説明

ポリゴン加工装置及びポリゴン加工方法

【課題】正確、精密な加工が可能なポリゴン加工装置を提供する。
【解決手段】ポリゴン加工装置は、ワーク把持するチャックを備える主軸と、ワークWをポリゴン加工するポリゴンカッタ201が回転可能に取り付けられた回転工具台200と、ポリゴンカッタ201を回転駆動する回転モータと、回転工具台200に設定された原点Oとポリゴンカッタ201とが相対的に所定の配置関係となるように、前記回転モータを駆動制御する制御手段と、を備える。この制御手段による制御は、一旦ポリゴン加工を行った後、他の加工工程を経て、第2のポリゴン加工を行う場合、当該第2のポリゴン加工の前に行うとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリゴン加工装置及びポリゴン加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークの外周面を多角形に加工するポリゴン加工が行われている。
このポリゴン加工は、例えばワークの外周面に六角形のような偶数の多角形にワークを切削する場合、その角数の半分の例えば三角形に刃物を配置した回転工具(以下、「ポリゴンカッタ」ということがある。)を用いて行われる。ワークはその中心軸周りに回転させられ、かつ、ポリゴンカッタもまた、その中心軸周りに回転させられる。この場合、例えば、両者の中心軸は平行であり、またそれらの回転方向は同じである。さらに例えば、ポリゴンカッタの回転数は、ワークの回転数の倍などとする。
【0003】
このようなポリゴン加工を行う装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。
【特許文献1】特開平10−86010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリゴン加工を行う場合、最も注意すべき点の1つは、ワークとポリゴンカッタとの位相あわせである。特に、ワークに対して2種のポリゴン加工(例えば、第1のポリゴン加工は四角形、第2のポリゴン加工は、ワーク長手方向において前とは異なる位置に八角形等々)を施す場合、両時点におけるワークとポリゴンカッタとの位相は合致している必要がある。
あるいはまた、ワークに一旦ポリゴン加工を施した後、他の何らかの加工工程を行い、その後更にポリゴン加工を実施する場合にも、第1及び第2のポリゴン加工時における、ワークとポリゴンカッタとの位相は合致している必要がある。そうでなければ、第1のポリゴン加工によって形成された形状が崩れる等の不具合が生じるおそれがあるからである。
【0005】
前記特許文献1は、「カッタを駆動回転させるカッタ駆動シャフトの周方向に対して当該カッタの周方向の向きを位置決めできるように当該カッタ駆動シャフトが当該カッタを保持している」(特許文献1の〔請求項1〕等)、ポリゴンミーリング加工装置を開示している。これによれば、たしかに、前述の位相合わせを一定程度好適に実現することはできる。
【0006】
しかしながら、この特許文献1に開示された技術では、前述した問題の効率的且つ根本的解決にはなっていない。というのも、この特許文献1の技術は、カッタの位置決めが可能なように当該カッタを保持するという「保持の態様」にのみ着目しているからである。これによると要するに、現実に位置ずれ等が生じた場合、それを解消するためには、カッタの保持態様を変更させる(即ち、いわばカッタを「付け直す」)以外にない。実際、特許文献1で示される、より具体的な技術では、「カッタ」を保持する「カッタ保持軸」と、「シャフトボディ」とは、「締結手段」たる「拡縮リング」によって「周方向に回転を固定」された状態とされるのであり、このうちの「拡縮リング」の拡径・縮径によって、カッタ保持軸は、シャフトボディに付け直されるようになっているのである(特許文献1の〔0012〕等参照)。
このように、ワークとカッタとの位置ずれが生じた場合、カッタを付け直すことで、それを解消するというのでは、位相合わせに関し一定程度の不定さが残る懸念は払拭されない。そうすると、ワークの正確、精密なポリゴン加工は困難となる。しかも、特許文献1のような手法では、「手動」が基本となるものと思われるから、手間がかかり非効率的である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、正確、精密な加工が可能なポリゴン加工装置及びポリゴン加工方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、ワークとポリゴンカッタとの位相合わせを好適且つ簡易に行いうるポリゴン加工装置及びポリゴン加工方法を提供することを他の目的とする。
特に、本発明は、複数のポリゴン加工工程間に別の加工工程が挿入された場合であっても、前記位置合わせを好適に行いうるポリゴン加工装置及びポリゴン加工方法を提供することをも他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るポリゴン加工装置は、ワークを把持するチャックを備える主軸と、前記ワークをポリゴン加工するポリゴンカッタが回転可能に取り付けられた回転工具台と、前記ポリゴンカッタを回転駆動する回転駆動手段と、前記回転工具台に設定された原点位置と前記ポリゴンカッタとが相対的に所定の配置関係となるように、前記回転駆動手段を駆動制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るポリゴン加工装置では、前記制御手段は、前記ワークに対する前記ポリゴン加工が行われる前に、前記回転駆動手段を介して、前記原点位置と前記ポリゴンカッタとが相対的に所定の配置関係となるように、当該ポリゴンカッタを回転する、ように構成してもよい。
【0010】
また、本発明に係るポリゴン加工装置では、前記ワークに前記ポリゴン加工以外の加工を行う工具を更に備え、前記制御手段は、前記ワークに対する前記工具による加工が行われた後に、前記回転駆動手段を介して、前記原点位置と前記ポリゴンカッタとが相対的に所定の配置関係となるように、当該ポリゴンカッタを回転する、ように構成してもよい。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るポリゴン加工方法は、回転工具台に回転可能に支持されたポリゴンカッタによってワークをポリゴン加工するポリゴン加工方法であって、第1に、前記ワークに対する第1のポリゴン加工を行う工程と、第2に、前記第1のポリゴン加工を終了して、前記ワークに前記ポリゴンカッタ以外の工具による加工を行う工程と、第3に、前記回転工具台に設定された原点位置と前記ポリゴンカッタとが相対的に所定の配置関係となるように、当該ポリゴンカッタを回転する工程と、第4に、前記ワークに対する第2のポリゴン加工を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るポリゴン加工方法では、前記所定の配置関係は、前記第1のポリゴン加工を行っている際における、前記ポリゴンカッタ及び前記ワーク間の位相関係が、前記第2のポリゴン加工の際に実現されるように定められる、ように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、前記回転工具台に設定された原点位置とポリゴンカッタとの相対的な配置関係を所定のものに設定する動作、即ちいわば原点復帰動作が行われ得るようになっているので、ワークの正確、精密な加工が可能となる。
とりわけ、前記の原点復帰動作は、制御手段による自動化が行われているので、好適且つ簡易に行われる。
さらに、本発明によれば、前記の原点復帰動作を、ポリゴン加工の前に(特に好ましくは「直前に」)必ず行うようにすれば、たとえ複数のポリゴン加工工程の中に他の工程が挿入されていようとも、常に、ワークとポリゴンカッタとの相対的配置関係を好適に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下では、本発明の実施形態に係るポリゴン加工装置について、図1から図3を参照して説明する。このポリゴン加工装置は、ベッド10、主軸20、工具支持機構30、ガイドブッシュ90、並びに制御部100及び回転工具台200を備えている。
【0015】
主軸20は、主軸台21に支持されている。主軸台21はスライド21A上に設置されており、このスライド21Aは、図1中左右方向であるZ軸方向に沿うようにベッド10上に取り付けられた2本のレール11及び12上に載せられている。スライド21AはZ軸モータ22に接続されている。以上の構成により、主軸20ないしは主軸台21は、Z軸モータ22からの動力を受けて、レール11及び12に沿いながらZ軸方向に駆動される。
また、主軸台21には、ワーク回転モータ(不図示)が内蔵されている。ワーク回転モータは、主軸20に備えられたチャック23が把持するワーク(図1から図3においては不図示)を回転させる。
【0016】
工具支持機構30は、図1あるいは図2に示すように、Y軸方向スライド40及びX軸方向スライド50を備えている。
【0017】
Y軸方向スライド40は、図2に示すように、その側面形状が概ねL字状となる、板状の形態をもつ。このL字の一方の、より広い面積をもつ板状形態の部分には、図2あるいは図3に示すように、主軸20に把持されたワークが貫通しうる中空部40Hが形成されている。また、当該板状形態の部分の一方の面には工具保持部41が備えられている。該工具保持部41は複数の工具421,422及び423を固定的に保持する。他方、当該板状形態の部分の他方の面には、図1に示すようにガイド45,46が備えられている。これらガイド45,46は、前記のZ軸方向に垂直で、図1の紙面を貫く方向であるY軸方向に沿って延びている。ガイド45,46は、X軸方向スライド50に備えられたガイド溝45G,46Gに係合されている。
また、Y軸方向スライド40は、図2に示すように、その端部がY軸方向に沿うように配置されたボールねじ43の一端に接続されている。このボールねじ43の他端には、該ボールねじ43を回転可能なY軸モータ44が接続されている。
以上の構成により、Y軸方向スライド40は、Y軸モータ44からの動力を受けて、ガイド45,46に沿いながらY軸方向に駆動される。
【0018】
一方、X軸方向スライド50は、略平板状の形態をもつ。前述のボールねじ43は、図2に示すように、このX軸方向スライド50の内部に収納されて配置されている。また、同じく前述のガイド溝45G,46Gは、図1に示すように、当該略平板状の形態の一方の面に備えられている。
このX軸方向スライド50には、図2あるいは図3に示すように、主軸20に把持されたワークが貫通しうる中空部が形成されている。この中空部のXY平面内における形成位置は、前述のY軸方向スライド40の中空部40Hのそれとほぼ一致する。
X軸方向スライド50における、ガイド溝45G,46Gが備えられた面(即ち、Y軸方向スライド40が存在する面)とは反対側の面には、図2に示すように、ガイド51,52が備えられている。これらガイド51,52は、前記のZ軸方向及びY軸方向のいずれにも垂直な方向であるX軸方向に沿って延びている。ガイド51,52は、後述するガイドブッシュ支持台90Bに係合されている。
また、X軸方向スライド50は、図1あるいは図3に示すように、その端部がX軸モータ53に接続されている。
以上の構成により、X軸方向スライド50は、X軸モータ53からの動力を受けて、ガイド51,52に沿いながらX軸方向に駆動される。
【0019】
このような構成により、工具支持機構30は、X軸及びY軸方向に移動可能となっており、それに伴い、工具421,422及び423も同方向に移動可能となっている。
【0020】
ガイドブッシュ90は、図2に示すように、X軸方向スライド50に形成された中空部及びY軸方向スライド40に形成された中空部40Hを貫通するように配置されている。このガイドブッシュ90は、主軸20から突出したワークを摺動自在に支持する。これにより、工具による切削加工時に、切削抵抗によりワークに生じる撓み等の力学的変位の発生が防止される。
【0021】
より詳細には、ガイドブッシュ90は、第1ガイドブッシュ支持台90A及び第2ガイドブッシュ支持台90Bによって支持されている。第1ガイドブッシュ支持台90Aは、図2に示すようにベッド10の一部を構成するものであり、図2中上方向に突出した部分である。第2ガイドブッシュ支持台90Bは、その側面形状が概ねL字状となる形態をもつ。L字を構成する一方の板状形態の部分は、ガイドブッシュ支持台90A上に設置され、ボルト91によって固定されている。
【0022】
また、L字を構成する他方の板状形態の部分には中空部90BHが形成されている。また、この中空部90BHは、その形状が主軸台21の先端部分の形状にほぼ一致するように形成される。
この中空部90BHの存在により、第2ガイドブッシュ支持台90Bが、主軸台21のZ軸方向に沿った移動にとっての障害となるようなことがない。また、中空部90BH並びにX軸方向スライド50及びY軸方向スライド40それぞれの中空部の存在により、主軸20に把持されたワークは、それらの向こう側(図2中右側)に突出することができる。
【0023】
そして、ガイドブッシュ90は、第2ガイドブッシュ支持台90Bの中空部90BHに嵌められるようにして該第2ガイドブッシュ支持台90Bに固定されている。
以上のような構成からも明らかなとおり、ガイドブッシュ90は、ベッド10上で不動である。
【0024】
制御部100は、図示しないプロセッサ、プロセッサによる処理の手順を定義したプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、ユーザによる適当な数値入力等を受けて実行されるプログラム及び必要な情報を記憶しておくRAM(Random Access Memory)を備え、上に説明した各構成要素、すなわち主軸20用のZ軸モータ22、ワーク回転モータ、工具支持機構30用のX軸モータ53及びY軸モータ44を駆動制御する。これにより、ワークWと工具421,422及び423との相対的な位置関係を適当に設定することができる。
なお、制御部100は、上記の他、後述する回転工具台200に関する制御も行う。
【0025】
本実施形態においては特に、回転工具台200が、図1又は図3に示すように、Y軸方向スライド40の背面側(図1中右側)に備えられている。回転工具台200は、図からも明らかなように、前述の工具421,422及び423と対向するかのように配置される。
【0026】
この回転工具台200には、ポリゴンカッタ201がその中心軸を軸として回転可能に取り付けられている。このポリゴンカッタ201は、図4に示すように、概ね円盤形状をもつが、その円周部分の所定の位置には複数の刃物205をもつ。図4においては、刃物205が4つ設けられる例が示されている。これら4つの刃物205の先端部分を繋ぐと正方形が形作られる(不図示)。この場合、ワークとポリゴンカッタの回転速度比が1:1であれば、V字断面の溝(以下、単に「V溝」という。)が十文字に加工され得ることになる(後に参照する図5参照)。
なお、このような刃物205の配置態様は一例に過ぎない。また、刃物205は基本的にいくつ備えられていてもよく、いずれにせよ本発明の本質には何ら関わらない。
【0027】
回転工具台200内には、カッタ回転モータ200Mが搭載されている。このカッタ回転モータ200Mは、前述のポリゴンカッタ201に接続されている(接続態様については不図示)。カッタ回転モータ200Mは、ポリゴンカッタ201が回転するための動力を供給する。また、カッタ回転モータ200Mは制御部100に接続されている。これにより、ポリゴンカッタ201の回転の時間、速度や、いつ回転を開始し又は終了するか等の回転に係る諸態様は、制御部100によって制御されるようになっている。
【0028】
次に、上述した構成のポリゴン加工装置の動作を説明する。なお、以下の説明においては、ポリゴンカッタ201の回転等はすべて、特に断りがない限り、制御部100のRAMに記憶されたプログラムによって自動的に行われるようになっている。また、本実施形態においては特に、ポリゴン加工の機能を使い、ワークの端面に、V溝を十文字に加工する例について説明する。
【0029】
既に参照した図3は、円筒形状のワークWの端面にV溝のポリゴン加工を行う場合における、ポリゴンカッタ201の装置全体の中の配置例を示している。
ポリゴン加工を行うには、第1に、主軸20のチャック23にワークWを把持させる。第2に、ワークWを把持した主軸20を、Z軸モータ22を駆動することでZ軸方向に沿って移動させる。これにより、ワークWの加工箇所を、回転工具台200のポリゴンカッタ201に対向させる。第3に、ワーク回転モータを駆動してワークWを回転させる一方、カッタ回転モータ200Mを駆動してポリゴンカッタ200を回転させる。この場合、前者の回転数と後者の回転数との間には、一定の比率(例えば、1/1等)が定められている。これにより、主軸20で把持されたワークWの端面が、ポリゴンカッタ201によってV溝をもつように加工することが可能となり、また実際に加工される。
【0030】
このようなポリゴン加工により、例えば図5に示すような形状が形作られる。この図によれば、ワークWは、その先端に三角形状の尖頭部をもち、かつ、その端面にV溝が十文字となるような加工が施されている様子がわかる。
かかるポリゴン加工(以下、「第1ポリゴン加工」ということがある。)の後、改めて、例えば仕上げ加工等を目的とした他のポリゴン加工(以下、「第2ポリゴン加工」ということがある。)を行うことも当然可能である。
【0031】
ところで、前記第1ポリゴン加工によると、例えば図6に示すようなバリWb1又はWb2が発生する。このうちバリ”Wb1”は、ワークWの外周面に発生したもの、”Wb2”は内周面に発生したものをそれぞれ表している。
この図6のバリWb1又はWb2は極めて概略的に描かれているが、図5のような理想的な形状に比べれば、より現実に近い形を表しているということができる。このようなバリWb1又はWb2は無用ないし有害な存在なので、これを除去する必要がある。この際、ワークWの内周面のバリWb2については、前述の第2ポリゴン加工を行うことにより除去し、また、外周面のバリWb1については、他の加工工程(以下、「バリ取り加工」ということがある。)を行うことにより除去することが考えられる。
【0032】
しかしながら、このバリ取り加工を実施してしまうと、ワークWとポリゴンカッタ201との相対的な配置関係が、第1ポリゴン加工時のそれと異なってしまうことがある。ここで配置関係が異なるとは、より正確にいえば、ワークWの回転とポリゴンカッタ201の回転とが、第1のポリゴン加工時のようには同期しない(あるいは、両者間の位相関係が従前とは一致しない)、ということを含意する。これは、第1のポリゴン加工を終了したこと、より具体的には、ポリゴンカッタ201の回転を停止したことに起因するものである。
かかる状態で、第2ポリゴン加工を行ってしまうと、折角の加工形状が崩れてしまう等の不具合が生じるおそれがある。
【0033】
そこで、本実施形態では、ポリゴン加工装置に例えば以下のような動作を行わせる。
すなわち、前記バリ取り加工を行った後に、ポリゴンカッタ201と回転工具台200上に予め設定されている原点位置との相対的な配置関係が所定のものとなるように、ポリゴンカッタ201を回転させておくのである。
【0034】
より具体的には、例えば図7のようである。この図7において、原点Oは、回転工具台200を図3でA視した場合における図中最頂上点に定められている。そして、図7でいう「所定の配置関係」は、前記原点Oと、ポリゴンカッタ201の特定の刃物205P(これは、任意に定めうる。)の先端201Pが水平軸上にのる場合における当該ポリゴンカッタ201との配置関係に合致する。あるいは、当該所定の配置関係は、原点Oと先端201Pとが図7の直線L上にのる関係ということもできる。
このような所定の配置関係に基づき、例えば、当該配置関係をとる前、図7の破線で示すような位置にあったポリゴンカッタ201は、実線で示すような位置へと回転させられる(以下、かかる回転動作を「原点復帰動作」ということがある。)。
【0035】
以上のように、原点復帰動作を行った後には、ポリゴンカッタ201の回転とワークWの回転とは、第1のポリゴン加工時と同様の同期状態をとることが可能となる。したがって、加工形状を崩してしまうことなく、正確、精密な第2ポリゴン加工を行うことができるのである。
なお、図8には、以上説明した、第1のポリゴン加工(ステップS1)、バリ取り加工(ステップS2)、原点復帰動作(ステップS3)及び第2のポリゴン加工(ステップS4)という作業の流れをまとめて示しておいた。この一連の作業は、制御部100による統制により行われる。
【0036】
なお、前記第2ポリゴン加工時における、前記のような同期をとるためには、好適には例えば、主軸20を一定回転にした状態で、制御部100が、主軸20に取り付けられたポジションエンコーダ(不図示)による、1回転信号を受け取った後に、ポリゴンカッタ201の回転を開始するという態様を採用するとよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態のポリゴン加工装置によれば、回転工具台200の原点Oとポリゴンカッタ201との相対的な配置関係を所定のものに設定する、原点復帰動作が行われ得るようになっているので、ワークWに対する正確、精密な加工を実施することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、前記の原点復帰動作は、プログラムで指令することにより、制御部100によって自動的に行われるので、ワークWとポリゴンカッタ201との位相合わせは、好適且つ簡易に行われる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態にかかわらず、種々の変形が可能である。その変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0040】
(1) 上記実施形態においては、原点Oの位置が、図7に示すようなものとして定められているが、これは単なる一例を示しているに過ぎない。原点Oは、回転工具台200上であれば、基本的にどこに定められていてもよい。あるいは、より広く言えば、回転工具台200上に定められるある一点と常に一義の関係にある点を、ポリゴン加工装置上の回転部分のどこかに定めることが可能であれば、当該の「一義の関係にある点」を、”原点”として選択しても何ら構わない。この場合でも、当該のポリゴン加工装置上の回転部分の点は、前記の2つの点が「一義」の関係にあるのだから、未だ回転工具台200に「設定され」ていると言うことが不可能ではないからである。いずれによせ、本発明に言う「原点位置」は観念上の存在ともいえるから、上記事情をふまえた上でなら、基本的にどこに定められても問題はない。
【0041】
(2) 上記実施形態においては、円筒状のワークWの端面についてポリゴン加工を行う場合を例に説明しているが、本発明は、かかる形態に限定されるわけでは勿論ない。例えば、前述の例において、ワークWの外周面にポリゴン加工を行う場合においても、本発明の適用は可能である。また、ワークWが比較的長い場合には、該ワークWあるいは回転工具台200のいずれかをその長手方向に送る必要があるが、その場合でも勿論、本発明の適用は可能である。
【0042】
(3) また、上記実施形態によれば、ポリゴン加工を2回実施する場合であって、そのうちの第2のポリゴン加工を実施する前に原点復帰動作を行う例について説明しているが(図8参照)、本発明は、かかる形態に限定されない。ポリゴン加工を何度行う場合であっても、前記原点復帰動作を、個々のポリゴン加工の前、特に好ましくはその直前に必ず行うようにすれば、常に、第1のポリゴン加工時の同期状態を実現することができる。
要するに、本発明によれば、複数のポリゴン加工工程の中に、例えば前記バリ取り加工等の他の工程を複数回介在させる場合であっても、常に、ワークWとポリゴンカッタ201との相対的配置関係、あるいは両者間の同期を好適にとることができるのである。
【0043】
(4) 上記実施形態では、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向を、互いに垂直であるものとしているが、方向が異なれば垂直になっている必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係るポリゴン加工装置の平面図である。
【図2】図1に示すポリゴン加工装置の正面図である。
【図3】図1に示すポリゴン加工装置の右側面図である。
【図4】ポリゴンカッタの断面図及び正面図である。
【図5】ポリゴンカッタによるワークのポリゴン加工例を示す図である。
【図6】ポリゴンカッタによるワークのポリゴン加工例であって、バリの存在をも示す図である。
【図7】原点の設定例とポリゴンカッタの原点復帰動作の例を示す図である。
【図8】本実施形態のポリゴン加工処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
10 ベッド
20 主軸
23 チャック
30 工具支持機構
40 Y軸方向スライド
41 工具保持部
421,422,423 工具
43 ボールねじ
44 Y軸モータ
50 X軸方向スライド
53 X軸モータ
90 ガイドブッシュ
90A 第1ガイドブッシュ支持台
90B 第2ガイドブッシュ支持台
100 制御部
200 回転工具台
201 ポリゴンカッタ
205 刃物
W ワーク
O 原点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持するチャックを備える主軸と、
前記ワークをポリゴン加工するポリゴンカッタが回転可能に取り付けられた回転工具台と、
前記ポリゴンカッタを回転駆動する回転駆動手段と、
前記回転工具台に設定された原点位置と前記ポリゴンカッタとが相対的に所定の配置関係となるように、前記回転駆動手段を駆動制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするポリゴン加工装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記ワークに対する前記ポリゴン加工が行われる前に、
前記回転駆動手段を介して、前記原点位置と前記ポリゴンカッタとが相対的に所定の配置関係となるように、当該ポリゴンカッタを回転する、
ことを特徴とする請求項1に記載のポリゴン加工装置。
【請求項3】
前記ワークに前記ポリゴン加工以外の加工を行う工具を更に備え、
前記制御手段は、
前記ワークに対する前記工具による加工が行われた後に、
前記回転駆動手段を介して、前記原点位置と前記ポリゴンカッタとが相対的に所定の配置関係となるように、当該ポリゴンカッタを回転する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリゴン加工装置。
【請求項4】
回転工具台に回転可能に支持されたポリゴンカッタによってワークをポリゴン加工するポリゴン加工方法であって、
第1に、前記ワークに対する第1のポリゴン加工を行う工程と、
第2に、前記第1のポリゴン加工を終了して、前記ワークに前記ポリゴンカッタ以外の工具による加工を行う工程と、
第3に、前記回転工具台に設定された原点位置と前記ポリゴンカッタとが相対的に所定の配置関係となるように、当該ポリゴンカッタを回転する工程と、
第4に、前記ワークに対する第2のポリゴン加工を行う工程と、
を含むことを特徴とするポリゴン加工方法。
【請求項5】
前記所定の配置関係は、
前記第1のポリゴン加工を行っている際における、前記ポリゴンカッタ及び前記ワーク間の位相関係が、前記第2のポリゴン加工の際に実現されるように定められることを特徴とする請求項4に記載のポリゴン加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−264937(P2008−264937A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111811(P2007−111811)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000133593)株式会社ツガミ (28)
【Fターム(参考)】