説明

ポリオキシム化合物により官能化したポリマー及びその製造方法

モノマーを重合して反応性ポリマーを形成する工程と、前記反応性ポリマーを保護されたポリオキシム化合物と反応させる工程とを含む、官能化ポリマーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年12月21日出願の米国非仮特許出願第12/643,146号の優先権を主張し、引用によって米国非仮特許出願第12/643,146号を本明細書に組み込む。
【0002】
本発明の1以上の態様は、ポリオキシム化合物を使用して官能化したポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タイヤ製造の分野において、低減したヒステリシス、即ち、熱に対する力学的エネルギーのより少ない損失を示すゴム加硫物を使用することが望ましい。例えば、低減したヒステリシスロスを示すゴム加硫物は、サイドウォール及びトレッドなどのタイヤ構成部品において有利に使用され、望ましい低い転がり抵抗を有するタイヤを生産する。ゴム加硫物のヒステリシスは、架橋したゴム網目内の自由なポリマー鎖末端及び充填剤の塊の解離に起因することが多い。
【0004】
ゴム加硫物のヒステリシスを低減するために、官能化ポリマーが使用されてきた。官能化ポリマーの官能基は、充填剤粒子との相互作用によって自由なポリマー鎖末端の数を低減することができる。さらに、官能基は、充填剤の凝集を低減することができる。それにもかかわらず、ポリマーに付与された特定の官能基がヒステリシスを低減することができるか否かは、予測することができない。
【0005】
官能化ポリマーは、特定の官能化剤を使用した反応性ポリマーの重合後処理により調製してもよい。しかしながら、反応性ポリマーが、特定の官能化剤による処理によって官能化され得るかどうかは、予測できない可能性がある。例えば、1種類のポリマーに作用する官能化剤は、別の種類のポリマーに必ずしも作用するとは限らず、また逆も同様である。
【0006】
ランタニド系触媒系は、共役ジエンモノマーを重合し、シス−1,4結合を高含有量で有するポリジエンを形成するのに有用であることが知られている。得られたシス−1,4−ポリジエンは、重合完了時に、ポリマー鎖のうちのいくつかが、特定の官能化剤と反応して、官能化シス−1,4−ポリジエンを生じ得る反応性末端を有するという点で、擬リビング特性を示してもよい。
【0007】
ランタニド系触媒系を使用して製造されるシス−1,4−ポリジエンは、典型的には、直鎖状骨格を有し、チタン、コバルト及びニッケル系触媒系等の他の触媒系を使用して調製したシス−1,4−ポリジエンと比較してより良好な引張特性、より高い耐摩耗性、より低いヒステリシスロス及びより良好な耐疲労性を提供すると考えられている。従って、ランタニド系触媒を使用して作製したシス−1,4−ポリジエンは、サイドウォール及びトレッド等のタイヤ構成部品における使用にとりわけ適している。しかしながら、ランタニド系触媒を使用して調製したシス−1,4−ポリジエンの1つの不利益は、ポリマーが、その直鎖状骨格構造により、高いコールドフローを示すことである。高いコールドフローは、ポリマーの保管及び輸送の間に問題を生じ、ゴム化合物混合施設における自動供給装置の使用も妨げる。
【0008】
アニオン開始剤は、1,2−、シス−1,4−及びトランス−1,4−結合の組合せを有するポリジエンを形成するための、共役ジエンモノマーの重合に有用であることが知られている。アニオン開始剤は、ビニル置換された芳香族化合物を使用した共役ジエンモノマーの共重合にも有用である。アニオン開始剤を使用して調製したポリマーは、重合完了時、ポリマー鎖が、更なる鎖成長のために追加のモノマーと反応するか、又は特定の官能化剤と反応して官能化ポリマーを生ずることができる、リビング末端を有するという点でリビング特性を示してもよい。結合した又は分岐した構造を導入することなく、アニオン開始剤を使用して調製したポリマーは、高いコールドフローの問題を示す可能性もある。
【0009】
官能化ポリマーは、特にタイヤの製造において有用であるため、低減したヒステリシス及び低減したコールドフローを提供する新規な官能化ポリマーを開発する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1以上の態様は、官能化ポリマーを調製する方法を提供し、この方法は、モノマーを重合して反応性ポリマーを形成する工程と、当該反応性ポリマーを、保護されたポリオキシム化合物と反応させる工程とを含む。
【0011】
本発明の別の態様は、モノマーを重合して反応性ポリマーを形成する工程と、当該ポリマーを保護されたポリオキシム化合物と反応させる工程とによって調製された官能化ポリマーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、非官能化シス−1,4−ポリブタジエンと比較した、本発明の1以上の態様に従って調製した官能化シス−1,4−ポリブタジエンのムーニー粘度(100℃でのML1+4)に対するコールドフローゲージ(8分でのmm)のプロット図である。
【図2】図2は、非官能化シス−1,4−ポリブタジエンから調製された加硫物と比較した、本発明の1以上の態様に従って調製した官能化シス−1,4−ポリブタジエンから調製された加硫物のムーニー粘度(130℃でのML1+4)に対するヒステリシスロス(tanδ)のプロット図である。
【図3】図3は、非官能化ポリ(スチレン−co−ブタジエン)と比較した、本発明の1以上の態様に従って調製した官能化ポリ(スチレン−co−ブタジエン)のムーニー粘度(100℃でのML1+4)に対するコールドフローゲージ(30分でのmm)のプロット図である。
【図4】図4は、非官能化ポリ(スチレン−co−ブタジエン)から調製された加硫物と比較した、本発明の1以上の態様に従って調製した官能化ポリ(スチレン−co−ブタジエン)から調製された加硫物のムーニー粘度(130℃でのML1+4)に対するヒステリシスロス(tanδ)のプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の1以上の態様に従って、共役ジエンモノマーと、任意に、当該共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーとを重合させることによって反応性ポリマーを調製し、次いで、この反応性ポリマーを、保護されたポリオキシム化合物との反応によって官能化する。得られる官能化ポリマーは、タイヤ構成部品の製造において使用することができる。1以上の態様において、得られた官能化ポリマーは、有利なコールドフロー耐性を示し、有利に低いヒステリシスを示すタイヤ構成部品を提供する。
【0014】
共役ジエンモノマーの例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン及び2,4−ヘキサジエンが挙げられる。共重合には、2以上の共役ジエンの混合物が利用されてもよい。
【0015】
共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーの例としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン及びビニルナフタレン等のビニル置換された芳香族化合物が挙げられる。
【0016】
1以上の態様において、反応性ポリマーは、配位重合によって調製され、ここにおいて、モノマーは配位触媒系を使用して重合される。配位重合の主要な機構的特徴は、書籍(例えば、Kuran, W., 配位重合の原理; John Wiley & Sons: New York, 2001年)及び総説(例えば、Mulhaupt, R., 高分子の化学及び物理, 2003年, 第204巻, 第289−327頁)において議論されてきた。配位触媒は、成長性ポリマー鎖へのモノマーの挿入に先立ち、活性金属中心に対するモノマーの配位又は錯体形成に関与する機構によってモノマーの重合を開始すると考えられている。配位触媒の有利な特徴は、重合の立体化学的制御を提供し、それにより、立体規則性ポリマーを生成する能力である。当該分野で知られているように、配位触媒を生成する数多くの方法があるが、全ての方法が、モノマーに配位し、且つ、活性金属中心と成長性ポリマー鎖との間の共有結合にモノマーを挿入することのできる活性な中間体を最終的には生成する。共役ジエンの配位重合は、中間体としてのπ−アリル錯体を介して進行すると考えられている。配位触媒は、1成分、2成分、3成分又は多成分系であってよい。1以上の態様において、配位触媒は、重金属化合物(例えば、遷移金属化合物又はランタニド含有化合物)と、アルキル化剤(例えば、有機アルミニウム化合物)と、任意に他の共触媒成分(例えば、ルイス酸又はルイス塩基)とを組み合わせることにより形成されてもよい。1以上の態様において、重金属化合物は、配位金属化合物と称されてもよい。
【0017】
配位触媒を調製するためには、種々の手順が使用され得る。1以上の態様において、配位触媒は、段階的又は同時に、重合されるモノマーに対して触媒成分を別個に添加して、その場で(in situ)形成してもよい。別の態様では、配位触媒を予形成してもよい。即ち、触媒成分は、モノマーの非存在下又は少量のモノマーの存在下、重合系の外で予混合される。得られた予形成触媒組成物を、必要に応じて熟成し、次いで、重合するモノマーに添加してもよい。
【0018】
有用な配位触媒系には、ランタニド系触媒系が含まれる。これらの触媒系は、失活(quenching)の前に、反応性鎖末端を有し、且つ、擬リビングポリマーと呼ばれることもあるシス−1,4−ポリジエンを有利に生成してもよい。他の配位触媒系が使用されてもよいが、ランタニド系触媒は特に有利であることが見出されており、従って、本発明の範囲を限定することなく、以下でより詳細に説明される。
【0019】
本発明の実施は、いずれか特定のランタニド系触媒系の選択によっては必ずしも限定されない。1以上の態様において、使用される触媒系は、(a)ランタニド含有化合物、(b)アルキル化剤及び(c)ハロゲン供給源を含む。他の態様では、非配位アニオンを含んだ化合物又は非配位アニオン前駆体を、ハロゲン供給源の代わりに使用することができる。これら又は他の態様では、上記の含有物又は成分に加え、他の有機金属化合物、ルイス塩基及び/又は触媒修飾剤が使用されてもよい。例えば、ある態様では、引用により本明細書に組み込まれる米国特許第6,699,813号で開示されるように、ニッケル含有化合物が分子量調節剤として使用されてもよい。
【0020】
上述の通り、本発明で使用される触媒系は、ランタニド含有化合物を含み得る。本発明において有用なランタニド含有化合物は、ランタン、ネオジム、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム及びジジムのうちの少なくとも1つの原子を含んだ化合物である。ある態様では、これらの化合物は、ネオジウム、ランタン、サマリウム又はジジムを含んでいてもよい。本明細書で使用されるように、「ジジム」の語は、モナズ砂から得られる希土類元素の商業用混合物を示すものとする。さらに、本発明において有用なランタニド含有化合物は、元素ランタニドの形態であってもよい。
【0021】
ランタニド含有化合物におけるランタニド原子は、種々の酸化状態にあってよく、限定するものではないが、これには、0、+2、+3及び+4の酸化状態が含まれる。ある態様では、ランタニド原子が+3の酸化状態にある3価のランタニド含有化合物が使用されてもよい。適切なランタニド含有化合物には、ランタニドカルボキシレート、ランタニド有機ホスフェート、ランタニド有機ホスホネート、ランタニド有機ホスフィネート、ランタニドカルバメート、ランタニドジチオカルバメート、ランタニドキサンテート、ランタニドβ-ジケトナート、ランタニドアルコキシド又はアリールオキシド、ランタニドハライド、ランタニド擬ハライド、ランタニドオキシハライド及び有機ランタニド化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
1以上の態様において、ランタニド含有化合物は、炭化水素溶媒、例えば、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素又は脂環式炭化水素などに可溶であってよい。しかしながら、重合媒体に懸濁されて触媒活性種を形成することができるため、炭化水素に不溶なランタニド含有化合物が、本発明において有用なこともある。
【0023】
説明を容易にするため、有用なランタニド含有化合物についての更なる説明は、ネオジム化合物に焦点を絞るが、当業者は、他のランタニド金属に基づく同様の化合物を選択することができる。
【0024】
適当なネオジムカルボキシレートとしては、ネオジムホルメート、ネオジムアセテート、ネオジムアクリレート、ネオジムメタクリレート、ネオジムバレレート、ネオジムグルコナート、ネオジムシトレート、ネオジムフマレート、ネオジムラクテート、ネオジムマレエート、ネオジムオキサレート、ネオジム2−エチルヘキサノアート、ネオジムネオデカノアート(別名、ネオジムバーサテート(versatate))、ネオジムナフテネート、ネオジムステアレート、ネオジムオレアート、ネオジムベンゾエート及びネオジムピコリネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
適当なネオジム有機ホスフェートとしては、ネオジムジブチルホスフェート、ネオジムジペンチルホスフェート、ネオジムジヘキシルホスフェート、ネオジムジヘプチルホスフェート、ネオジムジオクチルホスフェート、ネオジムビス(1−メチルへプチル)ホスフェート、ネオジムビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジムジデシルホスフェート、ネオジムジドデシルホスフェート、ネオジムジオクタデシルホスフェート、ネオジムジオレイルホスフェート、ネオジムジフェニルホスフェート、ネオジムビス(p−ノニルフェニル)ホスフェート、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジム(1−メチルへプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフェート及びネオジム(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
適当なネオジム有機ホスホネートとしては、ネオジムブチルホスホネート、ネオジムペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルホスホネート、ネオジム(1−メチルへプチル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルホスホネート、ネオジムドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルホスホネート、ネオジムフェニルホスホネート、ネオジム(p−ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチルブチルホスホネート、ネオジムペンチルペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルオクチルホスホネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(1−メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルデシルホスホネート、ネオジムドデシルドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルオレイルホスホネート、ネオジムフェニルフェニルホスホネート、ネオジム(p−ノニルフェニル)(p−ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)ブチルホスホネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)(1−メチルへプチル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスホネート及びネオジム(p−ノニルフェニル)(2−エチルヘキシル)ホスホネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
適当なネオジム有機ホスフィネートとしては、ネオジムブチルホスフィネート、ネオジムペンチルホスフィネート、ネオジムヘキシルホスフィネート、ネオジムヘプチルホスフィネート、ネオジムオクチルホスフィネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)ホスフィネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジムデシルホスフィネート、ネオジムドデシルホスフィネート、ネオジムオクタデシルホスフィネート、ネオジムオレイルホスフィネート、ネオジムフェニルホスフィネート、ネオジム(p−ノニルフェニル)ホスフィネート、ネオジムジブチルホスフィネート、ネオジムジペンチルホスフィネート、ネオジムジヘキシルホスフィネート、ネオジムジヘプチルホスフィネート、ネオジムジオクチルホスフィネート、ネオジムビス(1−メチルヘプチル)ホスフィネート、ネオジムビス(2−エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジムジデシルホスフィネート、ネオジムジドデシルホスフィネート、ネオジムジオクタデシルホスフィネート、ネオジムジオレイルホスフィネート、ネオジムジフェニルホスフィネート、ネオジムビス(p−ノニルフェニル)ホスフィネート、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフィネート及びネオジム(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
適当なネオジムカルバメートとしては、ネオジムジメチルカルバメート、ネオジムジエチルカルバメート、ネオジムジイソプロピルカルバメート、ネオジムジブチルカルバメート及びネオジムジベンジルカルバメートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
適当なネオジムジチオカルバメートとしては、ネオジムジメチルジチオカルバメート、ネオジムジエチルジチオカルバメート、ネオジムジイソプロピルジチオカルバメート、ネオジムジブチルジチオカルバメート及びネオジムジベンジルジチオカルバメートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
適当なネオジムキサンテートとしては、ネオジムメチルキサンテート、ネオジムエチルキサンテート、ネオジムイソプロピルキサンテート、ネオジムブチルキサンテート及びネオジムベンジルキサンテートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
適当なネオジムβ−ジケトナートとしては、ネオジムアセチルアセトナート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトナート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトナート、ネオジムベンゾイルアセトナート及びネオジム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
適当なネオジムアルコキシド又はアリールオキシドとしては、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジム2−エチルヘキソキシド、ネオジムフェノキシド、ネオジムノニルフェノキシド及びネオジムナフトキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
適当なネオジムハライドとしては、ネオジムフルオライド、ネオジムクロライド、ネオジムブロマイド及びネオジムアイオダイドが挙げられるが、これらに限定されない。適当なネオジム擬ハライドとしては、ネオジムシアニド、ネオジムシアネート、ネオジムチオシアネート、ネオジムアジド及びネオジムフェロシアニドが挙げられるが、これらに限定されない。適当なネオジムオキシハライドとしては、ネオジムオキシフルオライド、ネオジムオキシクロライド及びネオジムオキシブロマイドが挙げられるが、これらに限定されない。この種類のネオジム化合物を不活性な有機溶媒中で溶解させるための補助として、ルイス塩基、例えば、テトラヒドロフラン(「THF」)などを用いてもよい。ランタニドハライド、ランタニドオキシハライド又はハロゲン原子を含んだ他のランタニド含有化合物が使用される場合、ランタニド含有化合物は、上記触媒系においてハロゲン供給源の全て又は一部としての役割を果たしてもよい。
【0034】
本明細書で使用される通り、有機ランタニド化合物の語は、少なくとも1つのランタニド−炭素結合を含んだ、任意のランタニド含有化合物を指す。これらの化合物は、排他的ではないが、主に、シクロペンタジエニル(「Cp」)、置換シクロペンタジエニル、アリル及び置換アリル配位子を含んだ化合物である。適当な有機ランタニド化合物としては、CpLn、CpLnR、CpLnCl、CpLnCl、CpLn(シクロオクタテトラエン)、(CMeLnR、LnR、Ln(アリル)及びLn(アリル)Cl[式中、Lnはランタニド原子を表し、Rはヒドロカルビル基を表す]が挙げられるが、これらに限定されない。1以上の態様において、本発明で有用なヒドロカルビル基は、ヘテロ原子、例えば、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子などを含んでいてもよい。
【0035】
上記の通り、本発明で使用される触媒系は、アルキル化剤を含んでいてもよい。1以上の態様において、アルキル化剤は、ヒドロカルビル化剤と呼ばれてもよく、1以上のヒドロカルビル基を別の金属に移動させることのできる有機金属化合物を含む。典型的には、これらの化学物質としては、1族、2族及び3族の金属(IA族、IIA族及びIIIA族の金属)などの陽性金属の有機金属化合物が挙げられる。本発明で有用なアルキル化剤としては、有機アルミニウム化合物及び有機マグネシウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用されるように、有機アルミニウム化合物の語は、少なくとも1つのアルミニウム−炭素結合を含んだ任意のアルミニウム化合物を指す。1以上の態様において、炭化水素溶媒に可溶な有機アルミニウム化合物を使用してもよい。本明細書で使用されるように、有機マグネシウム化合物の語は、少なくとも1つのマグネシウム−炭素結合を含んだ任意のマグネシウム化合物を指す。1以上の態様において、炭化水素に可溶な有機マグネシウム化合物を使用してもよい。以下でより詳細に記載される通り、数種類の適当なアルキル化剤は、ハロゲン化物の形態であってよい。アルキル化剤がハロゲン原子を含む場合、アルキル化剤は、上述の触媒系においてハロゲン供給源の全て又は一部としての機能を果たしてもよい。
【0036】
1以上の態様において、使用され得る有機アルミニウム化合物としては、一般式AlR3−n[式中、各々のRは、独立して、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合している1価の有機基であってよく、各々のXは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボン酸基、アルコキシド基又はアリールオキシド基であってよく、nは、1〜3の範囲の整数である]で表されるものが挙げられる。1以上の態様において、各々のRは、独立して、ヒドロカルビル基、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基、アリル基及びアルキニル基などであってよく、各々の基は、1又は基を形成するのに適当な最小数から、最大で約20までの範囲の炭素原子を含んでいる。これらのヒドロカルビル基は、ヘテロ原子を含んでいてもよく、限定するものではないが、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子が挙げられる。
【0037】
一般式AlR3−nで表される有機アルミニウム化合物のタイプとしては、トリヒドロカルビルアルミニウム、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド、ヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド、ジヒドロカルビルアルミニウムカルボキシレート、ヒドロカルビルアルミニウムビス(カルボキシレート)、ジヒドロカルビルアルミニウムアルコキシド、ヒドロカルビルアルミニウムジアルコキシド、ジヒドロカルビルアルミニウムハライド、ヒドロカルビルアルミニウムジハライド、ジヒドロカルビルアルミニウムアリールオキシド及びヒドロカルビルアルミニウムジアリールオキシド化合物が挙げられるが、これらに限定されない。ある態様では、アルキル化剤は、トリヒドロカルビルアルミニウム、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド及び/又はヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド化合物を含んでいてもよい。ある態様では、アルキル化剤が有機アルミニウムヒドリド化合物を含む場合、上記ハロゲン供給源は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる米国特許第7,008,899号に開示されるように、ハロゲン化スズにより提供され得る。
【0038】
適当なトリヒドロカルビルアルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリ−n−ペンチルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリス(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(1−メチルシクロペンチル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、トリス(2,6−ジメチルフェニル)アルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル−p−トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ−p−トリルアルミニウム及びエチルジベンジルアルミニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
適当なジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド化合物としては、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ−n−プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ−n−ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ−n−オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ−p−トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−オクチルアルミニウムヒドリド、p−トリルエチルアルミニウムヒドリド、p−トリル−n−プロピルアルミニウムヒドリド、p−トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p−トリル−n−ブチルアルミニウムヒドリド、p−トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p−トリル−n−オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル−n−プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル−n−ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド及びベンジル−n−オクチルアルミニウムヒドリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
適当なヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドとしては、エチルアルミニウムジヒドリド、n−プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n−ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド及びn−オクチルアルミニウムジヒドリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
適当なジヒドロカルビルアルミニウムハライド化合物としては、ジエチルアルミニウムクロライド、ジ−n−プロピルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジ−n−ブチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、ジ−n−オクチルアルミニウムクロライド、ジフェニルアルミニウムクロライド、ジ−p−トリルアルミニウムクロライド、ジベンジルアルミニウムクロライド、フェニルエチルアルミニウムクロライド、フェニル−n−プロピルアルミニウムクロライド、フェニルイソプロピルアルミニウムクロライド、フェニル−n−ブチルアルミニウムクロライド、フェニルイソブチルアルミニウムクロライド、フェニル−n−オクチルアルミニウムクロライド、p−トリルエチルアルミニウムクロライド、p−トリル−n−プロピルアルミニウムクロライド、p−トリルイソプロピルアルミニウムクロライド、p−トリル−n−ブチルアルミニウムクロライド、p−トリルイソブチルアルミニウムクロライド、p−トリル−n−オクチルアルミニウムクロライド、ベンジルエチルアルミニウムクロライド、ベンジル−n−プロピルアルミニウムクロライド、ベンジルイソプロピルアルミニウムクロライド、ベンジル−n−ブチルアルミニウムクロライド、ベンジルイソブチルアルミニウムクロライド及びベンジル−n−オクチルアルミニウムクロライドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
適当なヒドロカルビルアルミニウムジハライド化合物としては、エチルアルミニウムジクロライド、n−プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、n−ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド及びn−オクチルアルミニウムジクロライドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
一般式AlR3−nで表すことができる、アルキル化剤として有用な他の有機アルミニウム化合物としては、ジメチルアルミニウムヘキサノアート、ジエチルアルミニウムオクトエート、ジイソブチルアルミニウム2−エチルヘキサノアート、ジメチルアルミニウムネオデカノアート、ジエチルアルミニウムステアレート、ジイソブチルアルミニウムオレアート、メチルアルミニウムビス(ヘキサノアート)、エチルアルミニウムビス(オクトエート)、イソブチルアルミニウムビス(2−エチルヘキサノアート)、メチルアルミニウムビス(ネオデカノアート)、エチルアルミニウムビス(ステアレート)、イソブチルアルミニウムビス(オレアート)、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、エチルアルミニウムジメトキシド、イソブチルアルミニウムジメトキシド、メチルアルミニウムジエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムジフェノキシド、エチルアルミニウムジフェノキシド及びイソブチルアルミニウムジフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本発明においてアルキル化剤として使用するのに適当な別の種類の有機アルミニウム化合物は、アルミノキサン(aluminoxane)である。アルミノキサンは、一般式:
【化1】

で表すことができるオリゴマー状の直鎖状アルミノキサンと、一般式:
【化2】

で表すことができるオリゴマー状の環状アルミノキサンとを含んでいてもよく、式中、xは、1〜約100又は約10〜約50の範囲内の整数であってよく、yは、2〜約100又は約3〜約20の範囲内の整数であってよく、各々のRは、独立して、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合している1価の有機基であってよい。ある態様において、各々のRは、独立して、ヒドロカルビル基であってよく、限定するものではないが、ヒドロカルビル基としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基、アリル基及びアルキニル基が含まれ、各々の基は、1又は基を形成するのに適切な最小数から、最大で約20までの範囲の炭素原子を含んでいる。これらのヒドロカルビル基は、ヘテロ原子を含んでいてもよく、限定するものではないが、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子が挙げられる。本願で使用されるアルミノキサンのモル数は、オリゴマー状のアルミノキサン分子のモル数よりもむしろ、アルミニウム原子のモル数を指すことに留意すべきである。このような慣例は、アルミノキサンを利用する触媒系の分野で一般に使用される。
【0045】
アルミノキサンは、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を水と反応させることにより調製することができる。この反応は、既知の方法、例えば、(1)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を有機溶媒に溶解させ、次いで、水と接触させる方法、(2)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、例えば、金属塩などに含まれている結晶水又は無機若しくは有機化合物に吸着されている水と反応させる方法、或いは(3)重合させるモノマー又はモノマー溶液の存在下でトリヒドロカルビルアルミニウム化合物を水と反応させる方法などに従って行うことができる。
【0046】
適当なアルミノキサン化合物としては、メチルアルミノキサン(「MAO」)、修飾メチルアルミノキサン(「MMAO」)、エチルアルミノキサン、n−プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n−ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n−ヘキシルアルミノキサン、n−オクチルアルミノキサン、2−エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1−メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン及び2,6−ジメチルフェニルアルミノキサンが挙げられるが、これらに限定されない。修飾されたメチルアルミノキサンは、当業者に既知の技術を用いて、メチルアルミノキサンのメチル基のうちの約20〜80%を、C〜C12ヒドロカルビル基、好ましくは、イソブチル基で置換することにより形成することができる。
【0047】
アルミノキサンは単独で又は他の有機アルミニウム化合物と組み合わせて使用することができる。ある態様では、メチルアルミノキサンと、ジイソブチルアルミニウムヒドリドなどの少なくとも1つの他の有機アルミニウム化合物(例えば、AlR3−n)とを組み合わせて使用することができる。その全体が引用により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0182954号は、アルミノキサンと有機アルミニウム化合物とを組み合わせて使用することができる他の例を提供する。
【0048】
上述の通り、本発明において有用なアルキル化剤は、有機マグネシウム化合物を含んでいてもよい。1以上の態様において、使用することができる有機マグネシウム化合物としては、一般式MgR[式中、各々のRは、独立して、炭素原子を介してマグネシウム原子に結合している1価の有機基であってよい]により表されるものが挙げられる。1以上の態様では、各々のRは、独立して、ヒドロカルビル基であってよく、限定するものではないが、ヒドロカルビル基としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基及びアルキニル基が挙げられ、各々の基は、1又は基を形成するのに適当な最小数から、最大で約20までの範囲の炭素原子を含んでいる。これらのヒドロカルビル基は、ヘテロ原子を含んでいてもよく、限定するものではないが、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子が挙げられる。
【0049】
一般式MgRにより表すことのできる適当な有機マグネシウム化合物としては、ジエチルマグネシウム、ジ−n−プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム及びジベンジルマグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
アルキル化剤として使用することのできる、別の種類の有機マグネシウム化合物は、一般式RMgX[式中、Rは、炭素原子を介してマグネシウム原子に結合している1価の有機基であってよく、Xは、水素原子、ハロゲン原子、カルボン酸基、アルコキシド基又はアリールオキシド基であってよい]により表すことができる。アルキル化剤が、ハロゲン原子を含んだ有機マグネシウム化合物である場合、有機マグネシウム化合物は、触媒系において、アルキル化剤とハロゲン供給源の少なくとも一部との両方の機能を果たし得る。1以上の態様では、Rは、ヒドロカルビル基であってよく、限定するものではないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基及びアルキニル基が挙げられ、各々の基は、1又は基を形成するのに適当な最小数から、最大で約20までの範囲の炭素原子を含んでいる。これらのヒドロカルビル基は、ヘテロ原子を含んでいてもよく、限定するものではないが、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子が挙げられる。ある態様では、Xは、カルボン酸基、アルコキシド基又はアリールオキシド基であってよく、各々の基は、1〜約20の範囲の炭素原子を含んでいる。
【0051】
一般式RMgXで表すことのできる有機マグネシウム化合物のタイプとしては、ヒドロカルビルマグネシウムヒドリド、ヒドロカルビルマグネシウムハライド、ヒドロカルビルマグネシウムカルボキシレート、ヒドロカルビルマグネシウムアルコキシド及びヒドロカルビルマグネシウムアリールオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
一般式RMgXで表すことのできる適当な有機マグネシウム化合物としては、メチルマグネシウムヒドリド、エチルマグネシウムヒドリド、ブチルマグネシウムヒドリド、ヘキシルマグネシウムヒドリド、フェニルマグネシウムヒドリド、ベンジルマグネシウムヒドリド、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライド、ヘキシルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムクロライド、ベンジルマグネシウムクロライド、メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムブロマイド、ブチルマグネシウムブロマイド、ヘキシルマグネシウムブロマイド、フェニルマグネシウムブロマイド、ベンジルマグネシウムブロマイド、メチルマグネシウムヘキサノアート、エチルマグネシウムヘキサノアート、ブチルマグネシウムヘキサノアート、ヘキシルマグネシウムヘキサノアート、フェニルマグネシウムヘキサノアート、ベンジルマグネシウムヘキサノアート、メチルマグネシウムエトキシド、エチルマグネシウムエトキシド、ブチルマグネシウムエトキシド、ヘキシルマグネシウムエトキシド、フェニルマグネシウムエトキシド、ベンジルマグネシウムエトキシド、メチルマグネシウムフェノキシド、エチルマグネシウムフェノキシド、ブチルマグネシウムフェノキシド、ヘキシルマグネシウムフェノキシド、フェニルマグネシウムフェノキシド及びベンジルマグネシウムフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
上述の通り、本発明で使用される触媒系は、ハロゲン供給源を含んでいてもよい。本明細書で使用されるように、ハロゲン供給源の語は、少なくとも1つのハロゲン原子を含んだ任意の物質を指す。1以上の態様において、上記ランタニド含有化合物及び/又は上記アルキル化剤が少なくとも1つのハロゲン原子を含む場合、ハロゲン供給源の少なくとも一部は、それらの化合物のうちのいずれかにより提供され得る。言い換えれば、ランタニド含有化合物は、ランタニド含有化合物とハロゲン供給源の少なくとも一部との両方の機能を果たし得る。同様に、アルキル化剤は、アルキル化剤とハロゲン供給源の少なくとも一部との両方の機能を果たし得る。
【0054】
別の態様では、ハロゲン供給源の少なくとも一部は、別々の且つ異なったハロゲン含有化合物の形態で触媒系中に存在し得る。1以上のハロゲン原子を含む種々の化合物又はそれらの混合物は、ハロゲン供給源として使用され得る。ハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。2以上のハロゲン原子の組合せが使用されてもよい。炭化水素溶媒に可溶なハロゲン含有化合物は、本発明における使用に適している。しかしながら、炭化水素に不溶なハロゲン含有化合物を重合系中に懸濁して触媒活性種を形成することもでき、それ故、炭化水素に不溶なハロゲン含有化合物もまた有用である。
【0055】
使用され得る有用なタイプのハロゲン含有化合物としては、元素状ハロゲン、混合ハロゲン、水素ハライド、有機ハライド、無機ハライド、金属ハライド及び有機金属ハライドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明における使用に適した元素状ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。適当な混合ハロゲンの具体例のいくつかとしては、一塩化ヨウ素、一臭化ヨウ素、三塩化ヨウ素及び五フッ化ヨウ素が挙げられる。
【0057】
水素ハライドとしては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素及びヨウ化水素が挙げられるが、これらに限られない。
【0058】
有機ハライドとしては、t−ブチルクロライド、t−ブチルブロマイド、アリルクロライド、アリルブロマイド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、クロロ−ジ−フェニルメタン、ブロモ−ジ−フェニルメタン、トリフェニルメチルクロライド、トリフェニルメチルブロマイド、ベンジリデンクロライド、ベンジリデンブロマイド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ベンゾイルクロライド、ベンゾイルブロマイド、プロピオニルクロライド、プロピオニルブロマイド、メチルクロロホルメート及びメチルブロモホルメートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
無機ハライドとしては、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、三塩化ヒ素、三臭化ヒ素、三ヨウ化ヒ素、四塩化セレン、四臭化セレン、四塩化テルル、四臭化テルル及び四ヨウ化テルルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
金属ハライドとしては、スズテトラクロライド、スズテトラブロマイド、アルミニウムトリクロライド、アルミニウムトリブロマイド、アンチモントリクロライド、アンチモンペンタクロライド、アンチモントリブロマイド、アルミニウムトリアイオダイド、アルミニウムトリフルオライド、ガリウムトリクロライド、ガリウムトリブロマイド、ガリウムトリアイオダイド、ガリウムトリフルオライド、インジウムトリクロライド、インジウムトリブロマイド、インジウムトリアイオダイド、インジウムトリフルオライド、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド、亜鉛ジクロライド、亜鉛ジブロマイド、亜鉛ジアイオダイド及び亜鉛ジフルオライドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
有機金属ハライドとしては、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムフルオライド、ジエチルアルミニウムフルオライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジフルオライド、エチルアルミニウムジフルオライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライド、メチルマグネシウムクロライド、メチルマグネシウムブロマイド、メチルマグネシウムアイオダイド、エチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムブロマイド、ブチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムブロマイド、フェニルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムブロマイド、ベンジルマグネシウムクロライド、トリメチルスズクロライド、トリメチルスズブロマイド、トリエチルスズクロライド、トリエチルスズブロマイド、ジ−t−ブチルスズジクロライド、ジ−t−ブチルスズジブロマイド、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジブロマイド、トリブチルスズクロライド及びトリブチルスズブロマイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
1以上の態様において、上記触媒系は、非配位アニオンを含んだ化合物又は非配位アニオン前駆体を含んでいてもよい。1以上の態様において、非配位アニオンを含んだ化合物又は非配位アニオン前駆体が、上記ハロゲン供給源の代わりに使用されてもよい。非配位アニオンは、立体障害のため、例えば触媒系の活性中心と配位結合を形成しない立体的に嵩高いアニオンである。本発明において有用な非配位アニオンとして、テトラアリールボレートアニオン及びフッ化テトラアリールボレートアニオンが挙げられるが、これらに限定されない。非配位アニオンを含んだ化合物は、対カチオン、例えば、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオン又はホスホニウムカチオンなどを含んでいてもよい。典型的な対カチオンとしては、トリアリールカルボニウムカチオン及びN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。非配位アニオンと対カチオンとを含んだ化合物の例としては、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート及びN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
この態様において、非配位アニオン前駆体が使用されてもよい。非配位アニオン前駆体は、反応条件下で非配位アニオンを形成することができる化合物である。有用な非配位アニオン前駆体としては、トリアリールボロン化合物BR[式中、Rは、強力な電子吸引性のアリール基、例えば、ペンタフルオロフェニル又は3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基などである]が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明で使用されるランタニド系触媒組成物は、先述の触媒含有物を組み合わせるか又は混合することによって形成されてもよい。1以上の活性触媒種は、ランタニド系触媒含有物の組合せから得られると考えられているが、種々の触媒含有物若しくは成分間での相互作用又は反応の程度について、確かなことはわかっていない。従って、「触媒組成物」の語は、含有物の単なる混合物、物理的若しくは化学的な引力によって生じる種々の含有物の複合体、含有物の化学反応生成物又はこれらの組み合わせを包含して使用されている。
【0065】
先述のランタニド系触媒組成物は、広範囲の触媒濃度及び触媒成分比に亘り、共役ジエンを重合してシス−1,4−ポリジエンにすることについて高い触媒活性を有していてもよい。いくつかの要因が、触媒含有物のいずれか1つの最適濃度に影響することがある。例えば、触媒含有物は、相互作用して活性種を形成することがあるため、いずれか1つの触媒含有物の最適濃度が、他の触媒含有物の濃度に左右されることもある。
【0066】
1以上の態様において、ランタニド含有化合物に対するアルキル化剤のモル比(アルキル化剤/Ln)は、約1:1〜約1,000:1まで、他の態様では、約2:1〜約500:1まで、別の態様では、約5:1〜約200:1まで変化してもよい。
【0067】
アルミノキサン及び少なくとも1つの他の有機アルミニウム物質の両方がアルキル化剤として使用される態様において、ランタニド含有化合物に対するアルミノキサンのモル比(アルミノキサン/Ln)は、5:1〜約1000:1まで、他の態様では、約10:1〜約700:1まで、別の態様では、約20:1〜約500:1まで変化し、また、ランタニド含有化合物に対する少なくとも1つの他の有機アルミニウム化合物のモル比(Al/Ln)は、約1:1〜約200:1まで、他の態様では、約2:1〜約150:1まで、別の態様では、約5:1〜約100:1まで変化してもよい。
【0068】
ランタニド含有化合物に対するハロゲン含有化合物のモル比は、ランタニド含有化合物中のランタニド原子のモル数に対するハロゲン供給源中のハロゲン原子のモル数の比(ハロゲン/Ln)の観点から、最も良く記載される。1以上の態様において、ハロゲン/Lnのモル比は、約0.5:1〜約20:1まで、他の態様では、約1:1〜約10:1まで、別の態様では、約2:1〜約6:1まで変化してもよい。
【0069】
さらに別の態様では、ランタニド含有化合物に対する非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体のモル比(An/Ln)は、約0.5:1〜約20:1、他の態様では、約0.75:1〜約10:1、別の態様では、約1:1〜約6:1であってよい。
【0070】
ランタニド系触媒組成物は、種々の方法により形成することができる。
【0071】
ある態様では、ランタニド系触媒組成物は、モノマーと溶媒とを含んだ溶液若しくはバルク(bulk)モノマーに、触媒含有物を、段階的又は同時に添加することにより、その場(in situ)で形成してもよい。ある態様では、まずアルキル化剤を添加し、その後、ランタニド含有化合物、続いて、ハロゲン供給源又は非配位アニオンを含んだ化合物若しくは非配位アニオン前駆体を添加してもよい。
【0072】
別の態様では、ランタニド系触媒組成物を予形成してもよい。即ち、触媒含有物は、重合系の外で、モノマーの非存在下又は少量の少なくとも1つの共役ジエンモノマーの存在下において適当な温度で予混合され、温度は約−20℃〜約80℃とすることができる。触媒を予形成するために使用され得る共役ジエンモノマーの量は、ランタニド含有化合物1モル当たり、約1〜約500モル、他の態様では、約5〜約250モル、別の態様では、約10〜約100モルの範囲であってよい。必要であれば、重合されるモノマーに添加する前に、得られる触媒組成物を熟成してもよい。
【0073】
さらに別の態様では、ランタニド系触媒組成物を、2段階の手順を使用して形成してもよい。第1段階は、アルキル化剤を、モノマーの非存在下又は少量の少なくとも1つの共役ジエンモノマーの存在下において、適当な温度でランタニド含有化合物と組み合わせることを含んでいてもよく、温度は約−20℃〜約80℃とすることができる。第1段階で使用されるモノマーの量は、上述した、触媒を予形成するためのものと同様であってよい。第2段階では、第1段階で形成した混合物と、ハロゲン供給源、非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体とを、重合されるモノマーに対し、段階的又は同時に添加してもよい。
【0074】
1以上の態様において、反応性ポリマーは、アニオン重合によって調製され、モノマーは、アニオン開始剤を使用して重合される。アニオン重合の主要な機構的特徴は、書籍(例えば、Hsieh, H. L.; Quirk, R. P. アニオン重合:原理と実用的応用、Marcel Dekker: New York, 1996年)及び総説(例えば、Hadjichristidis, N.; Pitsikalis, M.; Pispas, S.; Iatrou, H.; Chem. Rev. 2001年, 101(12), 第3747頁-第3792頁)に記載されている。アニオン開始剤は、失活前に、鎖の更なる成長のために追加のモノマーと反応することができるか、又は特定の官能化剤と反応して官能化ポリマーを生ずることができる、リビングポリマーを有利に製造してもよい。
【0075】
本発明の実施は、いずれかの特定のアニオン開始剤の選択によっては限定されない。1以上の態様では、使用されるアニオン開始剤は、ポリマー鎖の頭部(即ち、ポリマー鎖が始まる場所)に官能基を付与する官能性開始剤である。特定の態様において、官能基としては、1以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、スズ原子及びリン原子)又は複素環基が挙げられる。特定の態様において、官能基は、官能基を含まないポリマーから調製した同様のカーボンブラック充填加硫物と比較して、官能基を含んだポリマーから調製したカーボンブラック充填加硫物の50℃でのヒステリシスロスを低減する。
【0076】
代表的なアニオン開始剤としては、有機リチウム化合物が挙げられる。1以上の態様において、有機リチウム化合物には、ヘテロ原子が含まれてもよい。これらの又は他の態様において、有機リチウム化合物には、1以上の複素環基が含まれてもよい。
【0077】
有機リチウム化合物のタイプとしては、アルキルリチウム、アリールリチウム化合物及びシクロアルキルリチウム化合物が含まれる。有機リチウム化合物の具体例としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、n−アミルリチウム(n-amyllithium)、イソアミルリチウム(isoamyllithium)及びフェニルリチウムが挙げられる。他の例としては、ブチルマグネシウムブロマイド及びフェニルマグネシウムブロマイド等のアルキルマグネシウムハライド化合物が挙げられる。更に他のアニオン開始剤としては、フェニルナトリウム及び2,4,6−トリメチルフェニルナトリウム等の有機ナトリウム化合物が挙げられる。更に意図されるのは、ポリマー鎖の両端が活性な(living)ジ−リビングポリマーを生じさせるアニオン開始剤である。かかる開始剤の例としては、1,3−ジイソプロペニルベンゼンをsec−ブチルリチウムと反応させることにより調製されるようなジリチオ開始剤が挙げられる。これらの及び関連する二官能性開始剤が、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許第3,652,516号に開示されている。ラジカルアニオン開始剤を使用してもよく、ラジカルアニオン開始剤としては、引用により本明細書に組み込まれる米国特許第5,552,483号に記載されるものが挙げられる。
【0078】
特定の態様において、有機リチウム化合物としては、リチオヘキサメチレンイミン等の環状アミン含有化合物が挙げられる。これらの及び関連する有用な開始剤は、引用により本明細書に組み込まれる米国特許第5,332,810号、第5,329,005号、第5,578,542号、第5,393,721号、第5,698,646号、第5,491,230号、第5,521,309号、第5,496,940号、第5,574,109号及び第5,786,441号に記載される。他の態様において、有機リチウム化合物としては、2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアン等のリチオ化アルキルチオアセタールが挙げられる。これらの及び関連する有用な開始剤は、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0030657号、第2006/0264590号及び第2006/0264589号に開示される。更に他の態様において、有機リチウム化合物としては、リチオ化t−ブチルジメチルプロポキシシラン等のアルコキシシリル含有開始剤が挙げられる。これらの及び関連する有用な開始剤は、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0241241号に開示される。
【0079】
1以上の態様において、使用されるアニオン開始剤は、トリ−n−ブチルスズリチウム等のトリアルキルスズリチウム化合物である。これらの及び関連する有用な開始剤は、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許第3,426,006号及び第5,268,439号に開示される。
【0080】
共役ジエンモノマーとビニル置換された芳香族モノマーとを含んだ弾性コポリマーが、アニオン重合によって調製される場合、共役ジエンモノマーとビニル置換された芳香族モノマーとは、95:5〜50:50、他の態様では、90:10〜65:35の重量比で使用されてもよい。共重合におけるコモノマーのランダム化を促進し、ポリマーの微細構造(例えば、共役ジエンモノマーの1,2−結合など)を制御すべく、典型的には極性調整剤であるランダマイザー(randomizer)がアニオン開始剤と共に使用されてよい。
【0081】
ランダマイザーとして有用な化合物としては、酸素又は窒素へテロ原子及び非結合電子対を有するものが挙げられる。ランダマイザーの典型的なタイプとしては、直鎖状及び環状オリゴマーオキソラニルアルカン;モノ及びオリゴアルキレングリコールのジアルキルエーテル(グリムエーテルとしても既知);クラウンエーテル;第3級アミン;直鎖状THFオリゴマー;アルカリ金属アルコキシド;並びに、アルカリ金属スルホン酸塩が挙げられる。直鎖状及び環状オリゴマーオキソラニルアルカンは、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許第4,429,091号に記載される。ランダマイザーの具体例としては、2,2−ビス(2’−テトラヒドロフリル)プロパン、1,2−ジメトキシエタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジピペリジルエタン、ジピペリジルメタン、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N’−ジメチルピペラジン、ジアザビシクロオクタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、トリ−n−ブチルアミン、カリウムt−アミレート(amylate)、カリウム4−ドデシルスルホナート及びこれらの混合物が含まれる。
【0082】
使用されるランダマイザーの量は、ポリマーの望まれる微細構造、コモノマーに対するモノマーの比率、重合温度及び使用される特定のランダマイザーの性質等の種々の因子によって決定されてよい。1以上の態様において、使用されるランダマイザーの量は、アニオン開始剤1モル当たり0.05〜100モルの範囲内であってよい。
【0083】
アニオン開始剤及びランダマイザーは、種々の方法によって重合系に導入され得る。1以上の態様において、アニオン開始剤及びランダマイザーは、段階的又は同時に、重合されるモノマーに対して別々に添加されてもよい。他の態様において、アニオン開始剤及びランダマイザーを、モノマーの非存在下又は少量のモノマーの存在下、重合系の外で予混合してもよく、必要な場合には、得られる混合物を熟成し、次いで、重合させるモノマーに添加してもよい。
【0084】
1以上の態様において、配位触媒又はアニオン開始剤のいずれを使用して反応性ポリマーを調製するかに関わらず、触媒又は開始剤の重合系への送達を容易にすべく、溶媒を担体として使用して、触媒又は開始剤を溶解若しくは懸濁してもよい。他の態様では、モノマーを担体として使用することができる。更に他の態様では、触媒又は開始剤を、溶媒を使用することなく、薄めない状態で使用することができる。
【0085】
1以上の態様において、適当な溶媒としては、触媒又は開始剤の存在下でモノマーを重合する間に成長性ポリマー鎖への重合又は取り込みを受けないであろう有機化合物が挙げられる。1以上の態様において、これらの有機種は、周囲温度及び圧力において液体である。1以上の態様において、これらの有機溶媒は、触媒又は開始剤に対して不活性である。典型的な有機溶媒としては、低沸点又は比較的低沸点の炭化水素、例えば、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素などが挙げられる。芳香族炭化水素の非限定的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン及びメシチレンが挙げられる。脂肪族炭化水素の非限定的な例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2−ジメチルブタン、石油エーテル、ケロシン及び石油スピリットが挙げられる。また、脂環式炭化水素の非限定的な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン及びメチルシクロヘキサンが挙げられる。上記炭化水素の混合物が使用されてもよい。当該分野で既知の通り、環境保護の理由から、脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素が望ましく使用され得る。低沸点の炭化水素溶媒は、典型的には、重合完了時にポリマーから分離される。
【0086】
有機溶媒の他の例としては、高分子量の高沸点炭化水素が挙げられ、これには、油展ポリマーに一般に使用される炭化水素油が含まれる。これらの油の例としては、パラフィン油、芳香族油、ナフテン油、ヒマシ油以外の植物性油、並びにMES、TDAE、SRAE及び重質ナフテン油を含む低PCA油が挙げられる。これらの炭化水素は不揮発性であるため、通常分離を要さず、ポリマーに組み込まれたままである。
【0087】
本発明に従う反応性ポリマーの製造は、触媒作用に効果的な量の触媒又は開始剤の存在下で、共役ジエンモノマーを、任意に、共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーと共に重合させることにより達成し得る。触媒又は開始剤と、共役ジエンモノマーと、任意にコモノマーと、使用する場合にはいずれかの溶媒との導入によって、反応性ポリマーが形成される重合混合物を形成する。使用する触媒又は開始剤の量は、用いる触媒又は開始剤のタイプ、成分の純度、重合温度、所望の重合速度及び転化率、所望の分子量、並びに他の多くの要素等、様々な要因の相互作用によって決定され得る。従って、具体的な触媒の量については、触媒作用に効果的な量の触媒又は開始剤が使用され得るということ以外は、明確に示すことができない。
【0088】
1以上の態様において、使用される配位金属化合物(例えば、ランタニド含有化合物)の量は、モノマー100グラム当たり約0.001〜約2mmolまで、他の態様では、約0.005〜約1mmolまで、更に他の態様では、約0.01〜約0.2mmolまで変化してもよい。
【0089】
アニオン開始剤(例えば、アルキルリチウム化合物)を使用する1以上の態様において、開始剤の添加量は、モノマー100グラム当たり約0.05〜約100mmolまで、他の態様では、約0.1〜約50mmolまで、更に他の態様では、約0.2〜約5mmolまで変化してもよい。
【0090】
1以上の態様において、重合は、相当量の溶媒が含まれる重合系で行われてもよい。ある態様では、重合されるモノマー及び形成したポリマーの両方が溶媒に可溶である溶液重合系を使用してもよい。別の態様では、形成したポリマーが溶解しない溶媒を選択して、沈殿重合系を使用してもよい。どちらの場合にも、触媒の調製に用いられ得る量の溶媒に加えて、ある量の溶媒が、重合系に通常添加される。追加の溶媒は、触媒又は開始剤の調製に用いた溶媒と同一でも異なっていてもよい。典型的な溶媒については上述した。1以上の態様において、重合混合物の溶媒の含有率は、重合混合物の総重量を基準として20重量%より多く、他の態様では50重量%より多く、さらに他の態様では80重量%より多い。
【0091】
他の態様では、使用される重合系が、実質的に溶媒を含まないか又は最小量の溶媒を含むバルク重合系であると、概して考えられてもよい。当業者は、バルク重合プロセス(即ち、モノマーが溶媒として機能するプロセス)の利点を理解するため、重合系は、バルク重合を行うことにより得られる利点に悪影響を与えるよりも少ない量の溶媒を含む。1以上の態様において、重合混合物の溶媒含有率は、重合混合物の総重量に基づき、約20重量%未満、他の態様では約10重量%未満、更に他の態様では約5重量%未満であってよい。別の態様では、重合混合物は、使用される原材料に内在するもの以外に溶媒を含まない。更に別の態様では、重合混合物には、実質的に溶媒を含まず、そうでなければ重合プロセスに相当の影響を与える量の溶媒が存在しないことを意味する。実質的に溶媒を含まない重合系とは、実質的に溶媒を含まないことを意味してもよい。特定の態様では、重合混合物は溶媒を含まない。
【0092】
重合は、当該分野で既知の任意の従来型の重合容器中で行われてもよい。1以上の態様において、溶液重合は、従来の攪拌槽型反応器中で行うことができる。他の態様では、特に、モノマー転化率が60%未満の場合、バルク重合は、従来の攪拌槽型反応器中で行うことができる。特に、バルク重合プロセスにおけるモノマー転化率が約60%を超える、更に他の態様では、典型的には高粘度のセメントをもたらすが、バルク重合は、重合下の粘性セメントを、ピストンにより又は実質的にピストンにより移動させる細長い反応器中で行うことができる。例えば、この目的には、セメントを自浄式単軸スクリュー又は2軸スクリュー撹拌機により押し出す押出機が適している。有用なバルク重合プロセスの例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,351,776号に開示されている。
【0093】
1以上の態様において、重合に使用される全成分は、単一の容器(例えば、従来の攪拌槽型反応器)内で組み合わせてもよく、重合プロセスの全工程を、この容器内で行ってもよい。他の態様では、2以上の成分を1つの容器内で予め組み合わせ、次いで、モノマー(又は少なくともその主要部分)の重合が行われ得る別の容器に移動してもよい。
【0094】
重合は、バッチプロセス、連続プロセス又は半連続プロセスとして行うことができる。半連続プロセスでは、すでに重合したモノマーを置き換えるため、必要に応じて断続的にモノマーを添加する。1以上の態様において、重合が進む条件を制御し、重合混合物の温度を約−10℃〜約200℃、他の態様では、約0℃〜約150℃、別の態様では約20℃〜約100℃の範囲内に維持してもよい。1以上の態様において、重合熱は、熱的に制御された反応器のジャケットによる外部冷却、反応器に接続した還流冷却器を用いることによるモノマーの蒸発及び凝縮による内部冷却、又は2つの方法の組合せにより除去されてもよい。また、重合条件を制御し、約0.1気圧〜約50気圧、他の態様では、約0.5気圧〜約20気圧、別の態様では、約1気圧〜約10気圧の圧力下で重合を行ってもよい。1以上の態様において、重合を行うことができる圧力としては、モノマーの大部分が液相にあることを確実にする圧力が挙げられる。これら又は他の態様では、重合混合物を嫌気条件下に維持してもよい。
【0095】
重合が、配位触媒(例えば、ランタニド系触媒)若しくはアニオン開始剤(例えば、アルキルリチウム開始剤)によって触媒又は開始されるか否かに関わらず、得られるポリマー鎖のいくつか又は全ては、重合混合物が失活する前に、反応性鎖末端を有していてもよい。上述のように、配位触媒(例えば、ランタニド系触媒)を用いて調製した反応性ポリマーは、擬リビングポリマーと称されてもよく、アニオン開始剤(例えば、アルキルリチウム開始剤)を用いて調製した反応性ポリマーは、リビングポリマーと称されてもよい。1以上の態様では、反応性ポリマーを含む重合混合物は、活性重合混合物と称されてもよい。反応性末端を有するポリマー鎖の割合は、触媒又は開始剤のタイプ、モノマーのタイプ、成分の純度、重合温度、モノマー転化率及び他の多くの要素等、様々な要因によって決まる。1以上の態様では、ポリマー鎖の少なくとも約20%が反応性末端を有し、他の態様では、ポリマー鎖の少なくとも約50%が反応性末端を有し、さらに他の態様では、ポリマー鎖の少なくとも約80%が反応性末端を有する。いずれの場合も、反応性ポリマーを、保護されたポリオキシム化合物と反応させ、本発明の官能化ポリマーを形成することができる。
【0096】
1以上の態様において、保護されたポリオキシム化合物としては、2以上の保護されたオキシム基を含む化合物が挙げられる。当業者は、オキシム基が下記式:
【化3】

[式中、Rは、水素原子又は1価の有機基である]によって定義され得ることを理解する。1以上の態様において、保護されたオキシム基は、元のオキシム基の酸素原子に結合している水素原子が、1価の有機基によって置き換えられているオキシム基である。従って、1以上の態様において、保護されたオキシム基は、下記式:
【化4】

[式中、Rは、水素又は1価の有機基であり、Rは、1価の有機基である]によって定義され得る。以下で説明するように、1価の有機基は、独立して、ヒドロカルビル又はシリル基であってもよい。
【0097】
がヒドロカルビル基である1以上の態様において、保護されたオキシム基は、O−ヒドロカルビルオキシム基と称されてもよい。Rがシリル基である他の態様では、保護されたオキシム基は、O−シリルオキシム基と称されてもよい。Rがスルホニル基である別の態様では、保護されたオキシム基は、O−スルホニルオキシム基と称されてもよい。Rがアシル基である更に他の態様において、保護されたオキシム基は、O−アシルオキシム基と称されてもよい。
【0098】
1以上の態様において、保護されたポリオキシム化合物は、下記式I:
【化5】

[式中、各々のRは、独立して、水素原子若しくは1価の有機基であり、各々のRは、独立して、1価の有機基であり、Rは、結合若しくは2価の有機基であるか、2つのR基は、連結して2価の基を形成するか、又は、R基とR基とが、連結して3価の有機基を形成する]によって定義され得る。
【0099】
式Iの2つのR基が連結して2価の有機基を形成する1以上の態様において、保護されたポリオキシム化合物は、下記式II:
【化6】

[式中、各々のRは、独立して、1価の有機基であり、Rは、結合又は2価の有機基であり、Rは、2価の有機基である]により定義され得る。
【0100】
式IのR基とR基とが連結して3価の基を形成する1以上の態様において、保護されたポリオキシム化合物は、下記式III:
【化7】

[式中、Rは、水素原子又は1価の有機基であり、各々のRは、独立して、1価の有機基であり、Rは、3価の有機基である]によって表されてもよい。
【0101】
1以上の態様において、式I、II及びIIIの1価及び/又は2価(又は3価)の有機基は、保護されたオキシム基を含む。例えば、保護されたオキシム基(即ち、−C(R)=N−O−R)は、1価の有機基Rに、1価の有機基Rに、2価の有機基Rに、2価の有機基Rに又は3価の有機基Rに、ぶら下がって結合していてもよい。これらの態様において、保護されたポリオキシム化合物は、3以上の保護されたオキシム基を含んでいてもよい。
【0102】
1以上の態様において、保護されたポリオキシム化合物の1価の有機基は、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、限定するものではないが、これは、例えば、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アリル、アラルキル、アルカリル又はアルキニル基である。置換ヒドロカルビル基としては、1以上の水素原子が、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、シリル又はシロキシ基等の置換基によって置き換えられたヒドロカルビル基が挙げられる。1以上の態様において、これらの基は、1又は基を形成するのに適当な最小数から、約20までの炭素原子を含んでいてもよい。これらの基は、ヘテロ原子を含んでいてもよく、限定するものではないが、これは、例えば、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、スズ原子及びリン原子などである。
【0103】
1以上の態様において、保護されたポリキシム化合物の1価の有機基は、シリル基又は置換シリル基であってよく、限定するものではないが、これは、例えば、トリヒドロカルビルシリル基、トリシリルオキシシリル基、トリヒドロカルビルオキシシリル基、トリシリルシリル基、ジヒドロカルビルヒドロシリル基、ジヒドロカルビル(シリルオキシ)シリル基、ジヒドロカルビル(シリル)シリル基、ジヒドロカルビル(ヒドロカルビルオキシ)シリル基、ヒドロカルビルジヒドロシリル基、ヒドロカルビル(ジシリルオキシ)シリル基、ヒドロカルビル(ジシリル)シリル基及びヒドロカルビル(ジヒドロカルビルオキシ)シリル基などである。例えば、シリル基のタイプには、トリアルキルシリル基、ジアルキルヒドロシリル基、ジアルキル(シリルオキシ)シリル基、ジアルキル(シリル)シリル基、トリシクロアルキルシリル基、ジシクロアルキルヒドロシリル基、ジシクロアルキル(シリルオキシ)シリル基、ジシクロアルキル(シリル)シリル基、トリアルケニルシリル基、ジアルケニルヒドロシリル基、ジアルケニル(シリルオキシ)シリル基、ジアルケニル(シリル)シリル基、トリシクロアルケニルシリル基、ジシロクロアルケニルヒドロシリル基、ジシクロアルケニル(シリルオキシ)シリル基、ジシクロアルケニル(シリル)シリル基、トリアリールシリル基、ジアリールヒドロシリル基、ジアリール(シリルオキシ)シリル基、ジアリール(シリル)シリル基、トリアリルシリル基、ジアリルヒドロシリル基、ジアリル(シリルオキシ)シリル基、ジアリル(シリル)シリル基、トリアラルキルシリル基、ジアラルキルヒドロシリル基、ジアラルキル(シリルオキシ)シリル基、ジアラルキル(シリル)シリル基、トリアルカリルシリル基、ジアルカリルヒドロシリル基、ジアルカリル(シリルオキシ)シリル基、ジアルカリル(シリル)シリル基、トリアルキニルシリル基、ジアルキニルヒドロシリル基、ジアルキニル(シリルオキシ)シリル基、ジアルキニル(シリル)シリル基、トリス(トリアルキルシリルオキシ)シリル基、トリス(トリアリールシリルオキシ)シリル基、トリス(トリシクロアルキルシリルオキシ)シリル基、トリス(トリアルコキシシリルオキシ)シリル基、トリス(トリアリールオキシシリルオキシ)シリル基又はトリス(トリシクロアルキルオキシシリルオキシ)シリル基などである。置換シリル基としては、1以上の水素原子が、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基又はシリルオキシ基等の置換基によって置き換えられたシリル基が挙げられる。1以上の態様において、これらの基は、1又は基を形成するのに適当な最小数から、約20までの炭素原子を含んでいてもよい。これらの基は、ヘテロ原子を含んでいてもよく、限定するものではないが、これは、例えば、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、スズ原子及びリン原子などである。
【0104】
1以上の態様において、保護されたポリオキシム化合物の2価の有機基は、ヒドロカルビレン基又は置換ヒドロカルビレン基を含んでいてもよく、限定するものではないが、これは、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキニレン基又はアリーレン基などである。置換ヒドロカルビレン基としては、1以上の水素原子が、アルキル基などの置換基によって置き換えられたヒドロカルビレン基が挙げられる。1以上の態様において、これらの基は、1又は基を形成するのに適当な最小数から、約20までの炭素原子を含んでいてもよい。これらの基は、1以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、限定するものではないが、これは、例えば、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、スズ原子及びリン原子などである。
【0105】
保護されたポリオキシムの保護されたオキシム基が、上述のO−ヒドロカルビルオキシム基である1以上の態様において、保護されたポリオキシムは、O−ヒドロカルビルポリオキシムと称されてもよく、これらの化合物には、限定するものではないが、O−ヒドロカルビルジオキシム、O−ヒドロカルビルトリオキシム及びO−ヒドロカルビルテトラオキシムが含まれてもよい。保護されたポリオキシムの保護されたオキシム基が、上述のO−シリルオキシム基である他の態様では、保護されたポリオキシムは、O−シリルポリオキシムと称されてもよく、これらの化合物には、限定するものではないが、O−シリルジオキシム、O−シリルトリオキシム及びO−シリルテトラオキシムが含まれてよい。保護されたポリオキシムの保護されたオキシム基が、上述のO−スルホニルオキシムである別の態様では、保護されたポリオキシムは、O−スルホニルポリオキシムと称されてもよく、これらの化合物には、限定するものではないが、O−スルホニルジオキシム、O−スルホニルトリオキシム及びO−スルホニルテトラオキシムが含まれてよい。保護されたポリオキシムの保護されたオキシム基が、上述のO−アシルオキシム基である更に他の態様では、保護されたポリオキシムは、O−アシルポリオキシムと称されてもよく、これらの化合物には、限定するものではないが、O−アシルジオキシム、O−アシルトリオキシム及びO−アシルテトラオキシムが含まれてよい。
【0106】
O−ヒドロカルビルジオキシムの具体例としては、グリオキサールビス(O−メチルオキシム)、1,3−プロパンジアールビス(O−メチルオキシム)、1,4−ブタンジアールビス(O−メチルオキシム)、1,5−ペンタンジアールビス(O−メチルオキシム)、1,6−ヘキサンジアールビス(O−メチルオキシム)、2,3−ブタンジオンビス(O−メチルオキシム)、2,3−ペンタンジオンビス(O−メチルオキシム)、2,4−ペンタンジオンビス(O−メチルオキシム)、2,3−ヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、2,4−ヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、2,5−ヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、3,4−ヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、1,4−シクロヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,5−ペンタンジオンビス(O−メチルオキシム)、1,4−ジフェニル−1,4−ブタンジオンビス(O−メチルオキシム)、1−フェニル−1,3−ペンタンジオンビス(O−メチルオキシム)、ジフェニルエタンジオンビス(O−メチルオキシム)、1−フェニル−1,3−ブタンジオンビス(O−メチルオキシム)、1−フェニル−1,4−ペンタンジオンビス(O−メチルオキシム)、1−フェニル−2,4−ペンタンジオンビス(O−メチルオキシム)、1,2−ベンソキノンビス(O−メチルオキシム)、1,4−ベンゾキノンビス(O−メチルオキシム)、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−ベンゾキノンビス(O−メチルオキシム)、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ベンゾキノンビス(O−メチルオキシム)、5,6,7,8−テトラクロロ−1,4−ナフトキノンビス(O−メチルオキシム)、グリオキサールビス(O−ベンジルオキシム)、1,3−プロパンジアールビス(O−ベンジルオキシム)、1,4−ブタンジアールビス(O−ベンジルオキシム)、1,5−ペンタンジアールビス(O−ベンジルオキシム)、1,6−ヘキサンジアールビス(O−ベンジルオキシム)、2,3−ブタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、2,3−ペンタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、2,4−ペンタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、2,3−ヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、2,4−ヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、2,5−ヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、3,4−ヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1,4−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,5−ペンタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1,4−ジフェニル−1,4−ブタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1−フェニル−1,3−ペンタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、ジフェニルエタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1−フェニル−1,3−ブタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1−フェニル−1,4−ペンタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1−フェニル−2,4−ペンタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1,2−ベンソキノンビス(O−ベンジルオキシム)、1,4−ベンゾキノンビス(O−ベンジルオキシム)、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−ベンゾキノンビス(O−ベンジルオキシム)、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ベンゾキノンビス(O−ベンジルオキシム)及び5,6,7,8−テトラクロロ−1,4−ナフトキノンビス(O−ベンジルオキシム)が挙げられる。
【0107】
O−ヒドロカルビルトリオキシムの具体例としては、2,3,4−ヘキサントリオントリス(O−メチルオキシム)、1,2,3−シクロヘキサントリオントリス(O−メチルオキシム)、1,2,4−シクロヘキサントリオントリス(O−メチルオキシム)、1,3,5−シクロヘキサントリオントリス(O−メチルオキシム)、2,4,6−ヘプタントリオントリス(O−メチルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,3,5−ペンタントリオントリス(O−メチルオキシム)、2,3,4−ヘキサントリオントリス(O−ベンジルオキシム)、1,2,3−シクロヘキサントリオントリス(O−ベンジルオキシム)、1,2,4−シクロヘキサントリオントリス(O−ベンジルオキシム)、1,3,5−シクロヘキサントリオントリス(O−ベンジルオキシム)、2,4,6−ヘプタントリオントリス(O−ベンジルオキシム)及び1,5−ジフェニル−1,3,5−ペンタントリオントリス(O−ベンジルオキシム)が挙げられる。
【0108】
O−シリルジオキシムの具体例としては、グリオキサールビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,3−プロパンジアールビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,4−ブタンジアールビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,5−ペンタンジアールビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,6−ヘキサンジアールビス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,3−ブタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,3−ペンタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,4−ペンタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,3−ヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,4−ヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,5−ヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、3,4−ヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,4−シクロヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,5−ペンタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,4−ジフェニル−1,4−ブタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1−フェニル−1,3−ペンタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、ジフェニルエタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1−フェニル−1,3−ブタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1−フェニル−1,4−ペンタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1−フェニル−2,4−ペンタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,2−ベンゾキノンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,4−ベンゾキノンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−ベンゾキノンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ベンゾキノンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、5,6,7,8−テトラクロロ−1,4−ナフトキノンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、グリオキサールビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,3−プロパンジアールビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,4−ブタンジアールビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,5−ペンタンジアールビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,6−ヘキサンジアールビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、2,3−ブタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、2,3−ペンタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、2,4−ペンタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、2,3−ヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、2,4−ヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、2,5−ヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、3,4−ヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,4−シクロヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,5−ペンタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,4−ジフェニル−1,4−ブタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1−フェニル−1,3−ペンタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、ジフェニルエタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1−フェニル−1,3−ブタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム、1−フェニル−1,4−ペンタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1−フェニル−2,4−ペンタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,2−ベンゾキノンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,4−ベンゾキノンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−ベンゾキノンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ベンゾキノンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)及び5,6,7,8−テトラクロロ−1,4−ナフトキノンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)が挙げられる。
【0109】
O−シリルトリオキシムの具体例としては、2,3,4−ヘキサントリオントリス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,2,3−シクロヘキサントリオントリス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,2,4−シクロヘキサントリオントリス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,3,5−シクロヘキサントリオントリス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,4,6−ヘプタントリオントリス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,3,5−ペンタントリオントリス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,3,4−ヘキサントリオントリス(O−トリベンジルシリルオキシム)、1,2,3−シクロヘキサントリオントリス(O−トリベンジルシリルオキシム)、1,2,4−シクロヘキサントリオントリス(O−トリベンジルシリルオキシム)、1,3,5−シクロヘキサントリオントリス(O−トリベンジルシリルオキシム)、2,4,6−へプタントリオントリス(O−トリベンジルシリルオキシム)及び1,5−ジフェニル−1,3,5−ペンタントリオントリス(O−トリベンジルシリルオキシム)が挙げられる。
【0110】
O−スルホニルジオキシムの具体例としては、グリオキサールビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,3−プロパンジアールビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,4−ブタンジアールビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,5−ペンタンジアールビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,6−ヘキサンジアールビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、2,3−ブタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、2,3−ペンタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、2,4−ペンタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、2,3−ヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、2,4−ヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、2,5−ヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、3,4−ヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,4−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,5−ペンタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,4−ジフェニル−1,4−ブタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1−フェニル−1,3−ペンタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、ジフェニルエタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1−フェニル−1,3−ブタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1−フェニル−1,4−ペンタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1−フェニル−2,4−ペンタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,2−ベンゾキノンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,4−ベンゾキノンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−ベンゾキノンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ベンゾキノンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)及び5,6,7,8−テトラクロロ−1,4−ナフトキノンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)が挙げられる。
【0111】
O−スルホニルトリオキシムの具体例としては、2,3,4−ヘキサントリオントリス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,2,3−シクロヘキサントリオントリス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,2,4−シクロヘキサントリオントリス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,3,5−シクロヘキサントリオントリス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、2,4,6−ヘプタントリオントリス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)及び1,5−ジフェニル−1,3,5−ペンタントリオントリス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)が挙げられる。
【0112】
O−アシルジオキシムの具体例としては、グリオキサールビス(O−アセチルオキシム)、1,3−プロパンジアールビス(O−アセチルオキシム)、1,4−ブタンジアールビス(O−アセチルオキシム)、1,5−ペンタンジアールビス(O−アセチルオキシム)、1,6−ヘキサンジアールビス(O−アセチルオキシム)、2,3−ブタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、2,3−ペンタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、2,4−ペンタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、2,3−ヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、2,4−ヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、2,5−ヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、3,4−ヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1,4−シクロヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,5−ペンタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1,4−ジフェニル−1,4−ブタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1−フェニル−1,3−ペンタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、ジフェニルエタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1−フェニル−1,3−ブタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1−フェニル−1,4−ペンタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1−フェニル−2,4−ペンタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1,2−ベンゾキノンビス(O−アセチルオキシム)、1,4−ベンゾキノンビス(O−アセチルオキシム)、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−ベンゾキノンビス(O−アセチルオキシム)、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ベンゾキノンビス(O−アセチルオキシム)及び5,6,7,8−テトラクロロ−1,4−ナフトキノンビス(O−アセチルオキシム)が挙げられる。
【0113】
O−アシルトリオキシムの具体例としては、2,3,4−ヘキサントリオントリス(O−アセチルオキシム)、1,2,3−シクロヘキサントリオントリス(O−アセチルオキシム)、1,2,4−シクロヘキサントリオントリス(O−アセチルオキシム)、1,3,5−シクロヘキサントリオントリス(O−アセチルオキシム)、2,4,6−ヘプタントリオントリス(O−アセチルオキシム)及び1,5−ジフェニル−1,3,5−ペンタントリオントリス(O−アセチルオキシム)が挙げられる。
【0114】
1以上の態様において、本発明で使用される保護されたポリオキシム化合物は、縮合反応を介して、2以上のアルデヒド基(即ち、−C(H))=O)を、2以上のケトン基(即ち、−C(R)=O)を又は少なくとも1つのアルデヒド基と少なくとも1つのケトン基とを含んだ化合物を含んだ化合物を、元のヒドロキシルアミン(即ち、NHOH)の水酸基(−OH)の水素原子がヒドロカルビル又はシリル基等の1価の有機基によって置き換わっているヒドロキシルアミンである、保護されたヒドロキシルアミンと反応させることによって調製され得る。典型的には、1モルのアルデヒド又はケトン基が、1モルの保護されたヒドロキシルアミンと反応し、保護されたポリオキシムである縮合産物を形成することができる。代わりに、保護されたポリオキシム化合物は、保護されていないポリオキシム化合物(即ち、元のポリオキシム化合物)をアルキル化又はシリル化することにより調製することができる。元のポリオキシム化合物は、縮合反応を介して、2以上のアルデヒド基を、2以上のケトン基を、又は少なくとも1つのアルデヒド基と少なくとも1つのケトン基とを含んだ化合物を、ヒドロキシアミンと反応させることにより調製することができる。
【0115】
重合混合物に添加され、本発明の官能化ポリマーを生じ得る保護されたポリオキシム化合物の量は、反応性ポリマーを合成するために使用される触媒又は開始剤の種類及び量、並びに、望まれる官能化の程度等を含む、種々の要因によって決定され得る。ランタニド系触媒を使用して反応性ポリマーが調製される1以上の態様において、使用される保護されたポリオキシム化合物の量は、ランタニド含有化合物のランタニド金属に関連して記載することができる。例えば、ランタニド金属に対する保護されたポリオキシム化合物のモル比は、約1:1〜約200:1、他の態様では、約5:1〜約150:1、別の態様では、約10:1〜約100:1であってよい。
【0116】
反応性ポリマーがアニオン開始剤を使用して調製されるような他の態様では、使用される保護されたポリオキシム化合物の量は、開始剤と結合する金属カチオンの量に関連して記載することができる。例えば、有機リチウム開始剤が使用される場合、リチウムカチオンに対する保護されたポリオキシム化合物のモル比は、約0.3:1〜約2:1、他の態様では、約0.6:1〜約1.5:1、別の態様では、0.8:1〜約1.2:1である。
【0117】
1以上の態様では、保護されたポリオキシム化合物に加えて、重合混合物に共官能化剤を添加して、適合した性質を有する官能化ポリマーを生成してもよい。2以上の共官能化剤の混合物を使用してもよい。共官能化剤は、保護されたポリオキシム化合物の導入の前、導入と共に又は導入後に、重合混合物に添加してもよい。1以上の態様において、共官能化剤は、保護されたポリオキシム化合物の導入の、少なくとも5分後、他の態様では、少なくとも10分後、別の態様では、少なくとも30分後に重合混合物に添加される。
【0118】
1以上の態様では、共官能化剤としては、本発明によって製造される反応性ポリマーと反応することによって、共官能化剤と反応していない成長性の鎖とは異なる官能基を有するポリマーを提供し得る化合物又は試薬が挙げられる。官能基は、他のポリマー鎖(成長性及び/又は非成長性の)、若しくは、ポリマーと組み合わせてもよい補強性充填剤(例えば、カーボンブラック)等の他の構成成分と反応性であるか、或いは、相互に作用してもよい。1以上の態様では、共官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応は、付加又は置換反応によって進行する。
【0119】
有用な共官能化剤には、2以上のポリマー鎖を結合することなく、官能基をポリマー鎖末端に単に提供するだけの化合物、及び、官能性の結合を介して、2以上のポリマー鎖を結合するか又は連結し、1つの高分子を形成することのできる化合物が含まれてもよい。共官能化剤の後者のタイプは、カップリング剤と称されてもよい。
【0120】
1以上の態様では、共官能化剤としては、ポリマー鎖にヘテロ原子を付加又は付与する化合物が挙げられる。特定の態様では、共官能化剤としては、官能基をポリマー鎖に付与し、非官能化ポリマーから調製した同様のカーボンブラック充填加硫物と比較して、官能化ポリマーから調製したカーボンブラック充填加硫物の50℃でのヒステリシスロスを低減する官能化ポリマーを形成する化合物が挙げられる。1以上の態様では、ヒステリシスロスにおけるこの低減は、少なくとも5%、他の態様では、少なくとも10%、別の態様では、少なくとも15%である。
【0121】
1以上の態様において、適切な共官能化剤としては、本発明に従い製造された反応性ポリマーと反応することのできる基を含んだ化合物が挙げられる。典型的な共官能化剤としては、ケトン、キノン、アルデヒド、アミド、エステル、イソシアネート、イソチオシアネート、エポキシド、イミン、アミノケトン、アミノチオケトン及び酸無水物が挙げられる。これらの化合物の例は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,906,706号、第4,990,573号、第5,064,910号、第5,567,784号、第5,844,050号、第6,838,526号、第6,977,281号及び第6,992,147号、米国特許出願公開第2006/0004131 A1号、第2006/0025539 A1号、第2006/0030677 A1号及び第2004/0147694 A1号、特開平05−051406 A号公報、05−059103 A号公報、10−306113 A号公報及び11−035633 A号公報に開示される。共官能化剤の他の例としては、米国出願第11/640,711号に記載のアジン化合物、米国出願第11/710,713号に開示されるヒドロベンズアミド化合物、米国出願第11/710,845号に開示されるニトロ化合物及び米国出願第60/875,484号に開示される保護されたオキシム化合物が挙げられ、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
特定の態様では、使用される共官能化剤は、金属ハライド、半金属ハライド、アルコキシシラン、金属カルボキシレート、ヒドロカルビル金属カルボキシレート、ヒドロカルビル金属エステル−カルボキシレート及び金属アルコキシドであってよい。
【0123】
典型的な金属ハライド化合物としては、スズテトラクロライド、スズテトラブロマイド、スズテトラアイオダイド、n−ブチルスズトリクロライド、フェニルスズトリクロライド、ジ−n−ブチルスズジクロライド、ジフェニルスズジクロライド、トリ−n−ブチルスズクロライド、トリフェニルスズクロライド、ゲルマニウムテトラクロライド、ゲルマニウムテトラブロマイド、ゲルマニウムテトラアイオダイド、n−ブチルゲルマニウムトリクロライド、ジ−n−ブチルゲルマニウムジクロライド及びトリ−n−ブチルゲルマニウムクロライドが挙げられる。
【0124】
典型的な半金属ハライド化合物としては、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素、三塩化リン、三臭化リン及び三ヨウ化リンが挙げられる。
【0125】
1以上の態様において、アルコキシシランは、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選択される少なくとも1つの基を含んでいてもよい。
【0126】
エポキシ基を含んだ典型的なアルコキシシラン化合物には、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリフェノキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジフェノキシシラン、[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]トリメトキシシラン及び[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]トリエトキシシランが含まれる。
【0127】
イソシアネート基を含んだ典型的なアルコキシシラン化合物としては、(3−イソシアネートプロピル)トリメトキシシラン、(3−イソシアネートプロピル)トリエトキシシラン、(3−イソシアネートプロピル)トリフェノキシシラン、(3−イソシアネートプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−イソシアネートプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−イソシアネートプロピル)メチルジフェノキシシラン及び(イソシアネートメチル)メチルジメトキシシランが挙げられる。
【0128】
典型的な金属カルボキシレート化合物としては、スズテトラアセテート、スズビス(2−エチルヘキサノアート)及びスズビス(ネオデカノアート)が挙げられる。
【0129】
典型的なヒドロカルビル金属カルボキシレート化合物としては、トリフェニルスズ2−エチルヘキサノアート、トリ−n−ブチルスズ2−エチルヘキサノアート、トリ−n−ブチルスズネオデカノアート、トリイソブチルスズ2−エチルヘキサノアート、ジフェニルスズビス(2−エチルヘキサノアート)、ジ−n−ブチルスズビス(2−エチルヘキサノアート)、ジ−n−ブチルスズビス(ネオデカノアート)、フェニルスズトリス(2−エチルヘキサノアート)及びn−ブチルスズトリス(2−エチルヘキサノアート)が挙げられる。
【0130】
典型的なヒドロカルビル金属エステル−カルボキシレート化合物としては、ジ−n−ブチルスズビス(n−オクチルマレエート)、ジ−n−オクチルスズビス(n−オクチルマレエート)、ジフェニルスズビス(n−オクチルマレエート)、ジ−n−ブチルスズビス(2−エチルヘキシルマレエート)、ジ−n−オクチルスズビス(2−エチルヘキシルマレエート)及びジフェニルスズビス(2−エチルヘキシルマレエート)が挙げられる。
【0131】
典型的な金属アルコキシド化合物としては、ジメトキシスズ、ジエトキシスズ、テトラエトキシスズ、テトラ−n−プロポキシスズ、テトライソプロポキシスズ、テトラ−n−ブトキシスズ、テトライソブトキシスズ、テトラ−t−ブトキシスズ及びテトラフェノキシスズが挙げられる。
【0132】
重合混合物に添加することのできる共官能化剤の量は、反応性ポリマーを合成するために使用される触媒又は開始剤のタイプ及び量並びに望まれる官能化の程度を含む種々の要因によって決定されてもよい。反応性ポリマーがランタニド系触媒を使用して調製される1以上の態様において、使用される共官能化剤の量は、ランタニド含有化合物のランタニド金属に関連して記載され得る。例えば、ランタニド金属に対する共官能化剤のモル比は、約1:1〜約200:1、他の態様では、約5:1〜約150:1、別の態様では、約10:1〜約100:1であってもよい。
【0133】
反応性ポリマーが、アニオン開始剤を使用して調製されるような他の態様において、使用される共官能化剤の量は、開始剤に結合する金属カチオンの量に関連して記載することもできる。例えば、有機リチウム開始剤が使用される場合、リチウムカチオンに対する共官能化剤のモル比は、約0.3:1〜約2:1、他の態様では、約0.6:1〜約1.5:1、別の態様では、0.8:1〜約1.2:1であってもよい。
【0134】
使用される共官能化剤の量は、保護されたポリオキシム化合物に関連して記載することもできる。1以上の態様では、保護されたポリオキシムに対する共官能化剤のモル比は、約0.05:1〜約1:1、他の態様では、約0.1:1〜約0.8:1、別の態様では、約0.2:1〜約0.6:1であってよい。
【0135】
1以上の態様において、保護されたポリオキシム化合物(及び任意に共官能化剤)は、重合が行われた場所(例えば、容器内)で重合混合物に導入されてもよい。他の態様では、前記保護されたポリオキシム化合物は、重合が起こったのとは別の場所で重合混合物に導入されてもよい。例えば、前記保護されたポリオキシム化合物は、下流の反応器若しくはタンクを含んだ下流の容器、インライン反応器若しくはミキサ、押出機又は液化機(devolatilizer)中の重合混合物に導入されてもよい。
【0136】
1以上の態様において、保護されたポリオキシム化合物(及び任意に共官能化剤)は、所望のモノマー転化率が達成された後で、且つ、重合混合物が失活剤(quenching agent)によって失活する前に、反応性ポリマーと反応し得る。1以上の態様において、保護されたポリオキシム化合物と反応性ポリマーとの間の反応は、ピーク重合温度に達した後30分以内、他の態様では5分以内、別の態様では1分以内に起こってよい。1以上の態様において、保護されたポリオキシム化合物と反応性ポリマーとの間の反応は、ピーク重合温度に達するとすぐに起こってもよい。他の態様では、保護されたポリオキシム化合物と反応性ポリマーとの間の反応は、反応性ポリマーを保存した後に起こってもよい。1以上の態様において、反応性ポリマーの保存は、不活性雰囲気下、室温以下の温度で行う。1以上の態様において、保護されたポリオキシム化合物と反応性ポリマーとの間の反応は、約10℃〜約150℃の温度で、他の態様では、約20℃〜約100℃で起こってもよい。保護されたポリオキシム化合物と反応性ポリマーとの間の反応を完了させるために必要な時間は、例えば、反応性ポリマーを調製するために使用される触媒又は開始剤のタイプ及び量、保護されたポリオキシム化合物のタイプ及び量、並びに官能化反応が行われる温度等、種々の要因によって決まる。1以上の態様において、保護されたポリオキシム化合物と反応性ポリマーとの間の反応は、約10〜60分間行われ得る。
【0137】
1以上の態様において、反応性ポリマーと、保護されたポリオキシム化合物と(任意に共官能化剤と)の間の反応を達成又は完了した後、反応性ポリマーと保護されたポリオキシム化合物との間の反応生成物をプロトン化し、いずれかの残存する反応性ポリマー鎖を不活性化し及び/又は触媒若しくは触媒成分を不活性化するために、失活剤を重合混合物に添加してもよい。失活剤はプロトン性化合物を含んでいてもよく、限定するものではないが、アルコール、カルボン酸、無機酸、水又はそれらの混合物が挙げられる。失活剤の添加と共に、その前に又はその後に、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等の抗酸化剤を添加してもよい。使用される抗酸化剤の量は、ポリマー生成物の0.2〜1重量%の範囲であってよい。更には、ポリマー生成物は、油をポリマーに添加して油展することができ、これは、ポリマーセメント又はモノマーに溶解若しくは懸濁したポリマーの形態であってよい。本発明の実施は、添加され得る油の量を制限せず、従って、従来の量(例えば、5〜50phr)が添加されてもよい。使用され得る有用な油又はエクステンダー(extender)としては、芳香族油、パラフィン油、ナフテン油、ヒマシ油以外の植物油、MES、TDAE及びSRAEを含む低PCA油、並びに重質ナフテン油が挙げられるが、これらに限られない。
【0138】
重合混合物が失活すると、重合混合物の種々の構成物質が回収されてもよい。1以上の態様において、未反応のモノマーを重合混合物から回収することができる。例えば、当該分野で既知の方法を使用して、重合混合物からモノマーを蒸留することができる。1以上の態様において、液化機を使用して重合混合物からモノマーを除去してもよい。重合混合物からモノマーが除去されると、当該モノマーは精製され、保存され及び/又は重合プロセスに戻されて再利用される。
【0139】
当該分野で既知の方法を使用して、ポリマー生成物を重合混合物から回収してもよい。1以上の態様において、脱溶媒及び乾燥技術を使用してもよい。例えば、ポリマーは、重合混合物を熱スクリュー装置、例えば、脱溶媒押出機等に通すことにより回収することができ、ここにおいて揮発性物質は、適切な温度(例えば、約100℃〜約170℃)、且つ、大気圧又は実質的な大気圧以下で蒸発により除去される。この処理は、未反応のモノマー及び任意の低沸点溶媒を除去する働きをする。あるいは、ポリマーは、重合混合物を蒸気脱溶媒(steam desolventization)に供し、その後、得られるポリマー小片(polymer crumb)を温風トンネル内で乾燥することによっても回収することができる。ポリマーは、重合混合物をドラム乾燥機で直接乾燥することによっても回収することができる。
【0140】
反応性ポリマーと、保護されたポリオキシム化合物と(任意に共官能化剤と)が反応して、プロトン化又は更に修飾され得る新規な官能化ポリマーを生成すると考えられているが、特に、官能化ポリマーの化学構造は、保護されたポリオキシム化合物及び任意に共官能化剤によってポリマー鎖末端に付与された残基に関連するため、全ての態様で製造される官能化ポリマーの正確な化学構造について確実にはわかっていない。実際には、官能化ポリマーの構造は、反応性ポリマーを調製するために使用される条件(例えば、触媒又は開始剤のタイプ及び量)並びに保護されたポリオキシム化合物(及び任意に共官能化剤)を反応性ポリマーと反応させるために使用される条件(例えば、保護されたポリオキシム化合物及び共官能化剤のタイプ及び量)など種々の要因によって決定することができると考えられている。
【0141】
1以上の態様において、本発明に従って調製された官能化ポリマーは、不飽和を含んでいてもよい。これら又は他の態様では、官能化ポリマーは加硫可能である。1以上の態様において、官能化ポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満、他の態様では−20℃未満、別の態様では−30℃未満であってよい。ある態様では、これらのポリマーは、単一のガラス転移温度を示してもよい。特定の態様では、ポリマーは、水素化されるか又は部分的に水素化されていてもよい。
【0142】
1以上の態様において、本発明の官能化ポリマーは、シス−1,4−結合含有率が60%を超え、他の態様では約75%を超え、別の態様では約90%を超え、別の態様では約95%を超えるシス−1,4−ポリジエンであってもよく、ここで割合は、ジエンマー(mer)単位の総数に対する、シス−1,4結合を導入したジエンマー単位の数に基づいている。また、これらのポリマーは、1,2−結合含有率が約7%未満、他の態様では5%未満、別の態様では2%未満、別の態様では1%未満であってよく、ここで割合は、ジエンマー単位の総数に対する、1,2−結合を導入したジエンマー単位の数に基づいている。残りのジエンマー単位は、トランス−1,4−結合を導入していてもよい。シス−1,4−結合、1,2−結合及びトランス−1,4結合の含有率は、赤外分光法によって決定することができる。これらのポリマーの数平均分子量(M)は、約1,000〜約1,000,000、他の態様では、約5,000〜約200,000、別の態様では、約25,000〜約150,000、別の態様では、約50,000〜約120,000であってよく、ポリスチレン標準によって較正されたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)及び対象とするポリマーのマークハウインク(Mark-Houwink)定数を使用して決定される。これらのポリマーの分子量分布又は多分散性(M/M)は、約1.5〜約5.0、他の態様では、約2.0〜約4.0であってよい。
【0143】
有利には、本発明の官能化ポリマーは、改善したコールドフロー耐性を示し、低減したヒステリシスを示すゴム組成物を提供してもよい。官能化ポリマーは、特には、タイヤ構成部品を製造するために使用され得るゴム組成物の調製に有用である。ここで使用されるゴム配合技術及び添加剤は、一般的には、ゴム技術(第2版、1973年)のゴムの混合及び加硫において開示されている。
【0144】
ゴム組成物は、官能化ポリマーを単独で又は他のエラストマー(即ち、加硫して、ゴム又はエラストマーの性質を有する組成物を形成し得るポリマー)と共に使用して調製することができる。使用され得る他のエラストマーとしては、天然ゴム及び合成ゴムが挙げられる。合成ゴムは、典型的には、共役ジエンモノマーの重合、共役ジエンモノマーと他のモノマー、例えば、ビニル置換芳香族モノマーなどとの共重合、又はエチレンと、1以上のα−オレフィンと、任意に1以上のジエンモノマーとの共重合から得られる。
【0145】
典型的なエラストマーとしては、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン−co−イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン−co−プロピレン)、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)、ポリ(スチレン−co−イソプレン)、ポリ(スチレン−co−イソプレン−co−ブタジエン)、ポリ(イソプレン−co−ブタジエン)、ポリ(エチレン−co−プロピレン−co−ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、エピクロロヒドリンゴム及びこれらの混合物が挙げられる。これらのエラストマーは、直鎖状、分岐及び星状構造を含む無数の高分子構造を有し得る。
【0146】
ゴム組成物は、充填剤、例えば、無機及び有機充填剤等を含んでいてもよい。有機充填剤の例としては、カーボンブラック及びスターチが挙げられる。無機充填剤の例としては、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク(含水ケイ酸マグネシウム)及びクレイ(含水ケイ酸アルミニウム)が挙げられる。カーボンブラック及びシリカは、タイヤの製造に使用される最も一般的な充填剤である。ある態様では、異なる充填剤の混合物が有利に使用されてもよい。
【0147】
1以上の態様において、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びランプブラックが挙げられる。カーボンブラックのより具体的な例としては、超耐摩耗性ファーネスブラック(super abrasion furnace black)、準超耐摩耗性ファーネスブラック(intermediate super abrasion furnace black)、高耐摩耗性ファーネスブラック(high abrasion furnace black)、高速押出ファーネスブラック(fast extrusion furnace black)、微細ファーネスブラック(fine furnace black)、半補強性ファーネスブラック(semi-reinforcing furnace black)、中級加工チャンネルブラック(medium processing channel black)、ハード加工チャンネルブラック(hard processing channel black)、導電性チャンネルブラック(conducting channel black)及びアセチレンブラックが挙げられる。
【0148】
特定の態様では、カーボンブラックは、表面積(EMSA)が少なくとも20m2/g、他の態様では、少なくとも35m2/gであり、表面積値は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)技術を用いるASTM D−1765により決定することができる。カーボンブラックはペレット化した形態又はペレット化されていない凝集形態であってもよい。カーボンブラックの好ましい形態は、ゴム化合物を混合するために使用される混合機のタイプによって決定されてよい。
【0149】
ゴム組成物に使用されるカーボンブラックの量は、ゴム100重量部当たり、最大で約50重量部(phr)までであり、典型的には約5〜約40phrである。
【0150】
使用され得る市販のシリカのいくつかとしては、Hi−Sil(登録商標)215、Hi−Sil(登録商標)233及びHi−Sil(登録商標)190(PPG Industries,Inc.;ピッツバーグ,ペンシルベニア)が挙げられる。市販のシリカの他の供給業者としては、Grace Davison(バルチモア,メリーランド)、Degussa Corp.(パーサイパニー,ニュージャージー)、Rhodia Silica Systems(クランブリー,ニュージャージー)及びJ.M.Huber Corp.(エジソン,ニュージャージー)が挙げられる。
【0151】
1以上の態様において、シリカはその表面積によって特徴付けられてもよく、これは、その強化特性の尺度を提供する。ブルナウアー(Brunauer)・エメット(Emmett)・テラー(Teller)(“BET”)法(J.Am.Chem.Soc,第60巻,第309頁以降に記載される)は、表面積を決定するための既知の方法である。シリカのBET表面積は、一般に450m2/g未満である。有用な表面積の範囲としては、約32〜約400m2/g、約100〜約250m2/g及び約150〜約220m2/gが挙げられる。
【0152】
シリカのpHは、一般的には約5〜約7であるか又は7をわずかに超え、他の態様では、約5.5〜約6.8である。
【0153】
シリカが充填剤として(単独で又は他の充填剤と組み合わせて)使用される1以上の態様において、シリカとエラストマーとの相互作用を強化するため、混合の間にカップリング剤及び/又は遮蔽剤をゴム組成物に添加してもよい。有用なカップリング剤及び遮蔽剤は、米国特許第3,842,111号、第3,873,489号、第3,978,103号、第3,997,581号、第4,002,594号、第5,580,919号、第5,583,245号、第5,663,396号、第5,674,932号、第5,684,171号、第5,684,172号、第5,696,197号、第6,608,145号、第6,667,362号、第6,579,949号、第6,590,017号、第6,525,118号、第6,342,552号及び第6,683,135号に開示され、これらは引用によって本明細書に組み込まれる。
【0154】
ゴム組成物において使用されるシリカの量は、約1〜約100phr、他の態様では、約5〜約80phrであってよい。有用な上限の範囲は、シリカにより付与される高い粘度によって制限される。シリカをカーボンブラックとともに使用する場合、シリカの量を約1phrまで減らすことができ、シリカの量が低下するにつれ、より少ない量のカップリング剤及び遮蔽剤を使用することができる。一般に、カップリング剤及び遮蔽剤の量は、使用されるシリカの重量に基づき、約4%〜約20%である。
【0155】
多数のゴム硬化剤(加硫剤とも称する)が使用されてよく、これには硫黄又は過酸化物系の硬化系が含まれる。硬化剤については、Kirk−Othmer,化学技術百科事典,第20巻,第365−468頁,(第3版、1982年)、特には、加硫剤及び助剤,第390−402頁、及びA.Y.Coran,加硫、ポリマー科学及び工学百科事典,(第2版、1989年)に記載され、これらは引用により本明細書に組み込まれる。加硫剤は、単独で又は組み合わせて使用してもよい。
【0156】
ゴム配合に典型的に使用される他の成分を、ゴム組成物に添加してもよい。これらには、促進剤、促進活性剤、油、可塑剤、ワックス、スコーチ防止剤、加工助剤、酸化亜鉛、粘着付与樹脂、強化用樹脂、ステアリン酸などの脂肪酸、解膠剤、並びに、酸化防止剤及びオゾン劣化防止剤などの劣化防止剤が含まれる。特定の態様では、使用される油には、上述のエクステンダー油として従来使用されるものが含まれる。
【0157】
ゴム組成物の全成分は、標準的な混合装置、例えば、バンバリー型(Banbury)又はブラベンダー型(Brabender)混合機、押出機、ニーダー及び2ロールミルによって混合することができる。1以上の態様において、成分は2段階以上で混合される。第1段階(マスターバッチ混合段階と称されることが多い)では、典型的にはゴム成分と充填剤とを含んだ所謂マスターバッチが調製される。時期尚早な加硫(スコーチとしても知られる)を防ぐため、マスターバッチは加硫剤を除外してもよい。マスターバッチは、開始温度約25℃〜約125℃で混合され、排出温度が約135℃〜約180℃であってもよい。マスターバッチが調製されると、最終混合段階において加硫剤が導入され、マスターバッチに混合されてもよく、これは典型的には、時期尚早な加硫の可能性を低減すべく比較的低温で行われる。リミル(remill)と呼ばれることもある追加の混合段階を、マスターバッチ混合段階と最終混合段階との間に任意に採用してもよい。ゴム組成物が、シリカを充填剤として含んでいる場合、1以上のリミル段階を使用することが多い。本発明の官能化ポリマーを含んだ種々の成分を、これらのリミルの間に添加してもよい。
【0158】
特にシリカを充填したタイヤ配合物に適用される混合の手順及び条件は、米国特許第5,227,425号、第5,719,207号及び第5,717,022号並びに欧州特許第890,606号に記載され、これらは全て引用により本明細書に組み込まれる。ある態様では、初期のマスターバッチは、実質的にカップリング剤及び遮蔽剤の非存在下で、本発明の官能化ポリマーと、シリカとを含ませることにより調製される。
【0159】
本発明の官能化ポリマーから調製されたゴム組成物は、タイヤの構成部品、例えば、トレッド、サブトレッド、サイドウォール、ボディプライスキム(body ply skim)及びビードフィラーなどの形成に特に有用である。好ましくは、本発明の官能化ポリマーは、トレッド及びサイドウォールの配合物に使用される。1以上の態様において、これらのトレッド又はサイドウォールの配合物は、配合物内のゴムの総重量に基づき、約10重量%〜約100重量%、他の態様では約35重量%〜約90重量%、別の態様では約50重量%〜約80重量%の官能化ポリマーを含んでいてもよい。
【0160】
ゴム組成物がタイヤの製造に使用される場合、これらの組成物は、標準的なゴム成形(shaping)、成型(molding)及び硬化技術を含む通常のタイヤ製造技術に従ってタイヤの構成部品に加工することができる。典型的には、加硫は、加硫可能な組成物を金型中で加熱することによって達成され、例えば、加硫可能な組成物は約140℃〜約180℃に加熱されてもよい。硬化された又は架橋されたゴム組成物は、加硫物と称されてもよく、これは一般的には、熱硬化性の3次元高分子網目を含んでいる。他の成分、例えば、充填剤及び加工助剤などは、架橋された網目全体に亘って均一に分散していてもよい。空気入りタイヤは、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,866,171号、第5,876,527号、第5,931,211号及び第5,971,046号で説明される通り製造することができる。
【0161】
本発明の実施について実証するため、以下の例を調製し、試験した。しかしながら、当該例は、本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。特許請求の範囲は、発明を規定する役割を果たす。
【実施例】
【0162】
例1.未修飾シス−1,4−ポリブタジエンの合成
タービンアジテーターブレードを具え、窒素パージされた2ガロンの反応器に、ヘキサン1383g及び20.6重量%の1,3−ブタジエンのヘキサン溶液3083gを添加した。4.32Mのメチルアルミノキサンのトルエン溶液7.35ml、20.6重量%の1,3−ブタジエンのヘキサン溶液1.83g、0.537Mのネオジムバーサテートのシクロヘキサン溶液0.59ml、1.0Mのジイソブチルアルミニウムヒドリドのヘキサン溶液6.67ml及び1.0Mのジエチルアルミニウムクロライドのヘキサン溶液1.27mlを混合することにより、予形成触媒を調製した。触媒を15分間熟成し、反応器に装填した。次に、反応器のジャケットの温度を65℃に設定した。触媒添加の約60分後、重合混合物を室温に冷却して、12重量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール液のイソプロパノール溶液30mlを用いて失活させた。得られたポリマーセメントを、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを5g含んだイソプロパノール12リットルを用いて凝固させ、次いで、ドラム乾燥した。得られたポリマーのムーニー粘度(ML1+4)は、1分間のウォームアップ時間及び4分間の運転時間で、Alpha Technologies社製の、大ロータ(larger rotor)を備えたムーニー粘度計を使用して、100℃で26.8と決定された。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される通り、当該ポリマーは、数平均分子量(M)が110,500、重量平均分子量(M)が222,700、分子量分布(M/M)が2.03であった。当該ポリマーの赤外分光分析は、シス−1,4−結合含有率が94.5%、トランス−1,4−結合含有率が4.9%、1,2−結合含有率が0.6%であることを示した。
【0163】
前記ポリマーのコールドフロー耐性を、スコット可塑性試験機を使用して測定した。ポリマー約2.5gを、100℃で20分間成型し、直径15mm、高さ12mmの円筒形ボタンとした。室温に冷却した後、ボタンを金型から除去し、室温でスコット可塑性試験機に設置した。試料に5kgの荷重を負荷した。8分後、残存ゲージ(即ち、試料の厚さ)を測定し、ポリマーのコールドフロー耐性の指標とした。一般的に、残存ゲージの値がより高いことは、コールドフロー耐性がより良好であることを示す。
【0164】
未修飾シス−1,4−ポリブタジエンの性質を表1にまとめる。
【0165】
【表1】

【0166】
例2.未修飾シス−1,4−ポリブタジエンの合成
タービンアジテーターブレードを具え、窒素パージされた2ガロンの反応器に、ヘキサン1631g及び22.4重量%の1,3−ブタジエンのヘキサン溶液2835gを添加した。4.32Mのメチルアルミノキサンのトルエン溶液6.10ml、22.4重量%の1,3−ブタジエンのヘキサン溶液1.27g、0.537Mのネオジムバーサテートのシクロヘキサン溶液0.49ml、1.0Mのジイソブチルアルミニウムヒドリドのヘキサン溶液5.53ml及び1.0Mジエチルアルミニウムクロライドのヘキサン溶液1.05mlを混合することにより、予形成触媒を調製した。触媒を15分間熟成し、反応器に装填した。次に、反応器のジャケットの温度を65℃に設定した。触媒添加から約72分後、重合混合物を室温まで冷却し、12重量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール液のイソプロパノール溶液30mlを用いて失活させた。得られたポリマーセメントを、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール5gを含んだイソプロパノール12リットルを用いて凝固させ、次いでドラム乾燥した。得られたポリマーの性質を表1にまとめる。
【0167】
例3.グリオキサールビス(O−トリメチルシリルオキシム)(BTMSG)で修飾したシス−1,4−ポリブタジエンの合成
タービンアジテーターブレードを具え、窒素パージされた2ガロンの反応器に、ヘキサン1553g及び21.8重量%の1,3−ブタジエンのヘキサン溶液2913gを添加した。4.32Mのメチルアルミノキサンのトルエン溶液8.08ml、21.8重量%の1,3−ブタジエンのヘキサン溶液1.73g、0.537Mのネオジムバーサテートのシクロヘキサン溶液0.65ml、1.0Mのジイソブチルアルミニウムヒドリドのヘキサン溶液7.33ml及び1.0Mのジエチルアルミニウムクロライドのヘキサン溶液1.40mlを混合することにより、予形成触媒を調製した。触媒を15分間熟成し、反応器に装填した。次いで、反応器のジャケットの温度を65℃に設定した。触媒添加から約55分後、重合混合物を室温まで冷却した。
【0168】
得られた未修飾ポリマーセメント約428g(即ち、擬リビングポリマーセメント)を、反応器から窒素パージしたボトルに移動し、その後、0.500Mのグリオキサールビス(O−トリメチルシリルオキシム)(O,O’−ビス(トリメチルシリル)グリオキシムとも称され、BTMSGと略される)のトルエン溶液5.26mlを添加した。当該ボトルを、65℃に維持した水浴中で30分間混転した。得られたポリマーセメントを、12重量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール液のイソプロパノール溶液3mlを用いて失活させ、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.5gを含んだイソプロパノール2リットルを用いて凝固させ、次いで、ドラム乾燥した。得られたBTMSG修飾ポリマーの性質を表1にまとめる。
【0169】
例4.2,3−ブタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)(BTMSDMG)で修飾したシス−1,4−ポリブタジエンの合成
2,3−ブタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)(O,O’−ビス(トリメチルシリル)ジメチルグリオキシムとも称され、BTMSDMGと略される)で修飾したシス−1,4−ポリブタジエン試料を、例3と同様の手順を用いて調製した。BTMSDMG修飾ポリマーの性質を表1にまとめる。
【0170】
例5.1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)(BTMSCyDO)で修飾したシス−1,4−ポリブタジエンの合成
1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)(BTMSCyDOと略される)で修飾したシス−1,4−ポリブタジエン試料を、例3と同様の手順を用いて調製した。BTMSCyDO修飾ポリマーの性質を表1にまとめる。
【0171】
例6.2,4−ペンタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)(BTMSPDO)で修飾したシス−1,4−ポリブタジエンの合成
2,4−ペンタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)(BTMSPDOと略される)で修飾したシス−1,4−ポリブタジエン試料を、例3と同様の手順を用いて調製した。BTMSPDO修飾ポリマーの性質を表1にまとめる。
【0172】
例7(比較例).アセトンO−トリメチルシリルオキシム(TMSAO)で修飾したシス−1,4−ポリブタジエンの合成
アセトンO−トリメチルシリルオキシム(TMSAOと略される)で修飾したシス−1,4−ポリブタジエン試料を、例3と同様の手順を用いて調製した。TMSAO修飾ポリマーの性質を表1にまとめる。
【0173】
図1では、例1〜7で合成したシス−1,4−ポリブタジエン試料のコールドフロー耐性を、ポリマーのムーニー粘度に対してプロットした。データは、同じポリマームーニー粘度で、BTMSG−、BTMSDMG−、BTMSCyDO−及びBTMSPDO−修飾シス−1,4−ポリブタジエン試料が、未修飾ポリマーよりも著しく高い残留コールドフローゲージ値を示し、従って、著しくより良好なコールドフロー耐性を示すことを示している。対照的に、TMSAO修飾シス1,4−ポリブタジエン試料は、未修飾ポリマーと比較して、コールドフロー耐性において非常にわずかな改善しか提供しない。
【0174】
例8〜14.未修飾シス−1,4−ポリブタジエンと対比したBTMSG−、BTMSDMG−、BTMSCyDO−及びBTMSPDO修飾シス−1,4−ポリブタジエンの配合評価
例1〜6で製造したシス−1,4−ポリブタジエン試料を、カーボンブラックで充填したゴム化合物の状態で評価した。加硫物の組成を表2に示し、表中、数値は、全ゴムの100重量部当たりの重量部(phr)として表されている。
【0175】
【表2】

【0176】
未硬化のゴム化合物のムーニー粘度(ML1+4)は、1分間のウォームアップ時間及び4分間の運転時間で、Alpha Technologies社製の、大ロータを備えたムーニー粘度計を使用して、130℃で決定した。加硫物のペイン効果のデータ(ΔG’)及びヒステリシスデータ(tanδ)は、動的歪み掃引試験(dynamic strain-sweep experiment)から得られ、これは、50℃、15Hz、歪み掃引0.1%〜20%で行った。ΔG’は、0.1%歪みでのG’と、20%歪みでのG’との間の差である。加硫物の物理的性質を表3にまとめる。図2において、tanδのデータは、化合物のムーニー粘度に対してプロットされている。
【0177】
【表3】

【0178】
表3及び図2に示すように、BTMSG−、BTMSDMG−、BTMSCyDO−及びBTMSPDO−修飾シス−1,4−ポリブタジエン試料は、同じ化合物ムーニー粘度において、未修飾ポリマーよりも低いtanδを示し、これは、BTMSG、BTMSDMG、BTMSCyDO又はBTMSPDOによるシス−1,4−ポリブタジエンの修飾がヒステリシスを低減することを示す。同じ化合物ムーニー粘度において、BTMSG−、BTMSDMG−、BTMSCyDO−及びBTMSPDO修飾シス−1,4−ポリブタジエン試料もまた、未修飾ポリマーよりも低いΔG’を提供し、このことは、修飾ポリマーとカーボンブラックとの間のより強い相互作用のためにペイン効果が低減されたことを示す。
【0179】
例14.未修飾ポリ(スチレン−co−ブタジエン)の合成
タービンアジテーターブレードを具え、窒素パージされた5ガロンの反応器に、ヘキサン5934g、33.5重量%のスチレンのヘキサン溶液1442g及び22.4重量%の1,3−ブタジエンのヘキサン溶液8626gを添加した。反応器に1.6Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液11.84ml及び1.6Mの2,2−ビス(2’−テトラヒドロフリル)プロパンのヘキサン溶液4.15mlを装填した。反応器のジャケットに熱水を適用することによってバッチを加熱した。一旦バッチ温度が50℃に達すると、反応器のジャケットを冷水で冷却した。
【0180】
触媒添加の90分後、得られるリビングポリマーセメント約420gを、反応器から窒素パージしたボトルへと移動し、12重量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール液のイソプロパノール溶液3mlの添加により失活させた。得られた混合物を、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.5gを含んだイソプロパノール2リットルを用いて凝固させ、次いで、ドラム乾燥した。ポリマーのH NMR分析は、ポリマーが、スチレン含有率20.7重量%及び1,2−結合(ブタジエンマー単位)55.5%を有することを示した。
【0181】
未修飾ポリ(スチレン−co−ブタジエン)のコールドフロー耐性は、スコット可塑性試験機を使用して測定した。手順は、5kgの荷重を試料に負荷した30分後に残存ゲージ(即ち、試料の厚さ)を測定したこと以外は、例1で記載したのと同様である。
【0182】
得られた未修飾ポリ(スチレン−co−ブタジエン)(SBR)の性質を表4にまとめる。
【0183】
【表4】

【0184】
例15.未修飾ポリ(スチレン−co−ブタジエン)の合成
タービンアジテーターブレードを具え、窒素パージされた2ガロンの反応器に、ヘキサン1595g、34.0重量%のスチレンのヘキサン溶液400g及び22.3重量%の1,3−ブタジエンのヘキサン溶液2440gを添加した。反応器に1.6Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液1.70ml及び1.6Mの2,2−ビス(2’−テトラヒドロフリル)プロパンのヘキサン溶液0.56mlを装填した。反応器のジャケットに熱水を適用することによってバッチを加熱した。一旦バッチ温度が50℃に達すると、反応器のジャケットを冷水で冷却した。触媒添加の約2.5時間後、重合混合物を12重量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール液のイソプロパノール溶液30mlで失活させ、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール5gを含んだイソプロパノール12リットルで凝固させ、次いで、ドラム乾燥した。得られた未修飾SBRの性質を表4にまとめる。
【0185】
例16.2,3−ブタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)(BTMSDMG)によって修飾したポリ(スチレン−co−ブタジエン)の合成
例14で合成したリビングポリマーセメント約341gを、反応器から窒素パージしたボトルに移動し、その後、0.500Mの2,3−ブタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)(BTMSDMG)のトルエン溶液0.85mlを添加した。当該ボトルを、65℃に維持した水浴中で30分間混転した。得られたポリマーセメントを、12重量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール液のイソプロパノール溶液3mlを用いて失活させ、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.5gを含んだイソプロパノール2リットルを用いて凝固させ、次いで、ドラム乾燥した。得られたBTMSDMG修飾ポリマーの性質を表4にまとめる。
【0186】
例17.ジフェニルエタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)(BTMSDPG)によって修飾したポリ(スチレン−co−ブタジエン)の合成
ジフェニルエタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)(ベンジルビス(O−トリメチルシリルオキシム)又はO,O’−ビス(トリメチルシリル)ジフェニルグリオキシムとも称され、BTMSDPGと略される)によって修飾されたポリ(スチレン−co−ブタジエン)試料を、例16と同様の手順を用いて調製した。BTMSDPG修飾ポリマーの性質を表4にまとめる。
【0187】
例18.1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)(BTMSCyDO)によって修飾したポリ(スチレン−co−ブタジエン)の合成
1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)(BTMSCyDOと略される)によって修飾されたポリ(スチレン−co−ブタジエン)試料を、例16と同様の手順を用いて調製した。BTMSCyDO修飾ポリマーの性質を表4にまとめる。
【0188】
例19.1,4−ベンゾキノンビス(O−トリメチルシリルオキシム)(BTMSQDO)によって修飾したポリ(スチレン−co−ブタジエン)の合成
1,4−ベンゾキノンビス(O−トリメチルシリルオキシム)(BTMSQDOと略される)によって修飾されたポリ(スチレン−co−ブタジエン)試料を、例16と同様の手順を用いて調製した。BTMSQDO修飾ポリマーの性質を表4にまとめる。
【0189】
図3において、例14〜19で合成したポリ(スチレン−co−ブタジエン)試料のコールドフロー耐性を、ポリマームーニー粘度に対してプロットする。データは、同じポリマームーニー粘度において、BTMSDMG−、BTMSDPG−、BTMSCyDO−及びBTMSQDO−修飾ポリ(スチレン−co−ブタジエン)試料が未修飾ポリマーよりも高い残存コールドフローゲージ値を示し、従って、より良好なコールドフロー耐性を示すことを示している。
【0190】
例20〜25.未修飾ポリ(スチレン−co−ブタジエン)と対比したBTMSDMG−、BTMSDPG−、BTMSCyDO−及びBTMSQDO−修飾ポリ(スチレン−co−ブタジエン)の配合評価
例14〜19で製造したポリ(スチレン−co−ブタジエン)試料を、カーボンブラックで充填したゴム化合物の状態で評価した。加硫物の組成を表5に示し、表中、数値は、全ゴムの100重量部当たりの重量部(phr)として表されている。
【0191】
【表5】

【0192】
加硫物のペイン効果のデータ(ΔG’)及びヒステリシスデータ(tanδ)は、動的歪み掃引試験(dynamic strain-sweep experiment)から得られ、これは、60℃、10Hz、歪み掃引0.25%〜15%で行った。ΔG’は、0.25%歪みでのG’と、15%歪みでのG’との間の差である。加硫物の物理的性質を表6にまとめる。図4において、tanδのデータは、化合物のムーニー粘度に対してプロットされている。
【0193】
【表6】

【0194】
表6及び図4に示すように、同じ化合物ムーニー粘度において、BTMSDMG−、BTMSDPG−、BTMSCyDO−及びBTMSQDO修飾ポリ(スチレン−co−ブタジエン)試料は、未修飾ポリマーよりも低いtanδを提供し、このことは、BTMSDMG、BTMSDPG、BTMSCyDO及びBTMSQDOによるポリ(スチレン−co−ブタジエン)の修飾が、ヒステリシスを低減することを示す。同じ化合物ムーニー粘度において、BTMSDMG−、BTMSDPG−、BTMSCyDO−又はBTMSQDO修飾ポリ(スチレン−co−ブタジエン)試料は、未修飾ポリマーよりも低いΔG’を提供し、このことは、修飾ポリマーとカーボンブラックとの間の相互作用のためにペイン効果が低減したことを示す。
【0195】
本発明の範囲及び精神から逸脱しない種々の修正及び変更は、当業者にとって明らかであろう。本発明は、本明細書に示す実施形態に正式に限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)モノマーを重合して反応性ポリマーを形成する工程と、
(ii)前記反応性ポリマーを、保護されたポリオキシム化合物と反応させる工程と
を含む、官能化ポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記保護されたポリオキシム化合物が、下記式I:
【化1】

[式中、各々のRは、独立して、水素原子若しくは1価の有機基であり、各々のRは、独立して、1価の有機基であり、Rは、結合若しくは2価の有機基であるか、又は、2つのRが、連結して2価の有機基を形成するか、又は、R基とR基とが連結して3価の有機基を形成する]により定義される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記保護されたポリオキシム化合物が、下記式II:
【化2】

[式中、各々のRは、独立して、1価の有機基であり、Rは、結合又は2価の有機基であり、Rは、2価の有機基である]により定義される、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記保護されたポリオキシム化合物が、下記式III:
【化3】

[式中、Rは、独立して、水素原子又は1価の有機基であり、各々のRは、独立して、1価の有機基であり、Rは、3価の有機基である]により定義される、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記保護されたポリオキシムが、O−ヒドロカルビルジオキシム、O−ヒドロカルビルトリオキシム、O−ヒドロカルビルテトラオキシム、O−シリルジオキシム、O−シリルトリオキシム、O−シリルテトラオキシム、O−スルホニルジオキシム、O−スルホニルトリオキシム、O−スルホニルテトラオキシム、O−アシルジオキシム、O−アシルトリオキシム及びO−アシルテトラオキシムからなる群より選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記O−ヒドロカルビルジオキシムが、グリオキサールビス(O−メチルオキシム)、1,3−プロパンジアールビス(O−メチルオキシム)、1,4−ブタンジアールビス(O−メチルオキシム)、1,5−ペンタンジアールビス(O−メチルオキシム)、1,6−ヘキサンジアールビス(O−メチルオキシム)、2,3−ブタンジオンビス(O−メチルオキシム)、2,3−ペンタンジオンビス(O−メチルオキシム)、2,4−ペンタンジオンビス(O−メチルオキシム)、2,3−ヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、2,4−ヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、2,5−ヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、3,4−ヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、1,4−シクロヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−メチルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,5−ペンタンジオンビス(O−メチルオキシム)、1,4−ジフェニル−1,4−ブタンジオンビス(O−メチルオキシム)、1−フェニル−1,3−ペンタンジオンビス(O−メチルオキシム)、ジフェニルエタンジオンビス(O−メチルオキシム)、1−フェニル−1,3−ブタンジオンビス(O−メチルオキシム)、1−フェニル−1,4−ペンタンジオンビス(O−メチルオキシム)、1−フェニル−2,4−ペンタンジオンビス(O−メチルオキシム)、1,2−ベンソキノンビス(O−メチルオキシム)、1,4−ベンゾキノンビス(O−メチルオキシム)、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−ベンゾキノンビス(O−メチルオキシム)、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ベンゾキノンビス(O−メチルオキシム)、5,6,7,8−テトラクロロ−1,4−ナフトキノンビス(O−メチルオキシム)、グリオキサールビス(O−ベンジルオキシム)、1,3−プロパンジアールビス(O−ベンジルオキシム)、1,4−ブタンジアールビス(O−ベンジルオキシム)、1,5−ペンタンジアールビス(O−ベンジルオキシム)、1,6−ヘキサンジアールビス(O−ベンジルオキシム)、2,3−ブタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、2,3−ペンタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、2,4−ペンタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、2,3−ヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、2,4−ヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、2,5−ヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、3,4−ヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1,4−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,5−ペンタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1,4−ジフェニル−1,4−ブタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1−フェニル−1,3−ペンタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、ジフェニルエタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1−フェニル−1,3−ブタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1−フェニル−1,4−ペンタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1−フェニル−2,4−ペンタンジオンビス(O−ベンジルオキシム)、1,2−ベンソキノンビス(O−ベンジルオキシム)、1,4−ベンゾキノンビス(O−ベンジルオキシム)、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−ベンゾキノンビス(O−ベンジルオキシム)、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ベンゾキノンビス(O−ベンジルオキシム)及び5,6,7,8−テトラクロロ−1,4−ナフトキノンビス(O−ベンジルオキシム)からなる群より選択される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記O−ヒドロカルビルトリオキシムが、2,3,4−ヘキサントリオントリス(O−メチルオキシム)、1,2,3−シクロヘキサントリオントリス(O−メチルオキシム)、1,2,4−シクロヘキサントリオントリス(O−メチルオキシム)、1,3,5−シクロヘキサントリオントリス(O−メチルオキシム)、2,4,6−ヘプタントリオントリス(O−メチルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,3,5−ペンタントリオントリス(O−メチルオキシム)、2,3,4−ヘキサントリオントリス(O−ベンジルオキシム)、1,2,3−シクロヘキサントリオントリス(O−ベンジルオキシム)、1,2,4−シクロヘキサントリオントリス(O−ベンジルオキシム)、1,3,5−シクロヘキサントリオントリス(O−ベンジルオキシム)、2,4,6−ヘプタントリオントリス(O−ベンジルオキシム)及び1,5−ジフェニル−1,3,5−ペンタントリオントリス(O−ベンジルオキシム)からなる群より選択される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記O−シリルジオキシムが、グリオキサールビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,3−プロパンジアールビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,4−ブタンジアールビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,5−ペンタンジアールビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,6−ヘキサンジアールビス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,3−ブタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,3−ペンタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,4−ペンタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,3−ヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,4−ヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,5−ヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、3,4−ヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,4−シクロヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,5−ペンタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,4−ジフェニル−1,4−ブタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1−フェニル−1,3−ペンタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、ジフェニルエタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1−フェニル−1,3−ブタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1−フェニル−1,4−ペンタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1−フェニル−2,4−ペンタンジオンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,2−ベンゾキノンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,4−ベンゾキノンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−ベンゾキノンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ベンゾキノンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、5,6,7,8−テトラクロロ−1,4−ナフトキノンビス(O−トリメチルシリルオキシム)、グリオキサールビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,3−プロパンジアールビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,4−ブタンジアールビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,5−ペンタンジアールビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,6−ヘキサンジアールビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、2,3−ブタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、2,3−ペンタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、2,4−ペンタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、2,3−ヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、2,4−ヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、2,5−ヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、3,4−ヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,4−シクロヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,5−ペンタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,4−ジフェニル−1,4−ブタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1−フェニル−1,3−ペンタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、ジフェニルエタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1−フェニル−1,3−ブタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1−フェニル−1,4−ペンタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1−フェニル−2,4−ペンタンジオンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,2−ベンゾキノンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、1,4−ベンゾキノンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−ベンゾキノンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ベンゾキノンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)及び5,6,7,8−テトラクロロ−1,4−ナフトキノンビス(O−トリフェニルシリルオキシム)からなる群より選択される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記O−シリルトリオキシムが、2,3,4−ヘキサントリオントリス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,2,3−シクロヘキサントリオントリス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,2,4−シクロヘキサントリオントリス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,3,5−シクロヘキサントリオントリス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,4,6−ヘプタントリオントリス(O−トリメチルシリルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,3,5−ペンタントリオントリス(O−トリメチルシリルオキシム)、2,3,4−ヘキサントリオントリス(O−トリベンジルシリルオキシム)、1,2,3−シクロヘキサントリオントリス(O−トリベンジルシリルオキシム)、1,2,4−シクロヘキサントリオントリス(O−トリベンジルシリルオキシム)、1,3,5−シクロヘキサントリオントリス(O−トリベンジルシリルオキシム)、2,4,6−へプタントリオントリス(O−トリベンジルシリルオキシム)及び1,5−ジフェニル−1,3,5−ペンタントリオントリス(O−トリベンジルシリルオキシム)からなる群より選択される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項10】
前記O−スルホニルジオキシムが、グリオキサールビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,3−プロパンジアールビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,4−ブタンジアールビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,5−ペンタンジアールビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,6−ヘキサンジアールビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、2,3−ブタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、2,3−ペンタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、2,4−ペンタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、2,3−ヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、2,4−ヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、2,5−ヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、3,4−ヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,4−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,5−ペンタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,4−ジフェニル−1,4−ブタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1−フェニル−1,3−ペンタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、ジフェニルエタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1−フェニル−1,3−ブタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1−フェニル−1,4−ペンタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1−フェニル−2,4−ペンタンジオンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,2−ベンゾキノンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,4−ベンゾキノンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−ベンゾキノンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ベンゾキノンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)及び5,6,7,8−テトラクロロ−1,4−ナフトキノンビス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)からなる群より選択される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項11】
前記O−スルホニルトリオキシムが、2,3,4−ヘキサントリオントリス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,2,3−シクロヘキサントリオントリス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,2,4−シクロヘキサントリオントリス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、1,3,5−シクロヘキサントリオントリス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)、2,4,6−ヘプタントリオントリス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)及び1,5−ジフェニル−1,3,5−ペンタントリオントリス(O−ベンゼンスルホニルオキシム)から成る群より選択される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項12】
前記O−アシルジオキシムが、グリオキサールビス(O−アセチルオキシム)、1,3−プロパンジアールビス(O−アセチルオキシム)、1,4−ブタンジアールビス(O−アセチルオキシム)、1,5−ペンタンジアールビス(O−アセチルオキシム)、1,6−ヘキサンジアールビス(O−アセチルオキシム)、2,3−ブタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、2,3−ペンタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、2,4−ペンタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、2,3−ヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、2,4−ヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、2,5−ヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、3,4−ヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1,2−シクロヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1,4−シクロヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1,5−ジフェニル−1,5−ペンタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1,4−ジフェニル−1,4−ブタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1−フェニル−1,3−ペンタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、ジフェニルエタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1−フェニル−1,3−ブタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1−フェニル−1,4−ペンタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1−フェニル−2,4−ペンタンジオンビス(O−アセチルオキシム)、1,2−ベンゾキノンビス(O−アセチルオキシム)、1,4−ベンゾキノンビス(O−アセチルオキシム)、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−ベンゾキノンビス(O−アセチルオキシム)、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ベンゾキノンビス(O−アセチルオキシム)及び5,6,7,8−テトラクロロ−1,4−ナフトキノンビス(O−アセチルオキシム)からなる群より選択される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項13】
前記O−アシルトリオキシムが、2,3,4−ヘキサントリオントリス(O−アセチルオキシム)、1,2,3−シクロヘキサントリオントリス(O−アセチルオキシム)、1,2,4−シクロヘキサントリオントリス(O−アセチルオキシム)、1,3,5−シクロヘキサントリオントリス(O−アセチルオキシム)、2,4,6−ヘプタントリオントリス(O−アセチルオキシム)及び1,5−ジフェニル−1,3,5−ペンタントリオントリス(O−アセチルオキシム)からなる群より選択される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項14】
前記モノマーが、共役ジエンモノマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項15】
前記重合する工程が、ランタニド系触媒を使用する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記重合する工程が、アニオン開始剤を使用する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−515153(P2013−515153A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546135(P2012−546135)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061476
【国際公開番号】WO2011/079106
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】