説明

ポリカーボネート共重合体

【課題】耐熱性に優れ、吸水が低く、耐光性に優れた植物由来の構成単位を含むポリカーボネート共重合体を提供する。
【解決手段】下記式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位、及び下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート共重合体。


(但し、式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)


(Aは、単結合または置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状の2価の炭化水素基、又は、−O−、−S−、−CO−若しくは−SO−で示される2価の基である。X及びYは、ハロゲン原子又は炭素数1〜6の炭化水素基である。p及びqは、0又は1の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス資源であるデンプンなどの糖質から誘導することができる構成単位を含有する、耐熱性、成形性、及び機械的強度に優れ、かつ屈折率が小さく、アッベ数が大きいという優れた光学特性を有するポリカーボネート、該ポリカーボネートの製造方法、該ポリカーボネート又はその組成物からなる成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
植物由来モノマーとしてイソソルビドを使用し、炭酸ジフェニルとのエステル交換により、ポリカーボネートを得ることが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、得られたポリカーボネートは、吸水性が高いため寸法安定性などの問題より満足できるものではない。また、イソソルビドとビスフェノールAを共重合したポリカーボネートが提案されている。これらは、吸水率は比較的低いもののビスフェノールAが芳香族骨格を含むため光の吸収が起こりやすく、材料の着色が起こる可能性がある(特許文献2参照)。さらに、イソソルビドと脂環式ジオールとの共重合により、耐熱性を維持しながらアッベ数が大きいポリカーボネート共重合体が提案されている。(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】英国特許第1,079,686号明細書
【特許文献2】特開昭56―055425号公報
【特許文献3】国際公開第2004/111106号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従前知られていた前記式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有するポリカーボネート共重合体は、吸水率が高く、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有する共重合ポリカーボネートでは、その共重合比率が高くなると耐熱性が低下してしまう虞があり、ガラス転移温度が高いものでは加工が困難となる場合があった。また、芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有する共重合ポリカーボネートでは、耐候性が低下する虞があったため、特許文献1〜3に記載されているポリカーボネートでは、耐熱性、吸水性、耐候性の点では不十分なものであった。このため、高い耐熱性と低い吸水性とを維持しながら、耐候性に優れたポリカーボネートの開発が望まれている。本発明の目的は、上記従来の問題点を解消し、耐熱性に優れ、吸水性が低く、耐光性に優れた式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物構成単位を含むポリカーボネート共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含む、3種以上のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有するポリカーボネート共重合体を採用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位、及び下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート共重合体に存する。但し、式(1)中の酸素原子に水素原子は結合せず、Aは、単結合または置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状の2価の炭化水素基、又は、−O−、−S−、−CO−若しくは−SO−で示される2価の基であり、X及びYは、ハロゲン原
子又は炭素数1〜6の炭化水素基であって、p及びqは、0又は1の整数である。尚、XとY及びpとqは、それぞれ、同一でも相互に異なるものでもよい。
【0006】
【化1】

【0007】
そして、当該ポリカーボネート共重合体のガラス転移温度が100℃以上180℃未満であることが好ましく、JISK7209に準拠して測定される、23℃における24時間後の吸水率が0.8質量%以下であることが好ましい。
また、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の割合が20〜60%、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の割合が5%〜50%、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の割合が5〜50%であることが好ましく、ポリカーボネート共重合体の有するアルコール末端基数が5μmol/g以上150μmol/g以下であることが好ましく、含有する芳香族モノヒドロキシ化合物が5ppm以上1500ppm以下であることが好ましい。
【0008】
更に前記脂肪族ジヒドロキシ化合物が、5員環構造および6員環構造から選ばれる少なくとも1種の構造を含むことが好ましく、当該脂肪族ジヒドロキシ化合物は、シクロヘキサンジメタノール、およびトリシクロデカンジメタノールよりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物であることが好ましい。
【0009】
そして、前記式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物が、下記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物を含むことが好ましく、前期式(2)で表されるジヒドロキシ化合物が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンであることが好ましい。
【0010】
【化2】

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱性に優れ、吸水性が低く、しかも耐光性に優れた、前記式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物構成単位を含むポリカーボネート共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
本発明のポリカーボネート共重合体は、下記式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位、及び下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むものである。
【0013】
【化3】

【0014】
但し、式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。そして、構造式(2)中のAは、単結合または置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状の2価の炭化水素基、又は、−O−、−S−、−CO−若しくは−SO−で示される2価の基である。X及びYは、ハロゲン原子又は炭素数1〜6の炭化水素基である。p及びqは、0又は1の整数である。尚、XとY及びpとqは、それぞれ、同一でも相互に異なるものでもよい。
【0015】
本発明のポリカーボネート共重合体は、前記式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と、脂肪族ジヒドロキシ化合物と、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとをエステル交換させて得られるものである。以下、前記式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と、脂肪族ジヒドロキシ化合物と、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを纏めて「原料モノマー」と呼ぶ場合がある。また、本発明のポリエステルをエステル交換させてポリカーボネートを製造する工程を、ポリカーボネート製造工程と呼ぶ場合がある。
【0016】
<ポリカーボネート共重合体の共重合比率>
本発明のポリカーボネート共重合体において、前記式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率に特に制限は無く、任意の比率の共重合体とすることが可能であり、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を更に含むポリカーボネート共重合体であっても構わない。
前記式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の存在は、通常、ポリカーボネート共重合体のガラス転移温度を高くする傾向がある一方で、存在比率が大きすぎると吸水率が上がってしまう虞があるため、式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の、ジヒドロキシ化合物に由来する全構成単位の量に対する比率は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、特に好ましくは40モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは60モル%以下、特に好ましくは55モル%以下で用いられる。
【0017】
また、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の存在は、通常、ポリカーボネート共重合体の吸水率を低くする傾向がある一方で、存在比率が大きすぎるとガラス転移温度の低下を招く虞があるため、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の、ジヒドロキシ化合物に由来する全構成単位の量に対する比率は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、特に好ましくは20モル%以上であり、好ましくは50モル%以下、より好ましくは45モル%以下、特に好ましくは40モル%以下である。
【0018】
また、式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位は、通常、多すぎると耐光性が悪化してしまい、少なすぎるとガラス転移温度が低下してしまうため、式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の、ジヒドロキシ化合物に由来する
構成単位の全量に対する比率は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、特に好ましくは20モル%以上であり、好ましくは50モル%以下、より好ましくは45モル%以下、特に好ましくは40モル%以下である。
【0019】
<ポリカーボネート共重合体の物性>
ポリカーボネート共重合体の還元粘度が過度に低いと、レンズ等に成形した際の機械的強度が低下する傾向がある。また、ポリカーボネート共重合体の還元粘度が過度に大きいと、成形する際の流動性が低下し、サイクル特性を低下させ、成形品の複屈折率が大きくなり易い傾向があるため、本発明のポリカーボネート共重合体の重合度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート樹脂濃度を0.6g/dlに精密に調整し、温度20.0℃±0.1℃で測定した還元粘度(以下、単に「ポリカーボネート樹脂の還元粘度」と称す。)として、0.15dl/g以上が好ましく、更には0.15dl/g以上であって1.0dl/g以下であるような重合度であることが好ましく、特には0.25dl/g以上であって0.8dl/g以下の範囲内であることが好ましい。
【0020】
ポリカーボネート共重合体の還元粘度は、また、耐熱性が必要とされる成形体用途やレンズ用途などでは、ガラス転移温度は80℃以上180℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以上160℃以下であって、加工性が高くなるという点で125℃以下が望ましい。ガラス転移温度が低すぎる場合、一般用途として生活環境下において変形する恐れがあり、また、ガラス転移温度が高すぎる場合は一般的に射出成形の際に流動性が低く、射出成形温度が高くなり、製品の着色の原因となる虞がある。本発明のポリカーボネート共重合体のガラス転移温度は、ポリカーボネート共重合体の分子量を調整したり、構成単位の存在比率を変更したりすることで調整することが可能であって、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の存在量が多いとガラス転移温度が低下し、芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の存在量が多いとガラス転移温度を上げる傾向がある。
【0021】
さらに成形体用途などでは、一般に寸法安定性が望まれるため、成形体の吸水率を低くすることが好ましく、本発明のポリカーボネート共重合体でも吸水率が低いことが好ましい。本発明においてポリカーボネート共重合体の吸水率は、JISK7209に準拠して測定され、24時間23℃水中での吸水率が0.8質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.7質量%以下であり、更に好ましくは0.5%質量以下であって、特には0.4質量%以下であることが好ましい。吸水率が高すぎると高湿下における変形が起こりやすくなる。本発明のポリカーボネート共重合体の吸水率は、式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の存在比率を調整したり、末端封鎖剤などを用いてポリカーボネート共重合体の末端に存在するOH基の量を制御することにより低減することができる。
【0022】
また、耐光性や耐熱安定性を高めるため、本発明のポリカーボネート共重合体ではアルコール末端基量が5μmol/g以上150μmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは10μmol/g以上130μmol/g以下であって、更に好ましくは40μmol/g以上110μmol/g以下であって、特には60μmol/g以上100μmol/g以下が好ましい。アルコール末端基量は、重合反応において発生するフェノールを反応系外へ除去しながら高分子量化させたり、重合反応に用いる炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物のモル比を調整したりすることで調整することが可能である。
【0023】
<構成単位>
・式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物
本発明のポリカーボネートは、分子内に下記式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有するものである。但し、式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。
【0024】
【化4】

【0025】
この式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物としては、分子内に構造式(1)で表される構造を有していれば特に限定されるものではないが、具体的には、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等で例示されるような、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]ジフェニルメタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−1−フェニルエタン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,4−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,3−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]プロパン、2,2−ビス[(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−tert−ブチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−4−メチルペンタン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]オクタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]デカン、2,2−ビス[3−ブロモ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン等で例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)アルカン類、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロペンタン等で例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ−テル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル等で例示されるような、ジヒドロキシアルコキシジアリールエーテル類、4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルフィド、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スルフィド等で例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルフィド類、4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルホキシド、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スル
ホキシド等で例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホキシド類、4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルホン、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スルホン等で例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホン類、1,4−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,3−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,2−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,3−ビス[2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、1,3−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−5,7−ジメチルアダマンタン、下記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物、並びに下記式(4)および下記式(5)で表されるスピロ構造を有するジヒドロキシ化合物等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
【化5】

【0027】
これらの中でも特に、上記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される、無水糖アルコール類が好適である。より具体的に、上記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の中でもイソソルビドが最も好ましく、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
<脂肪族ジヒドロキシ化合物>
本発明で使用できる、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、脂肪族炭化水素にヒドロキシ基を2つ有するものであれば特に限定するものではなく、鎖式脂肪族炭化水素がヒドロキシ基を2つ有する鎖式脂肪族ジヒドロキシ化合物であっても、環式脂肪族炭化水素がヒドロキシ基を2つ有する脂環式ジヒドロキシ化合物であっても構わない。
【0029】
本発明に使用できる鎖式脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,
6−ヘキサンジオール等が挙げられる。これらの鎖式脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明に使用できる脂環式ジヒドロキシ化合物としては、飽和炭化水素基からなるジヒドロキシ化合物であれば特に制限されるものではなく、単環式でも縮合環式化合物であっても構わず、環の数にも特に制限は無い。また、それぞれの環を構成する炭素数にも特に制限は無いが、通常5員環構造又は6員環構造を含む化合物を用いることができる。また、6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環又は6員環構造であることにより、得られるポリカーボネートの耐熱性を高くすることができるため好ましい。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は、通常70以下であり、好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。この値が大きくなるほど、耐熱性が高くなるが、合成が困難になったり、精製が困難になったり、コストが高価だったりする。炭素原子数が小さくなるほど、精製しやすく、入手しやすくなる。
【0031】
本発明で使用できる5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、具体的には、下記一般式(II)又は(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げ
られる。

HOCH−R−CHOH(II)
HO−R−OH(III)
(式(II),(III)中、R,Rは、炭素数4〜20のシクロアルキレン基を示す。


上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIa)(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基または水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0032】
【化6】

【0033】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIb)(式中、nは0又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0034】
【化7】

【0035】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジメタノール又は、トリシクロテトラデカンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIc)(式中、mは0、又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノールなどが挙げられる。
【0036】
【化8】

【0037】
また、上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノールなどが挙げられる。
【0038】
【化9】

【0039】
一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,3−アダマンタンジメタノールなどが挙げられる。
【0040】
【化10】

【0041】
また、上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサン
ジオールは、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIIa)(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基または水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0042】
【化11】

【0043】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジオー
ル、ペンタシクロペンタデカンジオールとしては、一般式(III)において、Rが下記
一般式(IIIb)(式中、nは0又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0044】
【化12】

【0045】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジオール又は
、トリシクロテトラデカンジオールとしては、一般式(III)において、Rが下記一般
式(IIIc)(式中、mは0、又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。この
ようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジオール、1,5−デカリンジオール、2,3−デカリンジオールなどが用いられる。
【0046】
【化13】

【0047】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジオール
としては、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3−ノルボルナンジオール、2,5−ノルボルナンジオールなどが用いられる。
【0048】
【化14】

【0049】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジオールと
しては、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては具体的には、1,3−アダマンタンジオールなどが用いられる。
【0050】
【化15】

【0051】
上述した脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例のうち、特に、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類、アダマンタンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類が好ましく、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。これら脂環式ジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
更に、本発明に使用する脂肪族ジヒドロキシ化合物は、鎖式脂肪族ジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物を、2種以上を併用してもよい。
【0052】
<式(2)で表されるジヒドロキシ化合物>
前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、より具体的には2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAの化合物名である)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテルがあげられる。
【0053】
<炭酸ジエステル>
本発明のポリカーボネート共重合体に用いられる炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートに代表される置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、特に好ましくはジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが
あげられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
炭酸ジエステルは、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.90〜1.20のモル比率で用いることが好ましく、より好ましくは0.90〜1.10のモル比率で用い、さらに好ましくは、0.95〜1.10のモル比率で用い、特に好ましくは0.96〜1.04のモル比率で用いる。このモル比が0.90より小さくなると、製造されたポリカーボネートの末端OH基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化したり、所望する高分子量体が得られなかったりする。また、このモル比が1.20より大きくなると、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下したり、所望とする分子量のポリカーボネートの製造が困難となったりするばかりか、製造されたポリカーボネート共重合体中の残存炭酸ジエステル量が増加し、この残存炭酸ジエステルが、成形時、又は成形品の臭気の原因となることもある。
【0055】
<ポリカーボネート製造工程>
本発明に係るポリカーボネートは、前記式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と、脂肪族ジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとをエステル交換させて得られるものであるこのエステル交換させてポリカーボネートを製造する工程を、ポリカーボネート製造工程という。
【0056】
ポリカーボネート製造工程では、エステル交換反応を効率よく進めるため、重合触媒(エステル交換触媒)を用いることが好ましい。ここで重合触媒としては、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用される。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
【0057】
重合触媒として用いられるアルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられる。
【0058】
また、アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。なお、本明細書において、「アルカリ金属」及び「アルカリ土類金属」という用語を、それぞれ、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における「第1
族金属」及び「第2族金属」と同義として用いる。
【0059】
これらのアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
またアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と併用される塩基性ホウ素化合物の具体例としては、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
【0060】
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。 塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0061】
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
【0062】
これらの塩基性化合物も1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
上記重合触媒としてアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いる場合、その使用量は、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物1モルに対して、金属換算量として、通常0.1μモル〜25μモル、好ましくは0.5μモル〜20μモル、さらに好ましくは0.7μモル〜15μモルの範囲内である。重合触媒の使用量が少なすぎると、所望の分子量のポリカーボネートを製造するのに必要な重合活性が得られず、一方、重合触媒の使用量が多すぎると、得られるポリカーボネートの色相が悪化し、副生成物が発生したりして流動性の低下やゲルの発生が多くなり、目標とする品質のポリカーボネートの製造が困難になる。
【0063】
本発明において、前記ジヒドロキシ化合物、例えば前記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物は、固体として供給してもよいし、加熱して溶融状態として供給してもよいし、水溶液として供給してもよい。
一方、脂環式ジヒドロキシ化合物や他のジヒドロキシ化合物も、固体として供給してもよいし、加熱して溶融状態として供給してもよいし、水に可溶なものであれば、水溶液として供給してもよい。
【0064】
これらの原料ジヒドロキシ化合物を溶融状態や、水溶液で供給すると、工業的に製造する際、計量や搬送がしやすいという利点がある。
本発明において、前記ジヒドロキシ化合物、例えば前記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物と必要に応じて用いられる他のジヒドロキシ化合物とを重合触媒の存在下で炭酸ジエステルと反応させる方法は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。具体的には、第1段目の反応は140〜220℃、好ましくは150〜200℃の温度で0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間実施される。第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げながら反応温度を上げていき、同時に発生するフェノールを反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力が200Pa以下で、210〜280℃の温度範囲のもとで重縮合反応を行う。
【0065】
この重縮合反応における減圧において、温度と反応系内の圧力のバランスを制御することが重要である。特に、温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を狂わせ、重合度が低下することがある。例えば、ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドと1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いる場合は、イソソルビドに対し、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比率が大きい場合は、1,4−シクロヘキサンジメタノールがモノマーのまま留出しやすくなるので、反応系内の圧力が13kPa程度の減圧下で、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させながら反応させ、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させ、最終的に200Pa以下の圧力で、200℃〜250℃の温度で重縮合反応を行うと、十分に重合度が上昇したポリカーボネートが得られるため、好ましい。
【0066】
また、同様に、イソソルビドに対し、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比率が小さい場合、特に、1,4−シクロヘキサンジメタノールモル比率が、イソソルビドと1,4−シクロヘキサンジメタノールの合計量に対して30モル%以下となった場合は、重合中に急激な粘度上昇が起こる場合があるので、例えば、反応系内の圧力が13kPa程度の減圧下までは、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させながら反応させ、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、温度を1時間あたり40℃以上の昇温速度、好ましくは1時間あたり50℃以上の昇温速度で上昇させながら反応させ、最終的に200Pa以下の減圧下、220℃〜290℃の温度で重縮合反応を行うと、十分に重合度が上昇したポリカーボネートが得られるため、好ましい。
【0067】
反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
本発明の方法において、ポリカーボネートを溶融重合法で製造する際に、着色を防止する目的で、リン酸化合物や亜リン酸化合物又はこれらの金属塩を重合時に添加することができる。
【0068】
リン酸化合物としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸トリアルキルの1種又は2種以上が好適に用いられる。これらは、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することがより好ましい。リン化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
【0069】
亜リン酸化合物を添加する場合は、下記に示す熱安定剤を任意に選択して使用できる。特に、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチル0フェニル)ホスファ
イト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトの1種又は2種以上が好適に使用できる。これらの亜リン酸化合物は、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが好ましい。亜リン酸化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
【0070】
リン酸化合物と亜リン酸化合物又はこれらの金属塩は併用して添加することができるが、その場合の添加量はリン酸化合物と亜リン酸化合物又はこれらの金属塩の総量で、先に記載した、全ジヒドロキシ化合物に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下とすることが好ましく、0.0003モル%以上0.003モル%以下とすることがより好ましい。この添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
なお、リン酸化合物、亜リン酸化合物の金属塩としては、これらのアルカリ金属塩や亜鉛塩が好ましく、特に好ましくは亜鉛塩である。また、このリン酸亜鉛塩の中でも、長鎖アルキルリン酸亜鉛塩が好ましい。
【0071】
本発明に係るポリカーボネート共重合体は、不可避的に残存する量として分析上存在が確認される程度の芳香族モノヒドロキシ化合物が含有されている。そして本発明においては、炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物を、ポリカーボネートに対して1500ppm以下含有することが好ましく、含有量が1300ppm以下であることがさらに好ましく、含有量が1100ppm以下であることが特に好ましい。通常、芳香族モノヒドロキシ化合物は低沸点の化合物が多いため、重合中および/または重合後のポリカーボネートを減圧下で加熱したり、更に攪拌したり、攪拌方法をより比表面積が大きくなるようにするなどして低くすることが可能となるが、その工程中で分解物が生成したり、他の着色成分の生成を促進したり、他の着色成分の生成を阻害したりするなどの理由により、ポリマーの着色の程度に影響を及ぼす場合があることから、100ppm以上含有することが好ましく、250ppm以上含有することがより好ましい。
【0072】
ここで、炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物とは、ポリカーボネートに添加されてもよい添加物、例えば、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤とは異なることを意味している。
炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、フェノール、クレゾール、t−ブチルフェノールフェノール、o−n−ブチルフェノール、m−n−ブチルフェノール、p−n−ブチルフェノール、o−イソブチルフェノール、m−イソブチルフェノール、p−イソブチルフェノール、o−t−ブチルフェノール、m−t−ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、o−n−ペンチルフェノール、m−n−ペンチルフェノール、p−n−ペンチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、3,5−ジ−t−ブチルフェノールなどが挙げられる。
【0073】
ポリカーボネートが含有する、炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量を1500ppm以下に調整する方法は、特に限定されないが、通常、以下の方法が挙げられる。
例えば、重縮合反応においてジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの仕込み比率を1に近づける、重縮合反応を増大させる、重縮合反応が行われる反応器外に効率的に上記芳香族モノヒドロキシ化合物を排出する、重縮合反応の後半において横型反応器を用いて高
粘度の反応液に所定の剪断力を与えながら脱気する、注水脱揮操作により水と上記芳香族モノヒドロキシ化合物を共沸させる等が挙げられる。
【0074】
本発明で使用するポリカーボネート共重合体において、炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が過度に多いと、色調と透明性が損なわれ、例えば、光学材料としては不適当な材料となる傾向がある。また、耐熱性が低下し、経時的に色調が悪化する傾向がある。
<添加剤>
また、このようにして製造されたポリカーボネートには、成形時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。
【0075】
かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びベンゼンホスホン酸ジメチル等が好ましく使用される。
【0076】
これらの熱安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
かかる熱安定剤は、溶融重合時に添加した添加量に加えて更に追加で配合することができる。即ち、適当量の亜リン酸化合物やリン酸化合物を配合して、ポリカーボネートを得た後に、後に記載する配合方法で、さらに亜リン酸化合物を配合すると、重合時のヘイズの上昇、着色、及び耐熱性の低下を回避して、さらに多くの熱安定剤を配合でき、色相の悪化の防止が可能となる。
【0077】
これらの熱安定剤の配合量は、ポリカーボネートを100重量部とした場合、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.2重量部が更に好ましい。
また、本発明のポリカーボネートには、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を配合することもできる。
【0078】
かかる酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー
ト]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0079】
これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
これら酸化防止剤の配合量は、ポリカーボネートを100重量部とした場合、0.0001〜0.5重量部が好ましい。
また、本発明のポリカーボネートには、溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤を配合することも可能である。
【0080】
かかる離型剤としては、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィンワックス、蜜蝋、オレフィン系ワックス、カルボキシ基及び/又はカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価又は多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルが好ましい。かかる一価又は多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。
【0081】
なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ベヘニン酸ベヘニル等が好ましく用いられる。
高級脂肪酸としては、炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸が好ましい。かかる脂肪酸としては、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等が挙げられる。
【0082】
これらの離型剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
かかる離型剤の配合量は、ポリカーボネートを100重量部とした場合、0.01〜5重量部が好ましい。
また、本発明のポリカーボネートには、本発明の目的を損なわない範囲で、光安定剤を配合することができる。
【0083】
かかる光安定剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシ
フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。
【0084】
これらの光安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。かかる光安定剤の配合量は、ポリカーボネートを100重量部とした場合、0.01〜2重量部が好ましい。
また、本発明のポリカーボネートには、重合体や紫外線吸収剤に基づくレンズの黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としては、ポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
【0085】
具体的なブルーイング剤としては、例えば、一般名SolventViolet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725]、一般名SolventViolet31[CA.No68210、一般名SolventViolet33[CA.No60725]、一般名SolventBlue94[CA.No61500]、一般名SolventViolet36[CA.No68210]、一般名SolventBlue97[バイエル社製「マクロレックスバイオレットRR」]及び一般名SolventBlue45[CA.No61110]が代表例として挙げられる。
【0086】
これらのブルーイング剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。これらブルーイング剤は、通常、ポリカーボネートを100重量部とした場合、0.1×10−4〜2×10−4重量部の割合で配合される。
本発明のポリカーボネートと上述のような各種の添加剤との配合は、例えば、タンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法、あるいは上記各成分を、例えば塩化メチレンなどの共通の良溶媒に溶解させた状態で混合する溶液ブレンド方法などがあるが、これは特に限定されるものではなく、通常用いられるポリマーブレンド方法であればどのような方法を用いてもよい。
【0087】
こうして得られるポリカーボネート共重合体或いは、これに各種添加剤や他の樹脂を配合してなるポリカーボネートの組成物は、そのまま、又は溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で諸種の成形物、例えば、フィルムやシート、ボトルや容器;カメラレンズ、ファインダーレンズ、CCDやCMOS用レンズなどのレンズ;液晶やプラズマディスプレイなどに利用される位相差フィルム、拡散シート、偏光フィルムなどの光学用フィルム;光ディスク、光導波路等の他の光学材料や光学部品とすることができる。
【0088】
ポリカーボネート共重合体組成物の混和性を高めて安定した離型性や各物性を得るためには、溶融押出において単軸押出機、二軸押出機を使用するのが好ましい。単軸押出機、二軸押出機を用いる方法は、溶剤等を用いることがなく、環境への負荷が小さく、生産性の点からも好適に用いることができる。
押出機の溶融混練温度は、ポリカーボネート共重合体のガラス転移温度に依存する。ポリカーボネート共重合体のガラス転移温度が90℃より低い場合は、押出機の溶融混練温度は通常130℃〜250℃、好ましくは150℃〜240℃である。溶融混練温度が130℃より低い温度であると、ポリカーボネート共重合体の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。250℃より高いと、ポリカーボネート共重合体の溶融粘度が低くなることでペレットを得にくくなり、生産性が低下する。
【0089】
また、ポリカーボネート共重合体のガラス転移温度が90℃以上の場合は、押出機の溶融混練温度は通常200℃〜300℃、好ましくは220℃〜260℃である。溶融混練温度が200℃より低い温度であると、ポリカーボネートの溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネートの劣化が起こりやすくなり、ポリカーボネートの色が黄変したり、分子量が低下するため強度が劣化したりする。
【0090】
押出機を使用する場合、押出時にポリカーボネート共重合体の焼け、異物の混入を防止するため、フィルターを設置することが望ましい。フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、求められる光学的な精度に依存するが、100μm以下が好ましい。特に、異物の混入を嫌う場合は、40μm以下、さらには20μm以下、さらに異物をきらう場合は10μm以下が好ましい。
【0091】
ポリカーボネート共重合体組成物の押出は、押出後の異物混入を防止するために、クリーンルーム中で実施することが望ましい。
また、押出されたポリカーボネート共重合体組成物を冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが望ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの大きさ(目開き)は種々あるが、目開き10μm〜0.45μmのものが好ましい。
【0092】
ポリカーボネート共重合体を用いたレンズの成形には、射出成形機や、射出圧縮成形機が適合し、この際の成形条件としては、特に金型表面温度と樹脂温度が重要である。これらの成形条件は、ポリカーボネート共重合体の組成及び重合度などにより一概に規定できないが、金型表面温度は30℃以上170℃以下が好ましく、また、この時の樹脂温度は220℃以上290℃以下となるようにするのがよい。金型表面温度が30℃以下の場合には、樹脂の流動性と転写性が共に悪く、射出成形時に応力歪が残って、複屈折率が大きくなる傾向があり、また、金型温度が170℃以上の場合、転写性は良いが、離型時に変形し易い。また、樹脂温度が290℃以上の場合は樹脂の分解が起こり易く、成形品の強度低下、着色の原因となる。また、成形サイクルも延びるので経済的でない。
【0093】
ポリカーボネート共重合体から光学材料、光学部品を成形する場合には、原料の投入工程を始め、重合工程、得られた共重合体を冷媒中に押し出してペレット状又はシート状にする工程では、塵埃等が入り込まないように留意して行う事が望まれる。このクリーン度は、通常コンパクトディスク用の場合にはクラス1000以下であり、更に高度な情報記録用の場合にはクラス100以下である。
【0094】
光学用フィルムとしては、例えば、液晶ディスプレイに代表されるような位相差フィルム、視野角拡大フィルム、偏光子保護フィルム、プリズムシート、拡散シート、反射シート、表面反射防止フィルム等の部材用フィルム・シートや製造工程内で使用される剥離フィルムや保護フィルム等を挙げることができる。
本発明のポリカーボネート共重合体を用いた光学用フィルムの成形方法は、特に限定されるものではなく、それ自体公知の成形方法を用いることができる。例えば、Tダイ成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、流延法、熱プレス法等を挙げることができるが、好ましくは、Tダイ成形法、インフレーション成形法及び流延法が挙げられる。
【0095】
例えば、位相差フィルムとして使用する場合、製膜されたフィルム厚みは、通常10μm〜200μmであり、好ましくは30μm〜150μmである。また、製膜されたフィ
ルムの位相差値は、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下である。フィルムの位相差値がこれ以上大きいと、延伸して位相差フィルムとした際に位相差値のフィルム面内バラツキが大きくなる傾向がある。
【0096】
一方、延伸方法も公知の縦、横どちらか一方の一軸延伸、縦横にそれぞれ延伸する二軸延伸等の延伸方法を用いることができる。また、特開平5−157911号公報に示されるような特殊な二軸延伸を施し、フィルムの三次元での屈折率を制御することも可能である。位相差フィルム作製の延伸条件としては、フィルム原料のガラス転移温度の−20℃〜+40℃の範囲で行うことが好ましい。より好ましくは、フィルム原料のガラス転移温度の−10℃〜+20℃の範囲である。この延伸濃度がガラス転移温度−20℃より低いと、延伸フィルムの位相差が大きくなり易く、所望の位相差を得るためには延伸倍率を低くしなければならず、フィルム面内の位相差のばらつきが大きくなりやすい。一方、ガラス転移温度+40℃以上では、得られるフィルムの位相差が小さくなり、所望の位相差を得るための延伸倍率を大きくしなければならず適正な延伸条件幅が狭くなってしまう。
【0097】
フィルムの延伸倍率は目的とする位相差値により決められるが、縦一軸延伸の場合、通常1.05〜4倍、好ましくは1.1〜3倍である。延伸したフィルムはそのまま室温で冷却してもよいが、ガラス転移温度の−20℃〜+40℃の温度雰囲気に少なくとも10秒間以上、好ましくは1分以上、更に好ましくは10分〜60分保持してヒートセットし、その後室温まで冷却することが好ましく、これにより安定した位相差特性と波長分散特性を有する位相差フィルムが得られる。
【0098】
本発明のポリカーボネート共重合体を位相差フィルムに用いた場合、例えばSTN液晶表示装置の色補償用に用いる場合は、その位相差値は、一般的には、400nm〜2000nmまでの範囲で選択される。
また、前記位相差フィルムを、例えば1/2波長板として用いる場合は、その位相差値は、200nm〜400nmの範囲で選択される。
【0099】
また、前記位相差フィルムを、例えば1/4波長板として用いる場合は、その位相差値は、90nm〜200nmまでの範囲で選択される。1/4波長板としてのより好ましい位相差値は、100nm〜180nmまでである。
前記位相差板として用いる場合は、本発明の位相差フィルムを単独で用いることもできるし、2枚以上を組合せて用いることもでき、他のフィルム等と組合せて用いることもできる。
【0100】
本発明のポリカーボネート共重合体を用いた位相差フィルムは、公知のヨウ素系あるいは染料系の偏光板と粘着剤を介して積層貼合することができる。積層する際、用途によって偏光板の偏光軸と位相差フィルムの遅相軸とを、特定の角度に保って積層することが必要である。
本発明のポリカーボネート共重合体を用いた位相差フィルムを、例えば1/4波長板とし、これを偏光板と積層貼合して円偏光板として用いることができる。その場合、一般には、偏光板の偏光軸と位相差フィルムの遅相軸は実質的に45°の相対角度を保ち積層される。
【0101】
また、本発明のポリカーボネート共重合体を用いた位相差フィルムを、例えば偏光板を構成する偏光保護フィルムとして用いて積層してもかまわない。更に、本発明の位相差フィルムを、例えばSTN液晶表示装置の色補償板とし、これを偏光板と積層貼合することにより楕円偏光板として用いることもできる。
上記のとおり、本発明のポリカーボネート共重合体を用いた光学用フィルム、例えば位相差フィルムは、液晶やプラズマディスプレイ等の表示装置に好適に用いることができる
。これら表示装置の製造は、それ自体既知の方法で行うことができる。
【0102】
本発明のポリカーボネート共重合体は、例えば、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミドなどの縮重合タイプの合成樹脂、ポリエチレン、ポリプロピエレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなどの付加重合タイプの合成樹脂、アモルファスポリオレフィン、ABS、ASなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、ゴムなどの1種又は2種以上と混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。これらポリマーアロイも本発明における共重合体の組成物として用いることができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。以下において、ポリカーボネート共重合体の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
・還元粘度(ηsp/C)
共重合ポリカーボネートの0.6g/dlの塩化メチレン溶液を調製し、ウベローデ粘度計を使用し、20℃における溶媒の通過時間t0、溶液の通過時間tから、下記式より相対粘度ηrelを求め、
ηrel=t/t0(g・cm−1・sec−1
相対粘度ηrelから、下記式より比粘度ηspを求めた。
【0104】
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1
比粘度ηspを濃度c(g/dl)で割って、下記式より還元粘度(換算粘度)ηredを求めた。
ηred=ηsp/c
この数値が高いほど分子量が大きい。
【0105】
・アルコール末端基濃度
ポリカーボネート共重合体0.1gを塩化メチレン10mlに溶解し、これに酢酸(和光純薬、試薬特級)の5%塩化メチレン溶液5mlと四塩化チタン(和光純薬、試薬特級)の2.5%塩化メチレン溶液10mlを加えて発色させ、分光光度計(日立(株)製「UV160型」)を使用し、546nmの波長での吸光度を測定した。別に、樹脂製造時に使用した二価フェノールの塩化メチレン溶液を使用して吸光係数を求め、サンプル中のアルコール末端基濃度を定量した。
【0106】
・フェノール量
ポリカーボネート共重合体をクロロホルムに溶解した後、さらにメタノールを添加する再沈殿処理を行った。その上澄みを遠心分離後、フィルターろ過した後に、下記測定条件のHPLCにてフェノール定量を実施し、フェノール量を算出した。
○HPLC定量条件
装置:アジレントテクノロジー社(株)アジレント1100
分析カラム:関東化学(株)マイティシルRP−18
溶離液:0.2%酢酸水溶液/メタノールグラジエント
検出波長:280nm
カラム槽温度:40℃
【0107】
・ガラス転移温度(Tig)
示差走査熱量計(メトラー社製「DSC822」)を用いて、試料約10mgを10℃/minの昇温速度で加熱して測定し、JISK7121(1987)に準拠して、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配
が最大になるような点で引いた折線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度Tigを求めた。
【0108】
・耐候性評価(ΔYI)
ポリカーボネートペレットを、当該ポリカーボネートのガラス転移温度(Tig)−10℃の温度で7時間乾燥し、射出成形機J100SS−2(日本製鋼所製)を用いて、バレル温度230℃、金型温度80℃の条件下にて成形した厚み3mm、一辺60mm角のプレートを成形し、カラーテスター(スガ試験機株式会社製SC−1−CH)により測定された黄色度(YI)をYIとした。
試験片をメタリングウェザーメーター(スガ試験機株式会社製M6T)を使用し、放射照度1.5kW/m2,槽内温度63℃,湿度50%にて20時間の照射処理を実施した。前記と同様にカラーテスター(スガ試験機株式会社製SC−1−CH)により測定された黄色度(YI)をYIとし、耐光性評価の値(ΔYI)を
ΔYI=YI−YI
として示した。
【0109】
・吸水率
ポリカーボネートペレットを、当該ポリカーボネートのガラス転移温度(Tig)−10℃の温度で7時間乾燥し、射出成形機J100SS−2(日本製鋼所製)を用いて、バレル温度230℃、金型温度80℃の条件下にて成形した厚み3mm、一辺60mm角のプレートを予め80℃で24時間乾燥させた。このプレートを23℃の水中に浸し、24時間後の重量を測定する以外は、JISK7209に準拠して、吸水率を下記式(A)により計算した。
【0110】
吸水率=(W−W)/W0×100(A)
:吸水前のプレート重量(mg)、W=吸水後のプレート重量(mg)
<イソソルビドの蒸留>
ここで、ポリカーボネート共重合体の製造に用いたイソソルビドの蒸留方法は次の通りである。
【0111】
イソソルビドを蒸留容器に投入した後、徐々に減圧を開始後、加温を行い、内温約100℃で溶解した。その後、内温160℃にて溜出を開始した。このときの圧力は133〜266Paであった。初溜を取った後、内温160〜170℃、塔頂温度150〜157℃、133Paで蒸留を実施した。蒸留終了後、アルゴンを入れ、常圧に戻した。得られた蒸留品をアルゴン気流下で冷却粉砕し、蒸留精製したイソソルビドを得た。このものは、アルミラミネート袋に窒素気流下で、エージレス(三菱ガス化学社製)を同封して室温にてシール保管した。
【0112】
〔実施例1〕
蒸留したイソソルビド2836g、シクロヘキサンジメタノール(以下「CHDM」と略記することがある)1399g、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「BPA」と略記することがある)2215g、ジフェニルカーボネート8398g、及び触媒として、6.14×10−6mol/mlに調整した炭酸セシウム水溶液1
.58mlを反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。
【0113】
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分間で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を190℃で15分間保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を
240℃まで、30分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分間で0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。所定の撹拌トルクに到達後、反応を停止し、重合機出口より溶融状態のポリカーボネート共重合体を抜出した。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度、ガラス転移温度(Tig)、吸水率、耐光性評価結果、フェノール量、アルコール末端基濃度を表1に示す。
【0114】
〔実施例2〕
実施例1において用いた、イソソルビドを2899g、CHDMを1717g、BPAを1812g、ジフェニルカーボネートを8586g、及び炭酸セシウム水溶液を1.62mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を製造した。
得られたポリカーボネート共重合体の各種物性を実施例1と同様にして表1に示す。
【0115】
〔実施例3〕
実施例1において用いた、イソソルビドを2776g、CHDMを1096g、BPAを2601g、ジフェニルカーボネートを8218g、及び炭酸セシウム水溶液を1.55mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を製造した。
得られたポリカーボネート共重合体の各種物性を実施例1と同様にして表1に示す。
【0116】
〔実施例4〕
実施例1において用いた、イソソルビドを2223g、CHDMを1645g、BPAを2604g、ジフェニルカーボネートを8218g、及び炭酸セシウム水溶液を1.55mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を製造した。
得られたポリカーボネート共重合体の各種物性を実施例1と同様にして表1に示す。
【0117】
〔実施例5〕
実施例1において用いた、イソソルビドを2322g、CHDMを2291g、BPAを1813g、ジフェニルカーボネートを8595g、及び炭酸セシウム水溶液を1.62mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を製造した。
得られたポリカーボネート共重合体の各種物性を実施例1と同様にして表1に示す。
【0118】
〔実施例6〕
実施例1において用いた、イソソルビドを2662g、CHDMを523g、BPAを3326g、ジフェニルカーボネートを7881g、及び炭酸セシウム水溶液を1.78mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を製造した。
得られたポリカーボネート共重合体の各種物性を実施例1と同様にして表1に示す。
【0119】
〔実施例7〕
実施例1において用いた、イソソルビドを2557g、CHDMを1009g、BPAを2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン2985g、ジフェニルカー
ボネートを7570g、及び炭酸セシウム水溶液を2.85mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を製造した。
得られたポリカーボネート共重合体の各種物性を実施例1と同様にして表1に示す。
【0120】
〔実施例8〕
実施例1において用いた、イソソルビドを2514g、CHDMを992g、BPAを1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン3059g、ジフェニルカー
ボネートを7444g、及び炭酸セシウム水溶液2.80mlに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を製造した。
得られたポリカーボネート共重合体の各種物性を実施例1と同様にして表1に示す。
【0121】
〔実施例9〕
実施例1において用いた、イソソルビドを986g、CHDMを973g、BPAを4623g、ジフェニルカーボネート7302g、及び触媒として、6.14×10−6mol/mlに調整した炭酸セシウム水溶液1.37mlに変更した以外は、同様に実施し
た。
得られたポリカーボネート共重合体の各種物性を実施例1と同様にして表1に示す。
【0122】
〔実施例10〕
実施例1において、イソソルビド1164g、CHDM3444g、BPA1817g、ジフェニルカーボネート8612g、及び触媒として、6.14×10−6mol/m
lに調整した炭酸セシウム水溶液1.62mlに変更した以外は、同様に実施した。
得られたポリカーボネート共重合体の各種物性を実施例1と同様にして表1に示す。
【0123】
〔実施例11〕
実施例1において、イソソルビド836g、CHDM3023g、BPA2610g、ジフェニルカーボネート8247g、及び触媒として、6.14×10−6mol/ml
に調整した炭酸セシウム水溶液2.79mlに変更した以外は、同様に実施した。
得られたポリカーボネート共重合体の各種物性を実施例1と同様にして表1に示す。
【0124】
〔比較例1〕
実施例1において用いた、イソソルビドを6333g、ジフェニルカーボネートを9376g、及び炭酸セシウム水溶液を1.76mlに変更して、CHDMを用いなかった以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を製造した。
得られたポリカーボネート共重合体の各種物性を実施例1と同様にして表1に示す。
【0125】
〔比較例2〕
実施例1において用いた、イソソルビドを4448g、CHDMを1881g、ジフェニルカーボネートを9408g、及び炭酸セシウムを水溶液1.77mlに変更して、BPAを用いなかった以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を製造した。
得られたポリカーボネート共重合体の各種物性を実施例1と同様にして表1に示す。
【0126】
〔比較例3〕
実施例1において用いた、イソソルビドを3185g、CHDMを3142g、ジフェニルカーボネートを9492g、及び炭酸セシウム水溶液を1.77mlに変更して、BPAを用いなかった以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を製造した。
得られたポリカーボネート共重合体の各種物性を実施例1と同様にして表1に示す。
【0127】
〔比較例4〕
実施例1において用いた、イソソルビドを1969g、BPAを4615g、ジフェニルカーボネートを7289g、及び炭酸セシウム水溶液を3.84mlに変更して、CHDMを用いなかった以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を製造した。
得られたポリカーボネート共重合体の各種物性を実施例1と同様にして表1に示す。
【0128】
【表1】

【0129】
この結果から分かるように、本発明のポリカーボネート共重合体は、いずれも吸水率が低い値を示すという点で優れるものであり、加えて耐候性の観点でも着色が少なく優れるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位、及び下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート共重合体。
【化1】

(但し、式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【化2】

(Aは、単結合または置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状の2価の炭化水素基、又は、−O−、−S−、−CO−若しくは−SO−で示される2価の基である。X及びYは、ハロゲン原子又は炭素数1〜6の炭化水素基である。p及びqは、0又は1の整数である。尚、XとY及びpとqは、それぞれ、同一でも相互に異なるものでもよい。)
【請求項2】
ガラス転移温度が80℃以上180℃以下である請求項1に記載のポリカーボネート共
重合体。
【請求項3】
前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の割合が20〜60モル%、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の割合が5〜60モル%、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の割合が5〜60モル%である、請求項1または請求項2に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項4】
アルコール末端基数が5μmol/g以上150μmol/g以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項5】
芳香族モノヒドロキシ化合物を5ppm以上1500ppm以下含有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項6】
前記脂肪族ジヒドロキシ化合物が、5員環構造および6員環構造から選ばれる少なくとも1種の構造を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項7】
前記脂肪族ジヒドロキシ化合物が、シクロヘキサンジメタノールおよびトリシクロデカンジメタノールよりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項8】
前記式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物が、下記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物を含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体。
【化3】

【請求項9】
前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体。

【公開番号】特開2011−127108(P2011−127108A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258073(P2010−258073)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】