説明

ポリカーボネート共重合体、それを用いた塗工液、及び電子写真感光体

【課題】有機溶剤への溶解性及び耐摩耗性に優れたポリカーボネート共重合体、それを用いた塗工液、及びそれを用いた電子写真感光体を提供する。
【解決手段】下記式(1)に記載の繰り返し単位からなる構造を有し、かつAr/(Ar+Ar)で表されるモル共重合組成が25モル%以上47モル%以下であることを特徴とするポリカーボネート共重合体。


[式中Arは、下記式(2)で表される基であり、Arは、置換あるいは無置換のビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシン等から誘導される二価の基であり、nはArブロックの平均繰返し数で、1.09以上3.0以下の数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート共重合体、それを用いた塗工液、及び電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、機械的性質や熱的性質、電気的性質に優れていることから、様々な産業分野において成形品の素材に用いられてきた。近年、さらにこのポリカーボネート樹脂の光学的性質などをも併せて利用した機能的な製品の分野においても多用されている。このような用途分野の拡大に伴って、ポリカーボネート樹脂に対する要求性能も多様化している。
【0003】
機能的な製品の例として、ポリカーボネート樹脂を電荷発生材料や電荷輸送材料といった機能性材料のバインダー樹脂として使用した電子写真感光体がある。
この電子写真感光体には、適用される電子写真プロセスに応じて、所定の感度や電気
特性、光学特性を備えていることが要求される。この電子写真感光体は、その感光層の表面に、コロナ帯電、トナー現像、紙への転写、クリーニング処理などの操作が繰返し行われるため、これら操作を行う度に電気的、機械的な外力が加えられる。したがって、長期間にわたって電子写真の画質を維持するためには、電子写真感光体の表面に設けた感光層に、これら外力に対する耐久性が要求される。
また、電子写真感光体は、通常機能性材料と共にバインダー樹脂を有機溶剤に溶解し、導電性基板等にキャスト製膜する方法で製造される事から、有機溶剤への溶解性や溶液の安定性が求められる。
【0004】
従来、電子写真感光体用バインダー樹脂として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)や、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)などを原料とするポリカーボネート樹脂が使用されてきたが、耐摩耗性等の耐久性の点で充分に満足できなかった。そこで、このような要求に応えるため、多様な手法がとられてきた。その1つの効果的な技術として、共重合ポリカーボネートが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0005】
特許文献1に記載の樹脂においては、溶解性に寄与するビスフェノールZ骨格を有する成分に耐摩耗性に寄与するビフェノール骨格を有する成分を共重合してポリカーボネート共重合体を製造しており、ビスフェノールZ型ポリカーボネート単独重合体よりも耐摩耗性が良好になる結果が得られている。
特許文献2には、オリゴマーの量体数を低減した原料を用い、ビフェノールの共重合比を増加させたポリマーとして、ビスフェノールAとビフェノールの交互共重合ポリカーボネートが開示されている。この交互共重合体に占めるビフェノールの共重合割合は50モル%となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−179961号公報
【特許文献2】特開平5−70582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の前述のポリカーボネート共重合体において、耐摩耗性向上に寄与するビフェノール成分の含有量は、原料となる分子末端にクロロホルメート基を有するオリゴマーが2〜4量体である事も関係して、共重合体に占める割合は23モル%程度が限界であった。そこで、ビフェノール成分の含有量を高めるため、界面法によりビフェノールのオリゴマーを製造し、このオリゴマーにビスフェノールA又は1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)を共重合させて、ポリカーボネート共重合体を製造する方法を試みたところ、ビフェノールオリゴマーの製造段階で、不溶性の成分が析出して合成ができず、ビスフェノールA又はビスフェノールEを共重合させる段階に進めなかった。また、ビフェノール成分の含量を増加させるため、ビスフェノールA又はビスフェノールEとビフェノールを混合して界面法によりオリゴマーを製造し、その後、ポリマー化してポリカーボネート共重合体を製造した場合、得られたポリマーを有機溶剤に溶解させて得られた溶液は白濁するという問題があった。さらに、この溶液を塗工液として用いて、電子写真感光体を製造したところ、当該電子写真感光体は電気特性が悪いものであった。
また特許文献2に開示された樹脂は交互共重合体であることから、ポリマー構造の乱れが少なく、得られたポリマーは結晶性であることが報告されており、溶解性が低いという欠点があった。
【0008】
そこで、本発明は、有機溶剤への溶解性及び耐摩耗性に優れたポリカーボネート共重合体、それを用いた塗工液、及びそれを用いた電子写真感光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、ビスフェノール化合物であって、2個のフェニレン基を結合する結合基が置換基を有するメチレン基で、この2個の置換基が同一ではないビスフェノール化合物の量体数が少ないビスクロロホーメートオリゴマーを原料とし、これに、結晶性が高いポリカーボネート樹脂が得られる特定構造の芳香族二価フェノールを塩基存在下反応させることにより、有機溶媒への良好な溶解性を保持したまま、耐摩耗性を向上した特徴を持つポリカーボネート共重合体が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、以下のようなポリカーボネート共重合体、それを用いた塗工液、及び電子写真感光体を提供するものである。
[1] 下記式(1)に記載の繰り返し単位からなる構造を有し、かつAr/(Ar+Ar)で表されるモル共重合組成が25モル%以上47モル%以下であることを特徴とするポリカーボネート共重合体。
【0010】
【化1】

【0011】
[式中Arは、下記式(2)で表される基であり、Arは、置換あるいは無置換のビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、あるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンから誘導される二価の基であり、nはArブロックの平均繰返し数で、1.09以上3.0以下の数を表す。]
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、R1、R2は、水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリールオキシ基である。R1、R2は、一つの芳香環に複数の基が付加していてもよい。この場合、複数の基は同一でもよく、互いに異なる基であってもよい。Xは、−CR−で示される結合基であり、R3 、R4 は各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、トリフルオロメチル基または炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基である。ただし、RとRは同一ではない。]
【0014】
[2]上記[1]に記載のポリカーボネート共重合体であって、Arとして、二価の有機シロキサン変性フェニレン基を、さらに含むポリカーボネート共重合体。
[3]上記[2]記載のポリカーボネート共重合体であって、二価の有機シロキサン変性フェニレン基は、下記式(2A)又は式(2B)で示される基であることが好ましい。
【0015】
【化3】

【0016】
(式(2A)中、R21およびR22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基を示す。
23は、各々独立に炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
n1は、2〜4の整数であり、n2は、1〜600の整数である。)
【0017】
【化4】

【0018】
(式(2B)中、R31は、各々独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である
32は各々独立に炭素数1〜6の置換若しくは無置換のアルキル基又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
33は、脂肪族不飽和結合を含まない同種又は異種の一価炭化水素基である。
34は、脂肪族不飽和結合を含まない同種又は異種の一価炭化水素基である。
Y及びY’は、炭素数2以上のアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン、又は酸素原子である。
naは0又は1、nbは1又は2、ncは1又は2である。ただし、na+nb+ncは3である。
n1〜n4は、それぞれ0以上の整数であり、n1、n2、n3及びn4の和は、2〜600の整数であり、n3及びn4の和は1以上の整数である。
aは、0または1〜4までの整数である。)
【0019】
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体であって、連鎖末端が一価の芳香族基あるいは一価のフッ素含有脂肪族基により封止されたことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
[5]上記[4]に記載のポリカーボネート共重合体であって、連鎖末端の一価の芳香族基が一価の有機シロキサン変性フェニル基であることが好ましい。
[6]上記[5]に記載のポリカーボネート共重合体であって、一価の有機シロキサン変性フェニル基は、下記式(2C)で示される基であることが好ましい。
【0020】
【化5】

【0021】
(Zは炭素数2〜6の炭化水素基である。
41は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基である。
42〜R45は各々独立に水素、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
46〜R49は各々独立に炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
nは2〜600の数であり、分子量分布を持つ場合には平均繰返し単位数を示す。)
【0022】
[7]上記[1]から[6]のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体であって、下記式(3)に示されるビスクロロホーメートオリゴマーを原料とし、前記ビスクロロホーメートオリゴマーの平均量体数(n’)が1.0以上1.99以下であることを特徴とするポリカーボネート共重合体。
【0023】
【化6】

【0024】
[8]上記[1]から[7]のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体であって、前記式(2)で示されるArが、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタンから選ばれた化合物から誘導される二価の基であることを特徴とするポリカーボネート共重合体。
【0025】
[9]上記[7]または[8]に記載のポリカーボネート共重合体であって、前記式(3)に示されるビスクロロホーメートオリゴマーを含む原料に、アミド化合物が含まれている場合、前記アミド化合物の含有量は、前記ビスクロロホーメートオリゴマーを含む原料に含まれる窒素原子の質量に基づいて求められ、溶媒を除く前記ビスクロロホーメートオリゴマーを含む原料の全質量基準で700質量ppm以下であることが好ましい。
[10]上記[1]から[9]のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体において、当該ポリカーボネート共重合体に、ジアルキルカルバミン酸クロリドが含まれている場合、前記ジアルキルカルバミン酸クロリドの含有量は、当該ポリカーボネート共重合体全質量基準で100質量ppm以下であることが好ましい。
【0026】
[11]上記[1]から[10]のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体と有機溶剤を含んでなる塗工液。
【0027】
[12]導電性基板上に感光層を設けた電子写真感光体において、感光層の一成分として、上記[1]から[10]のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ポリカーボネート共重合体が、2個のフェニレン基を結合する結合基が置換基を有するメチレン基で、この2個の置換基が同一ではないビスフェノール化合物の低量体数のオリゴマーから誘導される単位と、単独重合体とした場合に結晶性が高い特定構造の芳香族二価フェノールのモノマーから誘導される単位を繰り返し単位として有し、Ar/(Ar+Ar)で表されるモル共重合組成が25モル%以上47モル%以下である。これにより、このポリカーボネート共重合体はArおよびArが持つ異なる特性を併せて有し、特にAr同士の繰り返し単位が存在することによる溶解性の低下を防止して、Arの持つ有機溶媒への高い溶解性と、Arが持つ高い耐摩耗性とを発現できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明のポリカーボネート共重合体(以下、単に「PC共重合体」ともいう)、このPC共重合体を用いた塗工液、およびこの塗工液を用いた電子写真感光体について詳細に説明する。
[PC共重合体の構造]
本発明のPC共重合体は、下記式(1)に記載の繰り返し単位からなる構造を有し、かつAr/(Ar+Ar)で表されるモル共重合組成が25モル%以上47モル%以下であることを特徴とするPC共重合体である。
【0030】
【化7】

【0031】
{式中Arは、下記式(2)で表される基であり、Arは、置換あるいは無置換のビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、あるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンから誘導される二価の基であり、nはArブロックの平均繰返し数で、1.09以上3.0以下の数を表す。}
【0032】
本発明のPC共重合体は、通常、Arブロックを形成した後に、Arを含むモノマーと反応させて製造するため、nは1.0以下の数とはならない。nは1.09以上3.0以下の数であり、好ましくは1.09以上2.30以下である。1.09未満では、繰返し単位の規則性が高くなりすぎ、結晶性モノマーの特性が高く出てしまい、溶解性が悪化することがある。また3.0を超える場合には得られるPC共重合体中に含まれる結晶性成分の含有量を十分高くすることが困難となり、耐摩耗性の改善効果が不十分である。
【0033】
本発明のPC共重合体において、Arのモノマー単位の含有量は、25モル%以上47モル%以下、好ましくは29モル%以上47モル%以下、さらに好ましくは32モル%以上47モル%以下、特に好ましくは38モル%以上45モル%以下である。
Arが47モル%を超えると、交互共重合と類似する規則性が高い構造の共重合体となるため、溶解性が低下する。25モル%未満だと耐摩耗性改善の効果が十分でなくなる。上記のモル%は、Ar/(Ar+Ar)で表されるモル共重合組成をパーセントで示した値である。
また、Ar同士の結合ブロックを持つ構造のポリマーはArからなるブロック成分の溶解性が低いため、溶液が白濁することがあり塗工液としては好ましくない。
【0034】
前記式(1)において、Arは下記式(2)で表される。
【0035】
【化8】

【0036】
{式中、R1、R2は、水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリールオキシ基である。R1、R2は、一つの芳香環に複数の基が付加していてもよい。この場合、複数の基は同一でもよく、互いに異なる基であってもよい。Xは、−CR−で示される結合基であり、R3 、R4 は各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、トリフルオロメチル基または炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基である。ただし、RとRは同一ではない。}
尚、前記式(2)は、原料の入手性、更には耐摩耗性の点で、下記式(2’)の構造が好ましい。
【0037】
【化9】

【0038】
1、R2を構成するハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
1、R2を構成する炭素数1〜12のアルキル基としては、直鎖アルキルあるいは分岐アルキルが挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、各種のプロピル基、各種のブチル基、各種のペンチル基、各種のヘキシル基である。また、シクロヘキシル基などの環状アルキルであってもよい。さらに、これらの基における水素原子の一部又は全部がハロゲン原子に置換されたものであってもよい。他の置換基としては、トリフルオロメチル基や、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基が挙げられる。これらの置換基を構成するアルキル基としては前記の基が挙げられ、アリール基としては、後記の基が挙げられる。
1、R2を構成する炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基等が挙げられる。
1、R2を構成する炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基を構成するアルキル基、アリール基としては、前記の基が挙げられる。
上記の基において、アリール基やアリールオキシ基が置換基を有する場合、置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基を挙げることができる。炭素数1〜6のアルキル基としては、上記のR1、R2の説明で挙げた基が挙げられる。他の置換基としては、ハロゲン原子やトリフルオロメチル基が挙げられる。
1、R2は全て水素原子であってもよく、水素原子以外の基が複数ある場合には、それらは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
前記式(2)のXは−CR−で示される結合基であり、炭素数は2〜20であることが好ましい。R、Rを構成する炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基については、前述のR1、R2と同様の基が挙げられるが、RとRは同一ではない。RとRが同一でない場合に、溶解性の向上が認められる。
【0039】
Arは、置換あるいは無置換の、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、あるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンから誘導される二価の基である。
Arがビフェノール誘導体の場合、4、4’位で結合することが機械特性や耐摩耗性を向上させる点で好ましい。ナフタレン誘導体の場合、1〜8位のいずれかの位置で酸素原子と結合する態様を取り得るが、2,7位、2,6位、1,4位もしくは1,5位で結合することが機械特性や耐摩耗性を向上させる点で好ましい。その他の置換基及び酸素原子との結合位置については、Arと同じである。
【0040】
本発明では、Arとして、二価の有機シロキサン変性フェニレン基を、さらに含むことが好ましい。
二価の有機シロキサン変性フェニレン基としては、例えば、下記式(2A)で示される基である。
【0041】
【化10】

【0042】
(式(2A)中、R21およびR22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基を示す。
ハロゲン原子としては塩素原子が好ましい。炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基としては、R,Rの説明で示した基が挙げられる。
21およびR22としては、好ましくは水素原子または炭素数1〜3のアルコキシ基であり、更に好ましくは、後記する具体的構造が挙げられる。
23は、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基としては、R,Rの説明で示した基が挙げられる。好ましくは、フェニル基やメチル基である。
n1は、2〜4の整数であり、n2は、1〜600の整数である。)
【0043】
また、二価の有機シロキサン変性フェニレン基としては、式(2B)で示される基でもよい。
【0044】
【化11】

【0045】
(式(2B)中、R31は、各々独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である
ハロゲン原子としては塩素原子が好ましい。炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基としては、R,Rの説明で示した基が挙げられる。
32は各々独立に炭素数1〜6の置換若しくは無置換のアルキル基又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基としては、R,Rの説明で示した基が挙げられる。好ましくは、フェニル基やメチル基である。
33は、脂肪族不飽和結合を含まない同種又は異種の一価炭化水素基である。
一価炭化水素基としては、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基が挙げられる。これらの中では炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、特に好ましくはメチル基である。
34は、脂肪族不飽和結合を含まない同種又は異種の一価炭化水素基である。
一価炭化水素基としては、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基が挙げられる。これらの中では炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、特に好ましくはメチル基である。
Y及びY’は、炭素数2以上のアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン、又は酸素原子である。好適には、炭素数2〜10のアルキレン基であり、更に好ましくは繰返し単位数が2〜4のメチレン基である。
naは0又は1、nbは1又は2、ncは1又は2である。ただし、na+nb+ncは3である。
n1〜n4は、それぞれ0以上の整数であり、n1、n2、n3及びn4の和は、2〜600の整数であり、n3及びn4の和は1以上の整数である。
aは、0または1〜4までの整数である。好ましくは、aは、0又は1である。)
【0046】
Arとして、二価の有機シロキサン変性フェニレン基をさらに含むことにより、PC共重合体をバインダー樹脂として用いた電子写真感光体では、表面エネルギーが低下し、異物の付着性が低減できる。具体的には、電子写真感光体にトナーなどの異物が付着することを抑制できる。
このような二価の有機シロキサン変性フェニレン基としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0047】
【化12】

【0048】
【化13】

【0049】
上記式中、有機シロキシレン基の繰り返し単位数(n)は、好ましくは1以上600以下、さらに好ましくは10以上300以下、特に好ましくは20以上200以下、最も好ましくは30以上150以下である。
nを600以下とすることにより、PC共重合体との相溶性が良好となり、重合工程で反応を完結させることができる。従って、未反応の有機シロキサン変性フェノール化合物が最終のPC共重合体中に残存することを防止できるため、樹脂が白濁することなく、電子写真感光体のバインダー樹脂として適用した場合に残留電位の上昇を抑制できる。
一方、nを1以上とすることにより、電子写真感光体に表面エネルギー性を十分に付与でき、さらに異物の付着を良好に防止できる。
PC共重合体中の二価の有機シロキサン変性フェニレン基の割合は、0.01質量%以上50質量%以下、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
当該割合を0.1質量%以上とすることにより、異物の付着をさらに良好に防止できる。一方、当該割合を50質量%以下とすることにより、耐摩耗性に優れた、十分な機械的強度を有する電子写真感光体用として好適に用いることができる。
【0050】
また、本発明のPC共重合体は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dl溶液の20℃における還元粘度[ηSP/C]が0.1dl/g以上5dl/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.2dl/g以上3dl/g以下、特に好ましくは0.3dl/g以上2.5dl/g以下である。還元粘度[ηSP/C]が0.1dl/g未満であると、電子写真感光体として使用した場合に耐摩耗性が不十分となるおそれがある。また、還元粘度[ηSP/C]が5dl/gを超えると、電子写真感光体等、塗工液から成形体を製造するときに、塗工粘度が高くなりすぎて、電子写真感光体等の成形体の生産性が低下するおそれがあり、好ましくない。
【0051】
本発明において、前記(1)式に記載のPC共重合体としては、連鎖末端が一価の芳香族基または一価のフッ素含有脂肪族基により封止されたPC共重合体であることが、電気特性の改善の点で好ましい。
【0052】
電気特性が改善されたPC共重合体においては、末端基は、一価の芳香族基あるいは一価のフッ素含有脂肪族基である。一価の芳香族基は、アルキル基等の脂肪族基を含有する基であってもよい。一価のフッ素含有脂肪族基は、芳香族基を含有する基であってもよい。
末端基を構成する一価の芳香族基としては、炭素数6〜12のアリール基であると好ましい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基やビフェニル基が挙げられる。芳香族基や芳香族基に付加するアルキル基等の脂肪族基に付加する置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が挙げられる。また、芳香族基に付加する置換基として炭素数1〜20アルキル基が挙げられる。このアルキル基は、上記のようにハロゲン原子が付加した基であってもよく、アリール基が付加した基であってもよい。
末端基を構成する一価のフッ素含有脂肪族基としては、炭素数1〜20のフッ素含有アルキル基が挙げられる。
【0053】
そして、連鎖末端が一価の芳香族基である場合、有機シロキサン変性フェニル基であってもよい。
一価の有機シロキサン変性フェニル基としては、例えば、下記式(2C)で示される基である。
【0054】
【化14】

【0055】
(Zは炭素数2〜6の炭化水素基である。好ましくはアルキレン基であり、更に好ましくは繰返し単位数が2〜4のメチレン基である。
41は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基である。好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。
42〜R45は各々独立に水素、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
46〜R49は各々独立に炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基としては、R,Rの説明で示した基が挙げられる。好ましくは、フェニル基やメチル基である。
nは2〜600の整数であり、分子量分布を持つ場合には平均繰返し単位数を示す。)
【0056】
このような一価の有機シロキサン変性フェニル基としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0057】
【化15】

【0058】
一価の有機シロキサン変性フェニル基を有するPC共重合体をバインダー樹脂として用いた電子写真感光体では、トナーなどの異物が付着することを低減することができる。
上記の効果を発現させる場合に必要な、一価の有機シロキサン変性フェニル基の割合は、PC共重合体全体に対して、0.01質量%以上、50質量%以下である。さらに好適には、0.1質量%以上、20質量%以下、特に好適には、0.5質量%以上、10質量%以下である。
一価の有機シロキサン変性フェニル基のほかに、二価の有機シロキサン変性フェニレン基に由来する単位が主鎖に含まれるPC共重合体においては、この単位も合算する。
【0059】
[PC共重合体の製造方法]
本発明のPC共重合体は、例えば、下記式(3)に示す低量体数のビスクロロホーメートオリゴマーを用い、下記式(4)に示すコモノマーである芳香族二価フェノール性化合物を塩基存在下で反応させることにより得られる。このようなオリゴマーを使用することで、Arブロックの平均繰り返し数が1.09以上3.0以下の範囲にあるPC共重合体が容易に製造できる。
【0060】
【化16】

【0061】
ここで、ビスクロロホーメートオリゴマーの平均量体数を示すn’は前記式(1)のnとは異なる。nとn’は同程度の値となるが、nの値の方が大きい。それは、Arオリゴマーを形成した後の、Arを含むモノマーとの反応時に、Arオリゴマー末端のクロロホーメート基が、反応系内に存在する塩基と反応して水酸基となり、これが末端塩素のArオリゴマーと重縮合する場合があるからである。
式(3)のビスクロロホーメートオリゴマーにおいて、その平均量体数n’は、1.0以上1.99以下の範囲にある。平均量体数が1.0以上1.99以下の範囲にあるビスクロロホーメートオリゴマーを使用することで、本発明のPC共重合体の製造が容易になる。平均量体数n’の算出方法は、実施例において後記する方法が挙げられる。
【0062】
さらに、本発明においては、前記式(2)で表されるArが、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタンから選ばれたモノマーから誘導される二価の基であることが有機溶媒への溶解性向上の点で好ましい。
【0063】
なお、式(3)に示されるビスクロロホーメートオリゴマーを含む原料には、不純物としてアミド化合物が含まれている場合がある。そのアミド化合物の含有量は、ビスクロロホーメートオリゴマーを含む原料に含まれる窒素原子の質量に基づいて求められる。アミド化合物の含有量(アミド化合物に由来する窒素の質量)は、前記原料を含む溶液から溶媒を除き固形物とした場合、ビスクロロホーメートオリゴマーを含む原料の全質量基準で700質量ppm以下、好ましくは400質量ppm以下で、さらに好ましくは150質量ppm、特に好ましくは90質量ppm以下ある。
アミド化合物の含有量を700質量ppm以下とすることにより、電子写真感光体のバインダー樹脂としてPC共重合体を適用した場合に残留電位が上昇することを抑制できる。なお、ビスクロロホーメートオリゴマーは、固形物に限らず、液体でもよい。
【0064】
アミド化合物としては、N,N,N’,N’−テトラアルキル尿素、N,N−ジエチルカルバミン酸クロリドなどのN,N−ジアルキルカルバミン酸クロリド、N,N−ジアルキルカルバミン酸、ビスフェノール−モノクロロホーメート−モノアルキルカーバメートの重合体、ビスフェノール−ビスジアルキルカーバメートなどが挙げられる。
ビスクロロホーメートオリゴマーを製造する際、トリエチルアミンなどのアミン化合物を大量に使用した場合、アミン化合物とビスクロロホーメート化合物が反応してアミド化合物が不純物として生成する場合がある。
しかしながら、ビスクロロホーメートオリゴマーの洗浄回数を増やすことにより、上記のように、アミド化合物の含有量を減らすことができる。
水洗以外の低減手段として、蒸留や吸着剤の使用、カラム分別が挙げられる。
【0065】
そして、上記ビスクロロホーメートオリゴマーを用いて得られるPC共重合体にも、不純物としてジエチルカルバミン酸クロリドなどのジアルキルカルバミン酸クロリドが含まれている場合がある。この場合、ジアルキルカルバミン酸クロリドの含有量は、PC共重合体全質量基準で100質量ppm以下、好ましくは50質量ppm以下、さらに好ましくは20質量ppm以下、特に好ましくは15質量ppm以下である。
ジアルキルカルバミン酸クロリドの含有量を100質量ppm以下とすることにより、残留電位が上昇することを抑制して、良好な感度を有する電子写真感光体が得られる。
【0066】
本発明のPC共重合体の製造方法としては、例えば、下記式(5)で表されるビスフェノール化合物から誘導されるビスクロロホーメートオリゴマーと、下記式(6)で示され、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、あるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンから誘導される二価フェノール化合物とを重縮合させる方式が挙げられる。
【0067】
【化17】

【0068】
上記式(5)で表されるビスフェノール化合物としては、例えば、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタンが挙げられる。
【0069】
これらのビスフェノール化合物は溶解性に優れるPC共重合体を与えるという点で好ましい。また、電子写真感光体用のPC共重合体として適用した場合には良好な塗工液が得られるため好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
次に、前記式(6)で表されるモノマーについて説明する。本発明のPC共重合体の他の構成単位であるArの原料となるモノマーは、耐摩耗性の観点から、その単独重合体の塩化メチレンに対する溶解度が2質量%以下であるか、又は界面重縮合法によるポリカーボネート合成反応中に生成するポリマーが結晶化する事により数平均分子量が10000以上の単独重合体の合成が実質的に不可能な二価フェノールモノマーである。
尚、塩化メチレンに対する溶解度が2質量%以下であるか否かは、有機溶媒含有量が500質量ppm以下の、粘度平均分子量が15000〜30000の範囲にある固体状の単独重合体2質量部を室温で塩化メチレン98質量部に浸漬し、24時間放置した後、固液分離し、固体側を乾燥させて求めた質量減少が0.04質量部以上であるか否かにより確認できる。
【0071】
前記式(6)で表されるこのようなモノマーとしては、4,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5−トリメチル−4,4’−ビフェノール、3−プロピル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’−ジフェニル−4,4’−ビフェノール、3,3’−ジブチル−4,4’−ビフェノール等のビフェノール化合物、ヒドロキノン、レゾルシン、2,7−ナフタレンジオール、2,6−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、などが挙げられる。これらのビスフェノール化合物は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
中でも4,4’−ビフェノール、ヒドロキノン、レゾルシン、2,7−ナフタレンジオール、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタンが耐摩耗性に優れる樹脂が得られる事から好ましい。
【0072】
本発明のPC共重合体は、Arが二価の有機シロキサン変性フェニレン基である前記式(6)で示されるモノマーを、さらに重合しても得られる。この場合、二価の有機シロキサン変性フェニレン基としては前述したものが挙げられる。
【0073】
本発明のPC共重合体は、式(5)のモノマーから得られたビスクロロホーメートオリゴマーと式(6)のモノマーとを用いて界面重縮合を行うことで容易に得られる。例えば、ホスゲンをはじめとする各種のジハロゲン化カルボニルを用いて、酸結合剤の存在下に界面重縮合を行うことで好適に炭酸エステル結合を形成することができる。これらの反応は、必要に応じて末端停止剤と分岐剤のうち少なくとも一方の存在下で行われる。また、本発明のPC共重合体の製造においては、Ar由来のモノマーを2種類以上使用して多元共重合体としてもよい。
【0074】
連鎖末端を生成させるための末端停止剤としては、一価のカルボン酸とその誘導体や、一価のフェノールを用いることができる。例えば、p−tert−ブチル−フェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−パーフルオロノニルフェノール、p−(パーフルオロノニルフェニル)フェノール、p−(パーフルオロへキシル)フェノール、p−tert−パーフルオロブチルフェノール、1−(p−ヒドロキシベンジル)パーフルオロデカン、パーフルオロオクチルフェノール、パーフルオロヘキシルフェノール、p−〔2−(1H,1H−パーフルオロトリドデシルオキシ)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル〕フェノール、3,5−ビス(パーフルオロヘキシルオキシカルボニル)フェノール、p−ヒドロキシ安息香酸パーフルオロドデシル、p−(1H,1H−パーフルオロオクチルオキシ)フェノール、2H,2H,9H−パーフルオロノナン酸、1,1,1,3,3,3−テトラフロロ−2−プロパノール、あるいは、下記式(7)または(8)で示されるアルコールなどが好適に用いられる。
H(CFCHOH・・・(7)
(nは、1〜12の整数)
F(CFCHOH・・・(8)
(mは、1〜12の整数)
【0075】
また、一価のフェノールとしては、前記した一価の有機シロキサン変性フェニル基を一価のフェノールとした化合物も好適に用いることができる。
【0076】
これら末端停止剤の添加割合は、共重合組成比として、0.05モル%以上30モル%以下、さらに好ましくは0.1モル%以上10モル%以下であり、この割合が30モル%を超えると機械的強度の低下を招くことがあり、0.05モル%未満であると成形性の低下を招くことがある。
【0077】
また、分岐剤の具体例としては、フロログルシン、ピロガロール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−3−ヘプテン、2,4−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス〔4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル〕プロパン、2,4−ビス〔2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス〔4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ〕メタン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロモイサチンなどが挙げられる。
これら分岐剤の添加量は、共重合組成比で30モル%以下、好ましくは5モル%以下であり、これが30モル%を超えると成形性の低下を招くことがある。
【0078】
界面重縮合を行う場合、酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物や、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸カルシウムなどのアルカリ金属弱酸塩、アルカリ土類金属弱酸塩、ピリジンなどの有機塩基であるが、好ましいのは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物である。また、これらの酸結合剤は混合物としても用いることができる。酸結合剤の使用割合も反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。具体的には、原料である二価フェノールの水酸基の合計1モル当たり、1当量もしくはそれより過剰量、好ましくは1当量以上10当量以下の酸結合剤を使用すればよい。
【0079】
ここで用いる溶媒としては、得られた共重合体に対して一定以上の溶解性を示せば問題無い。例えばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素や、塩化メチレン、クロロホルム、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、シクロヘキサノン、アセトン、アセトフェノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類などが好適なものとして挙げられる。これら溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、互いに混ざり合わない2種の溶媒を用いて界面重縮合反応を行ってもよい。
【0080】
また、触媒としては、トリメチルアミンや、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチルアニリンなどの第三級アミン、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリブチルベンジルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイドなどの四級アンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどの四級ホスホニウム塩などが好適である。
さらに、必要に応じて、この反応系に亜硫酸ナトリウムやハイドロサルファイト塩などの酸化防止剤を少量添加してもよい。
【0081】
本発明のPC共重合体の製造法としては、具体的には様々な態様で実施可能であり、例えば、前記式(5)のビスフェノール化合物とホスゲンなどを反応させて、ビスクロロホーメートオリゴマーの低量体数物を製造し、ついでこのビスクロロホーメートオリゴマーに、前記式(6)を、前記溶媒及び酸結合剤のアルカリ水溶液の混合液の存在下に反応させる方法を採用することが、前記式(1)中のn値を好ましい範囲に調整できる点で好ましい。
このビスクロロホーメートオリゴマーを製造する方法としては、次に示す方法によって製造されたものを用いると、PC共重合体製造時の洗浄工程が簡略化できることなどの点で好ましい。
【0082】
式(3)のn’値が1.0以上1.99以下の範囲にあるビスクロロホーメートオリゴマーを製造する方法として、後記する製造例で示す方法がある。まず、前記式(5)のビスフェノール化合物を塩化メチレン等の疎水性溶媒に懸濁し、ホスゲンを加えて混合溶液を形成する。一方、トリエチルアミン等の第三級アミンを塩化メチレン等の疎水性溶媒に溶解させて溶液を形成し、この溶液を前記の混合溶液に滴下して室温以下の温度で反応させる。得られた反応混合物の残液に塩酸と純水を加えて洗浄し、低量体数のポリカーボネートオリゴマーを含む有機層を得る。
滴下温度や反応温度は、通常0〜70℃、好ましくは5〜65℃であり、滴下時間、反応時間は共に、15分間〜4時間、好ましくは30分間〜3時間程度である。このようにして得られるポリカーボネートオリゴマーの平均量体数(n’)は好ましくは1.00以上1.99以下、さらに好ましくは1.00以上1.60以下である。
【0083】
このようにして得られた低量体数のビスクロロホーメートオリゴマーを含む有機相に、前記式(6)に示される芳香族二価フェノールモノマーを加えて反応させる。反応温度は、0〜150℃、好ましくは5〜40℃、特に好ましくは10〜25℃である。
反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでもよいが、通常は、常圧もしくは反応系の自圧程度で好適に行い得る。反応時間は、反応温度によって左右されるが、通常0.5分間〜10時間、好ましくは1分間〜2時間程度である。
【0084】
この反応にあたって、前記式(6)に示される芳香族二価フェノールモノマーは、水溶液、又は有機溶媒溶液として添加するのが望ましい。その添加順序については、特に制限はない。なお、触媒、末端停止剤および分岐剤などは、上記の製造法において、必要に応じ、ビスクロロホーメートオリゴマーの製造時、その後の高分子量化の反応時のいずれか、またはその両方において添加して用いることができる。
【0085】
このようにして得られるPC共重合体は、下記式(9)で表される繰返し単位および式(10)で表される繰返し単位とからなるPC共重合体である。
また、このPC共重合体には、本発明の目的達成を阻害しない範囲で、ArおよびAr以外の構造単位を有するポリカーボネート単位や、ポリエステル、ポリエーテル構造を有する単位を含有しているものであってもよい。
【0086】
【化18】

【0087】
なお、得られるPC共重合体の還元粘度[ηsp/C]を前記の範囲にするには、例えば、前記反応条件の選択、分岐剤や末端停止剤の使用量の調節など各種の方法によってなすことができる。また、場合により、得られたPC共重合体に適宜物理的処理(混合、分画など)および/または化学的処理(ポリマー反応、架橋処理、部分分解処理など)を施して所定の還元粘度[ηsp/C]のPC共重合体として取得することもできる。
また、得られた反応生成物(粗生成物)は、公知の分離精製法等の各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のものをPC共重合体として回収することができる。
【0088】
[塗工液の構成]
本発明の塗工液は、少なくとも本発明のPC共重合体、及び本PC共重合体を溶解、又は分散可能な溶剤を含んでなる。また、塗工液には上記以外に低分子化合物、染料、顔料などの着色剤、電荷輸送材、電子輸送材、正孔輸送材、電荷発生材料等の機能性化合物、無機又は有機のフィラー、ファイバー、微粒子などの充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸捕捉剤等の添加剤を含んでいても良い。樹脂以外に含まれても良い物質の例は、例えば後述する電子写真感光体の構成成分に含まれるものが挙げられる。また、塗工液には本発明の効果を損なわない限り他の樹脂を含んでいても良く、その例は下記電子写真感光体の構成成分の例として挙げられる。また、本発明で使用される溶媒は本PC共重合体、他の材料の溶解性、分散性、粘度、蒸発速度、化学的安定性、物理的変化に対する安定性などを考慮し、単独、あるいは複数の溶媒を混合して使用することができる。その例は、後述する電子写真感光体の構成成分の例として挙げられる。
【0089】
本塗工液中の共重合体成分の濃度は、同塗工液の使用法に合わせた適切な粘度であれば良いが、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上35質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以上30質量%以下が最も好ましい。40質量%を超えると、粘度が高すぎるために塗工性が悪化する。0.1質量%未満では、粘度が低すぎるため塗液が流れてしまい、均質な膜が得られなかったり、濃度が低すぎるため、塗工後の乾燥に長時間を要したり、目標とする膜厚に達することができない恐れがある。
【0090】
本発明の上記PC共重合体は前記電荷輸送物質との相溶性がよい上に、前記溶媒に溶解しても白化又はゲル化を起こすことがない。従って、上記共重合体、電荷輸送物質及び溶媒を含有する本発明の塗工液は、長期に亘って安定に保存することが可能である。またこの塗工液を用いて電子写真感光体の感光層を形成した場合、感光層が結晶化を起こすこともなく、画質状のディフェクトを生じない優れた電子写真感光体を作製することができる。
また本塗工液中のPC共重合体と電荷輸送物質との割合は、通常、質量比で20:80〜80:20、好ましくは30:70〜70:30とすることが望ましい。
本発明の塗工液中、本発明のPC共重合体は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
本発明の塗工液は、通常、感光層が少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とを含む積層型電子写真感光体の電荷輸送層の形成に好適に用いられる。また、上記塗工液に、さらに上記電荷発生物質を含有させることにより、単層型の電子写真感光体の感光層の形成に使用することも可能である。
【0092】
[電子写真感光体の構成]
本発明の電子写真感光体は、上述のPC共重合体を感光層中に用いる限り、公知の種々の形式の電子写真感光体はもとより、どのようなものとしてもよいが、感光層が、少なくとも1層の電荷発生層と少なくとも1層の電荷輸送層を有する積層型電子写真感光体、または、一層に電荷発生物質と電荷輸送物質を有する単層型電子写真感光体とすることが好ましい。
【0093】
PC共重合体は、感光層中のどの部分にも使用してもよいが、本発明の効果を十分に発揮するためには、電荷輸送層中において電荷移動物質のバインダー樹脂として使用するか、単一の感光層のバインダー樹脂として使用するか、表面保護層として使用することが望ましい。電荷輸送層を2層有する多層型の電子写真感光体の場合には、そのいずれかの電荷輸送層に使用することが好ましい。
本発明の電子写真感光体において、前記した本発明のPC共重合体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。また、所望に応じて本発明の目的を阻害しない範囲で、他のポリカーボネート等のバインダー樹脂成分を含有させてもよい。さらに、酸化防止剤等の添加物を含有させてもよい。
【0094】
本発明の電子写真感光体は、感光層を導電性基板上に有するものである。感光層が電荷発生層と電荷輸送層とを有する場合、電荷発生層上に電荷輸送層が積層されていてもよく、また電荷輸送層上に電荷発生層が積層されていてもよい。また、一層中に電荷発生物質と電荷輸送物質を同時に含むものであってもよい。さらにまた、必要に応じて表面層に導電性又は絶縁性の保護膜が形成されていてもよい。さらに、各層間の接着性を向上させるための接着層あるいは電荷のブロッキングの役目を果すブロッキング層等の中間層などが形成されているものであってもよい。
【0095】
本発明の電子写真感光体に用いられる導電性基板材料としては、公知のものなど各種のものを使用することができ、具体的には、アルミニウムやニッケル、クロム、パラジウム、チタン、モリブデン、インジウム、金、白金、銀、銅、亜鉛、真鍮、ステンレス鋼、酸化鉛、酸化錫、酸化インジウム、ITO(インジウムチンオキサイド:錫ドープ酸化インジウム)もしくはグラファイトからなる板やドラム、シート、ならびに蒸着、スパッタリング、塗布などによりコーティングするなどして導電処理したガラス、布、紙もしくはプラスチックのフィルム、シートおよびシームレスベルト、ならびに電極酸化等により金属酸化処理した金属ドラムなどを使用することができる。
【0096】
前記電荷発生層は少なくとも電荷発生材料を有するものであり、この電荷発生層はその下地となる基板上に真空蒸着、スパッタ法等により電荷発生材料の層を形成せしめるか、又はその下地となる基板上に電荷発生材料をバインダー樹脂を用いて結着してなる層を形成せしめることによって得ることができる。バインダー樹脂を用いる電荷発生層の形成方法としては公知の方法等各種の方法を使用することができるが、通常、例えば、電荷発生材料をバインダー樹脂と共に適当な溶媒により分散若しくは溶解した塗工液を、所定の下地となる基板上に塗布し、乾燥せしめて湿式成形体として得る方法が好適である。
【0097】
前記電荷発生層における電荷発生材料としては、公知の各種のものを使用することができる。具体的な化合物としては、非晶質セレンや、三方晶セレン等のセレン単体、セレン−テルル等のセレン合金、As2Se3等のセレン化合物もしくはセレン含有組成物、酸化亜鉛、CdS−Se等の周期律表第12族および第16族元素からなる無機材料、酸化チタン等の酸化物系半導体、アモルファスシリコン等のシリコン系材料、τ型無金属フタロシアニン、χ型無金属フタロシアニン等の無金属フタロシアニン顔料、α型銅フタロシアニン、β型銅フタロシアニン、γ型銅フタロシアニン、ε型銅フタロシアニン、X型銅フタロシアニン、A型チタニルフタロシアニン、B型チタニルフタロシアニン、C型チタニルフタロシアニン、D型チタニルフタロシアニン、E型チタニルフタロシアニン、F型チタニルフタロシアニン、G型チタニルフタロシアニン、H型チタニルフタロシアニン、K型チタニルフタロシアニン、L型チタニルフタロシアニン、M型チタニルフタロシアニン、N型チタニルフタロシアニン、Y型チタニルフタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン、X線回折図におけるブラック角2θが27.3±0.2度に強い回折ピークを示すチタニルフタロシアニン、ガリウムフタロシアニン等の金属フタロシアニン顔料、シアニン染料、アントラセン顔料、ビスアゾ顔料、ピレン顔料、多環キノン顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、ピリリウム染料、スクアリウム顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料、アゾ顔料、チオインジゴ顔料、キノリン顔料、レーキ顔料、オキサジン顔料、ジオキサジン顔料、トリフェニルメタン顔料、アズレニウム染料、トリアリールメタン染料、キサンチン染料、チアジン染料、チアピリリウム染料、ポリビニルカルバゾール、ビスベンゾイミダゾール顔料などが挙げられる。これら化合物は、1種を単独であるいは2種以上のものを混合して、電荷発生物質として用いることができる。これら電荷発生物質の中でも、好適なものとしては、特開平11−172003号公報に具体的に記載のものが挙げられる。
【0098】
前記電荷輸送層は、下地となる基板上に、電荷輸送物質をバインダー樹脂で結着してなる層を形成することによって、湿式成形体として得ることができる。
前記した電荷発生層や電荷輸送層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知の各種のものを使用することができる。具体的には、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリケトン、ポリアクリルアミド、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、メタクリル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシ−メチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ビニルトルエン−スチレン共重合体、大豆油変性アルキッド樹脂、ニトロ化ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリイソプレン、ポリチオカーボネート、ポリアリレート、ポリハロアリレート、ポリアリルエーテル、ポリビニルアクリレート、ポリエステルアクリレートなどが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いることもできるし、また、2種以上を混合して用いることもできる。なお、電荷発生層や電荷輸送層におけるバインダー樹脂としては、前記した本発明のPC共重合体を使用することが好適である。
【0099】
電荷輸送層の形成方法としては、公知の各種の方式を使用することができるが、電荷輸送物質を本発明のPC共重合体とともに適当な溶媒に分散若しくは溶解した塗工液を、所定の下地となる基板上に塗布し、乾燥して湿式成形体として得る方法が好適である。電荷輸送層形成に用いられる電荷輸送物質とPC共重合体との配合割合は、好ましくは質量比で20:80〜80:20、さらに好ましくは30:70〜70:30である。
【0100】
この電荷輸送層において、本発明のPC共重合体は1種単独で用いることもでき、また2種以上混合して用いることもできる。また、本発明の目的を阻害しない範囲で、他のバインダー樹脂を本発明のPC共重合体と併用することも可能である。
【0101】
このようにして形成される電荷輸送層の厚さは、通常5μm以上100μm以下程度、好ましくは10μm以上30μm以下である。この厚さが5μm未満であると初期電位が低くなるおそれがあり、100μmを超えると電子写真特性の低下を招くおそれがある。
本発明のPC共重合体と共に使用できる電荷輸送物質としては、公知の各種の化合物を使用することができる。このような化合物としては、カルバゾール化合物、インドール化合物、イミダゾール化合物、オキサゾール化合物、ピラゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ピラゾリン化合物、チアジアゾール化合物、アニリン化合物、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン化合物、脂肪族アミン化合物、スチルベン化合物、フルオレノン化合物、ブタジエン化合物、キノン化合物、キノジメタン化合物、チアゾール化合物、トリアゾール化合物、イミダゾロン化合物、イミダゾリジン化合物、ビスイミダゾリジン化合物、オキサゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンズイミダゾール化合物、キナゾリン化合物、ベンゾフラン化合物、アクリジン化合物、フェナジン化合物、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリ−9−ビニルフェニルアントラセン、ピレン−ホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾール樹脂、あるいはこれらの構造を主鎖や側鎖に有する重合体などが好適に用いられる。これら化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これら電荷輸送物質の中でも、特開平11−172003公報において具体的に例示されている化合物が特に好適に用いられる。
なお、本発明の電子写真感光体においては、電荷発生層か電荷輸送層の少なくともいずれかに本発明のPC共重合体をバインダー樹脂として用いることが好適である。
【0102】
本発明の電子写真感光体においては、前記導電性基板と感光層との間に、通常使用されるような下引き層を設けることができる。この下引き層としては、酸化チタンや酸化アルミニウム、ジルコニア、チタン酸、ジルコン酸、ランタン鉛、チタンブラック、シリカ、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化珪素などの微粒子、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、カゼイン、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂などの成分を使用することができる。また、この下引き層に用いる樹脂として、前記バインダー樹脂を用いてもよいし、本発明のPC共重合体を用いてもよい。これら微粒子や樹脂は単独または種々混合して用いることができる。これらの混合物として用いる場合には、無機質微粒子と樹脂を併用すると、平滑性のよい皮膜が形成されることから好適である。
【0103】
この下引き層の厚みは、0.01μm以上10μm以下、好ましくは0.1μm以上7μm以下である。この厚みが0.01μm未満であると、下引き層を均一に形成することが困難であり、また10μmを超えると電子写真特性が低下することがある。また、前記導電性基体と感光層との間には、通常使用されるような公知のブロッキング層を設けることができる。このブロッキング層としては、前記のバインダー樹脂と同種の樹脂を用いることができる。また本発明のポリカーボネート共重合体を用いてもよい。このブロッキング層の厚みは、0.01μm以上20μm以下、好ましくは0.1μm以上10μm以下である。この厚みが0.01μm未満であると、ブロッキング層を均一に形成することが困難であり、また20μmを超えると電子写真特性が低下することがある。
【0104】
さらに、本発明の電子写真感光体には、感光層の上に、保護層を積層してもよい。この保護層には、前記のバインダー樹脂と同種の樹脂を用いることができる。また、本発明のポリカーボネート共重合体を用いることが特に好ましい。この保護層の厚みは、0.01μm以上20μm以下、好ましくは0.1μm以上10μm以下である。そして、この保護層には、前記電荷発生物質、電荷輸送物質、添加剤、金属やその酸化物、窒化物、塩、合金、カーボンブラック、有機導電性化合物などの導電性材料を含有していてもよい。
【0105】
さらに、この電子写真感光体の性能向上のために、前記電荷発生層および電荷輸送層には、結合剤、可塑剤、硬化触媒、流動性付与剤、ピンホール制御剤、分光感度増感剤(増感染料)を添加してもよい。また、繰返し使用に対しての残留電位の増加、帯電電位の低下、感度の低下を防止する目的で種々の化学物質、酸化防止剤、界面活性剤、カール防止剤、レベリング剤などの添加剤を添加することができる。
【0106】
前記結合剤としては、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリクロロプレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ホルマール樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂などが挙げられる。また、熱および/または光硬化性樹脂も使用できる。いずれにしても、電気絶縁性で通常の状態で皮膜を形成し得る樹脂であり、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に制限はない。
【0107】
前記可塑剤の具体例としては、ビフェニル、塩化ビフェニル、o−ターフェニル、ハロゲン化パラフィン、ジメチルナフタレン、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、トリフェニルフォスフェート、ジイソブチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ラウリル酸ブチル、メチルフタリールエチルグリコレート、ジメチルグリコールフタレート、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、ポリプロピレン、ポリスチレン、フルオロ炭化水素などが挙げられる。
【0108】
前記硬化触媒の具体例としては、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などが挙げられ、流動性付与剤としては、モダフロー、アクロナール4Fなどが挙げられ、ピンホール制御剤としては、ベンゾイン、ジメチルフタレートが挙げられる。これら可塑剤や硬化触媒、流動付与剤、ピンホール制御剤は、前記電荷輸送物質に対して、5質量%以下で用いることが好ましい。
【0109】
また、分光感度増感剤としては、増感染料を用いる場合には,例えばメチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルー、ビクトリアブルーなどのトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジ、フラペオシンなどのアクリジン染料、メチレンブルー、メチレングリーンなどのチアジン染料、カプリブルー、メルドラブルーなどのオキサジン染料、シアニン染料、メロシアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料、チオピリリウム塩染料などが適している。
【0110】
感光層には、感度の向上、残留電位の減少、反復使用時の疲労低減などの目的で、電子受容性物質を添加することができる。その具体例としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、3−ニトロ無水フタル酸、4−ニトロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水メリット酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、1,3,5−トリニトロベンゼン、p−ニトロベンゾニトリル、ピクリルクロライド、キノンクロルイミド、クロラニル、ブロマニル、ベンゾキノン、2,3−ジクロロベンゾキノン、ジクロロジシアノパラベンゾキノン、ナフトキノン、ジフェノキノン、トロポキノン、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、4−ニトロベンゾフェノン、4,4’−ジニトロベンゾフェノン、4−ニトロベンザルマロンジニトリル、α−シアノ−β−(p−シアノフェニル)アクリル酸エチル、9−アントラセニルメチルマロンジニトリル、1−シアノ−(p−ニトロフェニル)−2−(p−クロロフェニル)エチレン、2,7−ジニトロフルオレノン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、9−フルオレニリデン−(ジシアノメチレンマロノニトリル)、ポリニトロ−9−フルオレニリデン−(ジシアノメチレンマロノジニトリル)、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、5−ニトロサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸、フタル酸、メリット酸などの電子親和力の大きい化合物が好ましい。これら化合物は電荷発生層、電荷輸送層のいずれに加えてもよく、その配合割合は、電荷発生物質または電荷輸送物質の量を100質量部としたときに、0.01質量部以上200質量部以下、好ましくは0.1質量部以上50質量部以下である。
【0111】
また、表面性の改良のため、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体、フッ素系グラフトポリマーを用いてもよい。これら表面改質剤の配合割合は、前記バインダー樹脂に対して、0.1質量%以上60質量%以上、好ましくは5質量%以下40質量%以下である。この配合割合が0.1質量%より少ないと、表面耐久性、表面エネルギー低下などの表面改質が充分でなく、60質量%より多いと、電子写真特性の低下を招くことがある。
【0112】
前記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、スルフィド系酸化防止剤、有機リン酸系酸化防止剤などが好ましい。これら酸化防止剤の配合割合は、前記電荷輸送物質に対して、通常、0.01質量%以上10質量%以下、好ましくは0.1質量%以上2質量%以下である。
このような酸化防止剤の具体例としては、特開平11−172003号公報の明細書に記載された化学式[化94]〜[化101]の化合物が好適である。
これら酸化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい、そして、これらは前記感光層のほか、表面保護層や下引き層、ブロッキング層に添加してもよい。
【0113】
前記電荷発生層、電荷輸送層の形成の際に使用する前記溶媒の具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、酢酸エチル、エチルセロソルブ等のエステル、四塩化炭素、四臭化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン等のエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミド等を挙げることができる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を混合溶媒として使用してもよい。
【0114】
単層型電子写真感光体の感光層は、前記の電荷発生物質、電荷輸送物質、添加剤を用いて、本発明のバインダー樹脂(PC共重合体)を適用することで容易に形成することができる。また、電荷輸送物質としては前述したホール輸送性物質および/または電子輸送物質を添加することが好ましい。電子輸送物質としては、特開2005−139339号公報に例示されるものが好ましく適用できる。
各層の塗布は公知のものなど各種の塗布装置を用いて行なうことができ、具体的には、例えば、アプリケーター、スプレーコーター、バーコーター、チップコーター、ロールコーター、ディップコーター、ドクタブレード等を用いて行なうことができる。
【0115】
電子写真感光体における感光層の厚さは、5μm以上100μm以下、好ましくは8μm以上50μm以下であり、これが5μm未満であると初期電位が低くなりやすく、100μmを超えると電子写真特性が低下することがある。電子写真感光体の製造に用いられる電荷発生物質:バインダー樹脂の比率は、質量比で1:99〜30:70、好ましくは3:97〜15:85である。また、電荷輸送物質:バインダー樹脂の比率は、質量比で10:90〜80:20、好ましくは30:70〜70:30である。
【0116】
このようにして得られる本発明の電子写真感光体は、本発明のPC共重合体を用いるため、感光層作製時に塗工液が白濁することがなく、ゲル化することもない。また、感光層中に本発明のPC共重合体からなる成形体(バインダー樹脂)を有しているため、耐久性(耐摩耗性)に優れるとともに、優れた電気特性(帯電特性)をしており、長期間にわたって優れた電子写真特性を維持する感光体であり、複写機(モノクロ、マルチカラー、フルカラー;アナログ、デジタル)、プリンター(レーザー、LED、液晶シャッター)、ファクシミリ、製版機、およびこれら複数の機能を有する機器など各種の電子写真分野に好適に用いられる。
【0117】
なお、本発明の電子写真感光体を使用するにあたっては、帯電には、コロナ放電(コロトロン、スコロトロン)、接触帯電(帯電ロール、帯電ブラシ)などが用いられる。帯電ロールとしては、DC帯電タイプやACを重畳したDC帯電タイプが挙げられる。また、露光には、ハロゲンランプや蛍光ランプ、レーザー(半導体、He−Ne)、LED、感光体内部露光方式のいずれを採用してもよい。現像には、カスケード現像、二成分磁気ブラシ現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像などの乾式現像方式や湿式現像方式が用いられる。転写には、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法や、圧力転写法、粘着転写法が用いられる。定着には、熱ローラ定着、ラジアントフラッシュ定着、オープン定着、圧力定着などが用いられる。さらに、クリーニング・除電には、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーおよびクリーナーを省略したものなどが用いられる。また、トナー用の樹脂としては、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、環状炭化水素の重合体などが適用できる。トナーの形状は、球形でも不定形でもよく、一定の形状(回転楕円体状、ポテト状等)に制御したものでも適用できる。トナーは、粉砕型、懸濁重合トナー、乳化重合トナー、ケミカル造粒トナー、あるいはエステル伸長トナーのいずれでもよい。
【実施例】
【0118】
次に、本発明を実施例および比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲での種々の変形および応用が可能である。
【0119】
〔製造例:オリゴマーの調製〕
<製造例1:ビスフェノールEオリゴマー(ビスクロロホーメート)の合成>
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)73.0g(0.341モル)を塩化メチレン410mLで懸濁し、そこにトリエチルアミン68.7g(0.682モル)を加えて溶解した。これにホスゲン65.0g(0.689モル)の塩化メチレン245mLに溶液を14〜18.5℃で2時間50分かけて滴下した。18.5℃〜19℃で1時間撹拌後、10〜22℃で塩化メチレン250mLを留去した。残液に純水73mL、濃塩酸4.5mL、ハイドロサルファイト0.47gを加え洗浄した。その後、純水330mLで4回洗浄を繰り返し、分子末端にクロロホーメート基を有するビスフェノールEオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られた溶液のクロロホーメート濃度は0.98モル/L、固形物濃度は0.21kg/L、平均量体数(n’)は1.37であった。また、得られたビスフェノールEオリゴマーに含まれるアミド化合物の含有量は、ビスフェノールEオリゴマー中の窒素質量からトリエチルアミンに由来する窒素量を差し引いた値であり、ビスフェノールEオリゴマー全質量基準で90質量ppmであることが分かった。また、トリエチルアミン由来の窒素量は0.3質量ppmであった。なお、ビスフェノールEオリゴマー中の窒素質量は、JIS K2609に準拠した化学発光法に従って全窒素量を定量した。これからガスクロ分析でトリエチルアミン量を定量し、これを窒素量に換算して、全窒素量から差し引き、アミド化合物に由来する窒素質量とした。以後この得られた原料をE−CFという。
【0120】
全窒素量の定量は、(株)三菱化学アナリテック製TS−100を用い、JIS K2609(化学発光法)に準拠し、実施した。JIS規格は液体に関する測定法が記載されているが、固体試料に対して同様の装置で測定を行った。
ビスクロロホーメート化合物の塩化メチレン溶液から、塩化メチレンを50℃、減圧条件で乾固した。得られた固形分を用いて測定を行った。この結果を、別途ピリジンを標準物質として作成した検量線と比較する事で、窒素量の定量を行った。得られた結果を、ビスクロロホーメート化合物の塩化メチレン中での濃度で換算する事で、ビスクロロホーメート化合物中の全窒素量を算出した。
トリエチルアミンの定量は、上記の方法で得たビスクロロホーメート化合物の固形分に0.5N−NaOH水溶液を加えてpHを8以上とし、これにクロロホルムを添加して、クロロホルム抽出成分をトリエチルアミンとして、ガスクロマトグラフィー分析し、絶対検量線法で定量した。
【0121】
ガスクロマトグラフィー分析の条件は次のとおりである。
機種:アジレント・テクノロジー製 7890A
カラム:CP−VOLAMINE(Varian製) 60m×0.32mm(内径)
注入口温度:150℃
カラム温度:40℃から150℃まで50℃/分で昇温、150℃で10分保持後、250℃まで50℃/分で昇温
キャリアガス:ヘリウム 40cm/秒 一定
注入量:2μl
注入方式:スプリットレス
検出器:FID
FID温度:260℃
【0122】
尚、平均量体数(n’)は、次の数式を用いて求めた。
平均量体数(n’)=1+(Mav−M1)/M2・・・(数1)
(式(数1)において、Mavは(2×1000/(CF価))であり、M2は(M1−98.92)であり、M1は前記式(3)において、n’=1のときのビスクロロホーメート化合物の分子量であり、CF価(N/kg)は(CF値/濃度)であり、CF値(N)は反応溶液1Lに含まれる前記式(3)で表されるビスクロロホーメート化合物中のクロル分子数であり、濃度(kg/L)は反応溶液1Lを濃縮して得られる固形分の量である。ここで、98.92は、ビスクロロホーメート化合物同士の重縮合で脱離する2個の塩素原子、1個の酸素原子および1個の炭素原子の合計の原子量である。)
【0123】
<製造例2:BisBオリゴマー(ビスクロロホーメート)の合成>
製造例1において、ビスフェノールEを2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(BisB)65.8g(0.272モル)、トリエチルアミン量を53.8g(0.533モル)に変更し、ホスゲンの塩化メチレン溶液を、ホスゲン52.7g(0.533モル)を塩化メチレン225mLに溶解した液に変更した以外は、製造例1と同様にして、分子末端にクロロホーメート基を有するビスフェノールBオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られた溶液のクロロホーメート濃度は0.99モル/L、固形物濃度は0.21kg/L、平均量体数(n’)は1.21であった。なお、得られたBisBオリゴマー中のアミド化合物の含有量は、90質量ppmであることが分かった。また、トリエチルアミン由来の窒素量は0.3質量ppmであった。以後この得られた原料をBisB−CFという。
【0124】
<製造例3:APオリゴマー(ビスクロロホーメート)の合成>
製造例1において、ビスフェノールEを1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(AP)78.9g(0.272モル)、トリエチルアミン量を53.8g(0.533モル)に変更し、ホスゲンの塩化メチレン溶液をホスゲン52.7g(0.533モル)を塩化メチレン225mLに溶解した液に変更した以外は、製造例1と同様にして、分子末端にクロロホーメート基を有するAPオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られた溶液のクロロホーメート濃度は0.91モル/L、固形物濃度は0.21kg/L、平均量体数(n’)は1.15であった。なお、得られたAPオリゴマー中のアミド化合物の含有量は、90質量ppmであることが分かった。また、トリエチルアミン由来の窒素量は0.3質量ppmであった。以後この得られた原料をAP−CFという。
【0125】
<製造例4:ビスフェノールAオリゴマー(ビスクロロホーメート)の合成>
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)80.2g(0.352モル)を塩化メチレン450mLで懸濁し、そこにトリエチルアミン70.4g(0.702モル)を加えて溶解した。これをホスゲン69.8g(0.631モル)を塩化メチレン250mLに溶解した液に14〜18.5℃で2時間50分かけて滴下した。18.5℃〜19℃で1時間撹拌後、10〜22℃で塩化メチレン250mLを留去した。残液に純水73mL、濃塩酸4.5mL、ハイドロサルファイト0.47gを加え洗浄した。その後、純水330mLで4回洗浄を繰り返し、分子末端にクロロホーメート基を有するビスフェノールAオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られた溶液のクロロホーメート濃度は0.88モル/L、固形物濃度は0.21kg/L、平均量体数(n’)は1.49であった。なお、得られたビスフェノールAオリゴマー中のアミド化合物の含有量は、150質量ppmであることが分かった。また、トリエチルアミン由来の窒素量は0.3質量ppmであった。以後、この得られた原料をA−CFという。
【0126】
<製造例5:ビスフェノールEオリゴマー(ビスクロロホーメート)の合成>
製造例1において、ビスフェノールEオリゴマー(E−CF)の合成反応後に行った純水洗浄の回数を、4回から2回に減らした以外は、製造例1と同様にして製造した。
なお、得られたビスフェノールEオリゴマー中のアミド化合物の含有量は、720質量ppmであることが分かった。以後この得られた原料をE−CF2という。
【0127】
〔実施例1〕
(PC共重合体の製造)
メカニカルスターラー、撹拌羽根、邪魔板を装着した反応容器に、製造例1のE−CF(17mL)と塩化メチレン(43mL)を注入した。これに末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノール(以下、PTBPと表記)(0.05g)を添加し、十分に混合されるように撹拌した。この溶液に、別途調製した二価フェノールモノマー溶液を全量添加し(モノマー溶液調製法:2Nの水酸化ナトリウム水溶液14mLを調製し、室温以下に冷却した後、酸化防止剤としてハイドロサルファイトを0.1g、4,4’−ビフェノール1.6gを添加し、完全に溶解して調製した)、反応器内の温度が15℃になるまで冷却した後、撹拌しながらトリエチルアミン水溶液(7vol%)を0.2mL添加し、1時間撹拌を継続した。
得られた反応混合物を塩化メチレン0.2L、水0.1Lで希釈し、洗浄を行った。下層を分離し、さらに水0.1Lで一回、0.03N塩酸0.1Lで1回、水0.1Lで3回の順で洗浄を行った。得られた塩化メチレン溶液を、撹拌下メタノールに滴下投入し、得られた再沈物をろ過、乾燥する事により下記構造のPC共重合体(PC−1)を得た。
【0128】
(PC共重合体の特定)
このようにして得られたPC共重合体(PC−1)を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dlの溶液を調製し、20℃における還元粘度[ηsp/C]を測定したところ、1.24dl/gであった。なお、得られたPC−1の構造及び組成をH−NMRスペクトルおよび13C−NMRにより分析したところ、下記の繰り返し単位、繰り返し単位数、及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。また、得られたポリカーボネート共重合体中のジエチルカルバミン酸クロリドの残留量は、このポリカーボネート共重合体全質量基準で10質量ppmであることがわかった。
【0129】
【化19】

【0130】
n=2.28、Ar/(Ar+Ar)=0.31
【0131】
尚、前記式(1)における構造は、次の手順で確認した。まず、13C−NMRスペクトルを用いて、Ar同士の結合がないことを確認し、次に1H−NMRスペクトルにより、ArとArの共重合比を算出した。次いで、下記式(数2)によりnの値を算出した。
Ar/(Ar+Ar)=1/(n+1)・・・(数2)
【0132】
(塗工液および電子写真感光体の製造)
導電性基体としてアルミニウム金属を蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用い、その表面に、電荷発生層と電荷輸送層を順次積層して積層型感光層を形成した電子写真感光体を製造した。電荷発生物質としてオキソチタニウムフタロシアニン0.5質量部を用い、バインダー樹脂としてブチラール樹脂0.5質量部を用いた。これらを溶媒の塩化メチレン19質量部に加え、ボールミルにて分散し、この分散液をバーコーターにより、前記導電性基体フィルム表面に塗工し、乾燥させることにより、膜厚約0.5ミクロンの電荷発生層を形成した。
つぎに、電荷輸送物質として、下記式(11)の化合物(CTM−1)0.5g、前記で得られたPC共重合体(PC−1)0.5gを10ミリリットルのテトラヒドロフランに分散し、塗工液を調製した。この塗工液をアプリケーターにより、前記電荷発生層の上に塗布し、乾燥し、膜厚約20ミクロンの電荷輸送層を形成した。
【0133】
【化20】

【0134】
(PC共重合体および電子写真感光体の評価)
PC共重合体の溶解性は前述の塗工液の調製時に、調製した塗工液の白濁度を目視で観察することにより評価した。PC共重合体が溶解し白濁が認められない場合を○、不溶解部分がある場合を×、白濁した場合を「白濁」とした。
また、PC共重合体、及び電子写真感光体の耐摩耗性の評価を、以下の通り実施した。
〔1〕共重合体の耐摩耗性評価サンプル作製:PC−1(2g)を塩化メチレン(12mL)に溶解し、アプリケーターを用い市販のPETフィルム上にキャスト製膜した。このフィルムを減圧下加熱し溶剤を除去し、厚み約30μmのフィルムサンプルを得た。
〔2〕感光体の耐摩耗性評価サンプル作製:PC−1(1g)、及び上記CTM−1(1g)を塩化メチレン(10mL)に溶解し、アプリケーターを用い市販のPETフィルム上にキャスト製膜した。このフィルムを減圧下加熱し溶剤を除去し、厚み約30μmのフィルムサンプルを得た。
〔3〕評価:前記〔1〕、〔2〕で作製したフィルムのキャスト面の耐摩耗性をスガ摩耗試験機NUS−ISO−3型(スガ試験機社製)を用いて評価した。試験条件は4.9Nの荷重をかけた摩耗紙(粒径3μmのアルミナ粒子を含有)を感光層表面と接触させて2,000回往復運動を行い、質量減少量を測定した。
〔4〕PC共重合体中に含まれる不純物(ジエチルカルバミン酸クロリド)の含有量の測定:ジエチルカルバミン酸クロリドは、ガスクロマトグラフィーを用いた絶対検量線法で測定した。
測定条件は次のとおりである。
サンプル:PC共重合体0.5gを塩化メチレン13.3gに溶解し、測定サンプルとした。
機器:アジレント・テクノロジー製 7890A
カラム:HP−1 30m×0.25mm(内径)(膜厚:0.25μm)
温度:40℃から、毎分10℃で300℃まで昇温し、300℃で30分保持
注入口:スプリット 300℃
検出器:310℃(FID)
キャリアガス:ヘリウム 40cm/秒
注入量:1μl
【0135】
次に、電子写真感光体について、電子写真特性を静電気帯電試験装置EPA−8100(川口電機製作所社製)を用いて測定した。スタティックモード、−6kVのコロナ放電を行い、初期表面電位(V),光照射(10Lux)5秒後の残留電位(初期残留電位(V)),半減露光量(E1/2)を測定した。また、市販のプリンター(FS−600、京セラ製)を改造し、感光体の表面電位を測定可能にし、前記感光体をドラム状に装着・評価可能とし、高温・高湿条件下(35℃、85%)で、トナー、紙は通さない条件で24時間繰返し運転前後の帯電特性(繰返し残留電位上昇(V上昇))の評価を行った。
これらの結果を表1に示し、後述する実施例2〜10Dおよび比較例1〜5についても同様の評価を行い、結果を表1に示す。
【0136】
〔実施例2〕
実施例1において、E−CFを製造例2のBisB−CF17mLに変更し、4,4’−ビフェノールを2,7−ジヒドロキシナフタレン1.4gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、PC−2を得た。
PC−2の還元粘度[ηsp/C]は1.16dl/gであり、構造は前記式(1)において、下記の繰り返し単位及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。また、得られたポリカーボネート共重合体中のジエチルカルバミン酸クロリドの残留量は、このポリカーボネート共重合体全質量基準で10質量ppmであることがわかった。
【0137】
【化21】

【0138】
n=1.99、Ar/(Ar+Ar)=0.33
【0139】
〔実施例3〕
実施例1において、E−CF(17mL)を製造例3のAP−CF(17mL)、4,4’−ビフェノールをレゾルシン0.9gに変更し、水酸化ナトリウム水溶液の量を13mLに変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、PC共重合体(PC−3)を製造した。
PC−3の還元粘度[ηsp/C]は1.16dl/gであり、構造は前記式(1)において、下記の繰り返し単位及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。また、得られたポリカーボネート共重合体中のジエチルカルバミン酸クロリドの残留量は、このポリカーボネート共重合体全質量基準で10質量ppmであることがわかった。
【0140】
【化22】

【0141】
n=1.93、Ar/(Ar+Ar)=0.34
【0142】
〔実施例4〕
実施例1において、4,4’−ビフェノールを9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン3.3g、水酸化ナトリウム水溶液を2Nの水酸化カリウム水溶液14mLに変更した。それ以外は、比較例1と同様にして、PC共重合体(PC−4)を製造した。
PC−4の還元粘度[ηsp/C]は1.15dl/gであり、構造は前記式(1)において、下記の繰り返し単位及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。また、得られたポリカーボネート共重合体中のジエチルカルバミン酸クロリドの残留量は、このポリカーボネート共重合体全質量基準で10質量ppmであることがわかった。
【0143】
【化23】

【0144】
n=2.15、Ar/(Ar+Ar)=0.32
【0145】
〔実施例5〕
実施例1において、4,4’−ビフェノールをビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン1.7g、水酸化ナトリウム水溶液の量を14mLに変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、PC共重合体(PC−5)を製造した。
PC−5の還元粘度[ηsp/C]は1.13dl/gであり、構造は前記式(1)において、下記の繰り返し単位及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。また、得られたポリカーボネート共重合体中のジエチルカルバミン酸クロリドの残留量は、このポリカーボネート共重合体全質量基準で10質量ppmであることがわかった。
【0146】
【化24】

【0147】
n=2.05、Ar/(Ar+Ar)=0.33
【0148】
〔実施例10A〕
実施例1において、塩化メチレンを投入するのと同時に、下記式(10A)で示すシロキサン変性フェノール0.1gを添加し、十分に混合されるように撹拌した。
この溶液に、別途調製したビフェノールモノマー溶液を全量添加し(モノマー溶液調製法:2Nの水酸化ナトリウム水溶液10mLを調製し、室温以下に冷却した後、酸化防止剤としてハイドロサルファイトを0.1g、4,4’−ビフェノール2.6gを添加し、完全に溶解して調製した)、反応器内の温度が15℃になるまで冷却した後、撹拌しながらトリエチルアミン水溶液(7vol%)を0.2mL添加し、1時間撹拌を継続した。
得られた反応混合物を塩化メチレン0.2L、水0.1Lで希釈し、洗浄を行った。下層を分離し、さらに水0.1Lで1回、0.03N塩酸0.1Lで1回、水0.1Lで5回の順で洗浄を行った。得られた塩化メチレン溶液を、撹拌下温水中に滴下投入し、塩化メチレンを蒸発させると共に樹脂固形分を得た。得られた析出物をろ過、乾燥することにより下記構造のポリカーボネート共重合体(PC−10A)を製造した。なお、PC共重合体(PC−10A)中の有機シロキサン変性フェニル基部分の質量割合は、PC共重合体全質量基準で2質量%である。また、下記式(10A)において、n=39である。
【0149】
【化25】

【0150】
PC−10Aの還元粘度[ηsp/C]は1.24dl/gであり、構造は前記式(1)において、下記の繰り返し単位及び組成からなるポリカーボネート共重合体であることが確認された。また、得られたポリカーボネート共重合体中のジエチルカルバミン酸クロリドの残留量は、このポリカーボネート共重合体全質量基準で5質量ppmであることがわかった。
【0151】
【化26】

【0152】
n=2.28、Ar/(Ar+Ar)=0.3
【0153】
〔実施例10B〕
実施例10Aにおいて、シロキサン変性ビスフェノールを下記式(10B)で示すシロキサン変性フェノール0.2gに変更した以外は実施例10Aと同様にして、PC共重合体(PC−10B)を製造した。なお、PC共重合体(PC−10B)中の有機シロキサン変性フェニル基部分の質量割合は、PC共重合体全質量基準で4質量%である。また、下記式(10B)において、n=90である。
【0154】
【化27】

【0155】
PC−10Bの還元粘度[ηsp/C]は1.24dl/gであり、構造は前記式(1)において、下記の繰り返し単位及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。また、得られたポリカーボネート共重合体中のジエチルカルバミン酸クロリドの残留量は、このポリカーボネート共重合体全質量基準で5質量ppmであることがわかった。
【0156】
【化28】

【0157】
n=2.28、Ar/(Ar+Ar)=0.31
【0158】
〔実施例10C〕
実施例10Aにおいて、シロキサン変性ビスフェノールを下記式(10C)で示すシロキサン変性フェノール0.25gに変更した以外は実施例10Aと同様にして、PC共重合体(PC−10C)を製造した。なお、PC共重合体(PC−10C)中の有機シロキサン変性フェニル基部分の質量割合は、PC共重合体全質量基準で5質量%である。また、下記式(10C)において、n=150である。
【0159】
【化29】

【0160】
PC−10Cの還元粘度[ηsp/C]は1.24dl/gであり、構造は前記式(1)において、下記の繰り返し単位及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。また、得られたポリカーボネート共重合体中のジエチルカルバミン酸クロリドの残留量は、このポリカーボネート共重合体全質量基準で5質量ppmであることがわかった。
【0161】
【化30】

【0162】
n=2.28、Ar/(Ar+Ar)=0.31
【0163】
〔実施例10D〕
実施例10Aにおいて、シロキサン変性ビスフェノールを下記式(10D)で示すシロキサン変性フェノール0.2gに変更した以外は実施例10Aと同様にして、PC共重合体(PC−10D)を製造した。なお、PC共重合体(PC−10D)中の有機シロキサン変性フェニル基部分の質量割合は、PC共重合体全質量基準で4質量%である。また、下記式(10D)において、n=60である。
【0164】
【化31】

【0165】
PC−10Dの還元粘度[ηsp/C]は1.24dl/gであり、構造は前記式(1)において、下記の繰り返し単位及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。また、得られたポリカーボネート共重合体中のジエチルカルバミン酸クロリドの残留量は、このポリカーボネート共重合体全質量基準で5質量ppmであることがわかった。
【0166】
【化32】



【0167】
n=2.28、Ar/(Ar+Ar)=0.31
【0168】
実施例10A〜10Dで得られたPC共重合体については、以下のように水の接触角とトナー付着性についてさらに評価した。
【0169】
(水の接触角の評価)
PC共重合体単独でフィルムを作製し、このフィルムを用いて超純水による接触角の測定を行った。
接触角の測定には、測定装置としてDM700(協和界面科学株式会社製)を用いた。
【0170】
(トナー付着性の評価)
上述したように、PC共重合体を用いて電子写真感光体を作製し、市販のプリンター(FS−600、京セラ(株)製)を用いて評価した。
具体的には、プリンターに電子写真感光体をドラム状に装着し、常温・常湿条件下(23℃、50%)で、1時間繰返し運転を行った。
そして、電子写真感光体の中央の一定範囲内(2cm×2cmの正方形)での付着状態を目視確認した。評価基準は、以下の通りである。
【0171】
(評価基準)
◎:電子写真感光体の評価範囲内にトナーの付着がない。
○:トナーの付着がわずかに有る。エアーを吹き付けることで除去できる。
×:トナーの付着が有る。エアーを吹き付けても除去ができない。
【0172】
〔比較例1〕
実施例1において、E−CF(17mL)を製造例4のA−CF(17mL)、PTBP量を0.045g、4,4’-ビフェノール量を1.4gに変更し、水酸化ナトリウム水溶液の量を10mLに変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、PC共重合体(PC−6)を製造した。
PC−6の還元粘度[ηsp/C]は1.13dl/gであり、構造は前記式(1)において、下記の繰り返し単位及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。また、得られたポリカーボネート共重合体中のジエチルカルバミン酸クロリドの残留量は、このポリカーボネート共重合体全質量基準で15質量ppmであることがわかった。
【0173】
【化33】

【0174】
n=2.30、Ar/(Ar+Ar)=0.30
【0175】
〔比較例2〕
特開平5−70582の実施例2に従い、GPCポリスチレン換算の質量平均分子量が6万であるPC共重合体(PC−7)を以下の通り製造した。
撹拌機、温度計を備えた反応容器に塩化メチレン625mLを加え、撹拌しながら、ビスフェノールAビスクロロ蟻酸エステル35.3gを加え溶解した。さらにこれにイオン交換水125mLを加えた後、十分撹拌しながら、3.5%の水酸化ナトリウム水溶液228.6gにビフェノール18.6gを溶解した液を20〜25℃において1時間で滴下した。滴下後、同温で撹拌を続け、4時間後に28%の水酸化ナトリウム水溶液14.3gを加えさらに5時間撹拌を続け、分子量が6万(GPC、ポリスチレン換算)となったところで、撹拌を停止し、静置した。
得られた反応液を氷水中に注入し、析出する結晶をろ取し、水洗、乾燥後、アセトンを用いて再結晶を行い、PC−7を得た。
PC−7の還元粘度[ηsp/C]は0.53dl/gであった。
【0176】
〔比較例3〕
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)(0.17kg)、4,4’−ビフェノール(0.03kg)を2Nの水酸化カリウム水溶液1.5L溶液と、塩化メチレン1.0kgとを混合して撹拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを1L/分の割合でpHが9以下になるまで吹き込んだ。次いで、この反応液を静置分離し、有機層に重合度が2〜6であり、分子末端にクロロホーメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。
次に、反応容器に、メカニカルスターラー、撹拌羽根、邪魔板を装着し、前記オリゴマー(26mL)に塩化メチレン(34mL)を添加した。これに末端停止剤としてPTBP(0.065g)を添加し、十分に混合されるように撹拌した。本溶液に、別途調製したビフェノールモノマー溶液を全量添加し(モノマー溶液調製法:2Nの水酸化ナトリウム水溶液15mLを調製し、室温以下に冷却した後、ハイドロサルファイトを0.02g、4,4’−ビフェノール1.2gを添加し、完全に溶解して調製した)、撹拌しながらトリエチルアミン水溶液(7vol%)を0.2mL添加し、引続き1時間撹拌を継続した。
得られた反応混合物を塩化メチレン0.2L、水0.1Lで希釈し、洗浄を行った。下層を分離し、さらに水0.1Lで1回、0.01N塩酸0.1Lで1回、水0.1Lで3回の順で洗浄を行った。得られた塩化メチレン溶液を、撹拌下メタノールに滴下投入し、得られた再沈物をろ過、乾燥する事によりPC共重合体(PC−8)を得た。
PC−8の還元粘度[ηsp/C]は1.10dl/gであった。また、本PC共重合体には、4,4’−ビフェノールに由来する繰り返し単位が、カーボネート結合を介して2以上連結した成分として存在することが確認された。
【0177】
〔比較例4〕
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン0.2kgを16重量%の水酸化カリウム水溶液1.2kgに溶解した溶液と、塩化メチレン1.3kgとを混合して撹拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを1L/分の割合でpHが9以下になるまで吹き込んだ。ついで、この反応液を静置分離し、有機層に重合度が2〜6であり、分子末端にクロロホーメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。
次に、反応容器に、メカニカルスターラー、撹拌羽根、邪魔板を装着し、前記オリゴマー(260mL)に塩化メチレン190mLを添加した。末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノール(0.40g)を添加し、十分に混合されるように撹拌した。本溶液に、別途調製した2N水酸化カリウム水溶液30mLを添加後、撹拌しながらトリエチルアミン水溶液(7vol%)を1mL添加した。10分後、別途調製したビフェノールモノマー溶液を全量添加し(モノマー溶液調製法:2Nの水酸化カリウム水溶液120mLを調製し、室温以下に冷却した後、ハイドロサルファイトを0.1g、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン17.3gを添加し、完全に溶解して調製した)、引続き1時間撹拌を継続した。
得られた反応混合物を塩化メチレン2L、水1Lで希釈し、洗浄を行った。下層を分離し、さらに水1Lで1回、0.01N塩酸1Lで1回、水1Lで3回の順で洗浄を行った。得られた塩化メチレン溶液を、撹拌下メタノールに滴下投入し、得られた再沈物をろ過、乾燥することにより、PC共重合体(PC−9)を得た。
PC−9の還元粘度[ηsp/C]は1.14dl/gであった。
【0178】
〔比較例5〕
実施例10Aで使用したビスフェノールEオリゴマー(E−CF)を製造例5で製造されたビスフェノールEオリゴマー(E−CF2)に変更した以外は、実施例10Aと同様にしてPC共重合体(PC−10)を製造した。なお、PC共重合体(PC−10)の構造及び還元粘度は、実施例10Aと同様である。また、得られたポリカーボネート共重合体中のジエチルカルバミン酸クロリドの残留量は、このポリカーボネート共重合体全質量基準で110質量ppmであることがわかった。
【0179】
〔評価結果〕
表1に実施例1〜5,10A〜10Dおよび比較例1〜5の評価結果を示す。実施例1〜5,10A〜10Dと、比較例1〜5を比較すると、実施例1〜5,10A〜10DのPC共重合体では、有機溶剤への安定な溶解性を保持し、かつ、耐摩耗性評価において質量減少量が小さいことから、耐摩耗性に優れることがわかった。また、実施例1〜5,10A〜10Dの電子写真感光体では、初期残留電位(V)の値が小さく、繰り返し残留電位(V上昇)も小さいことから、耐摩耗性、電気特性、及び帯電特性のすべてについて優れていることがわかった。
一方、比較例1、4の電子写真感光体では、耐摩耗性評価において質量減少量が大きく、耐摩耗性が悪ことがわかった。
また、比較例2、3のPC共重合体は溶解性が悪く、特に比較例2では溶解しなかった。また、比較例3では溶液が白濁し、電子写真感光体としても、初期残留電位(V)の値が小さく、繰り返し残留電位(V上昇)も小さいことから、電気特性および帯電特性が悪いことがわかった。
【0180】
また、実施例1〜5,10A〜10Dでは、ビスクロロホーメートの洗浄回数を多くしたため、PC共重合体中に不純物量がほとんど残らず、初期残留電位及び繰り返し残留電位が良好であった。しかし、比較例5では、ビスクロロホーメートの洗浄回数が少なかったため、PC共重合体中に不純物量が多く残り、初期残留電位及び繰り返し残留電位が悪くなることが分かった。
さらに、表2に示すように、実施例10A〜10Cでは、PC共重合体中に二価の有機シロキサン変性フェニレン基を有し、実施例10Dでは、PC共重合体中に一価の有機シロキサン変性フェニル基を有するため、有機シロキサン変性フェニル基を有しない実施例1よりも、水の接触角及びトナー付着性が向上することが分かった。
なお、表1中、「*不純物含有量」とは、ジエチルカルバミン酸クロリドの量を表す。
【0181】
【表1】

【0182】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明のPC共重合体は、電子写真感光体の感光層用バインダー樹脂として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)に記載の繰り返し単位からなる構造を有し、かつAr/(Ar+Ar)で表されるモル共重合組成が25モル%以上47モル%以下であることを特徴とするポリカーボネート共重合体。
【化1】


[式中Arは、下記式(2)で表される基であり、Arは、置換あるいは無置換のビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、あるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンから誘導される二価の基であり、nはArブロックの平均繰返し数で、1.09以上3.0以下の数を表す。]
【化2】


[式中、R1、R2は、水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリールオキシ基である。R1、R2は、一つの芳香環に複数の基が付加していてもよい。この場合、複数の基は同一でもよく、互いに異なる基であってもよい。Xは、CRで示される結合基であり、R3、R4は各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、トリフルオロメチル基または炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基である。ただし、RとRは同一ではない。]
【請求項2】
請求項1に記載のポリカーボネート共重合体であって、
Arとして、二価の有機シロキサン変性フェニレン基をさらに含むことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
【請求項3】
請求項2に記載のポリカーボネート共重合体であって、
二価の有機シロキサン変性フェニレン基は、下記式(2A)又は式(2B)で示される基である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
【化3】


(式(2A)中、R21およびR22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基を示す。
23は、各々独立に炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
n1は、2〜4の整数であり、n2は、1〜600の整数である。)
【化4】


(式(2B)中、R31は、各々独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である
32は各々独立に炭素数1〜6の置換若しくは無置換のアルキル基又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
33は、脂肪族不飽和結合を含まない同種又は異種の一価炭化水素基である。
34は、脂肪族不飽和結合を含まない同種又は異種の一価炭化水素基である。
Y及びY’は、炭素数2以上のアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン、又は酸素原子である。
naは0又は1、nbは1又は2、ncは1又は2である。ただし、na+nb+ncは3である。
n1〜n4は、それぞれ0以上の整数であり、n1、n2、n3及びn4の和は、2〜600の整数であり、n3及びn4の和は1以上の整数である。
aは、0または1〜4までの整数である。)
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体であって、連鎖末端が一価の芳香族基あるいは一価のフッ素含有脂肪族基により封止されたことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
【請求項5】
請求項4に記載のポリカーボネート共重合体であって、
連鎖末端の一価の芳香族基が一価の有機シロキサン変性フェニル基である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
【請求項6】
請求項5に記載のポリカーボネート共重合体であって、
一価の有機シロキサン変性フェニル基は、下記式(2C)で示される基である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
【化5】


(Zは炭素数2〜6の炭化水素基である。
41は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基である。
42〜R45は各々独立に水素、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
46〜R49は各々独立に炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリ
ール基である。
nは2〜600の数であり、分子量分布を持つ場合には平均繰返し単位数を示す。)
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体であって、下記式(3)に示されるビスクロロホーメートオリゴマーを原料とし、前記ビスクロロホーメートオリゴマーの平均量体数(n’)が1.0以上1.99以下である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
【化6】

【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体であって、
前記式(2)で示されるArが、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタンから選ばれた化合物から誘導される二価の基である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のポリカーボネート共重合体であって、
前記式(3)に示されるビスクロロホーメートオリゴマーを含む原料にアミド化合物が含まれている場合、
前記アミド化合物の含有量は、前記ビスクロロホーメートオリゴマーを含む原料に含まれる窒素原子の質量に基づいて求められ、溶媒を除く前記ビスクロロホーメートオリゴマーを含む原料の全質量基準で700質量ppm以下である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体であって、
当該ポリカーボネート共重合体にジアルキルカルバミン酸クロリドが含まれている場合、
前記ジアルキルカルバミン酸クロリドの含有量は、当該ポリカーボネート共重合体全質量基準で100質量ppm以下である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体と有機溶剤を含んでなる塗工液。
【請求項12】
導電性基板上に感光層を設けた電子写真感光体において、感光層の一成分として、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体を含有すること特徴とする電子写真感光体。

【公開番号】特開2011−26576(P2011−26576A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145604(P2010−145604)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】