説明

ポリオレフィン組成物

(1)150℃以上の融点を有するプロピレンホモポリマー或いはプロピレンとエチレン及び/又は1種類以上のC〜C10−α−オレフィンとのコポリマー75〜85%;(2)20〜30%の1種類又は複数のC〜C10−α−オレフィンを含むエチレンと1種類以上のC〜C10−α−オレフィンとのコポリマー15〜25%;を含み、5〜10g/10分のMFR(230℃、2.16kgにおける);10〜20%のエチレンの全含量;2〜8%の1種類又は複数のC〜C10−α−オレフィンの全含量;5〜15のマトリクス成分(1)の室温においてキシレン中に可溶のフラクションに対する室温においてキシレン中に可溶の全フラクションの比XStot/XSm;及び、1.5dL/g以下の室温においてキシレン中に可溶の全フラクションの固有粘度の値(XSIVtot);を有する、熱シール性、レトルト性、低い曇り度、及び剛性を示すキャストフィルムに特に好適なポリオレフィン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンホモポリマー、及びコモノマーとしてエチレン及び/又は他のα−オレフィンを含むプロピレンランダムコポリマーから選択されるプロピレンポリマー成分、並びにエチレンとC〜C10−α−オレフィンとのコポリマーを含むポリオレフィン組成物に関する。
【0002】
本発明の組成物は、様々な種類の完成品又は半完成品に容易に加工することができる。特に、本発明の組成物は、熱シール性、レトルト性、及び良好な光学特性(フィルムに関する低い曇り度)を、高い曲げ弾性率(剛性)と共に示すフィルム用途、特にキャストフィルムのために好適である。本組成物は特に、新鮮な野菜の包装、積層レトルト性及び可撓性包装、並びに透明なレトルト袋のような良好な光学特性及び剛性を必要とするフィルム用途のために用いることができる。これらの組成物はまた、電池及びキャップ及び閉止部材のような射出成形用途のためにも好適である。
【背景技術】
【0003】
結晶質ポリプロピレンマトリクス、及びエチレンとα−オレフィンとのエラストマーコポリマーによって形成されるラバー相を含む組成物は当該技術において既に公知であり、特にヨーロッパ特許170255、373660、603723、及び1135440、並びに国際出願WO−2008/061843に記載されている。
【0004】
かかる組成物は、耐衝撃性、及びヨーロッパ特許373660、603723、1135440の場合においては多くの用途のために興味深い透明度の値を示す。しかしながら、特性の全体的なバランスは、市場によって求められている高い基準を考慮すると未だ可能性のある用途の全範囲において完全には満足できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ヨーロッパ特許170255
【特許文献2】ヨーロッパ特許373660
【特許文献3】ヨーロッパ特許603723
【特許文献4】ヨーロッパ特許1135440
【特許文献5】国際出願WO−2008/061843
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、特定の目標とする用途のためにバランスが取れている向上した特性を有するこの種の組成物に対する継続する需要が未だ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで、成分(1)及び(2)の合計に対する重量%で、
(1)150℃以上、好ましくは154℃より高い融点(Tm−DSC)を有するプロピレンホモポリマー或いはプロピレンとエチレン及び/又は1種類以上のC〜C10−α−オレフィンとのコポリマー75〜85%;
(2)20〜30重量%、好ましくは22〜28重量%の1種類又は複数のC〜C10−α−オレフィンを含むエチレンと1種類以上のC〜C10−α−オレフィンとのコポリマー15〜25%;
を含み、
・5〜10g/10分、好ましくは6〜8g/10分の230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)の値;
・10〜20重量%、好ましくは12〜18重量%のエチレンの全含量;
・2〜8重量%、好ましくは3〜7重量%、より好ましくは5〜7重量%の1種類又は複数のC〜C10−α−オレフィンの全含量;
・5〜15、好ましくは8〜12の成分(1)(マトリクス)の室温においてキシレン中に可溶のフラクションに対する室温においてキシレン中に可溶の全フラクションの比(XStot/XSm);及び:
・1.5dL/g以下、好ましくは1.3dL/g以下、より好ましくは1.1〜1.3dL/gの室温においてキシレン中に可溶の全フラクションの固有粘度の値(XSIVtot);
を有する本発明のポリオレフィン組成物によって、特にフィルム及びレトルト包装に関する用途を鑑みて優れた特性のバランスが達成された。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の組成物に関する特に好ましい特徴は、
・2重量%以下の成分(1)の室温においてキシレン中に可溶のフラクション(XSm);
・マトリクス成分(1)がプロピレンのコポリマーである場合には、エチレン及び/又は1種類以上のC〜C10−α−オレフィンから誘導される単位の量が、成分(1)の1.5重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満である(ミニランダムコポリマー);
・成分(1)のMFR(230℃、2.16kgにおける)が5〜10g/10分、好ましくは6〜8g/10分である;
・20重量%以下、好ましくは18重量%以下、より好ましくは10〜18重量%の室温においてキシレン中に可溶の全フラクション(XStot);
・900MPaより大きく、より好ましくは1000MPaより大きい曲げ弾性率;
・2.3以上の1種類又は複数のC〜C10−α−オレフィンの全含量に対するエチレンの全含量の比;
である。
【0009】
本明細書全体にわたって、「コポリマー」という用語は、主モノマーに加えて1種類より多い更なるコモノマーを含むポリマーも包含するように意図される。XStotは、マトリクス成分(1)及びラバー成分(2)の合計に対する室温においてキシレン中に可溶の全フラクション(重量%)である。XSmは、成分(1)に対する成分(1)の室温においてキシレン中に可溶のフラクション(重量%)である。Tm−DSCは、下記に報告する方法にしたがって、融点を上昇させる可能性がある成核剤を加える前の組成物について測定されるマトリクス成分(1)の融点である。而して、成核剤を加えた後の組成物について測定される最終融点はより高い(例えば3〜5℃高い)可能性がある。成核剤は、幾つかの特定の最終用途(例えば射出成形用途)に関して必要である可能性がある。
【0010】
本発明の組成物は、特に、高い曲げ弾性率、良好なフィルム品質(低いフィッシュアイ数)、及びフィルムについての優れた透明性(低い曇り度)の組み合わせを与える。
本発明の組成物の成分及びフラクション中にコモノマーとして存在するか又は存在させることができるC〜C10−α−オレフィンは、式:CH=CHR(式中、Rは、2〜8個の炭素原子を有する線状又は分岐のアルキル基、或いはアリール(特にフェニル)基である)によって示される。
【0011】
かかるC〜C10−α−オレフィンの例は、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オクテンである。ラバー成分(2)においては1−ブテン、マトリクス成分(1)においてはエチレンが特に好ましい。
【0012】
本発明の組成物は、成分(1)及び(2)を、第1段階を除くそれぞれの段階において前段の段階において形成されるポリマー及び用いた触媒の存在下で運転する別々の後段の工程で製造する少なくとも2つの逐次段階を含む逐次重合によって製造することができる。触媒は、好ましくは第1段階のみにおいて加えるが、その活性は全ての後段の段階に関してなお活性であるようなものである。
【0013】
好ましくは、成分(1)は成分(2)の前に製造する。
したがって、本発明は更に、それぞれの後段の重合を直前の段階の重合反応において形成されるポリマー材料の存在下で行う少なくとも2つの逐次重合段階を含み、ポリマー成分(1)へのプロピレンの重合段階を少なくとも1段階で行い、次にエラストマーポリマー成分(2)へのエチレンと1種類以上のC〜C10−α−オレフィンの混合物の少なくとも1つの共重合段階を行う、上記に報告するポリオレフィン組成物の製造方法に関する。重合段階は、立体特異性チーグラー・ナッタ触媒の存在下で行うことができる。
【0014】
好ましい態様によれば、全ての重合段階を、トリアルキルアルミニウム化合物、場合によって電子ドナー、並びに無水塩化マグネシウム上に担持されているTiのハロゲン化物又はハロゲンアルコラート及び電子ドナー化合物を含む固体触媒成分を含む触媒の存在下で行う。上述の特徴を有する触媒は特許文献において周知であり、USP−4,399,054及びEP−A−45977に記載されている触媒が特に有利である。他の例はUSP−4,472,524において見ることができる。
【0015】
好ましくは、重合触媒は、
(a)Mg、Ti、及びハロゲン、並びに電子ドナー(内部ドナー);
(b)アルキルアルミニウム化合物;及び場合によっては(しかしながら好ましくは)
(c)1種類以上の電子ドナー化合物(外部ドナー);
を含む固体触媒成分を含むチーグラー・ナッタ触媒である。
【0016】
内部ドナーは、好ましくは、安息香酸エステル、マロン酸エステル、フタル酸エステル、及び幾つかのコハク酸エステルのようなモノ又はジカルボキシル有機酸のエステルから選択される。これらは、例えば米国特許4522930、ヨーロッパ特許45977、並びに国際特許出願WO−00/63261及びWO−01/57099に記載されている。フタル酸エステル及びコハク酸エステルが特に好適である。ジイソブチル、ジオクチル、及びジフェニルフタレート、並びにベンジル−ブチルフタレートのようなアルキルフタレートが好ましい。
【0017】
コハク酸エステルの中では、これらは好ましくは下式(I):
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、基R及びRは、互いに同一か又は異なり、場合によってはヘテロ原子を含むC〜C20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基であり;基R〜Rは、互いに同一か又は異なり、水素、或いは場合によってはヘテロ原子を含むC〜C20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基であり、同じ炭素原子に結合している基R〜Rは一緒に結合して環を形成していてもよく;但し、R〜Rが同時に水素である場合には、Rは、3〜20個の炭素原子を有する第1級の分岐、第2級、又は第3級アルキル基、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基から選択される基である)
か、又は下式(II):
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、基R及びRは、互いに同一か又は異なり、場合によってはヘテロ原子を含むC〜C20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基であり;基Rは、場合によってはヘテロ原子を含む少なくとも4個の炭素原子を有する線状アルキル基である)
のコハク酸エステルから選択される。
【0022】
共触媒として用いるAl−アルキル化合物は、Al−トリエチル、Al−トリイソブチル、Al−トリ−n−ブチルのようなAlトリアルキル、及び、O又はN原子或いはSO又はSO基によって互いに結合している2以上のAl原子を含む線状又は環式のAl−アルキル化合物を含む。Al−アルキル化合物は、一般に、Al/Ti比が1〜1000となるような量で用いる。
【0023】
外部ドナー(c)は、式(I)又は(II)のコハク酸エステルと同じタイプであってもよく、或いは異なっていてもよい。好適な外部電子ドナー化合物としては、ケイ素化合物、エーテル、エステル、例えばフタル酸エステル、安息香酸エステル、式(I)又は(II)のものと異なる構造を有するコハク酸エステル、複素環式化合物、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ケトン、及び一般式(III):
【0024】
【化3】

【0025】
(式中、R及びRIIは、同一か又は異なり、C〜C18アルキル、C〜C18シクロアルキル、又はC〜C18アリール基であり;RIII及びRIVは、同一か又は異なり、C〜Cアルキル基、或いは2位の炭素原子が、5、6、又は7個の炭素原子で構成され、2つ又は3つの不飽和を含む環式又は多環式構造に属する1,3−ジエーテルである)
の1,3−ジエーテルが挙げられる。
【0026】
このタイプのエーテルは、公開ヨーロッパ特許出願361493及び728769に記載されている。
外部ドナーとして用いることができる好ましい電子ドナー化合物としては、少なくとも1つのSi−OR結合(ここで、Rは炭化水素基である)を含む芳香族ケイ素化合物が挙げられる。特に好ましい種類の外部ドナー化合物は、式:RSi(OR(式中、a及びbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、(a+b+c)の合計は4であり;R、R、及びRは、場合によってはヘテロ原子を含むC〜C18炭化水素基である)のケイ素化合物のものである。aが1であり、bが1であり、cが2であり、R及びRの少なくとも1つが、場合によってはヘテロ原子を含む3〜10個の炭素原子を有する分岐アルキル、アルケニル、アルキレン、シクロアルキル、又はアリール基であり;RがC〜C10アルキル基、特にメチルであるケイ素化合物が特に好ましい。かかる好ましいケイ素化合物の例は、シクロヘキシルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピル−2−エチルピペリジル−ジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチル−t−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、2−エチルピペリジニル−2−t−ブチルジメトキシシラン、(1,1,1−トリフルオロ−2−プロピル)メチルジメトキシシラン、及び(1,1,1−トリフルオロ−2−プロピル)−2−エチルピペリジニルジメトキシシランである。更に、aが0であり、cが3であり、Rが場合によってはヘテロ原子を含む分岐アルキル又はシクロアルキル基であり、Rがメチルであるケイ素化合物も好ましい。ケイ素化合物の特に好ましい具体例は、(tert−ブチル)Si(OCH、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH、(フェニル)Si(OCH、及び(シクロペンチル)Si(OCHである。
【0027】
好ましくは、電子ドナー化合物(c)は、0.1〜500、より好ましくは1〜300、特に3〜30の有機アルミニウム化合物と電子ドナー化合物(c)との間のモル比を与えるような量で用いる。
【0028】
上記で説明したように、固体触媒成分は、上記の電子ドナーに加えて、Ti、Mg、及びハロゲンを含む。特に、触媒成分は、Mgハロゲン化物上に担持されている少なくとも1つのTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物及び上述の電子ドナー化合物を含む。マグネシウムハロゲン化物は、好ましくはチーグラー・ナッタ触媒用の担体として特許文献から広く知られている活性形態のMgClである。特許USP−4,298,718及びUSP−4,495,338は、これらの化合物をチーグラー・ナッタ触媒反応において用いることを最初に記載したものである。これらの特許から、オレフィン重合用の触媒の成分中において担体又は共担体として用いられる活性形態のマグネシウム二ハロゲン化物は、非活性ハロゲン化物のスペクトルにおいて現れる最も強度の高い回折線が強度低下して、その最大強度がより強度の高い線のものに対してより低い角度に向かって移動しているハロによって置換されているX線スペクトルを有することを特徴とすることが公知である。
【0029】
好ましいチタン化合物はTiCl及びTiClであり、更に、式:Ti(OR)n−y(式中、nはチタンの価数であり、yは1〜nの間の数であり、Xはハロゲンであり、Rは1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基である)のTi−ハロアルコラートも用いることができる。
【0030】
固体触媒成分の製造は、当該技術において周知で且つ記載されている幾つかの方法にしたがって行うことができる。
好ましい方法によれば、固体触媒成分は、式:Ti(OR)n−y(式中、nはチタンの価数であり、yは1〜nの間の数である)のチタン化合物を、式:MgCl・pROH(式中、pは0.1〜6、好ましくは2〜3.5の数であり、Rは1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基である)の付加体から誘導される塩化マグネシウムと反応させることによって製造することができる。付加体は、好適には、付加体と非混和性の不活性炭化水素の存在下において、付加体の融点(100〜130℃)において撹拌条件下で運転してアルコールと塩化マグネシウムを混合することによって球状形態で製造することができる。次に、エマルジョンを速やかにクエンチし、それによって球状粒子の形態の付加体の固化を引き起こす。
【0031】
この手順にしたがって製造される球状付加体の例がUSP−4,399,054及びUSP−4,469,648に記載されている。かくして得られる付加体は、Ti化合物と直接反応させることができ、或いはアルコールのモル数が概して3より低く、好ましくは0.1〜2.5の間である付加体が得られるように熱制御脱アルコール化(80〜130℃)に予めかけることができる。Ti化合物との反応は、付加体(脱アルコール化又はそのまま)を冷TiCl(概して0℃)中に懸濁し、混合物を80〜130℃に加熱し、この温度に0.5〜2時間保持することによって行うことができる。TiClによる処理は1回以上行うことができる。TiClによる処理中に1種類又は複数の電子ドナー化合物を加えることができる。
【0032】
用いる製造法に関係なく、1種類又は複数の電子ドナー化合物の最終量は、MgClに対するモル比が0.01〜1、より好ましくは0.05〜0.5となるようなものである。
【0033】
触媒は、少量のオレフィンと予備接触させ(予備重合)、触媒を炭化水素溶媒中に懸濁状態で保持し、雰囲気温度〜60℃の温度で重合し、これによって触媒の重量の0.5〜3倍の量のポリマーを製造することができる。この操作は液体モノマー中で行うこともでき、この場合には触媒の重量の1000倍の量のポリマーが得られる。
【0034】
上述の触媒を用いることによって、ポリオレフィン組成物が、約250〜7,000μmの平均径、30秒未満の流動性、及び0.4g/mLより大きい嵩密度(圧密)を有する球状粒子の形態で得られる。
【0035】
重合段階は、液相中、気相中、又は液−気相中で行うことができる。好ましくは、ポリマー成分(1)の重合は液体モノマー中で(例えば希釈剤として液体プロピレンを用いて)行い、一方、エラストマーコポリマー成分(2)の共重合段階は気相中で行う。或いは、全ての逐次重合段階を気相中で行うことができる。
【0036】
ポリマー成分(1)の製造のための重合段階、及びエラストマーコポリマー成分(2)の製造における反応温度は、同一であっても異なっていてもよく、好ましくは40〜100℃であり、より好ましくは反応温度は、ポリマー成分(1)の製造においては50〜80℃、ポリマー成分(2)の製造に関しては70〜100℃の範囲である。
【0037】
ポリマー成分(1)を製造する重合段階の圧力は、液体モノマー中で行う場合には、用いる運転温度における液体プロピレンの蒸気圧と同等のものであり、触媒混合物を供給するのに用いる少量の不活性希釈剤の蒸気圧、場合によって用いるモノマーの過圧、及び分子量調整剤として用いる水素によって変化する可能性がある。
【0038】
重合圧力は、好ましくは、液相中で行う場合には33〜43bar、気相中で行う場合には5〜30barの範囲である。複数の段階に関する滞留時間は、ポリマー成分(1)と(2)の間の所望の比によって定まり、通常は15分間〜8時間の範囲であってよい。連鎖移動剤(例えば水素又はZnEt)のような当該技術において公知の通常の分子量調整剤を用いることができる。
【0039】
本発明の組成物はまた、上記で説明したものと同じ触媒を用いて実質的に同じ重合条件下において運転する(但し、逐次重合プロセスの全体は実施しないで、これらの成分は別の重合工程で製造する)ことによって成分(1)及び(2)を別々に製造し、次にかかる複数の成分を溶融状体又は軟化状態で機械的にブレンドすることによっても得ることができる。スクリュー押出機、特に二軸押出機などの通常の混合装置を用いることができる。
【0040】
本発明の組成物にはまた、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、成核剤、着色剤、及び充填剤のような当該技術において通常的に用いられる添加剤を含ませることもできる。
特に、成核剤を加えると、曲げ弾性率、熱撓み温度(HDT)、降伏点引張り強さ、及び透明度のような重要な物理的−機械的特性の大きな向上がもたらされる。
【0041】
成核剤の代表例は、Naベンゾエート、タルク、並びに1,3−及び2,4−ジベンジリデンソルビトールである。
成核剤は、好ましくは全重量に対して0.01〜2重量%、より好ましくは0.05〜1重量%の範囲の量で本発明の組成物に加える。
【0042】
タルク、炭酸カルシウム、及び無機繊維のような無機充填剤を加えても、曲げ弾性率及びHDTのような幾つかの機械的特性の向上がもたらされる。
詳細を以下の実施例において与えるが、これらは本発明の例示のために与えるものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0043】
実施例1:
混合液−気重合法にしたがって連続的に運転しているプラントにおいて、表1に示す条件下で実験を行った。
【0044】
重合は、触媒系の存在下、生成物を1つの反応器からその直ぐ次段のものに移す装置を備えた一連の2つの反応器内で行った。
固体触媒成分の製造:
ヨーロッパ特許EP−728769の実施例5、48〜55行にしたがってチーグラー・ナッタ触媒を調製した。トリエチルアルミニウム(TEAL)を共触媒として、ジシクロペンチルジメトキシシランを外部ドナーとして、表1に示す重量比で用いた。
【0045】
触媒系及び予備重合処理:
上記に記載の固体触媒成分を、アルミニウムトリエチル(TEAL)及び外部電子ドナー成分としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)と12℃において24時間接触させた。TEALと固体触媒成分との間の重量比、及びTEALとDCPMSとの間の重量比を表1に示す。
【0046】
次に、触媒系を20℃において液体プロピレン中に約5分間懸濁状態で保持することによって予備重合にかけ、その後、それを第1の重合反応器中に導入した。
重合:
重合実験は、生成物を1つの反応器からその直ぐ次段のものに移す装置を備えた一連の2つの反応器内で連続的に行った。第1の反応器は液相反応器であり、第2の反応器は流動床気相反応器であった。ポリマー成分(1)を第1の反応器内で製造し、一方、ポリマー成分(2)を第2の反応器内で製造した。
【0047】
反応時間の全体にわたって温度及び圧力を一定に保持した。
分子量調整剤として水素を用いた。
気相(プロピレン、エチレン、及び水素)をガスクロマトグラフィーによって連続的に分析した。
【0048】
実験の終了時に、粉末を排出して窒素流下で乾燥した。
かくして得られたポリマー(必要な場合には安定化させた)について行った測定から、表1及び2に報告する最終ポリマー組成物中のキシレン可溶分及びコモノマー含量に関するデータが得られた。
【0049】
次に、ポリマー粒子を押出機内に導入し、この中でIrganox B215(1部のIrganox 1010及び2部のIrgafos 168から構成されている)及び500ppmのCaステアレートと混合した。上述のIrganox 1010はペンタエリトリチルテトラキス−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパノエートであり、一方、Irgafos 168はトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィンであり、いずれもCiba-Geigyによって販売されている。ポリマー粒子を、二軸押出機内において、窒素雰囲気下、250rpmの回転速度及び200〜250℃の溶融温度で押出した。
【0050】
かくして押出したポリマーについて行った測定から、表2に報告する最終ポリマー組成物の物理的−機械的特性に関するデータが得られた。表に示すデータは以下の試験法を用いることによって得た。
【0051】
・供給ガスのモル比:
ガスクロマトグラフィーによって求めた。
・ポリマーのエチレン及び1−ブテン含量:
IR分光法によって求めた。
【0052】
・メルトフローレート(MFR):
ASTM−D1238、条件L(230℃、2.16kgにおけるMFR「L」)にしたがって求めた。
【0053】
・キシレン可溶及び不溶フラクション:
以下のようにして求めた。
冷却器及び磁気スターラーを取り付けたガラスフラスコ内に、2.5gのポリマー及び250mLのキシレンを導入した。温度を30分間で溶媒の沸点まで上昇させた。かくして得られた明澄な溶液を次に還流下に保持し、更に30分間撹拌した。次にフラスコを閉止し、100℃において10〜15分間、更に25℃の温度制御水浴中に30分間保持した。かくして形成された固体を迅速濾紙上で濾過した。100mLの濾液を予め秤量したアルミニウム容器内に注ぎ入れ、窒素流下において加熱プレート上で加熱して、蒸発によって溶媒を除去した。次に、一定重量が得られるまで、容器をオーブン内において真空下80℃に保持した。次に、室温においてキシレン中に可溶のポリマーの重量%を算出した。
【0054】
・固有粘度(IV):
テトラヒドロナフタレン中、135℃において求めた。
・熱特性(DSC):
マトリクス成分(1)の融点(Tm)は、融点ピークを上昇させる可能性がある成核剤を加える前のポリマー組成物について測定した。ISO−11357による示差走査熱量測定(DSC)を用い、5〜7mgの重量の試料;20℃/分の加熱及び冷却速度;−5℃〜200℃の温度操作範囲;を用いた。
【0055】
・曲げ弾性率:
ISO−178にしたがって求めた。
・アイゾッド衝撃強さ(ノッチ付き):
ISO−180/1Aにしたがって求めた。
【0056】
・プラーク試験片の製造:
以下のようにして、127×127×1.5mmの寸法を有するD/B測定用のプラークを製造した。
【0057】
射出プレスは、90トンのクランプ力を有するNegri Bossiタイプ(NB90)であった。成形型は長方形のプラーク(127×127×1.5mm)であった。
主なプロセスパラメーターを下記に報告する。
【0058】
背圧(bar):20;
射出時間(秒):3;
最大射出圧力(MPa):14;
射出水圧(MPa)6〜3;
第1の保持水圧(MPa):4±2;
第1の保持時間(秒):3;
第2の保持水圧(MPa):3±2;
第2の保持時間(秒):7;
冷却時間(秒):20;
成形型温度(℃):60;
溶融温度は220〜280℃の間であった。
【0059】
・曇り度測定用のプラーク:
1秒間の射出時間、230℃の温度、40℃の成形型温度を用いる射出成形によって、厚さ1mmの試料を調製した。
【0060】
射出プレスは、50トンのクランプ力を有するBattenfeldタイプBA 500CDであった。インサート成形型によって2つのプラーク(それぞれ55×60×1mm)の成形を行った。
【0061】
・延性/脆性遷移温度(D/B):
以下の方法にしたがって求めた。自動コンピュータ制御打撃ハンマーによる衝撃によって二軸耐衝撃性を求めた。
【0062】
上記記載のようにして製造したプラークから、円形ハンドパンチ(直径38mm)を用いて切除することによって円形の試験片を得た。これらを23℃及び50RHにおいて少なくとも12時間コンディショニングし、次に試験温度の温度制御浴中に1時間配置した。
【0063】
リング支持材上に載置した円形の試験片上への打撃ハンマーの衝撃(5.3kg、1.27cmの直径を有する半球形のパンチ)中の力−時間曲線を検出した。用いた機械はCEAST 6758/000タイプモデルNo.2であった。
【0064】
D/B遷移温度とは、かかる衝撃試験にかけた際に試料の50%が脆性破壊を起こす温度を意味する。
・プラークに関する曇り度:
以下の方法に従って求めた。上記記載のようにして製造したプラークを、50±5%の相対湿度及び23±1℃の温度において12〜48時間コンディショニングした。
【0065】
試験のために用いた装置は、GE 1209ランプ及びフィルターCを備えたHaze-meter UX-10を有するGardner光度計であった。試料の不存在下での測定(曇り度0%)及び遮断光線による測定(曇り度100%)を行うことによって装置の較正を行った。
【0066】
測定及び計算の原理は標準規格ASTM−D1003に与えられている。
5つのプラークについて曇り度の測定を行った。
・プラークに関する光沢:
以下の条件下で運転する射出プレスBattenfeld BA500CDを用いる射出成形によって、試験するそれぞれのポリマーについて10個の長方形の試験片(55×60×1mm)を製造した。
【0067】
スクリュー速度:120rpm;
背圧:10bar;
成形型温度:40℃;
溶融温度:260℃;
射出時間:3秒;
第1の保持時間:5秒;
第2の保持時間:5秒;
冷却時間(第2の保持の後):10秒。
【0068】
射出圧力の値は、上記の示されている時間の間に成形型が完全に充填されるのに十分なものでなければならない。
光沢度計によって、60°の入射角において、評価する試験片の表面によって反射する光流の割合を測定した。表2に報告する値は、それぞれの試験したポリマーに関する10個の試験片についての平均光沢度に相当する。
【0069】
用いた光沢度計は、60°の入射角を有する光度計ZehntnerモデルZGM 1020又は1022セットであった。測定原理は標準規格ASTM-D2457において与えられている。公知の光沢度値を有する試料を用いて装置の較正を行った。
【0070】
・キャストフィルム試験片の製造:
それぞれのポリマー組成物を、一軸Collin押出機(スクリューの長さ/直径比:30)内で7m/分のフィルム引き出し速度及び210〜250℃の溶融温度で押出すことによって、50μmの厚さを有するフィルムを製造した。
【0071】
・フィルムに関する曇り度:
上記に記載のようにして製造した試験組成物の厚さ50μmのフィルムについて求めた。
【0072】
測定は、フィルムの中心領域から切除した50×50mmの部分について行った。
試験のために用いた装置は、GE 1209ランプ及びフィルターCを備えたHaze-meter UX-10を有するGardner光度計であった。試料の不存在下での測定(曇り度0%)及び遮断光線による測定(曇り度100%)を行うことによって装置の較正を行った。
【0073】
・フィルムに関する光沢:
曇り度に関するものと同じ試験片について求めた。
試験のために用いた装置は、入射測定用のモデル1020 Zehntner光度計であった。96.2%の標準光沢度を有する黒色ガラスについての60°の入射角における測定、及び55.4%の標準光沢度を有する黒色ガラスについての45°の入射角における測定を行うことによって較正を行った。
【0074】
・フィッシュアイ:
上記に記載のようにして製造した厚さ50μmのフィルム試験片について求めた。次に、光学機器(Matrix又はLine CCDカメラ)を用いてフィルムを検査した。フィルムの欠陥をそれらの寸法にしたがって計数した。
【0075】
比較例1c:
本比較例は、2.8重量%のエチレン含量を有するランダムプロピレンコポリマーマトリクス、及びエチレン−ブテンエラストマー(ラバー)成分を有するヘテロ相組成物であった。
【0076】
本実施例は、本発明による全ての特徴(特に、MFR、Tm、及びXStot/XSm)を有しないヘテロ相組成物は本発明の価値のある特性のバランスを与えないことを示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(1)及び(2)の合計に対する重量%で、
(1)150℃以上の融点を有するプロピレンホモポリマー或いはプロピレンとエチレン及び/又は1種類以上のC〜C10−α−オレフィンとのコポリマー75〜85重量%;
(2)20〜30%の1種類又は複数のC〜C10−α−オレフィンを含むエチレンと1種類以上のC〜C10−α−オレフィンとのコポリマー15〜25%;
を含み、
・5〜10g/10分の230℃、2.16kgにおけるMFRの値;
・10〜20%のエチレンの全含量;
・2〜8%の1種類又は複数のC〜C10−α−オレフィンの全含量;
・5〜15の成分(1)の室温においてキシレン中に可溶のフラクションに対する室温においてキシレン中に可溶の全フラクションの比XStot/XSm;及び:
・1.5dL/g以下の室温においてキシレン中に可溶の全フラクションの固有粘度の値XSIVtot;
を有するポリオレフィン組成物。
【請求項2】
成分(1)の室温においてキシレン中に可溶のフラクションが2重量%以下である、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項3】
マトリクス成分(1)がプロピレンのコポリマーであり、エチレン及び/又は1種類以上のC〜C10−α−オレフィンから誘導される単位の量が成分(1)の1.5重量%未満である、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項4】
それぞれの後段の重合段階を直前の重合段階において形成されたポリマー材料の存在下で行う少なくとも2つの逐次重合段階で行う逐次重合によって請求項1に記載のポリオレフィン組成物を製造する方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン組成物を含むフィルム。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン組成物を含むキャストフィルム。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン組成物を含む射出成形品。

【公表番号】特表2012−530829(P2012−530829A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516719(P2012−516719)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058916
【国際公開番号】WO2010/149705
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【出願人】(597021842)サンアロマー株式会社 (27)
【Fターム(参考)】