説明

ポリグルタミン酸の制御された合成

本明細書中において、ポリグルタミン酸を得るためのプロセスが開示される。本明細書中に開示されるプロセスは、所望される重量平均分子量を有するポリグルタミン酸を得るための制御されたプロセスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は米国仮特許出願第61/287,129号(2009年12月16日出願;これは、どのような図面も含めて、その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
(分野)
一般には、本明細書中において、ポリグルタミン酸を得るためのプロセスが開示される。より具体的には、本明細書中において、所望される重量平均分子量を有するポリグルタミン酸を得るための制御されたプロセスが開示される。
【0003】
(説明)
ポリグルタミン酸が市販されている。しかしながら、その価格は高価であり、1グラムあたりおよそ350ドル〜500ドルである(Sigma Aldrich Chemical Company)。この高価格は、特定の分子量を有するポリグルタミン酸を合成することが困難であることに伴う。ポリグルタミン酸は多くの場合、N−カルボキシアンヒドリドの重合を開始するために開始剤を使用することによって得られる。この重合反応は、特定の分子量が達成されると思われるときに停止される。しかしながら、この反応を、ポリグルタミン酸の特定の分子量を得るためにいつ停止させるかを予測することは困難である。さらに、低い多分散度指数を有するポリグルタミン酸を製造することは困難である。ポリグルタミン酸を大規模で製造することもまた困難である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書中に開示されるいくつかの実施形態は、所望される重量平均分子量をキロダルトン(kDa)の狭い範囲に有するポリグルタミン酸を得るために使用することができる、ポリグルタミン酸を調製するためのプロセスに関連する。ポリグルタミン酸の所望される重量平均分子量を比較的精度よく得ることに加えて、いくつかの実施形態において、本プロセスは、現在利用可能な商用方法よりも費用がかからない。加えて、いくつかの実施形態において、本プロセスは、ポリグルタミン酸を10g〜1000gの規模レベルで得るために使用することができる。
【0005】
いくつかの実施形態は、80kDa以上である第1の重量平均分子量を有する出発ポリグルタミン酸を得ること、80kDa未満であるポリグルタミン酸の目標とする第2の重量平均分子量を選択すること、出発ポリグルタミン酸の前記第1の重量平均分子量をポリグルタミン酸の前記選択された目標とする第2の重量平均分子量に低下させるために効果的である加水分解条件を選択すること、および、出発ポリグルタミン酸を前記加水分解条件のもとで加水分解して、それにより、生成物ポリグルタミン酸を得ること(ただし、生成物ポリグルタミン酸は、前記選択された目標とする第2の重量平均分子量の約±10kDaの範囲内にある重量平均分子量を有する)を含むことができる。
【0006】
いくつかの実施形態は、185kDa以上である第1の重量平均分子量を有する出発ポリグルタミン酸を得ること、185kDa未満であるポリグルタミン酸の目標とする第2の重量平均分子量を選択すること、出発ポリグルタミン酸の前記第1の重量平均分子量をポリグルタミン酸の前記選択された目標とする第2の重量平均分子量に低下させるために効果的である加水分解条件を選択すること、および、出発ポリグルタミン酸を前記加水分解条件のもとで加水分解して、それにより、生成物ポリグルタミン酸を得ること(ただし、生成物ポリグルタミン酸は、前記選択された目標とする第2の重量平均分子量の約±10kDaの範囲内にある重量平均分子量を有する)を含むことができる。
【0007】
これらの実施形態および他の実施形態が下記においてより詳しく記載される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】191kDaの開始時重量平均分子量を有するポリグルタミン酸ベンジルエステルを、30℃で数時間、HBr−AcOHを含む加水分解条件のもとで加水分解することによって得られるポリグルタミン酸の重量平均分子量を例示するプロットである。
【0009】
【図2】130kDaの開始時重量平均分子量を有する2つのポリグルタミン酸ベンジルエステルサンプルを、30℃で数時間、HBr−AcOHを含む加水分解条件のもとで加水分解することによって得られるポリグルタミン酸の重量平均分子量を例示するプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
I.定義
別途定義される場合を除き、本明細書中で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中で参照されるすべての特許、特許出願、特許出願公開公報および他の刊行物は、別途言及される場合を除き、それらの全体が参照によって組み込まれる。複数の定義が本明細書中の用語について存在する場合には、別途言及される場合を除き、本節における定義が優先する。
【0011】
用語「ポリグルタミン酸」または用語「PGA」は、当業者によって理解されるようなその通常の意味に従って本明細書中では使用される。当業者は、特定のpHレベル(例えば、7を超えるpH)において、ポリグルタミン酸のペンダント状カルボン酸基に結合する水素が適切なカチオン(例えば、ナトリウムなど)により置き換わり得ることを理解する。したがって、ポリグルタミン酸には、ペンダント状カルボン酸がプロトン化または脱プロトン化のどちらかを受けるグルタミン酸モノマーユニットから構成されるポリマーが含まれる。ポリグルタミン酸の脱プロトン化されたグルタミン酸モノマーユニットには、グルタミン酸塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアンモニウム塩(例えば、テトラブチルアンモニウム(TBA)塩、テトラプロピルアンモニウム(TPA)塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリエチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩など)、ならびに、それらの組合せが含まれる。
【0012】
いくつかの実施形態において、カルボン酸基の末端水素は好適な保護基により置換され得る。したがって、ポリグルタミン酸には、非保護のポリグルタミン酸および保護されたポリグルタミン酸が含まれる。好適な保護基が当業者には知られている。エステル保護基には、C〜C14アルキルエステル、C〜C10アリールエステルおよびC〜C14アラルキルエステルが含まれるが、これらに限定されない。ポリグルタミン酸のための例示的なエステル保護基には、フェニルエステル、ベンジルエステル、アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、t−ブチルエステルおよびヘプチルエステルなど)、および、この技術分野で知られているどのような他のエステル保護基も含まれるが、これらに限定されない。例えば、WutsおよびGreene、Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis(John Wiley and Sons、2007)を参照のこと。いくつかの実施形態において、保護基はベンジルエステル(例えば、ベンジル系エステルなど)であり得る。
【0013】
したがって、用語「ポリグルタミン酸」または用語「PGA」は、カルボン酸基の水素が対イオンおよび/または好適な保護基により置換されている変化体(例えば、ポリグルタミン酸塩およびポリグルタミン酸など)を包含する総称用語である。ポリグルタミン酸には、ポリ−アルファ−グルタミン酸およびポリ−ガンマ−グルタミン酸が含まれる。例えば、用語「ポリグルタミン酸」には、ポリ−アルファ−グルタミン酸−ガンマ−(ベンジル)エステルおよびポリ−アルファ−グルタミン酸−ガンマ−(t−ブチル)エステルが含まれる。ポリグルタミン酸には、モノマーユニットの75%以上がグルタミン酸モノマーユニットであるポリマーが含まれる。
【0014】
本明細書中で使用される場合、用語「加水分解」および用語「加水分解する」は、ポリグルタミン酸からの保護基の切断および/またはポリグルタミン酸におけるアミド骨格結合の切断を示す。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「加水分解条件」は、加水分解を生じさせる化学反応パラメーターを示す。例示的な加水分解条件には、時間、温度、溶媒および加水分解試薬が含まれるが、これらに限定されない。例示的な加水分解試薬には、酸試薬、塩基性試薬および/または酵素試薬が含まれるが、これらに限定されない。様々な加水分解条件がこの技術分野では一般に知られている。例えば、SmithおよびMarch、March’s Advanced Organic Chemistry(John Wiley&Sons、2007、1400頁〜1411頁)を参照のこと。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「重量平均分子量」または
【数1】

は、ポリマーの分子量を記述するために使用され得る。重量平均分子量は、その重量分率が乗じられる各画分のモル質量の積の和である。例えば、Young、Introduction to Polymers(Chapman and Hall、1981、8頁)、および、Stevens、Polymer Chemistry:An Introduction(Oxford University Press、35頁〜37頁)を参照のこと。
【0017】
本明細書中で使用される場合、用語「数平均分子量」または
【数2】

は、ポリマーの分子量を記述するために使用され得る。数平均分子量は、そのモル分率が乗じられる各画分のモル質量の積の和である。例えば、Young、Introduction to Polymers(Chapman and Hall、1981、5頁)、および、Stevens、Polymer Chemistry:An Introduction(Oxford University Press、35頁〜37頁)を参照のこと。
【0018】
本明細書中で使用される場合、用語「多分散度指数」は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比率を示す。多分散度指数は、数学的には
【数3】

として表すことができる。
【0019】
数字の範囲が本明細書中に提供されるとき、その範囲は、提供された数字範囲に含まれる各整数を含むことが意図されることが理解される。例えば、20kDa〜25kDaの範囲における分子量を有するポリマーへの言及は、20kDa、21kDa、22kDa、23kDa、24kDaおよび25kDaの分子量を有する様々なポリマーの記述であることが理解される。同様に、20℃〜40℃の範囲における温度への言及は、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃および40℃の様々な温度の記述であることが理解される。
【0020】
1つまたは複数のキラル中心を有する本明細書中に記載されるどのような化合物においても、絶対立体化学が明示的に示されないならば、それぞれの中心が独立して、R配置またはS配置またはそれらの混合であってもよいことが理解される。したがって、本明細書中に提供される化合物はエナンチオマー的に純粋であってもよく、または、立体異性体の混合物であってもよい。加えて、EまたはZとして定義され得る幾何異性体を生じさせる1つまたは複数の二重結合を有する本明細書中に記載されるどのような化合物においても、それぞれの二重結合は独立して、EまたはZ、それらの混合であってもよいことが理解される。同様に、すべての互変異性形態もまた、包含されることが意図される。
【0021】
II.ポリグルタミン酸
本明細書中において、ポリグルタミン酸を調製するためのプロセスが開示される。本明細書中に開示されるいくつかの実施形態は、185kDa以上である第1の重量平均分子量を有する出発ポリグルタミン酸を得ること、185kDa未満であるポリグルタミン酸の目標とする第2の重量平均分子量を選択すること、出発ポリグルタミン酸の前記第1の重量平均分子量をポリグルタミン酸の前記選択された目標とする第2の重量平均分子量に低下させるために効果的である加水分解条件を選択すること、および、出発ポリグルタミン酸を前記加水分解条件のもとで加水分解して、それにより、生成物ポリグルタミン酸を得ること(ただし、生成物ポリグルタミン酸は、前記選択された目標とする第2の重量平均分子量の約±10kDaの範囲内にある重量平均分子量を有する)を含むことができる、ポリグルタミン酸を調製するためのプロセスに関連する。
【0022】
いくつかの実施形態において、ポリグルタミン酸を調製するための本プロセスは、50kDa〜500kDaの間における第1の重量平均分子量を有する出発ポリグルタミン酸を選択する工程を含むことができる。ポリグルタミン酸を調製するための本プロセスは、100,000kDaまでの第1の重量平均分子量を有する出発ポリグルタミン酸を選択する工程を含むことができる。
【0023】
ポリグルタミン酸を調製するための本プロセスは、出発ポリグルタミン酸の分子量よりも小さい分子量を有する、目標とする第2の分子量のポリグルタミン酸を選択する工程を含むことができる。
【0024】
ポリグルタミン酸を調製するための本プロセスは、出発ポリグルタミン酸の重量平均分子量を目標の第2の重量平均分子量に低下させるために効果的である酸性加水分解条件、塩基性加水分解条件または酵素加水分解条件を選択する工程を含むことができる。
【0025】
ポリグルタミン酸を調製するための本プロセスは、選択された目標とする第2の重量平均分子量の約±5kDa〜±50kDaの範囲内にある、より低い重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造することができる。ポリグルタミン酸を調製するための本プロセスは、選択された目標とする第2の重量平均分子量の±1%〜±10%の範囲内にある、より低い重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造することができる。
【0026】
A.出発ポリグルタミン酸
出発ポリグルタミン酸を様々な供給源から得ることができる。例えば、出発ポリグルタミン酸を、商用供給源から、例えば、Sigma−Aldrich Chemical Co.などから得ることができる。代替では、出発ポリグルタミン酸を合成することができる。出発ポリグルタミン酸を合成するための好適な方法が当業者には知られている。出発ポリグルタミン酸を合成するための1つの方法が、グルタミン酸エステルモノマーを好適な開始剤と反応させることによるものである。グルタミン酸エステルモノマーと、開始剤との間における好適な反応の一例が、スキーム1Aに例示される。
スキーム1A:
【化1】

式中、Rはエステル保護基である。この技術分野で知られているか、または、本明細書中において前述されるエステル保護基はどれも使用することができる。いくつかの実施形態において、Rは、C〜C14アルキル、C〜C10アリールまたはC〜C14アラルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、ベンジル、フェニル、t−ブチル、イソプロピル、エチルまたはメチルである。
【0027】
例えば、ベンジルエステルグルタミン酸N−カルボキシアンヒドリドを、スキーム1Bに例示されるように、ポリグルタミン酸ベンジルエステルポリマーを製造するために、アミン開始剤と反応させることができる。アミン開始剤はトリエチルアミン(TEA)が可能である。この反応はジオキサン中において室温で行うことができる。
スキーム1B:
【化2】

【0028】
i.出発ポリグルタミン酸の分子量
出発ポリグルタミン酸は、加水分解から生じる生成物ポリグルタミン酸と比較して、より大きい重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は80kDa以上の第1の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は100kDa以上の第1の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は130kDa以上の第1の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は150kDa以上の第1の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は170kDa以上の第1の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は185kDa以上の第1の重量平均分子量を有する。出発ポリグルタミン酸の重量平均分子量を決定するための様々な方法が当業者には知られている。様々な方法には、適切な分子量検出技術(例えば、光散乱)を使用するサイズ排除クロマトグラフィー−高圧液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)、小角中性子散乱(SANS)、X線散乱および沈降速度が含まれるが、これらに限定されない。SEC−HPLCはまた、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)と呼ばれることがある。ポリグルタミン酸ポリマーの重量平均分子量を決定するための2つ以上の方法により、異なる分子量値がもたらされるならば、SEC−HPLCによって得られる重量平均分子量の値が好ましい。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は190kDa以上の第1の重量平均分子量を有することができる。他の実施形態において、出発ポリグルタミン酸は200kDa以上の第1の重量平均分子量を有することができる。さらに他の実施形態において、出発ポリグルタミン酸は220kDa以上の第1の重量平均分子量を有することができる。なおさらに他の実施形態において、出発ポリグルタミン酸は230kDa以上の第1の重量平均分子量を有することができる。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は240kDa以上の第1の重量平均分子量を有することができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は約50kDa〜約500kDaの範囲における第1の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は約80kDa〜約300kDaの範囲における第1の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は約80kDa〜約130kDaの範囲における第1の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は約130kDa〜約270kDaの範囲における第1の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は80kDa以上の第1の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は40kDa以上の第1の重量平均分子量を有する。
【0030】
ii.重合のための開始剤
一般には、スキーム1Aに示される重合開始剤は求核試薬である。加えて、重合開始剤は好ましくは、重合反応が完了したとき、開始剤が生成物ポリマーから分離されるか、または、他の場合には反応混合物から除かれることを可能にする物理的特性を有する。例示的な開始剤には、ベンジルアミン、n−ヘキシルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ナトリウムメトキシド、N−ベンジルカルバミン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、ホウ水素化ナトリウム、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムプロポキシド、カリウムtert−ブトキシド、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、グルタミン酸ジメチルエステルおよびグルタミン酸−ガンマ−tert−ブチルエステル、または、この技術分野で知られているどのようなアニオン性開環開始剤も含まれる。
【0031】
B.目標分子量
いくつかの実施形態において、選択された目標とする第2の重量平均分子量は40kDa以下である。いくつかの実施形態において、選択された目標とする第2の重量平均分子量は約40kDa〜約12kDaの範囲で可能である。他の実施形態において、選択された目標とする第2の重量平均分子量は約30kDa〜約15kDaの範囲で可能である。さらに他の実施形態において、選択された目標とする第2の重量平均分子量は約25kDa〜約20kDaの範囲で可能である。様々な理由が、特定の選択された目標とする重量平均分子量を選択するために存在する。理由の限定されない列挙には、選択された目標とする重量平均分子量を有するポリグルタミン酸の増大した溶解性、身体(例えば、腎臓)からのポリグルタミンの分泌を低下させ、かつ/または防止すること、ならびに、ポリグルタミン酸に対する身体の免疫応答を低下させることが含まれる。
【0032】
加えて、様々な特性が、例えば、生体内分解時間、血中循環時間、生体適合性、毒性、抗原としての潜在的可能性、免疫原としての刺激、生物学的安定性、加水分解安定性、酵素安定性、溶解性、透過性、膨潤、ガラス転移温度、融解温度、分解温度、弾性率、引張り強さ、弾性および拡散輸送などが、選択された目標とするポリグルタミン酸ポリマーの分子量に依存し得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、選択された目標とする第2の重量平均分子量は約100kDa〜約1kDaの範囲で可能である。いくつかの実施形態において、選択された目標とする第2の重量平均分子量は、約100kDa〜80kDaの範囲、90kDa〜70kDaの範囲、80kDa〜60kDaの範囲、70kDa〜50kDaの範囲、60kDa〜40kDaの範囲、50kDa〜30kDaの範囲、40kDa〜20kDaの範囲、30kDa〜10kDaの範囲または20kDa〜1kDaの範囲で可能である。いくつかの実施形態において、選択された目標とする第2の重量平均分子量は、約45kDa〜35kDaの範囲、40kDa〜35kDaの範囲、35kDa〜30kDaの範囲、30kDa〜25kDaの範囲、25kDa〜20kDaの範囲、22kDa〜17kDaの範囲、20kDa〜15kDaの範囲、15kDa〜10kDaの範囲、10kDa〜5kDaの範囲または5kDa〜2kDaの範囲で可能である。
【0034】
いくつかの実施形態において、選択された目標とする第2の重量平均分子量は、30kDa±10%、29kDa±10%、28kDa±10%、27kDa±10%、26kDa±10%、25kDa±10%、24kDa±10%、23kDa±10%、22kDa±10%、21kDa±10%、20kDa±10%、19kDa±10%、18kDa±10%、17kDa±10%、16kDa±10%、15kDa±10%、14kDa±10%、13kDa±10%、12kDa±10%、11kDa±10%、または、10kDa±10%である。
【0035】
いくつかの実施形態において、選択された目標とする第2の重量平均分子量は、30kDa±5%、29kDa±5%、28kDa±5%、27kDa±5%、26kDa±5%、25kDa±5%、24kDa±5%、23kDa±5%、22kDa±5%、21kDa±5%、20kDa±5%、19kDa±5%、18kDa±5%、17kDa±5%、16kDa±5%、15kDa±5%、14kDa±5%、13kDa±5%、12kDa±5%、11kDa±5%、または、10kDa±5%である。
【0036】
いくつかの実施形態において、選択された目標とする第2の重量平均分子量は、約30kDa、29kDa、28kDa、27kDa、26kDa、25kDa、24kDa、23kDa、22kDa、21kDa、20kDa、19kDa、18kDa、17kDa、16kDa、15kDa、14kDa、13kDa、12kDa、11kDaまたは10kDaである。
【0037】
いくつかの実施形態において、選択された目標とする第2の重量平均分子量は40kDa未満である。いくつかの実施形態において、選択された目標とする第2の重量平均分子量は30kDa未満である。いくつかの実施形態において、選択された目標とする第2の重量平均分子量は20kDa未満である。
【0038】
C.加水分解条件
出発ポリグルタミン酸は、生成物ポリグルタミン酸を製造するために加水分解することができる。生成物ポリグルタミン酸の重量平均分子量は出発ポリグルタミン酸の重量平均分子量よりも小さくすることができる。出発ポリグルタミン酸を加水分解するための1つの方法が、スキーム2に例示されるように、出発ポリグルタミン酸を加水分解条件に供することによるものである。
スキーム2:
【化3】

式中、Rはエステル保護基を表す;xおよびyは整数を表し、xはyよりも大きい(すなわち、x>y)。
【0039】
いくつかの実施形態において、生成物ポリグルタミン酸はプロトン化または脱プロトン化され得る。いくつかの実施形態において、生成物ポリグルタミン酸は、ポリグルタミン酸塩残基、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアンモニウム塩(例えば、テトラブチルアンモニウム(TBA)塩、テトラプロピルアンモニウム(TPA)塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリエチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩など)などを含有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、加水分解条件により、保護基が出発ポリグルタミン酸から切断される。いくつかの実施形態において、加水分解条件により、出発ポリグルタミン酸における骨格アミド結合が切断される。いくつかの実施形態において、加水分解条件により、出発ポリグルタミン酸における保護基および骨格アミド結合の両方が切断される。
【0041】
様々な条件を、出発ポリグルタミン酸を加水分解するために使用することができる。適切な加水分解条件を選択するための好適な方法が当業者には知られている。いくつかの実施形態において、加水分解条件には、酸の使用が含まれる。好適な酸が当業者には知られている。いくつかの実施形態において、酸はプロトン酸が可能である。例えば、酸は、臭化水素酸、塩酸および硫酸が可能である。必要および/または所望であるならば、酸をプロトン性溶媒(例えば、水、酢酸および/またはジクロロ酢酸)において希釈することができる。1つの実施形態において、酸はHBr−酢酸(HBr−AcOH)が可能である。いくつかの実施形態において、酸は約20%〜約60%の範囲における質量比パーセント組成を有することができる。他の実施形態において、酸は約30%〜約40%の範囲における質量比パーセント組成を有することができる。さらに他の実施形態において、酸はおよそ33%の質量比パーセント組成を有することができる。いくつかの実施形態において、加水分解条件は、選択された目標とする第2の重量平均分子量よりも大きい重量平均分子量を有するポリグルタミン酸が様々な加水分解条件に供されている実験から作製されるプロットに基づいて選択することができる。そのようなプロットの一例が図1に示される。いくつかの実施形態において、そのようなプロットをもたらすために使用されるポリグルタミン酸を商業的に得ることができる。他の実施形態において、そのようなプロットをもたらすために使用されるポリグルタミン酸を、例えば、本明細書中に記載されるような手順を使用して合成することができる。
【0042】
i.加水分解条件を選択すること
加水分解条件には、ポリグルタミン酸ポリマーにおける保護基の切断および/またはアミド骨格結合の切断をもたらす反応パラメーターが含まれる。例示的な加水分解条件パラメーターには、加水分解試薬、温度、時間、溶媒および濃度が含まれるが、これらに限定されない。様々な加水分解条件パラメーターを、目標とする重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸ポリマーを製造するために調節することができる。したがって、適切な加水分解条件パラメーターを選択することにより、目標とする重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸がもたらされることになる。
【0043】
例えば、より高い加水分解温度は一般に、ポリグルタミン酸の加水分解の速度および/または量を増大させる。したがって、より高い加水分解温度を選択することは、より低い温度が選択されたならば生じるであろうよりも低い重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸をもたらす傾向がある。
【0044】
さらに、ポリグルタミン酸ポリマーが加水分解条件にさらされる時間の量を増大させることは一般に、ポリグルタミン酸の加水分解の量を増大させることになる。したがって、より長い加水分解時間を選択することは、より短い時間が選択されたならば生じるであろうよりも低い重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸をもたらす傾向がある。
【0045】
同様に、より強い加水分解試薬を利用することは一般に、ポリグルタミン酸の加水分解の速度および/または量を増大させることになる。したがって、より強い加水分解試薬を選択することは、より弱い加水分解試薬が選択されたならば生じるであろうよりも低い重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸ポリマーをもたらす傾向がある。例えば、より強い酸性試薬は、より弱い酸性試薬よりも低い重量平均分子量の生成物ポリグルタミン酸をもたらす傾向がある。同様に、より強い塩基性試薬は、より弱い塩基性試薬よりも低い重量平均分子量の生成物ポリグルタミン酸をもたらす傾向がある。
【0046】
ii.加水分解試薬
スキーム2に例示される加水分解条件には、酸性条件、塩基性条件および酵素条件が含まれる。様々な試薬を、目標とする重量平均分子量を有する所望される生成物ポリグルタミン酸を出発ポリグルタミン酸から製造するための選択された加水分解条件を実現するために利用することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、酸性加水分解条件が利用される。酸性条件を、pHが6〜1の間にある溶液において生じさせることができる。酸性加水分解条件をもたらすことができる試薬には、HCl、HBr、HF、HClO、HClO、HClO、HClO、HSO、HNO、HPO、酢酸、HCOH、ClCHCOH、カチオン交換樹脂、または、それらのどのような組合せも含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
例えば、スキーム2に例示される加水分解条件には、ClCHCOHにおけるHBrおよび酢酸の混合物が含まれる。いくつかの実施形態において、加水分解条件には、ClCHCOHにおけるHClおよび酢酸の混合物が含まれる。
【0049】
いくつかの実施形態において、塩基性加水分解条件が利用される。塩基性条件を、pHが8〜14の間にある溶液において生じさせることができる。塩基性加水分解条件をもたらすことができる試薬には、アルカリ性の金属水酸化物(例えば、NaOH、KOH、LiOH、Ba(OH)、Cu(OH)など)、t−BuOK、NaH、アニオン交換樹脂、または、それらのどのような組合せも含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
いくつかの実施形態において、酵素により触媒される加水分解条件が利用される。使用することができる酵素には、エステラーゼ(例えば、ブタ肝臓エステラーゼ、および、枯草菌から得られるエステラーゼなど)、アンヒドラーゼ(例えば、カルボニックアンヒドラーゼなど)、リパーゼ(例えば、ブタ膵臓リパーゼ、テルミターゼ、ならびに、リゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)、黒色アスペルギルス、カンジダ・アンタルシチカ(Candida antarctica)およびムコル・ジャバニクス(Mucor javanicus)から得られるリパーゼなど)、ならびに、化学結合を加水分解することが知られているどのような他の酵素も含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
iii.温度
1つまたは複数の加水分解試薬の使用に加えて、加水分解条件は、出発ポリグルタミン酸ポリマーを高い温度に供することを含むことができる。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸ポリマーは約60℃以上の温度に供することができる。他の実施形態において、出発ポリグルタミン酸ポリマーは約50℃以上の温度に供することができる。さらに他の実施形態において、出発ポリグルタミン酸ポリマーは約40℃以上の温度に供することができる。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸ポリマーは約40℃〜約60℃の範囲における温度に供することができる。代替において、出発ポリグルタミン酸ポリマーは室温(およそ25℃)での加水分解条件に供することができる。いくつかの実施形態において、加水分解条件は−40℃〜300℃の範囲における温度を含むことができる。
【0052】
iv.時間
出発ポリグルタミン酸は、様々な量の時間の、加水分解条件に供することができる。いくつかの実施形態において、ポリグルタミン酸ポリマーは、1分〜120分の範囲における期間の、加水分解条件に供される。いくつかの実施形態において、ポリグルタミン酸ポリマーは、1時間〜24時間の範囲における期間の、加水分解条件に供される。いくつかの実施形態において、ポリグルタミン酸ポリマーは、約1日〜約3日の範囲における期間の、加水分解条件に供される。いくつかの実施形態において、ポリグルタミン酸ポリマーは、3日を超える期間の、加水分解条件に供される。時間の範囲が本明細書中に開示されるならば、その範囲は、提供された時間範囲に含有される各整数およびその小数を包含することが理解される。例えば、1時間〜2時間の時間範囲は、1.0時間の時間、1.1時間の時間、1.2時間の時間、1.3時間の時間、1.4時間の時間、1.5時間の時間、1.6時間の時間、1.7時間の時間、1.8時間の時間、1.9時間の時間および2.0時間の時間の記述である。
【0053】
いくつかの実施形態において、加水分解条件は、出発ポリグルタミン酸ポリマーを第1の期間にわたって第1の温度に供し、かつ、第2の期間にわたって第2の温度に供することを含むことができる。一例として、出発ポリグルタミン酸ポリマーを第1の期間については上記で記載されるような第1の温度に供することができ、かつ、第2の期間については上記で記載されるような第2の温度に供することができ、ただし、この場合、第1の温度および第2の温度は異なる。いくつかの実施形態において、第2の温度は第1の温度よりも低くすることができる。他の実施形態において、第2の温度は第1の温度よりも高くすることができる。さらに他の実施形態において、第1の温度および第2の温度はほぼ同じにすることができる。例えば、出発ポリグルタミン酸ポリマーを第1の期間については約40℃〜約60℃の範囲における第1の温度に供することができ、かつ、第2の期間については室温に供することができる。
【0054】
出発ポリグルタミン酸が第1の温度および第2の温度に供される時間は様々であり得る。例えば、第1の温度の期間は第2の温度の期間と異なることができる。一例として、出発ポリグルタミン酸ポリマーを、第2の温度に伴う第2の期間よりも大きくすることができるか、または、小さくすることができる第1の期間にわたって第1の温度に供することができる。代替において、第1の温度および第2の温度の期間はほぼ等しくすることができる。いくつかの実施形態において、第1の期間は3時間以下とすることができる。他の実施形態において、第1の期間は2時間以下とすることができる。他のさらなる実施形態において、第1の期間は1時間以下とすることができる。いくつかの実施形態において、第2の期間は1時間以上とすることができる。他の実施形態において、第2の期間は2時間以上とすることができる。さらに他の実施形態において、第2の期間は3時間以上とすることができる。なおさらに他の実施形態において、第2の期間は4時間以上とすることができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、第1の期間は1分〜120分の範囲である。いくつかの実施形態において、第1の期間は1時間〜24時間の範囲である。いくつかの実施形態において、第1の期間は1日〜3日の範囲である。いくつかの実施形態において、第1の期間は3日間を超える。
【0056】
いくつかの実施形態において、第2の期間は1分〜120分の範囲である。いくつかの実施形態において、第2の期間は1時間〜24時間の範囲である。いくつかの実施形態において、第2の期間は1日〜3日の範囲である。いくつかの実施形態において、第2の期間は3日間を超える。
【0057】
出発ポリグルタミン酸ポリマーを選択された加水分解条件に供することができる総時間は様々であり得る。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は、少なくとも合計で2時間、選択された加水分解条件のもとで加水分解することができる。他の実施形態において、出発ポリグルタミン酸は、少なくとも合計で2.5時間の、選択された加水分解条件のもとで加水分解することができる。さらに他の実施形態において、出発ポリグルタミン酸は、少なくとも合計で3時間の、選択された加水分解条件のもとで加水分解することができる。なおさらに他の実施形態において、出発ポリグルタミン酸は、少なくとも合計で4時間の、選択された加水分解条件のもとで加水分解することができる。いくつかの実施形態において、出発ポリグルタミン酸は、少なくとも合計で5時間、少なくとも合計で6時間、または、少なくとも合計で7時間の、選択された加水分解条件のもとで加水分解することができる。他の実施形態において、出発ポリグルタミン酸は、合計で8時間未満の、選択された加水分解条件のもとで加水分解することができる。
【0058】
v.規模
様々な量の出発ポリグルタミン酸ポリマーを、本明細書中に記載される加水分解条件に供することができる。本明細書中に記載されるプロセスは大規模製造のために特に有用である。いくつかの実施形態において、どのような特定のバッチにおいても加水分解条件に供される出発ポリグルタミン酸ポリマーの量は10グラム〜100グラムの範囲である。いくつかの実施形態において、どのような特定のバッチにおいても加水分解条件に供される出発ポリグルタミン酸ポリマーの量は100グラム〜1,000グラムの範囲である。いくつかの実施形態において、どのような特定のバッチにおいても加水分解条件に供される出発ポリグルタミン酸ポリマーの量は1キログラム〜10キログラムの範囲である。
【0059】
vi.溶媒
ポリグルタミン酸の加水分解のために好適な溶媒はどれも使用することができる。いくつかの実施形態において、加水分解溶媒が、ジオキサン、アニソール、ベンゼン、クロロホルム、クロロベンゼン、酢酸エチル、ニトロベンゼン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、メタノール、酢酸、アセトン、n−ブタノール、酢酸ブチル、四塩化炭素、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、エタノール、ジエチルエーテル、ヘプタン、ヘキサン、メタノール、メチル−t−ブチルエーテル、メチルエチルケトン、ペンタン、n−プロパノール、イソプロパノール、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、トリクロロエチレン、水、キシレン、および、それらのどのような混合物からも選択される。
【0060】
好ましい溶媒には、極性溶媒、例えば、極性のプロトン性溶媒または極性の非プロトン性溶媒が含まれる。加水分解条件を、水性溶媒、アルコール性溶媒またはそれらの任意の混合物の中から選択される溶媒において行うことができる。例示的な溶媒には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、水、または、それらのどのような混合物も含まれるが、これらに限定されない。好ましい溶媒には、酢酸、ジクロロ酢酸、ならびに、酢酸およびジクロロ酢酸の混合物が含まれる。
【0061】
vii.加水分解の程度を測定すること
いくつかの実施形態において、ポリグルタミン酸の加水分解がモニターされる。例えば、測定を、出発ポリグルタミン酸ポリマーの加水分解の程度をモニターするために行うことができる。測定は、ポリグルタミン酸の目標とする重量平均分子量がもたらされているかどうかを明らかにするために使用することができる。測定はまた、プロセスの任意の選択された段階において加水分解溶液に含有されるポリグルタミン酸の重量平均分子量を決定するために使用することができる。
【0062】
ポリグルタミン酸の加水分解をモニターするための様々な技術を使用することができる。例えば、ポリグルタミン酸の加水分解を、適切な分子量検出技術(例えば、光散乱)を使用するサイズ排除クロマトグラフィー−高圧液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)、小角中性子散乱(SANS)、X線散乱、沈降速度、サイズ排除クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー−質量分析法(GC/MS)、液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC/MS)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(MALDI−MS)、エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI/MS)、高速原子衝撃質量分析法(FAB−MS)、誘導結合プラズマ−質量分析法(ICP−MS)、加速器質量分析法(AMS)、熱イオン化−質量分析法(TIMS)、スパークソース質量分析法(SSMS)、浸透圧法、光散乱、超遠心分離、凝固点降下法、沸点測定法、末端基分析、滴定、凝固点降下、沸点上昇、浸透圧、または、この技術分野で知られている、ポリマーの分子量を決定するどのような他の方法(これらに限定されない)も含む技術によってモニターすることができる。ポリグルタミン酸ポリマーの分子量を決定するための2つ以上の方法により、異なる分子量値がもたらされるならば、SEC−HPLCによって得られる分子量の値が好ましい。
【0063】
いくつかの実施形態において、加水分解溶液全体の測定が行われる。いくつかの実施形態において、加水分解溶液のサンプルまたはアリコートが測定される。いくつかの実施形態において、加水分解溶液全体と、加水分解溶液のサンプルとの両方が、出発ポリグルタミン酸の加水分解の程度を決定するために測定される。
【0064】
viii.多数回の測定
いくつかの実施形態において、多数回の測定が、出発ポリグルタミン酸ポリマーの加水分解の程度をモニターするために行われる。いくつかの実施形態において、多数回の測定が、ポリグルタミン酸の目標とする平均分子量がもたらされているかどうかを明らかにするために行われる。測定の回数は2回〜40回の間で可能であり、または、40回を超えることができる。多数回の測定を様々な時点で行うことができる。例えば、測定を約1分〜約120分の範囲における時点間の間隔で行うことができる。
【0065】
ix.加水分解時間をポリグルタミン酸の分子量と相関させること
上記で記載される多数回の測定は、ポリグルタミン酸が加水分解条件に供される時間の量と、ポリグルタミン酸の重量平均分子量とを相関させるために使用することができる。例えば、時間に対するポリグルタミン酸の重量平均分子量のプロットが図1および図2に示される。これらのプロットは、ポリグルタミン酸および加水分解試薬を含有する溶液からの様々な時間間隔でのポリグルタミン酸の重量平均分子量の測定を行うことによって作製された。そのようなプロットは、出発ポリグルタミン酸ポリマーが、選択された目標とする重量平均分子量を有する所望される生成物ポリグルタミン酸ポリマーを製造するために加水分解条件に供されなければならない時間の量を決定するために使用することができる。
【0066】
x.加水分解条件を選択すること
加水分解条件と、ポリグルタミン酸の重量平均分子量との相関に基づいて、目標とする重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸ポリマーを製造するために効果的である加水分解条件を選択することが可能である。
【0067】
いくつかの実施形態において、加水分解時間と、ポリグルタミン酸の重量平均分子量との相関を、目標とする重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸ポリマーを製造するために効果的である時間の量を選択するために使用することができる。例えば、図1を作製するために利用される加水分解条件によれば、およそ1時間の加水分解時間を、およそ75kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。さらに、図1によれば、およそ2時間の加水分解時間を、およそ50kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。図1によれば、およそ3時間の加水分解時間を、およそ40kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。図1によれば、およそ4時間〜5時間の加水分解時間を、およそ34kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。図1によれば、およそ6時間の加水分解時間を、およそ26kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。図1によれば、およそ7時間の加水分解時間を、およそ20kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。
【0068】
図2を作製するために利用される加水分解条件によれば、およそ1時間の加水分解時間を、およそ72kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。さらに、図2によれば、およそ2時間の加水分解時間を、およそ50kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。図2によれば、およそ3時間の加水分解時間を、およそ36kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。図2によれば、およそ4時間の加水分解時間を、およそ28kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。図2によれば、およそ5時間の加水分解時間を、およそ23kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。図2によれば、およそ6時間〜8時間の加水分解時間を、およそ20kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。図2によれば、およそ9時間〜10時間の加水分解時間を、およそ16kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。図2によれば、およそ11時間〜12時間の加水分解時間を、およそ13kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。図2によれば、およそ13時間〜15時間の加水分解時間を、およそ12kDaの重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を製造するために選択することが可能である。
【0069】
本明細書中に記載される、加水分解条件と、ポリグルタミン酸の重量平均分子量との間における様々な相関を、選択された目標とする重量平均分子量を有するポリグルタミン酸ポリマーを製造するために使用することができる。
【0070】
xi.精製
必要な場合には、生成物ポリグルタミン酸はその後、単離および/または精製することができる。当業者に知られている好適な方法を、生成物ポリグルタミン酸を単離および/または精製するために使用することができる。必要および/または所望であるならば、生成物ポリグルタミン酸は、当業者に知られているいずれかの好適な方法によって乾燥させることができる。例えば、ポリグルタミン酸を、試薬を加えることによって溶液から析出させることができる。いくつかの実施形態において、そのような試薬はアセトンが可能である。形成するどのような生成物ポリグルタミン酸沈殿物であっても、沈殿物はその後、ろ過し、例えば、アセトンにより洗浄することができる。必要な場合には、生成物ポリグルタミン酸は、好適な方法であれば、どのような方法によってでも精製することができる。例えば、生成物ポリグルタミン酸を重炭酸ナトリウム溶液に溶解し、セルロースメンブランを使用して水において透析することができ、生成物ポリグルタミン酸を凍結乾燥し、単離することができる。
【0071】
上記で記載されるように、選択された加水分解条件から得られる生成物ポリグルタミン酸は、出発ポリグルタミン酸よりも小さい重量平均分子量を有する。生成物グルタミン酸の重量平均分子量を決定するための方法が本明細書中に記載される。いくつかの実施形態において、生成物ポリグルタミン酸の重量平均分子量は約35kDa〜約12kDaの範囲で可能である。
【0072】
上記で議論されたように、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるプロセスの1つの利点は、キロダルトン(kDa)の比較的狭い範囲に含まれる所望される重量平均分子量を有する生成物ポリグルタミン酸を得ることができることである。いくつかの実施形態において、生成物ポリグルタミン酸は、選択された目標とする第2の重量平均分子量の約±5kDaの範囲内にある重量平均分子量を有することができる。他の実施形態において、生成物ポリグルタミン酸は、選択された目標とする第2の重量平均分子量の約±3kDa、±1.0kDa、±0.5kDa、±0.2kDa、±0.1kDaまたは±0.05kDaの範囲内にある重量平均分子量を有することができる。
【0073】
xii.多分散度
本明細書中に記載される加水分解条件は、低い多分散度指数を有する生成物ポリグルタミン酸ポリマーを製造するために使用することができる。いくつかの実施形態において、生成物ポリグルタミン酸ポリマーは、1.5未満の多分散度、1.25未満の多分散度、または、1.1未満の多分散度を有することができる。いくつかの実施形態において、生成物ポリグルタミン酸ポリマーは、約1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2.0の多分散度を有する。いくつかの実施形態において、生成物ポリグルタミン酸ポリマーは1.01〜1.09の間の多分散度を有する。いくつかの実施形態において、生成物ポリグルタミン酸は、約1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08または1.09の多分散度を有する。
【実施例】
【0074】
下記の実施例は、本明細書中に記載される実施形態をさらに記載するという目的のために提供され、請求項の範囲を限定しない。
【0075】
実施例1
市販PGAの加水分解
17kDaの分子量を有するポリグルタミン酸(PGA)を、Sigma Aldrich Chemical Co.から得た。この市販のPGAを、表1に示される加水分解条件を使用して処理した。得られた生成物PGAの重量平均分子量もまた表1に示される。
【表1】

【0076】
実施例2
PGA−ベンジル系エステルの合成
【化4】

Teflon被覆の撹拌子を備えるオーブン乾燥した500mLの丸底フラスコに、10グラム(38mmol、1当量)の5−ベンジルエステルグルタミン酸−N−カルボキシアンヒドリド(NCA)および190mLのジオキサンを加えた。得られた溶液をアルゴンにより5分間パージした。その後、約0.106mL(0.76mmol、0.02当量)の新たに蒸留されたトリエチルアミン(0.02当量)を加えた。反応混合物をアルゴンによりさらに5分間パージし、10分間撹拌した。その後、撹拌を停止し、反応混合物を72時間静置させた。その後、反応混合物を1000mLの高速撹拌されている無水エタノールにゆっくり注いだ。生成物が長い白色の繊維状フィラメントとして析出した。混合物をろ過し、生成物を単離し、250mLのエタノールにより洗浄した。何らかの残留溶媒を真空除去した。得られたPGAサンプル(これは実施例3のための出発PGAサンプルとして使用された)の重量平均分子量を、光散乱による分子量検出を用いたGPCを使用して決定した。2つのさらなるPGAサンプルを類似する手順によって作製した。条件および得られたPGAサンプルの重量平均分子量に関するさらなる詳細が表2に示される。
【表2】

【0077】
実施例3
PGAの加水分解
【化5】

Teflon被覆の撹拌子およびガスアダプターを備えるオーブン乾燥した100mLの丸底フラスコに、実施例2から得られた1.0g(4.57mmol、1当量)のPGA−ガンマ−ベンジルエステル(これは191kDaの重量平均分子量を有する)および40mLのジクロロ酢酸を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下に置き、エステルの一部を溶解させるために15分間撹拌した。3.5mL(28.5mmol、6.24当量)の33%HBr−AcOH溶液をシリンジにより加えた。その後、反応混合物を約6時間撹拌した。アセトン(50mL)を加えると、白色の沈殿物が形成された。得られたスラリーをろ過し、アセトン(50mL)により洗浄して、固体を得た。この固体を、約8のpHが達成されるまで1N重炭酸ナトリウム水溶液に溶解した(およそ20mL)。溶液を透析チューブに入れ、4Lの脱イオン水において約1時間透析した。1時間後、水の100%を交換し、透析をさらに1時間続けた。このプロセスをさらに2回繰り返し、その後、溶液を一晩透析した。透析された溶液を0.45μmの酢酸セルロースメンブランでろ過し、凍結乾燥して、水を除いた。得られた生成物PGAは白色の固体であった(0.18g、31%の収率、16.80kダルトンの重量平均分子量)。
【0078】
アリコートが、33%HBr−AcOHを添加した1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後および7時間後に反応混合物から採取された実施例3の手順を行った。アリコートからの生成物PGAを、実施例3で記載される手順を使用して精製および単離した。アリコートからの生成物PGAの重量平均分子量を決定した。生成物PGAの重量平均分子量が表3に提供される。
【表3】

【0079】
図1に示されるプロットが、表3におけるデータを使用して作製された。当業者は、目標とする重量平均分子量を選択することができ、また、このプロットを、生成物ポリグルタミン酸を得るために出発ポリグルタミン酸を加水分解するために必要とされる時間を決定するために使用することができる(ただし、この場合、生成物ポリグルタミン酸は、選択された目標とする第2の重量平均分子量の約±10kDaの範囲内にある重量平均分子量を有する)。
【0080】
実施例4
PGAの加水分解
開始時重量平均分子量が130kDaであるPGAベンジル系エステルの第1のサンプル(5.0g、22.85mmol、1当量)と、ジクロロ酢酸(200mL)とを、アルゴン雰囲気下、Teflonの磁石撹拌子を備えるオーブン乾燥した500mLの丸底フラスコに加えた。フラスコを、事前に加熱された30℃の油浴の中に下げた。得られた懸濁物を、エステルの一部を溶解させるために15分間撹拌した。HBr−AcOHの溶液(17.5mL、100.1mmol、4.37当量)をシリンジにより加えた。HBr−AcOH溶液を加えた1時間後、溶液の2.0mLアリコートをシリンジにより取り出した(PGA−エステルのすべてがその時間では溶解していた)。アリコートを遠心分離チューブに入れ、33mLのアセトンにより希釈し、ボルテックス撹拌して、ポリマーを溶媒混合物に均一に分散させた。その後、チューブを、20℃で5分間、3000rpmで遠心分離した。ポリマーは、詰まった充填物をチューブの底に形成した。上清をデカンテーションし、さらなる33mLのアセトンをチューブに加えた。その後、チューブを前回と同様にボルテックス撹拌および遠心分離した。生じた上清をデカンテーションした後、ポリマー充填物を10mLの1N重炭酸ナトリウム水溶液に溶解した。さらなる14時間についてその後のそれぞれ1時間で、反応混合物の2.0mLアリコートを取り出し、上記のように処理した。ポリマーを重量平均分子量について光散乱検出器によるゲル浸透クロマトグラフィーによって特徴づけた。生成物PGAの重量平均分子量を決定した。
【0081】
開始時重量平均分子量が130kDaであるPGAベンジル系エステルの第2のサンプルを、上記で記載される同じ手順に従って加水分解した。第1および第2のサンプルから得られる生成物PGAの重量平均分子量が表4に示される。
【表4】

【0082】
図2に示されるプロットは、表4におけるデータを使用して作製されたものであり、数時間にわたる加水分解条件のもとでの2つのサンプルのポリグルタミン酸の重量平均分子量を示す。当業者は、目標とする重量平均分子量を選択することができ、また、このプロットを、生成物ポリグルタミン酸を得るために出発ポリグルタミン酸を加水分解するために必要とされる時間を決定するために使用することができる(ただし、この場合、生成物ポリグルタミン酸は、選択された目標とする第2の重量平均分子量の約±10kDaの範囲内にある重量平均分子量を有する)。
【0083】
実施例5
PGAの加水分解
加水分解条件の再現性を、開始時重量平均分子量が130kDaであるPGAポリマーの8個のサンプルを加水分解することによって実証した。簡単に記載すると、サンプルのPGAベンジル系エステル(5.0g、22.85mmol、1当量)と、ジクロロ酢酸(200mL)とを、アルゴン雰囲気下、Teflonの磁石撹拌子を備えるオーブン乾燥した500mLの丸底フラスコに加えた。フラスコを、事前に加熱された30℃の油浴の中に下げた。得られた懸濁物を、エステルの一部を溶解させるために15分間撹拌した。HBr−AcOHの溶液(17.5mL、100.1mmol、4.37当量)を加えた。反応液を6時間撹拌した。反応液を酢酸エチルにおける10%ヘキサンの高速撹拌されている混合物の1500mLに注いだ。生成物が、15分間、透明なゼラチン状固体として析出された。得られた混合物をGrade54のろ紙でろ過した。得られた固体を集め、250mLの酢酸エチルにより2回洗浄した。物質を、撹拌子を備える三角フラスコに移した。その後、250mLの1N重炭酸ナトリウム溶液をフラスコに加え、物質を溶解した。溶液を分液ロートに入れ、水相(下層)を上部の有機層(臭化ベンジルの副生成物およびいくらかの残留する酢酸エチル)から分離した。水層を透析メンブランの中に入れ、4LのDI水に対して1時間透析した。100%の水交換を行い、その後、透析をさらに1時間行った。このプロセスをさらに2回繰り返し、その後、一晩の透析を行った。溶液をGrade No.50のろ紙でろ過し、凍結乾燥して、水を除いた。得られたポリマーを、組成についてH−NMR分光法によって、また、重量平均分子量について光散乱検出器によるゲル浸透クロマトグラフィーによって特徴づけた。8個のサンプルのそれぞれについての生成物PGAの重量平均分子量を決定した。生成物PGAの重量平均分子量が表5に提供される。
【表5】

【0084】
実施例6
PGAの加水分解
本明細書中に記載される加水分解条件の多用途性を、開始時重量平均分子量が130kDaまたは270kDaのどちらかであるPGAポリマーの6個のサンプル、および、5グラム〜50グラムの間のサンプルサイズを加水分解することによって実証した。簡単に記載すると、サンプルのPGAベンジル系エステルと、ジクロロ酢酸とを、アルゴン雰囲気下、Teflonの磁石撹拌子を備えるオーブン乾燥した丸底フラスコに加えた。フラスコを、事前に加熱された30℃の油浴の中に下げた。得られた懸濁物を、エステルの一部を溶解させるために15分間撹拌した。HBr−AcOHの溶液(4.37当量)を加えた。反応液を6時間撹拌した。反応液を酢酸エチルにおける10%ヘキサンの高速撹拌されている混合物に注いだ。生成物が、15分間、透明なゼラチン状固体として析出した。得られた混合物をGrade54のろ紙でろ過した。得られた固体を集め、酢酸エチルにより2回洗浄した。物質を、撹拌子を備える三角フラスコに移した。その後、1N重炭酸ナトリウム溶液をフラスコに加え、物質を溶解した。溶液を分液ロートに入れ、水相(下層)を上部の有機層(臭化ベンジルの副生成物およびいくらかの残留する酢酸エチル)から分離した。水層を透析メンブランの中に入れ、DI水に対して1時間透析した。100%の水交換を行い、その後、透析をさらに1時間行った。このプロセスをさらに2回繰り返し、その後、一晩の透析を行った。溶液をGrade No.50のろ紙でろ過し、凍結乾燥して、水を除いた。得られたポリマーを、組成についてH−NMR分光法によって、また、重量平均分子量について光散乱検出器によるゲル浸透クロマトグラフィーによって特徴づけた。6個のサンプルのそれぞれについての生成物PGAの重量平均分子量を決定した。生成物PGAの重量平均分子量が表6に提供される。
【表6】

【0085】
数多くの様々な改変が、本出願の精神から逸脱することなく行われ得ることが、当業者によって理解されるであろう。したがって、本出願において開示される形態は例示にすぎず、請求項の範囲を限定するために意図されないことを明確に理解されなければならない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグルタミン酸を調製するためのプロセスであって、
80kDa以上である第1の重量平均分子量を有する出発ポリグルタミン酸を得ること、
80kDa未満であるポリグルタミン酸の目標とする第2の重量平均分子量を選択すること、
前記出発ポリグルタミン酸の前記第1の重量平均分子量をポリグルタミン酸の前記選択された目標とする第2の重量平均分子量に低下させるために効果的である加水分解条件を選択すること、および
前記出発ポリグルタミン酸を前記選択された加水分解条件のもとで加水分解して、それにより、生成物ポリグルタミン酸を得ること(ただし、前記生成物ポリグルタミン酸は、前記選択された目標とする第2の重量平均分子量の約±10kDaの範囲内にある重量平均分子量を有する)
を含むプロセス。
【請求項2】
ポリグルタミン酸を調製するためのプロセスであって、
185kDa以上である第1の重量平均分子量を有する出発ポリグルタミン酸を得ること、
185kDa未満であるポリグルタミン酸の目標とする第2の重量平均分子量を選択すること、
前記出発ポリグルタミン酸の前記第1の重量平均分子量をポリグルタミン酸の前記選択された目標とする第2の重量平均分子量に低下させるために効果的である加水分解条件を選択すること、および
前記出発ポリグルタミン酸を前記選択された加水分解条件のもとで加水分解して、それにより、生成物ポリグルタミン酸を得ること(ただし、前記生成物ポリグルタミン酸は、前記選択された目標とする第2の重量平均分子量の約±10kDaの範囲内にある重量平均分子量を有する)
を含むプロセス。
【請求項3】
前記生成物ポリグルタミン酸が、前記選択された目標とする第2の重量平均分子量の約±5kDaの範囲内にある重量平均分子量を有する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記生成物ポリグルタミン酸が、前記選択された目標とする第2の重量平均分子量の約±3kDaの範囲内にある重量平均分子量を有する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記出発ポリグルタミン酸が、190kDa以上である第1の重量平均分子量を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記出発ポリグルタミン酸が、220kDa以上である第1の重量平均分子量を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記出発ポリグルタミン酸が、240kDa以上である第1の重量平均分子量を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記出発ポリグルタミン酸が、80kDa〜約300kDaの範囲における第1の重量平均分子量を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記出発ポリグルタミン酸が、グルタミン酸エステルと、アミンとの反応生成物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記選択された目標とする第2の重量平均分子量が40kDa以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記選択された目標とする第2の重量平均分子量が約35kDa〜約15kDaの範囲にある、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記出発ポリグルタミン酸が、少なくとも合計で2時間の、前記選択された加水分解条件のもとで加水分解される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記出発ポリグルタミン酸が、少なくとも合計で3時間の、前記選択された加水分解条件のもとで加水分解される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記出発ポリグルタミン酸が、少なくとも合計で5時間の、前記選択された加水分解条件のもとで加水分解される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記出発ポリグルタミン酸が、合計で8時間未満の、前記選択された加水分解条件のもとで加水分解される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記選択された加水分解条件が、前記出発ポリグルタミン酸を酸と反応させることを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記酸がHBr−酢酸である、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記選択された加水分解条件が、前記出発ポリグルタミン酸を、25℃を超える第1の温度に供することを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記選択された加水分解条件が、前記出発ポリグルタミン酸を、前記第1の温度に等しくない第2の温度に供することを含む、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記出発ポリグルタミン酸ポリマーが前記第1の温度で第1の期間にわたって加水分解され、かつ、前記第2の温度で第2の期間にわたって加水分解される、請求項19に記載のプロセス。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−514443(P2013−514443A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544716(P2012−544716)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/060327
【国際公開番号】WO2011/075483
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】