説明

ポリオールエステルの製造方法

【課題】 感覚的性質及び外観上の性質に優れたポリオールエステルの製造方法の提供。
【解決手段】 本発明は、吸着剤の存在下にポリオールを、炭素原子数3〜20の線状もしくは分枝状脂肪族モノカルボン酸と反応させ、次いで粗製エステルの仕上げの間に水蒸気処理を行うことによってポリオールエステルを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素原子数3〜20の線状もしくは分枝状脂肪族モノカルボン酸及びポリオールから、これらの原料化合物を吸着剤の存在下に反応させることによってポリオールエステルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオールエステルとも称される多価アルコールのエステルは、大規模に工業的に様々な用途に、例えば可塑剤または潤滑剤として使用されている。適当な原料化合物の選択によって、物理的な材料特性、例えば沸点または粘度を狙い通りに調節することができ、また化学的性質、例えば耐加水分解性及び酸化分解に対する安定性を考慮することができる。更にまた、ポリオールエステルを、具体的な応用技術的な問題の解決に対して目的通りに仕立てることができる。ポリオールエステルの使用についての詳しい概要は、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版,1985,VCH Verlagsgesellschaft,Vol.A1,305−319頁(非特許文献1); Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 1990,Vol.A15,438−440頁(非特許文献2); Kirk Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,第3版,John Wiley & Sons,1978,Vol.1,778−787頁(非特許文献3); またはKirk Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology,1981,Vol.14,496−498頁(非特許文献4)に記載されている。
【0003】
潤滑剤としてのポリオールエステルの使用は工業的に非常に重要であり、これらは、特に、鉱油に基づく潤滑剤では課せられる要求を不完全にしか満たせないような使用分野において使用される。ポリオールエステルは、特に、タービンモータ油及び精密機械油として使用される。潤滑剤用途用のポリオールエステルは、しばしば、アルコール成分として、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、グリセリンまたはTCD−アルコールDMとも称される3(4),8(9)−ジヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカンに基づく。
【0004】
ポリオールエステルは、可塑剤としてもかなりの規模で使用されている。可塑剤は、プラスチック、コーティング材、シール剤、弾性ゴム及びゴム物品中に様々な用途に使用されている。これらは、化学的に反応すること無しに、好ましくはそれらの溶解挙動及び膨潤挙動によって、高分子量熱可塑性物質と物理的な相互作用を起こす。それによって、元のポリマーと比べて熱可塑性範囲がより低い温度にシフトした均一な系が生じ、中でもその結果、それの機械的な性質が最適化され、例えば変形可能性、弾性、強度が高まりそして硬度が低下する。
【0005】
可塑剤にできるだけ広い応用範囲を開くために、これらは一連の基準を満たさなければならない。理想的には、これらは、臭いが無く、無色であり、耐光性、耐低温性及び耐熱性であるのがよい。更に、これらが、水に対して敏感でなく、燃えにくくかつ揮発性が僅かであること、及び健康を害さないことが期待される。また更に、可塑剤は簡単に製造できるべきであり、かつその製造は、生態学的な要求を満たすために、廃棄残留物、例えば再利用できない副生成物や有害物質を含む廃水を避けて行われるべきである。
【0006】
ポリオールエステルの特殊な部類(簡略してG−エステルとも称される)は、アルコール成分として、ジオールまたはエーテルジオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール及びより高級のプロピレングリコールを含む。それらの製造は、様々な方法で行うことができる。場合により酸性触媒の存在下でのアルコールと酸との反応の他に、実際では、G−エステルを得るための更に別の方法、中でもジオールと酸ハロゲン化物との反応、カルボン酸エステルとジオールとの反応、及びカルボン酸へのエチレンオキシドの付加反応(エトキシル化)が使用される。工業的な製造では、ジオールとカルボン酸との直接的な反応及びカルボン酸のエトキシル化だけが製造方法として確立しており、この際、大概は、ジオールと酸のエステル化が優勢である。というのも、この方法は、慣用の化学装置中でそれ程の煩雑さ無しで行うことができ、そしてこれは化学的に均一な生成物を与えるからである。これと比べて、エトキシル化は大規模でコスト集約的な技術的な手段を必要とする。エチレンオキシドは非常に腐食性の高い化学物質である。これは爆発的に重合し、そして非常に広い混合範囲において空気と爆発性の混合物を形成する。エチレンオキシドは目及び気道を刺激し、化学熱傷を招き、肝臓及び腎臓にダメージを与え、そして発がん性である。それ故、それの取り扱いは、大規模な安全措置を必要とする。更に、エチレンオキシドと異物との副反応による不所望な不純物の形成を排除するために、貯蔵設備及び反応装置の細心の清潔さに注意を払わなければならない。最後に、エチレンオキシドとの反応は選択性があまり高くなく、それでこれは異なる鎖長の複数種の化合物の混合物を与える。
【0007】
アルコールとカルボン酸との直接的なエステル化は、有機化学の基本的な作業に属する。反応速度を高めるために、通常、反応は触媒の存在下に行われる。反応体の過剰使用及び/または反応の過程で生ずる水の分離が、質量作用の法則に応じて平衡を、反応生成物側、すなわちエステル側へとシフトさせる、すなわち高い収量が達成されることを保証する。
【0008】
多価アルコールのエステル(エチレングリコールと脂肪酸とのエステルも含まれる)の製造について及びこれらの部類の化合物の選択された代表物の性質に関しての包括的な情報は、Goldsmith,Polyhydric Alcohol Esters of Fatty Acids,Chem.Rev.33,257頁以降(1943)(非特許文献5)に記載されている。例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリエチレングリコールのエステルの製造は、130〜230℃の温度において2.5〜8時間の反応時間で行われる。反応水を除去するためには、二酸化炭素が使用される。多価アルコールのエステル化に適した触媒としては、無機酸、酸性の塩、有機スルホン酸、アセチルクロライド、金属または両性金属酸化物が挙げられる。反応水の除去は、同伴剤(Schleppmittel)、例えばトルエンもしくはキシレンを用いてまたは不活性ガス、例えば二酸化炭素もしくは窒素を導入して行われる。
【0009】
ポリエチレングリコールの脂肪酸エステルの取得及び性質についてはJohnson(編者),Fatty Acids in Industry (1989)第9章, Polyoxyethylene Esters of Fatty Acidに論じられており、製造に関する一連の示唆が記載されている。より高いジエステル濃度は、グリコールに対するカルボン酸のモル比を高めることによって達成される。反応水の除去のための適当な方策は、水と不混和性の溶剤の存在下での共沸蒸留、不活性ガスの導通下での加熱、または乾燥剤の存在下に減圧下での反応の実施である。触媒の添加を無しで済ませる場合には、より長い反応時間及びより高い反応温度が必要となる。これらの両反応条件は触媒の使用によって軽減することができる。硫酸の他に、p−トルエンスルホン酸などの有機酸、並びにポリスチレンタイプのカチオン交換体が好ましい触媒である。錫や鉄などの金属粉末の使用も記載されている。米国特許第2,628,249号明細書(特許文献1)からの教示によると、硫酸またはスルホン酸を用いた触媒反応の際の色の問題は、活性炭の存在下に作業すると軽減できる。
【0010】
触媒を添加せずにジエチレン−及びトリエチレングリコールとカプリル酸とのエステルを製造する方法は、米国特許第2,469,446号明細書(特許文献2)から知られている。エステル化温度は270〜275℃の範囲であり、反応水は二酸化炭素流によって除去される。
【0011】
触媒の添加を無しで済ませて反応を実施する場合は、一般的に、それの酸性度のために触媒としても作用する各カルボン酸をモル過剰量で使用して作業する。
【0012】
ポリオール及びカルボン酸からエステルを形成する際に生ずる反応水の分離のためには、様々な方法が知られている。例えば、生成した反応水は、過剰のカルボン酸と一緒に反応容器から留去し、そして下流の相分離器に送り、そこでカルボン酸と水とが、それらの溶解性に応じて分離する。場合によっては、使用したカルボン酸が反応条件下に水と共沸混合物も形成し、同伴剤として反応水を除去することができる。また、添加した水と不混和性の溶剤の存在下での共沸蒸留、不活性ガスの導通下での反応混合物の加熱、減圧下または乾燥剤の存在下での原料のポリオール及びカルボン酸の反応も使用される。特に、共沸蒸留による水の除去が、ポリオールエステルの製造の際の平衡の調節にとって有効であることが判明した。独国特許出願公開第19940991A1号明細書(特許文献3)から既知の方法手順では、同伴剤として機能しそして112℃未満の沸点を持たなければならない水と不混和性の溶剤が、少なくとも140℃の温度に達してから始めて反応混合物に加えられる。
【0013】
反応水と過剰の未反応の原料、合目的的には過剰に添加されたカルボン酸とを分離した後に生ずる粗製エステルは、酸性成分の最後の残渣を除去するために、先ず、アルカリ剤、例えば炭酸ナトリウム水溶液または水酸化ナトリウム水溶液で処理することができる。水洗、漂白土及び活性炭での処理の後、着色及び臭い物質の最後の痕跡量を除去するために、高められた温度下に減圧に付すことができる。粗製ポリオールエステルの仕上げ方法は例えば米国特許第2,469,446A1号明細書(特許文献2)から知られている。場合によっては、満足な色特性を有する最終製品を得るために、漂白剤及び活性炭での処理を複数回繰り返すことができる。独国特許第19940991A1号明細書(特許文献3)から知られる作業法では、アルカリ処理後の粗製エステルを、例えば、不活性ガスを生成物中に通すかまたは減圧し、そして場合によっては更に追加的に減圧下に蒸留することによって、乾燥する。ポリオールエステルの色の向上のために、国際公開第94/18153A1号パンフレット(特許文献4)は、過酸化水素水溶液で後処理することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第2,628,249号明細書
【特許文献2】米国特許第2,469,446号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19940991A1号明細書
【特許文献4】国際公開第94/18153A1号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版,1985,VCH Verlagsgesellschaft,Vol.A1,305−319頁
【非特許文献2】Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 1990,Vol.A15,438−440頁
【非特許文献3】Kirk Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,第3版,John Wiley & Sons,1978,Vol.1,778−787頁
【非特許文献4】Kirk Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology,1981,Vol.14,496−498頁
【非特許文献5】Goldsmith,Polyhydric Alcohol Esters of Fatty Acids,Chem.Rev.33,257頁以降(1943)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
冒頭に述べたポリオールエステルの品質基準の故に、反応水を除去しながらのエステル化段階及び粗製エステルの仕上げの際の方法ステップは非常に重要なプロセス上の特徴である。というのも、この方法ステップの調整は、本質的な程度で最終製品の感覚的性質及び外観上の性質に影響を及ぼすからである。特に、ポリオールエステルの色特性、例えば低い色数及び高い色安定性に高い要求が課せられる。これに対して、原料、すなわち多価アルコール及び酸の構造は、そのポリオールエステルを用いて可塑化されたプラスチック材料の機械的及び熱的特性にとって重要であり、そして潤滑剤の加水分解及び酸化安定性に影響を及ぼす。
【課題を解決するための手段】
【0017】
驚くべきことに、エステル反応を吸着剤の存在下に行いそして粗製生成物のその後の仕上げにおいて水蒸気処理を行うと、ポリオールエステルをポリオール及び線状もしくは分枝状脂肪族モノカルボン酸から優れた色数及び色安定性をもって製造できることがここに見出された。
【0018】
すなわち、本発明は、ポリオールと炭素原子数3〜20の線状もしくは分枝状脂肪族モノカルボン酸とを反応させ、次いで反応混合物を仕上げすることによってポリオールエステルを製造する方法である。本発明は、原料化合物の混合物を吸着剤の存在下に反応させ、未反応の原料化合物を分離し、次いで水蒸気処理を行い、そして後に残ったポリオールエステルを乾燥し、この際、反応の終了後にまたは任意の他の仕上げ処置後にポリオールエステルを濾過することを特徴とする。
【0019】
該新規操業方法は、実験及び試験的な作業だけでなく、中でも工業的なプラントにおいても大きな信頼性を特色とする。本方法は、連続的にも簡単に実施することができ、そして高い純度でポリオールエステルを与える。仕上げ段階における水蒸気処理と結びついたエステル化段階での吸着剤の存在は、本発明の方法にとって決定的に重要であり、ポリオールエステルの優れた色特性及び顕著な色安定性を与える。
【発明を実施するための形態】
【0020】
エステル化反応の際に存在する吸着剤としては、化学的なプラクティスにおいて実験室でも工業的なプラントにおいても通常使用される多孔性で高表面積の固体材料である。このような材料の例は、高表面積のポリケイ酸、例えばシリカゲル(シリカ−キセロゲル)、珪藻土、高表面積酸化アルミニウム類及び酸化アルミニウム水酸化物類、鉱物性材料、例えば粘土、炭酸塩または活性炭である。活性炭が特に有効であることが判明した。一般的に、吸着剤は、強力な攪拌または不活性ガスの導通によって運動させた反応溶液中に微細に懸濁する。それによって、液体相と吸着剤との緊密な接触が達成される。吸着剤に対する液体相の質量比率はほぼ自由に、それ故、個々の要求に合わせて調節することができる。液体相100重量部当たり、0.05〜30重量部、好ましくは0.1〜5.0重量部、特に0.1〜10重量部の吸着剤を使用することが有用であることが判明した。反応の終了後は、吸着剤はプロセスから分離し、そしてエステル化容器に戻して再使用することができる。再使用は、吸着剤の脱色力が尽きるまで可能である。しかし、吸着剤を粗製生成物中に残したままにしておき、これを、仕上げプロセスの間に任意の、ただし適切な段階で分離除去することも可能である。
【0021】
ポリオール及び脂肪族モノカルボン酸との反応は触媒の使用無しで行うことができる。この態様の反応は、ポリオールエステルの望ましくない汚染を招く恐れのある異物が反応混合物に導入することが避けられるという利点を有する。しかし、その場合、一般的に、より高い反応温度を維持しなければならない。というのも、その場合にのみ、反応が十分な(すなわち経済的に許容可能な)速度で進行することが保証されるためである。これに関連して、温度の上昇はポリオールエステルの熱的ダメージを招く恐れがあるという点に注意すべきである。それ故、反応を容易にしそして反応速度を高める触媒の使用は常に避けることができるわけではない。しばしば、触媒は、過剰の脂肪族モノカルボン酸であることができ、これは同時にポリオールの反応成分でもあるので、反応は自動触媒的に進行する。その他は、反応速度に影響を及ぼすために慣用のエステル化触媒が適しており、例えば硫酸、ギ酸、ポリリン酸、メタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸、並びにこのような酸の組み合わせなどがある。同様に、金属含有触媒、例えばチタン、ジルコニウムまたは錫を含有する触媒、例えば対応するアルコレートまたはカルボキシレートも使用することができる。反応条件下で固体で反応系中に不溶性の触媒活性化合物、例えばアルカリもしくはアルカリ土類硫酸水素塩、例えば硫酸水素ナトリウムも使用できる。固形の触媒は、エステル化の終了後に、簡単な濾過によって、存在する吸着剤と一緒に反応混合物から除去される。使用する触媒の量は広い範囲に及ぶことができる。反応混合物を基準にして0.001重量%かまたは5重量%の触媒を使用することができる。しかし、多くの触媒量は殆ど利点を与えないため、触媒濃度は、それぞれ反応混合物を基準にして通常は0.001〜1.0重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%である。場合によっては、比較的高い温度で触媒無しで作業するかまたは触媒を用いて比較的低い温度で作業するかを、個々のケースについて予備実験によって決定するのが合目的的である。
【0022】
エステル化は、化学理論量のポリオール及び脂肪族モノカルボン酸を用いて行うことができる。しかし、好ましくは、ポリオールを、過剰のモノカルボン酸と触媒の添加無しで反応させて、過剰のモノカルボン酸自体を触媒として作用させる。使用されるポリオールと比べて一般的に低い沸点を有する過剰のモノカルボン酸は、蒸留することによって簡単に粗製エステルから分離することもできる。脂肪族モノカルボン酸は、ポリオールのエステル化されるヒドロキシル基1モル当たり10〜50%モル過剰で、好ましくは20〜40%モル過剰で使用される。
【0023】
生成した反応水は、反応の過程で、過剰のモノカルボン酸と一緒に反応容器から留去され、そして後続の相分離器に導かれ、そこでモノカルボン酸と水とがそれらの溶解性に応じて分離する。場合によっては、使用したモノカルボン酸は反応条件下に水と共沸混合物も形成し、そして同伴剤として反応水を除去することを可能にする。水の収量から反応の進行を追跡することができる。分離した水はプロセスから除去され、他方、モノカルボン酸は相分離器から反応容器に再び返流する。共沸混合物形成剤の役割を担う更に別の有機溶剤、例えばヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンまたはキシレン異性体混合物の添加は排除されないが、僅かな事例に限られる。共沸混合物形成剤は、エステル化反応の開始時に既にか、または比較的高い温度に達してから加えることができる。理論的に予測される水の量が発生したらまたは(例えばDIN53240に従い測定した)ヒドロキシル価が決められた値以下まで低下したら、反応混合物を冷却することによって反応を終了する。
【0024】
ポリオールと脂肪族モノカルボン酸との間の反応は、使用材料に応じて約120〜180℃の範囲で起こり、そして様々に構成された方法で完了させることができる。
【0025】
本発明方法の一つの形態では、反応水の除去を容易にするために、先ず室温から開始して最大280℃、好ましくは最大250℃までの温度に加熱し、そして一定に維持された温度の下で圧力を常圧から開始して段階的に低下させる。一段階か二段階かそれともそれ以上の多段階かの圧力段階の選択並びに各段階に調節すべき圧力の選択は広い範囲にわたって変えることができ、個々の条件に適合させることができる。例えば、第一段階において圧力を常圧から開始して先ず600hPaまで低め、次いで反応を300hPaの圧力で完了させることができる。これらの圧力の記載は、有利に遵守される基準値である。
【0026】
圧力を変化させる他、同様に温度も、エステル化反応中に室温から出発して一段階、二段階またはそれ以上の段階で変化させることができ、そうして一定に調節された圧力下に温度を段階毎に、通常は最大280℃の温度まで高める。しかし、段階毎に上昇する温度を最大で280℃まで加熱すること及び圧力も段階毎に低めることが適切であることが判明した。例えば、エステル化反応は、室温から開始して第一段階において190℃までの温度で行うことができる。同様に、反応水の排除を加速するために600hPaまでの低められた圧力が適用される。190℃の温度段階に達したら、圧力をもう一度300hPaまで下げ、そしてエステル化反応を250℃までの温度で終了させる。これらの温度及び圧力の値は、合目的的に遵守される基準値である。個々の段階において調節すべき温度及び圧力条件、段階の数、及び単位時間当たりの各々の温度上昇または圧力低下速度は幅広い範囲で変えることができ、そして原料化合物及び反応生成物の物理的性質に応じて適合され、この際、第一段階の温度及び圧力条件は常圧及び室温から出発して調節される。温度を二段階で高め及び圧力を二段階で低下させることが特に有利であることが判明した。
【0027】
調節すべき圧力の下限は、原料化合物及び生成した反応生成物の物理的性質、例えば沸点及び蒸気圧に依存し、そしてプラントの装備によっても決定される。常圧から出発して、この限界値の範囲内で、段階毎に低下する圧力を用いて段階的に作業することができる。分解生成物の生成、中でも色を害する作用をする分解生成物の生成を避けるために、温度の上限、通常は280℃を遵守するべきである。温度段階の下限は反応速度によって決定され、この反応速度は、許容可能な時間内でエステル化反応を完了させるために十分に速いものでなければならない。この限界値の範囲内で、段階毎に高まる温度を用いて段階的に作業することができる。
【0028】
反応の終了後に生ずる反応混合物は、所望の反応生成物としてのポリオールエステルの他に、場合によっては未反応の原料、特に、本発明方法の好ましい実施形態に従いモノカルボン酸過剰で操業した場合にはなおも過剰の脂肪族モノカルボン酸を含む。通常は、先ず、未反応の過剰に存在する原料を、合目的的には減圧下に、留去する。
【0029】
得られた粗製エステルの仕上げ方法は様々な方法で構成することができる。例えば、先ず、使用した吸着剤を粗製エステルから除くことができる。生成物を、常温でまたは150℃までの温度で慣用のフィルター装置で濾過する。濾過は、慣用のフィルター助剤、例えばセルロース、シリカゲル、珪藻土、木粉によって援助することができる。場合によっては、この際、エステル化段階において加えた固形の触媒または分離した触媒二次生成物を吸着剤と一緒に除去する。硫酸などの酸性触媒をエステル化段階において加えた場合にこれらを除くために及び酸性成分の最後の残渣を除去するたには、アルカリ剤、例えば炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液での処理を設けることもできる。しかし、粗製のエステル化生成物からの吸着剤の分離はかならずしも必要ではなく、更なる仕上げは吸着剤の存在下にまたは不在下に行うことができる。
【0030】
次いで、場合によってはアルカリで処理されているかまたは濾過された粗製エステルは水蒸気での処理に付され、これは、例えば。簡単な形では、粗製生成物中に水蒸気を導入することによって行うことができる。水蒸気処理の利点の一つは、その過程中に、添加されている場合になおも存在する金属含有触媒が分解され、そして濾別し易い加水分解生成物に転化されるということである。また水蒸気処理は、ポリオールエステルの色数の向上にも貢献する。エステル化反応中に加えられた吸着剤がなおも存在すると、これは、触媒二次生成物の分離を容易にする。また同様に、水蒸気処理中での吸着剤の存在は、追加的に、ポリオールエステルの色及び色安定性にも有利に作用し、それ故、その存在は推奨される。しかし、エステル化反応の終了後及び過剰の原料化合物の分離の後に、すなわち水蒸気蒸留の実施の前に吸着剤を濾別することもできる。
【0031】
水蒸気処理は、一般的に常圧下に行われるが、軽い負圧の使用、有利には400hPaまでの軽い負圧の使用は排除されない。水蒸気処理は、一般的に100〜250℃、好ましくは150〜220℃、特に170〜200℃の温度で行われ、そして個々の場合に製造されるポリオールエステルの物理的な性質にも合わせられる。
【0032】
水蒸気処理の工程中は、粗製エステルを水蒸気処理に必要な温度まで加熱するために、作業温度に達するまでの加熱期間中はできるだけ穏和に進めることが有利であることが判明した。
【0033】
水蒸気処理の期間は定型的な試験によって求められ、そして一般的に0.5〜5時間の期間にわたり行われる。長すぎる水蒸気処理は、ポリオールエステルの望ましくない色数の上昇を招き、それ故避けるべきである。ポリオールエステルの分解反応が増強されて酸反応性化合物になることも観察され、それの含有量は、中和価または酸価、例えばDIN EN ISO3682/ASTM D 1613に従い測定される中和価または酸価が上昇することから示される。処理時間が短すぎる場合には、原料化合物及び水の残渣の除去が完全でなくなり、そして所望のポリオールエステルが、なおも、高すぎる望ましくない酸価及び多すぎる水含有量を示す。また、処理時間が短すぎる場合には、ポリオールエステルの色数に対する観察される有利な効果が僅かとなる。
【0034】
水蒸気処理の条件、例えば温度、圧力及び時間は、ポリオールエステルの色数に関して最適な成果を達成するために並びに原料化合物及び水の残留含有率をできるだけ少なくし及び同時に分解反応を抑制するために、各々のポリオールエステルに合わせて調節することができる。
【0035】
特に、エーテルジオール類に基づくポリオールエステル、例えばトリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールに基づくポリオールエステルにおいては、エーテル鎖の不所望な分解を阻止するために、水蒸気処理の際の条件を個々のポリオールエステルに合わせて調節するべきである。
【0036】
水蒸気処理に続き、場合よっては吸着剤の濾過の後に、ポリオールエステルの乾燥を行う。これは、例えば、高められた温度の下に生成物中に不活性ガスを通すことによって行われる。高められた温度下に同時に負圧を適用し、そして場合によっては不活性ガスを生成物中に導通することもできる。不活性ガスを作用させること無しに、高められた温度または低められた圧力の下だけで作業することもできる。個々の場合に各々のポリオールエステルに合わせて調節された乾燥条件、例えば温度、圧力及び時間は、簡単な予備試験によって求めることができる。一般的に、80〜250℃、好ましくは100〜180℃の範囲の温度及び0.2〜500hPa、好ましくは1〜200hPa、特に1〜20hPaの圧力で作業する。エステル化段階で添加された吸着剤がなおも存在する場合には、ポリオールエステルを濾過する。濾過は慣用の濾過装置で常温下にまたは120℃までの温度下で行われる。濾過は、慣用の濾過助剤、例えばセルロース、シリカゲル、珪藻土、木粉によって援助することができる。しかしそれらの使用は例外的なケースに限られる。
【0037】
エステル化段階で添加された吸着剤が仕上げ処置の初めに既に濾別されているかどうかに拘わらずまたは乾燥後に、ポリオールエステルを、吸着剤でのもう一度の後処理に付すことが有利なことがあることが判明した。この後処理には、エステル化段階にも使用される吸着剤、特に活性炭が同様に適している。最後にポリオールエステルをもう一度濾過する。
【0038】
吸着剤の存在下にエステル化反応を行う措置によって、既に明るい色の粗製生成物が得られ、それの色品質は、仕上げ段階で行われる水蒸気処理によって更に向上させることができる。色の向上のために過酸化水素水溶液を用いてポリオールエステルを追加的に処理することは排除されないが、特殊なケースに限られる。
【0039】
他の規格、例えば含水率、残留酸含有率、触媒成分の残留含有率及びモノエステルの残留含有率も満たす明るい色のポリオールエステルが得られる。
【0040】
本発明方法に原料して使用される多価アルコールまたはポリオールは以下の一般式(I)を満たす。
R(OH) (I)
式中、Rは、炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10の脂肪族または環状脂肪族炭化水素残基を意味し、そしてnは2〜8の整数、好ましくは2、3、4、5または6を意味する。
【0041】
同様に以下の一般式(II)の化合物もポリオールとして適している。
【0042】
H−(−O−[−CR−]−)−OH (II)
式中、R及びRは、互いに独立して、水素、炭素原子数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル、エチルもしくはプロピル、または炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、好ましくはヒドロキシメチル基を意味し、mは1〜10の整数、好ましくは1〜8の整数、特に1、2、3または4を意味し、oは2〜15の整数、好ましくは2〜8の整数、特に2、3、4または5を意味する。
【0043】
本発明方法に従い明るい色のポリオールエステルに転化することができるポリオールとしては、例えば1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジメチロールブタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジ−トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリトリトールもしくはジ−ペンタエリトリトール、または3(4),8(9)−ジヒドロキシメチル−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカンが適している。
【0044】
更に別のポリオールとしては、エチレングリコール及び1,2−プロピレングリコール及びそれらのオリゴマー、特にエーテルジオールであるジ−、トリ−及びテトラエチレングリコールまたはジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールまたはテトラプロピレングリコールが挙げられる。エチレン−及びプロピレングリコールは工業的に生産されている化学品である。それらの製造のための基本物質はエチレンオキシド及びプロピレンオキシドであり、これらから、圧力下に水と一緒に加熱することによって1,2−エチレングリコール及び1,2−プロピレングリコールが得られる。ジエチレングリコールは、エチレングリコールからエトキシル化することによって得られる。トリエチレングリコール並びにテトラエチレングリコールは、エチレングリコールを製造するためのエチレンオキシドの加水分解の際に副生成物として生ずる。これらの両化合物は、エチレングリコールをエチレンオキシドと反応させることによっても合成することができる。ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール及びより高級のプロポキシル化生成物は、1,2−プロピレングリコールにプロピレンオキシドを複数回付加して得ることができる。
【0045】
本発明方法に従い明るい色のポリオールエステルを得るためには、分子中に3〜20個の炭素原子を有する線状もしくは分枝状の脂肪族モノカルボン酸を使用する。多くの場合に飽和酸が好ましいが、可塑剤または潤滑剤の個々の使用分野に依存して、不飽和カルボン酸もエステル合成のための反応成分として使用することができる。ポリオールエステルの構成要素としてのモノカルボン酸の例は、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−ペンタン酸、2−メチル−酪酸、3−メチル酪酸、2−メチルペンタン酸、n−ヘキサン酸、2−エチル酪酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、2−エチルヘキサン酸、n−ノナン酸、2−メチルオクタン酸、イソノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、2−メチルウンデカン酸、イソウンデカンカルボン酸、トリシクロデカンカルボン酸及びイソトリデカンカルボン酸である。該新規方法は、モノエチレングリコールもしくはオリゴマー性エチレングリコール並びに1,2−プロピレングリコールもしくはオリゴマー性プロピレングリコールとC〜C13−もしくはC〜C10−モノカルボン酸とのポリオールエステルの製造に、並びに1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、トリメチロールプロパン、ジ−トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールまたは3(4),8(9)−ジヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカンに基づくポリオールエステルの製造のために特に有効であることが判明した。
【0046】
エチレングリコール並びにそれのオリゴマーのポリオールエステルは、全ての慣用の高分子量熱可塑性物質用の可塑剤として優れて適している。これは、特に、多層もしくは複合ガラスの製造のための中間層としてグリコールエステルと混合して使用されるポリビニルブチラールへの添加剤として有効であることが判明した。これらは、同様に、コーティング材として様々な用途がある、プラスチックの水性分散体中の凝集剤(Koaleszenzmittel)または成膜助剤としても使用することができる。本発明の製造方法に従い、優れた色特性を有するポリオールエステルを簡単に製造することができ、これは、更なる品質要求、例えば少ない臭いまたは低い酸価を満たす。本発明の方法は、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3G8エステル)、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(4G7エステル)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3G6エステル)、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(3G7エステル)またはテトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(4G8エステル)の製造に特に適している。
【0047】
本発明の方法は、化学技術に典型的な反応装置中で連続的にもしくはバッチ式に行うことができる。攪拌タンクまたは反応管が特に有効であることが判明しており、この際、バッチ式に反応を行うことが好ましい。
【0048】
以下の例では、本発明方法をより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例】
【0049】
例1:
トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3G8エステル)の製造; 活性炭の存在下でのエステル化
2−エチルヘキサン酸でのトリエチレングリコールのエステル化を、攪拌機、内部温度計及び水分離器を備えた加熱可能な1L容積の四つ首フラスコ中で行った。
【0050】
前記フラスコ中に、トリエチレングリコール250g(1.66mol)及び2−エチルヘキサン酸680g(4.72mol)並びに全反応混合物を基準にして0.4重量%の活性炭を仕込んだ。攪拌下及び900hPaの軽い負圧の適用下に、この混合物を225℃に加熱した。この温度に達したら、圧力を段階的に400hPaまで低下し、そして生じた反応水を水分離器の所で除去した。反応の過程は、水分離器を介して排出される水の量を連続的に計量することによって及びヒドロキシル価の推移によって追跡した。全部で14.5時間の反応時間の後、4.2mgKOH/g(DIN53240準拠)の残留ヒドロキシ価で反応が終了した。
【0051】
次いで、3.75時間の期間にわたって、200℃の温度及び20hPaの圧力において余分の2−エチル−ヘキサン酸を留去した。その後、2.5時間の期間にわたって200℃及び常圧で水蒸気蒸留を行った。最後に活性炭を濾過した後、表1に記載の特性値を有する明るい色のトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートが得られた。
【0052】
例2(比較例):
トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3G8エステル)の製造; 活性炭の添加無しでのエステル化
実施例1に従い作業するが、エステル化反応を活性炭の添加無しで行った。固形物が存在しなかったため、エステル化及び仕上げ後に混合物は濾過しなかった。確認された特性値を同様に以下の表に記載する。
【0053】
【表1】

【0054】
表1の試験データに示されるように、明るい色のポリオールエステルを得るためにはエステル化段階における活性炭の添加が必要である。明るい色のポリオールエステルを得るためには、エステル化段階での活性炭の添加ばかりでなく、仕上げの際の水蒸気蒸留も必要である。水蒸気蒸留単独では、規格を満たす生成物を得るためには十分ではない。
【0055】
例3:
ネオペンチルグリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートの製造、活性炭の存在下でのエステル化
2−エチルヘキサン酸でのネオペンチルグリコールのエステル化を、攪拌機、内部温度計及び水分離器を備えた加熱可能な1L容積の四つ首フラスコ中で行った。
【0056】
前記フラスコ中に、ネオペンチルグリコール312.8g(3.0mol)及び2−エチルヘキサン酸966.9g(6.7mol)並びに全反応混合物を基準にして1.0重量%の活性炭を仕込んだ。攪拌下及び600hPaの軽い負圧の適用下に、この混合物を200℃に加熱し、そしてこの温度で2時間放置した。次いで、圧力を段階的に500hPaまで低下し、そして生じた反応水を水分離器で除去した。反応の経過は、水分離器を介して排出される水の量を連続的に計量することによって及びヒドロキシル価の推移によって追跡した。合計で8時間の反応時間後に反応が終了した。
【0057】
次いで、2時間の期間にわたり190℃の温度及び95hPaの圧力で、次いで更に0.5時間、130℃の温度及び6hPaの圧力で、余分の2−エチルヘキサン酸を留去した。その後、0.5時間の期間にわたり180℃及び常圧で水蒸気蒸留を行い、そして最後に120℃の温度で15分間乾燥した。最後に活性炭を濾過した後、以下の特性値を有する明るい色のネオペンチルグリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートが得られた。
【0058】
【表2】

【0059】
例4(比較例):
ネオペンチルグリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートの製造; 活性炭の添加無しでのエステル化
実施例3に従い作業するが、エステル化反応は活性炭の添加無しに行った。固形物が存在しなかったので、エステル化及び仕上げの後に混合物は濾過しなかった。
【0060】
【表3】

【0061】
これらの例も、吸着剤の存在下にエステル化反応を行うことが、所望のポリオールエステルの色数に有利に作用することを実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを、炭素原子数3〜20の線状もしくは分枝状脂肪族モノカルボン酸と反応させ、次いで反応混合物を仕上げすることによってポリオールエステルを製造する方法であって、原料化合物の混合物を吸着剤の存在下に反応させ、未反応の原料化合物を分離し、次いで水蒸気処理を行い、そして残ったポリオールエステルを乾燥し、この際、反応の終了後にまたは任意の他の仕上げ処置の後にポリオールエステルを濾過することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
原料化合物の混合物を、吸着剤の存在下に最大280℃まで、好ましくは250℃までの温度に加熱し、そして一定に維持した温度下に圧力を段階毎に低下させることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
原料化合物の混合物を、吸着剤の存在下に一定に調節した圧力下に段階毎に最大280℃の温度まで加熱することを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項4】
原料化合物の混合物を、吸着剤の存在下に、段階毎に高まる温度の下に最大280℃まで加熱し、加えて圧力を段階毎に低下させることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項5】
原料化合物の混合物を、吸着剤の存在下に、第一の段階で190℃までの温度及び600hPaまでの圧力下に反応させ、そして反応を、第二の段階において、250℃までの温度に高めることによって及び300hPaまでの圧力下に終了させることを特徴とする、請求項4の方法。
【請求項6】
吸着剤を、液体相100重量部当たり、0.05〜30重量部、好ましくは0.1〜5.0重量部、特に0.1〜1.0重量部の量で使用することを特徴とする、請求項1〜5の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項7】
吸着剤として、シリカゲル、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、粘土、炭酸塩または活性炭を使用することを特徴とする、請求項1〜6の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項8】
水蒸気処理を、100〜250℃、好ましくは150〜220℃、特に170〜200℃の温度で行うことを特徴とする、請求項1〜7の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項9】
ポリオールエステルを、水蒸気処理の後に、80〜250℃、好ましくは100〜180℃の温度及び0.2〜500hPa、好ましくは1〜200hPa、特に1〜20hPaの圧力下に乾燥することを特徴とする、請求項1〜8の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項10】
ポリオールエステルを不活性ガスの存在下に乾燥することを特徴とする、請求項9の方法。
【請求項11】
ポリオールエステルを水蒸気処理の後に濾過することを特徴とする、請求項1〜10の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項12】
ポリオールエステルを乾燥後に濾過することを特徴とする、請求項1〜10の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項13】
ポリオールとして、次の一般式(I)
R(OH) (I)
[式中、Rは、炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10の脂肪族または環状脂肪族炭化水素残基を意味し、そしてnは2〜8の整数、好ましくは2、3、4、5または6を意味する]
で表される化合物を使用することを特徴とする、請求項1〜12の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項14】
ポリオールとして、次の一般式(II)
H−(−O−[−CR−]−)−OH (II)
[式中、R及びRは、互いに独立して、水素、炭素原子数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル、エチルまたはプロピル、または炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、好ましくはヒドロキシメチル基を意味し、mは1〜10の整数、好ましくは1〜8の整数、特に1、2、3または4を意味し、oは2〜15の整数、好ましくは2〜8の整数、特に2、3、4または5を意味する]
で表される化合物が使用されることを特徴とする、請求項1〜12の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項15】
ポリオールとして1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジメチロールブタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリトリトール、エチレングリコール、または3(4),8(9)−ジヒドロキシ−メチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカンが使用されることを特徴とする、請求項13の方法。
【請求項16】
ポリオールとしてジ−トリメチロールプロパン、ジ−ペンタエリトリトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールまたはテトラプロピレングリコールが使用されることを特徴とする、請求項14の方法。
【請求項17】
脂肪族モノカルボン酸としてプロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−ペンタン酸、2−メチル−酪酸、3−メチル酪酸、2−メチルペンタン酸、n−ヘキサン酸、2−エチル酪酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、n−ノナン酸、2−メチルオクタン酸、イソノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸または2−プロピルヘプタン酸を反応させることを特徴とする、請求項1〜16の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項18】
トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートまたはトリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエートの製造のための請求項1〜17の一つまたはそれ以上の方法。

【公開番号】特開2011−80062(P2011−80062A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226263(P2010−226263)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(507254975)オクセア・ゲゼルシャフト・ミト・べシュレンクテル・ハフツング (10)
【Fターム(参考)】