説明

ポリカーボネートおよび/またはポリメタクリル酸メチル親和性ペプチド、およびその利用

【課題】本発明はポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上に対して特異的かつ強固に結合することができるリガンドペプチドを提供する。
【解決手段】本発明にかかるリガンドペプチドは、配列番号1〜6のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含み、且つ分子量が10kD以下である。当該ペプチドを所望のタンパク質に結合させることによって、当該タンパク質をポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上に特異的に結合させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート(以下、適宜「PC」という)およびポリメタクリル酸メチル(以下、適宜「PMMA」という)いずれか一つ以上と特異的に結合するペプチド(以下、適宜「PC/PMMA親和性ペプチド」という)、およびPC/PMMA親和性ペプチドの代表的な利用方法に関するものである。
【0002】
また本発明は、ポリカーボネートやポリメタクリル酸メチルをはじめとする標的物質と特異的に結合するペプチドを効率的にスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、医療診断や生化学の分野において、プラスチック基板上に抗体や酵素などの機能性タンパク質を固定したプロテインチップの研究が盛んに行われている。かかるプロテインチップにおいては、タンパク質をプラスチック基板上に安定的かつ配向的に固定化する技術が求められている。その技術として、機能性タンパク質の末端にプラスチックに対して特異的に結合(吸着)する親和性ペプチドを導入する方法が知られている。本発明者らは、ポリスチレンに対して特異的に結合するペプチド(「PS−タグ」という)を機能性タンパク質の末端に導入し、当該PS−タグが導入された機能性タンパク質をポリスチレンに固定化することによって、安定的かつ配向的に機能性タンパク質を固定化できるということを確認した(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0004】
ポリスチレン以外のプラスチックに特異的に結合するペプチドとしては、例えば特許文献2にポリカーボネート、ポリスチレン、またはポリウレタンと特異的に結合するペプチドが開示されている。
【0005】
また非特許文献1にはポリメタクリル酸メチルと特異的に結合するペプチドが開示されている。
【0006】
上記従来公知のペプチドのスクリーニングには、従来ファージディスプレイ法が用いられてきた。これは、繊維状ファージの表層に人工的に作られたランダムなアミノ酸配列を有するペプチドを提示させ、それをペプチドライブラリとし、その中から目的にあったペプチドをスクリーニングする方法である。この方法の利点として、一度に探索できるライブラリーサイズが〜1012と非常に大きいことが挙げられる。しかし、その操作は非常に煩雑であり、ファージ自身の非特異的な吸着等による擬陽性クローンの出現によって有効なペプチドの探索が困難となる場合が多いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2009/101807号パンフレット(国際公開日:2009年8月20日)
【特許文献2】特表2005−518442号公報(公表日:平成17(2005)年6月23日)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】芹澤ら,「Highly Specific Affinities of Short Peptides against Synthetic Polymers」, Langmuir 2007, 23, 11127-11133
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来公知のペプチドは、エンジニアリングプラスチックとして広範に使用されているポリカーボネートおよびプロテインチップ等の基板として用いられているポリメタクリル酸メチルのいずれかに特異的に結合し得るものであるが、結合力としては十分に満足いくものとは必ずしもなっていなかった。またポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの両方に特異的且つ強固に結合することができるペプチドも従来知られていなかった。またリガンドペプチドを用いて機能性タンパク質を基板上に固定化してプロテインチップを作製する場合、使用するペプチドによっては機能性タンパク質の生理活性を阻害したり、3次元構造を変化させてしまう場合が有り、プロテインチップとしての使用を損なわれる場合がある。このため、多種多様なリガンドペプチドが求められている。
【0010】
そこで本発明は、ポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの両方またはいずれか一方に特異的且つ強固に結合することができるリガンドペプチドを提供するとともに、当該ペプチドを用いたタンパク質の固定化方法等の代表的な利用方法を提供する。
【0011】
さらに本発明は、プラスチック等の標的分子に対して特異的に結合するペプチドのスクリーニング方法として、ファージディスプレイ法に代わる新たな効率的スクリーニング方法をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討した結果、ファージディスプレイ法に変わる新たなスクリーニング法を開発し、当該スクリーニング方法を用いてポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの両方またはいずれか一方に対して特異的に結合し得るペプチドを発見することに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち本発明にかかるリガンドペプチドは、所望のタンパク質に導入することによって、当該タンパク質をポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上に特異的に結合させるために用いられるリガンドペプチドであって、以下の(a)または(b)に示されるペプチドを含み、且つ分子量が10kD以下であることを特徴としている。
(a)配列番号1〜8のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)配列番号1〜8のいずれかに示されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上に特異的に結合する活性を有するペプチド。
【0014】
また本発明にかかるリガンドペプチドは、当該タンパク質をポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの両方に特異的に結合させるために用いられるリガンドペプチドであって、以下の(c)または(d)に示されるペプチドを含み、且つ分子量が10kD以下であることを特徴とするリガンドペプチドであってもよい。
(c)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(d)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルに特異的に結合する活性を有するペプチド。
【0015】
また本発明にかかるリガンドペプチドは、分子量が3.5kD以下であることが好ましい。
【0016】
また本発明は、所望のタンパク質をポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上に特異的に結合させて固定化するタンパク質の固定化方法であって、上記本発明にかかるリガンドペプチドを当該タンパク質に導入する導入工程、および当該導入工程によって得られた、リガンドペプチドが導入されたタンパク質と、ポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上とを接触させる接触工程、を含むことを特徴とするタンパク質の固定化方法をも包含する。
【0017】
本発明にかかるタンパク質の固定化方法における導入工程は、所望のタンパク質と本発明にかかるリガンドペプチドとの融合タンパク質を作製する工程であってもよい。
【0018】
また本発明は、ポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上に特異的に結合するタンパク質の製造方法であって、本発明にかかるリガンドペプチドを当該タンパク質に導入する導入工程を含むことを特徴とするタンパク質の製造方法をも包含する。
【0019】
本発明にかかるタンパク質の製造方法における導入工程は、所望のタンパク質と本発明にかかるリガンドペプチドとの融合タンパク質を作製する工程であってもよい。
【0020】
また本発明にかかるタンパク質の製造方法によって製造されたタンパク質が、ポリカーボネートまたはポリメタクリル酸メチルからなる基材上に固定化されてなるタンパク質複合体も、本発明に含まれる。
【0021】
さらに本発明にかかるタンパク質の製造方法によって製造されたタンパク質が、ポリカーボネートまたはポリメタクリル酸メチルからなる基板上に固定化されてなるプロテインチップも、本発明に含まれる。
【0022】
また本発明は、標的物質に対して特異的に結合するペプチドのスクリーニング方法であって、タンパク質ライブラリと標的物質とを接触させて、標的物質と特異的に結合するタンパク質を選抜する一次選抜工程、当該一次選抜工程によって選抜されたタンパク質を、断片化してペプチド群を調製するペプチド化工程、当該ペプチド化工程によって調製されたペプチド群と標的物質とを接触させた後に、ペプチド群と標的物質とを隔離する接触隔離工程、および当該接触隔離工程前後のペプチド群に含まれるペプチドを比較し、接触隔離工程後にペプチド群における含有量が減少したペプチドを選抜する二次選抜工程、を含むことを特徴とするスクリーニング方法をも包含する。
【0023】
本発明にかかるスクリーニング方法における二次選抜工程は、接触隔離工程前後のペプチド群に含まれるペプチドを比較し、接触隔離工程後にペプチド群における含有量が70%以上減少したペプチドを選抜する工程であることが好ましい。
【0024】
また本発明にかかるスクリーニング方法において上記標的物質は、有機高分子であってもよい。
【0025】
また本発明において上記標的物質はポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルからなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0026】
さらに本発明において上記タンパク質ライブラリは細胞内タンパク質からなるものであってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかるリガンドペプチドは、ポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの両方またはいずれか一方に特異的且つ強固に結合することができるものである。よって、当該ペプチドをタンパク質等のバイオ分子に導入することで、ポリカーボネート基板およびポリメタクリル酸メチル基板の少なくとも一方に高密度かつ配向的に所望のタンパク質を固定化できる。本発明にかかるペプチドの導入位置を任意に制御することができるためにバイオ分子の生理活性を維持できることが期待できる。それゆえ、本発明にかかるペプチドは、バイオチップならびにライフサイエンス分野における材料開発において大きく貢献し得る。
【0028】
また本発明のスクリーニング方法によれば、ポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチル等の様々な標的物質に結合し得るペプチドを効率的にスクリーニングすることができる。それゆえ本発明のスクリーニング方法によれば、タンパク質等のバイオ分子の固定化に大いに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかるスクリーニング方法の一実施形態を説明するための図であり、大腸菌の細胞内タンパク質からPC/PMMA親和性タンパク質を選抜するまでの工程を示す。
【図2】本発明にかかるスクリーニング方法の一実施形態を説明するための図であり、PC/PMMA親和性タンパク質からPC/PMMA親和性ペプチドを選抜するまでの工程を示す。
【図3】(a)大腸菌内の細胞内タンパク質が含まれている吸着用サンプルの二次元電気泳動像であり、(b)は吸着用サンプルをPCと接触させた後、PCから溶出したタンパク質を含む溶出サンプルの二次元電気泳動像である。
【図4】大腸菌で発現させたPC/PMMA親和性タンパク質(精製後)のSDS−PAGE像である。
【図5】PC/PMMA親和性タンパク質についてPCおよびPMMAに対する吸着力を測定した結果を示すグラフである。
【図6】コントロールであるBSAのトリプシン消化物をPC片へ吸着させる前後のサンプルをHPLCに供したチャート図である。
【図7】(a)は、BIFのトリプシン消化物をPC片へ吸着させる前後のサンプルをHPLCに供したチャート図であり、(b)はBIFのキモトリプシン消化物をPC片へ吸着させる前後のサンプルをHPLCに供したチャート図である。
【図8】(a)は、MLTのトリプシン消化物をPC片へ吸着させる前後のサンプルをHPLCに供したチャート図であり、(b)はMLTのキモトリプシン消化物をPC片へ吸着させる前後のサンプルをHPLCに供したチャート図である。
【図9】(a)は、OMPのトリプシン消化物をPC片へ吸着させる前後のサンプルをHPLCに供したチャート図であり、(b)はOMPのキモトリプシン消化物をPC片へ吸着させる前後のサンプルをHPLCに供したチャート図である。
【図10】(a)は、ELNのトリプシン消化物をPC片へ吸着させる前後のサンプルをHPLCに供したチャート図であり、(b)はELNのキモトリプシン消化物をPC片へ吸着させる前後のサンプルをHPLCに供したチャート図である。
【図11】各PC/PMMA親和性ペプチドのPCに対する吸着力を測定した結果を示すグラフである。
【図12】各PC/PMMA親和性ペプチドのPMMAに対する吸着力を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。
【0031】
(1.本発明にかかるリガンドペプチド)
本発明にかかるリガンドペプチドは、所望のタンパク質に導入することによって、当該タンパク質をポリカーボネート(PC)およびポリメタクリル酸メチル(PMMA)の少なくとも1つ以上に特異的に結合させるために用いられるペプチドである。
【0032】
本明細書において「ペプチド」とは、ペプチド結合によって2個以上のアミノ酸が結合したものを指し、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ホモメリックペプチド及びヘテロメリックペプチドを含む。また、ペプチドは、電気的に中性の形態、又は塩の形態をとることがあり、配列表におけるアミノ酸配列のみからなる形態、特定のタンパク質の末端部または内部に本ペプチドを融合させた融合タンパク質の形態、糖質やポリエチレングリコール、NCS基(isothiocyanate)、NHS基(N-Hydroxy succinimide ester)、マレイミド基、チオール基、ビオチン、蛍光色素等を付加して得られる複合体としての形態、さらには、ペプチドをアセチル化、アミド化及び/又は多官能試験により架橋重合させて得られる誘導体又は重合体としての形態であってもよい。
【0033】
ここで、上記リガンドペプチドは、PCおよびPMMAの片方または両方に対して特異的に結合する活性を有するペプチド(「PC/PMMA親和性ペプチド」という)を含んでなるペプチドである。そして、PCおよびPMMAの片方または両方に特異的に結合させることを望むタンパク質に当該リガンドペプチドを導入することによって、当該タンパク質をPCおよびPMMAの片方または両方にリガンドペプチドを介して特異的に結合させることができる。なお本明細書において「PC/PMMA」とは、特記しない限り「PCおよびPMMAの片方または両方」を意味する。
【0034】
上記リガンドペプチドは、酵素や抗体などの機能性タンパク質をPCまたはPMMAからなる基板上に固定してなるプロテインチップの作製、固定化酵素の作製、抗体が担体に固定化されたアフィニティー担体の作製、ELISA法などにおける抗原または抗体の固定化などにおいて好ましく適用され得る。
【0035】
本発明のリガンドペプチドが導入されるタンパク質としては、特に限定されるものではないが、例えば、抗原、抗体、レクチン、酵素又は受容体タンパク質等に適用することができる。より具体的には、グルタチオン転移酵素(GST:Glutathione S-Transferase)、マルトース結合タンパク質(MBP)、アルカリホスファターゼ(ALP)、ペルオキシダーゼ(POD)、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β−ガラクトシダーゼ(β−Gal)、トリプシン、キモトリプシン、トロンビン、Factor Xa、アンジオテンシン変換酵素、チロシンキナーゼ、インスリンレセプター、EGFレセプター、ストレプトアビジン(SA)、モノクローナル抗体(Mab)、ポリクローナル抗体(Pab)、1本鎖抗体(scFv)、多価性1本鎖抗体(sc(Fv)n)(例えば2価性1本鎖抗体(sc(Fv)2))、定常部融合1本鎖抗体(scFv-Fc)、Fab断片及びF(ab’)2断片(抗原結合部位を含む抗体の断片)、補体系タンパク質C1q、コンカナバリンA(ConA)、レンチルレクチン(LCA)、抗体結合タンパク質(Protein A、ZZ、Protein G、Protein L等)等に適用することができる。
【0036】
このようにリガンドペプチドは上記のごとく酵素や抗体等の機能性タンパク質の固定化に好ましく用いられるため、当該機能性タンパク質の機能を阻害しないように、分子量が10kD以下である必要がある。リガンドペプチドの分子量が10kDを超えると、固定化したいタンパク質の機能(生理活性)を損なったり、導入したタンパク質の溶解性が低下したり、タンパク質の分子サイズが大きくなり過ぎるために高密度なタンパク質固定を阻害したりする場合が多い。よって、リガンドペプチドの分子量は、PCおよびPMMAの片方または両方に対して特異的に結合する活性を備えている範囲において、できるだけ小さいことが好ましい。リガンドペプチドの分子量としては例えば10kD以下がより好ましく、3.5kD以下が最も好ましい。
【0037】
ここで「PCおよびPMMAの片方または両方に対して特異的に結合する活性を有する」とは、後述する本発明にかかるスクリーニング方法における選抜工程で、選抜される基準を満たしていることを意味する。
【0038】
本発明にかかるリガンドペプチドを構成するペプチド(「PC/PMMA親和性ペプチド」)は、例えば配列番号1〜8のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドが挙げられる。
【0039】
配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド(「PCMLT10」という)は、本発明者らの検討によってPC/PMMA親和性タンパク質(PCおよびPMMAの片方または両方に対して特異的に結合する活性を有するタンパク質)として同定された大腸菌由来のMalto porin(「MLT」と略す)から見出されたペプチドである。MLTのアミノ酸配列および塩基配列を配列表17および18にそれぞれ示す。なおMLTのアミノ酸配列および塩基配列の情報は、NCBI Gene Bank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Genbank/)から入手可能である(アクセッションNo.CP001509 REGION: 4153898−4155238)。その分子量、MLT全アミノ酸配列におけるPCMLT10の位置、アミノ酸配列、2次構造については後出の表2に示した。このPCMLT10は、特にPCに対して特異的に結合する活性を有するペプチドである。PCMLT10の2次構造としては、α−へリックス構造を多く含むことが特徴的である。なおPCMLT10をコードするDNAの塩基配列例は、特に限定されるものではないが、例えば配列番号9に示される塩基配列が挙げられる。上記塩基配列は、PCMLT10をコードするものであれば、その他のコドンが用いられてもよい。
【0040】
配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチド(「PCMLT8」という)は、本発明者らの検討によってPC/PMMA親和性タンパク質として同定された大腸菌由来のMLTから見出されたペプチドである。その分子量、MLT全アミノ酸配列におけるPCMLT8の位置、アミノ酸配列、2次構造については後出の表2に示した。このPCMLT8は、特にPCに対して特異的に結合する活性を有するペプチドである。PCMLT8の2次構造としては、β−シート構造を多く含むことが特徴的である。なおPCMLT8をコードするDNAの塩基配列は、特に限定されるものではないが、例えば配列番号10に示される塩基配列が挙げられる。上記塩基配列は、PCMLT8をコードするものであれば、その他のコドンが用いられてもよい。
【0041】
配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるペプチド(「PCOMP6」という)は、本発明者らの検討によってPC/PMMA親和性タンパク質として同定された大腸菌由来のOmpF porin(「OMP」と略す)から見出されたペプチドである。OMPのアミノ酸配列および塩基配列を配列表19および20にそれぞれ示す。なおOMPのアミノ酸配列および塩基配列の情報は、NCBI Gene Bank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Genbank/)から入手可能である(アクセッションNo.CP001509 REGION:990984−992072)。その分子量、OMP全アミノ酸配列におけるPCOMP6の位置、アミノ酸配列、2次構造については後出の表3に示した。このPCOMP6は、PCに対して特異的に結合する活性を有するペプチドである。PCOMP6の2次構造としては、β−シート構造を多く含むことが特徴的である。なおPCOMP6をコードするDNAの塩基配列は、特に限定されるものではないが、例えば配列番号11に示される塩基配列が挙げられる。上記塩基配列は、PCOMP6をコードするものであれば、その他のコドンが用いられてもよい。
【0042】
配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるペプチド(「PCOMP3」という)は、本発明者らの検討によってPC/PMMA親和性タンパク質として同定された大腸菌由来のOMPから見出されたペプチドである。その分子量、OMP全アミノ酸配列におけるPCOMP3の位置、アミノ酸配列、2次構造については後出の表3に示した。なおこのPCOMP3は、後出の表5に示すPMOMP21と同一のペプチドであった。つまりこのPCOMP3(PMOMP21)は、PCおよびPMMAに対して特異的に結合する活性を有するペプチドである。PCOMP3(PMOMP21)の2次構造としては、β−シート構造を多く含むことが特徴的である。なおPCOMP3(PMOMP21)をコードするDNAの塩基配列は、特に限定されるものではないが、例えば配列番号11に示される塩基配列が挙げられる。上記塩基配列は、PCOMP3をコードするものであれば、その他のコドンが用いられてもよい。
【0043】
配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるペプチド(「PCOMP7」という)は、本発明者らの検討によってPC/PMMA親和性タンパク質として同定された大腸菌由来のOMPから見出されたペプチドである。その分子量、OMP全アミノ酸配列におけるPCOMP7の位置、アミノ酸配列、2次構造については後出の表3に示した。このPCOMP7は、特にPCに対して特異的に結合する活性を有するペプチドである。PCOMP7の2次構造としては、α−へリックス構造とβ−シート構造とで構成されていることが特徴的である。なおPCOMP7をコードするDNAの塩基配列は、特に限定されるものではないが、例えば配列番号13に示される塩基配列が挙げられる。上記塩基配列は、PCOMP7をコードするものであれば、その他のコドンが用いられてもよい。
【0044】
配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるペプチド(「PCELN8」という)は、本発明者らの検討によってPC/PMMA親和性タンパク質として同定された大腸菌由来のElongation factor Tu(「ELNと略す」)から見出されたペプチドである。その分子量、ELN全アミノ酸配列におけるPCELN8の位置、アミノ酸配列、2次構造については後出の表4に示した。このPCELN8は、特にPCに対して特異的に結合する活性を有するペプチドである。PCELN8の2次構造としては、β−シート構造のみで構成されていることが特徴的である。なおPCELN8をコードするDNAの塩基配列は、特に限定されるものではないが、例えば配列番号14に示される塩基配列が挙げられる。上記塩基配列は、PCELN8をコードするものであれば、その他のコドンが用いられてもよい。ELNのアミノ酸配列および塩基配列を配列表21および22にそれぞれ示す。なおELNのアミノ酸配列および塩基配列の情報は、NCBI Gene Bank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Genbank/)から入手可能である(アクセッションNo.CP001509 REGION:4082550−4083734)。
【0045】
配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるペプチド(「PMOMP19」という)は、本発明者らの検討によってPC/PMMA親和性タンパク質として同定された大腸菌由来のOMPから見出されたペプチドである。その分子量、OMP全アミノ酸配列におけるPMOMP19の位置、アミノ酸配列、2次構造については後出の表5に示した。このPMOMP19は、特にPMMAに対して特異的に結合する活性を有するペプチドである。PMOMP19の2次構造としては、主にβ−シート構造およびコイル構造で構成されていることが特徴的である。なおPMOMP19をコードするDNAの塩基配列は、特に限定されるものではないが、例えば配列番号15に示される塩基配列が挙げられる。
【0046】
配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるペプチド(「PMOMP25」という)は、本発明者らの検討によってPC/PMMA親和性タンパク質として同定された大腸菌由来のOMPから見出されたペプチドである。その分子量、OMP全アミノ酸配列におけるPMOMP25の位置、アミノ酸配列、2次構造については後出の表5に示した。このPMOMP25は、特にPMMAに対して特異的に結合する活性を有するペプチドである。PMOMP25の2次構造としては、α−へリックス構造とβ−シート構造とで構成されていることが特徴的である。なおPMOMP25をコードするDNAの塩基配列は、特に限定されるものではないが、例えば配列番号16に示される塩基配列が挙げられる。
【0047】
また本発明のリガンドペプチドは、上記PC/PMMA親和性ペプチドを含むものであればよく、PC/PMMA親和性ペプチドのみからなるものであってもよい。また本発明のリガンドペプチドは、リガンドペプチド全体としての分子量が10kD以下となる範囲であれば、PC/PMMA親和性ペプチドにその他のアミノ酸が付加されてなるものであってもよい。例えばリガンドペプチドは、PC/PMMAと結合させるタンパク質とリガンドペプチドとを連結するために必要なアミノ酸がPC/PMMA親和性ペプチドに対して付加されなるものであってもよい。
【0048】
また本発明のリガンドペプチドは、それぞれのPC/PMMA親和性ペプチドの由来となるPC/PMMA親和性タンパク質のアミノ酸配列における、PC/PMMA親和性ペプチドのC末端側、またはN末端側に存在するアミノ酸がPC/PMMA親和性ペプチドに付加されてなるものであってもよい。
【0049】
具体的には、PCMLT10は、MLTの全アミノ酸配列(配列番号17)の第431〜457位のアミノ酸に相当するが、リガンドペプチドとしてはその前後に位置するアミノ酸が含まれなるものであってもよい。特に限定されないが、例えば配列番号17の第420〜460位からなるリガンドペプチドであってもよい。
【0050】
同様にPCMLT8は、MLTの全アミノ酸配列(配列番号17)の第341〜360位のアミノ酸に相当するが、リガンドペプチドとしてはその前後に位置するアミノ酸が含まれなるものであってもよい。特に限定されないが、例えば配列番号17の第340〜365位からなるリガンドペプチドであってもよい。
【0051】
同様にPCOMP6は、OMPの全アミノ酸配列(配列番号19)の第163〜182位のアミノ酸に相当するが、リガンドペプチドとしてはその前後に位置するアミノ酸が含まれなるものであってもよい。特に限定されないが、例えば配列番号19の第160〜185位からなるリガンドペプチドであってもよい。
【0052】
同様にPCOMP3(PMOMP19)は、OMPの全アミノ酸配列(配列番号19)の第276〜299位のアミノ酸に相当するが、リガンドペプチドとしてはその前後に位置するアミノ酸が含まれなるものであってもよい。特に限定されないが、例えば配列番号19の第270〜300位からなるリガンドペプチドであってもよい。
【0053】
同様にPCOMP7は、OMPの全アミノ酸配列(配列番号19)の第5〜28位のアミノ酸に相当するが、リガンドペプチドとしてはその前後に位置するアミノ酸が含まれなるものであってもよい。特に限定されないが、例えば配列番号19の第1〜30位からなるリガンドペプチドであってもよい。
【0054】
同様にPCELN8は、ELNの全アミノ酸配列(配列番号21)の第125〜137位のアミノ酸に相当するが、リガンドペプチドとしてはその前後に位置するアミノ酸が含まれなるものであってもよい。特に限定されないが、例えば配列番号21の第120〜140位からなるリガンドペプチドであってもよい。
【0055】
同様にPMOMP19は、OMPの全アミノ酸配列(配列番号19)の第191〜218位のアミノ酸に相当するが、リガンドペプチドとしてはその前後に位置するアミノ酸が含まれなるものであってもよい。特に限定されないが、例えば配列番号19の第190〜220位からなるリガンドペプチドであってもよい。
【0056】
同様にPMOMP25は、OMPの全アミノ酸配列(配列番号19)の第304〜327位のアミノ酸に相当するが、リガンドペプチドとしてはその前後に位置するアミノ酸が含まれなるものであってもよい。特に限定されないが、例えば配列番号19の第300〜330位からなるリガンドペプチドであってもよい。
【0057】
また本発明のリガンドペプチドを構成するPC/PMMA親和性ペプチドは、配列番号1〜6のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるものに限定されず、配列番号1〜6において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上に特異的に結合する活性を有するペプチド(「変異ペプチド」)であってもよい。つまり本発明におては、PC/PMMAに特異的に結合する活性を有する限りにおいて、配列番号1〜6に示されるアミノ酸配列を改変したものも許容される。ここで上記「1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異タンパク質作製法により置換、欠失、挿入、および/または付加できる程度の数(好ましくは5個以下、より好ましくは3個以下)のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されていることを意味する。変異ペプチド(または変異ペプチドを含んでなるリガンドペプチド)を作製することは、当業者にとっては当然に行い得る範囲である。かようにして作製した変異ペプチド(または変異ペプチドを含んでなるリガンドペプチド)についてPC/PMMAに特異的に結合する活性を有するかどうかを判断すればよい。
【0058】
本発明にかかるリガンドペプチドは、公知の遺伝子工学的手法や化学合成法によって製造することが可能である。例えば、遺伝子工学的手法を利用する場合、リガンドペプチドをコードするDNAを調製し、これを自律複製可能なベクターに挿入して組換えDNAとし、これを大腸菌、枯草菌、放線菌、酵母、糸状菌、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞などの適宜宿主に導入して形質転換体とし、その培養物から所望のリガンドペプチドを採取することができる。また、本発明にかかるリガンドペプチドをコードするDNAを調製し、小麦胚芽や大腸菌細胞抽出液などを用いて無細胞タンパク質合成系により所望のリガンドペプチドを合成することができる。
【0059】
一方、「固相法」又は「液相法」等の慣用のペプチド化学合成法を利用して、本発明にかかるリガンドペプチドを逐次、脱水縮合させて伸長させることによって、所望のリガンドペプチドを合成することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の参考文献(i)〜(v)に記載された方法が挙げられる。
(i)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
(ii)SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(iii)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
(iv)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
(v)矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
上記で取得されたリガンドペプチドは、通常の精製法、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶などを組み合わせて適宜精製単離され得る。なお、上記により取得されたリガンドペプチドは、PC/PMMA親和性ペプチドを有しているため、形質転換体からの生成物を含む溶液をPC/PMMA表面に接触させることにより、リガンドペプチドをPC/PMMA表面に直接吸着させて、容易に分離精製することができる。生成物を含む溶液とは、所望のリガンドペプチドを含み、且つ宿主に起因する不要な夾雑物が存在する溶液全般を指し、例えば、菌体破砕液、菌体破砕液を遠心分離して得られた可溶性画分、菌体破砕液を遠心分離して得られた不溶性画分を可溶化したもの、細胞膜画分、細胞壁画分、細胞から分泌生産された分泌物、体液、またはこれらの不完全な精製物等を含む。
【0060】
さらに、組換えDNAを導入することによって異種遺伝子を宿主内で大量に発現させた場合、生成されたタンパク質による宿主への悪影響を避けるため、不溶で不活性な凝集体である封入体(inclusion body)として生成されることがあるが、本発明にかかるリガンドペプチドが封入体(inclusion body)として生成されていても、変性剤で封入体(inclusion body)を可溶化後そのままPC/PMMA表面に固定化することができ、しかも固定化させた状態で変性剤を除去することによって本発明にかかるリガンドペプチドがリフォールディングされる場合もある。
【0061】
また、封入体に対してだけではなく、何らかの原因によって、立体構造が変性されていても、本発明にかかるリガンドペプチドであれば、そのままPC/PMMA表面に固定化することができ、しかも固定化させた状態で適当なリフォールディングバッファを加えることによって本発明にかかるリガンドペプチドをリフォールディングできる場合もある。変性の原因としては、加熱、凍結、高圧、超音波、紫外線、X線、撹拌、吸着、希釈などの物理的な原因と、極端な酸性またはアルカリ性、有機溶媒、重金属塩、変性剤、界面活性剤などの化学的な原因がある。
【0062】
(2.本発明にかかるタンパク質の固定化方法)
本発明にかかるタンパク質の固定化方法は、所望のタンパク質をポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上に特異的に結合させて固定化する方法であり、上述の本発明にかかるリガンドペプチドを当該タンパク質に導入する導入工程、および当該導入工程によって得られた、リガンドペプチドが導入されたタンパク質と、ポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上とを接触させる接触工程、を含むことを特徴としている。
【0063】
上述の通り、本発明にかかるリガンドペプチドは、PC/PMMAに対して特異的に結合する活性を有するPC/PMMA親和性ペプチドを含んでなるペプチドであるため、所望のタンパク質に当該リガンドペプチドを導入することによって、当該タンパク質をPC/PMMAにリガンドペプチドを介して特異的に結合させることができる。また本発明にかかるリガンドペプチドは、PC/PMMAとの親和性が高いために、タンパク質の高密度且つ強固な固定化が可能となる。さらにリガンドペプチドのタンパク質への導入位置を制御することによって、配向的に所望のタンパク質を固定化できるとともに、タンパク質の生理活性を維持したまま固定化することができるというメリットを享受できる。
【0064】
〔導入工程〕
本発明にかかるタンパク質の固定化方法に含まれる導入工程は、リガンドペプチドを所望のタンパク質に導入する工程であればその手法については、特に限定されるものではない。例えば、上記導入工程は、例えば公知の遺伝子工学的手法や、ペプチド化学合成法を用いて行い得る。リガンドペプチドが導入される所望のタンパク質については、既述の通りである。
【0065】
リガンドペプチドの導入部位は、所望のタンパク質が本来有する生理活性を妨げない部位、例えば、抗原の場合は抗原決定基以外、抗体の場合は抗体活性基以外の部位とすることが好ましい。特に、所望のタンパク質の立体構造を維持したままPC/PMMAに固定化することが好ましいため、所望のタンパク質のC末端またはN末端近傍の部位にリガンドペプチドを導入することが好ましい。なお、所望のタンパク質には、リガンドペプチド以外にも、標識用のアフィニティタグ等が別途導入されていてもよい。
【0066】
特に、所望のタンパク質として抗原結合部位が形成される可変部を含むタンパク質とする場合は、重鎖の可変部よりもC末端側又は軽鎖の可変部よりもC末端側(両方を含む)にリガンドペプチドを導入する。可変部よりもC末端側とは、重鎖または軽鎖可変部におけるC末端から本ペプチド全体におけるC末端までの位置であって、可変部の抗原結合を阻害しない位置全てを指す。
【0067】
所望のタンパク質が抗体分子の場合は、重鎖(H鎖)の可変部(VH)よりもC末端側に位置する定常部(CH1、CH2、CH3、CH4)のドメインにおけるN末端やC末端、軽鎖(L鎖)の定常部(CL)のドメインにおけるN末端やC末端の一つ若しくは複数箇所に導入することが好ましく、特に、重鎖のFc領域の定常部(CH2、CH3、CH4)のドメインにおけるN末端やC末端、軽鎖のC末端の一つ若しくは複数箇所に導入することが好ましい。
【0068】
Fab断片又はF(ab’)2断片の場合は、重鎖又は軽鎖の可変部のドメイン(VH及びVL)におけるC末端、定常部(CH1及びCL)のドメインにおけるN末端やC末端あるいはの一つ若しくは複数箇所に導入することが好ましく、特に、重鎖のC末端又は軽鎖のC末端の一つ若しくは複数箇所に導入することが好ましい。
【0069】
また、1本鎖抗体(scFv)、多価性1本鎖抗体(sc(Fv)n)、定常部融合1本鎖抗体(scFv-Fc)のように、重鎖と軽鎖を結合するペプチド(リンカーペプチド)を有する場合は、リンカーペプチドと重鎖または軽鎖の間、もしくはリンカーペプチド内部にリガンドペプチドを導入してもよい。ここで、リンカーペプチドは、重鎖または軽鎖の一方のC末端と、他方のN末端とを連結しているが、重鎖又は軽鎖のC末端側には、リンカーペプチド全体、すなわち重鎖または軽鎖のC末端と結合している部分から他方のN末端までの領域も含まれる。なお、リンカーペプチドと重鎖または軽鎖の間、もしくはリンカーペプチド内部に本アミノ酸配列以外の標識用のアフィニティタグ等が別途導入されていてもよい。1本鎖抗体(scFv)の場合、軽鎖の可変部(VL)のC末端側か、重鎖の可変部(VH)のC末端からリンカーペプチドの内部を含む軽鎖の可変部(VL)のN末端までの間の一方または両方にリガンドペプチドを導入する。
【0070】
複数の箇所にリガンドペプチドを導入することにより、本ペプチドの立体構造をより正常な状態に維持することが可能である。たとえば、Fab断片又はF(ab’)2断片の重鎖及び軽鎖のC末端側にそれぞれリガンドペプチドを導入したり、1本鎖抗体(scFv)の重鎖及び軽鎖のC末端側にそれぞれリガンドペプチドを導入したりすれば、その部位がPC/PMMA表面に結合しやすくなるので、抗原結合部位が外側を向き、抗原抗体反応を起こしやすくなる。
【0071】
遺伝子工学的手法を用いて導入工程を実施する場合、所望のタンパク質をコードするポリヌクレオチド(DNA)に、本発明にかかるリガンドペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNA)を公知の方法によって連結し、連結したポリヌクレオチド(DNA)を含む発現ベクターを宿主細胞に導入してタンパク質を発現させればよい。つまり、リガンドペプチドと所望のタンパク質との融合タンパク質を作製することによって導入工程が実施され得る。所望のタンパク質をコードするポリヌクレオチド(DNA)とリガンドペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNA)とを連結するために必要なヌクレオチド(ヌクレオチド鎖)が両者の間に付加されていもよい。なおこの時、所望のタンパク質およびリガンドペプチドに相当するアミノ酸に翻訳されるようなヌクレオチド(ヌクレオチド鎖)を付加する必要がある。
【0072】
本発明の導入工程において使用し得るベクターの具体的な種類は特に限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に本発明にかかるポリヌクレオチドを発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明にかかるポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとして用いればよい。
【0073】
上記ベクターとしては、例えば大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322、pBR325、pUC18、pUC118)、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどを利用することができる。
【0074】
また本発明において利用可能なプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応した適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、宿主が大腸菌(Escherichia coli)である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
【0075】
また本発明において利用可能なベクターには、所望により当該技術分野で公知の、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製起点などを付加することができる。
【0076】
また本発明において利用可能なベクターには、少なくとも1つの選択マーカーが含まれていることが好ましい。このようなマーカーとしては、真核生物細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性、および大腸菌や他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。上記選択マーカーを用いれば、ベクターが宿主細胞に導入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認することができる。あるいは、本発明にかかるタンパク質を融合ポリペプチドとして発現させてもよく、例えば、オワンクラゲ由来の緑色蛍光ポリペプチドGFP(Green Fluorescent Protein)をマーカーとして用い、リガンドペプチド、所望のタンパク質、およびGFPの融合ポリペプチドとして発現させてもよい。
【0077】
本発明において適用される宿主細胞は、特に限定されるものではなく、例えば、大腸菌、昆虫細胞、動物細胞などの従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等の細菌、酵母(出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)、線虫(Caenorhabditis elegans)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0078】
大腸菌の具体例としては、後述する実施例で用いられたもの他、Escherichia coli K12・DH1(参考文献:Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 60:160(1968))、JM103(参考文献:Nucleic Acids Research, 9:309(1981))、JA221(参考文献:Journal of Molecular Biology, 120:517(1978))、およびHB101(参考文献:Journal of Molecular Biology, 41:459(1969))などが用いられる。
【0079】
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7、Vero、チャイニーズハムスター細胞CHO、マウスL細胞、マウスAtT−20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞などが用いられる。上記の宿主細胞のための適切な培養培地および条件は当分野で周知である。
【0080】
上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換方法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。また、例えば、リガンドペプチドと所望のタンパク質との融合タンパク質を昆虫で転移発現させる場合には、バキュロウイルスを用いた発現系を用いればよい。
【0081】
〔接触工程〕
本発明にかかるタンパク質の固定化方法に含まれる接触工程は、リガンドペプチドが導入されたタンパク質と、PCおよびPMMAの少なくとも1つ以上とを接触させる接触工程であれば、その手法については限定されるものでない。例えば、PCまたはPMMAからなる基板上にタンパク質を固定する場合は、リガンドペプチドが導入されたタンパク質を適当な溶媒にて溶解して作製した溶液を、PCまたはPMMAからなる基板の表面に滴下すればよい。溶液を滴下後、適当時間放置した後、未吸着のタンパク質を除去すべく、基板の表面を適当な緩衝液(PBS等)や水で洗浄してもよい。
【0082】
またPCまたはPMMAからなる担体にタンパク質を固定する場合には、リガンドペプチドが導入されたタンパク質の溶液中に当該担体を懸濁すればよい。この場合、マグネティックスターラーなどの撹拌手段によって懸濁液を撹拌することが、リガンドペプチドが導入されたタンパク質と担体との接触効率が高くなるために好ましい。
【0083】
接触工程において使用する、リガンドペプチドが導入されたタンパク質の溶液中の濃度、接触時間、接触温度などは、タンパク質の種類などに応じて適宜好ましい条件を検討の上、採用すればよい。
【0084】
なお接触工程は、後述する実施例の〔4.親和性ペプチドの吸着力測定〕の記載を参照して実施することができる。なお、PCOMP3(PMOMP21)の溶液作製には2%DMSO+PBSを用いることができ、PCOMP6の溶液作製には2%DMSO+PBSを用いることができ、PCOMP7の溶液作製には1%DMSO+PBSを用いることができ、PCMLT8の溶液作製には1%DMSO+PBSを用いることができ、PCMLT10の溶液作製には0.8M urea+PBSを用いることができ、PCELN8の溶液作製には0.08M urea+PBSを用いるができ、PMOMP19の溶液作製には0.8M urea+PBSを用いることができ、PMOMP25の溶液作製には0.8M urea+PBSでを用いることができる。
【0085】
なお、上記ではリガンドペプチドが導入されたタンパク質を含む溶液を用いて接触工程を行う態様について記載したが、リガンドペプチドが導入されたタンパク質とPC/PMMAとの接触は気相で行われてもよい。
【0086】
(3.本発明にかかるPC/PMMAに特異的に結合するタンパク質の製造方法)
本発明にかかるタンパク質の製造方法は、ポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上に特異的に結合するタンパク質の製造方法であって、上述の本発明にかかるリガンドペプチドを当該タンパク質に導入する導入工程を含むことを特徴としている。すなわち本発明にかかるタンパク質の製造方法は、上記(2.本発明にかかるタンパク質の固定化方法)の項で説示した「導入工程」と同一である。よって、本発明にかかるタンパク質の製造方法の説明は、(2.本発明にかかるタンパク質の固定化方法)の「導入工程」の説明を援用することができる。
【0087】
(4.本発明にかかるタンパク質複合体およびプロテインチップ)
本発明にかかるタンパク質複合体は、本発明にかかるPC/PMMAに特異的に結合するタンパク質の製造方法によって製造されたタンパク質が、PC/PMMAからなる基材上に固定化されてなるタンパク質複合体である。換言すれば、本発明にかかるタンパク質複合体は、本発明にかかるタンパク質の固定化方法によってPC/PMMAからなる基板上に所望のタンパク質が固定化されてなるタンパク質と基材との複合体である。よって、本発明にかかるプロテインチップの製造方法は、(2.本発明にかかるタンパク質の固定化方法)の「導入工程」の説明を援用することができる。
【0088】
本発明にかかるタンパク質複合体は、アフィニティークロマトグラフィー用充填材、ELISA法等で用いられるマイクロタイタープレートやプロテインチップ等の分析機器等に応用することができる。なお、板状やフィルム状にタンパク質が固定されたものを特に「プロテインチップ」という。プロテインチップは、抗体や抗原のスクリーニング、医薬品の開発などによく利用されているものである。
【0089】
上述の通り、本発明にかかるリガンドペプチドは、PC/PMMAに対して特異的に結合する活性を有するPC/PMMA親和性ペプチドを含んでなるペプチドであるため、所望のタンパク質に当該リガンドペプチドを導入することによって、当該タンパク質をPC/PMMAにリガンドペプチドを介して特異的に結合させることができる。また本発明にかかるリガンドペプチドは、PC/PMMAとの親和性が高いために、タンパク質の高密度且つ強固な固定化が可能となる。さらにリガンドペプチドのタンパク質への導入位置を制御することによって、配向的に所望のタンパク質を固定化できるとともに、タンパク質の生理活性を維持したまま固定化することができるというメリットを享受できる。特にプロテインチップやマイクロタイタープレートにおいて生理活性維持された状態での固定化は重要である。またプロテインチップの高密度固定化は分析効率の向上に寄与する。
【0090】
本明細書中で使用される場合、用語「基材」は目的物(ポリペプチドまたはタンパク質)を担持することのできる物質が意図され、用語「支持体」と交換可能に使用される。かかる基材(支持体)は、タンパク質が固定化される箇所が少なくともPC/PMMAからなるものであればよく、必ずしも基板全体がPC/PMMAからなるものである必要はない。たとえば、PC/PMMAのみからなる基板であってもよいが、その他の材料(ガラスや金属やPCおよびPMMA以外の有機高分子等)からなる基材上にPC/PMMAが積層または被覆されてなる基材であってもよい。その他の材料にPC/PMMAを積層または被覆する場合、少なくともタンパク質を固定したい箇所がPC/PMMAで積層または被覆されていればよく、基材全体が積層または被覆されていなくてもよい。
【0091】
基材の形状は特に限定されるものではないが、例えば、板状、フィルム状等の基板や、マイクロタイタープレート、ビーズ状(粒状)、繊維状などが挙げられる。
【0092】
タンパク質をより固定し易くすべく、基材の表面を変質させて親水化処理したものを用いることができる。通常、PC/PMMAは疎水性であるが、この表面に各種の親水化処理を行うことで、親水性の表面を有する基材とすることができる。例えば、PC/PMMAの表面にUV+O3処理やプラズマ酸化処理を行うことにより、基材表面を親水化することができる。
【0093】
(5.本発明にかかるスクリーニング方法)
本発明にかかるスクリーニング方法は、標的物質に対して特異的に結合するペプチドのスクリーニング方法であって、タンパク質ライブラリと標的物質とを接触させて、標的物質と特異的に結合するタンパク質を選抜する一次選抜工程、当該一次選抜工程によって選抜されたタンパク質を、断片化してペプチド群を調製するペプチド化工程、当該ペプチド化工程によって調製されたペプチド群と標的物質とを接触させた後に、ペプチド群と標的物質とを隔離する接触隔離工程、当該接触隔離工程前後のペプチド群に含まれるペプチドを比較し、接触隔離工程後にペプチド群における含有量が減少したペプチドを選抜する二次選抜工程、を含むことを特徴とするスクリーニング方法である。
【0094】
ここで「標的物質」は、これに特異的に結合するペプチドを見出すことを希望する物質であれば特に限定されるものではない。但し、上記選抜工程や接触隔離工程において、標的物質とタンパク質ライブラリまたはペプチド群との接触を液相で行うことが接触効率の観点から好ましいために、標的物質は選抜工程や接触隔離工程が行われる液相中で固体であり得る物質であることが好ましい。
【0095】
標的物質は、無機物であっても有機物であってもよい。例えば、一般的なプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリウレタン、PC、PMMA)、シリコーン、合成ポリマー、金属(混合金属合金を含む)、金属酸化物(例えば、ガラス)、非金属酸化物、セラミック、などが挙げられる。
【0096】
標的物質となり得る代表的な合成ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、ポリテトラフルオロエチレン、発泡ポリテトラフルオロエチレン、GORE−TEX(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ペレタン(pellethane)(市販のポリウレタン、PELL)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、シリコーンゴム、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミノ酸、およびこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態において、上記合成ポリマーは、発泡ポリマーまたは多孔性ポリマーを含む。別の実施形態において、合成ポリマーは、ナイロン構造を含む。
【0097】
標的物質となり得る代表的な金属としては、チタン、ステンレス鋼、金、銀、ロジウム、亜鉛、白金、ルビジウム、および銅が挙げられるが、これらに限定されない。また標的物質となり得るセラミック材料としては、酸化シリコーン、酸化アルミニウム、アルミナ、シリカ、ヒドロキシアパタイト、ガラス、石英、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、酸化インジウムすず(ITO)、ポリシラノール、酸化リン、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
ここで「タンパク質ライブラリ」とは複数種類のタンパク質からなる群を意味する。ただし本発明における「タンパク質ライブラリ」には、ファージディスプレイ法におけるランダムペプチドを提示したファージライブラリを除く意味である。かかるタンパク質ライブラリは溶液状で存在しても、固体で存在してもよいが、選抜工程や接触隔離工程における標的物質との接触効率の観点から溶液状で存在することが好ましい。
【0099】
かかるタンパク質ライブラリは、複数種類のタンパク質が含まれていればその由来は特に限定されるものではないが、たとえば、細胞内タンパク質を含む細胞抽出液または細胞破砕液、細胞分泌物、血清、血漿、体液、食品抽出液等が挙げられる。
【0100】
本発明にかかるスクリーニング方法の一実施形態を図1および図2を用いて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の説明では標的物質としてPC/PMMAを用い、タンパク質ライブラリとして大腸菌細胞破砕液(大腸菌の細胞内タンパク質)を用いた。
【0101】
〔一次選抜工程〕
一次選抜工程は、タンパク質ライブラリと標的物質とを接触させて、標的物質と特異的に結合するタンパク質を選抜する工程である。図1に一次選抜工程の概略を示す。まず大腸菌の細胞内タンパク質溶液(大腸菌細胞抽出液)とPC/PMMAとを接触させる。接触は、PC/PMMA片の表面に大腸菌細胞抽出液を滴下(塗布)することによって両者を接触させていもよいし、大腸菌細胞抽出液内にPC/PMMA片(PC/PMMA板の断片、PC/PMMA粒子等)を添加して両者を接触させてもよい。大腸菌細胞抽出液内にPC/PMMAを添加して接触させる場合には、PC/PMMAを含む大腸菌細胞抽出液を撹拌することが好ましい。撹拌条件については、タンパク質濃度やPC/PMMAの添加量等に応じて好ましい条件を適宜検討の上、採用すればよい。
【0102】
大腸菌細胞抽出液とPC/PMMAとを適当時間接触させた後、PC/PMMAの表面を水または緩衝液(PBS、TBS、HBS、等)またはTween 20 やTriton X−100等の界面活性剤を含む緩衝液等の適当な洗浄液で洗浄する。この操作によってPC/PMMAに結合していないタンパク質が除去される。例えばかかる洗浄操作は、PC/PMMA片を含む大腸菌細胞抽出液を遠心分離にかけて固液分離を行い、得られた沈殿物に洗浄液を加えて懸濁し、再度遠心分離を行って沈殿物を回収することのより実施することができる。また上記固液分離をろ過によって行ってもよい。なお、上記洗浄操作は、複数回行われてもよい。
【0103】
上記洗浄操作によって回収されたPC/PMMA上には、PC/PMMAに特異的に結合したタンパク質が存在している。かかるタンパク質を、適当な溶出液を用いてPC/PMMAから溶出させる。本発明において利用可能な溶出液としては、特に限定されるものではないが、例えば尿素、塩酸グアニジン、SDS等のタンパク質変性剤、酸、塩基、塩、チオシアン酸ナトリウム等のカオトロピック塩、若しくはモノマー分子等の溶液、または有機溶媒等が挙げられる。利用され得る後述する実施例においては、Lysis Buffer(8M urea,4%CHAPS,2v/v% Pharmalyte pH 3-10,1%DTT)が用いられた。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、標的物質の種類等に応じて適宜好ましい溶出液が採用され得る。
【0104】
上記の操作によって回収されたタンパク質が、PC/PMMAに特異的に吸着し得るタンパク質(「PC/PMMA親和性タンパク質」)である。
【0105】
〔ペプチド化工程〕
ペプチド化工程は、上記一次選抜工程によって選抜されたPC/PMMA親和性タンパク質を、断片化してペプチド群を調製する工程である。換言すれば、ペプチド化工程はPC/PMMA親和性タンパク質を切断して当該タンパク質を構成するペプチドからなる群を調製する工程である。図2にペプチド化工程の概略を示す。
【0106】
かかるペプチド化工程には、タンパク質を適当な長さのペプチド鎖に分解し得るタンパク質分解酵素(プロテアーゼ、図2中「消化酵素」と表記)が好ましく利用され得る。上記タンパク質分解酵素としては、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、ペプシン、Factor Xa、Thrombin、Lys−C、Arg−C、Asp−N、V8などが好ましく利用され得る。なお、ペプチド化工程は、上記タンパク質酵素を用いる方法の他、CNBr処理、Formic Acid処理、熱処理、オートクレーブ処理、紫外線照射、超臨界水処理、亜臨界水処理、過酸化水素-電気分解処理等によっても行うことができる。
【0107】
タンパク質分解酵素を用いてペプチド化工程を行う場合、酵素使用量は分解されるタンパク質の濃度に応じて適宜好適な条件を採用すればよい。また反応温度、反応pH等の反応条件については、酵素の種類に応じて好適な条件が適宜設定され得る。
【0108】
〔接触隔離工程〕
接触隔離工程は、上記ペプチド化工程によって調製されたペプチド群と標的物質であるPC/PMMAとを接触させた後に、ペプチド群と標的物質とを隔離する工程である。図2に接触隔離工程の概略を示す。
【0109】
接触隔離工程は、例えば以下のようにして実施され得る。まずペプチド群を含む溶液(ペプチド群溶液)とPC/PMMAとを接触させる。接触は、PC/PMMA片の表面にペプチド群溶液を滴下(塗布)することによって両者を接触させていもよいし、ペプチド群溶液内にPC/PMMA片(PC/PMMA板の断片、PC/PMMA粒子等)を添加して両者を接触させてもよい。ペプチド群溶液内にPC/PMMAを添加して接触させる場合には、PC/PMMAを含むペプチド群溶液を撹拌することが好ましい。撹拌条件については、ペプチド群溶液に添加するPC/PMMAの量等に応じて好ましい条件を適宜検討の上、採用すればよい。ペプチド群溶液とPC/PMMAとを適当時間接触させた後、遠心分離やろ過などのよりペプチド群溶液とPC/PMMAとを隔離する。
【0110】
〔二次選抜工程〕
二次選抜工程は、上記接触隔離工程前後のペプチド群に含まれるペプチドを比較し、接触隔離工程後にペプチド群における含有量が減少したペプチドを選抜する工程である。接触隔離工程の概略を図2に示す。
【0111】
接触隔離工程後のペプチド群は、接触隔離工程前のペプチド群からPC/PMMAに特異的に結合したペプチドが除去されたものである。したがって、接触隔離工程前のペプチド群に含まれていたペプチドの組成と、接触隔離工程後のペプチド群に含まれていたペプチドの組成とを比較すれば、PC/PMMAに特異的に結合したペプチドが接触隔離工程後に減少していることになる。そして、この接触隔離工程後に減少したペプチドを同定すれば、最終的にPC/PMMA親和性ペプチドを取得することができる。
【0112】
接触隔離工程前後におけるペプチド群中のペプチド組成の比較には、HPLCをはじめとする各種クロマトグラフィーが好適である。例えばHPLCを利用する場合、接触隔離工程前のサンプルのHPLCチャートと、接触隔離工程後のサンプルのHPLCチャートとを比較して、接触隔離工程後のサンプルにおいて減少したピークを確認し、接触隔離工程前の当該ピークに含まれていたペプチドをPC/PMMA親和性ペプチドとして選抜すればよい。ピークの減少は、ピーク面積を比較することにより容易に確認することができる。ピーク面積は、ペプチド群におけるペプチドの含有量に相当するため、ピーク面積を比較することによってあるペプチドの含有量を把握することができる。
【0113】
なお、特に限定されるものではないが、特異的且つ強固に結合するペプチドを選抜するためには、接触隔離工程前後のペプチド群に含まれるペプチドを比較し、接触隔離工程後にペプチド群における含有量が70%以上(さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上)減少したペプチドを選抜することが好ましい。HPLCを用いた場合においては上述の本発明にかかるリPC/PMMA親和性ペプチドは、接触隔離工程後に70%以上減少したという基準を満たすものである。
【0114】
なお、本発明のスクリーニング方法には、上記工程のほか、上記二次選抜工程で選抜されたペプチドのアミノ酸配列を質量分析等により決定する工程が含まれていてもよい。また上記二次選抜工程で選抜されたペプチドの標的物質に対する吸着力を測定する工程が本発明のスクリーニング方法に含まれていてもよい。標的物質に対する吸着力を測定する工程が含まれることによって、最終的に選抜されたペプチドの標準物質に対する吸着力を再確認することができ、より正確に目的のペプチドをスクリーニングすることができる。
【0115】
以下実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0116】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0117】
〔使用した試薬〕
・Urea(Ultra pure grade)(MP Biomedicals, Inc.製)
・CHAPS(ナカライテスク社製)
・Dithiothreitol(DTT)(ナカライテスク社製)
・Pharmalyte pH 3-10(GE Healthcare UK Ltd.製)
・Pharmalyte pH 4-6.5(GE Healthcare UK Ltd.製)
・Acrylamide IEF [99.9%](Amersham Biosciences社製)
・Acrylamide(ナカライテスク社製)
・N,N’-Methylenebisacrylamide (BIS)(ナカライテスク社製)
・Glycerine(和光純薬株式会社製)
・Tris(hydroxymethyl)aminomethane (tris)(和光純薬株式会社製)
・2-mercaptoethanol(和光純薬株式会社製)
・Butanol(和光純薬株式会社製)
・6M Hydrochloric acid (HCl)(和光純薬株式会社製)
・Agarose(ナカライテスク社製)
・Bromophenol blue (BPB)(Aldrich社製)
・N,N,N’,N’-Tetramethylethylenediamine (TEMED)(ナカライテスク社製)
・Ammonium Peroxodisulfate (APS)(和光純薬株式会社製)
・Phosphoric acid(ナカライテスク社製)
・Sodium dodecyl sulfate (SDS)(Pharmacia Biotech社製)
・Glycine(ナカライテスク社製)
・Methanol(ナカライテスク社製)
・Acetic acid(ナカライテスク社製)
・Coomassie Brilliant Blue G-250(ナカライテスク社製)
・Ammonium bicarbonate ≧99.5%(Fluka社製)
・Acetonitrile [スペクトル分析用] (ACN)(ナカライテスク社製)
・Acetonitrile [Chromasolv,for HPLC,gradient grade,≧99.9%] (SIGMA-Aldrich社製)
・Iodoacetamide(GE Healthcare UK Ltd.製)
・Sequence Grade Modiffied Trypsin (trypsin)(Promega社製)
・Alpha-cyano-4-hydroxy-cinnamic acid (CHCA)(SIGMA-Aldrich社製)
・Trifluoroacetic acid(TFA)(和光純薬株式会社製)
・Trifluoroacetic acid(TFA高速液体グラフ用)(ナカライテスク社製)
・Peptide Calibration Standard II(BRUKER社製)
・Sodium chloride(ナカライテスク社製)
・Potassium chloride(和光純薬株式会社製)
・Di-Sodium hydrogenphosphate 12-water (Na2HPO4 12H2O)(ナカライテスク社製)
・Potassium dihydrogenphosphate(ナカライテスク社製)
・Imidazole(ナカライテスク社製)
・グアニジン塩酸塩(Gdn-HCl)(ナカライテスク社製)
・牛血清アルブミン(BSA)(ナカライテスク社製)
・Sodium acetate(SIGMA-ALDRICH社製)
・BugButer Protein Extraction Reagent(BugBuster)(Novagen社製)
・Benzonase Nuclease(Novagen社製)
・Protease Inhibitor(ナカライテスク社製)
・DNA Purification Kit(Promega社製)
・大塚蒸留水(大塚製薬社製)
・KODplus ver.2 PCR kit(東洋紡株式会社製)
・グリコーゲン(ナカライテスク社製)
・Infusion Advantage PCR cloning kit(クロンテック社製)
・Chymotrypsin(Protea社製)
・Micro BCA kit(Thermo社製)
・DC protein assay kit(BIO-RAD社製)
・Overnight Express(Novagen社製)
・アンピシリン(Amp)(ナカライテスク社製)
・2×YT培地(Novagen社製)
・LB寒天培地(ナカライテスク社製)
〔使用した装置〕
・超純水装置:アリウム611UV(18.2MΩcm) :Sartorius
・泳動装置:等電点ディスク電気泳動装置:日本エイドー株式会社
・恒温式2連スラブ電気泳動装置:日本エイドー株式会社
・電源装置:Electrophoresis Power Supply:GE Healthcare UK Ltd.
・ゲル撮影:イメージスキャナ(GT-X700):EPSON、ゲル撮影装置(FASIII):東洋紡株式会社
・質量分析計:Voyager DE-STR:Applied Biosystems Inc
・pHメーター:ガラス電極式水素イオン濃度計:HORIBA
・遠心分離機:テーブルトップマイクロ冷却遠心機3500:KUBOTA、ユニバーサル冷却遠心機:KUBOTA
・オートクレーブ:BS-325:株式会社 トミー精工
・クリーンベンチ:NS-13B:十慈フィールド株式会社
・クロマトグラフィーシステム:AKTAprime plus:GE Healthcare UK Ltd.、His Trap HP column:GE Healthcare UK Ltd.
・透析膜:透析用セルロースチューブ(孔径:400〜500nm):Viskase Companies,Inc.
・滅菌フィルター:Vacuum Driven Disposable Filtration System:IWAKI
・限外濾過フィルター:MICROCON(登録商標)(10,000 Nominal Molecular Weight Limit):Millipore
・HPLC用前処理フィルター:Non-Sterile 4mm Millex(登録商標) HV syringe Driven Filter Unit (450nm):Millipore
・HPLCシステム:PU-2089 Quaternary Gradient Pump:JASCO、LC-NetII/ADC:JASCO、MD-2018Plus Photodiode Array Detector:JASCO、UV-1575 Intelligent UV/VIS Detector :JASCO、5C18-AR-IIpacked column(Size:4.6×150mm):ナカライテスク
・インキュベーター:BR40LF:TAITEC
・サーマルサイクラー:PCR SPRINT:Thermo
・分光光度計:UV-1600:島津製作所
・凍結乾燥機:FD-1000:EYELA
〔使用した溶液〕
以下の%は特記しない限り、w/v%である。
・Lysis Buffer(8M urea,4%CHAPS,2v/v% Pharmalyte pH 3-10,1%DTT)・・・Urea:4.8g、20%CHAPS:2.0ml、Pharmalyte pH3-10:0.20ml、DTT:0.10gを混合し、イオン交換水で10mlにメスアップした。
・陽極バッファ(0.068v/v%リン酸)・・・リン酸:34μlをイオン交換水で50mlにメスアップした。
・陰極バッファ(2v/v%TEMED)・・・TEMED:800μlをイオン交換水で40mlにメスアップした。
・1次元電気泳動用アクリルアミドストック溶液(28.4%Acrylamide,1.6%BIS)・・・Acrylamide IEF:1.42g、BIS:0.08gを混合し、超純水で5mlにメスアップした。
・等電点ゲル溶液(8Murea,4%CHAPS, 2.5v/v%Pharmalyte pH 3-10,2.5v/v%Pharmalyte pH 4-6.5)(3.5%t,5%c)・・・1次元電気泳動用アクリルアミドストック溶液:0.29ml、Urea:1.2g、20w/v%CHAPS:0.5ml、Pharmalyte pH3-10:62.5μl、Pharmalyte pH4-6.5:62.5μlを混合し、超純水で2.5mlにメスアップした。なお、等電点ゲル溶液は使用前に脱気して使用した。また使用直前に重合剤として、25%APS 1μl、TEMED 2.5μlを加えた。
・0.5Mtris-HCl溶液(pH6.8)・・・Tris:30.3gをHClでpHを6.8に調整後、イオン交換水で500mlにメスアップした。
・1Mtris-HCl溶液(pH8.8)・・・Tris:60.6gをHClでpHを8.8に調整後、イオン交換水で500mlにメスアップした。
・SDS-PAGE用サンプルバッファ(0.0625Mtris,10%SDS)・・・0.5Mtris-HCl溶液(pH6.8):50mlにSDS:20gを加え、イオン交換水で400mlにメスアップした。
・SDS-PAGE用泳動バッファ・・・Tris:6g、Glysin:28.8g、SDS:2gをイオン交換水に溶解し最終2000mlにメスアップした。
・separation gel 溶液(0.375Mtris,0.1%SDS,8% glycerine)(12.3%t,2.7%c)・・・50% acrylamide:11.64ml、 2%BIS:6ml、1Mtris-HCl溶液(pH8.8):13.2ml、10%SDS:0.36ml、60v/v% glycerine:4.8mlを混合し、イオン交換水で36mlにメスアップした。使用直前に重合剤として、25%(w/v)APS 80μl、TEMED 20μlを加えた。
・stacking gel溶液(0.125Mtris,0.1%SDS,10%glycerine)(5.1%t,2.6%c)・・・30% acrylamide:1.66ml、2%BIS:0.66ml、0.5Mtris-HCl溶液(pH6.8):2.49ml、10%SDS:0.1ml、60v/v%glycerine:1.66mlを混合し、イオン交換水で10mlにメスアップした。使用直前に重合剤として、25%(w/v)APS 16μl、TEMED 10μlを加えた。
・等電点ゲル固定用アガロース溶液(0.0625Mtris,10%SDS,1%ager)・・・SDS-PAGE用サンプルバッファ:50ml、Agarose:0.5g、BPB:traceを混合して溶解した。
・固定液(40%methanol,10%acetic acid)・・・Methanol:80ml、Acetic acid:20mlを混合し、イオン交換水で200mlにメスアップした。
・染色液(0.12%CBBG-250,10%リン酸,10%硫酸アンモニウム,20%methanol)・・・CBB G-250:0.24g、リン酸:20ml、硫酸アンモニウム:20g、Methanol:40mlを混合し、 イオン交換水で200mlにメスアップした。詳細には、CBB G-250と硫酸アンモニウムとを予め混合しておき、リン酸を加え全体量の80%までイオン交換水でメスアップし、10minほど撹拌した(この時の溶液は濃青色)。その後、全体量の20%のメタノールを入れ10minほど撹拌し、ろ過せずに使用した(この時の溶液は濃青緑色)。
・脱色液(1%acetic acid)・・・Acetic acid:10mlをイオン交換水で1000mlにメスアップした。
・MSサンプル調製用脱色液(0.1M重炭酸アンモニウム,40v/v%ACN)・・・1M重炭酸アンモニウム溶液:450μl、ACN:1.8mlを混合し、超純水で4.5mlにメスアップした。
・洗浄液(0.025M重炭酸アンモニウム,50%ACN)・・・1M重炭酸アンモニウム溶液:100μl、ACN:2mlを混合し、超純水で4mlにメスアップした。
・消化液(0.05M重炭酸アンモニウム,0.02mg/ml trypsin)・・・ 1M重炭酸アンモニウム溶液:5μl、0.2mg/ml trypsin:10μlを混合し、超純水で100μlにメスアップした。消化液の調製は、氷上で行われた。
・抽出液(50%ACN,1%TFA)・・・ACN:500μl、TFA:10μlを混合し、超純水で1mlにメスアップした。
・CHCA溶液(飽和CHCA,70%ACN,0.1%TFA)・・・CHCA:18.9mg、ACN:700μl、TFA:1μlを混合し、超純水で1mlにメスアップした。
・10×PBS・・・Sodium chloraide:80g、 Potassium chloraide:2g、 Potassium dihydrogenphosphate:2g、 Na2HPO4 12H2O:29gを混合し、イオン交換水で1000mlにメスアップした。イオン交換水で10倍希釈して使用した。
・PBST(1v/v%Tween20)・・・10×PBS:100ml、Tween20:10mlを混合し、イオン交換水で1000mlにメスアップした。
・2×SDS処理バッファ(0.125Mtris,4%SDS,20v/v%glycerine,2v/v%2-mervaptoethanol)・・・0.5Mtris-HCl溶液(pH6.8):0.5ml、10%SDS:0.8ml、 60v/v%glycerine:0.67ml、 2-mercaptoethanol:0.04ml、BPB:traceを混合して調製した。
・LB寒天培地・・・LB寒天培地:40gを1000mlのイオン交換水で溶解した後、オートクレーブ滅菌して使用した。
・2×YT培地・・・2×YT培地:31gを1000mlのイオン交換水で溶解した後、オートクレーブ滅菌して使用した。
1000mlのイオン交換水で溶解した後、オートクレーブ滅菌し使用した。
・OE培地・・・Overnight Express:60g、 Glycerine:10mlを1000mlのイオン交換水で溶解した後、滅菌フィルターで滅菌した。
・solubilization buffer(6M Gdn-HCl、10mM 2- mercaptoethanol、2×PBS、pH7.5)・・・Gdn-HCl:570g、2-melcaptoethanol:0.7ml、10×PBS:200mlを混合し、イオン交換水で1000mlにメスアップした。NaOHでpHをpH7.5に調整した。
・His Trap用平衡化バッファ(A液) (8M Urea、20mM Imidazole、2×PBS、pH7.5)・・・Urea:480g、Imidazole:1.36g、10×PBS:200mlを混合し、イオン交換水で1000mlにメスアップした。HClでpHをpH7.5に調整した。
・His Trap用溶出バッファ(B液) (8M Urea、400mM Imidazole、2×PBS、pH7.5)・・・Urea:480g、Imidazole:27.2g、10×PBS:200mlを混合し、 イオン交換水で1000mlにメスアップした。HClでpHをpH7.5に調整した。
・HPLC用カラム平衡化バッファ(A液)(0.1%TFA)・・・超純水:1000mlとTrifluoroacetic acid(TFA高速液体グラフ用):1mlとを混合した。
・HPLC用溶出バッファ(B液)(0.1%TFA、99.9% Acetonitrile)・・・Acetonitrile [Chromasolv,for HPLC,gradient grade,≧99.9%]:1000mlとTrifluoroacetic acid(TFA高速液体グラフ用):1mlとを混合した。
【0118】
〔1.ポリカーボネートまたはポリメタクリル酸メチルに対する親和性タンパク質のスクリーニング〕
(I)サンプル調製
(1)クリーンベンチ内でオートクレーブしたLB培地20mlにグリセロールストックから大腸菌BL21(DE3)を植菌し、37℃で一晩、前培養した。
(2)オートクレーブした2×YT培地100mlに前培養液を、OD600=0.1になるように加え、37℃、200rpmで7時間培養した。
(3)培養後、50mlの遠心管に培養液を移して4500rpmで15分間遠心分離し、上清を取り除いた。
(4)ペレット状の菌体にBugBuster10ml、Benzonase Nuclease 3μl、Protease Inhibitor 100μl加え、菌体を溶菌した。
(5)10000gで20分間遠心分離後、上清を回収し、吸着用サンプルとした。
(6)ポリカーボネート片(PC片)またはポリメタクリル酸メチル片(PMMA片)を10g(概算表面積約200cm2)測りとり、上記の吸着用サンプル5mlを加え、室温、160rpmで5時間振盪した。
(7)PC片またはPMMA片に40mlのPBSを加え80rpmで5分間振盪した。その後、上清を取り除いた。この操作を3回行った。
(8)PC片またはPMMA片に40mlの超純水を加え、(7)と同条件で洗浄した。この操作を3回行った。
(9)Lysis buffer 4mlを加え160rpmで30分間振盪し、上清を回収した。
(10)MICROCON(登録商標)に回収した液500mlを加え、14000gで30分間遠心分離した。
(11)メンブレン上にLysis bufferを100μl加え、ピペッティング後、1.5mlチューブにMICROCON(登録商標)を逆向きで入れ、1000gで3分間遠心分離し、液を回収した。これを溶出サンプルとした。また、吸着用サンプル、溶出サンプル共に-20℃で保存した。
【0119】
(II)等電点電気泳動
(1)ガラス管の内側をエタノールで洗浄した。その後、ガラス管の底から11.5cmのところに印をつけ、底にパラフィルムを巻いた。
(2)等電点ゲル溶液にAPSを2.5μl、TEMEDを1μl加え、ガラス管に印をつけたところまで流し込み、イオン交換水を20μl重層し、ゲル化するまで室温でインキュベーションした。
(3)重層していたイオン交換水を除去後、各サンプル溶液を25μl加え、2倍希釈したLysis Bufferを20μl重層した。
(4)陽極、陰極に各バッファを満たし、等電点電気泳動を開始した。泳動時の電圧は、200Vで1時間、400Vで16時間、800Vで1時間と段階的に変化させた。
(5)ガラス管を装置から外し、注射器でガラス管とゲルの間にイオン交換水を流し込み、等電点ゲルを取り出した。
(6)15ml遠心管に等電点ゲルを移し10ml程度のイオン交換水で3回洗浄した。
【0120】
(III)SDS-PAGE
(1)ガラス板をエタノールで洗浄し、乾燥後組み立てた。その後ガラス板の上端から2.5cmのところに印をつけた。
(2)separation gel溶液にAPS 80μl、TEMED 20μlを加えた溶液を、組み立てたガラス板の印の位置まで流し込んだ。その後ブタノールを400ml重層し、separation gel溶液が重合するまで室温でインキュベーションした。
(3)重合完了後、ブタノールをイオン交換水で洗浄し、水分をよく除去した後、stacking gel溶液にAPS 16μl、TEMED 10μlを加え、ガラス板の上端まで流し込んだ。その後ブタノールを400μl重層し、stacking gel溶液が重合するまで室温でインキュベーションした。
(4)上記(II)で洗浄した等電点ゲルに、SDS-PAGE用サンプルバッファ4.75mlと2-mercaptoethanol 250μlとを加え、15分間振盪した。
(5)SDS-PAGE用サンプルバッファおよび2-mercaptoethanolを取り除き、イオン交換水で等電点ゲルを洗浄後、SDS-PAGE用サンプルバッファ5mlとIAA 0.125gとを加え、15分間振盪した。
(6)SDS-PAGE用サンプルバッファを取り除いた後、電子レンジによって溶かした等電点ゲル固定用アガロース溶液を用いて等電点ゲルを、(3)で作製したゲル上に固定した。分子量マーカーを加える時は、ろ紙にマーカー10mlをしみこませ、等電点ゲル固定用アガロース溶液により固定した。
(7)20mAの定電流で約1時間30分、40mAの定電流で約3時間電気泳動を行った。BPBのラインがガラス板の下端に達した時に泳動を終了させた。
(8)ゲルをガラス板から外し、固定液200ml中で2時間又はover nightで振盪した。
(9)固定液を除去後、染色液を200ml加え12時間以上振盪した。
(10)染色液を除去後、脱色液を200ml加え12時間以上振盪した。なお、脱色中はペーパータオルを色素吸着の目的で約1時間ごとに交換した。
(11)脱色後、スキャナで撮影し4℃で保存した。
【0121】
(IV)MALDI-TOF MSによるタンパク質の同定
(1)得られたゲルから同定したいスポットを切り出し、MSサンプル調製用脱色液を150μ加え、45分間振盪した。
(2)脱色液を捨て、超純水500μlを加えて1分間振盪後液を捨て、再度脱色液を150μl加えて45分間振盪した。
(3)超純水500μlを加え、1分振盪した。超純水を捨て、この操作を2回繰り返した。
(4)洗浄液を200μlずつ加え5分間振盪した。
(5)洗浄液を捨て、ACNを100μlずつ加えて5分間振盪した。更にACNを除去し、ゲルを乾燥させた。
(6)消化液を5mlずつ氷上で加え、20分程度氷上でインキュベーションし膨潤した。
(7)37℃下で一晩(16時間程度)インキュベーションした。
(8)消化していたゲル片を取り出し、抽出液を50μl加え30分間振盪した。
(9)抽出液を新しい1.5mlチューブに取り、再度ゲルに抽出液25μlを加え15分間振盪した。
(10)抽出液25mlを上記チューブに加え-80℃にて凍結した。その後、凍結乾燥により乾固させた。
(11)乾固物に抽出液を2μl加え、振盪後、遠心分離機により溶液をスピンダウンさせた。
(12)MS測定用プレートに0.5μlアプライ後、乾燥する前にCHCA溶液を0.5μl滴下した。
(13)質量分析計(Voyager DE-STR)を用いて測定し、ACTH_reflector.bicのパラメーターファイルを使用した。
(14)質量分析結果を、MASCOT Peptide Mass Fingerprintにより同定した。データベース検索条件は、database:NCBInr、Taxonomy:All entries、Enzyme:Trypsin、Fixed modifications:Carbamidomethyl、Peptide tol.:±0.1、Mass Values:MH+、Monoisotopic、で行った。なお、本実施例では同定可能なスコアを81以上と定義した。
【0122】
(結果)
大腸菌内の細胞内タンパク質が含まれている吸着用サンプルの二次元電気泳動結果を図3(a)に示し、PCから溶出したタンパク質を含む溶出サンプルの二次元電気泳動結果を図3(b)に示した。
【0123】
表1に溶出サンプルより同定したタンパク質の一覧を示す。なお、偶然にもPMMAから溶出したタンパク質を含む溶出サンプルからも同一のタンパク質が同定された。
【0124】
【表1】

【0125】
表1の「No.」は図3(b)のスポットの番号に対応している。図3(b)のNo.1のスポットはMalto porin (「MLT」と略す)、No.2のスポットはOmpf porin (「OMP」と略す)、No.3のスポットはElongation factor(「ELN」と略す)、No.4のスポットはBifunctional aconitate hydratase (「BIF」と略す)が、PCおよびPMMAに特異的に吸着し得るタンパク質(「PC/PMMA親和性タンパク質」という)として同定された。
【0126】
〔2.PC/PMMA親和性タンパク質のクローニング〕
(I)大腸菌ゲノムの精製
DNA Purification Kit(Promega社製)を用いて抽出を行った。
【0127】
(試薬)
Nuclei Lysis Solution
RNase Solution
Protein Precipitation Solution
DNA Rehydration Solution
(手順)
(1)一晩培養した大腸菌BL21(DE3)の培養液1mlを、1.5mlチューブに取った。
(2)13000〜16000gで2分間遠心分離し、上清を捨てた。
(3)600μlのNuclei Lysis Solutionを加え、撹拌した。
(4)80℃で5分間インキュベートし、室温まで冷やした。
(5)3μlのRNase Solutionを加え、5回程度、転倒撹拌した。
(6)37℃で15〜60分インキュベートし、室温まで冷やした。
(7)200μlのProtein Precipitation Solutionを加え、20秒間撹拌し、氷上で5分間インキュベートした。
(8)13000〜16000Gで3分間遠心分離した。
(9)DNAを含む上清を、室温で600μlイソプロパノール中に移し、DNAが析出するまでゆっくり転倒撹拌した。
(10)13000〜16000gで2分間遠心分離し、上清を除去した。
(11)70%エタノール600μlを加え、ペレットを洗浄した。
(12)13000〜16000gで2分間遠心分離し、上清を除去後、ペレットを乾燥させた。
(13)100μlのDNA Rehydration Solutionを加え、65℃で1時間又は、4℃で一晩インキュベートした。抽出したDNAは2〜8℃で保存した。
【0128】
(II)ゲノムPCRによるPC/PMMA親和性タンパク質遺伝子の単離
(使用したプライマー)
各PC/PMMA親和性タンパク質を増幅するためのプライマーセットは以下の通り。1つのタンパク質につき2種類のプライマーを使用した。
(OMP増幅用プライマー)
OMP inF S1:ATA TAC ATA TGA TGA AGC GCA ATA TTC TGG(配列番号23)
OMP inF S2:TAA GAA GGA GAT ATA CAT ATG AAG CGC(配列番号24)
OMP inF AS1:GTG CGG CCG CGA ACT GGT AAA CGA TAC CCA(配列番号25)
OMP inF AS2:TGG TGG TGC TCG AGT GCG GCC GCG AAC TGG(配列番号26)
(MLT増幅用プライマーー)
MLT inF S1: ATA TAC ATA TGA TGA TTA CTC TGC GCA AAC(配列番号27)
MLT inF S2: TAA GAA GGA GAT ATA CAT ATG ATG ATT ACT(配列番号28)
MLT inF AS1: GTG CGG CCG CCC ACC AGA TTT CCA TCT(配列番号29)
MLT inF AS2: TGG TGG TGC TCG AGT GCG GCC GCC CAC CAG(配列番号30)
(ELN増幅用プライマー)
ELN inF S1: ATA TAC ATA TGT CTA AAG AAA AGT TTG A(配列番号31)
ELN inF S2: TAA GAA GGA GAT ATA CAT ATG TCT AAA GAA(配列番号32)
ELN inF AS1: GTG CGG CCG CGC TCA GAA CTT TTG CTA(配列番号33)
ELN inF AS2: TGG TGG TGC TCG AGT GCG GCC GCG CTC AGA(配列番号34)
(BIF増幅用プライマー)
BIF inF S1: ATA TAC ATA TGG TGC TAG AAG AAT ACC GTA(配列番号35)
BIF inF S2: TAA GAA GGA GAT ATA CAT ATG GTG CTA GAA(配列番号36)
BIF inF AS1: GTG CGG CCG CAA CCG CAG TCT GGA AAA TCA(配列番号37)
BIF inF AS2: TGG TGG TGC TCG AGT GCG GCC GCA ACC GCA(配列番号38)
(手順)
(1)上記各プライマーを100nmol/mlになるよう希釈した。
(2)蒸留水180μlと(1)で調製した希釈液20μlとを混合し、10nmol/mlのプライマー溶液とした。
(3)PCRチューブに蒸留水33μl、KODbuffer 5μl、dNTP 5 μl、MgSO42μl、KOD+ 1μl、(I)で抽出した大腸菌ゲノムDNA 1 μl、(2)で作製したプライマー溶液2種類を各1.5 μlずつ混合した。
(4)遠心後、サーマルサイクラーで増幅した。サーマルサイクラーは以下のプログラムで行った。
Pre Denature:94℃で2min、Denature:94℃で15sec、Annealing:(Tm-5)℃で30sec、Extension:68℃で1minまたは3minとし、DenatureからExtensionまでを30サイクル行った。
(III)PC/PMMA親和性タンパク質の遺伝子発現ベクターの構築
In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech社製)を用いた。
【0129】
(試薬)
In-Fusion Enzyme
5× In-Fusion Reaction Buffer
Cloning Enhancer
(手順)
(1)制限酵素(NdeI、NotI)によってpET22(b)Vectorを消化した。
(2)(II)で作製したPCR反応液5 μlと、Cloning Enancer 2 μlとを混合し、37℃で15分間インキュベート後、80℃で15分間インキュベートした。
(3)制限酵素で切断したpET22(b)Vector 3.5 μl、5× In-Fusion Reaction Buffer 2 μl、In-Fusion Enzyme 1 μlを混合し、37℃で15分間、50℃で15分間インキュベートした。
(4)蒸留水40 μl、酢酸ナトリウム5 μl、グリコーゲン1μl、エタノール135μlを加え、ボルテックスミキサーで撹拌した。
(5)20000gで2分間遠心分離し、上清を除去した。
(6)氷冷70%エタノール500μlを加え、撹拌後20000gで2分間遠心分離し、上清を除去した。
(7)乾燥したペレットに蒸留水3μlを加えて溶解させた。
(8)コンピテントセルに(7)で調製した溶液を加え、42℃で45秒インキュベートし、LB Agerプレートに蒔き37℃で一晩インキュベートした。
【0130】
(IV)PC/PMMA親和性タンパク質の発現
(1)クリーンベンチ内でオートクレーブされ2×YT培地20mlに、Amp 50μg/mlとなるように加え、形質転換後の大腸菌BL21(DE3)を植菌し、37℃で一晩、前培養した。
(2)Ampを(1)と同様に加えたOE培地100mlに前培養液をOD600=0.1になるように加え、37℃、200rpmで24時間培養した。
(3)培養後、50mlの遠沈管に培養液を移して4500rpmで15分間遠心分離し、上清を取り除いた。
(4)ペレットにSolubilization buffer(6M Gdn-HCl、10mM 2- mercaptoethanol、2×PBS、pH7.5)を加え、溶解させた。
【0131】
(V)アフィニティクロマトグラフィーによる精製
(1)A液(8M Urea、20mM Imidazole、2×PBS、pH7.5)、B液(8M Urea、400mM Imidazole、2×PBS、pH7.5)を調製した。
(2)A*KTAシステムを起動し、Line A、BにA液、B液をセットした(ただし左記A*はAウムラウトをさす)。
(3)LineA、BをA液、B液で置換し、His TrapTMHPカラムを取り付けた。
(4)A液を流速1ml/minでカラムに供給し、カラム内を平衡化した。
(5)各タンパク質溶液を流速1ml/minで供給し、カラムに吸着させた。
(6)A液を流速1ml/minでカラムに供給し、洗浄した。
(7)B液を流速1ml/minでカラムに供給し、目的タンパク質をフラクションコレクターで回収した。
(8)回収した目的タンパク質溶液を8M Urea+PBSで透析した。
【0132】
(VI)SDS-PAGEによる精製の確認
(1)ガラス板をエタノールで洗浄し、乾燥後組み立てた。その後ガラス板の上端から2.5cmのところに印をつけた。
(2)separation gel溶液にAPS 80μl、TEMED 20μlを加え、組み立てたガラス板の印の位置まで流し込んだ。その後ブタノールを400μl重層し、separation gel溶液が重合するまで室温でインキュベーションした。
(3)重合後、ブタノールをイオン交換水で洗浄し水気をよく気ってstacking gel溶液にAPS 16μl、TEMED 10μlを加え、ガラス板の上端まで流し込んだ。その後コームをさし、ブタノールを400μl重層後、stacking gel溶液が重合するまで室温でインキュベーションした。
(4)サンプル溶液20μlと2×SDS処理バッファ20mlを混合し、90℃で5分間インキュベートした。
(5)サンプルを30μlずつ添加し、泳動を開始した。
(6)20mAの定電流で約1時間30分、40mAの定電流で約3時間電気泳動を行った。BPBのラインが下端に達した時に泳動を終了させた。
(7)ゲルをガラス板から外し、固定液200ml中で2時間又は一晩振盪を行った。
(8)固定液を除去後、染色液を200ml加え12時間以上振盪した。
(9)染色液を除去後、脱色液を200ml加え12時間以上振盪した。なお、脱色中はペーパータオルを色素吸着の目的で約1時間ごとに交換した。
(10)脱色後、スキャナで撮影し4℃で保存した。
【0133】
(VII)タンパク質定量
タンパク質定量には、Lowryらの方法を基本とする検出キット(DC Protein Assay(BIO-RAD社製))を用いた。
【0134】
(試薬)
Reagent A
Reagent B
Reagent C
Reagent A’・・・Reagent A:Reagent S=50:1の混合溶液
(手順)
(1)濃度が0、125、250、500、1000 μg/mlになるように標準溶液(BSA)を8M Urea + PBSで希釈し、それぞれ100 μl調製した。
(2)透析後の精製した各タンパク質を100 μlになるように8M Urea + PBSで5倍、25倍希釈した。
(3)上記(1)および(2)の溶液にReagent A’を500 μl加え、撹拌した。その後、Reagent Bを4ml加え、15分間室温でインキュベートした。
(4)波長750 nmの吸光度を測定した。
(5)標準溶液の測定結果から検量線を作成し、精製した各タンパク質の濃度を算出した。
【0135】
(結果)
PC/PMMA親和性タンパク質の遺伝子を、大腸菌ゲノムからPCRによってクローニングし、大腸菌BL21(DE3)で過剰発現させたところ、封入体(インクルージョンボディ)として回収された。これらをSolubilization bufferで可溶化し、His Trap HPカラムを用いて変性状態で精製した。精製後、SDS-PAGEによりタンパク質が発現、精製されていることを確認した。その結果を図4に示す。
【0136】
〔3.PC/PMMA親和性ペプチドのスクリーニング〕
(I)マイクロBCAアッセイ
マイクロBCAアッセイには、Micro BCATM Protein Assay Kit(Therom社製)を用いた。
【0137】
(試薬)
Reagent MA
Reagent MB
Reagent MC
Albumin Standard
(手順)
(1)精製した各タンパク質を、PBSで25mg/mlとなるよう希釈した。
(2)PC片またはPMMA片 4g(概算表面積約80cm2)を測りとり、希釈した各タンパク質溶液を2ml加え、25℃、200rpmで2時間振盪した。
(3)PBS 25mlでPC片またはPMMA片を5回洗浄した。
(4)標準溶液(Albumin Standard)を、40、20、10、5、2.5、1.25、0.625μg/mlに調整した。
(5)上記(3)で洗浄したPC片またはPMMA片にPBSを1ml加えた。
(6)体積比がReagent MA:Reagent MB:Reagent MC=25:24:1となるように混合し、上記(4)および(5)で作製した各サンプルに1mlずつ加えた。攪拌後、37℃で2時間インキュベーションした。
(7)波長562nmの吸光度を測定した。
(8)標準溶液の測定結果から検量線を作成し、吸着量を算出した。
【0138】
(結果)
精製した4種類のタンパク質、およびコントロールとして牛血清アルブミン (BSA)をPBS中に25μg/mlとなるよう希釈し、PC片またはPMMA片に対する吸着量を測定した。図5にその結果を示す。図5に示すようにスクリーニングされた4種類のタンパク質は、コントロールのBSAより高い吸着量を示し、PC片またはPMMA片に対して親和力を有していることが示された。特に、OMPおよびMLTが高い吸着量を示した。
【0139】
なお、非イオン性界面活性剤を1%含むPBSTを用いた同様の実験では吸着量が著しく低下した。これらの結果から、これらのPC/PMMA親和性タンパク質は主に疎水性相互作用で吸着していることが示唆された。
【0140】
(II)タンパク質消化物の吸着実験
(手順)
(1)精製した各タンパク質をPBSで500μg/mlになるように希釈した。
(2)希釈した液1mlにトリプシン又はキモトリプシン20μgを加え、37℃で12時間以上インキュベートし消化した。
(3)消化液600μlをPC片またはPMMA片16g(概算表面積約330cm2)に加え、25℃、200rpmで2時間振盪した。
(4)A液(0.1%TFA)、B液(0.1%TFA、99.9%ACN)を調製した。
(5)HPLCシステムを起動後、LineA、BにA液、B液をセットし、LineA、BをA液、B液で置換した。
(6)A液を流速1ml/minでカラムに供給し、カラム内を平衡化した。
(7)上記(2)で希釈した液と、消化後吸着させた液とを前処理フィルターでろ過後、100mlカラムに供給した。
(8)B液の濃度を直線的に増加させ、カラムからペプチドを溶出した。
(9)吸着前後を比較して、著しい減少が見られたピークに相当する溶出液を回収した。
【0141】
(結果)
PC片またはPMMA片へ吸着前後のペプチド成分をHPLCにより比較した結果を図6〜10に示す。
【0142】
図6はコントロールであるBSAのトリプシン消化物のHPLCチャート図を示す。図6中の「吸着前」のチャートはBSAのトリプシン消化物をPC片へ吸着させる前のチャートであり、「吸着後」のチャートはBSAのトリプシン消化物をPC片へ吸着させた後のチャートであり、「Acetonitril%」は溶出液中のアセトニトリルの濃度を示す。
【0143】
BSAのトリプシン消化物について、PC片の吸着後にピークが顕著に減少しているものは特に見られなかった。データは省略するが、BSAのキモトリプシン消化物の結果も同様であった。また、データは省略するが、PMMA片の吸着後にピークが顕著に減少しているものも特に見られなかった。すなわち、BSAのトリプシン消化物およびキモトリプシン消化物には、PCまたはPMMAに特異的且つ強固に吸着し得るペプチドは存在しないといえる。なお、吸着後のサンプルにおいてピーク面積が70%以上減少した場合に、「ピークが顕著に減少した」と判断した(以下同じ)。
【0144】
図7(a)は、BIFのトリプシン消化物のHPLCチャート図を示し、図7(b)はBIFのキモトリプシン消化物のHPLCチャート図を示す。図7中の「吸着前」のチャートはBIFの酵素消化物をPC片へ吸着させる前のチャートであり、「吸着後」のチャートはBIFの酵素消化物をPC片へ吸着させた後のチャートであり、「Acetonitril%」は溶出液中のアセトニトリルの濃度を示す。
【0145】
BIFのトリプシン消化物およびキモトリプシン消化物について、PC片の吸着後にピークが顕著に減少しているものは特に見られなかった。また、データは省略するが、PMMA片の吸着後にピークが顕著に減少しているものも特に見られなかった。すなわち、BIFのトリプシン消化物およびキモトリプシン消化物には、PCまたはPMMAに特異的且つ強固に吸着し得るペプチドは存在しないといえる。
【0146】
図8(a)は、MLTのトリプシン消化物のHPLCチャート図を示し、図8(b)はMLTのキモトリプシン消化物のHPLCチャート図を示す。図8中の「吸着前」のチャートはMLTの酵素消化物をPC片へ吸着させる前のチャートであり、「吸着後」のチャートはMLTの酵素消化物をPC片へ吸着させた後のチャートであり、「Acetonitril%」は溶出液中のアセトニトリルの濃度を示す。
【0147】
MLTのトリプシン消化物について、PC片の吸着後に顕著に減少しているピークが3つ確認された(図8(a)中のピーク1〜3)。かかる3つのピークに含まれているペプチドは、PCに特異的且つ強固に吸着し得るペプチドであるといえる。MLTのキモトリプシン消化物について、PC片の吸着後に顕著に減少しているピークが数個確認された。しかしMALDI-TOF MSによる質量分析を行い、データベースを用いてアミノ酸配列を検索した結果、ペプチドの配列が特定できなかった。また、データは省略するが、PMMA片の吸着後にピークが顕著に減少しているものも特に見られなかった。
【0148】
図9(a)は、OMPのトリプシン消化物のHPLCチャート図を示し、図9(b)はOMPのキモトリプシン消化物のHPLCチャート図を示す。図9中の「吸着前」のチャートはOMPの酵素消化物をPC片へ吸着させる前のチャートであり、「吸着後」のチャートはOMPの酵素消化物をPC片へ吸着させた後のチャートであり、「Acetonitril%」は溶出液中のアセトニトリルの濃度を示す。
【0149】
OMPのトリプシン消化物について、PC片の吸着後に顕著に減少しているピークが3つ確認された(図9(a)中のピーク4〜6)。かかる3つのピークに含まれているペプチドは、PCに特異的且つ強固に吸着し得るペプチドであるといえる。また、データは省略するが、OMPのトリプシン消化物について、PMMA片の吸着後に顕著に減少しているピークが3つ確認された。
【0150】
図10(a)は、ELNのトリプシン消化物のHPLCチャート図を示し、図10(b)はELNのキモトリプシン消化物のHPLCチャート図を示す。図10中の「吸着前」のチャートはELNの酵素消化物をPC片へ吸着させる前のチャートであり、「吸着後」のチャートはELNの酵素消化物をPC片へ吸着させた後のチャートであり、「Acetonitril%」は溶出液中のアセトニトリルの濃度を示す。
【0151】
ELNのトリプシン消化物について、PC片の吸着後に顕著に減少しているピークが1つ確認された(図10(a)中のピーク7)。かかる1つのピークに含まれているペプチドは、PCに特異的且つ強固に吸着し得るペプチドであるといえる。また、データは省略するが、PMMA片の吸着後にピークが顕著に減少しているものも特に見られなかった。
【0152】
なお、芳香族アミノ酸のC末端側を特異的に切断するキモトリプシンで消化を行った場合に、MLT以外のタンパク質でピークの減少がほとんど見られなくなった。この結果から、PCへの吸着に芳香族アミノ酸類が関与していることが示唆された。
【0153】
(III)MALDI-TOF MSによるアミノ酸配列の決定
(1)上記(II)で回収したピーク(ピーク1〜7)に相当する溶出液を凍結乾燥により乾固させた。
(2)乾固物に抽出液を2μl加え、振盪後スピンダウンさせた。
(3)MS測定用プレートに0.5μlアプライ後、乾燥する前にCHCA溶液を0.5μl滴下した。
(4)質量分析計(Voyager DE-STR)を用いて分析を行った。質量分析にはACTH_reflector.bicのパラメーターファイルを使用した。
(5)質量分析計によって得た分子量の結果と、データベース (ExPASy Proteomics server:http://www.expasy.ch/)とを比較し、アミノ酸配列を決定した。
【0154】
(結果)
決定されたピーク1〜7のアミノ酸配列を表2〜5に示す。表2〜5における「ピークNo.」は前記(II)で見出されたピークの番号に相当し、「MW」はペプチドの分子量、「position」は酵素消化前のタンパク質のアミノ酸配列におけるペプチドの位置を示し、「(2次構造)」は酵素消化前のタンパク質におけるペプチドの2次構造を示す。2次構造を示す記号「a」はα-へリックス構造、「b」はβ-シート構造、「c」はコイル、「t」はターンを示す。
【0155】
【表2】

【0156】
【表3】

【0157】
【表4】

【0158】
【表5】

【0159】
表2はMLTのトリプシン消化物について、PC片の吸着後に顕著に減少したピーク1〜3のアミノ酸配列等を示す。なお、ピーク1および2は同一のペプチドであった。
【0160】
表3はOMPのトリプシン消化物について、PC片の吸着後に顕著に減少したピーク4〜6のアミノ酸配列等を示す。
【0161】
表4はELNのトリプシン消化物について、PC片の吸着後に顕著に減少したピーク7のアミノ酸配列等を示す。
【0162】
表5はOMPのトリプシン消化物について、PMMA片の吸着後に顕著に減少した3つのピークのアミノ酸配列等を示す。なお、PMOMP21と表3のPMOMP3とは同一のペプチドであった。つまりこのPMOMP21(PMOMP3)はPCおよびPMMAに特異的且つ強固に吸着し得るペプチドであるということが分かった。
【0163】
〔4.親和性ペプチドの吸着力測定〕
(手順)
(1)100、75、50、25、12.5、6.25μg/mlの各ペプチド溶液を調製した。なお、PCOMP3(PMOMP21)は2%DMSO+PBSで溶解し、PCOMP6は2%DMSO+PBSで溶解し、PCOMP7は1%DMSO+PBSで溶解し、PCMLT8は1%DMSO+PBSで溶解し、PCMLT10は0.8M urea+PBSで溶解し、PCELN8は0.08M urea+PBSで溶解し、PMOMP19は0.8M urea+PBS 0.8M ureaで溶解し、PMOMP25は0.8M urea+PBSで溶解し、Standard1およびStandard2はPBSで溶解した。比較用のペプチドとしてβ-シート構造を多く含むStandard1(GERGFFYTPKA:配列番号39)、α−へリックス構造を多く含むStandard2(NPKYEQFLE:配列番号40)を用いた。
(2)調製された溶液400μlをPC片またはPMMA片 3g(概算表面積約60cm2)へ加え、25℃、200rpmで2時間振盪した。
(3)A液(0.1%TFA)、B液(0.1%TFA、99.9%ACN)を調製した。
(4)HPLCシステムを起動後、LineA、BにそれぞれA液、B液をセットし、LineA、BをそれぞれA液、B液で置換した。
(5)A液を流速1ml/minでカラムに供給し、カラム内を平衡化した。
(6)PC片またはPMMA片の吸着前後の液を、100μlずつカラムに供した。
(7)B液の濃度を直線的に増加させ、カラムからペプチドを溶出した。
(8)吸着前のサンプルで検量線を引き、吸着後のピーク高から吸着等温線を作成した。
【0164】
(結果)
図11に各ペプチドのPCに対する吸着力を測定した結果を示した。図11中、黒ひし形のシンボルはStandard1、白抜きひし形のシンボルはStandard2、黒丸のシンボルはPCOMP3、白抜き丸のシンボルはPCOMP7、黒三角のシンボルはPCMLT8、白抜き三角のシンボルはPCELN8の結果を示す。PCMLT10およびPCOMP6の結果については省略する。
【0165】
また図12に各ペプチドのPMMAに対する吸着力を測定した結果を示した。図12中、黒ひし形のシンボルはStandard1、白抜きひし形のシンボルはStandard2、黒丸のシンボルはPMOMP21、白抜き丸のシンボルはPMOMP19、黒三角のシンボルはPMOMP25の結果を示す。
【0166】
図10および11において、横軸は未吸着のペプチド濃度(μM)を示し、縦軸は吸着密度(μmol/m2)を示す。図10および11においては、横軸(未吸着のペプチド濃度)に対する曲線の傾きが急であればあるほど、吸着力が高いことを意味している。
【0167】
図10および11によれば、親和性ペプチドとして同定されたいずれのペプチドも比較のペプチドに比して極めて高いPCまたはPMMAに対する吸着力を示した。特にPCOMP3(PMOMP21)については、PCおよびPMMAの両者に吸着することができるとともに、今回検討したペプチド濃度において全て未吸着のペプチドが検出されなかったことから、吸着力が極めて高いということが分かった。
【0168】
発明者らの試算によれば、特許文献2および非特許文献1に示されているPCまたはPMMAに特異的に結合するペプチドの吸着密度は最大で1.0μmol/m2程度であるため、今回見出した各ペプチドはPCおよび/またはPMMAに対して極めて高い吸着力を有するものであるといえる。
【0169】
なお、今回親和性ペプチドとして見出されたペプチドの2次元構造を表2〜5にまとめたが、吸着力の強いペプチドにはβ-シート構造が多く含まれていた。よって、親和性ペプチドのPCまたはPMMAへの吸着にはβ-シート構造が関与していることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明にかかるペプチドは、ポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの両方またはいずれか一方に特異的且つ強固に結合することができるものである。よって、当該ペプチドをタンパク質等のバイオ分子に導入することで、ポリカーボネート基板およびポリメタクリル酸メチル基板の少なくとも一方に高密度かつ配向的に所望のタンパク質を固定化できる。本発明にかかるペプチドの導入位置を任意に制御することができるためにバイオ分子の生理活性を維持できることが期待できる。それゆえ、本発明にかかるペプチドは、バイオチップならびにライフサイエンス分野における材料開発において大きく貢献し得る。
【0171】
また本発明のスクリーニング方法によれば、ポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチル等の様々な標的物質に結合し得るペプチドを効率的にスクリーニングすることができる。それゆえ本発明のスクリーニング方法によれば、タンパク質等のバイオ分子の固定化に大いに貢献することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望のタンパク質に導入することによって、当該タンパク質をポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上に特異的に結合させるために用いられるリガンドペプチドであって、以下の(a)または(b)に示されるペプチドを含み、且つ分子量が10kD以下であることを特徴とするリガンドペプチド:
(a)配列番号1〜8のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号1〜8のいずれかに示されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上に特異的に結合する活性を有するペプチド。
【請求項2】
所望のタンパク質に導入することによって、当該タンパク質をポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの両方に特異的に結合させるために用いられるリガンドペプチドであって、以下の(c)または(d)に示されるペプチドを含み、且つ分子量が10kD以下であることを特徴とするリガンドペプチド:
(c)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(d)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルに特異的に結合する活性を有するペプチド。
【請求項3】
分子量が3.5kD以下である、請求項1または2に記載のリガンドペプチド。
【請求項4】
所望のタンパク質をポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上に特異的に結合させて固定化するタンパク質の固定化方法であって、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のリガンドペプチドを当該タンパク質に導入する導入工程、および
当該導入工程によって得られた、リガンドペプチドが導入されたタンパク質と、ポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上とを接触させる接触工程、を含むことを特徴とするタンパク質の固定化方法。
【請求項5】
上記導入工程は、所望のタンパク質と請求項1ないし3のいずれか1項に記載のリガンドペプチドとの融合タンパク質を作製する工程である、請求項4に記載のタンパク質の固定化方法。
【請求項6】
ポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルの少なくとも1つ以上に特異的に結合するタンパク質の製造方法であって、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のリガンドペプチドを当該タンパク質に導入する導入工程を含むことを特徴とするタンパク質の製造方法。
【請求項7】
上記導入工程は、所望のタンパク質と請求項1ないし3のいずれか1項に記載のペプチドとの融合タンパク質を作製する工程である、請求項6に記載のタンパク質の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載のタンパク質の製造方法によって製造されたタンパク質が、ポリカーボネートまたはポリメタクリル酸メチルからなる基材上に固定化されてなるタンパク質複合体。
【請求項9】
請求項6または7に記載のタンパク質の製造方法によって製造されたタンパク質が、ポリカーボネートまたはポリメタクリル酸メチルからなる基板上に固定化されてなるプロテインチップ。
【請求項10】
標的物質に対して特異的に結合するペプチドのスクリーニング方法であって、
タンパク質ライブラリと標的物質とを接触させて、標的物質と特異的に結合するタンパク質を選抜する一次選抜工程、
当該一次選抜工程によって選抜されたタンパク質を、断片化してペプチド群を調製するペプチド化工程、
当該ペプチド化工程によって調製されたペプチド群と標的物質とを接触させた後に、ペプチド群と標的物質とを隔離する接触隔離工程、および
当該接触隔離工程前後のペプチド群に含まれるペプチドを比較し、接触隔離工程後にペプチド群における含有量が減少したペプチドを選抜する二次選抜工程、
を含むことを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項11】
上記二次選抜工程は、接触隔離工程前後のペプチド群に含まれるペプチドを比較し、接触隔離工程後にペプチド群における含有量が70%以上減少したペプチドを選抜する工程であることを特徴とする請求項10に記載のスクリーニング方法。
【請求項12】
上記標的物質が有機高分子である、請求項10または11に記載のスクリーニング方法。
【請求項13】
上記標的物質がポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルからなる群から選択される1つ以上である、請求項10ないし12のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項14】
上記タンパク質ライブラリは細胞内タンパク質からなる、請求項10ないし13のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−168505(P2011−168505A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31668(P2010−31668)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【Fターム(参考)】