説明

ポリオレフィン樹脂フィルム、及びこれを用いた積層体

【課題】 フィッシュアイが少なく外観に優れ、保護する相手材を汚染しない低汚染性にも優れるポリオレフィン樹脂フィルム、及びこれを用いた積層体を提供する。
【解決手段】 ラジカル捕捉剤量が0.1〜3ppm、50μm以上のフィッシュアイが10個/m以下であるポリオレフィン樹脂フィルム、及びこれを用いた積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン樹脂フィルム、及びこれを用いた積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は経済性、機械強度、透明性、成形性、衛生性等に優れていることから広範な産業分野で使用されており、例えば単層又は多層フィルムに加工され、光学用の保護フィルムをはじめとして、金属板、樹脂板、自動車、電子材料等の保護フィルムとして広範に用いられている。
【0003】
保護フィルムの品質に対する要求は年々厳しくなっており、特に外観を損ねるフィッシュアイの低減、保護する相手材を汚染しない低汚染性が求められている。ここでフィッシュアイとは、フィルム中に異物やゲルがあるとその周辺部分が肉眼、偏光板、または顕微鏡で見ると魚の目のようにみえることからきた樹脂フィルムの欠点の一つである。
【0004】
ポリオレフィン樹脂フィルムの場合、フィッシュアイの原因の一つであるゲルには未溶融ゲルと架橋ゲルがあることが知られている。
【0005】
架橋ゲルはポリオレフィン樹脂が3次元的に架橋し、加熱溶融、及び溶剤への溶解が難しいゲルである。一方、未溶融ゲルは加熱により溶融又は溶解可能なゲルであり、押出機により溶融混練し、ダイス等から押出した場合には未溶融ゲルとしての状態を保持している比率が高く、製品外観の低下を招く。
【0006】
特にベッセル型反応器又はチューブラー型反応器を用いて高圧ラジカル重合で得られるポリオレフィン樹脂、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、低密度ポリエチレン等では上記の未溶融ゲル、架橋ゲルが多いことが知られている。高温の反応器内では生成したポリマーからラジカル的に水素が引き抜かれ、分岐が生成する。この分岐ポリマーは反応器に接続された高圧分離器、及びペレット化の過程で高温に晒されて、凝集体としての未溶融ゲル、又は架橋反応を起こして架橋ゲルを生成することが、この理由である。
【0007】
そこで、この問題を解決する方法として、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下、特定の重合条件でエチレンを重合するに際し、反応系内にラジカル重合禁止剤を共存させることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0008】
また、樹脂に含まれる架橋ゲル、及び未溶融ゲルを成形時に除去する方法が提案されている。例えば、押出機に高粘度樹脂溶融体輸送用ギヤーポンプ、及び濾過装置として焼結フィルターを設置し、溶融ポリエチレン系樹脂を押出してフィルムを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0009】
さらには、溶融した膜状のポリオレフィン樹脂をキャストロールと該ロールに沿って円弧状に形成された無端ベルトとの間で挟圧して得られるフィルムが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−342307号公報
【特許文献2】特開平8−103952号公報
【特許文献3】特開平8−25460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に提案の方法はフィッシュアイを低減する一定の効果はあるもののそのレベルは不充分であり、ラジカル重合禁止剤を共存させるためポリエチレン樹脂フィルムに成形し保護フィルムとして使用した場合、相手剤を汚染する欠点がある。
【0012】
また、特許文献2、3に記載の方法は、ポリオレフィン樹脂が高温にさらされるため架橋ゲルが生成する課題を解決し切れていない。特に特許文献2に記載の方法は、焼結フィルターを用いるため高温にさらされる時間が長くなってしまう。
【0013】
一方、架橋ゲルの生成を抑制するためにラジカル捕捉剤を添加する方法が考えられるが、高温にさらされる樹脂の架橋ゲルの生成を抑制するには多量のラジカル捕捉剤が必要で、これらは保護フィルムとして使用する際に汚染の原因になってしまう。
【0014】
そこで、本発明は、フィッシュアイが少なく外観に優れ、保護する相手材を汚染しない低汚染性にも優れるポリオレフィン樹脂フィルム、及びその積層体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ラジカル捕捉剤量が0.1〜3ppm、50μm以上のフィッシュアイが10個/m以下であるポリオレフィン樹脂フィルムが、フィッシュアイが少なく外観に優れ、さらには低汚染性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、ラジカル捕捉剤量が0.1〜3ppm、50μm以上のフィッシュアイが10個/m以下であるポリオレフィン樹脂フィルム、及びこれを用いた積層体である。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、ラジカル捕捉剤量が0.1〜3ppm、50μm以上のフィッシュアイが10個/m以下である。
【0018】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは長さ、幅、厚さに特に制限はなく、平面状成形物であり、テープ類、リボン類も含む。本発明のポリオレフィン樹脂フィルムの厚みは、フィルムの扱いやすさの観点から1〜200μmが好ましく、5〜150μmがさらに好ましく、10〜100μmが特に好ましい。
【0019】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムにおけるポリオレフィン樹脂としては、何ら制限はなく、例えば、ポリエチレン、エチレン系共重合体、ポリプロピレン、ポリプロピレン系共重合体、さらにこれらポリオレフィン樹脂の塩素化物等を挙げることができる。さらに詳しくは、ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等が挙げられる。エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、具体的には、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、エチレン−ビニルアルコール樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。ポリプロピレン系共重合体としては、例えば、ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー等が挙げられる。また、これらポリオレフィン樹脂は単独で、又は複数選択して用いることができる。
【0020】
中でも得られるポリオレフィン樹脂フィルムが柔軟であることから、ポリオレフィン樹脂フィルムにおけるポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
【0021】
ポリオレフィン樹脂フィルムがポリエチレンフィルムの場合には、得られるフィルムが柔軟で取り扱い易い点から、ポリオレフィン樹脂フィルムの密度は931〜936kg/mであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂フィルムがエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムの場合には、得られるフィルムが柔軟で取り扱い易い点から、ポリオレフィン樹脂フィルムの密度は923〜970kg/mであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂フィルムがエチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物フィルムの場合には、得られるフィルムが柔軟で取り扱い易い点から、ポリオレフィン樹脂フィルムの密度は923〜1200kg/mであることが好ましい。
【0022】
これらのポリオレフィン樹脂を合成するための重合方法に特に限定はなく、通常知られている方法を用いることができ、例えば、高圧ラジカル重合法、中低圧重合法、溶液重合法、スラリー重合法等を挙げることができる。
【0023】
また、重合に使用する触媒に特に制限はなく、例えば、過酸化物系触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒等が挙げられる。
【0024】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムにおけるポリオレフィン樹脂の分子量は、ポリオレフィン樹脂が溶剤に溶解する限り何ら制限は無いが、フィルムの強度を維持し、かつ、ポリマー溶液の流動性が維持して薄いフィルムを得るため、直鎖状ポリエチレン換算の重量平均分子量(M)が、10,000〜1,000,000が好ましく、20,000〜700,000がさらに好ましく、25,000〜300,000が特に好ましい。
【0025】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムに含有されるラジカル捕捉剤としては、何ら制限はなく、例えば、フェノール系ラジカル捕捉剤、リン系ラジカル捕捉剤、イオウ系ラジカル捕捉剤、アミン系ラジカル捕捉剤、ラクトン系ラジカル捕捉剤、ビタミンE系ラジカル捕捉剤等が挙げられる。
【0026】
該フェノール系ラジカル捕捉剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、カルシウム(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−モノエチル−フォスフェート)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン〕、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ビス〔3,3−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)酪酸〕グリコールエステル、トリフェノール、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、2,2’−オキサミドビス〔エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,1,3−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミックアシッドトリエステルと1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)の混合物、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナアミド)、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等を挙げることができる。
【0027】
該リン系ラジカル捕捉剤としては、例えば、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニル)フォスファイト、トリス(2,3−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)フォスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルフォスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)エチルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン フォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、ジフェニルデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリオクチルフォスファイト、トリドデシルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト、トリドデシルトリチオフォスファイト等を挙げることができる。
【0028】
該イオウ系ラジカル捕捉剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジオクタデシルサルファイド、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオ尿素、トリブチルチオ尿素等を挙げることができる。
【0029】
該アミン系ラジカル捕捉剤としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの反応物、フェニル−1−ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α、α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン等を挙げることができる。
【0030】
該ラクトン系ラジカル捕捉剤としては、例えば、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−t−ブチルフラン−2−オンとO−キシレンとの反応生成物等を挙げることができる。
【0031】
該ビタミンE系ラジカル捕捉剤としては、例えば、3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−2H−ベンゾピラン−6−オール等を挙げることができる。
【0032】
これらのラジカル捕捉剤は、より大きな効果を発現するために2種以上を併用して用いることができる。
【0033】
これらのラジカル捕捉剤の中でも、架橋ゲルの生成を抑制する効果が大きいことから、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールが好ましい。
【0034】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルム中のラジカル捕捉剤量は0.1〜3ppmであり、0.1〜2ppmがさらに好ましく、0.1〜1ppmが特に好ましい。ラジカル捕捉剤量が3ppmを超えるとポリオレフィン樹脂フィルムを保護フィルムとして用いた際に相手材を汚染することがあり、0.1ppm未満ではポリオレフィン樹脂フィルムが着色することがある。
【0035】
また、本発明のポリオレフィン樹脂フィルム中の50μm以上のフィッシュアイは10個/m以下であり、さらに好ましくは50μm以上のフィッシュアイが5個/m以下であり、特に好ましくは3個/m以下である。50μm以上のフィッシュアイが10個/mを超えると、例えば高品質を求められる保護フィルムとして用いることができない。
【0036】
ここでいうフィッシュアイとは、ポリオレフィン樹脂フィルム中で光学的に不均一な状態を示している領域と定義される。
【0037】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を含有していても良い。添加剤としては、例えば、染料、有機顔料、無機顔料、無機補強剤、可塑剤、アクリル加工助剤等の加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡剤、滑剤、ワックス、結晶核剤、可塑剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填材、有機充填材等を挙げることができる。
【0038】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムを得る方法は、例えば、ポリオレフィン樹脂を加熱して溶融させた後にフィルム化する方法、ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶解させた後にフィルム化する方法等が挙げられる。
【0039】
ポリオレフィン樹脂を加熱して溶融させた後にフィルム化する方法としては、例えば、インフレーション法(空冷法、水冷法)、Tダイ法、カレンダー法等が挙げられる。
【0040】
その際、ラジカル捕捉剤は、例えば、ポリオレフィン樹脂のペレットとそのまま混合する、ラジカル捕捉剤を予めポリオレフィン樹脂に練り込んだマスターバッチとポリオレフィン樹脂のペレットと混合する等して添加することができる。
【0041】
ラジカル捕捉剤の添加量は0.1〜3ppmが好ましく、0.1〜2ppmがさらに好ましく、0.1〜1ppmが特に好ましい。ラジカル捕捉剤量が3ppmを超えるとポリオレフィン樹脂フィルムを保護フィルムとして用いた際に相手材を汚染することがあり、0.1ppm未満ではポリオレフィン樹脂フィルムが着色することがある。
【0042】
ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶解させた後にフィルム化する方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶解してポリオレフィン溶液を調製する工程、及び引き続き、ポリオレフィン溶液を基材上に連続的に流延した後、加熱して溶剤を蒸散させる工程からなる溶液流延法が挙げられる。
【0043】
その際、ラジカル捕捉剤は、例えば、ポリオレフィン樹脂のペレットとそのまま溶液中で混合する、ラジカル捕捉剤を予めポリオレフィン樹脂に練り込んだマスターバッチとポリオレフィン樹脂のペレットと溶液中で混合する等して添加することができる。
【0044】
ラジカル捕捉剤の添加量は0.1〜3ppmが好ましく、0.1〜2ppmがさらに好ましく、0.1〜1ppmが特に好ましい。ラジカル捕捉剤量が3ppmを超えるとポリオレフィン樹脂フィルムを保護フィルムとして用いた際に相手材を汚染することがあり、0.1ppm未満ではポリオレフィン樹脂フィルムが着色することがある。
【0045】
中でも、得られるポリオレフィン樹脂フィルムのフィッシュアイが少ない、ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶解してポリオレフィン溶液を調製する工程、及び引き続き、ポリオレフィン溶液を基材上に連続的に流延した後、加熱して溶剤を蒸散させる工程からなる溶液流延法が好ましい。
【0046】
好ましい製造法である溶液流延法の各工程について以下に説明する。
【0047】
1)ポリオレフィン溶液を調製する工程
ポリオレフィン溶液を調製する工程で用いられる溶剤は、ポリオレフィン樹脂を溶解する溶剤であれば特に制限は無く、例えば、ハロゲン系溶剤、沸点が70〜140℃、溶解度指数が13〜20MPa1/2である脂肪族炭化水素系化合物、芳香族炭化水素系化合物、エーテル系化合物及びアセタール系化合物から選ばれる少なくとも1種類の非ハロゲン系溶剤等を挙げることができる。これらの溶剤は2種以上を混合して使用することもでき、その割合は特に限定するものではない。
【0048】
ハロゲン系溶剤としては、例えば、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等の塩素系溶剤、臭化エタン等の臭素系溶剤、モノフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、ジクロロペンタフルオロプロパン等のフッ素系溶剤、ブロモクロロメタン、1,2−ジブロモ−1,1−ジフルオロエタン等の臭素とフッ素を含有する溶剤等が挙げられる。
【0049】
沸点が70〜140℃、溶解度指数が13〜20MPa1/2である脂肪族炭化水素系化合物、芳香族炭化水素系化合物、エーテル系化合物及びアセタール系化合物としては、例えば、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、n−オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,2,5−トリメチルヘキサン、1−ヘプテン、1−オクテン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂肪族炭化水素系化合物、ベンゼン、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系化合物、シクロペンチルメチルエーテル、エチルアミノエーテル、ジオキサン、ジプロピルエーテル等のエーテル系化合物、ジエチルアセタ−ル等のアセタール系化合物が例示される。
【0050】
これらの溶剤の中で、ポリオレフィン樹脂の溶解性の観点からはポリオレフィン樹脂を例えば、80〜120℃で溶解できる溶剤が好ましく、また、溶剤の蒸散の観点からは沸点の低い溶剤が好ましい。これらの観点から、1,1,2−トリクロロエタン、n−ヘプタン、メチルシクロヘキサン、トルエン、シクロペンチルメチルエーテルが好ましく、1,1,2−トリクロロエタン、メチルシクロヘキサンがさらに好ましい。
【0051】
ポリオレフィン樹脂の溶解温度は用いる溶剤とポリオレフィンに樹脂より適宜決定される。使用する溶剤の沸点以下でポリオレフィン樹脂が溶解しない場合には、必要に応じて耐圧容器を用いて溶剤の沸点以上の温度で溶解することも可能であるが、使用する溶剤の常圧での沸点以下で溶解させるのが経済的側面から好ましい。溶解温度は、例えば60〜200℃が好ましく、70〜150℃がさらに好ましい。
【0052】
溶解時間は使用するポリオレフィン樹脂の形状、及び溶解温度に依存し、例えば20分〜8時間が好ましく、30分〜2時間がさらに好ましい。また、ポリオレフィン樹脂の溶解は完全に行う必要があり、一定の溶液粘度に到達するまで溶解を行うことが好ましい。
【0053】
また、溶解する装置に特に制限はなく、例えば、ベッセル、チューブ、横型反応器、押出機等を用いることができる。また、溶解は撹拌しながら行うのが好ましい。
【0054】
ポリオレフィン樹脂を溶剤へ溶解して得られたポリオレフィン溶液は、異物を除くために濾過することが好ましく、濾過はポリオレフィン樹脂が溶解した状態で行うことが好ましい。濾過方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、自然濾過、遠心濾過、加圧濾過、減圧濾過、デカンテーション等が挙げられる。濾材としては、例えば、金属網、積層金網焼結体、金属不織布焼結体、樹脂織布、樹脂不織布、樹脂メンブラン、濾布、紙等が挙げられる。これらの濾材は単独、又は複数組み合わせて使用することができ、また濾過精度を上げるため、濾過は多段階に分けて行うこともできる。濾材の目開きは100μm以下が好ましく、50μm以下がさらに好ましく、30μm以下が特に好ましい。
【0055】
ポリオレフィン溶液を濾過する際の温度に特に制限は無く、例えば、使用する溶剤の沸点以下で、ポリオレフィン樹脂が溶解した状態等で行うことができる。
【0056】
ポリオレフィン溶液の濃度には特に制限がなく、選択した溶剤により適宜設定することが可能であり、0.1〜50重量%が好ましく、1〜30重量%がさらに好ましく、5〜25重量%が特に好ましい。
【0057】
2)溶剤を蒸散させる工程
溶剤を蒸散させる方法としては、例えば、ポリオレフィン溶液を基材上に連続的に流延し薄膜化した後、加熱する方法が挙げられる。
【0058】
基材としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル製のフィルムに代表される各種樹脂フィルム、これら樹脂フィルムの表面にシリコン処理、アクリル樹脂等のハードコートによる表面処理を施した各種樹脂フィルム、これら樹脂フィルムに金属蒸着処理を行った各種樹脂フィルムが挙げられる。さらには、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属箔、金属フィルム、金属シート等の各種フィルム、必要に応じてこれら金属素材上にポリマーコーティングを施したもの、無機コーティングを施したものを例示することができる。また、必要に応じて加熱した回転金属ドラム上に流延することも可能であり、エンドレスのポリマーベルト、金属ベルト上に流延することができる。
【0059】
ポリオレフィン溶液を基材に流延する方法としては公知の方法であるグラビアコーター、コンマコーター、ダイコーター、ダブルメイヤーバーコーター等が例示される。ポリオレフィン樹脂を溶解させるために加熱が必要な場合であり、かつ溶剤の沸点が低い場合には、流延過程における溶剤の急速な揮発によるポリオレフィン溶液の粘度上昇を抑制するため、ダイコーターを用いるのが好ましい。流延により形成された直後の基材上のポリオレフィン溶液の厚みは3〜500μmが好ましく、流延速度は基材上に形成された直後のポリオレフィン樹脂層の厚みとは独立に0.5〜50m/分が好ましい。
【0060】
基材上に形成されたポリオレフィン溶液層の乾燥は1段階から多段階に分けて行うことができ、その温度範囲は50〜200℃が好ましく、多段階で乾燥する場合には50〜100℃で1次乾燥し、100〜200℃の範囲で2次乾燥する等の方法をとることが好ましい。また、必要に応じて乾燥を3段階以上に分けて行うことも可能である。この乾燥は工業的にはダイコーターに隣接した乾燥炉を用いて効率的に行うことができる。ポリオレフィン樹脂層は十分な乾燥の後に基材から剥離して巻取る、又は乾燥途中の段階で基材から剥離して、ポリオレフィン樹脂層のみを乾燥し、巻取る等の方法によりフィルム化し、ポリオレフィン樹脂フィルムを得ることができる。
【0061】
本発明の積層体は、ラジカル捕捉剤量が0.1〜3ppm、50μm以上のフィッシュアイが10個/m以下であるポリオレフィン樹脂フィルムを用いた積層体である。
【0062】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムと積層する層としては、例えば、本発明のポリオレフィン樹脂フィルム、PETフィルム等の熱可塑性樹脂フィルム、布、不織布、合成繊維、合成皮革、皮革、金属、ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紙、木材、ガラス、石材、陶器、磁器からなる群から選ばれる1種以上の層が挙げられ、これらは1層または2層以上積層しても良い。利用範囲の広い積層体が得られることから熱可塑性樹脂フィルムとの積層体が好ましい。
【0063】
本発明の積層体を製造するには、例えば、多層流延成形、多層押出し成形、多層射出成形、多層ラミネート成形、多層ドライラミネート成形、多層インフレーション成形、多層ブロー成形等の成形法等が挙げられる。また、接着剤、粘着剤、ホットメルト等により張り合わせたり、高周波ウェルダー等により熱融着する方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0064】
本発明により産業上極めて応用範囲の広い、フィッシュアイが少なく外観に優れ、さらには低汚染性に優れるポリオレフィン樹脂フィルム、及びこれを用いた積層体を提供することができる。本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、例えば高い品質が求められる保護フィルムとして有用である。
【実施例】
【0065】
以下に実施例にもとづき本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明の理解を助けるための例であって本発明はこれらの実施例により何等の制限を受けるものではない。
【0066】
<ポリオレフィン樹脂>
実施例で用いたポリオレフィン樹脂は、添加剤が添加されていない樹脂を用いた。
【0067】
(1)ポリエチレン
1)低密度ポリエチレン
LDPE;ペトロセン(登録商標)220K(MFR=1.1g/10分、密度=931kg/m)、東ソー株式会社製
2)線状低密度ポリエチレン
L−LDPE−1;ニポロン−L(登録商標)M70K(エチレン−ブテン共重合体、MFR=20g/10分、密度=936kg/m)、東ソー株式会社製
L−LDPE−2;ニポロン−Z(登録商標)YB10T(エチレン−ヘキセン共重合体、MFR=1.0g/10分、密度=920kg/m)、東ソー株式会社製
3)高密度ポリエチレン
HDPE;ニポロンハード(登録商標)8022(MFR=0.35g/10分、密度=958kg/m)、東ソー株式会社製
(2)エチレン−酢酸ビニル共重合体
EVA;ウルトラセン(登録商標)546K(酢酸ビニル含有量10wt%、MFR=6g/10分、密度=929kg/m)、東ソー株式会社製
(3)エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物
EVAOH;メルセンH(登録商標)H−6051K(MFR=5.5g/10分、密度=970kg/m)、東ソー株式会社製
<ラジカル捕捉剤>
BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール);スミライザー(登録商標)BHT、住友化学工業株式会社製
AO−60(ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート));アデカスタブ(登録商標)AO−60、旭電化工業株式会社製
<基材>
PETフィルム;メリネックス(登録商標)タイプS(厚み:100μm),帝人デュポンフィルム株式会社製
<流延>
加熱可能な幅300mmのダイを設置した塗工機を用いて行った。オートクレーブで溶解したポリマー溶液はユニコントロールズ(株)製の加熱ジャケット、窒素導入バルブを備えた5Lスケールの加圧可能なタンクに移液した。タンク内のポリマー溶液は、タンクを加圧することによりダイスへ移液した。タンクとダイスは、タンク下部の抜出しバルブに(株)マイセック製のホースヒーターを施工したテフロン(登録商標)チューブで連結し、一定温度に保持した状態とした。
【0068】
ダイスの温調は日本金型産業(株)製の金型温調機TSW−75Sを用いて行い、ホースヒーター、及び、加熱タンクは(株)マイセック製のHST−120CTを用いて温度調節した。
【0069】
<フィッシュアイの測定>
得られたフィルムの下から蛍光灯を照射し、目視やルーペを用いフィルム中のフィッシュアイの個数と大きさを測定し、個数は1m当たりの個数として算出した。
【0070】
<ラジカル捕捉剤量の測定>
得られたフィルムをクロロホルム/メタノール=8/2(容積比)混合溶媒に入れ、90℃、2時間抽出した抽出液から溶剤を除去し、メタノールを加え一定の容積にした。本溶液をガスクロマトグラフ質量分析計(ターボマス−ゴールド、パーキンエルマー製)を用いてラジカル捕捉剤量を定量した。
【0071】
<汚染性の測定>
得られたポリオレフィン樹脂フィルムをポリカーボネート板と貼り合せ積層体を作製した後、60℃に設定したギアオーブンに24時間放置した後取出して、ポリオレフィン樹脂フィルムをポリカーボネート板から剥離し表面の汚染状態を目視で評価した。評価結果は、汚染が見られない場合は◎、ほとんど見られない場合には○、汚染が見られた場合には×とした。
【0072】
<密度の測定>
ポリオレフィン樹脂フィルムの密度は、JIS K7112(1999年)に準拠して、密度こうばい管法により測定した。
【0073】
実施例1
LDPEのペレット2.5kg、BHT0.005g(2ppm)、及びメチルシクロヘキサン15.4kgを30Lのオートクレーブに仕込み、加熱下110℃で2時間攪拌してLDPEを溶解してポリオレフィン溶液を得た。この溶液を500メッシュの金属網でろ過しながら、105℃に加温した5Lのタンクに溶液3Lを移液した。タンクを窒素で加圧して、105℃に保温した加温ジャケット付のテフロン(登録商標)チューブを通して105℃に加温した300mm幅のコーティングダイへ送液し、ダイからポリオレフィン溶液を基材であるPETフィルム上に流延し、150℃で乾燥した。PETフィルムの速度は2m/分に設定した。得られたPETフィルムとLDPEフィルムの積層体からLDPEフィルムを剥離してポリオレフィン樹脂フィルムを得た。得られたポリオレフィン樹脂フィルムの厚み、ラジカル捕捉剤の量、汚染性、フィッシュアイ、及び密度を測定した。その結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

得られたポリオレフィン樹脂フィルムの50μm以上のフィッシュアイは0.7個/mで、汚染性も無く、優れた品質のフィルムであった。
【0075】
実施例2〜6
表1に示すポリオレフィン樹脂、ラジカル捕捉剤、溶剤、それらの仕込量、溶解温度、溶解時間とし、コーティングダイ、テフロン(登録商標)チューブ、タンクの温度を溶解温度より5℃下げた以外は実施例1と同様の手法により、ポリオレフィン樹脂フィルムを得た。得られたポリオレフィン樹脂フィルムを実施例1と同様に評価した。その結果を表1に合わせて示す。
【0076】
得られたポリオレフィン樹脂フィルムは、50μm以上のフィッシュアイが0.9〜1.5個/mで、汚染性も無く、優れた品質のフィルムであった。
【0077】
比較例1
LDPEのペレット2.5kg、BHT0.075g(30ppm)、及び1,1,2−トリクロロエタン20L(28.8kg)を30Lのオートクレーブに仕込み、加熱下110℃で2時間攪拌してLDPEを溶解してポリオレフィン溶液を得た。この溶液を500メッシュの金属網でろ過しながら、105℃に加温した5Lのタンクに溶液3Lを移液した。タンクを窒素で加圧して、105℃に保温した加温ジャケット付のテフロン(登録商標)チューブを通して105℃に加温した300mm幅のコーティングダイへ送液し、ダイからポリオレフィン溶液を基材であるPETフィルム上に流延し、150℃で乾燥した。PETフィルムの速度は2m/分に設定した。PETフィルムから剥離してポリオレフィン樹脂フィルムを得た。得られたポリオレフィン樹脂フィルムを実施例1と同様に評価したところ、厚み20μm、ラジカル捕捉剤20ppm、汚染性×、50μm以上のフィッシュアイ1.5個/m、密度931kg/mであった。
【0078】
得られたポリオレフィン樹脂フィルムは汚染性に劣るフィルムであった。
【0079】
比較例2
BHT0.005gを用いない以外は実施例1と同様の手法により、ポリオレフィン樹脂フィルムを得た。得られたポリオレフィン樹脂フィルムは少し黄色く着色していた。
【0080】
比較例3
LDPEのペレット5kg、BHT0.45g(90ppm)をドライブレンドした後、ポリオレフィン樹脂を加熱して溶融させた後にフィルム化する方法であるTダイ法でフィルムを作製した。装置は、(株)東洋精機製作所製のラボプラストミルにφ20mm単軸押出機、及び250mm幅のTダイを連結したものを使用した。押出機、及びTダイの温度は180℃、スクリュー回転数は50rpmであった。得られたポリオレフィン樹脂フィルムを実施例1と同様に評価したところ、厚み19μm、ラジカル捕捉剤50ppm、汚染性×、50μm以上のフィッシュアイ20個/m、密度931kg/mであった。
【0081】
得られたポリオレフィン樹脂フィルムは、フィッシュアイが多く、汚染性に劣るフィルムであった。
【0082】
比較例4
L−LDPE−2のペレット5kg、BHT0.25g(50ppm)をドライブレンドした後、比較例3と同様にポリオレフィン樹脂フィルムを作製し、実施例1と同様に評価したところ、厚み20μm、ラジカル捕捉剤30ppm、汚染性×、50μm以上のフィッシュアイ15個/m、密度920kg/mであった。
【0083】
得られたポリオレフィン樹脂フィルムは、汚染性に劣り、ラジカル捕捉剤が少ない上に高温にさらされたためフィッシュアイが多いフィルムであった。
【0084】
比較例5
HDPEのペレット5kg、BHT0.25g(50ppm)をドライブレンドした後、押出機、及びTダイの温度を200℃とした以外は比較例2と同様にポリオレフィン樹脂フィルムを作製し、実施例1と同様に評価したところ、厚み20μm、ラジカル捕捉剤20ppm、汚染性×、50μm以上のフィッシュアイ35個/m、密度958kg/mであった。
【0085】
得られたポリオレフィン樹脂フィルムは、汚染性に劣り、ラジカル捕捉剤が少ない上に高温にさらされたためフィッシュアイが多いフィルムであった。
【0086】
比較例6
EVAのペレット5kg、BHT0.25g(50ppm)をドライブレンドした後、押出機、及びTダイの温度を180℃とした以外は比較例2と同様にポリオレフィン樹脂フィルムを作製し、実施例1と同様に評価したところ、厚み20μm、ラジカル捕捉剤20ppm、汚染性×、50μm以上のフィッシュアイ25個/m、密度929kg/mであった。
【0087】
得られたポリオレフィン樹脂フィルムは、汚染性に劣り、ラジカル捕捉剤が少ない上に高温にさらされたためフィッシュアイが多いフィルムであった。
【0088】
比較例7
EVAOHのペレット5kg、BHT0.25g(50ppm)をドライブレンドした後、押出機、及びTダイの温度を180℃とした以外は比較例2と同様にポリオレフィン樹脂フィルムを作製し、実施例1と同様に評価したところ、厚み20μm、ラジカル捕捉剤25ppm、汚染性×、50μm以上のフィッシュアイ30個/m、密度970kg/mであった。
【0089】
得られたポリオレフィン樹脂フィルムは、汚染性に劣り、ラジカル捕捉剤が少ない上に高温にさらされたためフィッシュアイが多いフィルムであった。
【0090】
実施例7
実施例1で得られたLDPEフィルムと実施例5で得られたEVAフィルムを貼り合せて積層体を得た。得られた積層体の汚染性を評価したところ◎であった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、フィッシュアイが少なく外観に優れ、さらには低汚染性に優れるため、例えば高い品質が求められる保護フィルムとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル捕捉剤量が0.1〜3ppm、50μm以上のフィッシュアイが10個/m以下であることを特徴とするポリオレフィン樹脂フィルム。
【請求項2】
ポリオレフィン樹脂がポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン樹脂フィルム。
【請求項3】
ポリオレフィン樹脂フィルムがポリエチレンフィルムの場合、密度が931〜936kg/mであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリオレフィン樹脂フィルム。
【請求項4】
ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶解してポリオレフィン溶液を調製する工程、及び引き続き、ポリオレフィン溶液を基材上に連続的に流延した後、加熱して溶剤を蒸散させる工程から製造されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のポリオレフィン樹脂フィルム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載のポリオレフィン樹脂フィルムを用いたことを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2010−202697(P2010−202697A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46819(P2009−46819)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】