説明

ポリオレフィン用プライマー組成物

【課題】 ポリオレフィン素材の表面に水性アクリル塗料の塗布ができるようにするためのポリオレフィン用プライマー組成物を提供すること。
【解決手段】 塩素化ポリプロピレン樹脂を水系に分散したエマルジョンに、粘着付与剤としてロジンエステル系樹脂エマルジョンおよび/または炭化水素系樹脂エマルジョンを添加した。また、密着性付与剤中の樹脂成分は、塩素化ポリプロピレン樹脂エマルジョン中の樹脂成分に対して、1〜50重量%の範囲、より好ましくは5〜20重量%の範囲で添加するのが好ましい。
【図面】 なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン素材の表面に水性アクリル塗料の塗布ができるようにするためのポリオレフィン用プライマー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンは、汎用プラスチックとして、例えば自動車用部品や家電製品用部品など様々な分野で広く利用されている。一方、各種金属やプラスチック等を装飾等するための水性塗料としてアクリル塗料が広く使用されている
【0003】
しかしながら、前記ポリオレフィンは高結晶性物質であり表面が非極性で極めて活性が低いため、直接に塗料やインクを塗布または印刷することができないという問題点や、ポリオレフィンを直接に他の部材と接合することができないという問題点があった。そこで、例えば特許文献1や特許文献2に示されるように、ポリオレフィンの接着性を向上させるプライマー組成物の開発が種々行われている。
ところが、ある程度の接着性の向上は見られるものの、接着力を長期間にわたって持続させることは難しく、また特に水性アクリル塗料の塗布は難しいという問題点が解決されていなかった。
【特許文献1】特開平1−153777号公報
【特許文献2】特許第2616787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような問題点を解決して、ポリオレフィンの接着力を長期間にわたって持続させることができ、また水性アクリル塗料の塗布も行うことができるポリオレフィン用プライマー組成物を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本発明のポリオレフィン用プライマー組成物は、塩素化ポリプロピレン樹脂を水系に分散したエマルジョンに、粘着付与剤としてロジンエステル系樹脂エマルジョンおよび/または炭化水素系樹脂エマルジョンを添加したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、塩素化ポリプロピレン樹脂を水系に分散したエマルジョンに、粘着付与剤としてロジンエステル系樹脂エマルジョンおよび/または炭化水素系樹脂エマルジョンを添加したものであり、この組成物でポリオレフィンの表面処理を施すと改質されて印刷、塗装、他部材との接着等が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の好ましい形態を示す。
本発明のポリオレフィン用プライマー組成物は、塩素化ポリプロピレン樹脂を水系に分散したエマルジョンに、粘着付与剤としてロジンエステル系樹脂エマルジョンおよび/または炭化水素系樹脂エマルジョンを添加した点を特徴としている。
ここで塩素化ポリプロピレン樹脂とは、ポリプロピレン樹脂の水素の一部を塩素で置換したものをいい、本発明では塩素含有量が10〜40%の低塩素化物が用いられる。
また、前記塩素化ポリプロピレン樹脂を水系に分散したエマルジョンとし、これをプライマー組成物の主成分としている。エマルジョン中の塩素化ポリプロピレン樹脂量は好ましくは25〜55重量%の範囲であり、残部は水である。また、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤等の乳化剤を少量添加してもよい。
【0008】
本発明では、このようなエマルジョンに対し、粘着付与剤としてロジンエステル系樹脂エマルジョンまたは炭化水素系樹脂エマルジョンのいずれか、あるいは両方のエマルジョンを添加する。
即ち、本発明者は粘着付与剤として種々のものを試験した結果、ロジンエステル系樹脂エマルジョンおよび/または炭化水素系樹脂エマルジョンを添加すると、プライマーとしての粘着性が著しく向上して、この結果、ポリオレフィンに適用した場合には、ポリオレフィンを改質し接着力を長期間にわたって持続させることができるとともに、水性アクリル塗料の塗布も行うことができることを見出し本発明に至ったのである。
【0009】
粘着付与剤の添加量としては、粘着付与剤中の樹脂成分を、塩素化ポリプロピレン樹脂エマルジョン中の樹脂成分に対して、1〜50重量%の範囲で添加するのが好ましく、更には粘着付与剤中の樹脂成分を、塩素化ポリプロピレン樹脂エマルジョン中の樹脂成分に対して、5〜20重量%の範囲で添加するのがより好ましい。
添加量が1重量%未満では十分に粘着性を発揮させることができず、一方、50重量%より多いと粘着性が強過ぎてポリオレフィンへの塗布が困難になるからである。
なお、ロジンエステル系樹脂エマルジョンまたは炭化水素系樹脂エマルジョンは、エマルジョン中の樹脂量が25〜55重量%の範囲が好ましく、残部は水であり、またアニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤等の乳化剤を少量添加することもできる。
【0010】
以上の説明からも明らかなように、本発明は塩素化ポリプロピレン樹脂を水系に分散したエマルジョンに、粘着付与剤としてロジンエステル系樹脂エマルジョンおよび/または炭化水素系樹脂エマルジョンを添加することにより、プライマーとしての粘着性を著しく向上させ、この結果、ポリオレフィンに適用した場合には、従来は適用困難であったポリオレフィンに適用した場合にも、ポリオレフィンを改質し接着力を長期間にわたって持続させることができるとともに、水性アクリル塗料の塗布も可能となった。
【0011】
その他に本発明には、pH調節剤としてアンモニア水、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノールなどや、湿潤剤としてグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどや、乾燥調整剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどや、防錆剤としてベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールなどや、防腐防黴剤として安息香酸ナトリウム、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンナトリウム塩、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンアルキルアミン、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール−4‘−N−ドデシルベンゾールスルフォン酸などや、乳化剤としてフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンなどや、粘性調整剤としてセルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース)、デンプン系高分子(可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン)、アルギン酸系高分子(アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸塩)、ビニル系高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ)、多糖類系高分子(グアーガム、ローカストビンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン)、無機系高分子(ベントナイト、ラポナイト)など、を適宜使用することができる。
【実施例】
【0012】
(実施例1)
表1に示すように、塩素化ポリプロピレン樹脂エマルジョン92重量%に、粘着付与剤としてロジンエステル系樹脂エマルジョン7重量%、および防腐防黴剤として1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンナトリウム塩、粘性調整剤としてキサンタンガムを各々0.5重量%添加してポリオレフィン用プライマー組成物を得た。
(実施例2)
また、塩素化ポリプロピレン樹脂エマルジョン91重量%に、粘着付与剤として水添石油樹脂エマルジョン8重量%、および防腐防黴剤として1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンナトリウム塩、粘性調整剤としてキサンタンガムを各々0.5重量%添加してポリオレフィン用プライマー組成物を得た。
(実施例3)
また、塩素化ポリプロピレン樹脂エマルジョン91重量%に、粘着付与剤としてロジンエステル系樹脂エマルジョン4重量%と水添石油樹脂エマルジョン4重量%、および防腐防黴剤として1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンナトリウム塩、粘性調整剤としてキサンタンガムを各々0.5重量%添加してポリオレフィン用プライマー組成物を得た。
【0013】
得られたポリオレフィン用プライマー組成物をポリプロピレン製ボードに塗布し、塗膜強度試験として下記の試験A、Bを行った。
(試験A)
プライマー組成物よりなる塗膜にガムテープを付着・剥離した場合に、剥離現象が生じるか否かをみた。
(試験B)
プライマー組成物よりなる塗膜上に水性アクリル塗料を重ね塗りし、この塗料にガムテープを付着・剥離した場合に、剥離現象が生じるか否かをみた。
また、サイクル試験は、(1)流水中に1時間浸漬した後、(2)フェードメーターで1時間紫外線照射し、(3)5℃で1時間放置後、(4)50℃で1時間放置する工程をワンサイクルとして、前記強度試験の3回目、6回目、9回目の後にそれぞれ行った。
【0014】
得られた結果を、表2に示すが、実施例1〜実施例3のいずれのものも剥離現象は見られず、本発明のプライマー組成物の優れた接着力が確認できた。
なお、比較例として本発明とは成分の異なるプライマー組成物(比較例1〜8)を準備、同様の試験を行った(表1の比較例)。表2に結果を示すが、はいずれのものも剥離現象を生じており、本発明が優れた接着力を発揮するものであることが確認できた。
【0015】
【表1】

【0016】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化ポリプロピレン樹脂を水系に分散したエマルジョンに、粘着付与剤としてロジンエステル系樹脂エマルジョンおよび/または炭化水素系樹脂エマルジョンを添加したことを特徴とするポリオレフィン用プライマー組成物。
【請求項2】
密着性付与剤中の樹脂成分を、塩素化ポリプロピレン樹脂エマルジョン中の樹脂成分に対して、1〜50重量%の範囲で添加する請求項1に記載のポリオレフィン用プライマー組成物。
【請求項3】
密着性付与剤中の樹脂成分を、塩素化ポリプロピレン樹脂エマルジョン中の樹脂成分に対して、5〜20重量%の範囲で添加する請求項1に記載のポリオレフィン用プライマー組成物。


【公開番号】特開2006−348062(P2006−348062A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171848(P2005−171848)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)
【Fターム(参考)】