説明

ポリカーボネートの製造方法

【課題】特定のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含み、耐熱性、透明性に優れたポリカーボネート樹脂及びこれを含む組成物を提供する。
【解決手段】
分子内に下記構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換させてポリカーボネートを製造するポリカーボネート製造工程、および、該エステル交換を行う前に該エステル交換を行う反応槽と芳香族ヒドロキシ化合物とを接触させる反応槽処理工程を有することを特徴とする、ポリカーボネートの製造方法。


(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、色調、及び機械的強度に優れ、かつ屈折率が小さく、アッベ数が大きいという優れた光学特性を有するポリカーボネートの製造方法に関し、より詳しくは、特定の構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換させてポリカーボネートを製造するポリカーボネート製造工程と、それに先立ち該エステル交換を行う反応槽と芳香族ヒドロキシ化合物とを接触させる、ポリカーボネートの製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が、気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後の廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな、植物由来モノマーを原料としたポリカーボネートの開発が求められている。地球環境への影響を小さくするためにバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネートが知られており、中でも植物由来モノマーであるイソソルビドを使用し、炭酸ジフェニルとのエステル交換によりポリカーボネートを得ることができることが知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、イソソルビドとビスフェノールAを共重合したポリカーボネートが知られており(例えば、特許文献2参照)、更にはイソソルビドと脂肪族ジオールとを共重合することによりポリカーボネートの剛直が改善されることが知られている(例えば特許文献3参照)。そして、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルをエステル交換反応により反応させて、芳香族ポリカーボネートを製造する方法においては、特定の洗浄方法で洗浄した製造設備を使用する芳香族ポリカーボネートの製造方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】英国特許第1,079,686号明細書
【特許文献2】特開昭56―055425号公報
【特許文献3】国際公開第2004/111106号パンフレット
【特許文献4】特開2002−363276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イソソルビド等の複素環式構造を有するモノマーに代表されるような、下記式(1)で表されるような特定構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換させて得られるポリカーボネートは、透明性が高く、耐熱性に優れ、屈折率が小さく、アッベ数が小さいことから、光学補償フィルム等の用途への展開が期待されている。
【0005】
【化1】

【0006】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
しかしながら、このような構造を有するポリカーボネートは、従来のビスフェノール構造からなる芳香族ポリカーボネートに比べると熱安定性が悪いため、反応装置表面の微量不純物や反応装置表面の何らかの表面状態の差により、ポリカーボネートが着色する場合
があった。
【0007】
特にエステル交換反応後の反応槽には着色等を引き起こしたり、分子量低下を招いたりするような不純物が残存し蓄積する虞がある。そこで、同じ反応槽で異なる繰り返し構造を有するポリカーボネートを製造する場合は勿論のこと、同じ繰り返し構造を有するポリカーボネートを製造し続ける場合でも、物性を低下させるような不純物を一定期間ごとに除去することが好ましい。
【0008】
より具体的には例えば、ポリカーボネートを製造する前に反応槽に有機溶媒などを接触させて、反応槽に残留するポリカーボネートを解重合させて反応槽外へ排出することが好ましい。
しかしながら、特定構造を有するジヒドロキシ化合物として、例えばイソソルビドを用いて得られるポリカーボネート樹脂は、芳香族ジオール骨格を持ったポリカーボネートに比べて解重合速度が遅いため、従前知られたような方法で有機溶媒などと接触させても不純物などを充分に除去することができない場合があることから、イソソルビドを用いたポリカーボネートを製造した設備で、再度イソソルビドを用いたポリカーボネートを製造する場合や、異なる構造を有するポリカーボネートを製造する場合、続いて製造するポリカーボネートの色調悪化や物性低下や重合速度の遅延を招くことがあった。
【0009】
本発明の目的は、特定の構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換させて得られたポリカーボネートの色調や分子量などの物性の低下を防ぎ、高品質のポリカーボネートを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート製造に使用した経歴のある反応槽を、該反応槽でエステル交換を行う前に、該エステル交換を行う反応槽と特定の化合物とを接触させ、その後にエステル交換反応を行うことにより、アッベ数が大きく、複屈折が小さく、透明性、熱安定性、色調に優れたポリカーボネートを製造できることを見出した。即ち、本発明の要旨は、下記[1]〜[6]に存する。
【0011】
[1] 分子内に下記構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換させてポリカーボネートを製造するポリカーボネート製造工程、および、該エステル交換を行う前に該エステル交換を行う反応槽と芳香族ヒドロキシ化合物とを接触させる反応槽処理工程を有することを特徴とする、ポリカーボネートの製造方法。
【0012】
【化2】

【0013】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
[2] 前記反応槽処理工程の前に、反応槽と下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物とを接触させる反応槽前処理工程を有する、[1]に記載のポリカーボネートの製造方法。
【0014】
【化3】

【0015】
(式(2)中、Xは直接結合、炭素数10以下のアルキレン基、またはエーテル結合を有する炭素数10以下の二価基を表す。)
[3] 前記反応槽処理工程の前に、前記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの混合液と、反応槽とを接触させる反応槽処理工程を有する、[1]または[2]に記載のポリカーボネートの製造方法。
【0016】
[4] 反応槽処理工程および反応槽前処理工程から選ばれる少なくとも一つの処理の後に、反応槽から抜出される処理液に含まれるポリカーボネートのポリスチレン換算数平均分子量(Mn)が、4000以下である、[1]から[3]のいずれか1つに記載のポリカーボネートの製造方法。
[5] 前記反応槽処理工程の後に製造するポリカーボネートと同種であって、ポリスチレン換算数平均分子量(Mn)が4000〜18000のポリカーボネートと、反応槽とを接触させる反応槽後処理工程を有する、[1]から[4]のいずれか1つに記載のポリカーボネートの製造方法。
【0017】
[6] 前記分子内に構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物が、下記構造式(3)で表される複素環を有する化合物である、[1]から[5]のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
【0018】
【化4】

【発明の効果】
【0019】
本発明のポリカーボネートの製造方法によれば、透明性、色調、耐熱性、成形性、及び機械的強度に優れ、かつ優れた光学特性を有するポリカーボネートを安定的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
本発明のポリカーボネートの製造方法は、分子内に下記構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換させてポリカーボネートを製造するポリカーボネート製造工程、および、該エステル交換を行う前に該エステル交換を行う反応槽と芳香族ヒドロキシ化合物とを接触させる反応槽処理工程を有するものである。
【0021】
【化5】

【0022】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
なお、以下、分子内に構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物、および炭酸ジエステルを纏めて「原料モノマー」と呼ぶ場合がある。
<ジヒドロキシ化合物>
本発明における構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物としては、分子内に構造式(1)で表される構造を有していれば特に限定されるものではないが、具体的には、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、下記構造式(3)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、下記構造式(4)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられ、これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0023】
【化6】

【0024】
【化7】

【0025】
これらの中でも特に上記構造式(3)で表されるジヒドロキシ化合物が好適であり、該
ジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
特にこれらのジヒドロキシ化合物のうち、植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能なグルコースから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
【0026】
本発明に係るポリカーボネートの原料モノマーとしては、上記の本発明に係るジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構成単位を追加的に用いても良く、その他のジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、等の脂環式ジヒドロキシ化合物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAの化合物名である)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等のビスフェノール化合物があげられる。中でも、光学的特性、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
【0027】
これらのその他のジヒドロキシ化合物を用いることにより、得られるポリカーボネートの柔軟性の改善、耐熱性の向上、成形性の改善などの効果を得ることもできるが、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の含有割合が多過ぎると、本来の光学特性の性能の低下や、耐熱性の低下を招くことがある。そのため、本発明においては、ポリカーボネートを構成する全ジヒドロキシ化合物に対する本発明のジヒドロキシ化合物の割合が、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、特には50モル%以上であることが好適である。
【0028】
<炭酸ジエステル>
本発明のポリカーボネートの製造方法で用いられる炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートに代表される置換ジフェニルカーボネー
ト、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、特に好ましくはジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートがあげられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0029】
炭酸ジエステルは、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.90〜1.10のモル比率で用いることが好ましく、さらに好ましくは0.96〜1.04のモル比率である。このモル比が0.90より小さくなると、製造されたポリカーボネートの末端OH基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化したり、所望する高分子量体が得られなかったりする。また、このモル比が1.10より大きくなると、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下したり、所望とする分子量のポリカーボネートの製造が困難となったりするばかりか、製造されたポリカーボネート共重合体中の残存炭酸ジエステル量が増加し、この残存炭酸ジエステルが、成形時、又は成形品の臭気の原因となることもある。
【0030】
<エステル交換反応>
本発明に係るポリカーボネートの製造方法は、分子内に構造式(1)で表される構造を有する前記ジヒドロキシ化合物と、前記炭酸ジエステルとをエステル交換させてポリカーボネートを製造する。このエステル交換させてポリカーボネートを製造する工程を、ポリカーボネート製造工程という。
【0031】
ポリカーボネート製造工程では、エステル交換反応を効率よく進めるため、重合触媒(エステル交換触媒)を用いることが好ましい。ここで重合触媒としては、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用される。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
【0032】
重合触媒として用いられるアルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられる。
【0033】
また、アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。なお、本明細書において、「アルカリ金属」及び「アルカリ土類金属」という用語を、それぞれ、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における「第1
族金属」及び「第2族金属」と同義として用いる。
【0034】
これらのアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
またアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と併用される塩基性ホウ素化合物の具体例としては、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
【0035】
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0036】
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
【0037】
これらの塩基性化合物も1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
上記重合触媒としてアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いる場合、その使用量は、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物1モルに対して、金属換算量として、通常0.1μモル〜25μモル、好ましくは0.5μモル〜20μモル、さらに好ましくは0.5μモル〜15μモルの範囲内である。重合触媒の使用量が少なすぎると、所望の分子量のポリカーボネートを製造するのに必要な重合活性が得られず、一方、重合触媒の使用量が多すぎると、得られるポリカーボネートの色相が悪化し、副生成物が発生したりして流動性の低下やゲルの発生が多くなり、目標とする品質のポリカーボネートの製造が困難になる。
【0038】
本発明において、前記ジヒドロキシ化合物、例えば前記構造式(3)で表されるジヒドロキシ化合物は、固体として供給しても良いし、加熱して溶融状態として供給しても良いし、水溶液として供給しても良い。
一方、脂環式ジヒドロキシ化合物や他のジヒドロキシ化合物も、固体として供給しても良いし、加熱して溶融状態として供給しても良いし、水に可溶なものであれば、水溶液として供給しても良い。
【0039】
これらの原料ジヒドロキシ化合物を溶融状態や、水溶液で供給すると、工業的に製造する際、計量や搬送がしやすいという利点がある。
本発明において、前記ジヒドロキシ化合物、例えば前記構造式(3)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物と必要に応じて用いられる他のジヒドロキシ化合物とを重合触媒の存在下で炭酸ジエステルと反応させる方法は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。具体的には、第1段目の反応は140〜220℃、好ましくは150〜200℃の温度で0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間実施される。第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げながら反応温度を上げていき、同時に発生するフェノールを反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力が200Pa以下で、210〜280℃の温度範囲のもとで重縮合反応を行う。
【0040】
この重縮合反応における減圧において、温度と反応系内の圧力のバランスを制御することが重要である。特に、温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を狂わせ、重合度が低下することがある。例えば、ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドと1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いる場合は、全ジヒドロキシ化合物に対し、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%以上の場合は、1,4−シクロヘキサンジメタノールがモノマーのまま留出しやすくなるので、反応系内の圧力が13kPa程度の減圧下で、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させながら反応させ、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させ、最終的に200Pa以下の圧力で、200℃〜250℃の温度で重縮合反応を行うと、十分に重合度が上昇したポリカーボネートが得られるため、好ましい。
【0041】
また、全ジヒドロキシ化合物に対し、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%より少なくなった場合、特に、モル比が30モル%以下となった場合は、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%以上の場合と比べて、急激な粘度上昇が起こるので、例えば、反応系内の圧力が13kPa程度の減圧下までは、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させながら反応させ、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、温度を1時間あたり40℃以上の昇温速度、好ましくは1時間あたり50℃以上の昇温速度で上昇させながら反応させ、最終的に200Pa以下の減圧下、220℃〜290℃の温度で重縮合反応を行うと、十分に重合度が上昇したポリカーボネートが得られるため、好ましい。
【0042】
反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
本発明の方法において、ポリカーボネートを溶融重合法で製造する際に、着色を防止する目的で、リン酸化合物や亜リン酸化合物又はこれらの金属塩を重合時に添加することができる。
【0043】
リン酸化合物としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸トリアルキルの1種又は2種以上が好適に用いられる。これらは、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することがより好ましい。リン化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
【0044】
亜リン酸化合物を添加する場合は、下記に示す熱安定剤を任意に選択して使用できる。特に、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチル0フェニル)ホスファ
イト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトの1種又は2種以上が好適に使用できる。これらの亜リン酸化合物は、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが好ましい。亜リン酸化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
【0045】
リン酸化合物と亜リン酸化合物又はこれらの金属塩は併用して添加することができるが、その場合の添加量はリン酸化合物と亜リン酸化合物又はこれらの金属塩の総量で、先に記載した、全ジヒドロキシ化合物に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下とすることが好ましく、0.0003モル%以上0.003モル%以下とすることがより好ましい。この添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
【0046】
なお、リン酸化合物、亜リン酸化合物の金属塩としては、これらのアルカリ金属塩や亜鉛塩が好ましく、特に好ましくは亜鉛塩である。また、このリン酸亜鉛塩の中でも、長鎖アルキルリン酸亜鉛塩が好ましい。
また、このようにして製造されたポリカーボネートには、成形時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。
【0047】
かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びベンゼンホスホン酸ジメチル等が好ましく使用される。
【0048】
これらの熱安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
かかる熱安定剤は、溶融重合時に添加した添加量に加えて更に追加で配合することができる。即ち、適当量の亜リン酸化合物やリン酸化合物を配合して、ポリカーボネートを得た後に、後に記載する配合方法で、さらに亜リン酸化合物を配合すると、重合時のヘイズの上昇、着色、及び耐熱性の低下を回避して、さらに多くの熱安定剤を配合でき、色相の悪化の防止が可能となる。
【0049】
これらの熱安定剤の配合量は、ポリカーボネートを100重量部とした場合、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.2重量部が更に好ましい。
また、本発明のポリカーボネートには、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を配合することもできる。
【0050】
かかる酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0051】
これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
これら酸化防止剤の配合量は、ポリカーボネートを100重量部とした場合、0.0001〜0.5重量部が好ましい。
<反応槽処理工程>
本発明の特徴の一つは、ポリカーボネート製造工程でエステル交換を行う前に、該エステル交換を行う反応槽と芳香族ヒドロキシ化合物を接触させる工程を有することにあり、当該工程を反応槽処理工程という。
【0052】
該エステル交換を行う反応槽と芳香族ヒドロキシ化合物を接触させる方法としては、任意の方法を選択することができ、具体的には例えば反応槽内に芳香族ヒドロキシ化合物を振りかけたり、スプレーしたりする方法や、反応槽内に芳香族ヒドロキシ化合物を一定量以上保持(溜める)方法や、それらを組み合わせた方法を採用することができる。
また、反応槽内に芳香族ヒドロキシ化合物を保持する場合、攪拌を行うことも好ましい。この場合の攪拌速度は任意であるが、攪拌レイノルズ数が20以上であることが好ましく、より好ましくは50以上、特には100以上が好ましい。
【0053】
反応槽処理工程に要する時間は、任意に選択することができるが、通常0.5時間以上10時間以下であり、より好ましくは1時間以上8時間以下であって、特に好ましくは3時間以上6時間以下である。
また、反応槽処理工程の際の反応槽内の温度(液温)は、反応槽内の溶液が沸騰せず且つ凝固しない範囲であれば任意に選択することができるが、通常150度以上300℃以下であり、より好ましくは170度以上280℃以下であって、特に好ましくは190度以上250℃以下である。
【0054】
反応槽処理工程で用いられた芳香族ヒドロキシ化合物は、処理工程後排出されるが、排
出方法としては反応槽に設けられた弁を開放する方法のほか、排出用の管またはチューブを反応槽内に挿入しポンプなどを用いて抜き出しても構わない。更に、反応槽内を減圧下に保持して排出することもできる。なお、芳香族ヒドロキシ化合物を排出後、再び芳香族ヒドロキシ化合物と接触させて反応槽処理工程を複数回繰り返しても構わない。
【0055】
芳香族ヒドロキシ化合物としては、ヒドロキシ基を有する芳香族化合物であればどのようなものでも構わず、ヒドロキシ基の数は1つであっても複数でも構わないが、反応槽に存在する高分子化合物を効率的に解重合することができるという点で、1つであるもの、すなわち芳香族モノヒドロキシ化合物であることが好ましい。
芳香族環としては、単環であっても多数の縮合環であっても構わないが、より低分子量化することにより反応槽内に高分子化合物が残留することを防止して、製造するポリカーボネートの着色を低く抑えることができ、しかもより高分子量のポリカーボネートを得ることができるという点で、環の数が少ないものが好ましく、好ましくは3環以下であって、特に好ましくは単環のものが用いられる。
【0056】
芳香族環は、ヒドロキシ基以外の置換基を有していても構わず、具体的には例えば炭素数1から12の分岐を有していてもよいアルキル基、炭素数1から12の分岐を有していてもよいカルボキシ基、炭素数1から12の分岐を有していてもよいアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子があげられる。
なかでも、反応槽処理工程後に反応槽内に芳香族ヒドロキシ化合物が残存した場合でも、エステル交換反応に何らかの影響が及ばないようにするため、使用する芳香族ヒドロキシ化合物としては、エステル交換反応で生成するものと同じものが好適に使用される。具体的に例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを使用した場合には、エステル交換反応によりフェノールが生成するため、このような場合には芳香族ヒドロキシ化合物としてフェノールが好適に用いられる。また、用いられた芳香族ヒドロキシ化合物を、昇温・減圧等の操作により容易に反応槽外に排出することができるという点でも、より低分子量の芳香族ヒドロキシ化合物が好ましく、フェノールが好適に用いられる。
【0057】
<反応槽前処理工程>
更に本発明においては、前記反応槽処理工程の前に、エステル交換を行う反応槽と下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物とを接触させる工程を有していてもよく、当該工程を反応槽前処理工程という。
【0058】
【化8】

【0059】
該エステル交換を行う反応槽と一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物を接触させる方法としては、任意の方法を選択することができ、具体的には例えば反応槽内に一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物を振りかけたり、スプレーしたりする方法や、反応槽内に一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物を一定量以上保持(溜める)方法や、それらを組み合わせた方法を採用することができる。
【0060】
また、反応槽内に芳香族ヒドロキシ化合物を保持する場合、攪拌を行うことも好ましい。この場合の攪拌速度は任意であるが、攪拌レイノルズ数が10以上であることが好ましく、より好ましくは50以上、特には100以上が好ましい。
反応槽処理工程に要する時間は、任意に選択することができるが、通常0.2時間以上10時間以下であり、より好ましくは0.5時間以上7時間以下であって、特に好ましくは1時間以上5時間以下である。
【0061】
また、反応槽処理工程の際の反応槽内の温度(液温)は、反応槽内の溶液が沸騰せず且つ凝固しない範囲であれば任意に選択することができるが、通常150度以上300℃以下であり、より好ましくは170度以上280℃以下であって、特に好ましくは180度以上250℃以下である。
反応槽処理工程で用いられた一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、処理工程後排出されるが、排出方法としては槽に設けられた弁を開放する方法のほか、排出用の管またはチューブを反応槽内に挿入しポンプなどを用いて抜き出しても構わない。更に、反応槽内を減圧下に保持して排出することもできる。なお、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物を排出後、再び一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と接触させて反応槽処理工程を複数回繰り返しても構わない。
【0062】
一般式(2)においてXは直接結合、炭素数10以下のアルキレン基、またはエーテル結合を有する炭素数10以下の二価基を表すが、接触後に残存する一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物を反応槽より除去することが容易になるという点で、炭素数は5以下であることが好ましく、より好ましくは炭素数3以下である。
一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としてより具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールなどがあげられる。
【0063】
反応槽と一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物とを接触させた場合、反応槽に残存しているポリカーボネートの解重合が進行する。しかしながら、反応槽にこれらの解重合物や一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物が残存すると、接触後に実施するポリカーボネートの製造の際に、残存物が炭酸ジエステル化合物と反応し、ポリカーボネートを製造する際に、ポリカーボネートの構造に取り込まれる可能性がある。そのため、接触後残存する脂肪族ジヒドロキシ化合物を反応槽から排除するため、反応槽内を減圧したり、窒素などの気体流通下で加熱したり、蒸気圧が低く一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物との相溶性が高い他の溶媒と混合して抜き出したりすることにより、残存物を除去することが好ましい。
【0064】
反応槽前処理工程では、解重合の効果を高めるために、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物とともに炭酸ジエステルを併用することが好ましい。この場合、反応槽に残るポリカーボネートの解重合がより効果的に進行する。しかしながら、反応槽にこれらの解重合物、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物、炭酸ジエステル等が残存すると、接触後に実施するポリカーボネートの製造の際に、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのモル比率が、意図した原料投入量からずれてしまい、目的の分子量のポリカーボネートが得られない虞がある。そのため、接触後残存するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを反応槽から排除するため、反応槽内を減圧したり、窒素などの気体流通下で加熱したり、蒸気圧が低く脂肪族ジヒドロキシ化合物との相溶性が高い他の溶媒と混合して抜き出したりすることにより、残存物を除去することが好ましい。
【0065】
<接触後に排出されるポリカーボネート>
本発明に係るポリカーボネートの製造方法において、反応槽処理工程及び反応槽前処理工程を経ると、反応槽内に残存するポリカーボネートの解重合が進行し、より低分子量のポリカーボネートが生成する。そのため、反応槽処理工程および反応槽前処理工程の後に、反応槽から抜出される液中には、ポリカーボネートが存在するが、当該ポリカーボネートのポリスチレン換算数平均分子量(以下、Mnと略記することがある)は、4000以下であることが望ましく、より好ましくは3000以下であって、特に好ましくは2500以下である。ポリカーボネートのMnが4000以上の場合、反応槽処理工程及び反応槽前処理工程を経た後にも反応槽にポリカーボネートが残存する場合があるため、製造す
るポリカーボネートの色調悪化を招く虞がある。
【0066】
<その他の処理>
本発明のポリカーボネートの製造方法では、反応槽処理工程の後、ポリカーボネートを製造するが、反応槽処理工程後であって且つポリカーボネート製造の前に、反応槽とポリカーボネートと接触させることが好ましい。
この場合、ポリスチレン換算数平均分子量(Mn)4000〜18000のポリカーボネートを用いるのが好ましく、より好ましくは6000〜14000が用いられる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明をさらに詳述する。但し、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
以下において、ポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の物性、特性の評価は次の方法により行った。
・粘度平均分子量(Mv)
ウベローデ粘度計を用いて、塩化メチレン中20℃の極限粘度[η]を測定し、以下の式より粘度平均分子量(Mv)を求めた。
[η]=1.23×10−4(Mv)0.83
・数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて下記の条件で測定した。
装置:東ソー株式会社製品、HLC−8020
カラム:充填剤としてそれぞれTSK 5000HLX、4000HLX、3000HLX及び2000HLX(いずれも東ソー株式会社製品)を充填した4本のカラム(直径φ7.8mm、長さ300mm)を接続して用いた。
検出器:屈折率計
溶離液:テトラヒドロフラン
検量線:(株)ケムコ製の標準ポリスチレン(分子量;761(Mw/Mn≦1.14)、2000(Mw/Mn≦1.20)、4000(Mw/Mn≦1.06)、9000(Mw/Mn≦1.04)、17500(Mw/Mn≦1.03)、50000(Mw/Mn≦1.03)、233000(Mw/Mn≦1.05)、600000(Mw/Mn≦1.05)及び900000(Mw/Mn≦1.05)を用いて作成した。
操作:屈折率差により検出して得られたチャートより、Mw及びMnをポリスチレン換算で求めた。
(2)色相測定
測色色差計(日本電色工業株式会社製 ZE―2000)を使用し、C光源透過法にて色の3刺激値を測定し、黄色変色の指標として、下記式よりイエローインデックス(YI)値を算出した。
【0068】
イエローインデックス(YI)=100×(1.28X―1.06Z)/Y
<イソソルビドの蒸留>
ここで、複素環含有ポリカーボネート樹脂A、Bの製造に用いたイソソルビドの蒸留方法は次の通りである。
イソソルビドを蒸留容器に投入した後、徐々に減圧を開始後、加温を行い、内温約100℃で溶解した。その後、内温160℃にて溜出を開始した。このときの圧力は133〜266Paであった。初溜を取った後、内温160〜170℃、塔頂温度150〜157℃、133Paで蒸留を実施した。蒸留終了後、アルゴンを入れ、常圧に戻した。得られた蒸留品をアルゴン気流下で冷却粉砕し、蒸留精製したイソソルビドを得た。このものは、アルミラミネート袋に窒素気流下で、エージレス(三菱ガス化学社製)を同封して室温にてシール保管した。
【0069】
(実施例1〜実施例6)
(複素環含有ポリカーボネートA−1の製造)
(参考例1)
蒸留したイソソルビド4077g、トリシクロデカンジメタノール(以下「TCDDM」と略記する。)2347g、ジフェニルカーボネート8538g、及び触媒として、9.8×10−6mol/mlに調整した炭酸セシウム水溶液5.09mlを反応容器に投
入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。
【0070】
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分間かけて減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を190℃で15分間保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃まで、30分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分間かけて0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。所定の撹拌トルクに到達後、反応を停止し、反応容器出口より溶融状態のポリカーボネートを抜出した。
【0071】
(参考例2)
ビスフェノールA6700g、ジフェニルカーボネート6570g、及び触媒として、9.8×10−6mol/mlに調整した炭酸セシウム水溶液1.50mlを反応容器に
投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を220℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。
【0072】
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに60分間かけて減圧しながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を220℃で60分間保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を280℃まで、20分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を40分間かけて0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。150分後所定の撹拌トルクに到達し、反応を停止し、反応容器出口より溶融状態のポリカーボネートを抜出した。
【0073】
(実施例1)
参考例1と同様にポリカーボネートを製造後、溶解した4000gのフェノールを反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、加熱槽温度を220℃に加熱し、必要に応じて攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で撹拌した。60分後、加熱槽温度を250℃に加熱し、攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で120分間攪拌後、反応容器内の圧力を4.4kPaに30分間かけて減圧し、フェノールを反応容器外へ抜出した。攪拌停止後、反応容器出口より解重合したポリカーボネートオリゴマーを抜出した。
【0074】
次いで、参考例2と同様の方法でポリカーボネートを製造した。得られたポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv),イエローインデックス(YI),ポリカーボネートオリゴマーの数平均分子量(Mn)を上記の方法により測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
参考例1と同様にポリカーボネートを製造後、6000gのエチレングリコールを投入し、窒素雰囲気下にて、加熱槽温度を200℃に加熱し、必要に応じて攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で撹拌した。120分後、反応容器内の圧力を4.4kPaに30分間かけて減圧し、エチレングリコールを反応容器外へ抜出した。攪拌停止後、反応容器出口より解重合したポリカーボネートオリゴマーを抜出した。抜出し完了後、溶解した4000gのフェノールを反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、加熱槽温度を220℃に加熱し、必要に応じて攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で撹拌した。
60分後、加熱槽温度を250℃に加熱し攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で120分間攪拌後、反応容器内の圧力を4.4kPaに30分間かけて減圧し、フェノールを反応容器外へ抜出した。攪拌停止後、反応容器出口より解重合したポリカーボネートオリゴマーを抜出した。
【0075】
次いで、参考例2と同様の方法でポリカーボネートを製造した。実施例1と同様にして測定した各種物性値を表1に示す。
(実施例3)
参考例1と同様にポリカーボネートを製造後、5400gのトリエチレングリコールを反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、加熱槽温度を240℃に加熱し、必要に応じて攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で撹拌した。50分後、加熱槽温度を300℃に加熱し攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で120分間攪拌し、その後、反応容器内の圧力を4.4kPaに30分間かけて減圧し、トリエチレングリコールを反応容器外へ抜出した。攪拌停止後、反応容器出口より解重合したポリカーボネートオリゴマーを抜出した。抜出し完了後、溶解した4000gのフェノールを反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、加熱槽温度を220℃に加熱し、必要に応じて攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で撹拌した。60分後、加熱槽温度を250℃に加熱し120分間攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で攪拌後、反応容器内の圧力を4.4kPaに30分間かけて減圧し、フェノールを反応容器外へ抜出した。攪拌停止後、反応容器出口より解重合したポリカーボネートオリゴマーを抜出した。
【0076】
次いで、参考例2と同様の方法でポリカーボネートを製造した。実施例1と同様にして測定した各種物性値を表1に示す。
(実施例4)
参考例1と同様にポリカーボネートを製造後、ビスフェノールA4500g、ジフェニルカーボネート4222gを投入し、窒素雰囲気下にて、加熱槽温度を260℃に加熱し、必要に応じて攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で撹拌した。攪拌停止後、反応容器出口より解重合したポリカーボネートオリゴマーを抜出した。抜出し完了後、溶解した4000gのフェノールを反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、加熱槽温度を220℃に加熱し、必要に応じて攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で撹拌した。60分後、加熱槽温度を250℃に加熱し120分間攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で攪拌後、反応容器内の圧力を4.4kPaに30分間かけて減圧し、フェノールを反応容器外へ抜出した。攪拌停止後、反応容器出口より解重合したポリカーボネートオリゴマーを抜出した。
【0077】
イソソルビド73.070重量部に対して、ジフェニルカーボネート109.140重量部、及び触媒として、炭酸セシウム2.0×10−1重量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分間で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
【0078】
次いで、参考例2と同様の方法でポリカーボネートを製造した。実施例1と同様にして測定した各種物性値を表1に示す。
(実施例5)
参考例1と同様にポリカーボネートを製造後、溶解した4000gのフェノールを反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で撹拌した。20分後、加熱槽温度を170℃に加熱し60分間攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で攪拌後、反応容器内の圧力を4.4kPaに30分間かけて減圧し、フェノールを反応容器外へ抜出した。攪拌停
止後、反応容器出口より解重合したポリカーボネートオリゴマーを抜出した。
【0079】
次いで、参考例2と同様の方法でポリカーボネートを製造した。実施例1と同様にして測定した各種物性値を表1に示す。
(実施例6)
実施例1と同様に洗浄を実施したのちに、ビスフェノールA6700g、ジフェニルカーボネート6570g、及び触媒として、9.8×10−6mol/mlに調整した炭酸セシウム水溶液1.50mlを反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を220℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。
【0080】
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに60分間かけて減圧しながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を220℃で60分間保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を280℃まで、20分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を40分間かけて0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。100分後反応を停止し、反応容器出口より溶融状態のポリカーボネート(ポリスチレン換算数平均分子量(Mn)14300)を抜出した。
【0081】
次いで、参考例2と同様の方法でポリカーボネートを製造した。実施例1と同様にして測定した各種物性値を表1に示す。実施例1と同様にして測定した各種物性値を表1に示す。
(比較例1)
参考例1と同様にしてポリカーボネートを製造後、参考例2と同様にしてポリカーボネートを製造した。実施例1と同様にして測定した各種物性値を表1に示す。
【0082】
(比較例2)
参考例1と同様にしてポリカーボネートを製造後、5400gのトリエチレングリコールを反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、加熱槽温度を240℃に加熱し、必要に応じて攪拌レイノルズ数が約120となる攪拌条件下で撹拌した。50分後、加熱槽温度を300℃に加熱し120分間攪拌し、その後、反応容器内の圧力を4.4kPaに30分間かけて減圧し、トリエチレングリコールを反応容器外へ抜出した。攪拌停止後、反応容器出口より解重合したポリカーボネートオリゴマーを抜出した。
【0083】
次いで、参考例2と同様の方法でポリカーボネート樹脂を製造した。実施例1と同様にして測定した各種物性値を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
以上の結果から、本発明の反応槽処理工程を行うことにより、分子量が高いことから機械的特性に優れ、しかも着色が少なく透明性が高い、優れたポリカーボネートを製造することができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に下記構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換させてポリカーボネートを製造するポリカーボネート製造工程、および、該エステル交換を行う前に該エステル交換を行う反応槽と芳香族ヒドロキシ化合物とを接触させる反応槽処理工程を有することを特徴とする、ポリカーボネートの製造方法。
【化1】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【請求項2】
前記反応槽処理工程の前に、反応槽と下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物とを接触させる反応槽前処理工程を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネートの製造方法。
【化2】

(式(2)中、Xは直接結合、炭素数10以下のアルキレン基、またはエーテル結合を有する炭素数10以下の二価基を表す。)
【請求項3】
前記反応槽処理工程の前に、前記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの混合液と、反応槽とを接触させる反応槽処理工程を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のポリカーボネートの製造方法。
【請求項4】
反応槽処理工程および反応槽前処理工程から選ばれる少なくとも一つの処理の後に、反応槽から抜出される処理液に含まれるポリカーボネートのポリスチレン換算数平均分子量(Mn)が、4000以下であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
【請求項5】
前記反応槽処理工程の後に製造するポリカーボネートと同種であって、ポリスチレン換算数平均分子量(Mn)が4000〜18000のポリカーボネートと、反応槽とを接触させる反応槽後処理工程を有することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
【請求項6】
前記分子内に構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物が、下記構造式(3)で表される複素環を有する化合物であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
【化3】


【公開番号】特開2011−94029(P2011−94029A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249236(P2009−249236)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】