説明

ポリオレフィンにおいてゲルを減少させる方法

ポリエチレン、一具体例ではポリエチレン、好ましい具体例では高分子量成分と低分子量成分とを含むバイモーダルポリエチレンの製造方法であって、2g/10分〜100g/10分のI21値及び0.91g/cm3〜0.97g/cm3の密度を有するポリオレフィンを準備し、その後、該ポリオレフィンの溶融物を形成させ、そして該ポリオレフィンを70ミクロン〜200ミクロンのメッシュ寸法を有する1個のアクティブスクリーンフィルターに5lb/hr/平方インチ(3,500kg/hr/m2)〜100lb/hr/平方インチ(70,000kg/hr/m2)の質量流束で通し、該スクリーンフィルターを通過させたポリオレフィンを単離することを含む、前記方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリオレフィンにおけるゲル数を減少させる方法に関し、より詳しくは、溶融物中のゲル数を低下させ、フィルム外観の改善したフィルムを形成させるために、1以上の活性なスクリーンを介してポリエチレン組成物を溶融押出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
「ゲル」の存在は、ポリオレフィンにおいてよくある問題である。用語「ゲル」とは、ポリオレフィン、特にポリオレフィンから作られたフィルム中において高度に局在した欠陥であって、主として、混和していない重合体か、未反応の触媒及び活性剤かのいずれか又はその両方が高濃度で存在することにより、周囲のフィルムから視覚的に区別できるものをいうが、ただし、視覚的に区別できる欠陥の他のタイプも同様に包含することができる。ゲルが存在すると、これらのフィルムの価値が下がり、場合によっては、フィルムが商品にならなくなる。従来、この問題を解決するために多くの手法が存在していた。一つの手法は、ゲルを有するポリオレフィンから作られる最終製品を形成させる前にゲルを除去することである。特に、一方法は、ポリオレフィン溶融物をろ過するというものである。これは、FILTRATION OF POLYMER MELTS(D.Gneuss著,VDI−Verlag GmbH,Dusseldorf 1981)に一般的に説明されている。特に、ゲルハルト・シェーンバウアーは、この刊行物において重合体溶融物をろ過するために篩目を使用することを記載している。しかしながら、ポリオレフィン溶融物、特にポリエチレン溶融物及びバイモーダル又はマルチモーダルポリエチレン溶融物によく見られるゲルを除去するための具体的な解決手段は存在していない。
【0003】
他の者は、ポリオレフィン溶融物をろ過するために篩目を使用することを開示している。ポリオレフィン生成物中におけるゲルの問題を解決するための一手段として、米国特許第5,730,885号には、好ましい手段として250メッシュよりも粗い複数の篩目を使用し、それによって望ましくない背圧及び篩の裂けを防ぐことが開示されている。一方、第2の手段として、米国特許第6,485,662号には、比較的大きなメッシュであって、2ミクロン〜70ミクロンのミクロン保持寸法範囲を有する200メッシュよりも細かいものである単一の積極的な網目スクリーン(アクティブスクリーン)を、数個の小さなメッシュの受動的なスクリーン(パッシブスクリーン)と併用することが望ましいことが開示されている。これらの解決手段は、双方とも幾分不十分である。というのは、第1の手段は、複数のアクティブスクリーンを使用するためコストと複雑さが増すだけでなく、その有用性がポリプロピレンに限定されるし、第2の手段は、圧力降下が高いという問題とスクリーンがすぐに詰まる傾向があるという問題とを有するからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、驚くべきことに、比較的粗いメッシュ寸法の単一のアクティブスクリーンがポリオレフィン溶融物を商業的に望ましいレベルにまで適切にろ過することができることを見出した。また、本発明者は、1、2、3又は4個のアクティブスクリーンがゲルを有しないバイモーダルポリエチレンを製造するのに有用であることも見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明の一態様は、ポリオレフィン、好ましい実施形態では高分子量成分と低分子量成分とを有するバイモーダルポリエチレンの製造方法であって、2g/10分〜100g/10分のI21値及び0.91g/cm3〜0.97g/cm3の密度を有するポリオレフィンを準備し;その後、該ポリオレフィンの溶融物を形成させ、該ポリオレフィンを70ミクロン〜200ミクロンのメッシュ寸法を有する1個のアクティブスクリーンフィルターに5 lb/hr/平方インチ(3,500kg/hr/m2)〜100 lb/hr/平方インチ(70,000kg/hr/m2)の質量流束で通し;そして、該スクリーンフィルターを通過させたポリオレフィンを単離することを含む方法に関する。一実施形態では、ポリオレフィンは4g/10分〜20g/10分のI21及び0.93g/cm3〜0.96g/cm3の密度を有するポリエチレンである。
【0006】
本発明の別の態様は、ポリエチレン、好ましい実施形態では高分子量成分と低分子量成分とを有するバイモーダルポリエチレンの製造方法であって、2g/10分〜100g/10分のI21値及び0.91g/cm3〜0.97g/cm3の密度を有するポリエチレンを準備し;その後、該ポリエチレンの溶融物を形成させ、該ポリエチレンを70ミクロン〜200ミクロンのメッシュ寸法を有する1個以上、好ましくは1〜4個のアクティブスクリーンフィルターに5 lb/hr/平方インチ(3,500kg/hr/m2)〜100 lb/hr/平方インチ(70,000kg/hr/m2)の質量流束で通し;該スクリーンフィルターを通過させたポリエチレンを単離することを含む製造方法に関する。一実施形態では、該ポリエチレンは、4g/10分〜20g/10分のI21及び0.93g/cm3〜0.96g/cm3の密度を有する。別の特定の実施形態では、該ポリエチレンは、2g/10分〜80g/10分のI21及び0.91g/cm3〜0.93g/cm3の密度を有する。
【0007】
これらの態様は、本発明を説明するためにここに開示する様々な実施形態と組み合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
発明の詳細な説明
ここで使用するときに、元素の周期律表の「族」に関しては、CRC HANDBOOK OF CHEMISTRY AND PHYSICS(David R.Lide著,CRC Press第81版,2000)と同様に、周期律表の元素についての「新しい」番号付けスキームを用いる。
【0009】
本発明の方法は、ポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、最も好ましくはバイモーダルポリエチレンの粉末を溶融ブレンドし、この溶融ブレンドされた重合体をフィルタースクリーンパックに通し、該重合体をダイを介して押出し、次いで該重合体を冷却させることを含む。
【0010】
溶融は、当該技術分野において標準的なヒーターによって又はブレンド装置自体で達成できる。ポリオレフィンは、さらにブレンドでき、そして好ましくはブレンドされるだけでなく、同一の装置で連続方法又は同時方法で溶融される。この溶融、ブレンド又は「溶融ブレンド」は、米国特許第4,814,135号;米国特許第5,076,988号;米国特許第5,153,382号及び米国特許出願公開第2005/0012235号に記載されるような押出方法で行うことができる。例えば、一軸又は二軸型のスクリュー押出器、例えば、ZSK同時回転二軸押出器又はKillion一軸押出器を使用することができる。当該押出器のスクリュー部分は、3つの部分、すなわち供給部、圧縮部及び計量部に区分でき、かつ、後部加熱区域から前部加熱区域までの複数加熱区域と、上流から下流までに達する複数の部分及び区域とを有することができる。当該押出器が1個以上の胴部を有する場合には、これらの胴部直列的に連結しているであろう。それぞれの胴部の長さ対直径の比は、一実施形態では16:1〜40:1の範囲にある。また、構成重合体の溶融は、例えば、BANBURY(商標)又はBRABENDER(商標)ミキサーのようなバッチ型ミキサーでも達成できる。接線及び噛合逆回転ミキサー並びに噛合同時回転ミキサー、二段階ミキサー並びに多段階長全長/直径ミキサーも使用できる。また、別の実施形態では、米国特許第4,334,783号及び米国特許第5,458,474号の混合装置も有用である。溶融は、160℃〜270℃の範囲の温度で行うことができ、好ましくは180℃〜240℃の範囲の温度で実施される。
【0011】
溶融工程の次に、ポリオレフィン溶融物を、ブレーカープレート内に収容され得る単一のアクティブフィルタースクリーンに通す。このスクリーンフィルターは、20メッシュ〜60メッシュ寸法の1個以上のパッシブスクリーンを有するパックを備えることができる。1個以上のアクティブスクリーン、好ましい実施形態では1個のみのアクティブスクリーンは、各方向の長さの単位当たりのワイヤーの数、すなわち、その「メッシュ」によって特徴付けられる。所定のフィルターについて篩目が多いと、間隙の寸法が小さくなる;例えば、325網目スクリーンは、42ミクロンの開口を有する。本発明者は、60メッシュ(250ミクロン)及びそれよりも粗い開口がパッシブであるのに対し、80メッシュ(177ミクロン)及びそれよりも細かい開口がアクティブである(ただし、溶融方法の際に背圧が有害なほど高い程度に細かいサイズにする必要はない)ことを見出した。
【0012】
特に、本発明者は、開口が70ミクロン〜210ミクロン、より好ましくは70ミクロン〜180ミクロン、最も好ましくは75ミクロン〜150ミクロンであるようなメッシュを有する1個以上のアクティブスクリーン、好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個、最も好ましくは1個のアクティブスクリーンを使用することは、ゲルがないため商業的に魅力的な外観を有するポリオレフィンを製造するのに経済的であり、かつ、十分であることを見出した。さらに、本発明者は、アクティブスクリーンを通過するポリオレフィン溶融物の形成が、歯車ポンプを有する押出器を使用し、当該押出器を歯車ポンプの吐き出し圧力が24時間の連続出力当たり出発圧力から25%未満、好ましくは20%未満まで増加するように操作することで達成できることを見出した。ここで説明した方法のこの特性は、このポリオレフィン溶融物中のゲルを減少させる方法の商業的な魅力をさらに高める。
【0013】
用語「スクリーン」には、複数のスクリーン、篩及び他のフィルター媒体並びにミクロン保持サイズを決定することができる他の均等物が含まれるものとする。様々なフィルター媒体に関する説明は、例えば、FILTRATION OF POLYMER MELTS(1988)に見出すことができる。一般に、複数のスクリーンは、大きなミクロン保持サイズから始まり、それよりも小さなミクロン保持サイズに進み、それよりも大きなミクロン保持サイズで終わることにより配置される。
【0014】
アクティブスクリーンは、例えば、正方形の編みワイヤースクリーン及びDutch編みワイヤースクリーンであることができ、そのうちの一つは、例えば200網目スクリーンと説明される。これらのスクリーン又は均等物は、密集した正方形の開口、三角形の開口又は円形の開口、規則的な又は不規則な形状を有することができる。均等物については、一般に、上記の1以上のスクリーンに相当する1以上の層が存在する。均等物は、例えば、加圧下で所定の柔らかい粒子が滑り落ちるという不利益を有するワイヤークロススクリーン;同一の又は異なる直径の焼成金属粉末(ただし、ミクロン保持サイズに近づけるために粒子間の空間寸法を制御することが困難である);焼成金属繊維(好ましい均等物である);サンドパック;及び米国特許第4,661,249号に記載されたような装置である。
【0015】
ポリオレフィン溶融物は、5 lb/hr/平方インチ(3,500kg/hr/m2)〜100 lb/hr/平方インチ(70,000kg/hr/m2)の範囲の質量流束でアクティブスクリーのスクリーンを通過し、より好ましくは10 lb/hr/平方インチ(7,000kg/hr/m2)〜80 lb/hr/平方インチ(56,000kg/hr/m2) の質量流束でアクティブスクリーンのスクリーンを通過し、最も好ましくは30 lb/hr/平方インチ(21,000kg/hr/m2)〜50 lb/hr/平方インチ(35,000kg/hr/m2)の範囲の質量流束でアクティブスクリーンのスクリーンを通過する。一般に、ゲルを200ミクロン以下、通常は100ミクロン未満にまで減少させるには、当該所定の質量流束でスクリーンを1回通過させれば十分である。本発明の方法によって、ゲルの少なくとも大部分を100ミクロン未満のサイズにまで減少させることができることが分かった。所望ならば、複数回の通過を使用することができる。最も好ましくは、ポリオレフィン溶融物をアクティブスクリーンに1回だけ通す。
【0016】
ポリオレフィンは、この目的に合致した従来の押出器でフィルムに押出できる。押出器及び押出方法は、米国特許第4,169,679号に記載されている(スクリューの設計を参照)。フィルムを成形する際に使用できる各種押出器の例は、一軸型、例えば、インフレートフィルムダイとエアリングと連続引取装置とにより改変されたもの、インフレートフィルム押出器及びスロット流延押出器である。また、二軸押出器も使用できる。典型的な一軸型押出器は、その上流の端部にホッパーを有し、かつ、その下流の端部にダイを有するものであると説明できる。ホッパーは、スクリューを収容する胴部に入れられる。スクリューの端部とダイとの間の下流端部には、スクリーンパックとブレーカープレートがある。当該押出器のスクリュー部分は、3つの部分、すなわち、供給部、圧縮部及び計量部と、後部加熱区域から前部加熱区域までの複数加熱区域、上流から下流までに達する複数の部分及び区域に分けられていると見なされる。このものが1個以上の胴部を有する場合には、これらの胴部は、並列的に連結されている。それぞれの胴部の長さ対直径の比は、16:1〜30:1の範囲にある。押出は、160℃〜270℃の範囲の温度で行うことができ、好ましくは180℃〜240℃の範囲の温度で実施される。
【0017】
ここで説明するポリオレフィンは、オレフィン重合体、好ましくはα−オレフィン誘導単位を少なくとも50重量%〜80重量含む任意の重合体である。最も好ましくは、オレフィン誘導単位は、エチレンと、C3〜C12α−オレフィン及び環状オレフィンよりなる群から選択されるα−オレフィンとを含む。さらに好ましくは、ここで説明するポリオレフィンは、少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%のエチレン誘導単位と、0重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜10重量%のα−オレフィン誘導単位とを含むポリエチレンであり、ここで、該α−オレフィンは、C4〜C8α−オレフィンよりなる群から選択される。好ましい実施形態では、ポリオレフィンは、バイモーダル又はマルチモーダルポリエチレンである。ポリエチレン組成物を説明するために使用するときに、用語「バイモーダル」とは、「二峰分子量分布」を意味し、当該用語は、当業者が刊行物及び発行された特許に反映されるように当該用語に与えた最も広い定義を有するものとする。例えば、少なくとも一つの特定可能な高分子量分布を有するポリオレフィンと、少なくとも一つの特定可能な低分子量分布とを有する単一のポリエチレン組成物は、本明細書において当該用語を使用する場合には、「バイモーダル」ポリオレフィンであると見なされる。これらの高分子量重合体及び低分子量重合体は、これら2種のポリオレフィンを本発明のバイモーダルポリオレフィンの広いGPC曲線又は肩GPC曲線から識別するための当該技術分野において周知の逆重畳技術によって特定でき、別の実施形態では、本発明のバイモーダル重合体のGPC曲線は、谷を有する別個のピークを示すことができる。このポリオレフィンは、所定の特徴の組合せによって特徴付けてもよい。
【0018】
別の実施形態では、ポリオレフィンは、0.91g/cm3〜0.93g/cm3の密度と、2g/10分〜80g/10分又は100g/10分dg/分のI21と、2〜5の分子量分布(Mw/Mn)とを有する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である。
【0019】
ポリオレフィンは、一実施形態では0.91g/cm3〜0.97g/cm3の範囲の密度、別の実施形態では0.93g/cm3〜0.96g/cm3の範囲の密度、さらに別の実施形態では0.94g/cm3〜0.955g/cm3の範囲の密度を有し、ここで、本発明のポリオレフィンの望ましい密度範囲は、ここで説明した任意の上限密度と任意の下限密度との任意の組合せを含む。
【0020】
ポリオレフィンは、例えば、ここで説明するGPCによって測定されるそれらの分子量特性によって特徴付けることができる。当該ポリオレフィンは、一実施形態では2,000g/mol〜70,000g/mol、別の実施形態では10,000g/mol〜50,000g/molの数平均分子量(Mn)値及び一実施形態では50,000g/mol〜2,000,000g/mol、別の実施形態では70,000g/mol〜1,000,000g/mol、さらに別の実施形態では80,000g/mol〜800,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。また、ポリオレフィンは、一実施形態では200,000g/molよりも大きく、別の実施形態では800,000g/molよりも大きく、一実施形態では900,000g/molよりも大きく、一実施形態では1,000,000g/molよりも大きく、別の実施形態では1,100,000g/molよりも大きく、さらに別の実施形態では1,200,000g/molよりも大きく、且つ、さらに別の実施形態では1,500,000g/mol未満の範囲にあるz−平均分子量(Mz)値も有する;ここで、Mn、Mw又はMzの望ましい範囲は、ここで説明した任意の上限値と任意の下限値との任意の組合せを含む。
【0021】
ポリオレフィンは、好ましい実施形態では30又は40よりも大きい、一実施形態では20〜250の範囲、別の実施形態では35〜100、さらに別の実施形態では40〜200の範囲の分子量分布、すなわち、重量平均分子量対数平均分子量(Mw/Mn)又は「多分散性指数」を有し、ここで、望ましい実施形態は、ここで説明した任意の上限値と任意の下限値の任意の組合せを含む。また、ポリオレフィンは、一実施形態では2〜20、別の実施形態では3〜20、別の実施形態では4〜10、さらに別の実施形態では5〜8、さらに別の実施形態では3〜10の「z−平均」分子量分布(Mz/Mw)を有し、ここで、望ましい範囲は、任意の上限値と任意の下限値との任意の組合せを含むことができる。
【0022】
ポリオレフィンは、一実施形態では0.01g/10分dg/分〜50g/10分dg/分、別の実施形態では0.02g/10分dg/分〜10g/10分dg/分、さらに別の実施形態では0.03g/10分dg/分〜2g/10分dg/分の範囲のメルトインデックス(MI、すなわちASTM−D−1238−E190℃/2.16kgで測定されるI2)を有し、ここで、望ましい範囲は、ここで説明した任意の上限値と任意の下限値を含むことができる。ポリオレフィンは、一実施形態では2g/10分〜20g/10分、別の実施形態では4g/10分〜18g/10分、さらに別の実施形態では4g/10分〜16g/10分、さらに別の実施形態では6g/10分〜14g/10分;さらに別の実施形態では6g/10分〜12g/10分の範囲のフローインデックス(FI、すなわち、ASTM−D−1238−F,190℃/21.6kgで測定されるI21)を有し、ここで、望ましいI21範囲は、ここで説明した任意の上限値と任意の下限値を含むことができる。当該ポリオレフィンは、所定の実施形態では、80〜400、別の実施形態では90〜300、さらに別の実施形態では100〜250、さらに別の実施形態では120〜220の範囲のメルトインデックス比(I21/I2)を有し、ここで、望ましいI21/I2範囲は、ここで説明した任意の上限値と任意の下限値の任意の組合せを含むことができる。
【0023】
別の実施形態では、ポリオレフィンは、HMWポリエチレンの全組成の50重量%よりも多く含み、別の実施形態では55重量%よりも多く含み、別の実施形態では、50重量%〜80重量%、さらに別の実施形態では55重量%〜75重量%、さらに別の実施形態では55重量%〜70重量%を含み、ここで、当該重量パーセントは、GPC測定値から決定される。
【0024】
ポリオレフィンがバイモーダルポリエチレンである実施形態では、当該バイモーダルポリエチレンは、一実施形態では1種のHMWポリエチレンと1種のLMWポリエチレンとを含むものであると説明することができ;別の実施形態では、1種のHMWポリエチレンと1種のLMWポリエチレンとから本質的になる。
【0025】
一実施形態では、HMWポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、3〜24の範囲、別の実施形態では4〜24の範囲、別の実施形態では6〜18の範囲、別の実施形態では7〜16の範囲、さらに別の実施形態では8〜14の範囲にあり、ここで、望ましい範囲は、ここで説明した任意の上限値と任意の下限値の任意の組合せを含む。HMWポリエチレンは、一実施形態では50,000g/molよりも大きい、一実施形態では50,000g/mol〜1,000,000g/molの範囲、別の実施形態では80,000g/mol〜900,000g/molの範囲、別の実施形態では100,000g/mol〜800,000g/molの範囲、別の実施形態では250,000g/mol〜700,000g/molの範囲の重量平均分子量を有し、ここで、望ましい範囲は、ここで説明した任意の上限値と任意の下限値の任意の組合せを含む。ポリエチレン組成物中におけるHMWポリエチレンの重量分率は、当該ポリエチレン組成物において望ましい特性に応じて、任意の所望のレベルであることができる;一実施形態ではHMWポリエチレンの重量分率は、0.3〜0.7;別の特定の実施形態では0.4〜0.6、さらに別の特定の実施形態では0.5〜0.6の範囲にある。
【0026】
一実施形態では、LMWポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、1.8〜6、別の実施形態では2〜5、さらに別の実施形態では2.5〜4の範囲にあり、ここで、望ましい範囲は、ここで説明した任意の上限値と任意の下限値の任意の組合せを含む。LMWポリエチレンは、一実施形態では2,000g/mol〜50,000g/mol、別の実施形態では3,000g/mol〜40,000g/mol、さらに別の実施形態では4,000g/mol〜30,000g/molの重量平均分子量を有し、ここで、ポリエチレン組成物中におけるLMWポリエチレンの望ましい範囲は、ここで説明した任意の上限値と任意の下限値の任意の組合せを含む。別の実施形態では、LMWポリエチレンの重量平均分子量は、50,000g/mol未満、別の実施形態では40,000g/mol未満、さらに別の実施形態では30,000g/mol未満、さらに別の実施形態では20,000g/mol未満、さらに別の実施形態では15,000g/mol未満、さらに別の実施形態では13,000g/mol未満である。LMWポリエチレンは、一実施形態では0.1g/10分〜10,000g/10分、別の実施形態では1g/10分〜5,000g/10分、さらに別の実施形態では100g/10分〜3,000g/10分のI2値を有し;一実施形態では2.0g/10分〜300,000g/10分、別の実施形態では20g/10分〜150,000g/10分、さらに別の実施形態では30g/10分〜15,000g/10分のI21を有し;ここで、I2及びI21値について、望ましい範囲は、ここで説明した任意の上限値と任意の下限値の任意の組合せを含む。LMWポリエチレンのI2及びI21は、特に別々になされる場合、つまり個々に測定できる場合には、当該技術分野において周知の任意の技術で決定できる;一実施形態では、これらの値は、GPC曲線の逆重畳及び当該技術分野において周知の数理モデルを使用することによって推定される。
【0027】
ポリオレフィンがバイモーダルポリエチレンである実施形態では、当該バイモーダルポリエチレンは、当該技術分野において知られているような、分子量の異なる2種のポリエチレンの物理的ブレンド又は一連の2個以上の反応器における反応器現場ブレンドを含めた当該技術分野において周知の任意の技術によって、又は単一の反応器内での反応器現場ブレンドによって製造できる。一実施形態では、バイモーダルポリエチレンは、単一の反応器、好ましくは単一の連続気相流動床反応器内で二種金属触媒組成物を使用して製造された上記のようなものである。このような二種金属触媒組成物は、当該技術分野において周知であり、例えば、米国特許第6,274,684号又は米国特許第6,875,828号に記載されている。一実施形態では、特に、二種金属触媒は、担持第4族メタロセン及び第4族配位化合物(例えば、[(アルキル−C62)NCH2CH22NH}Zr(アルキル、アリール又はハロゲン化物)2)であり、別の実施形態では、二種金属触媒担持メタロセン及びバナジウム又はチタンチーグラー・ナッタ触媒化合物であり、別の実施形態では、二種金属触媒は、バイモーダルポリエチレン組成物を広く生じさせることが知られている担持クロム系、好ましくは酸化クロム触媒組成物である。
【0028】
特定の実施形態では、本発明に有用なバイモーダルポリエチレンは、少なくとも1種の高分子量成分と少なくとも1種の低分子量成分とをその場でブレンドするものとしての単一の連続気相流動床反応器内で作られる。一以上の実施形態では、この重合システムは、1個以上の排出タンク、サージタンク及び再循環圧縮器と流体連通した反応器本体を備えることができる。一実施形態では、当該反応器本体は、典型的には反応器本体の頂部にある減速区域と流体連通しかつ直径が増加する円錐形状を有する反応器本体内部にある反応区域を備える。当該反応区域は、当該反応区域を通る構成供給物の状態の重合性及び改質用ガス状成分の連続流れ及び再循環流体によって流動化される、成長しつつある重合体粒子、形成された重合体粒子及び触媒粒子の床を含むことができる。
【0029】
供給物流れは、ブロアーの前にある循環ラインに入るように向けることができるが、ただし、反応器の流動床、拡開部又はもう一方の供給物流れ位置で表される冷却器前後の循環ラインを含めて、重合システムの任意の箇所であってもよい。ここで使用するときに、用語「供給物流れ」とは、重合体生成物を製造するための重合方法において使用される、気相又は液相の原料をいう。例えば、供給物流れは、2〜12個の炭素原子を有する置換及び非置換のアルカン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、スチレン及びそれらの誘導体を含め、任意のオレフィン重合体であることができる。また、当該供給物流れは、非オレフィン系ガス、例えば窒素及び水素も含むことができる。これらの供給物は、反応器に複数かつ異なる位置で入ることができる。例えば、単量体は、重合区域に、ノズルを介して床に直接注入することを含む様々な方法で導入できる。当該供給物流れは、当該重合プロセスにおいて凝縮できる、反応の熱を除去するための1種以上の非反応性アルカンをさらに含むことができる。非反応性アルカンの例としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、それらの異性体及びそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。このような操作は、当該技術分野において、「凝縮モード」操作と呼ばれている。
【0030】
流動床は、当該床を通したガスの循環によって創り出されるような、個々に移動する粒子の濃厚な塊という一般的な外観を有する。当該床を介した圧力降下は、当該流動床の重量をその断面積で割ったものに等しいか、又は僅かに大きい。そのため、これは、反応器の形状に依存する。反応区域内において存立可能な流動床を維持するためには、該床を通る見掛けガス速度が流動化に必要な最小の流れを超過しなければならない。好ましくは、この見掛けガス速度は、最小流速の少なくとも2倍である。通常、この見掛けガス速度は5.0ft/s(1.5m/s)を超過せず、通常はせいぜい2.5ft/s(0.75m/s)で十分である。
【0031】
一般に、反応区域の高さ対直径の比は、2:1〜5:1の範囲で変更できる。この範囲は、勿論、それよりも大きい又は小さい比に変更することができ、また、これは所望の製造能力に依存する。減速区域の断面積は、典型的には、反応区域の断面積×2〜3の範囲内にある。
【0032】
減速区域は、反応区域よりも大きな内径を有する。その名が示唆するように、減速区域は、断面積の減少のためガスの速度を低下させる。このガス速度の低下により、同伴粒子が床に落下し、主としてガスのみが反応器から流れるようにすることが可能になる。反応器の頭上から出たガスは、再循環ガス流れである。
【0033】
この再循環流れは、圧縮器で圧縮され、次いで熱交換区域を通過し、ここで、床に戻される前に熱が取り除かれる。この熱交換区域は、典型的には、水平型又は垂直型のものであることができる熱交換器である。所望ならば、数個の熱交換器を使用して循環ガス流れの温度を段階的に低下させることができる。また、当該熱交換器の下流に圧縮器を設置することや、数個の熱交換器の中間箇所に圧縮器を設置することも可能である。冷却後に、この再循環流れは反応器に戻される。冷却された再循環流れは、重合反応によって生じた反応熱を吸収する。
【0034】
好ましくは、再循環流れは、反応器に戻され、そしてガス分配板を通して流動床に戻される。好ましくは、ガス偏光板を反応器の入口に設置して、含まれる重合体粒子が沈降し、そして固体塊に凝集しないようにし、また反応器の底部に液体がたまるのを防止し、その上、循環ガス流れ中に液体を含有する方法とそれを含有しない方法及び循環ガス流れ中に液体を含有しない方法とそれを含有する方法との間の移行を容易にする。この目的に好適な偏光板の例は、米国特許第4,933,415号及び米国特許第6,627,713号に記載されている。
【0035】
アルキルアルミニウム改質剤を有する又は有しない活性化された先駆体組成物(以下、一括して触媒という。)は、好ましくは、ガスブランケット下で触媒リザーバ内に供給のために貯蔵されるが、当該ガスは、この貯蔵材料に対して不活性なもの、例えば、窒素又はアルゴンである。好ましくは、触媒リザーバには、反応器に触媒を連続的に供給するのに好適な供給器が備えられる。触媒リザーバの例は、例えば、米国特許第3,779,712号に示され、記載されている。触媒に対して不活性なガス、例えば、窒素又はアルゴンは、好ましくは、触媒を床に運ぶために使用される。好ましくは、この搬送ガスは、触媒リザーバ中で触媒を貯蔵するために使用されるブランケットガスと同一である。一実施形態では、触媒は乾燥粉末であり、触媒供給器は、回転式計量ディスクを備える。別の実施形態では、触媒は、鉱油若しくは液状炭化水素又は混合物、例えば、プロパン、ブタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン又はオクタンのようなものへのスラリーとして与えられる。触媒リザーバの例は、国際公開第WO2004/094489号に示され、記載されている。触媒スラリーは、例えば窒素若しくはアルゴンのような分散媒又は例えばイソペンタンその他のC3〜C8アルカンのような液体と共に反応器に供給できる。供給物添加ラインに沿って反応器に供給する間に触媒をここで説明したアルキルアルミニウム改質剤で改質することが可能である。
【0036】
触媒は、重合体粒子との良好な混合が生じる床に所定の箇所で注入される。例えば、触媒は、分配板よりも上にある箇所で床に注入される。分配板よりも上の箇所に触媒を注入することで、流動床重合反応器の操作が良好になる。分配板よりも下の領域に触媒を注入すると、そこで重合が生じ、最終的には分配板の詰まりが生じ得るであろう。流動床への直接注入は、該床を介して触媒を均等に分配するのに役立ち、かつ、「ホットスポット」が形成し得る局部的な高触媒濃度点の形成を回避しやすい。また、活性剤及び/又は改質剤化合物(例えば、アルキルアルミニウム化合物であり、その例はトリエチルアルミニウムであるが、これに限定されない。)を流動床にある又は熱交換器の下流にある反応系に直接添加することもできるが、この場合には、改質剤は、計量分配装置から再循環系に供給される。
【0037】
重合反応は、湿気、酸素、一酸化炭素及びアセチレンのような触媒毒の非存在下で実質的に実施される。しかしながら、酸素を非常に低い濃度で反応器に再度添加して重合体構造及びその生成物性能特性を変更することができる。酸素は、10ppbv〜600ppbv、より好ましくは10ppbv〜500ppbvの反応器へのエチレン供給速度に対する濃度で添加できる。
【0038】
共重合体における所望の密度範囲を達成するためには、共単量体とエチレンとを十分に共重合させて0重量%から5重量%〜10重量%の間の共重合体中の共単量体レベルを達成することが必要である。この結果を達成するのに必要な共単量体量は、使用される特定の共単量体、触媒の活性化温度及びその処方によるであろう。共単量体対エチレンの比は、共重合体生成物の所望の樹脂密度を得るように制御すべきである。
【0039】
再循環流れの組成及び構成供給物流れの組成を決定するためにガス分析装置を使用することができ、それによって反応区域内の本質的に定常状態のガス状組成物を維持するように調節することができる。当該ガス分析装置は、再循環流れの組成を決定して供給物流れの成分の比率を維持する従来のガス分析装置であることができる。このような装置は、様々な供給業者から商業的に入手できる。ガス分析装置は、減速区域と熱交換器との間に位置した試料採取箇所からガスを受け取るように設置できる。
【0040】
床での重合体生成速度は、反応区域内での触媒注入速度と単量体濃度とに依存する。この生成速度は、触媒注入速度を調節することによって従来通り制御される。触媒注入速度のあらゆる変化によって反応速度が変化し、それにより床内で熱が生じる速度が変化するので、反応器に入る再循環流れの温度を調節して熱発生速度のあらゆる変化に対応する。これにより、床内の温度を本質的に一定に維持することが確保される。流動床と循環流れ冷却システムとの両方を完全に計測することは、勿論、作業者又は自動制御システムのいずれかが再循環流れの温度を好適に調節することができるようにあらゆる温度変化を検出するために有用である。
【0041】
一連の操作条件下で、流動床は、生成物としての床の一部分を粒状重合体生成物の形成速度で取り出すことによって本質的に一定の高さに維持される。熱発生速度は重合体の形成速度に直接関連するので、反応器を横切る流体の温度上昇の測定値(入口流体温度と出口流体温度との差)は、揮発性の液体が入口流体中に全く存在しない場合又は無視できる程度の場合には、粒状重合体の形成速度が一定の流体速度であることを示す。
【0042】
気相流動床反応器本体からの粒状重合体生成物の放出中に、この生成物を流体から分離し、そして当該流体を再循環ラインに戻すことが望ましく、かつ、好ましい。この分離を達成するための多数の方法が当該技術分野において知られている。一以上の実施形態では、流体及び生成物は反応器本体を離れ、そして弁を介して生成物放出タンクに入るが、この弁は、開いたときに流れるという最小限の制限しか加えないように設計されたボール弁であることができる。生成物放出タンクの上又下に設置されるのは従来の弁である。この弁は、生成物がサージタンクに通過するのを可能にする。代わりに使用できる別の好ましい生成物放出システムは、米国特許第4,621,952号に開示され、かつ、特許請求されたものである。このようなシステムは、並列的に配置された沈殿槽と運搬槽とを備え、かつ、分離された気相を沈殿槽の頂部から流動床の頂部付近の反応器内の箇所に戻す、少なくとも1対の(平行な)タンクを使用する。
【0043】
流動床反応器は、操業開始及び操業停止中に床を抜き出す適切なベント装置を備える。当該反応器は、撹拌及び/又は壁の削り落としを使用する必要がない。再循環ライン及びその内部の部材は、再循環流体又は同伴粒子の流れを妨げないように、滑らかな表面でなければならず、かつ、不必要な障害物があってはならない。
【0044】
重合のための条件は、単量体、触媒及び装置の可用性に応じて異なる。具体的な条件は、当業者であれば周知であり又は容易に導き出せる。例えば、温度は、−10℃〜120℃、多くの場合15℃〜110℃の範囲内にある。圧力は、例えば、0.1bar(10kPa)〜100bar(10MPa)、例えば5bar(500kPa〜50bar(5MPa))の範囲内にある。重合に関するさらなる詳説は、米国特許第6,627,713号に見いだすことができる。
【0045】
いったんポリオレフィンを単離したら、これを当該技術分野において知られている所定の添加剤とブレンドできる。ポリオレフィンに導入できる従来の添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、核剤、充填剤、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、安定剤、防煙剤、粘度調節剤及び架橋剤、触媒並びに増強溶剤、粘着付与剤並びにブロッキング防止剤が例示される。充填剤は別として、これらの添加剤は、ブレンド中に、重合体ブレンドのそれぞれ100重量部に対して0.01重量部〜10重量部の添加剤量で存在することができる。充填剤は、ポリオレフィンのそれぞれ100重量部について200重量部以上までの量で添加できる。
【0046】
一実施形態では、酸化剤もポリオレフィンとの反応性成分として溶融工程中に添加する。ここで説明した方法のこの態様では、ポリオレフィンは、WO2003/047839に開示されているように、酸化剤、好ましくは酸素と共に押し出される。一実施形態では、0.01SCFM(標準立方フィート/分)(0.00028SCMM(標準平方メートル/分))又は0.1SCFM(0.0028SCMM)又は1SCFM(0.028SCMM)〜14SCFM(0.40SCMM)又は16SCFM(0.45SCMM)の酸素を押出中にポリオレフィンに添加してペレットを形成させるが、その正確な量は、使用する押出器のタイプ及び他の条件に依存する。別の言い方をすると、一実施形態では、窒素のような不活性ガス中2容量%〜21容量%の酸素を押出重合体組成物に導入する。一実施形態では、十分な酸素を押出器に添加して反応器からのポリエチレン組成物のI21/I2値を1%〜40%、別の実施形態では5%〜25%上昇させる。次いで、それから生じたポリオレフィンペレットを使用して、別個のライン、例えばアルペンラインで本発明のフィルムを押し出す。
【0047】
得られたポリオレフィンであって、ろ過され添加剤を有する又はそれを有しないものをフィルムを形成させるための任意の好適な手段:フィルム吹込成形又は流延及び、PLASTICS PROCESSING(ラジアンコーポレーション,ノイズデータコーポレーション,1986)に記載されるような、例えば、一軸又は二軸延伸を達成するための全てのフィルム成形方法によって処理加工できる。特に好ましい具体例では、ポリオレフィンは、FILM EXTRUSION MANUAL,PROCESS,MATERIALS,PROPERTIES(TAPPI,1992)に記載されるようなフィルムに成形される。さらに具体的には、当該フィルムはインフレートフィルムであり、そのための方法は、例えば、FILM EXTRUSION MANUAL,PROCESS,MATERIALS,PROPERTIES pp.16−29に概略的に記載されている。
【0048】
ここで説明したポリエチレン組成物に望ましい任意の条件下で操作してLLDPE(0.91g/cm3〜0.925g/cm3の密度)又はHDPE(0.940g/cm3を超える密度)を押し出すのに好適な任意の押出器を使用してフィルムを製造することができる。このような押出器当業者に周知である。このような押出器としては、一実施形態では30mm〜150mm、別の実施形態では35mm〜120mmの範囲のスクリュー直径を有し、かつ、一実施形態では100 lb/hr(45kg/hr)〜1,500 lb/hr(680kg/hr)、別の実施形態では200 lb/hr(91kg/hr)〜1,000 lb/hr(454kg/hr)の生産量を有するものが挙げられる。一実施形態では、溝付き供給押出器を使用する。当該押出器は、一実施形態では80:1〜2:1、別の実施形態では60:1〜6:1、さらに別の実施形態では40:1〜12:1、さらに別の実施形態では30:1〜16:1のL/D比を有することができる。
【0049】
単層ダイ又は多層ダイを使用することができる。一実施形態では、50mm〜200mmの単層ダイを使用し、別の実施形態では90mm〜160mm単層ダイ、さらに別の実施形態では100mm〜140mm単層ダイを使用し、ここで、当該ダイは、一実施形態では0.6mm〜3mm、別の実施形態では0.8mm〜2mm、さらに別の実施形態では1mm〜1.8mmの範囲の公称ダイ間隙を有し、ここで、望ましいダイは、ここで説明した任意の実施形態の任意の組合せによって説明できる。特定の実施形態では、ここで要求される有利な比押出量は、特定の実施形態では21:1のL/Dを有する50mm溝付き供給押出器で維持される。
【0050】
押出器の区域、ネック部及び押出器のアダプターにわたる温度は、一実施形態では150℃〜230℃、別の実施形態では160℃〜210℃、さらに別の実施形態では170℃〜190℃の範囲にある。ダイにわたる温度は、一実施形態では160℃〜250℃、別の実施形態では170℃〜230℃、さらに別の実施形態では180℃〜210℃の範囲にある。
【0051】
本発明のフィルムの品質は、ここで説明するような複合ゲルカウントによって特徴付けることができる。当該フィルムは、一実施形態では100未満のゲルカウント、別の実施形態では60未満のゲルカウント、別の実施形態では50未満のゲルカウント、さらに別の実施形態では40未満のゲルカウント、さらに別の実施形態では35未満のゲルカウントを有する。別の言い方をすると、本発明のフィルムは、一実施形態では+20以上、別の実施形態では+30以上、さらに別の実施形態では+40以上のFAR(「フィルム外観評点」、すなわち、既知の基準物との視覚対比試験)値を有する。
【0052】
このように、本発明の組成物及び方法は、ここで開示した実施形態のうち任意のものやここで説明した実施形態のうち任意のものの組合せでも説明できる。本発明の実施形態は、次の実施例を参照すればさらによく理解することができるが、当該実施例は限定することを意味するものではない。
【実施例】
【0053】

全ての例について、最初の表は、ポリエチレン顆粒をペレットに最初に押出した条件を示している。それぞれの例について、その目的は、押出条件を一定に保持して、使用した篩目のみを変更することであった。しかしながら、篩目を変更すると、他の処理データ、例えば、G/P(歯車ポンプ)吐き出し圧力にいくつかの変化が生じる。2番目の表は、ポリエチレンペレットをフィルムに変換したときに使用した押出条件と、当該フィルムに関するゲルカウントのデータを示す。
【0054】
「ゲル」の品質又はゲルの「評点」は、OCSゲルカウント装置を使用して決定した。当該OCSゲルカウントラインは、次の装置部品からなる:
(1)0.75インチ(19mm)、20:1のL/Dの圧縮スクリューを有するブラベンダー押出器
(2)調整式フィルムスリットダイ
(3)OCS型式FS3
(4)キリオンチルロール及びフィルム巻き取りシステム。
【0055】
OCSシステムは、1回の試験につき1.0m2をわずかに超えるフィルムを評価する。目標のフィルム厚は76.2μm(0.003インチ又は3.0ミル)である。OCS型式FS3カメラは、7μmの解像度を有し、かつ、12mmのフィルム幅を読み、また、当該システムは、以下に列挙するような10クラスのゲルサイズを特定する:
7μm〜54μm、
55μm〜100μm、
101μm〜200μm、
201μm〜300μm、
301μm〜400μm、
401μm〜500μm、
501μm〜600μm、
601μm〜800μm、
801μm〜1600μm,
1600μmよりも大きい。
【0056】
OCSシステムは、それぞれの試験の終了時に、フィルム1.0m2当たりのゲルデータの要約を作成する。複合ゲルカウントを報告する。この評点は次のように算出される:
複合ゲルカウント=0.1×ゲルカウント(101μm〜200μm)+1.0×ゲルカウント(201μm〜500μm)+10×ゲルカウント(501μmを超えるゲル)。
【0057】
この複合ゲルカウントは、フィルムの顧客がフィルム中のゲルにいかにして対処するのかをおおざっぱに見積もるものであり、複合ゲルカウントが低い方が良好である。当該「複合ゲルカウント」は、より大きなゲルに対して一層高いペナルティーを用いる。というのは、これらは、さらに目に見えやすく、かつ、最終製品の利用時に問題がさらに起こりやすいからである。
【0058】
例1.20メッシュと、200メッシュと、段階的な325メッシュとの比較
ポリエチレン顆粒を如何なる添加剤もなしに又は次の添加剤(「処方物A」)とブレンドして、ペレットに押し出した:
Irganox−1010 0.1500重量%
Irgafos−168 0.1500重量%
ステアリン酸亜鉛 0.0500重量%
【0059】
これらのペレットを使用してフィルムを形成させた。ペレットへの押出についての一般的な条件は次の通りである:
・バレル温度設定点,180℃、
・周囲供給温度、
・1容量%未満の酸素、
・ミキサー速度,220rpm、
・ミキサー供給速度,410 lb/hr(186kg/hr)、
・ゲート位置,5%開、
・溶融ポンプ吸引圧力,7psig(48kPa)、
・4.5インチ(114mm)の直径を有するスクリーンチェンジャー、すなわちブレーカープレート。
【0060】
ペレット化条件及びフィルム押出条件については、それぞれ表1及び2を参照されたい。図1は、ゲルカウントの結果を示している。20メッシュについてのデータは、単一の条件からものあり、200メッシュについてのデータについては、8の条件及び8のゲルカウントの平均であり、3重325メッシュについてのデータは、2の条件及び2のゲルカウントの平均である。使用したスクリーンパックの正確な説明については表1を参照されたい。例えば、「3重325」スクリーンパックは、20メッシュ、次いで100メッシュ、次いで325メッシュ、次いで325メッシュ、次いで325メッシュ、次いで100メッシュ、次いで20網目スクリーンを連続的に使用し、ここで、より粗いスクリーンは、細かくかつ機械的に脆弱な325網目スクリーンについての機械的な支持を与える。従来技術と比較すると、200メッシュは、予想よりも良好に機能した。
【0061】
試料1、2及び3は、それぞれ、0.948g/cm3〜0.952g/cm3の密度及び7g/10分〜11g/10分dg/分のI21及び40〜100のMw/Mnを有するバイモーダルの高密度ポリエチレン共重合体(1−ヘキセン又は1−ブテン誘導共単量体単位)に相当し、それぞれ、低分子量共重合体と高分子量共重合体との均質なブレンドを製造する二種金属触媒系を使用して単一の連続気相流動床反応器内で製造されたものであり、ここで、当該低分子量部分は5,000g/mol〜30,000g/molの重量平均分子量を有し、当該高分子量部分は、80,000g/mol〜150,000g/molの重量平均分子量を有する。
【0062】
例2.スクリーンなしと、200メッシュと、段階的な250メッシュとの比較
ペレットを形成させるために使用した添加剤と一般的な押出条件との説明については例1を参照されたい。全てのデータは、幅のある単一の押出条件からのものである。ペレット化の条件及びフィルム押出条件については、それぞれ表3及び4を参照されたい(「G/P」とは、歯車ポンプを指す)。図2はゲルカウントの結果を示す。驚くべきことに、単一の200網目スクリーンパック(20/100/200/100/20)はゲルを低減させ、また250網目スクリーン(20/100/250/100/250/100/20)もゲルを低減させた。
【0063】
例3.スクリーンなしと、100メッシュと、150メッシュと、200メッシュと、段階的250メッシュとの比較
ペレットを形成させるために使用した添加剤と一般的な押出条件との説明については例1を参照されたい。全てのデータは、幅のある単一の押出条件からのものである。100メッシュ及び150メッシュは、驚くべきことに、よく機能した。ペレット化の条件及びフィルム押出条件については、それぞれ表5及び6を参照されたい。図3は、ゲルカウントの結果を示す。
【0064】
例4.スクリーンパック圧力の上昇は、200網目スクリーンパックによる安定した拡大実施中でも低いことを示す
顆粒試料番号3は、20/100/200/100/20連続メッシュからなるスクリーンパックを使用した、4日間にわたり計14.25時間実施した。20メッシュフィルターがパッシブである。ペレット化の条件については表7を、圧力上昇過程については図4を参照されたい。歯車ポンプの吐き出し圧力は、3105psi(21,7MPa)から3446psi(23.8MPa)に上昇したが、これは、操作1時間当たり24psi(165kPa)、すなわち、 操作1時間当たりわずか0.8%に過ぎない。これは商業的に許容できるものであり、かつ、ゲルを低減させるために比較的粗いスクリーンを使用する利益を示すものである。
【0065】
これらのデータから、200メッシュ、150メッシュ及び100メッシュのメッシュサイズ(約70〜約210ミクロンのサイズ)がポリオレフィン、特にバイモーダルポリエチレンからゲルを除去する際のアクティブスクリーンとして特に有用であることが分かる。驚くべきことに、このようなスクリーンが1個だけでも有用であり、また2〜3個であると特に有用であると同時に、図4に示すように、許容できる低い背圧を維持するように操作を行うことができることが分かった。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
【表7−1】

【0073】
【表7−2】

【0074】
【表7−3】

【0075】
【表7−4】

【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】ゲルカウントの結果を示す図である。
【図2】ゲルカウントの結果を示す図である。
【図3】ゲルカウントの結果を示す図である。
【図4】圧力上昇過程を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンの製造方法であって、
(a)2g/10分〜100g/10分のI21値及び0.91g/cm3〜0.97g/cm3の密度を有するポリオレフィンを準備し;
(b)該ポリオレフィンの溶融物を形成させ、そして該ポリオレフィンを70ミクロン〜200ミクロンのメッシュ寸法を有する1個のアクティブスクリーンフィルターに5 lb/hr/平方インチ(3,500kg/hr/m2)〜100 lb/hr/平方インチ(70,000kg/hr/m2)の質量流束で通し;
(c)該スクリーンフィルターを通過させたポリオレフィンを単離すること
を含む、ポリオレフィンの製造方法。
【請求項2】
前記ポリオレフィンが4g/10分〜20g/10分のI21及び0.93g/cm3〜0.96g/cm3の密度を有するポリエチレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリエチレンが20〜100の範囲の分子量分布(Mw/Mn)を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィンが50未満の複合ゲルカウントを有するフィルムに成形される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記質量流束が10 lb/hr/平方インチ(3,500kg/hr/m2)〜50 lb/hr/平方インチ(35,000kg/hr/m2)の範囲にある、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記アクティブスクリーンフィルターが70ミクロン〜150ミクロンのメッシュ寸法を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ポリオレフィン溶融物を形成させること及び該ポリオレフィンを1個のスクリーンフィルターに通すことを、歯車ポンプを有する押出器を通じて実施し、該歯車ポンプの吐き出し圧力が、24時間の連続出力当たり、出発圧力から25%未満まで増加する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記アクティブスクリーンを補強するための1個以上のパッシブスクリーンが存在する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記溶融物を前記スクリーンに通す前にブレンドする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ポリエチレンが単一の連続気相流動床反応器内で製造されたバイモーダルポリエチレンである、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ポリエチレンの製造方法であって、
(a)2g/10分〜100g/10分のI21値及び0.91g/cm3〜0.97g/cm3の密度を有するポリエチレンを準備し;
(b)該ポリエチレンの溶融物を形成させ、そして、該ポリエチレンを、70ミクロン〜200ミクロンのメッシュ寸法を有する1個以上のアクティブスクリーンフィルターに5 lb/hr/平方インチ(3,500kg/hr/m2)〜100 lb/hr/平方インチ(70,000kg/hr/m2)の質量流束で通し;
(c)該スクリーンフィルターを通過させたポリエチレンを単離すること
を含む、ポリエチレンの製造方法。
【請求項12】
前記ポリエチレンが4g/10分〜20g/10分のI21及び0.93g/cm3〜0.96g/cm3の密度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリエチレンが2g/10分〜80g/10分のI21及び0.91g/cm3〜0.93g/cm3の密度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリエチレンが20〜100の範囲の分子量分布(Mw/Mn)を有する、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ポリエチレンが2〜5の範囲の分子量分布(Mw/Mn)を有する、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記ポリエチレンが50未満の複合ゲルカウントを有するフィルムに成形される、請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記質量流束が10 lb/hr/平方インチ(7,000kg/hr/m2)〜50 lb/hr/平方インチ(35,000kg/hr/m2)である、請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記アクティブスクリーンフィルターが70ミクロン〜150ミクロンのメッシュ寸法を有する、請求項11〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ポリエチレンの溶融物を形成させること及び該ポリエチレンを1個以上のスクリーンフィルターに通すことを、歯車ポンプを有する押出器を通じて達成し、該歯車ポンプの吐き出し圧力が、24時間の連続出力当たり、出発圧力から25%未満まで増加する、請求項11〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
アクティブスクリーンを補強するための1個以上のパッシブスクリーンが存在する、請求項11〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記溶融物を前記スクリーンに通す前にブレンドする、請求項11〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記ポリエチレンが単一の連続気相流動床反応器内で製造されたバイモーダルポリエチレンである、請求項11〜21のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−520836(P2009−520836A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538888(P2008−538888)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/038506
【国際公開番号】WO2007/053258
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(599168648)ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー (70)
【Fターム(参考)】