説明

ポリオレフィンからなる剥離フィルム及びそのフィルムの使用

少なくとも単層のフィルム構造体からなり、その中にベースフィルムが存在し、場合によって、そのベースフィルム上に更なる層があり、その際に該フィルム構造体上に少なくとも片面に剥離層が設けられている剥離フィルムであって、前記ベースフィルムが、0.86〜0.89g/cm3の密度と、少なくとも105℃の微結晶融点とを有するエチレンポリマーA、及び少なくとも0.90g/cm3の密度を有するエチレンポリマーBを含むことを特徴とする、前記剥離フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも単層のフィルム構造体からなり、該層の少なくとも片面上に剥離層が設けられた剥離フィルムに関する。
【0002】
片面又は両面に接着剤が被覆された接着テープは、製造工程の最後には大部分がアルキメデスの螺旋の形態のロールを形成するように巻き取られる。両面粘着性の接着テープの場合には、接着剤が相互に接触するのを防ぐために、又は片面粘着性の接着テープの場合には、支持体の背面上に露出している接着剤面が粘着するのを防ぐために、露出している接着剤上にカバー材料をラミネートし、それから接着テープと一緒に巻き取る。そのようなカバー材料は当業者にはライナーとして知られている。片面又は両面粘着性の接着テープのカバー材料のほかに、ライナーはラベルを覆うのにも使用される。
【0003】
ライナー(剥離紙、剥離フィルム)は、接着テープやラベルの構成部材ではなく、接着テープ又はラベルを製造又は保管するための補助手段でしかないか、又は接着テープ/ラベルを二次加工するための、例えば、ダイカット加工(Stanzverfahren)における補助手段として役に立つ。更に、接着テープ支持体とは対照的に、ライナーは接着剤層とは強く接合させない。
【0004】
一般に、ライナーは剥離紙(片面又は両面にシリコーン被膜を有する紙)である。
【0005】
シリコーン被膜を有するポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリエチレンフィルムも小規模に使用されている。フィルムをベースとするライナーは、−特にポリオレフィンフィルムは、インフレーション押出成形(Blasfolienextrusion)又はフラットフィルム押出成形(Flachfolienextrusion)によって製造され−自己接着性製品の当業者からは剥離フィルムと呼ばれる。
【0006】
ライナーは、接着テープの製造プロセス(感圧接着剤のライナー上への被覆、乾燥、乾燥した接着剤の支持上への転写、及びライナーの除去)において使用されている。ライナーは、(例えば、両面接着テープの場合に)保管するのにも役立つ。ライナーは、感圧接着剤層を覆い、そして使用における貼付け前に取り除かれる。
【0007】
二次加工(いわゆる“コンバーティングアプリケーション(Converting−Anwendungen))の範囲における多くの用途、例えばダイカットの製造には剥離紙を使用することはできない。というのは、湿度が変動する場合、剥離紙は寸法安定的には挙動せず、そして更に、厚さの許容誤差がしばしば高すぎるからである。それ以外に、ダイカット工程後に、剥離紙由来の紙繊維が接着テープの切断端に付着し、これがダイカット(Stanzlings)の衛生用途及び電子用途、例えば、フラットパネルスクリーン又は携帯電話を組み立てるためのダイカットには受け入れられない。
【0008】
そのような用途には、今日では、50又は75μm厚のシリコーン処理されたポリエステルフィルムが使用されている。これは、上述の剥離紙の欠点を確かに示さないが、比較的高価であり、実際には無色でしか得られない。
【0009】
ライナーを備えた両面粘着性の接着テープを巻き出しそして露出した、すなわちライナーのない粘着剤側を平らでない下地(例えば、湾曲した又はエンボス加工された表面、管、又は条溝やリベットを有する金属板)上に貼付ける場合には、一般に該テープはしわを生じること無しに貼付すること(applizieren)ができない。
【0010】
しわを生ずること無く貼付することを可能にするためには、接着テープも、ライナーも伸長可能でなくてはならず、したがって、平らでない下地上へ貼付けるには、なかんずく柔軟で伸張可能なポリエチレン(LDPE)からなるライナーが使用される。ただし、これは二つの重大な弱点を有する。
【0011】
一つには、シリコーンは、ライナー上に塗布する間に、(ベースフィルムの低い軟化点を原因とする)必然的に要求される低い温度に起因して、完全に硬化せず、これは、低分子量のシリコーンがライナー表面上に残り、そしてその後感圧接着剤上に転写されることで、その上にある感圧接着剤の粘着力が低下するという結果を招く。そのほかに、剥離フィルムを接着剤で直接被覆させることはできないため、接着剤層又は複数の接着剤層を、最初に補助ライナー(例えば、シリコーン処理されたポリエステルフィルム)上に設け、そしてそれからラミネーションによりLDPE−ライナー上に転写させなければならない。この工程は作業に手間がかかるだけでなく、それに加えて、補助ライナーが廃棄物として付随的に発生する。
【0012】
溶媒系の感圧接着剤は、溶媒への敏感さ及び熱耐性ためにPEフィルムに直接被覆することができない。ホットメルト型の感圧接着剤被膜の場合、予期せぬ機械の停止時に、剥離フィルムが完全に溶融し、これは望ましくない引裂を招く。
【0013】
上記の欠点に対処するために、ポリエチレンの温度耐性を高めることができる、すなわち、MDPE又はHDPEのようなより密度の高い原料が使用されるが、不都合なことに、それによって要求される伸張性が僅かな値まで低減してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第10145229A1号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】D. StatasによるHandbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology(3. Auflage, 1999, Van Nostrand Reinhold)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、良好に伸長可能で、剥離コーティングでも、感圧接着剤による直接コーティングでも十分な耐熱性を示し、かつ、上述した従来技術の欠点を示さない、剥離フィルムを提供することである。
【0017】
当業者には驚くべきことであり、そして予見不能なことに、上記の課題は、独立請求項によってより詳しく特徴付けられる剥離フィルムによって解決される。従属請求項には、本発明の有利な実施形態が記載されている。そのほかに、本発明による剥離フィルムの使用も本発明の思想に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
それゆえ、本発明は、少なくとも一層のフィルム構造体からなり、そのフィルム構造体中にはベースフィルムが存在し、場合によってそのベースフィルム上に別の層があり、その際に上記のフィルム構造体上には少なくともその片面上に剥離層が設けられている、剥離フィルムに関する。
【0019】
ベースフィルムは、0.86〜0.89g/mの密度及び少なくとも105℃の微結晶融点を有するエチレンポリマーA、並びに少なくとも0.90g/mの密度を有するエチレンポリマーBを含む。
【0020】
本発明によれば、エチレンポリマーという用語は、重量的な主要成分がエチレンからなる、ホモポリマー又はコポリマーであると理解される。
【0021】
剥離層あるいは複数の剥離層は、フィルム構造体の外側にある面を覆う。
【0022】
本発明の好ましい一実施形態によれば、エチレンポリマーAの割合は、ベースフィルム中のポリエチレンポリマーの全量に対して20〜80重量%である。
【0023】
好ましくは、ベースフィルムは、エチレンポリマーAとエチレンポリマーBだけからなり、そしてさらに好ましくは、そのとき、ベースフィルムは1:4〜4:1の比率の二つのポリエチレンポリマーA及びBの混合物を有する。
【0024】
エチレンベースのアイオノマーの使用は、ベースフィルムの手で引き裂ける性質(Handeinreissbarkeit)を向上させる。これは、明らかに低下されたエルメンドルフ引裂強さ(ASTM D 1922)の値にも現れる。それ故に、本発明の別の好ましい実施形態によれば、ベースフィルムはエチレン含有アイオノマーを含有する。
【0025】
このようにして、本発明による剥離フィルムで被覆した接着テープは、この接着テープを使用するときに手で長さを短くすることができ、すなわち、ナイフや鋏を使用せずに済ますことができる。
【0026】
本発明の剥離フィルムのMD(機械方向)における機械特性は、好ましくは次の範囲内である:
10%伸び時の力が、3〜30N/cm、好ましくは7〜18N/cm、
50〜800%、好ましくは200〜400%の破断点伸び率、及び/又は
10〜50N/cm、好ましくは15〜35N/cmの範囲内の破断力
【0027】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、フィルム構造体の厚さは45〜200μm、好ましくは75〜125μmである。
【0028】
フィルム構造体は、片面、好ましくは両面上に、剥離層を有する。そのためには、公知の剥離剤(場合によって、別のポリマー類と混合させた)が考慮される。例としては、ステアリル化合物類(例えば、ポリビニルステアリルカルバメート、Cr又はZrのような遷移金属のステアリル化合物、ポリエチレンイミン及びからなる尿素類)、ポリシロキサン類(例えば、ポリウレタン又はポリ尿素とのコポリマーとして、又はポリオレフィンに基づくグラフトコポリマーとして)、熱可塑性フッ素化重合体である。好ましくは、放射線、縮合、あるいは付加によって架橋されたポリシロキサン類である。特に好ましくは、白金含有触媒の存在下でメチル水素シロキサンと架橋されたビニルポリジメチルシロキサンである。
【0029】
剥離層は、コーティング法により設けることができ、本発明により、剥離層をフィルム構造体と共に共押出しすることもできる。
【0030】
溶媒含有の剥離溶液の場合、剥離層の塗布量は、好ましくは、0.2〜0.8g/mの範囲内である。剥離剤が溶剤無しで塗布される場合、その塗布量は、好ましくは、1.0〜3g/mの範囲内である。
【0031】
剥離層を設けるべきフィルム構造体のフィルム面は、表面へ良好に粘着するよう前処理することが好ましい。この前処理は、気相(例えば、フッ素含有ガス)からの化学コーティング又は処理により、又は物理的方法、例えば火炎処理又はプラズマ処理、及びとりわけコロナ処理により行うことができる。
【0032】
さらに好ましくは、ベース層(好ましくは内部層)と比較してより高い結晶化度を有するポリマーからなる正確に一つまたは好ましくは両面に共押出しされた二つの外側層がベース層上に存在し、これは剥離フィルムを巻きつける際のこれのブロッキングを防ぐ。したがって、外側層は、剥離層又は複数の剥離層の下に、つまりベースフィルムと剥離フィルムとの間に配置される。
【0033】
(複数の)外側層としては、少なくとも0.90g/cm3、好ましくは少なくとも0.92g/cm3の密度を有するポリエチレン、及び場合により充填剤(抗ブロッキング剤)を使用するのが好ましい。外側層のさらなる構成成分は、手で引き裂ける性質を向上させるためのPE−アイオノマーであることができる。通常、(複数の)外側層の厚さは、中核層、すなわち、フィルム構造体の厚さの約5〜20%である。
【0034】
エチレンポリマーAの曲げ弾性率が90MPa未満であり、そして同時に、エチレンポリマーBの曲げ弾性率が少なくとも90MPaである場合が、本発明として好ましい。
【0035】
エチレンポリマーA及びエチレンポリマーBの好ましいメルトインデックスは、いずれも10g/10分未満である。
【0036】
エチレンポリマーAの密度が0.86〜0.88g/cm3であり、及び/又は微結晶融点が少なくとも115℃である場合に有利であることが判明した。エチレンポリマーAの密度が0.86〜0.87g/cm3であることが特に有利である。
【0037】
エチレンポリマーAが、C〜C10−オレフィン、特に1−オクテンをコモノマーとして含むのがさらに好ましい。
【0038】
エチレンポリマーAのメルトインデックスが2〜10g/10分であることが特に好ましい。
【0039】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、エチレンポリマーBの密度は、少なくとも0.92g/cm3、好ましくは0.94g/cm3である。
【0040】
エチレンポリマーBの例は、LLDPE、HDPE、MDPE、メタロセン−PE、EVA、EBA及びEMA、特に好ましくはMDPE及びHDPEである。幅広い、あるいは二峰性の分子量分布を有するエチレンポリマーも好ましい。それらポリマーの融解安定性に基づき、非常に安定したインフレーション工程が達成される。
【0041】
エチレンポリマーA及びエチレンポリマーBの製造時には、更なるポリオレフィン又は慣用の添加剤、例えば充填材、顔料、老化防止剤、核形成剤、衝撃改質剤、又は滑剤を使用できる。
【0042】
フィルム構造体は、あるいはそれが一層型である場合にはベースフィルムは、両方とも剥離フィルムを製造するためのベースとして使用され、カレンダー法により、又は、好ましくは押出法、特にインフレーション押出法により製造することができる。
【0043】
フィルム構造体が製造機械を離れる方向を機械方向(Maschinenrichtung)と称する。剥離フィルムが後にダイカットされたり切片に切断されて存在したりしている場合でも、装置方向はなおも一義的に固定されかつ測定可能である。
【0044】
本発明の剥離フィルムは、ラベル又は接着テープを製造するのに使用できる。
【0045】
上記のフィルムは、両面粘着性の感圧接着剤でコーティングまたはラミネートできる(いわゆる支持体無し接着テープ)。本発明の剥離フィルムで被覆できる接着テープは、支持体、例えば、薄紙(ティッシュペーパー)、フィルム、織物、ポリオレフィンフォーム又は不織布を追加的に含むことができる。
【0046】
接着テープは両面接着性であることが好ましく、そして特に好ましくは、薄紙、不織布又は発泡体からなる支持体を含む。
【0047】
適当な感圧接着剤は、D. StatasによるHandbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology (3. Auflage, 1999, Van Nostrand Reinhold)(非特許文献1)に記載されている。とりわけ、アクリレート、天然ゴム、熱可塑性スチレンブロックコポリマー、ポリイソブチレン又はシリコーンをベースとする感圧接着剤が適している。好ましくは、アクリレート系感圧接着剤であり、これは分散液、ホットメルトとして、又は溶液から塗布できる。その特性を最適化するために、使用される自己接着剤は、一種又はそれより多くの添加剤、例えば、粘着性付与剤(樹脂類)、可塑剤、充填剤、顔料、UV吸収剤、光安定剤、老化防止剤、架橋剤、架橋促進剤又はエラストマーと混合することができる。接着剤層は、熱線又は高エネルギー放射線によって架橋させることができる。
【0048】
接着テープ支持体上の接着剤のコート厚は、一面あたり、好ましくは、18〜200g/m2、特に40〜120g/m2の範囲内である。接着テープが支持体を有さない場合、剥離フィルム上の接着剤のコート厚は、好ましくは36〜400g/m2、特に80〜240g/m2の範囲内である。
【0049】
一般的な表現である“接着テープ”は、本発明の目的において、二次元に延びたフィルム又はフィルム断片、延びた長さと限られた幅を有するテープ、テープ断片、ダイカット、ラベル及びこれらの類似物などの全ての平坦な構造物を包含する。
【0050】
本発明の剥離フィルムは、接着剤をその剥離フィルムで覆った両面接着テープを巻きほどき、そして剥離フィルムと一緒に、露出した接着剤面で平らでない下地上に貼り付ける場合に特に有利である。それらの機械特性に基づいて、該接着テープは、しわが生じることなく貼付できる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
試験法
測定は、23±1℃及び50±5%の空気相対湿度の試験環境で行う。
【0052】
ポリマーの密度は、ISO 1183に従って求め、g/cmで表す。
【0053】
メルトインデックスは、ISO 1133に従い、190℃及び2.16kgで試験し、g/10分で表す。
【0054】
微結晶融点(Tcr)は、ISO 3146に従って、薄層クロマトグラフィー(DSC)により10℃/分の加熱速度で求める。
【0055】
曲げ弾性率(flexural modulus)は、ASTM D 790(2%の伸び時の割線係数)に従って測定することができる。
【0056】
剥離フィルムの引張り伸び挙動は、DIN EN ISO 527−3/2/300に従って、タイプ2の試験片(150mm長及び(できれば)15mm幅の矩形の試験ストリップ)を用いて、300mm/分の試験速度、100mmのクランプ留め長さ、及び0.3N/cmのプレテンション力でもって測定し、その際、データを求めるための試料は鋭利な刃物で切断する。
【0057】
引張り伸び挙動は、機械方向(MD、走行方向)で試験する。力は、N/ストリップ幅(cm)で表し、そして破断点伸び率は%で表す。
【0058】
破断力、破断点伸び、及び引張衝撃強度(長手方向で測定)が本質的な影響を与える場合でも、手で引き裂ける性質は数値で表すのが困難である。剥離フィルムは、親指先端と人差し指先端との二組の対の間で横断方向に二つに引き裂き、また適用終了後にも長手方向にも勢い良く引き裂く。
【0059】
評価:
++ = 良好
+ = まだ加工可能
− = 加工困難
−− = 高い力を投入した場合にのみ引き裂くことができ、末端はきれいではない
【0060】
フィルム構造体のブロッキングの評価は、23℃での4週間の保管後に行う。フィルムの引き剥がしが次のいずれであるかを試験する。
容易(+)
困難(0)又は
不可能(−)
【0061】
剥離フィルムのフィルム構造体の厚さはDIN 53370に従って求める。
【0062】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0063】

内容:
実施例の説明
実施例の結果の表による一覧
比較例の説明
比較例の結果の表による一覧
【0064】
実施例1
インフレーションフィルム装置(Blasfolienanlage)で次の処方構成を有するフィルムを製造する。(そのとき、フィルム中の層構造は1、2、3である。)
【0065】

【0066】

【0067】
層3、18μm:
層1と同様
【0068】
層2は、本発明による組成を有する。
【0069】
得られるフィルム構造体は、両面をコロナ処理し、そして引き続き4週間、23℃で保管する。巻きほどく際のブロッキングについて試験する。
【0070】
引き続き、上記のフィルム構造体を、次の成分からなる混合物の溶液でそれぞれ被覆する。
・96.5重量部のDehesive 914(Wacker Silicones製のビニルポリジメチルシロキサン)、
・2.5重量部のCrosslinker V24(Wacker Silicones製のメチル水素ポリシロキサン)及び
・1重量部のCatalyst OL(Wacker Silicones製のポリジメチルシロキサン中の触媒)
そして、被膜は引き続いて熱路中で硬化させる。
【0071】
それに続いて、完成した剥離フィルムをアクリレート系ホットメルト接着剤で、具体的には100g/m2の塗布量で被覆するが、その際、該アクリレート系ホットメルト接着剤は、次の組成を有する:
8kgのアクリル酸
48kgのNTBAM(N−t−ブチルアクリルアミド)
8kgの無水マレイン酸
368kgの2−エチルヘキシルアクリレート
368kgのn−ブチルアクリレート
600kgのアセトン/イソプロパノール(97:3)
400g+400gのVazo 67(登録商標)(DuPont社からの2,2’−アゾ−ビス(2−エチルプロピオン酸ニトリル)
【0072】
この接着剤を製造する正確な方法は、ドイツ特許出願公開第10145229A1号(特許文献1)の実施例から知ることができる。
【0073】
引き続き、15g/m2の薄紙(Tissue)(豊田通商株式会社(Toyota Tsuho Corporation)からのTSテープ紙)を接着剤層にラミネートし、そして全部を巻き取ってロールにする。
【0074】
第二の作業工程において、この前駆体材料を巻きほどき、そして同様に、感圧接着剤で新たに被覆するが、この工程では薄紙の接着剤の無い面上に被覆し、それから巻いてマスターロール(Mutterrolle)にし、そして切断する。
【0075】
巻きほどいた接着テープは、剥離フィルムカバーと一緒に、露出接着剤面で、平らでない表面上にしわが生ずることなく貼り付ける(applizieren)ことができる。
【0076】
実施例2
33重量%のIN FUSE D9507及び67重量%のLD 251から、インフレーションフィルム装置(Blasforienanlage)で150μmの厚さのフィルムを製造する。得られたベースフィルムは、その両面をコロナ処理し、そして引き続き23℃で4週間保管する。巻きほどく際のブロッキングを試験する。
【0077】
引き続き、フィルムを、次の成分:
96.8重量部のSL 6670(白金触媒を有するビニルポリジメチルシロキサン、GE Silicones)及び、
3.2重量部のSS 4300 C(メチル水素ポリシロキサン、GE Silicones)
からなる混合物の溶液でそれぞれ被覆し、そしてその被膜を引き続き熱路中で硬化させる。
【0078】
完成した剥離フィルム上に、接着剤としてアクリレート溶媒系接着剤、例えば、Rikidyne BDF 505(Sankyo Chemical)を、Desmodur Z 4470 MPA/X(Bayer MaterialScience社の脂肪族ポリイソシアネート)を添加して(詳しくは、乾燥含量で計算して接着剤100重量部当たり1重量部)、50g/m2で塗布する。
【0079】
この接着剤上に、LDPEフィルム(LDPE Film 16000 red 100、単位面積当たりの重量15g/m2、製造業者Huhtamaki)をラミネートする。
【0080】
第二の作業工程において、この前駆体材料を巻きほどき、そして接着剤で新たに被覆するが、この工程ではLDPEフィルムの接着剤の無い面上に被覆し、それから巻いてマスターロールにし、そして切断する。
【0081】
巻きほどいた接着テープは、剥離フィルムカバーと一緒に、露出接着面で、平らでない表面上にしわが生じることなく貼り付けることができる。
【0082】
実施例の特性
【表1】

【0083】
比較例1
実施例1に従って製造するが、IN FUSE D9507に代わりにHostalen GD9555を使用する。
【0084】
得られた接着テープは、しわが生ずることなく平らでない下地上に貼り付けることができない。
【0085】
比較例2
実施例2に従ってベースフィルムを製造するが、LD 251の代わりにIN FUSE D9507を使用する。
【0086】
フィルムは、出来たての状態においてさえも、すでに巻き取ることが難しい。
【0087】
比較例3
実施例2に従ってベースフィルムを製造するが、LD 251及びIN FUSE D9507に代えてExact 0203(DexPlastomersからのエチレン及びオクテンからなる軟性のLLDPEであり、密度0.902g/cm3、メルトインデックス3g/10分、曲げ弾性率70MPa、微結晶融点95℃)を使用する。
【0088】
フィルムは、出来たての状態においてさえも、すでに巻き取ることが難しい。
【0089】
比較例4
剥離フィルムとして、HuhtamakiのLDPEフィルム(LDPEフィルム 16000 red 100)を使用する。被覆は実施例1と同様に行う。
【0090】
停止時に、フィルムは融解により裂ける。実施例2と同様の被覆の際に、剥離フィルムは著しく縮み、そして生成物は、第一の接着剤被覆後にはすでに著しく起伏している。乾燥温度を低下させる場合、接着剤被膜は十分に乾燥しない。
【0091】
比較例の特性
【表2】

【0092】
本発明による剥離フィルムは、剥離紙、延伸された剥離フィルム、又はポリエチレン系剥離フィルムの上述した欠点を有さない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも単層のフィルム構造体からなり、その中にベースフィルムが存在し、場合によって、そのベースフィルム上に更なる層があり、その際に該フィルム構造体上に少なくとも片面に剥離層が設けられている剥離フィルムであって、
前記ベースフィルムが、0.86〜0.89g/cm3の密度と、少なくとも105℃の微結晶融点とを有するエチレンポリマーA、及び少なくとも0.90g/cm3の密度を有するエチレンポリマーBを含むことを特徴とする、前記剥離フィルム。
【請求項2】
エチレンポリマーAの割合が、前記ベースフィルム中のポリエチレンポリマーの全量に基づいて20〜80重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項3】
前記ベースフィルムが、前記エチレンポリマーAとエチレンポリマーBとだけからなり、かつ、そのとき、好ましくは、二つのポリエチレンポリマーAとBの比率が1:4〜4:1であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の剥離フィルム。
【請求項4】
前記ベースフィルムがエチレン含有アイオノマーを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の剥離フィルム。
【請求項5】
MD(機械方向)における前記剥離フィルムの機械特性が、次の範囲:
・10%伸び時の力が、3〜30N/cm、好ましくは7〜18N/cm、
・50〜800%、好ましくは200〜400%の破断点伸び率、及び/又は
・10〜50N/cm、好ましくは15〜35N/cmの範囲内の破断力
であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の剥離フィルム。
【請求項6】
前記フィルム構造体の厚さが45〜200μm、好ましくは75〜125μmであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の剥離フィルム。
【請求項7】
前記剥離フィルムのブロッキングを防ぐ、正確に一つまたは好ましくは両面に二つの共押出された外側層が前記ベース層上に存在することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の剥離フィルム。
【請求項8】
前記エチレンポリマーAの曲げ弾性率が90MPa未満であり、かつ同時に、前記エチレンポリマーBの曲げ弾性率が少なくとも90MPaであり、及び/又は前記エチレンポリマーA及びエチレンポリマーBのメルトインデックスがそれぞれ10g/10分未満であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の剥離フィルム。
【請求項9】
前記エチレンポリマーAが、コモノマーとしてC〜C10−オレフィン、特に、1−オクテンを含み、該エチレンポリマーAの密度が0.86〜0.88g/cm3、好ましくは0.86〜0.87g/cm3であり、該エチレンポリマーAのメルトインデックスが2〜10g/10分であり、及び/又は微結晶溶融点が少なくとも115℃であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の剥離フィルム。
【請求項10】
前記エチレンポリマーBの密度が少なくとも0.92g/cm3、好ましくは0.94g/cm3であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の剥離フィルム。
【請求項11】
場合によって存在する二つの剥離コーティングの少なくとも一方が、シリコーン、好ましくはビニルポリジメチルシロキサンを含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の剥離フィルム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一つに記載の剥離フィルムの、片面又は両面接着性接着テープ、接着テープダイカット(Klebebandstanzling)又はラベルの接着層を覆うための使用。
【請求項13】
前記接着層がアクリレートをベースとすることを特徴とする、請求項12に記載の剥離フィルムの使用。

【公表番号】特表2011−518937(P2011−518937A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506727(P2011−506727)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055288
【国際公開番号】WO2009/133182
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】