説明

ポリオレフィン樹脂複合材料及びその製造方法

【課題】 機械物性を向上させたポリオレフィン樹脂複合材料を提供する。
【解決手段】 (a)未変性ポリオレフィン、(b)層状珪酸塩、及び(c)少なくとも2種類の変性ポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂複合材料であって、前記変性ポリオレフィンのうち少なくとも1種が、(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィンであることを特徴とするポリオレフィン樹脂複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂複合材料に関し、更に詳しくは、(a)未変性ポリオレフィン、(b)層状珪酸塩、及び(c)少なくとも2種類の変性ポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィンの機械的特性、熱的特性、ガスバリア性等を改善すべく、層状珪酸塩を配合することが試みられている。その際、層状珪酸塩をポリオレフィン中に層剥離した状態で分散させるべく、有機オニウムイオンで有機化されている層状珪酸塩が用いられているが、これを慣用の混合、混練によりポリオレフィン中に均一に層剥離した状態で分散させるのは困難であることが知られている。
【0003】
これに対して、有機オニウムイオンで有機化されている層状珪酸塩の結晶側面の水酸基に、該水酸基と化学結合性もしくは化学親和性を有する官能基を分子の末端に有する化学物質を化学修飾することによりポリオレフィン中に分散させる方法(例えば、特許文献1)が提案されている。
【0004】
しかしながら、この方法では、あらかじめ有機オニウムイオンで有機化されている層状珪酸塩の結晶側面の水酸基と化学結合性もしくは化学親和性を有する官能基を分子の末端に有する化学物質で化学修飾する工程が加わることから製造コスト面での不利は免れない。また、本発明者等の検討によると、層状珪酸塩はポリオレフィン中に十分に層剥離した状態でかつ均一に分散するに至っていないと考えられ、曲げ弾性率等の機械物性の向上には至らず、層状珪酸塩配合による機械物性の改善という所期の目的を達成し得ていないことが判明した。
【0005】
ポリオレフィン中に層状珪酸塩を層剥離した状態で分散させる方法として、層状珪酸塩の層間にアルキルシロキシ基等を含有するオレフィン系層間拡張ポリマーをインターカレートした層状珪酸塩と、ポリオレフィンとを溶融混練する方法(例えば、特許文献2)、あらかじめ有機オニウムイオンで有機化されている層状珪酸塩とポリオレフィンをシランカップリング剤等により化学結合させる方法(例えば、特許文献3)、層間にカチオン性
無機化合物を含有する層状珪酸塩と変性ポリオレフィン系重合体とを溶融混練することにより層剥離した状態で分散させ、それをオレフィン系重合体で希釈する方法(例えば、特許文献4)等が提案されている。
【0006】
しかしながら、本発明者等の検討によると、これら従来の方法は、いずれもいまだ層状珪酸塩がポリオレフィン中に十分に層剥離した状態でかつ均一に分散し得ておらず、層状珪酸塩配合による諸物性の改善、特に機械物性の向上という所期の目的を十分に達成し得てはいないことが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−355640号公報
【特許文献2】特開2002−338697号公報
【特許文献3】特開2002− 60555号公報
【特許文献4】特開2006−307190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリオレフィンへの層状珪酸塩の配合における前述の従来技術に鑑み、機械物性を向上させたポリオレフィン樹脂複合材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、未変性ポリオレフィンと層状珪酸塩と少なくとも2種類の変性ポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂複合材料において、前記2種類の変性ポリオレフィンのうち少なくとも1種類として、層状珪酸塩と共有結合性のある官能基を有する変性ポリオレフィンを用いることにより、層状珪酸塩ポリオレフィン中に十分に層剥離した状態で分散させることができ、ポリオレフィンの結晶性が向上するとともに、層状珪酸塩のフィラー効果がより増強し、前記課題が解決できることを見出し本発明に到った。
【0010】
すなわち本発明の第一の要旨は、(a)未変性ポリオレフィン、(b)層状珪酸塩、及び(c)少なくとも2種類の変性ポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂複合材料であって、(c)少なくとも2種類の変性ポリオレフィンのうち少なくとも1種が、(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィンであることを特徴とするポリオレフィン樹脂複合材料に存する。
【0011】
第二の発明の要旨は、前記ポリオレフィン樹脂複合材料において、(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィンが、アルコキシ基、アルコキシシリル基、環状エーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する変性ポリオレフィンであるポリオレフィン樹脂複合材料に存する。
【0012】
第三の発明の要旨は、前記ポリオレフィン樹脂複合材料において、(c)少なくとも2種類の変性ポリオレフィンのうち少なくとも1種が、(c−2)層状珪酸塩と共有結合性はないが化学親和性がある官能基を有する変性ポリオレフィンであるポリオレフィン樹脂複合材料に存する。
【0013】
第四の発明の要旨は、前記ポリオレフィン樹脂複合材料において、(c−2)層状珪酸塩と共有結合性はないが化学親和性がある官能基を有する変性ポリオレフィンが、アニオン又はカチオンを形成しうる官能基、分極性の官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する変性ポリオレフィンであるポリオレフィン樹脂複合材料に存する。
【0014】
第五の発明の要旨は、前記ポリオレフィン樹脂複合材料において、(b)層状珪酸塩が、有機オニウム塩で有機化されている層状珪酸塩であるポリオレフィン樹脂複合材料に存する。
【0015】
第六の発明の要旨は、前記ポリオレフィン樹脂複合材料において、該複合材料の全重量に対し、前記(b)層状珪酸塩を1〜30%重量含み、かつ前記(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィンを3〜50%含むポリオレフィン樹脂複合材料に存する。
【0016】
第七の発明の要旨は、(b)層状珪酸塩と、少なくとも1種の(c−2)層状珪酸塩と共有結合性はないが化学親和性がある官能基を有する変性ポリオレフィンを加熱混合する第一の工程と、第一の工程で得られた加熱混合物と少なくとも1種の(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有するポリオレフィン及び(a)未変性ポリオレフィンを溶融混練する第二の工程を含むことを特徴とするポリオレフィン樹脂複合材料の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、機械物性のより優れた、層状珪酸塩がより安定した状態で分散したポリオレフィン樹脂複合材料を提供することができる。具体的には、例えば、変性ポリオレフィンの作用により層状珪酸塩を層剥離させ、これに層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィンを作用させることにより、層剥離が安定した状態となり、この層剥離させた層状珪酸塩を均一にポリオレフィン中に分散させることができる。これにより、機械物性の優れたポリオレフィン樹脂複合材料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を更に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に限定はされるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0019】
本発明のポリオレフィン樹脂複合材料は、上記のとおり、(a)未変性ポリオレフィン、(b)層状珪酸塩、及び(c)少なくとも2種類の変性ポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂複合材料であって、(c)少なくとも2種類の変性ポリオレフィンのうち少なくとも1種が(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィンであることを特徴とするポリオレフィン樹脂複合材料である。
先ず、本発明のポリオレフィン樹脂複合材料を構成する各成分について具体的に説明する。
【0020】
(a)未変性ポリオレフィン
本発明のポリオレフィン樹脂複合材料を構成する未変性ポリオレフィン(以下これを「(a)成分」ということがある)は、変性処理を施されていないポリオレフィン系樹脂であれば特に限定されず、ポリオレフィン単独重合体、ポリオレフィン共重合体を含むものである。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体;前記α−オレフィンと、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜18程度の他のα−オレフィン等との二元或いは三元の共重合体等が挙げられる。
【0022】
さらに具体的には、ポリオレフィン単独重合体としては、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状高密度ポリエチレン等のエチレン単独重合体;プロピレン単独重合体、1−ブテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン単独重合体等が挙げられる。
【0023】
また、ポリオレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等のエチレン系共重合体樹脂;プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体等のプロピレン系共重合体樹脂;1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体等の1−ブテン系共重合体樹脂;4−メチル−1−ペンテン−エチレン共重合体等の4−メチル−1−ペンテン系共重合体樹脂;エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、1−ブテンと他のα−オレフィンとの共重合体、非共役ジエン、例えば1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、1,4−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−メチレン−2−ノ
ルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン等とα−オレフィンとの共重合体等の二元或いは三元の共重合体等が挙げられる。また、三元の共重合体としては、例えばエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体等のオレフィン系ゴム等が挙げられる。
【0024】
これらのポリオレフィン系樹脂[(a)未変性ポリオレフィン]は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
これらの中で、エチレン単独重合体樹脂、プロピレン単独重合体樹脂がコストと機械物性のバランスの面で好ましく、プロピレン単独重合体樹脂が特に好ましい。
【0025】
未変性ポリオレフィンの分子量は、成形性と機械物性のバランスの面で、重量平均分子量で、2,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上が特に好ましい。また同様の理由で1,000,000以下が好ましく、800,000以下がより好ましく、600,000以下が特に好ましい。
【0026】
上記(a)未変性ポリオレフィンは、それ自体既知の通常用いられるものであり、市販品を購入することができるし、公知の方法によって製造することもできる。
【0027】
(b)層状珪酸塩
本発明のポリオレフィン樹脂複合材料を構成する層状珪酸塩(以下これを「(b)成分」ということがある)は、従来公知の珪酸塩であって、通常、厚さが1nm程度、平均アスペクト比が20〜200程度の薄片状結晶がイオン結合によって凝集して層状構造をとっている所謂フィロ珪酸塩である。その形状は粒子状が好ましく、粒径は小さい方がポリオレフィン樹脂複合材料中での分散性がより向上するため好ましい。例えば、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定した体積平均粒径は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。また小さすぎると取り扱いが煩雑になるため、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。
【0028】
具体的には、例えば、モンモリロナイト、ソーコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト鉱物;バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物;イライト、セリサイト、海緑石、白雲母、金雲母等の雲母鉱物;カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト等のカオリナイト鉱物;セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、ヒシンゲル石、パイロフィライト等の粘土又は粘土鉱物;これらの混合層鉱物;合成雲母(膨潤性フッ素化マイカ、非膨潤性フッ素化マイカ)、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライト等の合成層状珪酸塩;クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、ペナンタイト、スドーアイト、クッケアイト、ドンバサイト等の緑泥石鉱物(クロライト);アポフィライト、タルク、マイカ等のフィロ珪酸塩鉱物等が挙げられる。
【0029】
これらの中で、モンモリロナイト、ソーコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト鉱物や合成雲母(膨潤性フッ素化マイカ、非膨潤性フッ素化マイカ)が、機械的特性、熱的特性、ガスバリア性を向上させる効果が高く好ましい。
【0030】
また、本発明において、前記層状珪酸塩は、層間に有機物がインターカレートされたものが、ポリオレフィン樹脂中での分散性の点でより好ましい。(以下層状珪酸塩の層間に有機物をインターカレートすることを、有機化ということがある。)
層間にインターカレートされる有機物としては、双極子モーメントを持つものであれば特に限定されないが、有機アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩、有機スルホニウム塩等
の有機オニウム塩が好ましい。これらの中で、層状珪酸塩の層間を十分に非極性若しくは低極性化できることから、炭素数8以上のアルキル鎖を有する有機オニウム塩が好ましく、中でも有機アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩が更に好ましく、有機アンモニウム塩が特に好ましい。
【0031】
炭素数8以上のアルキル鎖を有する有機アンモニウム塩としては、アルキル鎖の種類は特に限定されるものではないが、炭素数8以上のアルキル鎖を1個以上有していればよく、アルキル鎖同志が同じものでも異なるものでもよく、具体的には、例えばジアルキルジメチルアンモニウム塩、オクタデシルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0032】
これらの中で、層間を拡張しやすい点、ポリオレフィン系樹脂との親和性の点で、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、オクタデシルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩が好ましい。
【0033】
また、前記層状珪酸塩が層間に有する前記有機物の割合は、20重量%以上が好ましく、25重量%以上が特に好ましい。また70重量%以下が好ましく、40重量%以下が特に好ましい。有機物の割合が前記範囲未満では、層状珪酸塩の層間を十分に非極性化若しくは低極性化することが困難となる傾向となり、一方、前記範囲超過では、有機物がインターカレートされた層状珪酸塩の使用量に対する層状珪酸塩の割合が低下するため、層状珪酸塩の所期の効果が十分に発現し難い傾向となる。
【0034】
なお、本発明において、層間に有機物がインターカレートされた前記層状珪酸塩としては、層間に有機物がインターカレートされた前記層状珪酸塩として市販されているものを用いることができる。また、有機物がインターカレートされていない層状珪酸塩に前記有機物を加え、イオン交換することによって層間に前記有機物がインターカレートされた層状珪酸塩として調製したものを用いることもできる。
上記(b)層状珪酸塩は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0035】
(c)少なくとも2種類の変性ポリオレフィン
本発明を構成する(c)少なくとも2種類の変性ポリオレフィンのうち少なくとも1種は、(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィン(以下これを「(c−1)成分」ということがある)である。他の1種は、(c−1)成分以外の変性ポリオレフィン(以下これを「(c−1)以外の成分」ということがある)であり、好ましくは(c−2)層状珪酸塩と共有結合性はないが化学親和性がある官能基を有する変性ポリオレフィン(以下これを「(c−2)成分」ということがある)である。
【0036】
(c−1)成分は、層間の開いた層状珪酸塩の再凝集を防ぎ、未変性ポリオレフィン中への分散を安定化させる機能を果たすものである。本発明者等の検討により、変性ポリオレフィンが有するある種の官能基、例えばアルコキシシリル基等は、後述するとおり、層状珪酸塩と共有結合性を有することが判明した。如何なる理論にも拘泥するわけではないが、これにより、前記効果を奏するものと考えられる。
【0037】
(c−1)以外の成分、例えば(c−2)成分は、凝集性の高い層状珪酸塩の層状珪酸塩の層間に進入し、その劈開を促進する機能を果たすものである。 以下、それぞれの変性ポリオレフィンについて述べる。
【0038】
(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィン
本発明のポリオレフィン樹脂複合材料を構成する(c−1)成分は、層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィンであれば如何なる変性ポリオレフィンであっても良く、特に限定されない。また、(c−1)成分は、ポリオレフィンの主鎖中に官能基を有するものであってもよいし、ポリオレフィンの主鎖に側鎖として、直接に或いは2価の基を介して結合した官能基を有するものであってもよいが、ポリオレフィンの主鎖に側鎖として2価の基を介して官能基を有するものが特に好ましい。
【0039】
層状珪酸塩と共有結合性がある官能基とは、層状珪酸塩の結晶側面の水酸基と共有結合性を有する官能基であり、いわゆる静電相互作用のような弱い結合でついたり離れたりするようなものを含まない。
【0040】
層状珪酸塩と共有結合性がある官能基としては、層状珪酸塩と共有結合性があれば特に限定されないが、通常の加熱混合や混練のような条件、つまり加熱下短時間で反応して、層状珪酸塩と共有結合し得るものが好ましく、層状珪酸塩とエーテル結合を形成し得るものがより好ましい。さらに、層状珪酸塩とSi-O-Si結合又はSi-O-C結合を形成し得る官能基が特に好ましい。
かかる官能基の具体例としては、アルコキシ基;アルコキシシリル基;オキシラン基、オキセタン基、オキソラン基、オキサン基等の環状エーテル基等が挙げられる。中でも、アルコキシ基、アルコキシシリル基、オキシラン基等が好ましく、アルコキシシリル基が層状珪酸塩との反応性が高い点で特に好ましい。
【0041】
アルコキシシリル基としては、一般式−SiX(ここで、Xは同一でも異なっていてもよいアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基を示す)で表されるものが好ましい。さらに具体的には、例えば、−Si(OCH、−Si(OC等が挙げられる。
【0042】
上記官能基は、ポリオレフィンに結合していればよく、その結合部位は特に限定されず、ポリオレフィン樹脂の末端であっても分子鎖の途中であってもよい。
【0043】
本発明において、ポリオレフィン樹脂複合材料の一成分として(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィンを用いることで、層間の開いた層状珪酸塩を未変性ポリオレフィン中に分散させる上で、凝集性の高い層状珪酸塩の再凝集をすることなく分散させることが可能となる。これは、(c−1)成分は、その官能基の少なくとも一部が層状珪酸塩と共有結合している上に、ポリオレフィン骨格を有するため、未変性ポリオレフィンとの相溶性が特に高まるためと考えられる。
【0044】
(c−1)成分の分子量は、重量平均分子量で2,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上が特に好ましい。また、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、200,000以下が特に好ましい。
上記(c−1)成分は、それ自体既知の通常用いられるものであり、市販品を購入することができるし、公知に方法によって製造することもできる。
上記(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィンは、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0045】
(c−1)以外の成分
本発明のポリオレフィン樹脂複合材料を構成する(c−1)以外の成分は、凝集性の高い層状珪酸塩の層間に進入し、その劈開を促進する機能を果たすものであり、その機能を有するものであれば如何なる変性ポリオレフィンでもよいが、(c−2)層状珪酸塩と共有結合性はないが化学親和性がある官能基を有する変性ポリオレフィンが好ましい。
【0046】
すなわち、(c−2)成分としては、例えば、(c−1)成分が有する、層状珪酸塩とエーテル結合を形成し得る官能基を有さず、それとは異なる官能基であって、層状珪酸塩と化学親和性がある官能基を有する変性ポリオレフィンが好ましい。
【0047】
(c−2)成分としては、静電相互作用によって層状珪酸塩と化学親和性がある官能基、例えば、アニオン又はカチオンを形成しうる官能基、分極性の官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する変性ポリオレフィンが好ましい。
【0048】
本発明のポリオレフィン樹脂複合材料において、(c−2)成分が、層状珪酸塩の層間に進入し、ひいては層間の劈開を妨げることを抑制するためには、変性ポリオレフィンにおける前記官能基が、ポリオレフィン分子鎖中に局在化して存在するのが好ましく、分子末端若しくは末端近傍に存在するのがより好ましく、分子末端の炭素原子から5個目の炭素原子までのいずれかの炭素原子に存在するのが特に好ましい。
【0049】
この(c−2)成分は、ポリオレフィンの主鎖中に官能基を有するものであってもよいし、ポリオレフィンの主鎖に側鎖として、直接に或いは2価の基を介して結合した官能基を有するものであってもよいが、ポリオレフィンの主鎖に側鎖として2価の基を介して官能基を有するものが特に好ましい。
【0050】
(c−2)成分が有する官能基として、さらに具体的には、上記のとおり、アニオン又はカチオンを形成し得るか、分極性の官能基であることが好ましい。ここで、分極性の官能基とは、アニオンあるいはカチオンを形成するような結合ではないが、官能基の中に電子的な偏在がある基をいう。具体的には、C=O結合を有するカルボニル基のようなものや、酸素原子に電子的な偏りを有する水酸基のようなものがこれに相当する。
【0051】
アニオンを形成し得る基は、層状珪酸塩の層間のカチオンとの相互作用により、カチオンを形成し得る基は、層状珪酸塩の層間のアニオンとの相互作用により、分極性の官能基は、官能基中の電子的な偏在により生じた電荷と、層状珪酸塩の層間のそれとは反対の電荷との静電相互作用により、層状珪酸塩の層間にインターカレートし、層状珪酸塩の層剥離を助長し得る。
【0052】
アニオンを形成し得る官能基としては、例えば、酸素原子含有基、硫黄原子含有基、燐原子含有基、ハロゲン原子含有基等が挙げられる。
カチオンを形成し得る官能基としては、例えば、窒素原子含有基等が挙げられる。
分極性の官能基としては、例えば、カルボン酸無水物基、水酸基等が挙げられる。
【0053】
上記官能基として、具体的には、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、アンモニウム基、ニトリル基、アミノ基、イミド基、アセチル基、チオール基、チオエーテル基、スルホン基、ホスホン基、ニトロ基、ウレタン基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの中で、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、アンモニウム基等のカチオン性の官能基が好ましく、カルボン酸無水物基、アンモニウム基等のカチオン性の官能基がより好ましい。
これらの官能基は、(c−2)成分の分子鎖中に2種以上を有していてもよい。
【0054】
また、(c−2)成分において、ポリオレフィンの主鎖に側鎖として2価の基を介してこれらの官能基を有する場合における2価の基としては、特に限定されるものではないが、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等の炭素数1〜20程度の直鎖状、分岐状、環状の脂肪族炭化水素基;フェニレン基、ナフチレン基等の芳
香族炭化水素基;メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、トリメチレンオキシ基、テトラメチレンオキシ基等アルキリデンオキシ基等が挙げられる。
【0055】
(c−2)成分における上記官能基の量としては、ポリオレフィンの一分子当たりの平均当量として、下限が、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは0.2当量以上、特に好ましくは0.4当量以上であり、また上限が、好ましくは10当量以下、より好ましくは5当量以下、特に好ましくは1当量以下が適当である。
【0056】
官能基の量が前記下限未満では、変性ポリオレフィンが層状珪酸塩の層間に挿入し難い傾向となり、また、前記上限超過では、未変性ポリオレフィンとの相溶性が低下し、ポリオレフィン樹脂複合材料中の層状珪酸塩の分散安定性が低下することがある。
【0057】
(c−2)成分は、それ自体既知の製造方法、例えば、次の(1)あるいは(2)などの方法により製造することができる。
(1)α−オレフィンと、必要に応じて保護基で保護された官能基を有するエチレン性不飽和単量体とを共重合させた後、保護基を脱離させる方法。
(2)ポリオレフィン系樹脂に、官能基を有するエチレン性不飽和単量体をグラフト反応させる方法、或いは官能基含有化合物を反応させる方法。
【0058】
上記方法(1)、(2)における官能基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、アミド基、ニトリル基、イミド基又はアセチル基を有するエチレン性不飽和単量体が挙げられる。
【0059】
さらに具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等;カルボン酸無水物基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等;カルボン酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メ
タ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等;水酸基
を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(
メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレー
ト、2,2−ジヒドロキシメチルー3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等;アミド基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド等;ニトリル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等、アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート等;イミド基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、マレイン酸イミド等;アセチル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、酢酸ビニル等が挙げられる。
ここで、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は/及び「メタ
クリル」を意味するものとする。
【0060】
また、官能基としてのアンモニウム基、チオール基、チオエーテル基、スルホン基、ホスホン基、ニトロ基、ウレタン基、ハロゲン原子等については、公知の方法で、ポリオレフィン系樹脂の主鎖に直接に付加することができる。
【0061】
上記方法(2)におけるグラフト反応は、例えば、ラジカル発生剤の存在下に、ポリオレフィン系樹脂の溶融状態で行う溶融グラフト法、有機溶媒による溶液状態で行う溶液グラフト法等により実施することができる。
【0062】
その際、用いられるラジカル発生剤としては、具体的には、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(
t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3,1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブ
チルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類;3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソブチルア
ミド)ジハライド、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プ
ロピオンアミド〕、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物類等が挙げられる。
これらのラジカル発生剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0063】
溶融グラフト法においては、一軸又は二軸押出機等の混練機、横型二軸多円板装置等の横型二軸攪拌機、ダブルヘリカルリボン攪拌機等の縦型攪拌機等を用いて、ラジカル発生剤の存在下、前記ポリオレフィン系樹脂と、前記エチレン性不飽和単量体を、通常100℃以上、300℃以下、好ましくは200℃程度の温度で、前記ポリオレフィン系樹脂を溶融させて、通常0.5〜10分間程度の時間でグラフト反応を実施する。
【0064】
この反応におけるエチレン性不飽和単量体の使用量は、該ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、通常0.005重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、かつ通常20重量部以下、好ましくは10重量部以下が適当である。また、ラジカル発生剤の使用量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、かつ通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下が適当である。
【0065】
溶液グラフト法においては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒に、前記ラジカル発生剤と、前記ポリオレフィン系樹脂と、前記エチレン性不飽和単量体を加え、通常80〜140℃程度の温度で、前記ポリオレフィン系樹脂を溶解させて、通常2〜8時間程度の時間でグラフト反応を実施する。
この反応におけるエチレン性不飽和単量体の使用量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、通常0.1重量部以上、好ましくは3重量部以上、かつ通常100重量部以下、好ましくは350重量部以下が適当である。また、ラジカル発生剤の使用量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、通常0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、かつ通常50重量部以下、好ましくは30重量部以下が適当である。
【0066】
前記グラフト反応において、反応に用いる前記エチレン性不飽和単量体の量を低減化することにより、分子の両末端或いは片末端に官能基を有する変性ポリオレフィンを調製することができる。また、ラジカル発生剤を2種以上用いて、ポリオレフィン樹脂に2種以上の官能基を結合させることができる。
また、Macromolecules, 2002, 35, 9352に記載の方法に従い、前記エチレン性不飽和単量体を、ポリオレフィン系樹脂の末端に共重合させることができる。
【0067】
さらに、末端に水酸基を有する変性ポリオレフィンを得る方法として、例えば、アイソタクチックポリプロピレンを空気中、143℃で8時間加熱して酸化させ、得られた酸化ポリプロピレンを窒素気流下で水素化ジイソブチルアルミニウムと共に80℃で8時間攪拌する方法や、ビニル基を有するポリオレフィン系樹脂と、遷移金属化合物及び水素化棚素塩とを、配位性溶媒と炭化水素溶媒との混合溶媒中で混合する方法等も採り得る。
【0068】
以上に詳述した(c−1)以外の成分の分子量は、重量平均分子量で、2,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上が特に好ましい。また、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、200,000以下が特に好ましい。
上記(c−1)以外の成分は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0069】
(d)その他の成分
本発明のポリオレフィン樹脂複合材料には、必要に応じて、(d)その他の成分(以下これを「(d)成分」ということがある)として、通常用いられる各種の添加剤、例えば酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、着色剤、前記層状珪酸塩以外の充填材等が添加されていてもよい。
【0070】
以上に詳述したとおり、本発明のポリオレフィン樹脂複合材料は、前記(a)未変性ポリオレフィン、(b)層状珪酸塩及び(c)少なくとも2種類の変性ポリオレフィン[(c−1)成分と(c−1)以外の成分]を必須の成分として含み、必要に応じて、(d)その他の成分を含んでいてもよい。
本発明のポリオレフィン樹脂複合材料における各成分の含有割合は、本発明の効果を奏する範囲内の含有割合であれば特に制限はないが、例えば、次のとおりである。
【0071】
(b)層状珪酸塩の含有割合は、ポリオレフィン樹脂複合材料の全量に対して、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上が適当である。また上限は、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%が適当である。
【0072】
層状珪酸塩の含有割合が、前記下限未満では、ポリオレフィン樹脂複合材料として、層状珪酸塩配合による諸物性の改善という効果が十分に発現し得ない傾向となり、また、前記上限超過では、ポリオレフィン樹脂複合材料としての成形加工性が悪化し、脆くなる傾向となる。
【0073】
また、(c−1)成分の含有割合は、ポリオレフィン樹脂複合材料の全量に対して、下限は、通常3重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上が適当である。また上限は、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは15重量%以下が適当である。
【0074】
(c−1)成分の含有割合が前記下限範囲未満では、前記層状珪酸塩を補強する効果が低くなる傾向があり、また、前記上限超過では、ポリオレフィン樹脂複合材料としての成形加工性が悪化する傾向があったり、ゲル化物が生じたりする場合がある。
【0075】
さらに、(c−1)以外の成分、好ましくは(c−2)成分の含有割合は、ポリオレフィン樹脂複合材料の全量に対して、下限は、通常0.125重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上が適当である。また上限は、通常90重量%以下、好ましくは75重量%以下、より好ましくは50重量%以下が適当である。
【0076】
(c−1)以外の成分、好ましくは(c−2)成分の含有割合が、前記下限未満では、前記層状珪酸塩を剥離分散する効果が低くなり、また一方、前記上限超過では、ポリオレフィン樹脂複合材料としての機械的物性や熱的物性が低下する傾向がある。
【0077】
(d)その他の成分の含有割合に特に制限はなく、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
(a)未変性ポリオレフィンの含有割合に特に制限はなく、残部は未変性ポリオレフィンである。
なお、前記した各成分の含有割合は、ポリオレフィン樹脂複合材料の製造方法における各成分の配合又は添加割合と同義である。
【0078】
本発明のポリオレフィン樹脂複合材料は、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分を、必要に応じて用いる(d)成分等と共に加熱混合及び/又は溶融混練することにより製造することができる。各成分の加熱混合及び/又は溶融混練は、本発明の効果を奏するポリオレフィン樹脂複合材料が調製可能な条件であれば特に制限はなく、それ自体既知の何れの方法でも行うことができる。
【0079】
しかしながら、層状珪酸塩をポリオレフィン樹脂複合材料により層剥離した状態でより均一に分散させるためには、例えば、(b)成分及び(c−2)成分をあらかじめ加熱混合したものに、(a)成分及び(c−1)成分を混合することにより製造することがより好ましい。
【0080】
すなわち、本発明のポリオレフィン樹脂複合材料の製造方法は、(b)層状珪酸塩と、少なくとも1種の(c−2)層状珪酸塩と共有結合性はないが化学親和性がある官能基を有する変性ポリオレフィンを加熱混合する第一の工程と、第一の工程で得られた加熱混合物と、少なくとも1種の(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィン及び(a)未変性ポリオレフィンを溶融混練する第二の工程を含むことを特徴とするものである。
【0081】
第一の工程において、(b)成分及び(c−2)成分をあらかじめ加熱混合する方法としては、両者を必要に応じて用いられる添加剤等と共に、溶融混練、ドライブレンド、溶媒混合といった方法が挙げられる。これらの中で、溶融混練やドライブレンドが好ましい。
各成分の混合は、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の適当な混合装置を用いて行うことができる。その際、加熱してもよく、加熱することが好ましい。また均一に混合した後、一軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダー等の適当な混練装置により溶融混練してもよい。
【0082】
溶融混練は、好ましくは100℃程度以上、より好ましくは150℃程度以上、かつ300℃程度以下、より好ましくは250℃程度以下の温度で、好ましくは0.5〜30分程度の条件で行えばよい。または、均一に混合した後、単に静置で熱処理するのみでもよい。熱処理は、100℃程度以上、より好ましくは150℃程度以上、かつ300℃程度以下、より好ましくは250℃程度以下の温度で、好ましくは0.5〜180分程度の条件で行えばよい。
【0083】
第二の工程において、この(b)成分及び(c−2)成分の加熱混合物を、(a)成分及び(c−1)成分を、必要に応じて用いる(d)成分等と共に、溶融混練する。
溶融混練は、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の適当な混合装置により均一に混合した後、一軸又は二軸押出機、ロール、バ
ンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダー等の適当な混練装置により行うことができる。混練は、好ましくは100℃程度以上、より好ましくは150℃程度以上、かつ300℃程度以下、より好ましくは250℃程度以下の温度で、好ましくは0.5〜30分程度の条件で行えばよい。
【0084】
なお、混練に際し、(b)成分及び(c−2)成分の加熱混合物は、一旦固化取出ししたものを粉砕し、その後、(a)成分、(c−1)成分、必要に応じて(d)成分と共に溶融混練してもよいし、混合物の加熱混合に引き続き、(a)成分及び(c−1)成分を
必要に応じて用いる(d)成分等と共に溶融混練してもよい。
【0085】
かくして、本発明のポリオレフィン樹脂複合材料を得ることができる。
なお、本発明のポリオレフィン樹脂複合材料の製造時における各成分の好ましい配合又は添加の割合は、前述の通りである。
【0086】
本発明の発明者らの検討によると、まず層状珪酸塩と(c−2)成分を混合することで
、層間に(c−2)成分が効率的に進入し、層状珪酸塩がよく剥離したものが得られ、これと(a)未変性ポリオレフィン及び(c−1)成分を混合することで、層状珪酸塩と共有
結合性がある官能基を有するポリオレフィン[(c−1)成分]は、剥離分散した層状珪酸塩の末端にある水酸基と効率的に反応することができ、これらが未変性ポリオレフィンのマトリックス中に均一に分散することができる。さらに驚くべきことに、層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有するポリオレフィン[(c−1)成分]と層状珪酸塩が共有結合することで、ポリオレフィン樹脂複合材料中での層状珪酸塩の分散安定性が優れ、また層状珪酸塩上にポリオレフィンのラメラが垂直に生成し、結晶性が向上するとともに層状珪酸塩のフィラー効果がより増強し、機械的特性、熱的特性、ガスバリア性が向上することがわかった。
【0087】
従来技術である(a)未変性ポリオレフィン、(b)層状珪酸塩、(c−2)層状珪酸塩と共有結合性はないが化学親和性がある官能基を有する変性ポリオレフィンによるポリオレフィン樹脂複合材料(例えば、特許文献4の組成物)においては、このようなラメラ構造が層状珪酸塩上に形成されることはなかった。本発明において、層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有するポリオレフィン[(c−1)成分]を使用することで、(c−1)成分が有する層状珪酸塩と共有結合性がある官能基と、剥離分散した層状珪酸塩の末端にある水酸基との間に、化学親和力よりも強固な共有結合が形成され、結晶性が増大することにより、これらが未変性ポリオレフィンのマトリックス中に均一に分散するものと推定される。
【0088】
本発明のポリオレフィン樹脂複合材料は、一般的な加工・成形方法によって所望の形状に成形することができる。例えば、圧縮成形法、押出成形法、射出成形法、中空成形法等による一次成形、或いは更に、熱成形、被覆成形、発泡成形等の二次成形等により加工される。用いるポリオレフィンの種類によって成形条件は様々であるが、加熱条件としては、先述の混練条件と同様である。必要に応じて添加剤が用いられ、その場合は、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の適当な混合装置により均一に混合した後成形する。
【0089】
本発明によれば、ポリオレフィン樹脂の機械物性を改良することができる。具体的には、例えば、剛性向上、ガスバリア性向上、難燃性向上、成型収縮率低下、熱膨張係数の低下等の物性改良を達成することができる。例えば、本発明のポリオレフィン樹脂複合材料は、未変性ポリオレフィンに対して150%以上の弾性率を有するものである。
【0090】
本発明におけるポリオレフィン樹脂複合材料は、その高弾性、高強度、低線膨張係数等
の特性を生かして構造材料として用いることができる。特に、自動車内装材、外板、バンパー等の自動車材料や家庭電気製品の筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他工業用資材等として好適に用いられる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
<曲げ弾性率>
JIS K7171に準拠し、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を射出成形により作製し、23℃、50%RHの環境下、支点間距離64mmとした3点曲げ試験により測定した。
【0093】
製造例1;無水マレイン酸変性ポリプロピレンの製造
メルトフローレート(MFR)が10g/10分(230℃/21.18Nで測定)であるアイソタクチックポリプロピレンホモポリマー100重量部、無水マレイン酸19重量部、及びモノクロロベンゼン720重量部を、攪拌装置、温度計、還流冷却管及び滴下ロートを備えたガラス製フラスコ中に仕込み、窒素雰囲気下で130℃にて溶解させた。ここにジクミルペルオキシド10重量部を、滴下ロートから同温度で添加し、4時間同温度で攪拌を続けて反応させた。反応終了後、反応系を室温付近まで冷却した後、予め用意した10℃のアセトン中に加えることでポリマーを析出させた。析出したポリマーを濾別し、更に、同様にアセトンで沈殿・濾別を繰り返してポリマーを洗浄した。洗浄後のポリマーを減圧乾燥して白色粉末状のポリマーを得た。
【0094】
得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレンのグラフト率は次のようにして求めた。すなわち、重合体200mgとクロロホルム4800mgを10mlのサンプル瓶に入れて50℃で30分加熱し完全に溶解させた。材質NaCl、光路長0.5mmの液体セルにクロロホルムを入れ、バックグラウンドとした。次に溶解した重合体溶液を液体セルに入れて、日本分光社製FT−IR460plusを用い、積算回数32回にて赤外線吸収スペクトルを測定した。無水マレイン酸のグラフト率は、無水マレイン酸をクロロホルムに溶解した溶液を測定し検量線を作成したものを用いて計算した。そしてカルボニル基の吸収ピーク(1780cm−1付近の極大ピーク、1750〜1813cm−1)の面積から、別途作成した検量線に基づき、重合体中の酸成分含有量を算出し、これをグラフト率(重量%)とした。
このようにして得た酸変性ポリプロピレン樹脂のグラフト率は3.3重量%、メルトフローレートは950g/10分であった。
【0095】
製造例2;末端アンモニウム基含有ポリプロピレンの製造
(1)4−{2−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]エチルスチレンの合成
窒素置換し、マグネチックスターラーを入れた500ml丸底フラスコにクロロメチルメチルエーテル50mlとTHF50mlを導入し、0℃に冷却した。ここに、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド100gをTHF200mlに溶解した溶液を内温が0℃付近から逸脱しないように、ゆっくりと滴下した。滴下終了後、溶液を室温まで2時間かけて昇温し、過剰のクロロメチルメチルエーテル及びTHFを留去した。その後蒸留によりN,N−ビス(トリメチルシリル)メトキシメチルアミン89.4gを得た。
別途、マグネチックスターラーを入れ、還流冷却機を備えた500ml丸底フラスコにマグネシウムワイヤー11.6g及び乾燥エーテル40mlを導入し、乾燥エーテル40mlで希釈した4−ビニルベンジルクロリド68mlをコンデンサー上部より滴下した。溶液を4時間還流させたのち、上記で得たN,N−ビス(トリメチルシリル)メトキシメチルアミン89.4gを2時間かけて導入した。その後、室温で2時間反応させた後、3
0%水酸化ナトリウム水溶液100mlを導入した。有機層を分離、乾燥し、残渣を水素化カルシウムから蒸留することにより、表記の化合物89gを得た。
【0096】
(2)末端アンモニウム基含有ポリプロピレンの重合
触媒としてrac−ジクロロジメチルシリレンビス[2−メチル−4−フェニルインデニル]ジルコニウム1.25μmol、助触媒としてメチルアルミノキサン(10重量%
溶液)を4.5mL、溶媒としてトルエン50mlを用い、プロピレン圧0.76MPa
、4−{2−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]エチルスチレン1.0mL、水素圧0.07MPaで、45℃、15分重合を行った。反応はメタノールを導入することによって停止し、生成物を濾過した。生成物をTHFで洗浄し、50℃で8時間減圧乾燥した。その結果、プロピレン重合体15gを得た。得られたポリマー2gをトルエン50mLに懸濁させ、50度に加熱し、2規定塩酸エーテル溶液を添加する。内容物を50℃で5時間攪拌させた後、1規定水酸化ナトリウムメタノール溶液中に注いだ。得られたポリマーを窒素雰囲気で濾過し、1Mアンモニア水及び水で洗浄した。洗浄したポリマーは50℃で10時間減圧乾燥した。
以上のようにして得られた末端アンモニウム基含有ポリプロピレンは、末端にアンモニウム基を0.043ミリモル/g含有し、重量平均分子量51,000であった。
【0097】
(実施例1)
有機化フッ素化マイカ(コープケミカル社製、商品名:MAE(膨潤性フッ素マイカをジアルキルジメチルアンモニウム塩で有機化したもの。ジアルキル基はC14〜C18の混合物。以下同じ)、層状珪酸塩含量64重量%)7.84gと製造例1で得た無水マレイン酸変性ポリプロピレン45gを、イルガノックス1010(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.25g、イルガフォス168(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.25gとともに、プラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、160℃で4分間混練した。この混合物21.3gとアルコキシシリル基を有するポリプロピレン(三菱化学社製、商品名:リンクロンXPM800HM)5g、ポリプロピレン単独重合体樹脂(日本ポリプロ社製、商品名:MA1B)15gを、イルガノックス1010(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.2g、イルガフォス168(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.2gとともに、プラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、160℃で4分間混練することにより、ポリオレフィン樹脂複合材料を得た。
このポリオレフィン樹脂複合材料を、射出成形により、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmに成形した。前記の条件に基づき3点曲げ試験により曲げ弾性率を測定したところ2970MPaであった。
【0098】
(比較例1)
シラン変性ポリプロピレン(三菱化学社製、商品名:リンクロンXPM800HM)を用いず、ポリプロピレン単独重合体樹脂(日本ポリプロ社製、商品名:MA1B)を20g用いた以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂複合材料を得た。
得られたポリオレフィン樹脂複合材料について、前記の条件にて射出成型により成形し、得られた成形体の曲げ弾性率を測定したところ、2610MPaであった。
【0099】
(実施例2)
有機化モンモリロナイト(ナノコール社製、商品名:I.30T(モンモリロナイトをオクタデシルアンモニウム塩で有機化したもの。以下同じ)、層状珪酸塩含量80重量%)6.3gと製造例1で得た無水マレイン酸変性ポリプロピレン45gを、イルガノックス1010(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.25g、イルガフォス168(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.25gとともに、プラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、160℃で4分間混練した。この混合物20.5gとシラン変性ポリプロピレン(三菱化学社製、商品名:リンクロンXPM800HM)5g、ポリプロピレ
ン単独重合体樹脂(日本ポリプロ社製、商品名:MA1B)15gを、イルガノックス1010(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.2g、イルガフォス168(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.2gとともに、プラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、160℃で4分間混練することにより、ポリオレフィン樹脂複合材料を得た。
得られたポリオレフィン樹脂複合材料について、前記の条件にて射出成型により成形し、得られた成形体の曲げ弾性率を測定したところ、2720MPaであった。
【0100】
(比較例2)
シラン変性ポリプロピレン(三菱化学社製、商品名:リンクロンXPM800HM)を用いず、ポリプロピレン単独重合体樹脂(日本ポリプロ社製、商品名:MA1B)を20g用いた以外は、実施例2と同様にしてポリオレフィン樹脂複合材料を得た。
得られたポリオレフィン樹脂複合材料について、前記の条件にて射出成型により成形し、得られた成形体の曲げ弾性率を測定したところ、2150MPaであった。
【0101】
(実施例3)
有機化モンモリロナイト(ナノコール社製、商品名:I.30T、層状珪酸塩含量80重量%)2.51gと製造例2で得た末端アンモニウム基含有ポリプロピレン18gをドライブレンドした後、真空中、190℃で2時間熱処理した。次いで、これとシラン変性ポリプロピレン(三菱化学社製、商品名:リンクロンXPM800HM)5g、ポリプロピレン単独重合体樹脂(日本ポリプロ社製、商品名:MA1B)15gをイルガノックス1010(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.2g、イルガフォス168(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.2gとともに、プラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、160℃で4分間混練することにより、ポリオレフィン樹脂複合材料を得た。
得られたポリオレフィン樹脂複合材料について、前記の条件にて射出成型により成形し、得られた成形体の曲げ弾性率を測定したところ、2990MPaであった。
【0102】
(比較例3)
有機化モンモリロナイト(ナノコール社製、商品名:I.30T、層状珪酸塩含量80重量%)2.51gとポリプロピレン単独重合体樹脂(日本ポリプロ社製、商品名:MA1B)38gをイルガノックス1010(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.2g、イルガフォス168(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.2gとともに、プラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、160℃で4分間混練することにより、ポリオレフィン樹脂複合材料を得た。
得られたポリオレフィン樹脂複合材料について、前記の条件にて射出成型により成形し、得られた成形体の曲げ弾性率を測定したところ、1700MPaであった。
【0103】
(比較例4)
有機化モンモリロナイト(ナノコール社製、商品名:I.30T、層状珪酸塩含量80重量%)のかわりに有機化フッ素化マイカ(コープケミカル社製、商品名:MAE、層状珪酸塩含量64重量%)3.13gを用いた以外は比較例3と同様にしてポリオレフィン樹脂複合材料を得た。
得られたポリオレフィン樹脂複合材料について、前記の条件にて射出成型により成形し、得られた成形体の曲げ弾性率を測定したところ、2040MPaであった。
【0104】
(比較例5)
ポリプロピレン単独重合体樹脂(日本ポリプロ社製、商品名:MA1B)40gをイルガノックス1010(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.2g、イルガフォス168(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.2gとともに、プラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、160℃で4分間混練することにより、ポリオレフィン樹脂複合
材料を得た。
得られたポリオレフィン樹脂複合材料について、前記の条件にて射出成型により成形し、得られた成形体の曲げ弾性率を測定したところ、1390MPaであった。
【0105】
実施例1〜3、比較例1〜5で得られたポリオレフィン樹脂複合材料の成分、成形体の曲げ弾性率(MPa)を表1に示す。
表1から、層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィン[(c−1)成分]を、それ以外の変性ポリオレフィン[(c−2)成分]と併用することにより、曲げ弾性率が改良していることがわかる。これは、層状珪酸塩のみを混合するときに比べ、ポリオレフィン中における層状珪酸塩の分散安定性が良好であることを示すものである。また、層状珪酸塩を含まない場合(比較例5)と比べても十分な性能を有していることがわかる。
【0106】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の前記ポリオレフィン樹脂複合材料は、層状珪酸塩配合による諸物性の改善という所期の目的を十分に発現し得た成形材料として、慣用の、例えば、圧縮成形法、押出成形法、射出成形法、中空成形法等による一次成形、或いは更に、熱成形、被覆成形、発泡成形等の二次成形等に付され、自動車部品、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他工業用資材等として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)未変性ポリオレフィン、(b)層状珪酸塩及び(c)少なくとも2種類の変性ポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂複合材料であって、(c)少なくとも2種類の変性ポリオレフィンのうち少なくとも1種が、(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィンであることを特徴とするポリオレフィン樹脂複合材料。
【請求項2】
(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィンが、アルコキシ基、アルコキシシリル基、環状エーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する変性ポリオレフィンである、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂複合材料。
【請求項3】
(c)少なくとも2種類の変性ポリオレフィンのうち少なくとも1種が、(c−2)層状珪酸塩と共有結合性はないが化学親和性がある官能基を有する変性ポリオレフィンである、請求項1又は2に記載のポリオレフィン樹脂複合材料。
【請求項4】
(c−2)層状珪酸塩と共有結合性はないが化学親和性がある官能基を有する変性ポリオレフィンが、アニオン又はカチオンを形成しうる官能基、分極性の官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するポリオレフィンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂複合材料。
【請求項5】
(b)層状珪酸塩が、有機オニウム塩で有機化されている層状珪酸塩である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂複合材料。
【請求項6】
ポリオレフィン樹脂複合材料の全重量に対し、(b)層状珪酸塩を1〜30%重量含み、かつ(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィンを3〜50%含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂複合材料。
【請求項7】
(b)層状珪酸塩と、少なくとも1種の(c−2)層状珪酸塩と共有結合性はないが化学親和性がある官能基を有する変性ポリオレフィンを加熱混合する第一の工程と、第一の工程で得られた加熱混合物と、少なくとも1種の(c−1)層状珪酸塩と共有結合性がある官能基を有する変性ポリオレフィン及び(a)未変性ポリオレフィンを溶融混練する第二の工程を含むことを特徴とするポリオレフィン樹脂複合材料の製造方法。

【公開番号】特開2010−235839(P2010−235839A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86839(P2009−86839)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】