化物が好ましく、オキシ硝酸塩、オキシ塩化物、硫酸塩がより好ましい。
【0036】
即ち、固体酸触媒用金属塩としては周期表第3,4,5,13,14族金属の硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、オキシ硝酸塩、塩化物、オキシ塩化物が好ましく、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩化チタン、硫酸アルミニウム、オキシ塩化ニオブがさらに好ましい。
【0037】
これらの固体酸触媒用金属塩は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0038】
(3)特定金属元素用金属塩
また、本発明においては、同時に特定金属元素を固体酸触媒に含有させるために、含浸溶液中に、特定金属元素を生成させることができる金属塩(以下「特定金属元素用金属塩」と称す場合がある。)を溶解させる。
【0039】
特定金属元素用金属塩としては、前述の特定金属元素、即ち、通常、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Y、ランタノイド元素、好ましくはMg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Sm、Yb、さらに好ましくはMg、Ca、Y、Ybの金属塩が用いられる。
【0040】
塩の種類としては特に制限はないが、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、オキシ硝酸塩、塩化物、オキシ塩化物が好ましく、硝酸塩がより好ましい。
【0041】
即ち、特定金属元素用金属塩としては、通常、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Y、ランタノイド元素、好ましくはMg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Sm、Yb、さらに好ましくはMg、Ca、Y、Ybの、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、オキシ硝酸塩、塩化物、オキシ塩化物が好ましく、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸イットリウム、硝酸イッテリビウムがさらに好ましい。
【0042】
これらの特定金属元素用金属塩は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0043】
(4)沈殿剤前駆体
本発明に係る沈殿剤前駆体とは、含浸溶液中で加熱などの処理によって、加水分解その他の化学反応を起こし、沈殿剤を生じるものである。沈殿剤とは含浸溶液中の金属塩と反応して金属水酸化物の沈殿を生じさせるものである。沈殿剤前駆体の中で、沈殿剤として塩基を生じるもの、即ち、含浸溶液中で加水分解その他の化学反応により塩基を発生させ、溶液のpHを上昇させて金属塩を水酸化物又は酸化物として沈殿させるものを「塩基前駆体」と称す。
【0044】
均一沈殿法を行うための沈殿剤前駆体についても特に制限はないが、塩基前駆体を使用するのが一般的である。
【0045】
塩基前駆体としては、尿素、シアヌル酸、アルキル置換尿素、チオ尿素、アルキル置換チオ尿素や、アミンとカルボン酸よりなるアミド化合物などが使用される。好ましくは尿素、シアヌル酸、アルキル置換尿素が使用され、尿素、シアヌル酸を使用することは容易に入手できること及びコスト面で特に好ましい。これらの塩基前駆体は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0046】
(5)塩基性物質
含浸溶液中には、上述の塩基前駆体だけではなく、予め沈殿を生じさせない範囲でpHを上昇させるために、所定量の塩基性物質を加えておいてもよい。塩基性物質を用いることによって、塩基前駆体の使用量削減や、沈殿生成に必要な時間を削減することも可能である。
【0047】
塩基性物質としては、特に制限はないが、アルカリ金属、及びアンモニウムの、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、燐酸塩、酢酸塩や、アンモニア、有機アミン類などが挙げられ、アンモニア、有機アミン類、アンモニウムの炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩が好ましく、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムがより好ましい。
【0048】
これらの塩基性物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0049】
(6)含浸溶液
含浸溶液は、通常、上述の金属塩、即ち、固体酸触媒用金属塩及び特定金属元素用金属塩と沈殿剤前駆体と、必要に応じて用いられる塩基性物質を水に溶解させて調製される。
【0050】
含浸溶液中の金属塩(固体酸触媒用金属塩と特定金属元素用金属塩との合計)及び沈殿剤前駆体の濃度には特に制限はなく、溶解状態を維持し、かつ、後述の担体への好適な担持量を実現し得る濃度であれば良いが、通常金属塩(固体酸触媒用金属塩と特定金属元素用金属塩との合計)濃度は0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは0.5〜30重量%であり、沈殿剤前駆体は後述の如く、この金属塩を全て沈殿させるに足る理論量に対して0.1〜10倍、好ましくは0.2〜8倍、特に好ましくは0.3〜5倍である。
【0051】
なお、固体酸触媒用金属塩と特定金属元素用金属塩との使用割合は、後述の、本発明のポリエーテル製造用触媒の固体酸触媒用金属元素含有量と特定金属元素含有量の好適範囲を満たすように適宜調製される。
【0052】
塩基性物質は、必要なpH条件が得られるように適宜用いられる。即ち、沈殿の生成に必要なpH条件は、用いた金属塩及び沈殿剤前駆体の種類や濃度によって異なるため、塩基性物質は、これらの条件に応じて、その必要量が用いられる。
【0053】
なお、本発明では、担体内で均一沈殿法を実施するために、沈殿剤前駆体を沈殿剤へ変換させる処理を行う前には、含浸溶液中で少なくとも1種の固体酸触媒用金属塩と特定金属元素用金属塩と沈殿剤前駆体が液相即ち溶解状態であることが必要であるが、この少なくとも1種の固体酸触媒用金属塩と特定金属元素用金属塩と沈殿剤前駆体以外の物質については、含浸溶液中でいかなる状態で存在していても構わない。
【0054】
(7)均一沈殿法
<含浸溶液の担体への含浸方法>
上記含浸溶液を担体に含浸させる方法としては特に制限はないが、金属塩(固体酸触媒用金属塩と特定金属元素用金属塩)を担体上に均一に担持させるために、ポアフィリング法で実施することが好ましい。この場合において、担体に含浸された含浸溶液の体積が、担体細孔容積の60%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましい。また、120%以下であることが好ましく、110%以下であることがさらに好ましく、105%以下であることが特に好ましい。この液量が少なすぎると含浸溶液が均一に担体細孔内に入らず、不均一化する。逆に、多すぎると担体外表面に含浸液が付着し、やはり不均一化する。
【0055】
また、含浸による担体への金属塩(固体酸触媒用金属塩と特定金属元素用金属塩との合計)の担持量は任意の量が選択できるが、担体重量に対して通常0.01重量%以上であり、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上で、通常50重量%以下であり、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。沈殿剤前駆体の担持量については、担体に担持された金属塩を全て沈殿させるに足る理論量を1とするとモル比で通常0.1以上、好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上で、通常10以下、好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。
【0056】
<沈殿の生成及び後処理方法>
本発明では、含浸溶液を担体に含浸させることにより、担体に担持させた金属塩(固体酸触媒用金属塩と特定金属元素用金属塩)と沈殿剤前駆体は、担体細孔内で溶液の状態を保ったまま、加熱など沈殿剤前駆体を沈殿剤へ変換する処理を実施し、担体内部で均一に発生する沈殿剤により、金属塩を対応する金属水酸化物とする。
【0057】
一般的には沈殿剤前駆体としては塩基前駆体が用いられ、塩基前駆体を塩基へと変換する処理には加熱による塩基前駆体の加水分解が用いられる。
【0058】
前述の如く、本発明では担体細孔内での均一沈殿法を実施するため、沈殿剤前駆体を沈殿剤へと変換する処理を行う前は、少なくとも1種の金属塩(固体酸触媒用金属塩と特定金属元素用金属塩)と沈殿剤前駆体については溶液の状態、即ち液相であることが求められるが、少なくとも1種の金属塩(固体酸触媒用金属塩と特定金属元素用金属塩)、沈殿剤前駆体以外の物質についてはいかなる状態であっても構わない。
【0059】
加熱により起こる加水分解反応で塩基前駆体を塩基へと変換する場合、加熱温度としては通常50〜300℃の範囲が採用され、好ましくは60〜200℃の範囲が採用される。加熱温度は時間と共に変化させることも可能である。加熱温度が低すぎると沈殿剤前駆体から沈殿剤の生成反応が起きないか、非常に長時間がかかってしまう可能性があり、加熱温度が高すぎると、場合によっては沈殿剤前駆体から沈殿剤の生成反応が終了する前に加水分解に必要な水分が全て除去されてしまう可能性がある。良好かつ安定な均一沈殿法を実施するためには、沈殿生成反応が終了する時点において、担体に含浸された含浸溶液中の水分の5%以上が残存していることが好ましく、10%以上が残存していることがさらに好ましい。
【0060】
含浸溶液を含浸させた担体の加熱は、固定床加熱装置のように、担持担体が動かない状態で行ってもよいが、特に大量の触媒を調製する場合には、担持担体が流動する、流動床装置、回転式の加熱装置などを使用するほうがより好ましい。加熱時に水分の蒸発が生じる場合、担持担体を流動させた方が担持担体の粒毎の水分蒸発量に変化がなく、より均質性が増すものと考えられる。
【0061】
また、加熱時の水分の蒸発が、あまりに速すぎると、塩基前駆体の加水分解が全て終了する前に水分が全て除去されてしまい、沈殿剤の供給が十分に行われない場合があるため、通常は加熱開始から沈殿生成反応終了を経た後、水分の完全除去まで1時間以上、好ましくは3時間以上、さらに好ましくは6時間以上をかけて水分の完全除去を行うことが望ましい。
【0062】
その後、得られた触媒を必要に応じて水、アルカリ水溶液、酸水溶液、有機溶媒などで洗浄、乾燥を行った後、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、又は空気あるいは希釈酸素ガス等の酸化性ガス雰囲気下で焼成して、所望の性能の特定金属元素を含有する固体酸触媒を得ることができる。この場合の加熱焼成温度としては通常100〜1200℃、好ましくは300〜1100℃、さらに好ましくは500〜1000℃である。このような加熱焼成を行うことにより、得られる固体酸触媒の触媒活性や安定性を向上させることができる。
【0063】
ただし、上述の工程は、全て必須な工程ではなく、最終的に特定金属元素を含有する固体酸触媒が得られるものであれば良く、その製造工程は特に制限されない。
【0064】
なお、上記方法で得られる固体酸触媒の固体酸触媒用金属元素の水酸化物及び/又は酸化物の担持量(全固体酸触媒中の含有量)は0.05〜40重量%、特に0.1〜30重量%であることが好ましい。
また、固体酸触媒中の特定金属元素の含有量は、特定金属元素の重量として0.01〜40重量%、特に0.05〜20重量%であることが好ましい。
また、固体酸触媒中の特定金属元素と固体酸触媒用金属元素との割合はモル比で固体酸触媒用金属元素:特定金属元素=1:0.01〜0.8、特に1:0.05〜0.5であることが好ましい。
固体酸触媒中の固体酸触媒用金属元素の含有量が少ないと十分な触媒活性が得られず、多いと担体への均一分散性が低下して触媒性能が悪化するため不利である、また、特定金属元素が少ないと、特定金属元素を含有させたことによる本発明の効果を十分に得ることができず、多いと触媒重量あたりの酸量が少なくなり不利である。
【0065】
[ポリエーテルの製造方法]
本発明のポリエーテルの製造方法は、環状エーテル類を上述の本発明のポリエーテル製造用触媒の存在下に開環重合反応させることにより行うことができる。
【0066】
反応原料として用いられる環状エーテルとしては、通常環の構成炭素数が3〜10のものが挙げられ、また、アルキル基、ハロゲン基、アシル基などで置換された環状エーテルも使用できる。具体的にはテトラヒドロフラン、オキセタン、オキセパン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン等が用いられる。また、環状エーテル類の1種類のみを用いるホモ重合と環状エーテル類の2種類以上を用いる共重合のいずれも行うことができる。
【0067】
触媒としては、上述の本発明のポリエーテル製造用触媒の1種又は2種以上を用いる。
【0068】
環状エーテルの開環重合反応はカルボン酸無水物及び/又はカルボン酸の存在下に行うことが分子量制御の点で好ましい。カルボン酸無水物及び/又はカルボン酸としては脂肪族又は芳香族の2〜12個の炭素原子を有するものが一般的に使用され、好ましくは2〜8個の炭素原子を有するものが用いられる。これらのカルボン酸無水物及び/又はカルボン酸は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。カルボン酸無水物及び/又はカルボン酸は、環状エーテルに対して通常0.01〜1.0(モル比)の範囲で添加するのが良い。
【0069】
重合反応時には反応に不活性な溶媒を使用することもできる。該溶媒としては開環重合反応に不活性な脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などの1種又は2種以上が一般的に用いられる。
【0070】
反応形式は、槽型、塔型等一般に用いられるものが使用され、回分方式、連続方式のいずれであっても良い。例えば、環状エーテル、触媒、必要に応じて用いられるカルボン酸無水物及び/又はカルボン酸を攪拌下に仕込んで重合させる方法(回分方式)、触媒を含む反応器に環状エーテル、カルボン酸無水物及び/又はカルボン酸を連続的に供給し、連続的に反応液を抜き取っていく方法(連続方式)などがある。生産性の面からは連続方式が好ましい。
【0071】
固体酸触媒の使用量としては、その種類によって決定され、特に限定はないが、例えば回分型反応器においては、触媒量が少なすぎると重合速度が遅くなり、逆に多すぎると、重合熱の除去が困難となる。また、反応系のスラリー濃度が高くなるので、攪拌が困難となり、また重合反応終了後の触媒と反応液との分液にも問題を生じ易くなる。従って、触媒の使用量は、液相に対して通常0.001〜50重量倍、好ましくは0.01〜20重量倍の範囲から回分反応、流通反応の反応形態を勘案して選ばれる。但し、流通反応の場合は、触媒の使用量は、単位時間当たりの液相の供給量に対する触媒の量を表すものである。
【0072】
反応温度は、通常0〜200℃、好ましくは10〜80℃である。
反応圧力は、反応系が液相を保持できるような圧力であれば良く、通常、常圧から10MPa、好ましくは常圧から5MPaの圧力の範囲から選択される。
反応時間は特に限定はないが、触媒量との双方を考慮し、収率、経済性を考慮して0.1〜20時間の範囲、好ましくは0.5〜15時間の範囲が好ましい。ここで言う反応時間とは、回分方式においては、反応温度まで上昇した時点から反応が終了して冷却を開始するまでの時間を示し、連続方式においては、反応器中での反応組成液の滞留時間のことを指している。
【0073】
生成するポリエーテルの分子量分布については、原料化合物の種類にもよるが、本発明のポリエーテル製造用触媒を用いてテトラヒドロフラン(THF)の開環重合反応を行った場合、数平均分子量(Mn)200〜80,000、特に200〜40,000程度の低〜中分子量のポリエーテルを得ることができる。更に、分子量分布の狭いポリエーテルを容易に製造できることも特徴の一つである。即ち、工業的に需要が大きいポリエーテルはMw/Mnが1.3〜2.5のものであるが、本発明に係る固体酸触媒を用いることにより、Mw/Mnが3未満、例えば1.1〜3.0のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)を製造することができ、工業的に需要が大きいMw/Mnが1.1〜2.2、特に本発明の好ましい条件を選ぶことによって、Mw/Mnが1.1〜1.7程度の分子量分布の非常に狭いポリエーテルも得ることができる。また、本発明によれば生成物の収率を15%以上、好ましくは20%以上、更には25%以上とすることもできる。
【0074】
さらに触媒活性の経時劣化が少ないため、長時間の反応を行っても高収率の状態を維持することができる。
【0075】
本発明により製造されたポリエーテルは、弾性繊維や熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、コーティング材などの用途に使用できる。
【実施例】
【0076】
以下に合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0077】
なお、以下において、ポリテトラメチレンエーテルグリコール酢酸エステル(PTME)の収率、軟化率、分子量分布(Mw/Mn)は、以下のGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)によって求めた。
GPC装置:東ソー社製GPC 8020
カラム:TSK−GEL GMHHR−M(30cm)×4本
検出方法:RI
カラム温度:40℃
移動層:THF
流速:1ml/min
サンプル注入量:500μl
サンプル濃度:ポリエーテルの濃度が約0.5重量%となるように調整
【0078】
<ポリエーテル製造用触媒の調製>
合成例1:
オキシ硝酸ジルコニウム水溶液(太陽鉱工社製、ZrO換算濃度18.54重量%)77.42gに硝酸イットリウム6水和物3.35gと脱塩水20.74gを加え、均一に混合した。これに尿素11.68gを加えて均一に混合し含浸溶液を調製した。この溶液に80gのSiO(富士シリシア社製、キャリアクトQ15、粒径75〜500μm、平均粒径200μm、細孔容積1.18ml/g、平均細孔径15nm)を添加し、約1時間振り混ぜながら、ポアフィリングで含浸した(含浸溶液量が担体細孔容積の96%)。
【0079】
これを500ml梨型フラスコに入れ、フラスコ上部にジョイント及びグラスウールを詰めた曲管を接続し、測部には温度計を接続した。その後、フラスコを回転式乾燥機の回転軸にクランプで固定した。回転軸を10rpmの速度で回転させ、乾燥機温度を105℃に設定し、2時間の加熱を行った。このとき、含浸溶液中の水分は90%残存していることを重量変化により確認した。その後、上部のグラスウールを詰めた曲管を外した後、乾燥機温度を120℃に設定し、16時間の加熱を行った。
その後、上部のジョイントを外した後、乾燥機温度を140℃に設定し、4時間の加熱を行って水分をほぼ完全に除去した。4時間経過後、加熱、回転を停止し、触媒を取り出した。
【0080】
触媒を500mlビーカーに移し室温まで放冷後、約300mlの脱塩水を加え、約10分懸濁洗浄を実施した。次いで、触媒を濾過後、再び500mlビーカーに移し、300mlの脱塩水を加え、約10分懸濁洗浄を実施した。この脱塩水での洗浄を3回繰り返した後、触媒を風乾、120℃乾燥機で1晩乾燥し、次いで、空気流通下、900℃で2時間焼成を実施した。
得られたポリエーテル製造用触媒を「触媒1」とした。含浸液組成により計算から求めた触媒1の触媒全量に対する酸化ジルコニウムの担持量は14.9重量%で、酸化イットリウム含有量は1.00重量%、Y/Zr/Si=0.6/8/91.4(モル比)であった。
【0081】
合成例2
含浸溶液として、オキシ硝酸ジルコニウム水溶液(太陽鉱工社製、ZrO換算濃度18.54重量%)77.42gに硝酸イッテリビウム3水和物3.61gと脱塩水20.48gを加え均一に混合し、更に尿素11.68gを加えて均一に混合して調製した含浸溶液を用いたこと以外は、合成例1と同様に触媒の調製を行った。
得られたポリエーテル製造用触媒を「触媒2」とした。含浸液組成により計算から求めた触媒2の触媒全量に対する酸化ジルコニウムの担持量は14.7重量%で、酸化イッテリビウム含有量は1.73重量%、Yb/Zr/Si=0.6/8/91.4(モル比)であった。
【0082】
合成例3
含浸溶液として、オキシ硝酸ジルコニウム水溶液(太陽鉱工社製、ZrO換算濃度18.54重量%)77.42gに硝酸カルシウム4水和物2.06gと脱塩水21.9gを加え均一に混合し、更に尿素11.31gを加えて均一に混合して調製した含浸溶液を用いたこと以外は、合成例1と同様に触媒の調製を行った。
得られたポリエーテル製造用触媒を「触媒3」とした。含浸液組成により計算から求めた触媒3の触媒全量に対する酸化ジルコニウムの担持量は15.2重量%で、酸化カルシウム含有量は0.52重量%、Ca/Zr/Si=0.6/8/91.4(モル比)であった。
【0083】
合成例4
含浸溶液として、オキシ硝酸ジルコニウム水溶液(太陽鉱工社製、ZrO換算濃度18.54重量%)77.42gに硝酸マグネシウム6水和物2.24gと脱塩水21.72gを加え均一に混合し、更に尿素11.31gを加えて均一に混合して調製した含浸溶液を用いたこと以外は、合成例1と同様に触媒の調製を行った。
得られたポリエーテル製造用触媒を「触媒4」とした。含浸液組成により計算から求めた触媒3の触媒全量に対する酸化ジルコニウムの担持量は15.2重量%で、酸化マグネシウム含有量は0.37重量%、Mg/Zr/Si=0.6/8/91.4(モル比)であった。
【0084】
合成例5
含浸溶液として、オキシ硝酸ジルコニウム水溶液(太陽鉱工社製、ZrO換算濃度18.54重量%)87.77gに脱塩水13.14gを加え均一に混合し、更に尿素11.8gを加えて均一に混合して調製した含浸溶液を用いたこと以外は、合成例1と同様に触媒の調製を行った。
得られたポリエーテル製造用触媒を「触媒5」とした。含浸液組成により計算から求めた触媒5の触媒全量に対する酸化ジルコニウムの担持量は16.9重量%であった。
【0085】
合成例6
オキシ硝酸ジルコニウム水溶液(太陽鉱工社製、ZrO換算濃度19.8重量%)82.59gに脱塩水26.02gを加え均一な溶液とした。この溶液に80gのSiO(富士シリシア社製、キャリアクトQ15、粒径75〜500μm、平均粒径200μm、細孔容積1.18ml/g、平均細孔径15nm)を添加し、約1時間振り混ぜながら、ポアフィリングで含浸した。
【0086】
これを、500mlの三角フラスコに入れて、蓋をせずに乾燥器内に設置し、乾燥器を105℃まで1時間で昇温して、105℃で18時間乾燥した。
その後、触媒を500mlビーカーに移し室温まで放冷後、重炭酸アンモニウム30gを脱塩水300mlに溶解させた溶液を加え、1時間攪拌を実施した。次いで、触媒を濾過後、再び500mlビーカーに移し、300mlの脱塩水を加え、約10分懸濁洗浄を実施した。この脱塩水での洗浄を3回繰り返した後、触媒を風乾、120℃乾燥機で1晩乾燥した。
【0087】
これに硝酸イットリウム6水和物3.36gを脱塩水78.6gに加えて溶解させた均一な溶液を、約1時間振り混ぜながら、ポアフィリングで含浸した。これを、500mlの三角フラスコに入れて、蓋をせずに乾燥器内に設置し、乾燥器を105℃まで1時間で昇温して、105℃で18時間乾燥し、次いで、空気流通下、900℃で2時間焼成を実施した。
得られたポリエーテル製造用触媒を「触媒6」とした。含浸液組成により計算から求めた触媒6の触媒全量に対する酸化ジルコニウムの担持量は16.8重量%で酸化イットリウム含有量は1.03重量%、Y/Zr/Si=0.6/9/90.4(モル比)であった。
【0088】
合成例7
オキシ硝酸ジルコニウム水溶液(太陽鉱工社製、ZrO換算濃度19.8重量%)81.92gに脱塩水26.52gを加え、均一に混合した。この溶液に80gのSiO(富士シリシア社製、キャリアクトQ15、粒径75〜500μm、平均粒径200μm、細孔容積1.18ml/g、平均細孔径15nm)を添加し、約1時間振り混ぜながら、ポアフィリングで含浸した(含浸溶液量が担体細孔容積の96%)。
【0089】
これを、500mlの三角フラスコに入れて、蓋をせずに乾燥器内に設置し、乾燥器を105℃まで1時間で昇温して、105℃で18時間乾燥した。触媒を500mlビーカーに移し室温まで放冷後、重炭酸アンモニウム30gを脱塩水300mlに溶解させた溶液を加え、1時間攪拌を実施した。次いで、触媒を濾過後、再び500mlビーカーに移し、300mlの脱塩水を加え、約10分懸濁洗浄を実施した。この脱塩水での洗浄を3回繰り返した後、触媒を風乾、120℃乾燥機で1晩乾燥し、次いで、空気流通下、900℃で2時間焼成を実施した。
【0090】
得られたポリエーテル製造用触媒を「触媒7」とした。含浸液組成により計算から求めた触媒7の触媒全量に対する酸化ジルコニウムの担持量は16.9重量%であった。
【0091】
<ポリエーテル製造反応評価>
実施例1〜5、比較例1〜2
容積520mlの流通反応装置に、表1に示す評価用触媒22gを入れた。THF、無水酢酸、酢酸の混合溶液(重量比、THF258.6、無水酢酸29.3、酢酸1)を87.4ml/hの流量で流通させ、35℃に加熱した。一定時間毎に反応液を取得し、GPCにより、収率、及び分子量分布(Mw/Mn)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
表1に示す通り、Y含有固体酸触媒1を用いた実施例1では、初期の収率は33.3%、初期のMw/Mnは1.65であり、反応時間309時間後の収率は26.3%(初期との相対収率79%)、Mw/Mnは1.67(初期からの悪化0.02)であった。
【0094】
また、Yb含有固体酸触媒2を用いた実施例2では、初期の収率は34.5%、初期のMw/Mnは1.65であり、反応時間311時間後の収率は26.4%(初期との相対収率77%)、Mw/Mnは1.70(初期からの悪化0.05)であった。
【0095】
また、Ca含有固体酸触媒3を用いた実施例3では、初期の収率は33.0%、初期のMw/Mnは1.66であり、反応時間307時間後の収率は24.0%(初期との相対収率73%)、Mw/Mnは1.72(初期からの悪化0.06)であった。
【0096】
また、Mg含有固体酸触媒4を用いた実施例4では、初期の収率は33.6%、初期のMw/Mnは1.66であり、反応時間309時間後の収率は24.5%(初期との相対収率73%)、Mw/Mnは1.73(初期からの悪化0.07)であった。
【0097】
これに対して、特定金属元素を含有しない固体酸触媒5を用いた比較例1では、初期の収率は32.9%、初期のMw/Mnは1.67であり、反応時間307時間後の収率は21.9%(初期との相対収率67%)、Mw/Mnは1.80(初期からの悪化0.13)であった。
【0098】
また、Y含有固体酸触媒6を用いた実施例5では、初期の収率は31.7%、初期のMw/Mnは1.85であり、反応時間233時間後の収率は24.1%(初期との相対収率76%)、Mw/Mnは1.87(初期からの悪化0.02)であった。
【0099】
これに対して、特定金属元素を含有しない固体酸触媒7を用いた比較例2では、初期の収率は33.3%、初期のMw/Mnは1.87であり、反応時間233時間後の収率は20.2%(初期との相対収率61%)、Mw/Mnは2.04(初期からの悪化0.17)であった。
【0100】
以上の結果から、それ自身で環状エーテルを開環重合することが可能な固体酸触媒に、ポーリングの電気陰性度が0.9以上1.3以下、かつ、アルカリ金属以外の群から選ばれる1種又は2種以上の金属元素を含有させた本発明のポリエーテル製造用触媒を用いることにより、収率の経時低下を防止することができ、また、Mw/Mn比も低く維持することができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状エーテルを触媒の存在下に開環重合してポリエーテルを製造する方法において、該触媒として、それ自身で環状エーテルを開環重合することが可能な固体酸触媒に、ポーリングの電気陰性度が0.9以上1.3以下の、アルカリ金属以外の金属元素(以下「特定金属元素」と称す。)の1種又は2種以上を含有させた触媒を用いることを特徴とするポリエーテルの製造方法。
【請求項2】
前記特定金属元素がMg、Ca、Y、及びYbよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項3】
前記固体酸触媒が、複合金属酸化物触媒、金属酸化物担持触媒、及び粘土触媒からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項4】
前記固体酸触媒が、担体細孔内で均一沈殿法を行うことにより製造されたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項5】
前記固体酸触媒が、Zr、Al、Ti、及びSiよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む複合金属酸化物触媒又は金属酸化物担持触媒である請求項3又は4に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項6】
それ自身で環状エーテルを開環重合することが可能な固体酸触媒に、ポーリングの電気陰性度が0.9以上1.3以下の、アルカリ金属以外の金属元素の1種又は2種以上を含有させたポリエーテル製造用触媒。